説明

ソレノイド部材の特性補正装置及びソレノイド部材

【課題】ソレノイドバルブのばらつきを制御ソフトを用いず、ソレノイドバルブ単体での特性試験工程の結果を記録媒体に書き込むことにより、組付け後の学習工程が不要となる。
【解決手段】ソレノイド部材の特性補正装置10は、油圧源11と、油圧源11により駆動される油圧検査装置12と、油圧検査装置12に沿って略一列に配置されたレーザ記録装置13と、ワーク搬送装置14とを備える。油圧検査装置12は、比例電磁弁15または比例電磁弁装置16を取付けてこれらの性能特性試験が行われる。レーザ記録装置13は、比例電磁弁15または比例電磁弁装置16の性能特性試験のデータを記録媒体であるバーコードデータ17a、17bを刻印する機能を有する。ワーク搬送装置14は、比例電磁弁15または比例電磁弁装置16を油圧検査装置12及びレーザ記録装置13に搬送する機能を備え、油圧検査装置12及びレーザ記録装置13に略並行して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドの特性補正装置に関し、油圧調整等に用いられるソレノイドを一個または複数個有しそれぞれソフトによる電子制御することが可能な自動変速機においで、該ソレノイドの特性ばらつきを制御ソフトを用いずに個々に補正することが可能なソレノイドの特性補正装置及びソレノイド部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速機においては、ソレノイドによってプランジャを変位させることにより油経路の開口面積を変化させてクラッチ、ブレーキ等に対する油圧を調整する機構が知られている。この場合、ソレノイドによるプランジャの駆動においては、該ソレノイドのプランジャを一方向に付勢するリターンスプリングおよび圧力をプランジャもしくはスプリングに抗する力としてフィードバックする機構を設け、該リターンスプリングの弾発力およびソレノイドの磁気力、フィードバック力がバランスし圧力が調整されるように
構成されているが、前記リターンスプリングのセット荷重やフィードバック力および電磁力に大きなばらつきが生じるため、前記セット荷重を調整するための調整ねじを設け、該調整ねじによってセット荷重を個別に手作業で調整して基準値に揃えることが行われていた。
【0003】
上記のようにソレノイドに調整ねじを設けることは、コストを増大させ、また、ソレノイドのサイズを大型化させる要因になっている。さらに、個々に調整ねじを手作業で操作することは調整に時間を要しコストが増大するという問題があった。
このため、従来は、摩擦要素に供給される作動油の圧力を運転状態に適合させて適正に制御できるようにしている。すなわち、油圧制御回路に設けられて摩擦要素に供給される作動油のライン圧を調節する調整手段と、ライン圧の基準値を補正して変速時間が予め設定された目標値に一致させるように制御する補正手段とを備えた自動変速機の油圧制御装置において、変速時に作用する摩擦要素の入力トルクに対応した基準ライン圧の第1成分および摩擦要素に生じる吸収イナーシャに対応した基準ライン圧の第2成分を設定する基準値設定手段と、基準ライン圧の第1成分を補正する第1補正係数を学習によって更新する第1学習手段と、基準ラインの第2成分を補正する第2補正手段を学習によって更新する第2学習手段とを設けている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、ソレノイドのばらつきを調整機構を用いずに制御ソフトで個々に補正できるようにしている。すなわち、ソレノイドと制御装置とを検査機にセットし、ソレノイドに対して一定の油圧を供給し、ソレノイドによって調整される油圧が目標油圧1に一致するように駆動電流をフィードバック制御する。次いで、目標油圧1を得たときの駆動電流と目標油圧1に対応する基準電流との偏差△I1を演算し、同様にして目標油圧2を得たときの駆動電流と目標油圧2に対応する基準電流との偏差△I2を演算する。次いで、前記偏差△I1、△I2に基づいて、前記目標値に対応する基準電流を補正するための補正電流を演算し、補正電流の情報をソレノイドの制御装置の記録媒体に書き込んでいる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−307529号公報
【特許文献2】特開11−201314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、学習制御により油圧制御を行うので制御ロジックが複雑になるためソフトのサイズが大きくなる。これにより、デバック工数が増大しコストアップになる。また、学習が十分に行われるまでの間、所望の特性と実際の特性が異なり制御性が悪く、製品が安定するまで時間がかかる。
さらに、特許文献2では、組付け後に実測し、特性データを記録媒体に書き込むため、組付け後に学習工程を設ける必要があるので多くの工数を必要とする。
本発明は、前記の不具合を解決するためになされたもので、ソレノイドの特性ばらつきを制御ソフトを用いず、ソレノイドバルブ単体または該ソレノイドの組合せ部材での特性試験工程区間の結果を記録媒体に書き込むことにより、組付け後の学習工程が不要となることを特徴とするソレノイド部材の特性補正装置及びソレノイド部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体流量または流体油圧に対する駆動電流を測定しソレノイド部材のばらつきを補正するソレノイド部材の特性補正装置であって、
前記ソレノイド部材に検査用として一定の流体流量または流体圧力を付勢する油圧源と、
前記ソレノイド部材に付加される流体流量または流体油圧に対応する駆動電流を特性試験工程区間で計測し、該特性試験工程区間における駆動電流に対応する流体流量または流体油圧を算出し、前記流体流量または流体油圧値を書き込み記録媒体に記録する油圧検査装置と、
前記記録媒体に書き込まれた前記流体流量または前記流体油圧の値を前記ソレノイド部材に記録する記録手段と、
を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、組付け後の学習工程及び複雑な学習ソフトの製作が不要になるので、コストダウンすることができ、初期から適切な制御が実施できるため、品質を向上させることが可能である。
本発明は、ソレノイド部材の特性装置による前記記録手段により記録された記録体を有するソレノイド部材であることを特徴とする。
本発明によれば、ソレノイド部材の在庫管理が容易になり品質管理を向上させることができるのでよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、組付け後の学習工程及び複雑な学習ソフトの製作が不要になるので、コストダウンすることができ、初期から適切な制御が実施できるため、品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態に係るソレノイド部材の特性補正装置10のブロック図を図1に示す。図1において、ソレノイド部材の特性補正装置10は、基本的には油圧源11と、前記油圧源11により駆動される油圧検査装置12と、前記油圧検査装置12に沿って略一列に配置さされたレーザ記録装置(記録手段)13と、ワーク搬送装置14とを、備える。前記油圧検査装置12は、被検査物、例えば図2に示される比例電磁弁(ソレノイド部材)15または比例電磁弁15を複数個組合せた比例電磁弁装置(ソレノイド部材)16を取付けてこれらの性能特性試験を行う。前記レーザ記録装置13は、比例電磁弁15または比例電磁弁装置16の性能特性試験のデータを記録媒体、例えば特性試験工程区間のバーコードデータ17a、17bを刻印する機能を有する。前記ワーク搬送装置14は、比例電磁弁15または比例電磁弁装置16を油圧検査装置12及びレーザ刻印装置13に搬送する機能を備え、油圧検査装置12及びレーザ記録装置13に略並行して設けられる。
【0009】
図4はソレノイド部材の特性補正装置10の動作を示すフローチャートで、図4によりソレノイド部材の特性補正装置10の動作を説明する。以下の動作は比例電磁弁15の性能特性試験の場合について説明する。
ステップ1において比例電磁弁15がワーク搬送装置14により順次搬送され、ステップ2により油圧検査装置12の所定位置に取付けられる。次いで、油圧源11により油圧検査装置12が始動し比例電磁弁15に一定の油圧を供給する(ステップ3参照)。そして、ステップ4に示すように比例電磁弁15に対して0A(零アンペア)から1.0A(1.0アンペア)、1.0A(1.0アンペア)から0A(零アンペア)までの往復工程である特性試験工程区間において、電流値と圧力値との特性を測定する。さらに,ステップ5において、0.1A(0.1アンペア)の間隔で各電流値に対応する圧力値の平均値(算術平均値)を算出する。ここで、平均値で算出することによりデータ処理が簡便になり好適である。
【0010】
ステップ6において、0.1A(0.1アンペア)の各電流値に対応する圧力値が所定の規格内にあるか否か判断し、規格内であればステップ8により圧力値がバッファに記録される。
なお、ステップ6において、比例電磁弁15が規格外であれば、ステップ7によりNG品処理としてステップ2に戻される。
ステップ8において、比例電磁弁15に対する圧力値が記録媒体に記録されたならば、該記録媒体のデータがレーザ記録装置13に転送され、かつ油圧検査装置12から比例電磁弁15が取外され、ワーク搬送装置14によりレーザ記録装置13に搬送される(ステップ9参照)。
【0011】
次いで、ステップ10によりバッファに記録したデータを二次元バーコード化し、レーザ記録装置13で比例電磁弁15の外部にバーコードデータ17aが記録、例えば焼き付け、刻印、印刷される。比例電磁弁15にバーコードデータ17aが記録されると、該比例電磁弁15の性能特性試験が終了する(ステップ11参照)。
この実施の形態に係るソレノイド部材の特性補正装置10は、比例電磁弁15について説明したが、図3に示す比例電磁弁装置16及びこれらに類似するバルブ類のバルブ集合体にも適用できることは勿論である。
また、本実施の形態に係るデータの記録方法はバーコードについて述べたが、ICタグやチップ埋め込み、もしくは特性データを記録保存した外部データベースを使用するなど、製品を唯一に識別できる方法によっても可能であることは言うまでもない。
この実施の形態においては、流体油圧と駆動電流とによる性能特性試験工程について説明したが、流体流量と駆動電流とによる性能特性試験工程にも勿論適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るソレノイド部材の特性補正装置のブロック図である。
【図2】図1のソレノイド部材の特性補正装置に搭載される比例電磁弁の概略外形図である。
【図3】図1のソレノイド部材の特性補正装置に搭載される比例電磁弁装置の概略外形図である。
【図4】図1のソレノイド部材の特性補正装置の動作を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0013】
10 ソレノイド部材の特性補正装置
11 油圧源
12 油圧検査装置
13 レーザ記録装置
14 ワーク搬送装置
15 比例電磁弁
16 比例電磁弁装置
17a、17b バーコードデータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流量または流体油圧に対する駆動電流を測定しソレノイド部材のばらつきを補正するソレノイド部材の特性補正装置であって、
前記ソレノイド部材に検査用として一定の流体流量または流体圧力を付勢する油圧源と、
前記ソレノイド部材に付加される流体流量または流体油圧に対応する駆動電流を特性試験工程区間で計測し、該特性試験工程区間における駆動電流に対応する流体流量または流体油圧を算出し、前記流体流量または流体油圧値を書き込み記録媒体に記録する油圧検査装置と、
前記記録媒体に書き込まれた前記流体流量または前記流体油圧の値を前記ソレノイド部材に記録する記録手段と、
を備えたことを特徴とするソレノイド部材の特性補正装置。
【請求項2】
請求項1記載のソレノイド部材の特性装置による前記記録手段により記録された記録体を有することを特徴とするソレノイド部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−114525(P2006−114525A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297108(P2004−297108)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】