説明

ソーワイヤー

【課題】切削速度に優れたソーワイヤーを提供する。
【解決手段】互いに逆向きに突出する一対の頂部2,3からなる波形のくせが単一の平面上に連続するように、2次元にくせ付けられたソーワイヤー1によって上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ガラスや半導体、超硬合金等の硬質材料を切断するためのワイヤーソーに用いられるワイヤーに関し、特に2次元の波型くせを有するソーワイヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、硬質ガラスや半導体、超硬合金等の硬質材料のスライス加工にワイヤーソーが用いられている(例えば特許文献1参照)。図7はワイヤーソーを模式的に示したものである。
ワイヤーソー100はガイド溝を有した少なくとも二つのガイドローラー101を有し、ソーワイヤー102がガイド溝に沿ってガイドローラー101に巻回され掛け渡されている。ワークを切断する際は、ガイドローラー101によってソーワイヤー102に張力を与え、ソーワイヤー102とワークとの間にダイヤモンド砥粒やアルミナ砥粒といった砥粒を含む切削油を供給しながらソーワイヤー102とワークとを近づけるように相対移動させる。このとき、ソーワイヤー102は切削油中に含まれる砥粒を巻き込みながらワークの被切削面を摺動し、ソーワイヤー102及び砥粒がワークの被切削面に圧接されてワークが切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−57666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは更にワイヤーソーの切削速度を向上させるために、ソーワイヤーの形状を種々検討した。
まず、ソーワイヤーにくせ付けがされていない直線状のソーワイヤーでは砥粒の巻き込みが起こりにくく、また、ソーワイヤーが砥粒をワークに強く押し付けることができないため、切削速度を向上できない。このため、特許文献1は3次元のくせを有するソーワイヤーを提案している。しかし、このような3次元のくせを有するワイヤーは、くせの頂部がワークの被切削面方向に突出する他に、ワークの被切削面以外の方向にも突出している。このため、くせの頂部をワークの被切削面に集中的に接触させることができないので、切削速度に向上の余地があることを本発明者らは見出した。
【0005】
そこで本発明は、切削速度に優れたソーワイヤーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るソーワイヤーによれば、
2次元にくせ付けされたソーワイヤーが提供される。
【0007】
また、上記ソーワイヤーにおいて、
前記ソーワイヤーは波形にくせ付けされており、
前記ソーワイヤーの線径d、前記波形の波高さhが、0.20≦h/d≦0.35を満たすことが好ましい。
【0008】
また、上記ソーワイヤーにおいて、
前記ソーワイヤーは波形にくせ付けされており、
前記ソーワイヤーの線径d、前記波形のピッチpが、10≦p/d≦14を満たすことが好ましい。
【0009】
また、上記ソーワイヤーにおいて、
前記ソーワイヤーにはくせ付け前にタフニング処理が施されていることが好ましい。
【0010】
また、上記ソーワイヤーにおいて、
前記ソーワイヤーにはくせ付け前に低温熱処理が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るソーワイヤーによれば、2次元にくせ付けられたソーワイヤーのくせの頂部がワークの被切削面に砥粒を集中的に押圧することができるため、切削速度に優れたソーワイヤーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るソーワイヤーを示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る2次元にくせ付けられたソーワイヤーを用いてワークを切断する様子を示す側断面図である。
【図3】比較例に係る3次元にくせ付けられたソーワイヤーを用いてワークを切断する様子を示す側断面図である。
【図4】本実施形態に係る2次元の波形にくせ付けられたソーワイヤーを用いてワークを切断する様子を示す上面図である。
【図5】比較例に係る3次元にくせ付けられたソーワイヤーを用いてワークWを切断する様子を示す上面図である。
【図6】本実施形態に係る2次元の波形にくせ付けられたソーワイヤーの製造方法の説明図である。
【図7】ワイヤーソーの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るソーワイヤーの実施形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は本実施形態に係るソーワイヤー1を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態に係るソーワイヤー1には、互いに逆向きに突出する一対の頂部2,3からなる波形のくせが単一の平面上(図1の紙面方向)に連続するように、2次元にくせ付けられている。
【0014】
また、以下の説明では、ソーワイヤー1の線径をd、波形のくせの波高さ(隣り合う頂部2,3間の高さ)をh、隣り合う頂部2,3の間隔(ピッチ)をp/2、波形のくせが形成される平面(くせの頂部の突出方向を含む平面)をくせ付け面と定義する。また、図1では正弦波の波形の例を図示したが、三角波等、他の波形形状であってもよいことはもちろんである。
【0015】
<切削速度>
以下図2,3を参照して、本実施形態に係る2次元にくせ付けられたソーワイヤー1が、比較例に係る3次元にくせ付けられたソーワイヤー11よりも切削速度に優れていることを説明する。図2は本実施形態に係る2次元にくせ付けられたソーワイヤー1を用いてワークWを切断する様子を示す側断面図であり、図3は比較例に係る3次元にくせ付けられたソーワイヤー11を用いてワークWを切断する様子を示す側断面図である。
【0016】
本実施形態に係る2次元の波形にくせ付けられたソーワイヤー1は、ソーワイヤー1のくせ付け面と切削方向が一致するようにガイドローラーのガイド溝に収められた状態でガイドローラーに掛け渡され、切断加工が行われる。したがって、図2に示す2次元の波形にくせ付けられたソーワイヤー1において、ワークWの被切削面w1側に突出する頂部2,2の間隔はpとなる。
【0017】
一方、図3に示す比較例に係る3次元のジグザグ状にくせ付けられたソーワイヤー11は、図2に示す2次元にくせ付けられたソーワイヤー1と同様の曲率のくせが形成されるように、波高さがh、隣り合う頂部12〜15の間隔がp/2となるようにくせ付けられている。また、隣り合う頂部12〜15が径方向に90度回転するようにひねられて3次元にくせ付けられている。このような3次元にくせ付けられたソーワイヤー11において、ワークWの被切削面w1方向に突出する頂部12の間には常に3つの頂部13,14,15が存在しているので、ワークWの被切削面w1方向に突出する頂部12,12間の間隔は2pとなる。
【0018】
これらのソーワイヤー1,11を用いてワークWを切断する際には、ワークWの被切削面w1とソーワイヤー1,11との間隔が狭められた頂部2,12近傍に位置された砥粒gがこの頂部2,12によってワークWの被切削面w1に押し付けられ、被切削面w1が研削される。したがって、ワークWの被切削面w1側に多くの頂部2,12が突出していると、多くの砥粒gが被切削面w1に押し付けられることになり、切断速度が向上する。
【0019】
図2,3を比較して明らかなように、本実施形態に係る2次元にくせ付けられたソーワイヤー1の被切削面w1側に突出する頂部2の間隔は、3次元にくせ付けられたソーワイヤー11の当該間隔よりも狭く、ワークWの被切削面w1側に多くの頂部2が突出することになる。したがって、より多くの砥粒gが被切削面w1に押し付けられるので、2次元にくせ付けられたソーワイヤー1は切断速度に優れている。
【0020】
なお、図3の3次元にくせ付けられたソーワイヤーでは隣り合う頂部12,13,14,15が互いに90度回転している例を示したが、くせの回転角度が大きくなるほどソーワイヤー11の被切削面w1側に突出する頂部12の間隔が大きくなるので、2次元にくせ付けられたソーワイヤー1の方がワークWの被切削面w1側に突出する頂部が多く、切断速度に優れている。
【0021】
また、上述の比較例とは別のスパイラル状の3次元にくせ付けられたソーワイヤーにおいても、単位長さ当たりの被切削面w1側に突出する頂部12の数が2次元にくせ付けられたソーワイヤー1よりも少ないので、2次元にくせ付けられたソーワイヤー1の方が切断速度に優れている。
【0022】
<切り代>
更に、図4,5を用いて、本実施形態に係る2次元にくせ付けられたソーワイヤー1は3次元にくせ付けられたソーワイヤー11よりも切り代が小さくワークWを有効に利用できること、及び加工面w2の寸法精度が良いことを説明する。
【0023】
図4は本実施形態に係る2次元の波形にくせ付けられたソーワイヤー1を用いてワークWを切断する様子を示す上面図であり、図5は比較例に係る図3に示した3次元にくせ付けられたソーワイヤー11を用いてワークWを切断する様子を示す上面図である。
【0024】
図4に示すように、本実施形態に係る2次元にくせ付けられたソーワイヤー1を用いてワークWを切断する際は、ソーワイヤー1のくせ付け面が切断方向と一致(換言すれば、くせ付け面がワークWの被切削面w1と直交)している。したがって、一方に突出した頂部2は被切削面w1に正対し被切削面w1に砥粒gを押し付け、他方に突出した頂部3は被切削面w1とは反対側に向いてワークに砥粒を押し付けないので、ワークWの被切削面w1のみが研削される。
【0025】
一方、図5に示すように、比較例に係る図3に示す3次元にくせ付けられたソーワイヤー11を用いてワークWを切断する際は、くせの頂部が、ワークWの被切削面w1の他に、ワークWの被切削面w1に垂直な加工面w2側に突出する頂部13,15が存在する。したがって、これらワークWの加工面w2側に突出する頂部13,15が加工面w2に砥粒gを押し付けて研削するので、加工面w2が研削される分、切り代Cが大きくなる。この切り代Cは、ソーワイヤー11のくせ付け高さhが大きくなるほど顕著になる。
【0026】
このように、2次元にくせ付けられたソーワイヤー1は被切削面w1に集中的に砥粒gを押し付けるので、加工面w2にも砥粒gを押し付ける3次元にくせ付けられたソーワイヤー11よりも切断時の切り代Cが小さく、ワークWに形成される切り代をソーワイヤー1の線径とほぼ同程度とすることができる。
【0027】
また、ガイドローラーによってソーワイヤー1,11は被切削w1面側に押し付け力が付与されているため、図5に示すような3次元にくせ付けられたソーワイヤー11は、ワークWの加工面w2側に突出した頂部13,15がワークWの加工面w2に正対する方向に砥粒gを押し付けるとは限らない。この時には砥粒gがソーワイヤー11と加工面w2の間から離脱する虞があり、砥粒gを加工面w2に一様に押し付けることができない。その結果、加工面w2は一様に研削されず、加工面w2の寸法精度が劣化することがある。
【0028】
しかし、図4に示すような本実施形態に係る2次元にくせ付けられたソーワイヤー1によれば、互いに逆向きに突出する頂部2,3のいずれもワークWの加工面w2に砥粒gを積極的に押し付けないので、加工面w2の精度が劣化することが生じにくい。
【0029】
<製造方法>
次に、上述の2次元の波形にくせ付けられたソーワイヤー1の製造方法を説明する。まず、図6に示すように、外周面に所定間隔lを有する複数のくせ付けピン21が設けられた一対のくせ付けローラー20を用意し、この一対のくせ付けローラー20を中心間の間隔Lを隔てて配置し、ピアノ線等の金属製の加工前ワイヤー30を一対のくせ付けローラー20の間に通すことで2次元にくせ付けられたソーワイヤー1が得られる。くせ付けピッチpはくせ付けピン21の間隔lを変更することにより調整することができ、くせ付け高さhは一対のくせ付けローラー20の中心間の間隔Lを変更することにより調整することができる。
【0030】
なお、くせ付けローラー20に通す前の加工前ワイヤー30は通常、巻回されて保存されているので、くせ付けローラー20に通す前に加工前ワイヤー30の真直度を向上させるために前処理を施すことが好ましい。前処理としては、図6に示すように、くせ付けローラー20の上流側に複数の真直ローラー40を千鳥状に配置し、これら複数の真直ローラー40間に加工前ワイヤー30を通すタフニング処理が挙げられる。加工前ワイヤー30に曲げ応力及び引張応力を繰り返し作用させることにより、その真直度を向上させることができる。
【0031】
なお、タフニング処理の他に、例えば250〜350℃に設定した炉中を3〜10秒通過させる等、比較的低温で熱処理を行う低温熱処理を加工前ワイヤー30に施しても良い。低温熱処理により加工前ワイヤー30中に残存していた残留歪みを除去することで加工前ワイヤー30の真直度を向上することができる。
【0032】
また、タフニング処理と低温熱処理の双方を加工前ワイヤー30に施しても良い。このように、加工前ワイヤー30の真直度が向上した後に加工前ワイヤー30をくせ付けローラー20に通すことにより、形成された2次元の複数のくせが単一のくせ付け面内に収まりやすくなる。2次元のくせがどれだけ単一のくせ付け面内に収まっているかは、くせ付けされたワイヤー1を水平面に投影した時の波高さhのばらつきにより測定することができる。
【0033】
表1は、線径dが0.25mmのピアノ線の加工前ワイヤーを用いて、波高さhを0.06mm、ピッチpを3.0mmでくせ付けし、前処理の有無によって波高さhがどれくらいばらつき、その結果として前述の加工面寸法精度がどのように影響されるかを測定したものである。なお、加工面寸法精度は、切断条件としてワイヤー送り速度を80m/min、ガイドローラーの移動速度を0.6m/min、粒径10〜20μmのダイヤモンド砥粒を用い、硬質ガラスをワークに設定したときの、加工面の表面粗さとして測定した。また、表1中の加工面寸法精度は、前処理を施さずに作製したワイヤーソーを用いて切断した時の加工面寸法精度を1としたときの相対評価として示した。加工面寸法精度の数値が低いほど、加工面が滑らかな表面であることを示す。
【0034】
また、試料B,Dは、加工前ワイヤー30を5個の真直ローラーに通したタフニング処理を施した後にくせ付けローラー20でくせ付けしたものである。また、試料C,Dは、加工前ワイヤー30を300℃の炉内に5秒間入れて低温熱処理を施した後にくせ付けローラー20でくせ付けしたものである。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から明らかなように、前処理を施した方が波高さのばらつきが小さくなるので、加工面の寸法精度が向上する。2次元の波形のくせが単一のくせ付け面内に収まっている度合いが高い(表1中のばらつきが小さい)程、砥粒をワークの被切削面に集中して押し付けることができるので、切り代を小さくすることができる。また、砥粒がワークの加工面を切削する頻度が小さくなるので、加工面の寸法精度も向上する。したがって、加工前ワイヤーに、くせ付けをする前にタフニング処理または低温熱処理の少なくともいずれかを施すことが好ましい。
【0037】
<実施例>
次に、表2に示すように、ピアノ線を用いて、くせの種類、線径d、くせの波高さh、くせのピッチpが相異なる試料No.1〜11のソーワイヤーを作製し、破断強さ、引張強さ、降伏点について測定した。
【0038】
また、表3は、表2の試料No.1〜11について、最大切断速度、加工面寸法精度及び切り代を測定し、その結果をまとめたものである。なお、表3中の最大切断速度、加工面寸法精度、切り代は、試料No.1のそれぞれの数値を1とした時の相対評価である。切断切り代の数値は低いほど切断切り代が小さく、ワークの加工効率が良いことを表す。
【0039】
最大切断速度とは、試料No.1〜11のワイヤーソーを用いて、切断条件としてワイヤー送り速度を80m/min、粒径10〜20μmのダイヤモンド砥粒を用い、硬質ガラスをワークに設定し、ガイドローラーの移動速度を徐々に上げていきながらワークを切断し、ソーワイヤーが破断したときのガイドローラーの移動速度を最大切断速度として測定した。表中の最大切断速度の数値は大きいほど高速でワークを切断できることを示す。
また、試料No.1〜11のワイヤーソーを用いて、ワイヤー送り速度を80m/min、ガイドローラーの移動速度を0.6m/min、粒径10〜20μmのダイヤモンド砥粒を用い、硬質ガラスをワークに設定してワークを切断したときの、加工面寸法精度、及び切り代を測定した。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
試料No.1〜8は本実施形態に係る実施例である。
まず、破断強さ、引張強さ及び降伏点について、2次元の波くせが付けられた試料No.1〜8は、3次元のくせが付けられた試料No.9,10よりも良好な値を示している。これは、3次元のくせを付ける際にワイヤーがねじられるため、機械的強度が低下するためと考えられる。したがって、2次元にくせ付けされたソーワイヤーは、大きな張力を与えてガイドローラー間に掛け渡すことができるので、切断時にソーワイヤーが撓むことなく加工面寸法精度が向上する。
【0043】
最大切断速度についても、上述の説明の如く2次元にくせ付けられたソーワイヤーは、ワークの被切削面方向に突出したくせの頂点が砥粒を集中的に被切削面に押し付けるので、3次元にくせ付けられたソーワイヤー(試料No.9,10)あるいはくせ無しのソーワイヤー(試料No.11)よりも早い切断速度でワークを切断できることが確認できた。
【0044】
加工面寸法精度及び切り代についても、上述の説明の如く2次元にくせ付けられたソーワイヤーを用いて切断した場合は、ワークの加工面にはくせの頂部が砥粒を積極的に押し付けないため、3次元にくせ付けられたソーワイヤーを用いて切断した切断した場合よりも、加工面寸法精度および切り代が優れていることが確認できた。
【0045】
なお本実施形態に係る試料No.1〜8のうちで、試料No.2〜7の如く、ソーワイヤーの線径d及び波高さhが0.20≦h/d≦0.35を満たすようにくせ付けすることが好ましい。線径dに対して波高さhが低くなり過ぎると、砥粒が抱え込まれるワークとソーワイヤーとの離間距離が十分に画成されず、砥粒を巻き込みにくくなって多くの砥粒をワークの被切削面に押し付けられない。一方、線径dに対して波高さhが高くなり過ぎると、形成されたくせが単一のくせ付け面内に収まりにくくなり、加工面精度が劣化する虞がある。
【0046】
また、本実施形態に係る試料No.1〜8のうちで、試料No.1〜3,5,7,8の如く、ソーワイヤーの線径d及びピッチpが10≦p/d≦14を満たすようにくせ付けすることが好ましい。p/dの値が低く、線径dに対してピッチpが小さくなり過ぎると、砥粒が抱え込まれる隣り合う頂部の空間が狭くなり、多くの砥粒をワークの被切削面に押し付けられない。一方、線径dに対してピッチpが大きくなり過ぎると、ワークに砥粒を押し付ける頂部の数が少なくなり、切削速度の向上が見込めない。
【0047】
以上の要因より、ソーワイヤーの線径d及び波高さhが0.20≦h/d≦0.35を満たし、かつ、ソーワイヤーの線径d及びピッチpが10≦p/d≦14を満たす試料No.2,3,5,7が特に加工面寸法精度、切断切り代及び最大切断速度の全ての項目において良好な値を示すことが確認できる。
【符号の説明】
【0048】
1:ソーワイヤー(ソーワイヤー)、2,3:頂部、20:くせ付けローラー、30:加工前ワイヤー、40真直ローラー、W:ワーク、w1:切削面、w2:加工面、g:砥粒、h:波高さ、p:ピッチ、d:線径、C:切り代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元にくせ付けされたソーワイヤー。
【請求項2】
前記ソーワイヤーは波形にくせ付けされており、
前記ソーワイヤーの線径d、前記波形の波高さhが、0.20≦h/d≦0.35を満たすことを特徴とする請求項1に記載のソーワイヤー。
【請求項3】
前記ソーワイヤーは波形にくせ付けされており、
前記ソーワイヤーの線径d、前記波形のピッチpが、10≦p/d≦14を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のソーワイヤー。
【請求項4】
前記ソーワイヤーにはくせ付け前にタフニング処理が施されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のソーワイヤー。
【請求項5】
前記ソーワイヤーにはくせ付け前に低温熱処理が施されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のソーワイヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−139743(P2012−139743A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292437(P2010−292437)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(504211429)栃木住友電工株式会社 (50)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【Fターム(参考)】