説明

ソーラーパネルを備えたコンテナ

【課題】ソーラーパネルを使用し、大電流を必要とする装置を支障なく運転できるようにし、目的の処理量を得ることができる電力が得られるようにする、ソーラーパネルを備えたコンテナを提供する。
【解決手段】内部に処理装置を収容するコンテナ本体と、該コンテナ本体の上端に設けたソーラーパネルとを具備し、該上端のソーラーパネルは、上端部とその両側部のソーラーパネルとを折曲し得るように連結し、該両側部のソーラーパネルは、下方に折曲され得るが、集熱時は、油圧シリンダーのシャフトに押されて水平に上昇し得るように構成し、従来の3倍程度の電力が得られるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浄水装置のような処理装置を内蔵するソーラーパネルを備えたコンテナに係り、詳記すれば、大きな電力を必要とする処理装置を支障なく運転し得るように大電力が生じ得るようにしたソーラーパネルを備えたコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、原子力発電所からの放射性ヨウ素及びセシウムのような放射性物質とホウ素が海水や水道水を汚染する問題が発生している。特にヨウ素131は、乳児が摂取すると、咽頭がんになる危険性があることから、大変重大な問題となっている。活性炭を使用した市販の浄水器では、ある程度のヨウ素は除去できるが、人体に無害となる程度には到底除去できない。セシウムは市販の浄水器では殆ど除去できない。ホウ素は、多量に摂取すれば死に至ると言われているが、ホウ素は、水よりわずかに分子が大きいだけなので、市販の浄水器では、飲用に適する程度までは、到底除去できない。
【0003】
超高圧で使用するRO膜は、ナトリウムイオンの全てとある程度の放射性ヨウ素、セシウム及びホウ素を除去できる。濾過した液を更にRO膜を通過させることによって、ホウ素はもとより、放射性ヨウ素及びセシウムも飲料用に支障がない程度以上にほぼ完全に除去できる。
【0004】
海水、河川水等の電源の無い場所でも、使用し得る浄水装置とするには、無公害でクリーンなエネルギーとして、ソーラーパネルを使用するのが好ましい。そこで、浄水装置をコンテナに収容し、トレーラーで所望の場所に搬送可能とし、コンテナには、ソーラーパネルを設けた。
【0005】
しかしながら、このような浄水装置、特に海水中等の放射性物質を除去する浄水装置は、非常に大量の電力を必要とするが、この電力をソーラーパネルから得ようとすると、十分な電力が得られないので、装置の運転自体できないとか、目的とする処理量は得られないという問題が生じた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、ソーラーパネルを使用し、大電流を必要とする装置を支障なく運転できるようにし、目的の処理量を得ることができる電力が得られるようにする、ソーラーパネルを備えたコンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に沿う本発明の構成は、内部に処理装置を収容するコンテナ本体と、該コンテナ本体の上端に設けたソーラーパネルとを具備し、該上端のソーラーパネルは、上端部とその両側部のソーラーパネルとを折曲し得るように連結し、該両側部のソーラーパネルは、下方に折曲され得るが、集熱時には、油圧シリンダーのシャフトに押されて水平に上昇し得るように構成したことを特徴とする。
【0008】
前記ソーラーパネルは、枠体、好ましくはアルミニウム製の枠体内に固定するのが好ましい(請求項2)。
【0009】
前記コンテナ本体の底部両側部に、油圧シリンダーのシリンダーチューブを、それぞれの油圧シリンダーのシリンダーシャフトが反対側の油圧シリンダー連結部を向くように連結し、それぞれのシリンダーシャフト先端を、該先端に位置し得るソーラーパネル裏面の枠体に連結した油圧シリンダーを、コンテナ本体の長さ方向に対向して複数組設けるのが好ましい(請求項3)。
【0010】
前記油圧シリンダーのシャフトと前記ソーラーパネルの枠体、及び前記油圧シリンダーのシリンダーチューブとコンテナ底部とは、前記油圧シリンダーを回動(両方向に回転)し得るように連結するのが好ましい(請求項4)。
【0011】
前記油圧シリンダーのシャフト先端に貫通孔を形成し、該貫通孔にロッドを嵌合し、該ロッド両端を前記ソーラーパネルの枠体に固定した連結部材に連結して、前記油圧シリンダーを回動し得るように連結するのが好ましい(請求項5)。
【0012】
前記シリンダーチューブに貫通孔を形成した部材を連結し、該貫通孔にロッドを嵌合し、該ロッド両端を前記コンテナ本体底部に固定した連結部材に連結して、回動し得るように連結するのが好ましい(請求項6)。
【0013】
前記コンテナ本体の上端部の大きさは、2.4m×(6m〜20m)とするのが好ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ソーラーパネルを使用し、太陽の力だけで大量の電力が得られるので、大電流を必要とする装置を支障なく運転できるから、大量の電力を必要とする浄水装置等をクリーンなエネルギーで支障なく運転することができる。また、得られた電力を、バッテリーに蓄電すれば、3日間位は、天気にならなくとも装置を運転できる。更に、コンテナは、トレーラー等で梱包する必要なく容易に運べるので、どのような場所でも据付工事不要で簡単に装置の運転ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のソーラーパネルを備えたコンテナの(A)平面図、(B)正面図、(C)側面図である。尚、側面図は、上端部両側部のソーラーパネルが、下方に折曲した状態を示している。
【図2】本発明のソーラーパネルを備えたコンテナの(A)ソーラーパネルの外形線しか見えないようにした平面レイアウト図、(B)正面図である。
【図3】油圧シリンダーで両側部のソーラーパネルを上昇させた状態を示す正面図である。
【図4】内部に浄水装置を収容した本発明のコンテナの上端のソーラーパネルを除去した状態を示す平面レイアウト図である。
【符号の説明】
【0016】

コンテナ本体
2a, 2b,2c ソーラーパネル
3 油圧シリンダー
4 油圧シリンダーのシャフト
5 シリンダーチューブ
6 コンテナ本体底部
7 ロッド
9,9´,9a,9a´ 板状部材(連結部材)
10 ソーラー接続線
11 制御盤
12 電線
14 油圧装置
15 油圧配管
16 油圧配管
17 アルミニウム製枠体
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1(A)に示すように、コンテナ本体1の屋根部(上端部)には、屋根部のソーラーパネル2aと該屋根部のソーラーパネル両側部に連結された屋根部両側部のソーラーパネル2b,2cが設けられ、図1(B)に示すように、屋根部両側部のソーラーパネル2b,2cは、油圧シリンダー3,3´のシャフト4,4´によって上昇支持されている。
【0019】
図1(C)は、屋根部の両側部のソーラーパネル2b,2cが折曲した状態を示すものである。図2(B)及び図3に示すように、ソーラーパネル2a, 2b,2cは、それぞれアルミニウム製の枠体17内に取り付けられている。図2(A)及び図3に示すように、一組の油圧シリンダー3,3´は、コンテナ本体1の長さ方向に適宜の間隔を置いて、対向して設置されている。油圧シリンダー3と3´は、近接して配置されている。尚、コンテナ本体1には、図1に示すように、屋根部があっても、図2に示すように、屋根部が無くとも差し支えない。
【0020】
図2(B)及び図3に示すように、油圧シリンダー3,3´のシリンダーチューブ5,5´は、コンテナ本体底部6の両側部に、それぞれの油圧シリンダー3,3´のシリンダーシャフト4,4´が反対側の油圧シリンダー連結部の方を向くように連結し、それぞれのシリンダーシャフト4,4´先端は、そこに位置するソーラーパネル2b,2cの裏面のアルミニウム製の枠体17に連結されている。図2(B)及び図3は、シリンダーが油圧で伸長してソーラーパネル2b,2cを水平に押し上げた状態を示している。
【0021】
シリンダーシャフト4,4´先端には、貫通孔が形成され、該貫通孔にはロッド7が嵌挿され、ロッド7両端は、ソーラーパネル2b,2cの裏面のアルミニウム製の枠体17に固定された部材8,8´に固定した板状部材(連結部材)9,9´に連結されている。従って、シリンダーシャフト4,4´は、回動し得るようにソーラーパネル2b,2c裏面のアルミニウム製の枠体17に連結されている。
【0022】
シリンダーチューブ5,5´には、同様に貫通孔を形成した部材が連結され、該貫通孔にはロッド7が嵌挿され、ロッド7両端は、コンテナ本体底部6に固定された部材8a,8a´に固定した板状部材9a,9a´に連結されている。従って、シリンダーチューブも、回動し得るように、コンテナ本体底部6に連結されている。
【0023】
前記油圧シリンダーのシャフトと前記ソーラーパネルの枠体、及び前記油圧シリンダーのシリンダーチューブとコンテナ底部とは、回動し得るように連結するのが良いが、必ずしも上記のようにしなくとも良く、回動し得るなら、この種目的に使用する他の公知の手段を使用しても差し支えない。
【0024】
コンテナ本体の四隅の外周には、四角形の足29が固定されている。これは、車に積んだときに、この足29を凹部に嵌めてコンテナを固定するためのものである。図4に示すように、コンテナの前面と後面には、開閉扉が設けられている。
【0025】
ソーラーパネル2a, 2b,2cで発生した電気は、ソーラー接続線10を介して制御盤11に入り、蓄電池(バッテリー)13に蓄電される。
【0026】
制御盤11の開のボタンを押すと電線12を介して油圧装置14内のモータを駆動し、油圧配管15からボトム側ボートに油が流れることにより、油圧シリンダーのシャフト4,4´が伸びて、ソーラーパネル2b,2cを折曲状態から円弧を描いて水平状態に上昇させる。油圧シリンダーは、連結部を支点として、水平付近の状態から45度付近の角度まで上昇する。
【0027】
制御盤11の閉のボタンを押すと電線12を介して油圧装置14内のモータを駆動し、油圧配管16からロッド側ボードに油が流れることにより、油圧シリンダーのシャフト4,4´が縮んで、ソーラーパネル2b,2cが水平状態から円弧を描いて折曲状態に下降する。油圧シリンダーは、固定部を支点として、45度付近の角度から水平状態付近に下降する。
【0028】
上記実施例では、コンテナ本体の上端部の大きさは、12m×2.4mのものを使用した。従来は上端部のみに、72枚のソーラーパネルを使用していたので、5kwの電力しか得られなかったが、本発明では、集熱時は、太陽が直射する面積は3倍とすることができるので、15kwの電力が得られる。
【0029】
本発明のコンテナ本体の上端部の大きさは、大きな電力が得られるという点から、2.4m×(6m〜20m)、高さは現在市販の2.4mであるのが好ましい。具体的に現在市販されているコンテナ本体の上端部の大きさは、2.4m×6m、2.4m×12m、2.4m×20mである。
【0030】
図3は、内部に浄水装置を収容した本発明のコンテナの一実施例を示すものである。
【0031】
コンテナ内には、ソーラーパネルで発生した電気を蓄電する蓄電池(バッテリー)13、蓄電した直流電気を交流電気に変換するインバーター18及びプラント内の圧力及びポンプの駆動、停止を制御する制御盤11が設置されている。
【0032】
浄化する海水等は、分離装置19に導入される。分離装置19内に所定量の海水等を投入し、凝集剤を加えて撹拌する。撹拌を停止すると2層に分離する。上清層の水を水槽20に送る。水槽20内の水をポンプ21で自動切替濾過装置(前処理濾過装置)22に送る。自動切替濾過装置22は、2つの砂濾過装置を連結してなり、一方の砂濾過装置が詰まると、水は他方の砂濾過装置に流れるように構成され、その使用されていない砂濾過装置には洗浄水を流して不溶物を除去するように構成されている。
【0033】
自動切替濾過装置22を通った濾液を、超高圧ポンプ(プランジャーポンプ)23で5メガパルス以上の圧力(5〜6メガパルス)で第1のRO膜濾過部24を通過させる。第1のRO膜濾過部24を通過した濾液は清水槽25に貯水される。
【0034】
清水槽25中の濾液をポンプ26によって、1.2メガパルスの圧力で再度第2のRO膜濾過部(図示省略。第1のRO膜濾過部の下に位置する。)を通過させ飲料水貯水槽27に貯水する。濾過した濾液は、放射性ヨウ素、セシウム及びホウ素の90〜99%が除去される。飲料水として合格である。0.8メガパルス以上であれば同様の結果が得られるが、実用的な流量を得るには、1.2メガパルス以上の圧力とするのが良い。
【0035】
尚、図中28は、殺菌作用を有する塩素を飲料水貯水槽27に注入するタンクであり、14は、油圧シリンダーを駆動する油圧装置である。
【0036】
第1のRO膜濾過部は、海水の淡水化に使用される超高圧RO膜であり、ナトリウムイオンの全てを除去する能力を有するものであるが、放射性物質、ホウ素は、多少残存する。5メガパルス以上の圧力で濾過されるが、この圧力以下では濾過されないRO膜である。
【0037】
第2のRO膜濾過装置は、0.8メガパルス以上の圧力で濾過できるものであり、この圧力以下では濾過できないものである。0.8メガパルスより小さい圧力で濾過する(このようなRO膜を使用する)と、ホウ素及び放射線物質は、完全若しくは略完全には除去できない。第2のRO膜を通過させる圧力は、5メガパルスより小さい圧力とするのが、装置が簡略化されることから好ましく、0.8メガパルス以上、特に1.2メガパルス以上で5メガパルスより小さい圧力とするのが好ましい。
【0038】
0.8メガパルス以上の圧力で濾過するということは、0.8メガパルスで濾過できるRO膜を使用し、0.8メガパルスで濾過しても、それ以上の圧力で濾過しても良い意味である。例えば3メガパルスで濾過できるRO膜を使用し、3メガパルスの圧力で濾過しても、それ以上の圧力で濾過しても良いという意味である。
【0039】
大電流を必要とする装置として、海水中等の放射性物質を除去する浄水装置を一例として挙げて説明したが、15kw程度位までの大電流を必要とする装置であるなら、どのような装置であっても、本発明のコンテナに収容して好適に使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
放射性物質含む海水等を飲料に適する程度に浄水する浄水装置は、大電流を必要とするが、本発明によれば、クリーンなエネルギーで容易に大電流が得られるので、この種大電流を必要とする装置を収容するコンテナとして好適に使用できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に処理装置を収容するコンテナ本体と、該コンテナ本体の上端に設けたソーラーパネルとを具備し、該上端のソーラーパネルは、上端部とその両側部のソーラーパネルとを折曲し得るように連結し、該両側部のソーラーパネルは、下方に折曲され得るが、集熱時は、油圧シリンダーのシャフトに押されて水平に上昇し得るように構成したことを特徴とするソーラーパネルを具備したコンテナ。
【請求項2】
前記ソーラーパネルは、枠体内に固定されている請求項1記載のコンテナ。
【請求項3】
前記コンテナ本体の底部両側部に、油圧シリンダーのシリンダーチューブを、それぞれの油圧シリンダーのシリンダーシャフトが反対側の油圧シリンダー連結部を向くように連結し、それぞれのシリンダーシャフト先端を、該先端に位置し得るソーラーパネル裏面の枠体に連結した油圧シリンダーを、コンテナ本体の長さ方向に対向して複数組設ける請求項2記載のコンテナ。
【請求項4】
前記油圧シリンダーのシャフトと前記ソーラーパネルの枠体、及び前記油圧シリンダーのシリンダーチューブとコンテナ底部とは、回動し得るように連結する請求項2又は3記載のコンテナ。
【請求項5】
前記油圧シリンダーのシャフト先端に貫通孔を形成し、該貫通孔にロッドを嵌合し、該ロッド両端を前記ソーラーパネルの枠体に固定した連結部材に連結して、前記油圧シリンダーを回動し得るように連結する請求項4に記載のコンテナ。
【請求項6】
前記シリンダーチューブに貫通孔を形成した部材を連結し、該貫通孔にロッドを嵌合し、該ロッド両端を前記コンテナ本体底部に固定した連結部材に連結定して、前記油圧シリンダーを回動し得るように連結する請求項5に記載のコンテナ。
【請求項7】
前記コンテナ本体の上端部の大きさは、2.4m×(6m〜20m)である請求項1〜6のいずれかに記載のコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246021(P2012−246021A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119820(P2011−119820)
【出願日】平成23年5月29日(2011.5.29)
【出願人】(511080306)株式会社テクノシステム (5)
【Fターム(参考)】