説明

ソーラーモジュール用途における水分捕捉剤としての酸化カルシウムの使用

ソーラーモジュールはエッジシーラントを含む。シーラント組成物は不飽和反応性ポリオレフィンと、オレフィン系重合体と、シラン変性ポリオレフィンと、不活性充填剤と、酸化カルシウムと、老化防止剤を含有する。これらの成分は望ましい密封性、高い耐候性、所望のレオロジー、低導電率及び良好な吸水性を兼備するシーラントを製造するようにバランスよく配合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]
(関連特許出願とのクロスリファレンス)
本願は2009年10月14日付け米国仮特許出願第61/251,527号の優先権主張出願であり、2007年9月20日付けドイツ出願第DE/10 2007 045 104.2号の優先権主張出願である2008年9月22日付け国際出願第PCT/DE/2008/001564号の更に優先権主張出願である2010年3月19日付け同時係属米国特許出願第12.679,250号の一部継続出願である。上記各出願の内容全体を本願に援用する。
【0002】
[0002]
(技術分野)
本発明はソーラーモジュール用エッジシーラント組成物における水分捕捉剤としての酸化カルシウムの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]
光起電力ソーラーパネルないしモジュールは一般に光起電力デバイスを複数の層の間に積層及び/又は挿入したものである。大半の光起電力デバイスは剛性ウェーハ状結晶シリコンセルであるか、又はテルル化カドミウム(CdTe)、アモルファスシリコンもしくは二セレン化銅インジウム(CuInSe)を基板上に堆積させた薄層モジュールである。薄層ソーラーモジュールは剛性の場合と可撓性の場合がある。可撓性薄層セル及びモジュールは光活性層と他の必要な全物質を可撓性基板上に堆積することにより作製される。光起電力デバイスを相互間及び他のソーラーパネルないしモジュールと電気的に接続し、集積システムを形成する。
【0004】
[0004]
光起電力ソーラーパネルの効率は水分の侵入により低下する。環境からソーラーモジュールの内部の感湿性部分へのこの水分侵入を抑制する有効な1つの方法はエッジシーラントの使用である。これらのエッジシーラントは水分透過率(MVT)が低いという性質をもつ。
【0005】
[0005]
水分透過率を低下させる別の方法は乾燥剤の使用である。このような乾燥剤の1種はモレキュラーシーブである。モレキュラーシーブは吸着剤として使用される正確で均一な寸法の細孔を含む材料から構成される。水の分子は細孔を通過するのに十分に小さいため、モレキュラーシーブ材料の内側に吸着される。典型的なモレキュラーシーブは自重の22%までの水を吸着することができる。モレキュラーシーブの例としては、限定されないが、アルミノケイ酸塩鉱物、クレー、多孔質ガラス、微細孔性活性炭、ゼオライト、活性炭、又は水等の小分子を拡散させることが可能な開口構造をもつ合成化合物が挙げられる。
【0006】
[0006]
しかし、モレキュラーシーブによる水分吸収は可逆的である。即ち、モレキュラーシーブの内側に保持された水分は放出される可能性がある。水と反応する他の化合物又は成分を添加することにより水分をより良好に捕捉しようとしたモレキュラーシーブもある。
【0007】
[0007]
他の材料を乾燥剤として使用することもできる。これらの材料としては、シリカゲル、硫酸カルシウム(DrieriteTMとして販売されているもの)、及び塩化カルシウムが挙げられる。これらの乾燥剤は水と反応するが、可逆的である。従って、吸収、吸着又は反応前に水分の一部が放出される可能性がある。
【0008】
[0008]
環境から水分を除去することができる別種の材料としては、水分捕捉剤が挙げられる。標準的な乾燥剤と異なり、水分捕捉剤は製品がその通常の使用期間中に暴露される条件下で不可逆的に水と反応する。しかし、水分捕捉剤は腐食性の苛性化合物である。従って、水分捕捉剤は化合物の苛性によりソーラーモジュール用途では使用されていない。そこで、水を放出せず、ソーラーモジュールの使用期間にわたってシーラントを腐食せず、乾燥剤よりも改善された吸水性を実現する水分捕捉剤を含有するソーラーモジュール用シーラントが当分野で必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0009]
本発明はエッジシールを備える光起電力ソーラーモジュールを提供する。エッジシーラントはモレキュラーシーブ等の乾燥剤の代わりに水分捕捉剤として酸化カルシウムを含有する。エッジシーラント内の酸化カルシウムは従来の乾燥剤よりも吸水性が改善されている。更に、酸化カルシウムは経時的にエッジシーラントを腐食せず、又はその効力を低下させない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]
本発明の1例において、シーラント組成物はオレフィン系重合体と、シラン変性ポリオレフィンと、少なくとも1種の充填剤と、カーボンブラックと、組成物全体の約2.5重量%を上回る量で配合された酸化カルシウムと、少なくとも1種の老化防止剤を含有する。
【0011】
[0011]
本発明の別の例において、シーラント組成物は更に組成物全体の約2.5重量%を上回る量のモレキュラーシーブを含有する。
【0012】
[0012]
本発明の別の例において、シーラント組成物はシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に5時間を上回る浸水時間と40g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す。
【0013】
[0013]
本発明の別の例において、シーラント組成物はシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に10時間を上回る浸水時間と30g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す。
【0014】
[0014]
本発明の別の例では、酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが約10重量%を上回る量で配合されており、シーラント組成物はシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に5時間を上回る浸水時間と40g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す。
【0015】
[0015]
本発明の別の例では、酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが約10重量%を上回る量で配合されており、シーラント組成物はシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に10時間を上回る浸水時間と30g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す。
【0016】
[0016]
本発明の別の例において、シーラント組成物は更にクレー、硫酸カルシウム及びシリカゲルの少なくとも1種を含有する。シーラント組成物はシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に5時間を上回る浸水時間と40g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す。
【0017】
[0017]
本発明の別の例において、シーラント組成物は更にクレー、硫酸カルシウム及びシリカゲルの少なくとも1種を含有する。酸化カルシウムとモレキュラーシーブとシーラント組成物の組合せはシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に10時間を上回る浸水時間と30g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す。
【0018】
[0018]
本発明の更に別の例では、酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが組成物全体の約10〜約40重量%の量で配合されている。
【0019】
[0019]
本発明の更に別の例では、酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが組成物全体の約20〜約40重量%の量で配合されている。
【0020】
[0020]
本発明の更に別の例では、酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが組成物全体の約25〜約35重量%の量で配合されている。
【0021】
[0021]
本発明の更に別の例において、オレフィン系重合体は組成物全体の約30〜約60重量%の量で配合されており、シラン変性ポリオレフィンは組成物全体の約10〜約25重量%の量で配合されており、カーボンブラックは組成物全体の約2〜約20重量%の量で配合されており、充填剤は組成物全体の約20〜約60重量%の量で配合されており、酸化カルシウムは組成物全体の約2.5〜約25重量%の量で配合されており、老化防止剤は組成物全体の0〜約2重量%の量で配合されている。
【0022】
[0022]
本発明の更に別の例において、オレフィン系重合体は組成物全体の約20〜約40重量%の量で配合されており、シラン変性ポリオレフィンは組成物全体の約10〜約20重量%の量で配合されており、カーボンブラックと充填剤の組合せが組成物全体の約30〜約40重量%の量で配合されており、酸化カルシウムは組成物全体の約10〜約30重量%の量で配合されており、老化防止剤は組成物全体の0〜約2重量%の量で配合されている。
【0023】
[0023]
本発明の更に別の例において、シーラント組成物は更に組成物全体の約2.5〜約25重量%の量で配合されたモレキュラーシーブを含有する。
【0024】
[0024]
本発明の更に別の例において、シーラント組成物はシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に約15g/(m・日)未満の定常状態水蒸気透過率を示す。
【0025】
[0025]
本発明の更に別の例において、シーラントは酸化カルシウムと水の反応においてシーラントの膨潤を所定量までに保つようにバランスの取れた性質を備える。
【0026】
[0026]
本発明の更に別の例において、酸化カルシウムは実質的にシーラントの他の成分と反応しないか又はこれらの成分を腐食しない。
【0027】
[0027]
本発明の更に別の例において、オレフィン系重合体はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ブチルゴム(ポリイソブテン・イソプレン)、スチレンブロック共重合体及びスチレンブロック共重合体の変性物の少なくとも1種を含み、オレフィン系重合体は100〜700,000Daの数平均分子量をもつ。シラン変性ポリオレフィンは非晶質ポリαオレフィン、シラングラフトPE、湿気硬化触媒、アルコキシシラン及びアミノシランの少なくとも1種を含む。充填剤は重質チョーク、軽質チョーク、ケイ酸塩、酸化ケイ素,CaCO、Ca(OH)及び二酸化チタンの少なくとも1種を含む。ケイ酸塩はタルク、カオリン、マイカ、酸化ケイ素、シリカ及びケイ酸カルシウム又はケイ酸マグネシウムを含む群から選択される。老化防止剤はヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、チオエーテル、メルカプト化合物、亜リン酸エステル、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン及びオゾン劣化防止剤の少なくとも1種を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】[0028]本発明の原理に従うボーダーシール組成物を有するソーラーモジュールの1態様の平面図である。
【図2】[0029]本発明に従うボーダーシール組成物を有するソーラーモジュールの1態様の一部の横断面図である。
【図3】[0030]20重量%の酸化カルシウムを含有するシーラント組成物の水蒸気透過率を経時的に示すグラフである。
【図4】[0031]20重量%の3A型モレキュラーシーブを含有するシーラント組成物の水蒸気透過率を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[0032]
以下の記載は本質的に例示に過ぎず、本発明、適用又は用途を制限するものではない。
[0033]
図1及び2において、本発明の原理に従うシーラント組成物を利用した典型的なソーラーモジュール全体を参照番号10で示す。ソーラーモジュール10は本発明の範囲から逸脱せずに種々の形態を取ることができ、一般に第1の基板14と第2の基板16により画成されるチャンバー13の内側に配置された少なくとも1個の光起電力セル12を含む。しかし、ソーラーモジュール10は本発明の範囲から逸脱せずに熱電ソーラーモジュール、ハイブリッドソーラーモジュール、又は他の集光アセンブリでもよい。複数の光起電力セル12を図示するが、当然のことながら、任意数の光起電力セル12を利用することができる。
【0030】
[0034]
光起電力セル12は光起電力セル12に入射する太陽光から電流を発生するように動作可能である。従って、光起電力セル12は本発明の範囲から逸脱せずに種々の形態を取ることができる。例えば、光起電力セル12はテルル化カドミウム(CdTe)、アモルファスシリコン、又は二セレン化銅インジウム(CuInSe)の層を含む薄膜セルとすることができる。あるいは、光起電力セル12は結晶シリコンウェーハをラミネートフィルムに埋込んだものでもよいし、ガリウムヒ素をゲルマニウム又は別の基板に堆積させたものでもよい。利用することができる他の型の光起電力デバイス12としては、共役重合体と色素増感金属酸化物(液体金属酸化物及び固体金属酸化物を含む)を併用した有機半導体セルが挙げられる。光起電力デバイス12は剛性でも可撓性でもよい。光起電力セル12は直列又は並列又はその組合せで接続される。光起電力デバイス12により発生された電流はバスバー又は他の導電材料もしくは層を通ってソーラーモジュール10の外部に伸びるワイヤー又はリード線15に送られる。リード線15はソーラーモジュール10により発生された電流を電力回路に分配するために接続箱17に通じている。
【0031】
[0035]
第1の基板14ないしフロントパネルは太陽光の波長を透過させることができるように動作可能な材料から形成される。例えば、第1の基板14はガラス又はポリフッ化ビニル等のプラスチックフィルムである。第2の基板16ないしバックパネルはソーラーモジュール10に付加的な強度を提供するように選択される。例えば、第2の基板16はフッ化エチレン・プロピレン共重合体(FEP)、ポリ(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)及びこれらと他の重合体材料の組合せ等のプラスチックである。
【0032】
[0036]
光起電力セル12は、好ましくは架橋性エチレン酢酸ビニル(EVA)であるラミネート層19により封止されている。しかし、当然のことながら、本発明の範囲から逸脱せずに他のラミネート又は熱可塑性封止材も利用することができる。ラミネート層19は光起電力デバイス12を汚染及び環境から保護するように光起電力デバイス12を部分的に封止するために使用される。
【0033】
[0037]
第1の基板14と第2の基板16の間でソーラーモジュール10の周縁部の近くにボーダーないしエッジシール18を配置する。ボーダーシール18は種々の幅にすることができる。更に、第2のボーダーシール(図示せず)も加えてもよい。第2のボーダーシールは例えば、シリコーン、MS重合体、シラン変性ポリウレタン、ブチル、又はポリサルファイドから構成することができる。ボーダーシール18はラミネート層19と光起電力デバイス12を密封するように機能する。ボーダーシール18は長期紫外線暴露を含む外部環境暴露に耐えるために十分な耐候性と、低い水蒸気透過率(MVT)と、低導電率を兼備する必要がある。ボーダーシール20は高い耐候性と低い導電率及びMVTという独自の特徴をもつと共に、ソーラーモジュール10の通常の動作条件下で永続的に水を吸収してこれと反応することが可能なシーラント組成物から構成される。
【0034】
[0038]
ボーダーシール18のシーラント組成物は不飽和反応性ポリオレフィンと、オレフィン系重合体と、シラン変性ポリオレフィンと、不活性充填剤と、酸化カルシウムと、老化防止剤を含有する。これらの成分は望ましい密封性、高い耐候性、所望のレオロジー、低導電率及び良好な吸水性を兼備するシーラントを製造するようにバランスよく配合される。
【0035】
[0039]
酸化カルシウムは式:
(1)CaO+HO → Ca(OH)
に従って水と反応し、水酸化カルシウムを形成する。
【0036】
[0040]
512℃まで加熱すると、水酸化カルシウムと平衡状態にある水の分圧は101kPaに達し、酸化カルシウムと水に分解する。ソーラーモジュールはこのような高温条件を受けないので、この逆反応が確認できる程度まで生じることはない。
【0037】
[0041]
酸化カルシウムは他の材料よりも非常に低い相対湿度で著しく多量の水蒸気を吸着する。酸化カルシウムは低い臨界相対湿度が必要な場合と、高濃度の水蒸気が存在する場合に最も有効である。酸化カルシウムは環境から水分を非常にゆっくりと取り込み、多くの場合にはその最大容量に達するまでに数日間を要する。更に、酸化カルシウムは室温・湿度での吸水容量が低い。酸化カルシウムは水分を吸着するにつれて膨潤する。従って、シーラント組成物は使用中の膨潤を考慮してバランスの取れた性質を備える必要がある。例えば、組成物中の酸化カルシウムの量を調節することにより性質のバランスを取る。CRC Handbook of Chemistry and Physics,第60版によると、酸化カルシウムの密度は3.25〜3.38g/mLであり、水酸化カルシウムの密度は2.24g/mLである。従って、理論的には、エッジシーラント組成物に配合することができる酸化カルシウムの量には限界がある。しかし、試験した配合範囲では何の問題も認められなかった。
【0038】
[0042]
中央粒径が約3ミクロンの酸化カルシウムを使用すると、通例通りの粒径の大きい他の乾燥剤に比較して自由体積が減る。その結果、図3及び図4に示すように、消耗後(図3及び4では約150時間後)の酸化カルシウムの定常状態水蒸気透過率は中央粒径の大きい他の消耗後の乾燥剤及びモレキュラーシーブを含有する組成物よりも低く、約14g/m・日となる。図3及び4は異なる乾燥剤を含有する同様の組成物の経時的水蒸気透過率試験結果を示す。図3は20重量%の酸化カルシウムを含有するシーラント組成物からの結果を示し、図4は20重量%の3A型モレキュラーシーブを含有するシーラント組成物を示す。試験はMocon社製モデルpermatran−w 3/33で85℃、100%RHにて30ミルサンプルを使用して実施した。サンプルをN2パージ下で90時間予備乾燥後に水を加えてMVTRを試験した。上記のように、酸化カルシウムを含有する組成物はモレキュラーシーブを含有する組成物に比較して低い定常状態MVTRを示すが、その少なくとも一因は酸化カルシウムの粒径が小さいためである。
【0039】
[0043]
定常状態MVTRに加え、図3及び4はモレキュラーシーブと対比して酸化カルシウムの使用に伴う浸水時間を示す。浸水時間は初期90時間の予備乾燥段階の完了後に定常状態MVTR値の5%に達するまでにかかる時間の量である。図3に示すように、酸化カルシウムを含有する組成物の浸水時間は約9時間であり、図4に示すモレキュラーシーブを含有する組成物の浸水時間は約20時間である。
【0040】
[0044]
更に、水1リットルに酸化カルシウム約3.1kgに加えると、水酸化カルシウムと3.54MJのエネルギーが生じる。酸化カルシウムと水の吸熱反応により発生する熱のレベルは酸化カルシウムをエッジシール中で水分捕捉剤として使用する妨げとなる。しかし、反応は非常にゆっくりと生じるので、発熱はエッジシールでの使用中に僅かであり、従って、酸化カルシウムは満足なエッジシール水分捕捉剤である。
【0041】
[0045]
酸化カルシウムは腐食性であり、理論的にはエッジシール内とソーラーモジュール内の他の成分と反応することができる。しかし、本発明の組成物を使用したソーラーモジュールにおけるエッジシール内に腐食作用は現れない。
【0042】
[0046]
更に、エッジシーラントの水分捕捉能を更に強化するために、酸化カルシウムをモレキュラーシーブと併用することもできる。
【0043】
[0047]
本発明を更に理解し易くするために、以下、実施例を参照するが、以下の実施例は本発明を例証することを目的とし、その範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
【0045】
【表1】


[実施例2]
【0046】
【表2】


[実施例3]
【0047】
【表3】


[実施例4]
【0048】
【表4】


[実施例5]
【0049】
【表5】


[実施例6]
【0050】
【表6】


[実施例7]
【0051】
【表7】


[0048]
オレフィン系重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ブチルゴム(ポリイソブテン・イソプレン)、スチレンブロック共重合体及びスチレンブロック共重合体の変性物が挙げられる。オレフィン系重合体は100〜700,000Daの数平均分子量をもち、好ましくは100〜300,000Daの数平均分子量をもつ。
【0052】
[0049]
シランとしては、例えば、DFDA−5451NT(Midland,Mlに所在のDow Chemical社製シラングラフトPE)、DFDA−5481NT(Midland,Mlに所在のDow Chemical社製湿気硬化触媒)、非晶質ポリαオレフィン(限定されないが、例えばMarl,ドイツに所在のEvonik Degussa GmbH製品であるVESTOPLAST 206及びVESTOPLAST 2412)、アルコキシシラン及びアミノシランが挙げられる。
【0053】
[0050]
不活性充填剤としては、例えば、軽質及び重質チョーク、ケイ酸塩、酸化ケイ素、カーボンブラック、CaCO、Ca(OH)並びに二酸化チタンが挙げられる。ケイ酸塩としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、酸化ケイ素、シリカ、及びケイ酸カルシウム又はケイ酸マグネシウムが挙げられる。老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、チオエーテル、メルカプト化合物、亜リン酸エステル、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン及びオゾン劣化防止剤が挙げられる。
【0054】
[0051]
以上の本発明の説明は本質的に例示に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない変形も本発明の範囲に含むものとする。このような変形は本発明の趣旨及び範囲から逸脱するとみなすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系重合体と;
シラン変性ポリオレフィンと;
少なくとも1種の充填剤と;
カーボンブラックと;
組成物全体の約2.5重量%を上回る量で配合された酸化カルシウムと;
少なくとも1種の老化防止剤
を含有するシーラント組成物。
【請求項2】
更に組成物全体の約2.5重量%を上回る量で配合されたモレキュラーシーブを含有する請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項3】
シーラント組成物がシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に5時間を上回る浸水時間と40g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す請求項2に記載のシーラント組成物。
【請求項4】
シーラント組成物がシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に10時間を上回る浸水時間と30g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す請求項2に記載のシーラント組成物。
【請求項5】
酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが約10重量%を上回る量で配合されており、シーラント組成物がシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に5時間を上回る浸水時間と40g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す請求項2に記載のシーラント組成物。
【請求項6】
酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが約10重量%を上回る量で配合されており、シーラント組成物がシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に10時間を上回る浸水時間と30g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す請求項2に記載のシーラント組成物。
【請求項7】
更にクレー、硫酸カルシウム及びシリカゲルの少なくとも1種を含有しており、シーラント組成物がシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に5時間を上回る浸水時間と40g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す請求項2に記載のシーラント組成物。
【請求項8】
更にクレー、硫酸カルシウム及びシリカゲルの少なくとも1種を含有しており、酸化カルシウムとモレキュラーシーブとシーラント組成物の組合せがシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に10時間を上回る浸水時間と30g.m/日未満の定常状態水蒸気透過率を示す請求項2に記載のシーラント組成物。
【請求項9】
酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが組成物全体の約10〜約40重量%の量で配合されている請求項2に記載のシーラント組成物。
【請求項10】
酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが組成物全体の約20〜約40重量%の量で配合されている請求項2に記載のシーラント組成物。
【請求項11】
酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが組成物全体の約25〜約35重量%の量で配合されている請求項2に記載のシーラント組成物。
【請求項12】
オレフィン系重合体が組成物全体の約30〜約60重量%の量で配合されており、シラン変性ポリオレフィンが組成物全体の約10〜約25重量%の量で配合されており、カーボンブラックが組成物全体の約2〜約20重量%の量で配合されており、充填剤が組成物全体の約20〜約60重量%の量で配合されており、酸化カルシウムが組成物全体の約2.5〜約25重量%の量で配合されており、老化防止剤が組成物全体の0〜約2重量%の量で配合されている請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項13】
オレフィン系重合体が組成物全体の約20〜約40重量%の量で配合されており、シラン変性ポリオレフィンが組成物全体の約10〜約20重量%の量で配合されており、カーボンブラックと充填剤の組合せが組成物全体の約30〜約40重量%の量で配合されており、酸化カルシウムが組成物全体の約10〜約30重量%の量で配合されており、老化防止剤が組成物全体の0〜約2重量%の量で配合されている請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項14】
更に組成物全体の約2.5〜約25重量%の量で配合されたモレキュラーシーブを含有する請求項13に記載のシーラント組成物。
【請求項15】
シーラント組成物がシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に約15g/(m・日)未満の定常状態水蒸気透過率を示す請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項16】
シーラント組成物が酸化カルシウムと水の反応においてシーラントの膨潤を所定量までに保つようにバランスの取れた性質を備える請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項17】
酸化カルシウムが実質的にシーラントの他の成分と反応しないか又はこれらの成分を腐食しない請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項18】
オレフィン系重合体がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ブチルゴム(ポリイソブテン・イソプレン)、スチレンブロック共重合体及びスチレンブロック共重合体の変性物の少なくとも1種を含み、オレフィン系重合体が100〜700,000Daの数平均分子量をもち、シラン変性ポリオレフィンが非晶質ポリαオレフィン、シラングラフトPE、湿気硬化触媒、アルコキシシラン及びアミノシランの少なくとも1種を含み、充填剤が重質チョーク、軽質チョーク、ケイ酸塩、酸化ケイ素、CaCO、Ca(OH)及び二酸化チタンの少なくとも1種を含み、ケイ酸塩がタルク、カオリン、マイカ、酸化ケイ素、シリカ及びケイ酸カルシウム又はケイ酸マグネシウムを含む群から選択され、老化防止剤がヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、チオエーテル、メルカプト化合物、亜リン酸エステル、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン及びオゾン劣化防止剤の少なくとも1種を含む請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項19】
第1の基板と;
第2の基板と;
第1の基板と第2の基板の間に配置された少なくとも1個の光起電力セルと;
少なくとも1個の光起電力セルに水蒸気を到達させないために水蒸気バリアを形成するように第1の基板及び第2の基板と接触するシーラント
を含むソーラーモジュールであって、前記シーラントが、
オレフィン系重合体と;
シラン変性ポリオレフィンと;
少なくとも1種の充填剤と;
カーボンブラックと;
組成物全体の約2.5重量%を上回る量で配合された酸化カルシウムと;
少なくとも1種の老化防止剤
を含有する前記ソーラーモジュール。
【請求項20】
シーラント組成物が組成物全体の約2.5重量%を上回る量で配合されたモレキュラーシーブを含有する請求項19に記載のソーラーモジュール。
【請求項21】
酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが組成物全体の約10〜約40重量%の量で配合されている請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項22】
酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが組成物全体の約20〜約40重量%の量で配合されている請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項23】
酸化カルシウムとモレキュラーシーブの組合せが組成物全体の約25〜約35重量%の量で配合されている請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項24】
オレフィン系重合体が組成物全体の約30〜約60重量%の量で配合されており、シラン変性ポリオレフィンが組成物全体の約10〜約25重量%の量で配合されており、カーボンブラックが組成物全体の約2〜約20重量%の量で配合されており、充填剤が組成物全体の約20〜約60重量%の量で配合されており、酸化カルシウムが組成物全体の約2.5〜約25重量%の量で配合されており、老化防止剤が組成物全体の約2重量%までの量で配合されている請求項19に記載のソーラーモジュール。
【請求項25】
オレフィン系重合体が組成物全体の約30〜約40重量%の量で配合されており、シラン変性ポリオレフィンが組成物全体の約10〜約20重量%の量で配合されており、カーボンブラックと充填剤の組合せが組成物全体の約30〜約40重量%の量で配合されており、酸化カルシウムが組成物全体の約10〜約30重量%の量で配合されており、老化防止剤が組成物全体の約2重量%までの量で配合されている請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項26】
シーラントが組成物全体の約2.5〜約25重量%の量で配合されたモレキュラーシーブを含有する請求項25に記載のソーラーモジュール。
【請求項27】
シーラント組成物がシーラント組成物の厚さ0.030インチのサンプルを85℃及び相対湿度100%で試験した場合に約15g/(m・日)未満の定常状態水蒸気透過率を示す請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項28】
シーラントが酸化カルシウムと水の反応においてシーラントの膨潤を所定量までに保つようにバランスの取れた性質を備える請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項29】
酸化カルシウムが実質的にシーラント又は第1の基板及び第2の基板と反応しないか又はこれらを腐食しない請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項30】
オレフィン系重合体がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ブチルゴム(ポリイソブテン・イソプレン)、スチレンブロック共重合体及びスチレンブロック共重合体の変性物の少なくとも1種を含み、オレフィン系重合体が100〜700,000Daの数平均分子量をもつ請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項31】
シラン変性ポリオレフィンが非晶質ポリαオレフィン、シラングラフトPE、湿気硬化触媒、アルコキシシラン及びアミノシランの少なくとも1種を含む請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項32】
充填剤が重質チョーク、軽質チョーク、ケイ酸塩、酸化ケイ素、CaCO、Ca(OH)及び二酸化チタンの少なくとも1種を含み、ケイ酸塩がタルク、カオリン、マイカ、酸化ケイ素、シリカ及びケイ酸カルシウム又はケイ酸マグネシウムを含む群から選択される請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項33】
老化防止剤がヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、チオエーテル、メルカプト化合物、亜リン酸エステル、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン及びオゾン劣化防止剤の少なくとも1種を含む請求項20に記載のソーラーモジュール。
【請求項34】
第1の基板と第2の基板を有するソーラーモジュール用のシーリングコンパウンドであって、前記シーリングコンパウンドが第1の基板と第2の基板の間に配置されており、前記シーリングコンパウンドが、
組成物全体の約30重量%を上回る量のオレフィン系重合体と;
組成物全体の35重量%未満の量のシラン変性APAO及びシラン変性重合体の少なくとも1種と;
充填剤と;
約60nm未満の一次粒径をもつカーボンブラックと;
組成物全体の約2.5重量%を上回る量で配合された酸化カルシウムと;
組成物全体の約2.5重量%を上回る量で配合されたモレキュラーシーブと;
老化防止剤
を含有する前記シーリングコンパウンド。
【請求項35】
オレフィン系重合体が組成物全体の約30〜約60重量%の量のポリイソブチレンを含み、シラン変性APAO及びシラン変性ポリイソブチレンの少なくとも1種が組成物全体の約2〜約35重量%の量で配合されており、充填剤が組成物全体の約3〜約47重量%の量で配合されており、モレキュラーシーブと酸化カルシウムの組合せが組成物全体の約10〜約40重量%の量で配合されており、老化防止剤が組成物全体の0.1〜約3重量%の量で配合されている請求項34に記載のシーリングコンパウンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−509453(P2013−509453A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534369(P2012−534369)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/052726
【国際公開番号】WO2011/068597
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(594093600)アドコ・プロダクツ・インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】ADCO PRODUCTS INC.
【Fターム(参考)】