説明

ソープレスポリクロロプレン系ラテックス及びその製造法

【課題】 従来のポリクロロプレン系ラテックス接着剤の接着性、耐水性を改良したソープレスポリクロロプレン系ラテックスを提供する。
【解決手段】 乳化剤を2wt%以下、及び疎水性のクロロプレン系ポリマーに酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結している両親媒性クロロプレン系共重合体を含有することを特徴とするソープレスポリクロロプレン系ラテックス、並びにクロロプレン又はクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能なモノマーを乳化重合してソープレスポリクロロプレン系ラテックスを製造するに際し、疎水性のクロロプレン系ポリマーに酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結している両親媒性クロロプレン系共重合体を用いることを特徴とするソープレスポリクロロプレン系ラテックスの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックス中の乳化剤が低減され、接着性、耐水性が著しく改良された、ソープレスポリクロロプレン系ラテックス及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリクロロプレン(以下CRと略称することがある)をベースとした接着剤、プライマーは、CRの極性、凝集力、可撓性等の特徴を最大限に活かした用途であり、ゴム系接着剤の主流として建材、木工、製靴、車両製造等の広範な分野で重用されている。従来のCR系接着剤は、CR、粘着付与樹脂、酸化亜鉛、酸化防止剤などをトルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサンなどの有機溶剤に溶解したタイプが主流だったが、環境問題の高まりから脱溶剤化の要求が年々強まっている。この要求に応えるものとしてCRラテックスが注目されてきたが、従来のCRラテックスは接着性、耐水性が不十分であり、溶剤系CR接着剤を置き換えるには至っていない。
【0003】
従来のCRラテックスは、ロジン酸カリウム、アルキル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルアミン塩、四級アンモニウム塩、ポリビニルアルコールなどの乳化剤を用いてクロロプレンモノマーを水中に乳化した後、過流酸カリウムなどのラジカル開始剤を添加することによりクロロプレンを重合後、未反応モノマーをスチームストリッピング等の方法で除去する方法により製造されている。上記ラテックスには、CRに対して1〜6wt%程度の上記乳化剤が含まれるが、これが従来型CRラテックス接着剤の接着性、耐水性の発現を妨げる主要因と考えられている。即ち、ある被着体に従来型CRラテックスをベースとした接着剤を塗布し、乾燥する過程で、CRラテックス粒子表面から脱着した乳化剤及び水中に溶解していた乳化剤が、接着剤皮膜表面又は被着体界面に乳化剤が偏析することによって、CR本来の接着性が阻害されるものと考えられる。そこでこれらの乳化剤を含まない、所謂ソープレスCRラテックスを製造する試みがなされた。例えば、水中でスチレン及びアクリル酸をラジカル共重合後、アンモニアで中和し、引き続いてクロロプレンを添加し、乳化重合してソープレスCRラテックスを得る方法(特許文献1)、アミン存在下、水中でクロロプレン及び活性塩素含有モノマーをラジカル共重合することによってソープレスCRラテックスを得る方法(特許文献2)が開示されている。
【0004】
しかしながら、クロロプレンの乳化に用いる何れの親水性基含有共重合体もランダム共重合体であり、親水性と疎水性のバランスが悪く、CRラテックス粒子表面への吸着性が十分でないため、ラテックスの安定性を十分保つことが困難であった。
【0005】
一方、疎水性アクリル酸エステルポリマーブロックと親水性アクリル酸オリゴマー又はポリマーブロックからなる両親媒性アクリル酸エステル系共重合体の塩を乳化剤として、アクリル酸エステルなどのラジカル重合性モノマーを水中に乳化し、重合することによってソープレスラテックスを得る方法が開示されているが、クロロプレンに関する記載はない(特許文献3、特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−89602号公報
【特許文献2】特公昭52−32987号公報
【特許文献3】特表2004−530751公報
【特許文献4】特表2005−513252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来型CR系ラテックス接着剤の接着性、耐水性が改良された新規なCRラテックスが切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、CR系ポリマーに親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結した両親媒性CR系共重合体(以下、両親媒性CRと略称する)を用いてクロロプレン又はクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能なモノマーを乳化重合することによって安定なソープレスCRラテックスが得られ、従来の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、乳化剤を2wt%以下、及び疎水性のクロロプレン系ポリマーに酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結している両親媒性クロロプレン系共重合体を含有することを特徴とするソープレスCR系ラテックス及びその製造法である。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のソープレスCR系ラテックスは、乳化剤を著しく低減しているものであり、CRに対して2wt%以下の乳化剤を含有するものである。乳化剤が2wt%を超えると、CR系ラテックスの接着性、耐水性低下が顕著になる。ここに、乳化剤としては、一般に使用されている乳化剤であれば特に限定するものではなく、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤等があげられ、例えば、アニオン性乳化剤としては、ロジン酸カリウム、脂肪酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、アルキルスルホベタイン等があげられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール等があげられ、カチオン性乳化剤としては、アルキルアミン塩、四級アンモニウム塩等があげられる。
【0012】
本発明のソープレスCR系ラテックスは、疎水性のクロロプレン系ポリマーに酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結している両親媒性クロロプレン系共重合体を含有するものである。当該両親媒性クロロプレン系共重合体を含有することにより、従来型乳化剤の使用量を著しく低減できるものである。ソープレスCR系ラテックスにおける当該両親媒性クロロプレン系共重合体の含有量は、特に限定するものではないが、ラテックスの耐水性を損なわないために、最終的なラテックスに含まれるポリマーに対して、両親媒性クロロプレン系共重合体に含まれる親水性モノマー重合残基の含量が10wt%以下になるような含有量であることが好ましく、5wt%以下であることがさらに好ましい。
【0013】
両親媒性クロロプレン系共重合体における疎水性のクロロプレン系ポリマーとは、クロロプレンを主な重合単位とするポリマーをいい、例えば、クロロプレン単独重合体、クロロプレン共重合体等があげられる。クロロプレン共重合体を構成するクロロプレンとラジカル共重合可能なモノマーとしては、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエンなどの1,3−ブタジエン類、スチレン、α-メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−シアノスチレン、p−アセトキシスチレン、塩化p−スチレンスルホニル、エチルp−スチレンスルホニル、p−ブトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、3−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネートなどのスチレン類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸2−(イソシアナート)エチル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、メタクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、メタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、メタクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルなどのアクリル酸エステル類、その他、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノエチルアクリレート、無水マレイン酸、メタクリル酸、アクリル酸等があげられる。中でも、クロロプレンとのラジカル共重合性が比較的高い点で、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、α−シアノエチルアクリレートが好ましい。クロロプレンとの共重合性が最も高い2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンが更に好適である。
【0014】
また、両親媒性クロロプレン系共重合体における酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーとは、水又はアルカリ性水溶液に可溶なオリゴマー又はポリマーをいい、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、リン酸基含有ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、安息香酸ビニル/スチレン共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/p−メトキシスチレン共重合体、無水マレイン酸/イソブチレン共重合体、無水マレイン酸/クロロプレン共重合体、無水マレイン酸/2,3−ジクロロブタジエン/クロロプレン共重合体、マレイン酸/クロロプレン共重合体等があげられる。
【0015】
これらの親水性オリゴマー又は親水性ポリマーは、CRラテックス粒子を水中に安定分散させるために不可欠な成分であり、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、及びこれらの塩、水酸基、ポリアルキレンオキサイド、アミノ基、四級アンモニウム塩等の親水性基を含有するモノマーをラジカル重合することで得られるが、親水性を損なわない範囲であれば親水性基含有モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体でも良い。または、エステル基などの官能基を有する疎水性モノマーをラジカル重合後、酸又はアルカリ等による加水分解反応によって官能基を親水基へ変換することによっても得られる。スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、4−(メタクリロイルオキシ)ブチルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、及びこれらの塩等があげられ、スルホン酸へ変換可能な官能基を有するモノマーとしては、p−スチレンスルホン酸アルキルエステル、p−クロロスルホニルスチレン等があげられる。リン酸基含有モノマーとしては、2−(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート及びその塩等があげられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、ビニル安息香酸、無水マレイン酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2−(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、及びこれらの塩等があげられ、カルボキシル基へ変換可能な官能基を有するモノマーとしては、t−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等があげられる。水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアククリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等があげられ、水酸基へ変換可能な官能基を有するモノマーとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等があげられる。ポリアルキレンオキサイド含有モノマーとしては、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等があげられる。アミノ基含有モノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等があげられる。四級アンモニウム塩含有モノマーとしては、[(2−メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド、[(2−アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロライド等があげられる。
【0016】
疎水性のクロロプレン系ポリマーに酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結している両親媒性クロロプレン系共重合体とは、親油性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックからなり、クロロプレン等のモノマーを水中に乳化する能力、すなわち界面活性を有するポリマーをいい、例えば、疎水性のクロロプレン系ポリマーにポリスチレンスルホン酸、ポリアルキレンオキサイド等の水溶性ポリマーが連結したもの、疎水性のクロロプレン系ポリマーに親水性オリゴマーブロック又は親水性ポリマーブロックが連結している下記一般式(1)で表されるクロロプレン系ブロック共重合体等があげられる。
【0017】
【化1】

(式中、Uは水素、メチル基又はシアノ基を表し、Vはメチル基、カルボキシル基、カルボキシル基含有アルキル基又はカルボキシル基含有アリール基を表し、Aはクロロプレン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、p−メトキシスチレン又はイソブチレンの重合残基を表し、Qは無水マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸又はフマル酸の重合残基を表し、k、m及びnは0以上の整数を表し、pは1以上の整数を表す。)
これらのうち、クロロプレン等のモノマーを水中に十分乳化させることができ、かつ安定なCRラテックスを得るために、疎水性のクロロプレン系ポリマーに親水性オリゴマーブロック又は親水性ポリマーブロックが連結している上記一般式(1)で表されるクロロプレン系ブロック共重合体であることが好ましい。ここに、上記一般式(1)で表されるクロロプレン系ブロック共重合体としては、例えば、ポリメタクリル酸−CRジブロック共重合体、ポリアクリル酸−CRジブロック共重合体、安息香酸ビニル/スチレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/p−メトキシスチレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/イソブチレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/クロロプレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体−CRジブロック共重合体、マレイン酸/クロロプレン共重合体−CRジブロック共重合体、無水マレイン酸/2,3−ジクロロブタジエン/クロロプレン共重合体−CRジブロック共重合体等があげられる。
【0018】
本発明のソープレスCR系ラテックスを外部からの水分に対する耐水性が必要な接着剤、プライマー、シーリング材用途に使用する場合、上記したモノマーの中では、より少ない親水性オリゴマー又はポリマー含量でラテックス安定性を発現できるスルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、カルボン酸基含有モノマー、又はスルホン酸、リン酸、カルボン酸へ変換可能な官能基を有するモノマーの使用が好ましい。さらに、上記モノマーの重合溶媒への溶解性を考慮するとカルボキシル基含有モノマーの使用が好ましく、モノマーの価格、重合速度を考慮するとメタクリル酸、アクリル酸、又は無水マレイン酸とスチレン、イソブチレン、クロロプレン等との組合せ(交互共重合)が特に好ましい。即ち、メタクリル酸、アクリル酸等の単独でラジカル重合し易いモノマーを用いて親水性オリゴマー又はポリマーブロックを合成する場合には、一般式(1)におけるQ及びAに相当するモノマーはなくても良い。一方、単独ではラジカル重合しない無水マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸(1,2−二置換型モノマーともいう、一般式(1)におけるQに相当)を用いて親水性オリゴマーブロック又は親水性ポリマーブロックを合成する場合、これらのモノマーの重合を促す、即ち1,2−二置換型モノマーとの交互共重合性を有するスチレン、クロロプレン、イソブチレン等の電子供与性モノマー(一般式(1)におけるAに相当)を1,2−二置換型モノマーと併用すれば良い。一般に電子供与性モノマーとの交互共重合性が高いのは無水マレイン酸、シトラコン酸等の環状構造を有するモノマーであり、マレイン酸、フマル酸など環状構造ではないモノマーの交互共重合性は低いことが知られている。しかし、リビングラジカル機構では、環状構造をもたない1,2−二置換型モノマーの交互共重合性が高まり、マレイン酸でも両親媒性クロロプレン系共重合体の合成に十分利用できることを見出した。
【0019】
また、本発明のソープレスCR系ラテックスは、二次電池及びキャパシター電極用バインダーなどの用途にも使用可能である。これら、外部から遮断された密閉系で使用される場合、即ち、外部の水分との接触がない場合には、水酸基、アルキレンオキサイド、アミノ基含有モノマー又は水酸基、アミノ基へ変換可能な官能基を有するモノマーを使用しても良い。
【0020】
上記両親媒性クロロプレン系共重合体中の親水性オリゴマーブロック又は親水性ポリマーブロックの含有量は、特に限定するものではないが、十分なモノマー乳化力を得るとともに、耐水性を維持するためには、1〜50wt%が好ましく、1〜40wt%がさらに好ましい。
【0021】
上記両親媒性クロロプレン系共重合体の製造法としては、成長途上のポリマーラジカル(活性種)を、光、熱又は触媒等の作用で可逆的にラジカル開裂可能な共有結合種(休止種)に変換させることによって、成長ラジカル同士の再結合、不均化反応による成長ラジカルの失活を抑制しながらラジカル重合する所謂リビングラジカル重合によって親水性モノマーを重合後、続いてクロロプレンをブロック共重合する方法、親水性オリゴマーブロック又は親水性ポリマーブロックを有するアゾ化合物(所謂水溶性マクロアゾ開始剤)、カルボキシル基含有アゾ化合物をラジカル開始剤に用いてクロロプレン等をラジカル重合する方法、水酸基、カルボキシル基等を有するメルカプタン類を連鎖移動剤に用いてクロロプレン等をラジカル重合する方法、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどのラジカル開始剤存在下でクロロプレンをラジカル重合することによって、クロロプレンポリマー末端に親水基を導入する方法、有機溶媒中、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物を用いて親水性モノマーをCRにグラフト重合する方法、反応性乳化剤とクロロプレンをラジカル共重合する方法、ジフェニルエチレン類存在下で親水性モノマーをラジカル重合後、クロロプレンをラジカル重合する方法などがあるが、CRに効率良く親水性オリゴマー又はポリマーブロックを導入できる点で、リビングラジカル重合法を利用するのが良い。リビングラジカル重合法としては、例えば、ジチオカルバミン酸エステル化合物、キサントゲン酸エステル化合物など、開始剤兼連鎖移動剤兼停止剤として作用する所謂イニファーターを重合制御剤として用い、紫外線照射下、炭素−イオウ結合の開裂と再結合を繰返しながらモノマーをラジカル重合させるイニファーター重合法(イニファーター重合法に関しては、Polymer Preprints、Japan(高分子学会予稿集)Vol.31、No.6(1982)、1289〜1292頁、Polymer Preprints、Japan(高分子学会予稿集)Vol.32、No.6(1983)、1047〜1050頁に詳しく述べられている)、ジチオカルボン酸エステル化合物、ジチオカルバミン酸エステル化合物、キサントゲン酸エステル化合物等を重合制御剤として用い、モノマー及びポリマーの成長ラジカルがこれらの化合物へ可逆的な付加開裂移動反応を繰返しながらラジカル重合する所謂RAFT(可逆的付加開裂移動)重合法(RAFT重合に関しては、WO98/01478(Ezio Rizzardo他)、WO98/58974、WO99/35178(Charmot Dominique他)に詳しく述べられている)、安定ニトロキシルラジカルを用いるTEMPO法があり、これらを利用して、両親媒性CRブロック共重合体を合成できる。また、他のリビングラジカル重合法として、CRに少量含まれるアリル塩素を開始剤として親水性モノマーを原子移動重合(ATRP)する方法がある。ATRP法は、開始剤として有機ハロゲン化物を、触媒として塩化第一銅、臭化第一銅、鉄錯体、ルテニウム錯体などの金属錯体を、触媒を活性化させるための配位子としてビピリジン、ポリアミン等の窒素化合物を用いてラジカル重合性モノマーをリビングラジカル重合する方法であり、CRに通常含まれる1,2−結合由来のアリル塩素を開始剤に利用して、親水性モノマーをATRP重合すれば、両親媒性のCR系グラフトポリマーを得ることができる。ATRP法に関しては、Chemical Reviews、vol.101、2921−2990頁、2001年(K.Matyjaszewski他)、Chemical Reviews、vol.101、3689−3745頁、2001年(M.Sawamoto他)に詳しく述べられており、これらの触媒系を本発明でも用いることができる。
【0022】
上記の製造法の中でも、より低温で親水性モノマー及びクロロプレンの重合が可能な点でイニファーター重合法やRAFT重合法が最も好ましい。
【0023】
本発明のソープレスCR系ラテックスは、クロロプレン又はクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能なモノマーを乳化重合してCR系ラテックスを製造する際に、疎水性のクロロプレン系ポリマーに酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結している両親媒性クロロプレン系共重合体を用いることに特徴がある。特に、クロロプレン等のモノマーを水中に安定乳化させ、かつ安定なラテックスを得るために、疎水性のクロロプレン系ポリマーに親水性オリゴマーブロック又は親水性ポリマーブロックが連結している下記一般式(1)で表される両親媒性クロロプレン系共重合体を用いることが好ましい。
【0024】
【化2】

(式中、Uは水素、メチル基又はシアノ基を表し、Vはメチル基、カルボキシル基、カルボキシル基含有アルキル基又はカルボキシル基含有アリール基を表し、Aはクロロプレン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、p−メトキシスチレン又はイソブチレンの重合残基を表し、Qは無水マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸又はフマル酸の重合残基を表し、k、m及びnは0以上の整数を表し、pは1以上の整数を表す。)
上記の疎水性のクロロプレン系ポリマー、酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマー、両親媒性クロロプレン系共重合体、親水性オリゴマーブロック又は親水性ポリマーブロックについては、前に説明したのと同じである。
【0025】
乳化重合における上記の両親媒性クロロプレン系共重合体の使用量は、モノマーを十分乳化でき、かつ生成したラテックスの十分な安定性を維持できれば特に限定するものではないが、ラテックスの粘度上昇を考慮すると全仕込モノマーの30wt%以下であることが好ましく、最終的に得られるラテックスの接着性、耐水性を考慮すると20wt%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明のソープレスCR系ラテックスの製造におけるクロロプレン又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーを乳化重合する方法は、クロロプレン系ポリマーに酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結している両親媒性クロロプレン系共重合体を用いる他は、従来の乳化重合と同様である。
【0027】
当該両親媒性クロロプレン系共重合体の製造から、当該両親媒性クロロプレン系共重合体を用いたソープレスCR系ラテックスの製造までの例を以下に説明する。
【0028】
まず、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの溶媒中、上記イニファーター重合法又はRAFT重合法により、ジチオカルバミン酸エステル、キサントゲン酸エステル又はジチオカルボン酸エステル化合物等を重合制御剤として親水性モノマーをラジカル重合することにより、ジチオカルバミン酸エステル、キサントゲン酸エステル又はジチオカルボン酸エステル末端を有する親水性オリゴマー又はポリマーを合成した後、引き続いてクロロプレンを添加してラジカルブロック共重合することによって親水性オリゴマーブロック又は親水性ポリマーブロック末端にCRが連結した構造を有する両親媒性CRが合成できる。このポリマー溶液をトリエチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物の水溶液に投入することにより、両親媒性CR水溶液を調製する。塩基性化合物としては、ソープレスCRラテックスの接着性、耐水性を考慮するとトリエチルアミン、エタノールアミン等の低分子量アミン、アンモニアが好ましい。上記水溶液にクロロプレン等のモノマー及び必要に応じてメルカプタン等の分子量調節剤を投入し、モノマーを乳化した後、ラジカル開始剤及び必要に応じて還元剤を添加して重合を行う。CR中の1,2−結合及び異性化1,2−結合量の増加を防いでCRの安定性を維持するため、重合温度は70℃以下であることが好ましい。CRの安定性をより確保するためには、60℃以下が好ましい。目標とするモノマー転化率に到達したところで、重合禁止剤を添加し、重合を停止する。その後、未反応モノマーを減圧留去することにより、ソープレスCR系ラテックスが得られる。また、重合中又は重合後、ラテックスの安定性向上、粘度低減、表面張力低減などを目的として、一般的な乳化剤、分散剤を添加しても良い。但し、これらの乳化剤の添加量はCR系ポリマーに対して2wt%以下である。2wt%を超えると乳化剤によるCRラテックス接着剤の接着性、耐水性低下が顕著になる。乳化剤による接着阻害を抑制するため、ラテックスに含まれる乳化剤は1wt%以下がより好ましい。
【0029】
上記分子量調節剤としては、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸等のメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルチウラムジスルフィド等のスルフィド類、ベンジルジチオベンゾエート、2−シアノプロピルジチオベンゾエート、3−クロロ−2−ブテニルジチオベンゾエート、S−(チオベンゾイル)チオグリコール酸、クミルジチオベンゾエート等のジチオカルボン酸エステル類、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素、ジフェニルエチレン、p−クロロジフェニルエチレン、p−シアノジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー、イオウ等を用いることができる。上記ラジカル開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどのパーオキサイド化合物、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート等のアゾ化合物を用いることができる。過酸化物の分解を促進させるための還元剤としては、ハイドロサルファイト、ロンガリット、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸、アニリン等を用いることができる。上記重合禁止剤としては、フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−フェニル−1−ナフチルアミン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、ハイドロキノン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等を用いることができる。
【0030】
本発明のソープレスCR系ラテックスは、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂などの粘着付与樹脂、アルキルフェノール樹脂、シリカ、クレー、アルミペースト、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機充填材、疎水化セルロース、ポリカルボン酸塩、会合型ノニオン界面活性剤、ポリアルキレンオキサイド、クレーなどの増粘剤、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物などの硬化剤、酸化亜鉛、可塑剤、濡れ剤、凍結防止剤、造膜助剤等を配合して、水性接着剤、水性プライマー、シーリング剤として使用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明で得られるソープレスCR系ラテックスは、従来のCRラテックスに含有された多量の乳化剤を著しく低減できるため、接着性、耐水性が著しく改良されたCRラテックス系接着剤、プライマー、シーラント、キャパシター電極用バインダーの製造を可能にする。
【実施例】
【0032】
本発明をより具体的に説明するため以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
なお、本発明の重合体の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnは、東ソー(株)製GPC8120により次の条件で測定した(溶離液=テトラヒドロフラン、流速=1.5ml/min、カラム温度=40℃、ピーク検出=示差屈折計、充填カラム=TSK−gel(登録商標、以下同じ)G7000Hxl/GMHxl/GMHxl/G3000Hxl/ガードカラムH−L、分子量計算=ポリスチレン換算)。重合体中の塩素及びイオウ量は、酸素フラスコ燃焼−イオンクロマトグラフ法により、重合体の赤外吸収スペクトルは、パーキンエルマー製Spectrum2000を用いて測定した。重合中のモノマー転化率は、島津製作所ガスクロマトグラフGC−17A(GLサイエンス社製キャピラリーカラムNEUTRABOND−5、水素炎イオン化検出器)を用い、ベンゼンを内部標準として算出した。
【0034】
ソープレスCRラテックスの接着剤としての性能評価は、以下の方法で行った。2枚の9号綿帆布にCRラテックス接着剤組成物を刷毛で塗布し、オーブン中80℃で5分乾燥(以上の塗布−乾燥の操作を3回繰返した)後、常温でオープンタイム(一定時間放置)を取った後、ハンドローラーで圧着した。常温で1日養生後、25mm幅に裁断し、引っ張り速度50mm/minの条件でテンシロン型引っ張り試験機を用いて180°T型剥離試験を行った。接着性は、オープンタイムによる剥離強度及び剥離状態の変化から評価した。即ち、接着性が十分な場合、長いオープンタイムを取っても剥離強度の低下は小さいが、不十分な場合には接着剤界面での剥離(所謂糊分かれ)が顕著になり剥離強度の低下が増大する。耐水性は、オープンタイム3時間で圧着後、常温で1日間養生した試験片を、純水中に常温で3間浸漬後、濡れた状態で上記と同様、180°T型剥離試験を行い評価した。
【0035】
合成例1
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた100mlパイレックス(登録商標)ガラスフラスコに下記一般式(2)で表されるキサントゲン酸エステル1.50g(7.0mmol)、下記一般式(3)で表されるキサントゲン酸ジスルフィド0.85g(3.5mmol)、メタクリル酸5.00g(58.14mmol)、メチルエチルケトン10.00gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、攪拌しながら、30℃の恒温槽内において80mmの距離から紫外線(ウシオ電気(株)製、UM452(450W))を照射しながら10時間重合した。この時点でのメタクリル酸の重合転化率は80%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン25.00g(282mmol)、メチルエチルケトン60mlを添加し、窒素雰囲気下、十分攪拌しながら、30℃で12時間紫外線照射を行った後、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを添加した。クロロプレン転化率は51%、メタクリル酸のトータル転化率は86%だった。GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは2600、重量平均分子量Mwは5200及び分子量分布Mw/Mnは2.0であった。乾燥ポリマーの塩素含量は27.3wt%、イオウ含量は2.5wt%であり、図1に示した赤外吸収スペクトルには、メタクリル酸中のカルボン酸及びCR中の不飽和結合由来のピークが観測された。また生成ポリマーは、CRの良溶剤であるトルエン、クロロホルムに溶解しなかったが、非溶媒であるアセトンに溶解した。また、生成ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解した。以上の結果から、メタクリル酸含量約24wt%の組成を有するポリメタクリル酸−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−A)が生成したと判断できた。
【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

合成例2
下記一般式(4)で表されるキサントゲン酸エステル1.50g(7.6mmol)、一般式(3)で表されるキサントゲン酸ジスルフィド0.80g(3.3mmol)、アクリル酸5.00g(69.4mmol)、メチルエチルケトン11.00gを100mlパイレックス(登録商標)ガラスフラスコに仕込み、合成例1と同じ方法で、30℃で5時間紫外線照射しながら重合を行った。この時点でのアクリル酸の重合転化率は80%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン25.00g(282mmol)、メチルエチルケトン60mlを添加し、窒素雰囲気下、十分攪拌しながら、30℃で12時間紫外線照射を行った後、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを添加した。クロロプレン転化率は52%、アクリル酸のトータル転化率は88%だった。GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは2500、重量平均分子量Mwは5500及び分子量分布Mw/Mnは2.20であった。乾燥ポリマーの塩素含量は27.3wt%、イオウ含量は2.2wt%であり、CRの良溶剤であるトルエン、クロロホルムに溶解しなかったが、非溶媒であるアセトンに溶解した。また、生成ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解した。以上の結果から、アクリル酸含量約26wt%の組成を有するポリアクリル酸−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−B)が生成したと判断できた。
【0038】
【化5】

合成例3
下記一般式(5)で表されるカルバミン酸エステル1.50g(6.3mmol)、下記一般式(6)で表されるカルバミン酸ジスルフィド0.80g(2.7mmol)、メタクリル酸5.00g(58.1mmol)、メチルエチルケトン11.00gを100mlパイレックス(登録商標)ガラスフラスコに仕込み、合成例1と同じ方法で、30℃で10時間紫外線照射しながら重合を行った。この時点でのメタクリル酸の重合転化率は83%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン25.00g(282mmol)、メチルエチルケトン60mlを添加し、以下、合成例1と同様に重合を行った。クロロプレン転化率は50%、メタクリル酸のトータル転化率は86%だった。GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは2800、重量平均分子量Mwは5800及び分子量分布Mw/Mnは2.10であった。乾燥ポリマーの塩素含量は27.3wt%、イオウ含量は2.2wt%であり、CRの良溶剤であるトルエン、クロロホルムに溶解しなかったが、非溶媒であるアセトンに溶解した。また、生成ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解した。以上の結果から、メタクリル酸含量約26wt%の組成を有するポリメタクリル酸−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−C)が生成したと判断できた。
【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

合成例4
合成例2において、アクリル酸及びメチルエチルケトンの代わりに、クロロプレン5.00g(56.5mmol)、無水マレイン酸5.50g(56.1mmol)及びベンゼン20.00gを仕込んだ他は全て合成例2と同じ仕込処方で、30℃で12時間紫外線照射しながら重合を行った。この時点でのクロロプレン及び無水マレイン酸の重合転化率は70%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン20.00g(226mmol)、ベンゼン20mlを添加し、30℃で12時間紫外線照射しながら重合を行った。クロロプレンのトータル転化率は50%、メタクリル酸のトータル転化率は85%だった。GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは2200、重量平均分子量Mwは5000及び分子量分布Mw/Mnは2.27であった。乾燥ポリマーの塩素含量は29.9wt%、イオウ含量は2.9wt%であり、ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解したことから、無水マレイン酸含量約21wt%の組成を有するポリ(クロロプレン/無水マレイン酸共重合体)−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−D)が生成したと判断できた。
【0041】
合成例5
合成例2において、アクリル酸5.00gの代わりに、クロロプレン5.00g(56.5mmol)及びマレイン酸6.50g(56.1mmol)を仕込んだ他は全て合成例2と同じ処方で、30℃で12時間紫外線照射しながら重合を行った。この時点でのクロロプレン及びマレイン酸の重合転化率は50%及び40%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン25.00g(282mmol)、メチルエチルケトン40mlを添加し、30℃で12時間紫外線照射しながら重合を行った。クロロプレンのトータル転化率は55%、マレイン酸酸のトータル転化率は65%だった。GPCにより測定した生成ポリマーの数平均分子量Mnは2800、重量平均分子量Mwは5900及び分子量分布Mw/Mnは2.11であった。乾燥ポリマーの塩素含量は28.2wt%、イオウ含量は2.5wt%であり、ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解したことから、マレイン酸含量約21wt%の組成を有するポリ(クロロプレン/マレイン酸共重合体)−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−E)が生成したと判断できた。
【0042】
合成例6
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに下記一般式(7)で表されるジチオカルボン酸エステル1.14g(5.00mmol)、メタクリル酸5.01g(58.19mmol)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.026g(0.16mmol)、ジオキサン11.35gを100mlナス型フラスコに仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、80℃のオイルバスで加熱した。4時間加熱後、室温まで冷却した。この時点でのメタクリル酸の重合転化率は78%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン24.52g(277mmol)、テトラヒドロフラン60ml、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.17g(0.71mmol)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.14g(15.46mmol)を添加し、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで加熱した。32時間加熱後、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを添加し、重合を停止した。クロロプレン転化率は61%、メタクリル酸のトータル転化率は91%だった。重合溶液を多量の純水に注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは4600、重量平均分子量Mwは6200及び分子量分布Mw/Mnは1.4であった。乾燥ポリマーの塩素含量は28.7wt%、イオウ含量は1.5wt%であり、生成ポリマーは、CRの良溶剤であるトルエン、クロロホルムに溶解しなかったが、非溶媒であるアセトンに溶解した。また、生成ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解した。以上の結果から、メタクリル酸含量23.04wt%の組成を有するポリメタクリル酸−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−F)が生成したと判断できた。
【0043】
【化8】

合成例7
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに下記一般式(8)で表されるジチオカルボン酸エステル2.50g(11.78mmol)、アクリル酸5.00g(69.39mmol)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.025g(0.13mmol)、ジオキサン5.3g、テトラヒドロフラン5.0gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、80℃のオイルバスで4時間加熱後、室温まで冷却した。この時点でのアクリル酸の重合転化率は91%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン60.00g(677.97mmol)、テトラヒドロフラン90ml、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2g(0.81mmol)を添加し、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃で加熱した。42時間加熱後、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシルトルエンを添加し、重合を停止した。クロロプレン転化率は68%、アクリル酸のトータル転化率は96%だった。重合溶液を多量の純水に注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは5100、重量平均分子量Mwは7900及び分子量分布Mw/Mnは1.55であった。乾燥ポリマー中の塩素含量は33.7wt%、イオウ含量は1.6wt%であった。生成ポリマーのテトラヒドロフラン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解したことから、ポリアクリル酸−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−G)が生成したと判断した。
【0044】
【化9】

合成例8
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに下記一般式(9)で表されるジチオカルボン酸エステル1.00g(4.56mmol)、メタクリル酸4.80g(55.76mmol)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.020g(0.12mmol)、ジオキサン11.00gを100mlナス型フラスコに仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、80℃のオイルバスで加熱した。4時間加熱後、室温まで冷却した。この時点でのメタクリル酸の重合転化率は74%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン20.00g(226.0mmol)、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン5.00g(40.7mmol)、テトラヒドロフラン60ml、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.20g(0.81mmol)を添加し、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで加熱した。32時間加熱後、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを添加し、重合を停止した。クロロプレン転化率は65%、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン転化率は87%、メタクリル酸のトータル転化率は92%だった。重合溶液を多量の純水に注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは5300、重量平均分子量Mwは8500及び分子量分布Mw/Mnは1.6であった。乾燥ポリマーの塩素含量は35.3wt%、イオウ含量は1.3wt%であり、生成ポリマーのテトラヒドロフラン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解したことから、メタクリル酸含量20.4wt%の組成を有するポリメタクリル酸−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−H)が生成したと判断できた。
【0045】
【化10】

合成例9
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに一般式(9)で表されるジチオカルボン酸エステル1.50g(5.00mmol)、無水マレイン酸2.00g(20.40mmol)、スチレン2.55g(24.48mmol)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)65.0mg(0.23mmol)、ジオキサン10.00gを100mlナス型フラスコに仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、80℃のオイルバスで加熱した。10時間加熱後、室温まで冷却した。この時点でのスチレン、無水マレイン酸の重合転化率は72%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン26.00g(294mmol)、テトラヒドロフラン60ml、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.10g(10.33mmol)を添加し、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで加熱した。32時間加熱後、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを添加し、重合を停止した。クロロプレン転化率は58%だった。重合溶液を多量の純水に注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは4600、重量平均分子量Mwは6200及び分子量分布Mw/Mnは1.4であった。乾燥ポリマーの塩素含量は32.8wt%、イオウ含量は1.7wt%であり、生成ポリマーは、CRの良溶剤であるトルエン、クロロホルムに溶解しなかったが、非溶媒であるアセトンに溶解した。また、生成ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解した。以上の結果から、無水マレイン酸/スチレン交互共重合体−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−I)が生成したと判断できた。
【0046】
合成例10
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに一般式(9)で表されるジチオカルボン酸エステル3.19g(13.40mmol)、クロロプレン5.00g(48.00mmol)、無水マレイン酸4.65g(47.40mmol)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)0.14g(0.50mmol)、ジオキサン22.00gを100mlナス型フラスコに仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。10時間加熱後、室温まで冷却した。この時点でのクロロプレン、無水マレイン酸の重合転化率は74%及び79%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン25.00g(282.5mmol)、テトラヒドロフラン60ml、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.20g(0.81mmol)を添加し、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで加熱した。32時間加熱後、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを添加し、重合を停止した。クロロプレン転化率は65%、無水マレイン酸のトータル転化率は100%だった。重合溶液を多量の純水に注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは2300、重量平均分子量Mwは3300及び分子量分布Mw/Mnは1.4であった。乾燥ポリマーの塩素含量は33.6wt%、イオウ含量は2.5wt%であり、生成ポリマーのテトラヒドロフラン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解したことから、クロロプレン/無水マレイン酸共重合体−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−J)が生成したと判断できた。
【0047】
合成例11
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに一般式(9)で表されるジチオカルボン酸エステル1.50g(5.00mmol)、無水マレイン酸1.00g(10.20mmol)、スチレン1.28g(12.24mmol)、メタクリル酸1.05g(12.24mmol)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)65.0mg(0.23mmol)、ジオキサン10.00gを100mlナス型フラスコに仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、80℃のオイルバスで加熱した。10時間加熱後、室温まで冷却した。この時点でのスチレン、無水マレイン酸の重合転化率は76%、メタクリル酸の重合転化率は71%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン26.00g(294mmol)、テトラヒドロフラン60ml、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.10g(10.33mmol)を添加し、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで加熱した。32時間加熱後、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを添加し、重合を停止した。クロロプレン転化率は59%だった。重合溶液を多量の純水に注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは4800、重量平均分子量Mwは8200及び分子量分布Mw/Mnは1.7であった。乾燥ポリマーの塩素含量は34.0wt%、イオウ含量は1.7wt%であり、生成ポリマーは、CRの良溶剤であるトルエン、クロロホルムに溶解しなかったが、非溶媒であるアセトンに溶解した。また、生成ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解した。以上の結果から、無水マレイン酸/スチレン/メタクリル酸共重合体−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−K)が生成したと判断できた。
【0048】
合成例12
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに一般式(7)で表されるジチオカルボン酸エステル1.68g(7.60mmol)、クロロプレン5.00g(56.5mmol)及びマレイン酸6.50g(56.1mmol)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)195.0mg(0.69mmol)、ジオキサン30.00gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで加熱した。48時間加熱後、室温まで冷却した。この時点でのクロロプレンの重合転化率は71%、マレイン酸の重合転化率は45%だった。続いて、単蒸留したクロロプレン26.00g(294mmol)、テトラヒドロフラン60ml、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.10g(10.33mmol)を添加し、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃のオイルバスで加熱した。32時間加熱後、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを添加し、重合を停止した。クロロプレンのトータル転化率は65%、マレイン酸のトータル転化率は70%だった。重合溶液を多量の純水に注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは3900、重量平均分子量Mwは5300及び分子量分布Mw/Mnは1.35であった。乾燥ポリマーの塩素含量は33.0wt%、イオウ含量は1.9wt%であり、生成ポリマーは、CRの良溶剤であるトルエン、クロロホルムに溶解しなかったが、非溶媒であるアセトンに溶解した。また、生成ポリマーのアセトン溶液は、トリエチルアミン水溶液に溶解した。以上の結果から、マレイン酸含量が約18wt%のクロロプレン/マレイン酸共重合体−CRジブロック体(両親媒性CRブロック共重合体−L)が生成したと判断できた。
【0049】
実施例1
窒素ガス導入管、還流冷却管及び攪拌機を備えた200mlフラスコに、合成例1で得た両親媒性CRブロック共重合体−Aを3.60g(メタクリル酸含量〜9.3mmol、全仕込モノマーの12wt%)及びアセトン7.00gを加え、ポリマーを溶解後、トリエチルアミン1.19g(11.80mmol)及び純水42.00gを添加した。アスピレーターで減圧下、アセトンを留去後、単蒸留したクロロプレン30.00g(339mmol)、n−ドデシルメルカプタン1.01g(5mmol)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)30mg(0.18mmol、ベンゼン溶液で添加)を添加し、攪拌下、少量の窒素を流しながら系内を十分脱気した後、窒素雰囲気中、50℃で重合を行った結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行した。3時間加熱後、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール0.05gを添加して重合を停止した。クロロプレンの重合転化率は80%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去しCRラテックス−Aを得た(固形分37wt%、全ポリマーに対するメタクリル酸含量は約3.0wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。得られたラテックスに5倍量のメタノールを添加してもポリマーは全く析出せず、ラテックスは極めて安定だったことから、ソープレスCRラテックスが得られたと判断した。
【0050】
得られたCRラテックス−Aを用いて表1に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0051】
【表1】

実施例2
実施例1において、合成例1で得た両親媒性CRブロック共重合体−Aの代わりに合成例2で得た両親媒性CRブロック共重合体−B3.00g(アクリル酸含量〜10.6mmol、全仕込モノマーの10wt%)を用い、トリエチルアミンを1.29g(12.8mmol)添加した他は全て実施例1と同じ条件でクロロプレンの乳化重合を行った。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去しCRラテックス−Bを得た(固形分37wt%、全ポリマーに対するアクリル酸含量は約3wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。得られたラテックスに5倍量のメタノールを添加してもポリマーは全く析出せず、ラテックスは極めて安定だったことから、ソープレスCRラテックスが得られたと判断した。
【0052】
得られたCRラテックス−Bを用いて表1に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0053】
実施例3
実施例1において、合成例1で得た両親媒性CRブロック共重合体−Aの代わりに合成例3で得た両親媒性CRブロック共重合体−C3.20g(メタクリル酸含量〜9.5mmol、全仕込モノマーの11wt%)を用い、トリエチルアミンを1.15g(11.4mmol)添加した他は全て実施例1と同じ条件でクロロプレンの乳化重合を行った。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去しCRラテックス−Cを得た(固形分37wt%、全ポリマーに対するメタクリル酸含量は約3wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。得られたラテックスに5倍量のメタノールを添加してもポリマーは全く析出せず、ラテックスは極めて安定だったことから、ソープレスCRラテックスが得られたと判断した。
【0054】
得られたCRラテックス−Cを用いて表1に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0055】
実施例4
窒素ガス導入管、還流冷却管及び攪拌機を備えた200mlフラスコに、合成例4で得た両親媒性CRブロック共重合体−Dを2.00g(無水マレイン酸含量〜5.6mmol、全仕込モノマーの6.7wt%)及びアセトン6.00gを加え、ポリマーを溶解後、トリエチルアミン1.36g(13.5mmol)及び純水42.00gを添加した。アスピレーターで減圧下、アセトンを留去後、単蒸留したクロロプレン25.00g(282mmol)、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン5.00g(40.7mmol)、n−ドデシルメルカプタン1.00g(5mmol)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)30mg(0.18mmol、ベンゼン溶液で添加)を添加し、以下、実施例1と同じ方法で乳化重合を行った結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行した。3時間加熱後、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール0.05gを添加して重合を停止した。クロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの重合転化率は各々74%、86%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去しCRラテックス−Dを得た(固形分37wt%、全ポリマーに対する無水マレイン酸含量は約3wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。ラテックスは極めて安定だったことから、ソープレスCRラテックスが得られたと判断した。
【0056】
得られたCRラテックス−Dを用いて表1に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0057】
実施例5
実施例4において、合成例4で得た両親媒性CRブロック共重合体−Dの代わりに合成例5で得た両親媒性CRブロック共重合体−E2.5g(マレイン酸含量〜5.1mmol、全仕込モノマーの8.3wt%)を用い、トリエチルアミン1.13g(12.15mmol)を仕込んだ他は、全て実施例4と同じ方法でクロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの乳化共重合を行った。その結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行し、3時間加熱後、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール0.05gを添加して重合を停止した。クロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの重合転化率は各々75%、89%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去しCRラテックス−Eを得た(固形分37wt%、全ポリマーに対するマレイン酸含量は約2.3wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。ラテックスは極めて安定だったことから、ソープレスCRラテックスが得られたと判断した。
【0058】
得られたCRラテックス−Eを用いて表1に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表1に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0059】
実施例6
窒素ガス導入管、還流冷却管及び攪拌機を備えた200mlフラスコに、合成例6で得た両親媒性CRブロック共重合体−Fを3.57g(メタクリル酸含量〜8.7mmol、全仕込モノマーの12wt%)及びアセトン7.05gを加え、ポリマーを溶解後、トリエチルアミン1.07g(10.62mmol)及び純水41.38gを添加した。アスピレーターで減圧下、アセトンを留去後、単蒸留したクロロプレン30.05g(339.6mmol)、n−ドデシルメルカプタン1.01g(5mmol)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)32.84mg(0.20mmol、ベンゼン溶液で添加)を添加し、攪拌下、少量の窒素を流しながら系内を十分脱気した後、窒素雰囲気中、50℃で重合を行った結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行した。3時間加熱後、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール0.05gを添加して重合を停止した。クロロプレンの重合転化率は80%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去しCRラテックス−Fを得た(固形分37wt%、全ポリマーに対するメタクリル酸含量は約3.0wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。得られたラテックスに5倍量のメタノールを添加してもポリマーは全く析出せず、ラテックスは極めて安定だったことから、ソープレスCRラテックスが得られたと判断した。
【0060】
得られたCRラテックス−Fを用いて表2に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表2に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0061】
【表2】

実施例7
クロロプレン30.05gの代わりにクロロプレン25.55g(288.7mmol)、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン4.5g(36.6mmol)を用いた他は全て実施例6と同じ方法で重合を行った。その結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行し、3時間重合後のクロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの重合転化率は81%及び98%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去したところ、実施例1と同様、安定なソープレスCRラテックス−Gが得られた(固形分40%、全ポリマーに対するメタクリル酸含量は約3wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。
【0062】
得られたCRラテックス−Gを用いて表2に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表2に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0063】
実施例8
クロロプレン30.05gの代わりにクロロプレン27.0g(305.1mmol)、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル2.05g(20.81mmol)を用いた他は全て実施例6と同じ方法で重合を行った。スケーリングが発生することなく乳化重合が進行し、3時間重合後のクロロプレン及びメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルの重合転化率は83%及び25%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去したところ、実施例6と同様、安定なソープレスCRラテックス−Hが得られた(固形分38wt%、全ポリマーに対するメタクリル酸含量は約3wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。
【0064】
得られたCRラテックス−Hを用いて表2に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表2に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0065】
実施例9
窒素ガス導入管、還流冷却管及び攪拌機を備えた200mlフラスコに、合成例7で得た両親媒性CRブロック共重合体−Gを4.00g(アクリル酸含量〜4.8mmol、全仕込モノマーの13wt%)及びテトラヒドロフラン7.00gを加え、ポリマーを溶解後、トリエチルアミン0.60g(4.94mmol)及び純水40.00gを添加した。ここへ、単蒸留したクロロプレン31.02g(mmol)、n-ドデシルメルカプタン1.00g(mmol)、過硫酸カリウム60mgを添加し、攪拌下、少量の窒素を流しながら系内を十分脱気した後、窒素雰囲気中、40℃で重合を行った結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行した。8時間加熱後、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール0.05gを添加して重合を停止した。クロロプレンの重合転化率は72%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去したところ、安定なソープレスCRラテックス−Iが得られた(固形分39wt%、全ポリマーに対するアクリル酸含量は約1.5wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。
【0066】
得られたCRラテックス−Iを用いて表2に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表2に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0067】
実施例10
両親媒性CRブロック共重合体−F3.57gの代わりに、合成例8で得た両親媒性CRブロック共重合体−H4.03g(全仕込モノマーの13wt%)を用いた他は全て実施例7と同じ方法で重合を行った。その結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行し、3時間重合後のクロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの重合転化率は80%及び97%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去したところ、実施例7と同様、安定なソープレスCRラテックス−Jが得られた(固形分39%、全ポリマーに対するメタクリル酸含量は約3wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。
【0068】
得られたCRラテックス−Jを用いて表2に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表2に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0069】
実施例11
両親媒性CRブロック共重合体−F3.57gの代わりに、合成例9で得た両親媒性CRブロック共重合体−I6.00g(全仕込モノマーの20wt%)を用いた他は全て実施例7と同じ方法で重合を行った。その結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行し、3時間重合後のクロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの重合転化率は79%及び97%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去したところ、実施例7と同様、安定なソープレスCRラテックス−Kが得られた(固形分39%、全ポリマーに対する無水マレイン酸含量は約2.0wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。
【0070】
得られたCRラテックス−Kを用いて表2に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表2に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0071】
実施例12
両親媒性CRブロック共重合体−F3.57gの代わりに、合成例10で得た両親媒性CRブロック共重合体−J5.00g(全仕込モノマーの17wt%)及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.15gを用いた他は全て実施例7と同じ方法で重合を行った。その結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行し、3時間重合後のクロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの重合転化率は79%及び97%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去したところ、実施例7と同様、安定なソープレスCRラテックス−Lが得られた(固形分39%、全ポリマーに対する無水マレイン酸含量は約3.5wt%、アニオン性乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0.5wt%)。
【0072】
得られたCRラテックス−Lを用いて表2に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表2に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0073】
実施例13
両親媒性CRブロック共重合体−F3.57gの代わりに、合成例11で得た両親媒性CRブロック共重合体−K6.00g(全仕込モノマーの20wt%)を用いた他は全て実施例7と同じ方法で重合を行った。その結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行し、3時間重合後のクロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの重合転化率は78%及び96%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去したところ、実施例7と同様、安定なソープレスCRラテックス−Mが得られた(固形分39%、全ポリマーに対する無水マレイン酸及びメタクリル酸含量は約2.0wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。
【0074】
得られたCRラテックス−Mを用いて表2に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表2に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0075】
実施例14
両親媒性CRブロック共重合体−F3.57gの代わりに、合成例12で得た両親媒性CRブロック共重合体−L6.00g(全仕込モノマーの20wt%)を用いた他は全て実施例7と同じ方法で重合を行った。その結果、スケーリングが発生することなく乳化重合が進行し、3時間重合後のクロロプレン及び2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの重合転化率は77%及び95%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去したところ、実施例7と同様、安定なソープレスCRラテックス−Nが得られた(固形分39%、全ポリマーに対するマレイン酸含量は約wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して0wt%)。
【0076】
得られたCRラテックス−Nを用いて表2に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表2に示す。比較例のCRラテックスと比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が少なく、従来ラテックスに比べて接着性、耐水性が著しく向上していることが明らかである。
【0077】
比較例1
窒素ガス導入管、還流冷却管及び攪拌機を備えた500mlフラスコに、クロロプレン98.5、メタクリル酸1.5g、n-ドデシルメルカプタン0.3g、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王製、ペレックスSSH)5g(固形分換算)、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(花王製、デモールN)0.5g、トリエタノールアミン0.2g、純水100gを仕込み、攪拌下、少量の窒素を流しながら系内を十分脱気した。ハイドロサルファイトナトリウム0.01gを添加し、40℃、窒素雰囲気下、0.1wt%過硫酸カリウム水溶液を連続滴下し、クロロプレンの乳化重合を行った。転化率85%で2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール0.05gを加えて重合を停止した。ロータリーエバポレーターにより未反応モノマー及び水分を除去し、安定な従来型のCRラテックス−Oを得た(固形分40wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して5.5wt%)。
【0078】
得られたCRラテックス−Oを用いて表3に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表3に示す。実施例と比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が大きいことが明らかである。
【0079】
【表3】

比較例2
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.0gを用いた他は全て比較例1と同じ方法でクロロプレンの乳化重合を行い、安定な従来型のCRラテックス−Pを得た(固形分40wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して3.4wt%)。得られたCRラテックス−Pを用いて表3に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表3に示す。実施例と比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が大きいことが明らかである。
【0080】
比較例3
実施例1において、クロロプレンを乳化重合する際に、両親媒性CRブロック共重合体−Aに加えてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7gを添加した他は全て実施例1と同じ方法で重合を行った。3時間重合後のクロロプレンの重合転化率は82%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去し、安定なCRラテックス−Qを得た(固形分39wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して約2.4wt%)。
【0081】
得られたCRラテックス−Qを用いて表3に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表3に示す。実施例と比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が大きいことが明らかである。
【0082】
比較例4
実施例6において、クロロプレンを乳化重合する際に、両親媒性CRブロック共重合体−Fに加えてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7gを添加した他は全て実施例6と同じ方法で重合を行った。3時間重合後のクロロプレンの重合転化率は84%だった。ロータリーエバポレーターで未反応モノマー及び水分を留去しCRラテックス−Rを得た(固形分39wt%、乳化剤含量はクロロプレン系ポリマーに対して約2.4wt%)。
【0083】
得られたCRラテックス−Rを用いて表3に示した配合で接着剤組成物を調製し、接着性能を評価した。結果を表3に示す。実施例と比較して、オープンタイムによる剥離強度低下及び水浸漬後の剥離強度低下が大きいことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】合成例1で得られたメタクリル酸−クロロプレンブロック共重合体の赤外吸収スペクトルを示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤を2wt%以下、及び疎水性のクロロプレン系ポリマーに酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結している両親媒性クロロプレン系共重合体を含有することを特徴とするソープレスポリクロロプレン系ラテックス。
【請求項2】
請求項1記載の両親媒性クロロプレン系共重合体が、下記一般式(1)で表されるクロロプレン系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のソープレスポリクロロプレン系ラテックス。
【化1】

(式中、Uは水素、メチル基又はシアノ基を表し、Vはメチル基、カルボキシル基、カルボキシル基含有アルキル基又はカルボキシル基含有アリール基を表し、Aはクロロプレン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、p−メトキシスチレン又はイソブチレンの重合残基を表し、Qは無水マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸又はフマル酸の重合残基を表し、k、m及びnは0以上の整数を表し、pは1以上の整数を表す。)
【請求項3】
酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸から選択されるモノマーの重合残基を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のソープレスポリクロロプレン系ラテックス。
【請求項4】
クロロプレン又はクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能なモノマーを乳化重合してソープレスポリクロロプレン系ラテックスを製造するに際し、疎水性のクロロプレン系ポリマーに酸性官能基を有する親水性オリゴマー又は親水性ポリマーが連結している両親媒性クロロプレン系共重合体を用いることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のソープレスポリクロロプレン系ラテックスの製造法。
【請求項5】
請求項4記載の両親媒性クロロプレン系共重合体が、下記一般式(1)で表されるクロロプレン系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項4に記載のソープレスポリクロロプレン系ラテックスの製造法。
【化2】

(式中、Uは水素、メチル基又はシアノ基を表し、Vはメチル基、カルボキシル基、カルボキシル基含有アルキル基又はカルボキシル基含有アリール基を表し、Aはクロロプレン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、p−メトキシスチレン又はイソブチレンの重合残基を表し、Qは無水マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸又はフマル酸の重合残基を表し、k、m及びnは0以上の整数を表し、pは1以上の整数を表す。)
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のソープレスポリクロロプレン系ラテックスを含むことを特徴とする接着剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−297502(P2007−297502A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126067(P2006−126067)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】