説明

ゾルゲルシリカ粒子、静電荷像現像トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び、画像形成方法

【課題】高湿環境下における凝集の発生と共に、低湿環境下での帯電性の悪化が抑制されたゾルゲルシリカ粒子を提供すること。
【解決手段】温度50℃で30分乾燥させた後のBET比表面積をSA(m/g)とし、温度200℃で30分乾燥させた後のBET比表面積をSB(m/g)としたとき、下記条件式(1)及び(2)を満たすゾルゲルシリカ粒子である。
・条件式(1):35≦SA≦50
・条件式(2):5≦|SA−SB|≦15

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾルゲルシリカ粒子、静電荷像現像トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び、画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ粒子については、例えば、特許文献1において、「BET比表面積、CTAB表面積、およびBET比表面積とCTAB比表面積差を所定範囲としたシリカ」について提案されている。
また、特許文献2では、「アルカリ珪酸塩水溶液から得られた高純度球状シリカであって、放射性物質の含有率が1ppb以下、シリカを煮沸浸出した抽出水の電気伝導度が10μS/cm以下、真球度が 0.9〜1.0 である粒子の含有率が90%以上であり、粒子の粒径に対応する比表面積の理論値に対してBET法による比表面積の測定値の倍率が3以下である高純度球状シリカ」について提案されている。
また、特許文献3では、「無機充填剤の少なくとも一部として、平均粒径0.5〜30μm、比表面積5〜60m/g、平衡水分吸湿量(RH50%)5〜15%及び嵩密度0.40〜1.4g/mlの非晶質シリカ系定形粒子を含有する半導体封止用樹脂組成物」について提案されている。
【0003】
また、特許文献4では、「疎水化処理されたシリカ微粒子とを含有してなり、シリカ微粒子の平均1次粒径が5〜25nmで疎水化後のシリカ微粒子のBET比表面積が80〜250m/gである静電潜像現像用トナー」について提案されている。
また、特許文献5では、「無機添加剤が、BET比表面積が100m/g以下、Al含有率が0.2重量%以下のシリカ微粒子をチタネート系カップリング剤で処理したものを含む電子写真用トナー」について提案されている。
また、特許文献6では、「式(1)R=(S/S)×100(式中、Sは650℃で焼成処理後のメソポーラスシリカの比表面積(m/g)であり、Sは1000℃で焼成処理後のメソポーラスシリカの比表面積(m/g)である)で定義される比表面積維持率(R)が、80%以上であるメソポーラスシリカ」について提案されている。
【0004】
また、特許文献7では、「火炎温度をシリカの融点以上および火炎中のシリカ濃度を0.25kg/Nm以上とし、生成したシリカ粒子をシリカの融点以上の高温下に短時間滞留させ、平均粒径(メジアン径)0.1〜0.7μmおよび比表面積5〜30m/gの非晶質シリカ粒子を得る非晶質微細シリカ粒子の製造方法」について提案されている。
また、特許文献8では、「平均粒径(メジアン径)0.1〜0.7μm、BET比表面積5〜30m/gであり、所定の分散係数(z)が40以下、BET比表面積に対する摩擦帯電量の絶対値が20μC/m以上である非晶質微細シリカ粒子」について提案されている。
また、特許文献9では、「放射性物質の含有率が1ppb以下、シリカを煮沸浸出した抽出水の電気伝導度が10μS/cm以下、真球度が0.9〜1.0である粒子の含有率が90%以上であり、粒子の粒径d[μm]に対応する比表面積の理論値2.73/d[m/g]に対してBET法による比表面積の測定値の倍率が3以下である高純度球状シリカ」について提案されている。
【0005】
また、特許文献10では、「シリカ微粒子を含み、第一のシリカ微粒子AはBETが30m/g以上80m/g未満で、第二のシリカ微粒子BはBETが80m/g以上300m/g以下であり、その添加量比率W/Wが1/30以上1/1.2未満で、さらにその平均粒径比r/rが1.1以上6.0未満であるトナー」について提案されている。
また、特許文献11では、「外添剤として、非球状の不定形シリカ粒子を含むトナー」について提案されている。
また、特許文献12では、「シリカが孤立シラノール基含有量が0.01〜0.3mmol/mであり、且つ、比表面積値Ssが式(1):Ss(m/g)=6/(ρ×d)[ρ:シリカの真比重,d:シリカの1次粒子径の平均値(μm)]で示される理論表面積Ssに対する比表面積比(Ss/Ss)が2以下を満足するものであり、該シリカにオルガノシリル化剤を反応させる疎水性シリカ粒子の製造方法」について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−163306号公報
【特許文献2】特開平7−69617号公報
【特許文献3】特開平09−208809号公報
【特許文献4】特開平9−236944号公報
【特許文献5】特開平10−39536号公報
【特許文献6】特開2000−053413号公報
【特許文献7】特開2002−3213号公報
【特許文献8】特開2002−154820号公報
【特許文献9】特開2003−192332号公報
【特許文献10】特開2005−49452号公報
【特許文献11】特開2007−279702号公報
【特許文献12】特開2010−228997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高湿環境下における凝集の発生と共に、低湿環境下での帯電性の悪化が抑制されたゾルゲルシリカ粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
温度50℃で30分乾燥させた後のBET比表面積をSA(m/g)とし、温度200℃で30分乾燥させた後のBET比表面積をSB(m/g)としたとき、下記条件式(1)及び(2)を満たすゾルゲルシリカ粒子。
・条件式(1):35≦SA≦50
・条件式(2):5≦|SA−SB|≦15
【0009】
請求項2に係る発明は、
超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により表面が疎水化処理されている請求項1に記載のゾルゲルシリカ粒子。
【0010】
請求項3に係る発明は、
トナー粒子と、外添剤として請求項1又は2に記載のゾルゲルシリカ粒子と、を有する静電荷像現像トナー。
【0011】
請求項4に係る発明は、
請求項3に記載の静電荷像現像トナーを少なくとも含む静電荷像現像剤。
【0012】
請求項5に係る発明は、
請求項3に記載の静電荷像現像トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【0013】
請求項6に係る発明は、
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【0014】
請求項7に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体上に形成されたトナー画像を被転写体上に転写する転写手段と、
前記被転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【0015】
請求項8に係る発明は、
像保持体を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項4に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体上に形成されたトナー画像を被転写体上に転写する転写工程と、
前記被転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、上記条件式(1)及び(2)を満たさない場合に比べ、高湿環境下における凝集の発生と共に、低湿環境下での帯電性の悪化が抑制されたゾルゲルシリカ粒子を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により表面が疎水化処理されていない場合に比べ、高湿環境下における凝集の発生と共に、低湿環境下での帯電性の悪化が抑制されたゾルゲルシリカ粒子を提供できる。
【0017】
請求項3、4、5、6、7、8に係る発明によれば、上記条件式(1)及び(2)を満たさないゾルゲルシリカ粒子をトナーの外添剤として適用した場合に比べ、ゾルゲルシリカ粒子の凝集の発生及び帯電性の悪化に起因する画像欠陥が抑制された静電荷像現像トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び、画像形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0020】
(ゾルゲルシリカ粒子)
本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子は、温度50℃で30分乾燥させた後のBET比表面積をSA(m/g)とし、温度200℃で30分乾燥させた後のBET比表面積をSB(m/g)としたとき、下記条件式(1)及び(2)を満たす。
・条件式(1) :35≦SA≦50
・条件式(2) :5≦|SA−SB|≦15
【0021】
本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子は、条件式(1)及び(2)を満たすことにより、高湿環境下(例えば90%RH以上の環境下)における凝集の発生と共に、低湿環境下(例えば10%RH以下の環境下)での帯電性の悪化が抑制される。
この理由は、定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0022】
まず、ゾルゲル法で作製されたゾルゲルシリカ粒子は、粒子表層部(その孔部)に吸着する水分量に応じて、BET比表面積が変動する。

ここで、ゾルゲルシリカ粒子は、吸湿性が高いため、環境変動の影響を受け易く、高湿環境下において粒子表層部(その孔部)に多くの水分が吸着し、凝集が生じや易くなる。
一方、ゾルゲルシリカ粒子は、高温で乾燥すると、吸湿性が低減されるものの、粒子表層部の孔部が潰れることから、粒子表層部(その孔部)に水分を保持されず、低湿環境下において粒子同士の帯電が起こり、その帯電性が悪化し易くなる。
【0023】
このため、上記条件式(1)を満たすことは、ゾルゲルシリカ粒子の表層部に、水分が吸着する孔部が潰れずに適度に存在している状態となっていることを意味している。
そして、その状態で、条件式(2)を満たすことは、ゾルゲルシリカ粒子がその表層部(その孔部)に適度な水分量を保持しつつ、低温(50℃)乾燥後と高温(200℃)乾燥後とでゾルゲルシリカ粒子が保持する水分量の変動が少ないことを意味している。つまり、条件式(2)を満たすことは、ゾルゲルシリカ粒子が、適度な水分を粒子表層部に保持し、その保持した水分量が環境(高温・低湿環境)によって変動し難いことを意味している。
【0024】
以上から、条件式(1)及び(2)を満たすことにより、高湿環境下における凝集の発生と共に、低湿環境下での帯電性の悪化が抑制される。
【0025】
ここで、温度50℃(又は温度200℃)で30分乾燥させた後のBET比表面積とは、粒子生成、溶媒除去を経るゾルゲル法により得られた粉末状のゾルゲルシリカ粒子(疎水化処理がなされる場合、その疎水化処理後の粉末状態のゾルゲルシリカ粒子)に対して、空気雰囲気の常圧下(1気圧下)、温度50℃(又は温度200℃)で30分間、乾燥処理を行った後に、測定したBET比表面積である。
【0026】
なお、BET比表面積は、マウンテック社製「MacsorbHMmodel−1201型」(脱気条件:30℃120分、流動法(BET一点法)、キャリアガス:ヘリウム、吸着質:窒素、平衡相対圧(P/P0)0.3)を用いて測定した値である。
【0027】
本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子において、条件式(1)及び(2)(下記条件式(3)含む)を満たすためには、例えば、ゾルゲル法の製造条件(例えば、TMOS(テトラメトキシシラン)滴下速度、初期アンモニア濃度、反応温度、乾燥温度、超臨界二酸化炭素流通量等)、疎水化処理条件(処理環境、処理剤量等)により、調整される。
【0028】
特に、本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子は、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により表面が疎水化処理されているものがよく、これより、条件式(1)及び(2)を満たすようにBET比表面積を調整し易く、高湿環境下における凝集の発生と共に、低湿環境下での帯電性の悪化が抑制される。
ここで、疎水化処理剤によりゾルゲルシリカ粒子の表面を疎水化処理する際、超臨界二酸化炭素中で行うと、超臨界二酸化炭素中に疎水化処理剤が溶解した状態となると考えられる。超臨界二酸化炭素は界面張力が極めて低いという特性を持つことから、超臨界二酸化炭素中に溶解した状態の疎水化処理剤は、超臨界二酸化炭素と共に、ゾルゲルシリカ粒子の表面の孔部の深くまで拡散して到達し易くなるものと考えられる。そして、これにより、ゾルゲルシリカ粒子の表面のみならず、孔部の奥深くまで、疎水化処理がなされるためと考えられる。
このため、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により表面が疎水化処理させると、孔部の奥深くまで疎水化処理がなされることから、環境によって水分の離脱・吸着が生じ難い孔部の最深部にのみ水分が保持される状態を作り出し易くなると考えられる。その結果、ゾルゲルシリカ粒子が、上記条件式(1)及び(2)を満たすような状態となり易くなると考えられる。
【0029】
ここで、本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子は、上記条件式(1)及び(2)満たすが、望ましくは下記条件式(1−2)及び(2−2)、より望ましくは下記条件式(1−3)及び(1−3))を満たすことがよい。
・条件式(1−2):35≦SA≦45
・条件式(1−3):35≦SA≦40
・条件式(2−2):5≦|SA−SB|≦10
・条件式(2−3):5≦|SA−SB|≦7
【0030】
また、温度200℃で30分乾燥させた後のBET比表面積SBは、環境(高温・低湿環境)によって水分量が変動し難い表面構造であること、つまり粒子表層部(その孔部)の水分除去によるBET比表面積の増大が上記条件式(2)の範囲内でより小さいことが求められることから、下記条件式(3)を満たすことがよく、望ましくは下記条件式(3−2)、より望ましくは下記条件式(3−2)を満たすことである。
・条件式(3) :40≦SB≦65
・条件式(3−2):40≦SB≦55
・条件式(3−3):40≦SB≦50
【0031】
本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子は、一次平均粒子径が1μm以下であることがよく、トナー用の外添剤として適用する場合、特に、70nm以上400nm以下がよく、望ましくは100nm以上180nm以下である。
なお、一次平均粒径は、粒径100μmの鉄粉或いは樹脂粒子(ポリエステル、重量平均分子量Mw=50000)にゾルゲルシリカ粒子を分散させた後のゾルゲルシリカ粒子の一次粒子100個につき、SEM装置で観察し、その画像解析によって得られた円相当径の累積頻度における50%径(D50v)として得られた値である。
【0032】
本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子は、球形状であってもよいし、異型状であってもよい。
異型状のゾルゲルシリカ粒子とは、例えば、平均円形度が0.5以上0.85以下のシリカ粒子である。一方で、球形状のゾルゲルシリカ粒子とは、例えば、平均円形度が0.85を越えたシリカ粒子である。
【0033】
なお、平均円形度は、粒径100μmの樹脂粒子(ポリエステル、重量平均分子量Mw=50000)にゾルゲルシリカ粒子を分散させた後の一次粒子を、SEM装置により観察し、得られた一次粒子の平面画像解析から、下記式により算出される「100/SF2」として得られる。
・式:円形度(100/SF2)=4π×(A/I
式中、Iは画像上における一次粒子の周囲長を示し、Aは一次粒子の投影面積を表す。
そして、平均円形度は、上記平面画像解析によって得られた一次粒子100個の円形度の累積頻度における50%円形度として得られる。
【0034】
以下、本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子について、その製造方法と共に、詳細に説明する。
【0035】
本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子は、ゾルゲル法により得られるシリカ粒子であり、そして、表面に疎水化処理が施されたシリカ粒子であることがよい。
具体的には、本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子は、例えば、ゾルゲルシリカ粒子を準備する工程と、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤によりゾルゲルシリカ粒子の表面を疎水化処理する工程と、を経て得られたものであることがよい。
【0036】
−ゾルゲルシリカ粒子を準備する工程−
本工程では、ゾルゲル法によりゾルゲルシリカ粒子を得る。
ゾルゲル法によるゾルゲルシリカ粒子の生成としては、周知の方法により行えばよいが、具体的には、アルコールを含む溶媒中にアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備し、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランを供給すると共に、アルカリ触媒を供給して、ゾルゲルシリカ粒子を生成する方法が挙げられる。
【0037】
特に、ゾルゲル法によるゾルゲルシリカ粒子の生成としては、粗大凝集物の発生が少なく、異型状のゾルゲルシリカ粒子を得る場合、例えば、以下に示す方法(以下、本ゾルゲルシリカ粒子の製造方法と称して説明する)がよい。
【0038】
本ゾルゲルシリカ粒子の製造方法は、アルコールを含む溶媒中に、0.6mol/L以上0.85mol/L以下の濃度でアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程(以下、「アルカリ触媒溶液準備工程」と称することがある)と、前記アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランを供給すると共に、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して0.1mol以上0.4mol以下でアルカリ触媒を供給する工程(以下、「粒子生成工程」と称することがある)と、を有する。
【0039】
つまり、本ゾルゲルシリカ粒子の製造方法では、上記濃度のアルカリ触媒が含まれるアルコールの存在下に、原料であるテトラアルコキシシランと、別途、触媒であるアルカリ触媒と、をそれぞれ上記関係で供給しつつ、テトラアルコキシシランを反応させて、シラン粒子を生成する方法である。
本ゾルゲルシリカ粒子の製造方法では、上記手法により、粗大凝集物の発生が少なく、異型状のシリカ粒子が得られる。この理由は、定かではないが以下の理由によるものと考えられる。
【0040】
まず、アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備し、この溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給すると、アルカリ触媒溶液中に供給されたテトラアルコキシシランが反応して、核粒子が生成される。このとき、アルカリ触媒溶液中のアルカリ触媒濃度が上記範囲にあると、2次凝集物等の粗大凝集物の生成を抑制しつつ、異型状の核粒子が生成すると考えられる。これは、アルカリ触媒は、触媒作用の他に、生成される核粒子の表面に配位し、核粒子の形状、分散安定性に寄与するが、その量が上記範囲内であると、アルカリ触媒が核粒子の表面を均一に覆わないため(つまりアルカリ触媒が核粒子の表面に偏在して付着するため)、核粒子の分散安定性は保持するものの、核粒子の表面張力及び化学的親和性に部分的な偏りが生じ、異型状の核粒子が生成されると考えられるためである。
そして、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給をそれぞれ続けていくと、テトラアルコキシシランの反応により、生成した核粒子が成長し、シラン粒子が得られる。
ここで、このテトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給を、その供給量を上記関係で維持しつつ行うことで、2次凝集物等の粗大凝集物の生成を抑制しつつ、異型状の核粒子がその異型状を保ったまま粒子成長し、結果、異型状のシリカ粒子が生成されると考えられる。これは、このテトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給量を上記関係とすることで、核粒子の分散を保持しつつも、核粒子表面における張力と化学的親和性の部分的な偏りが保持されることから、異型状を保ちながらの核粒子の粒子成長が生じると考えられるためである。
【0041】
以上から、本ゾルゲルシリカ粒子の製造方法では、粗大凝集物の発生が少なく、異型状のシリカ粒子が得られると考えられる。
【0042】
また、本ゾルゲルシリカ粒子の製造方法では、異型状の核粒子を生成させ、この異型状を保ったまま核粒子を成長させてシリカ粒子が生成されると考えられることから、機械的負荷に対する形状安定性が高く、また形状分布にバラツキが少ない異型状のシリカ粒子が得られると考えられる。
また、本ゾルゲルシリカ粒子の製造方法では、生成した異型状の核粒子が異型状を保ったまま粒子成長され、シリカ粒子が得られると考えられることから、機械的付加に強く、壊れ難いシリカ粒子が得られると考えられる。
また、本ゾルゲルシリカ粒子の製造方法では、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給することで、テトラアルコキシシランの反応を生じさせることで、粒子生成を行っていることから、従来のゾルゲル法により異型状のシリカ粒子を製造する場合に比べ、総使用アルカリ触媒量が少なくなり、その結果、アルカリ触媒の除去工程の省略も実現される。これは、特に、高純度が求められる製品にシリカ粒子を適用する場合に有利である。
【0043】
アルカリ触媒溶液準備工程について説明する。
アルカリ触媒溶液準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、これにアルカリ触媒を添加して、アルカリ触媒溶液を準備する。
【0044】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、必要に応じて水、ケトン、エステル、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の他の溶媒との混合溶媒であってもよい。混合溶媒の場合、アルコールの他の溶媒に対する量は80質量%以上(望ましくは90質量%以上)であることがよい。
なお、アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0045】
一方、アルカリ触媒としては、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応、縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが望ましい。
【0046】
アルカリ触媒の濃度(含有量)は、0.6mol/L以上0.85mol/Lであり、望ましくは0.65mol/L以上0.78mol/Lである。
アルカリ触媒の濃度が、0.6mol/Lより少ないと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗大凝集物が生成されたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の濃度が、0.85mol/Lより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、真球状の核粒子が生成され、異型状の核粒子が得られず、その結果、異型状のシリカ粒子が得られない。
なお、アルカリ触媒の濃度は、アルコール触媒溶液(アルカリ触媒+アルコールを含む溶媒)に対する濃度である。
【0047】
粒子生成工程について説明する。
粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給し、当該アルカリ触媒溶液中で、テトラアルコキシシランを反応(加水分解反応、縮合反応)させて、シリカ粒子を生成する工程である。
この粒子生成工程では、テトラアルコキシシランの供給初期に、テトラアルコキシシランを反応により、核粒子が生成した後(核粒子生成段階)、この核粒子の成長を経て(核粒子成長段階)、シリカ粒子が生成する。
【0048】
アルカリ触媒溶液中に供給するテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられるが、反応速度の制御性や得られるシリカ粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがよい。
【0049】
テトラアルコキシシランの供給量は、例えば、アルカリ触媒溶液におけるアルコールのモル数に対して、0.001mol/mol・min以上0.01mol/mol・min以下がよい。
このテトラアルコキシシランの供給量を上記範囲とすることで、粗大凝集物の発生が少なく、異型状のシリカ粒子が生成され易くなる。
なお、このテトラアルコキシシランの供給量は、アルカリ触媒溶液におけるアルコール1mol当たりに対する、1分間当たりにテトラアルコキシシランが供給するmol数を示している。
【0050】
一方、アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒は、上記例示したものが挙げられる。この供給するアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることがよい。
【0051】
アルカリ触媒の供給量は、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して0.1mol以上0.4mol以下とし、望ましくは0.14mol以上0.35mol以下である。
アルカリ触媒の供給量が、0.1molより少ないと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗大凝集物が生成さたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の供給量が、0.4molより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、核粒子生成段階で異型状の核粒子が生成されても、その核粒子成長段階で核粒子が球状に成長し、異型状のシリカ粒子が得られない場合がある。
【0052】
ここで、粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給するが、この供給方法は、連続的に供給する方式であってもよいし、間欠的に供給する方式であってもよい。
【0053】
また、粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中の温度(供給時の温度)は、例えば、5℃以上50℃以下であることがよく、望ましくは15℃以上40℃以下の範囲である。
【0054】
上記工程を経て、本ゾルゲルシリカ粒子の製造方法では、ゾルゲルシリカ粒子が得られる。
【0055】
以上説明したゾルゲルシリカ粒子を準備する工程において、例えば、ゾルゲルシリカ粒子を湿式により得る場合、ゾルゲルシリカ粒子が溶媒に分散された分散液(ゾルゲルシリカ粒子分散液)の状態で得られることから、溶媒を除去してシリカ粒子の得ることとなる。
【0056】
−溶媒除去工程−
ゾルゲルシリカ粒子分散液の溶媒除去方法としては、1)濾過、遠心分離、蒸留などにより溶媒を除去した後、真空乾燥機、棚段乾燥機などにより乾燥する方法、2)流動層乾燥機、スプレードライヤーなどによりスラリーを直接乾燥する方法など、公知の方法が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、望ましくは200℃以下である。200℃より高いとシリカ粒子表面に残存するシラノール基の縮合による一次粒子同士の結合や粗大粒子の発生が起こり易くなる。
乾燥されたシリカ粒子は、必要に応じて解砕、篩分により、粗大粒子や凝集物の除去を行うことがよい。解砕方法は、特に限定されないが、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミルなどの乾式粉砕装置により行う。篩分方法は、例えば、振動篩、風力篩分機など公知のものにより行う。
【0057】
また、ゾルゲルシリカ粒子分散液の溶媒除去方法としては、超臨界二酸化炭素を流通させて、当該超臨界二酸化炭素によりゾルゲルシリカ粒子分散液の溶媒を除去する方法も挙げられる。
つまり、本方法では、超臨界二酸化炭素を流通させることにより、超臨界二酸化炭素をゾルゲルシリカ粒子分散液に接触させて、溶媒を除去する方法である。
具合的には、本方法では、例えば、密閉反応容器内に、ゾルゲルシリカ粒子分散液を投入する。その後、密閉反応容器内に、液化二酸化炭素を加えて加熱し、高圧ポンプにより反応容器内を昇圧させ、二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、密閉反応容器内に超臨界二酸化炭素を導入すると共に、排出し、密閉反応容器内、つまりゾルゲルシリカ粒子分散液に流通させる。
これにより、超臨界二酸化炭素が溶媒(アルコール及び水)を溶解しつつ、これを同伴してゾルゲルシリカ粒子分散液の外部(密閉反応容器内の外部)へと排出され、溶媒が除去される。
【0058】
溶媒除去の温度条件、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、31℃以上350℃以下がよく、望ましくは60℃以上300℃以下、より望ましくは、80℃以上250℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し難くなるため、溶媒の除去がし難くなることがある。また溶媒や超臨界二酸化炭素の液架橋力により粗粉が生じ易くなることがあると考える。一方、この温度が上記範囲を超えると、親水性シリカ粒子表面のシラノール基の縮合により2次凝集体等の粗粉が生じやすくなることがあると考える。
【0059】
一方、溶媒除去の圧力条件、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、例えば、7.38MPa以上40MPa以下がよく、望ましくは10MPa以上35MPa以下、より望ましく15MPa以上25MPa以下である。
この圧力が上記範囲未満であると、超臨界二酸化炭素に溶媒が溶解し難くなる傾向にあり、一方、圧力が上記範囲を超えると、設備が高額となる傾向となる。
【0060】
また、密閉反応容器内への超臨界二酸化炭素の導入・排出量は、例えば、15.4L/分/m以上1540L/分/m以下であることがよく、望ましくは77L/分/m以上770L/分/m以下である。
導入・排出量が15.4L/分/m未満であると、溶媒除去に時間がかかるため生産性が悪くなる傾向となる。
一方、導入・排出量が1540L/分/m以上であると、超臨界二酸化炭素がショートパスし、シリカ粒子分散液の接触時間が短くなってしまい、効率的に溶媒除去することができ難い傾向となる。
【0061】
−疎水化処理する工程−
本工程は、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤によりゾルゲルシリカ粒子の表面を疎水化処理する工程である。
本工程では、具合的には、例えば、密閉反応容器内に、ゾルゲルシリカ粒子を投入し、次いでゾルゲルシリカ粒子に対して一定の割合の疎水化処理剤を加える。その後、密閉反応容器内に、液化二酸化炭素を加えて加熱し、高圧ポンプにより密閉反応容器内を昇圧させ、二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、二酸化炭素の超臨界状態を一定時間保つ、つまり、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤を反応させて、ゾルゲルシリカ粒子の疎水化処理を行う。なお、反応終了後は、密閉反応容器内を減圧、冷却させる。
【0062】
ここで、超臨界二酸化炭素とは、臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つものである。
【0063】
密閉反応容器の容積に対するゾルゲルシリカ粒子の量(つまり仕込み量)は、例えば、50g/L以上600g/L以下がよく、望ましくは100g/L以上500g/L以下、より望ましくは150g/L以上400g/L以下である。
この量が上記範囲より少ないと疎水処理剤の超臨界二酸化炭素に対する濃度が低くなりシリカ表面との接触確率が低下し、疎水化反応が進み難くなる。一方で、この量が上記範囲よりも多いと、疎水処理剤の超臨界二酸化炭素に対する濃度が高くなり、疎水処理剤が超臨界二酸化炭素へ溶解しきれず分散不良となり、粗大凝集物を発生させやすくなる。
【0064】
超臨界二酸化炭素中における、超臨界二酸化炭素の密度は、例えば、0.10g/ml
以上0.60g/ml以下がよく、望ましくは0.10g/ml以上0.50g/ml以下、より望ましくは0.2g/ml以上0.30g/ml以下)である。
この密度が上記範囲より低いと、超臨界二酸化炭素に対する疎水処理剤の溶解度が低下し、凝集物を発生させる傾向がある。一方で、密度が上記範囲よりも高いと、シリカ細孔への拡散性が低下するため、疎水化処理が不十分となる場合がある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカに対しては上記密度範囲での疎水化処理が必要である。
なお、超臨界二酸化炭素の密度は、温度及び圧力等により調整される。
【0065】
疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を持つ公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシランなどのシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
これら疎水化処理剤の中も、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチル基を有する有機珪素化合物が好適である。
【0066】
疎水化処理剤の使用量は、特に限定はされないが、疎水化の効果を得るためには、例えば、ゾルゲルシリカ粒子に対し、例えば、1質量%以上60質量%以下がよく、望ましくは5質量%以上40質量%以下、より望ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0067】
ここで、疎水化処理の温度条件(反応下の温度条件)、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、80℃以上300℃以下がよく、望ましくは100℃以上300℃以下、より望ましくは150℃以上250℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、疎水化処理剤とゾルゲルシリカ粒子表面との反応性低下する。一方で、温度が上記範囲を超えると、ゾルゲルシリカ粒子のシラノール基間による縮合反応が進み、結果として反応サイトの減少となり疎水化度が向上し難くなる場合がある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカに対しては上記温度範囲での疎水化処理が必要である。
【0068】
一方、疎水化処理の圧力条件(反応下の温度条件)、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、上記密度を満足する条件であればよいが、例えば、8MPa以上30MPa以下がよく、望ましくは10MPa以上25MPa以下、より望ましく15MPa以上20MPa以下である。
【0069】
以上説明した疎水化処理する工程を経て、本実施形態のゾルゲルシリカ粒子が得られる。
【0070】
本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子は、静電荷像現像トナー用の外添剤、その他、トナー、化粧品、研磨剤等の種々の分野に適用し得る。
【0071】
(静電荷像現像トナー)
本実施形態に係る静電荷像現像トナーは、トナー粒子と、外添剤と、を含んで構成される。
そして、外添剤の少なくとも1種として、本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子が適用される。
【0072】
まず、トナー粒子について説明する。
トナー粒子としては、特に制限はなく、例えば、結着樹脂と、着色剤と、必要に応じて、離型剤その他成分とを含有してなる。
【0073】
結着樹脂としては、特に制限はないが、ポリスチレン、スチレンーアクリル酸アルキル共重合体、スチレンーメタクリル酸アルキル共重合体、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンー無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックスなど公知の材料が挙げられる。これらの中でもスチレン−アクリル共重合体、ポリエステルがよい。
【0074】
結着樹脂の数平均分子量(Mn)は、例えば、2500以上20000以下がよく、望ましくは4000以上15000以下である。
結着樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、9000以上90000以下がよく、望ましくは12000以上60000以下である。
結着樹脂の軟化温度(Tm)は、例えば、60℃以上120℃以下がよく、望ましくは80℃以上100℃以下である。
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、45℃以上70℃以下がよく、望ましくは50℃以上60℃以下である。
【0075】
ここで、結着樹脂の分子量(Mn、Mw)は、東ソー製GPC:HLC8120GPCを用いて測定した。また、軟化温度(Tm)は、島津製作所製フローテスター:CFT500Cを用いて測定した。ガラス転移温度(Tg)は、島津製作所製DSC:DSC60を用いて測定した。
【0076】
着色剤としては、公知の有機又は無機の顔料や染料、又は油溶性染料が挙げられる。
例えば黒顔料としてはカーボンブラック、磁性粉等が挙げられる。
黄色顔料としては、例えば、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエローNCG等が挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等が挙げられる。
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどが挙げられる。
また、これら着色剤は、混合し、更には固溶体の状態で使用してもよい。
着色剤の含有量は、トナー粒子を構成する成分のうち、例えば、2質量%以上15質量%以下の範囲がよく、望ましくは3質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0077】
離型剤としては、特に制限はないが、例えば、石油ワックス、鉱物ワックス;動植物ワックス;ポリオレフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;等が挙げられる。離型剤の融点は、例えば40℃以上150℃以下がよく、望ましくは50℃以上120℃以下である。
離型剤の含有量は、トナー粒子を構成する成分のうち、例えば、1質量%以上10質量%以下の範囲がよく、望ましくは2質量%以上8質量%以下の範囲である。
【0078】
その他成分としては、例えば、内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)等の種々の成分が挙げられる。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、又はこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩からなる群より選ばれる化合物:極性基を含有したレジンタイプの帯電制御剤:等が挙げられる。
無機粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した粒子等、公知の無機粒子が挙げられる。これら無機粒子は、種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものがよい。
【0079】
トナー粒子の体積平均粒径は、例えば4μm以上15μm以下であり、望ましくは5μm以上10μm以下である。
なお、トナー粒子の体積平均粒径の測定法としては、分散剤として界面活性剤、望ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5質量%水溶液2ml中に、測定試料を0.5mg以上50mg以下加え、これを前記電解液100ml以上150ml以下中に添加した。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーII型(ベックマン−コールター社製)により、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0μm以上60μm以下の範囲の粒子の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000とする。
得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0080】
次に、外添剤について説明する。
外添剤の少なくとも1種は、本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子が適用される。
その他外添剤としては、例えば、SiO(本実施形態に係るゾルゲルシリカ粒子以外の粒径のSiO)、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0081】
その他外添剤の表面は、予め疎水化処理をしてもよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部程度である。
【0082】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子100質量部に対して0.5質量部以上2.5質量部以下がよい。
【0083】
次に、トナーの製造方法について説明する。
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
まず、トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁造粒法、溶解懸濁法、溶解乳化凝集合一法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
【0084】
そして、トナーは、例えば、得られたトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダーやヘンシュルミキサー、レディーゲミキサーなどによっておこなうことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機などを使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0085】
(静電荷像現像用現像剤)
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0086】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア、樹脂分散型キャリア等が挙げられる。
【0087】
二成分現像剤における、本実施形態に係るトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100程度の範囲が望ましく、3:100乃至20:100程度の範囲がより望ましい。
【0088】
(画像形成装置/画像形成方法)
次に、本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体上に形成されたトナー画像を被転写体上に転写する転写手段と、被転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を有する。そして、静電荷像現像剤として、上記本実施形態に係る静電荷像現像剤を適用する。
【0089】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0090】
本実施形態に係る画像形成方法は、像保持体を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体上に形成されたトナー画像を被転写体上に転写する転写工程と、被転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する。そして、静電荷像現像剤として、上記本実施形態に係る静電荷像現像剤を適用する。
【0091】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0092】
図1は、4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0093】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0094】
上述した第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0095】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配置されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0096】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0097】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0098】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む本実施形態に係る静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0099】
感光体1Y上のイエロートナー画像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0100】
また、第2のユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0101】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0102】
この後、記録紙Pは定着装置(ロール状定着手段)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0103】
トナー画像を転写する被転写体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、被転写体の表面も平滑であることが望ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0104】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー画像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー画像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0105】
(プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ)
図2は、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例の実施形態を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図2において符号300は被転写体を示す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置に対して着脱自在としたものである。
【0106】
図2で示すプロセスカートリッジ200では、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態のプロセスカートリッジでは、感光体107のほかには、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備える。
【0107】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。本実施形態に係るトナーカートリッジは、画像形成装置に脱着され、少なくとも、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用の静電荷像現像トナーを収容するトナーカートリッジである。
【0108】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0109】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、「部」は特に断りがない限り「質量部」を示す。
【0110】
[実施例1]
(ゾルゲルシリカ粒子1の作製)
以下のようにして、ゾルゲルシリカ粒子1を得た。
攪拌機、滴下ノズル、温度計を具備した3.0Lのガラス製密閉反応容器に、メタノール980部、10%アンモニア水(NHOH)180部を添加して混合して、アルカリ触媒溶液を得た。この時のアルカリ触媒溶液における触媒量:NH量(NH/(NH+メタノール+水))は、0.74mol/Lであった。
このアルカリ触媒溶液を25℃に調整した後、攪拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)385部を11g/mimの速度で、6.1%アンモニア水(NHOH)308部を8.8g/minの速度で同時に滴下し(TMOSの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対してNH量が0.44molになるように流量で同時に滴下)、ゾルゲルシリカ粒子の懸濁液(ゾルゲルシリカ粒子分散液)を得た。但し、TMOSの供給量は、アルカリ触媒溶液におけるアルコールのモル数に対して、0.0024mol/(mol・min)とした。
【0111】
得られたゾルゲルシリカ粒子の懸濁液(ゾルゲルシリカ粒子分散液が収容された密閉反応容器内をヒーターにより80℃まで昇温後、二酸化炭素ポンプにより20MPaまで昇圧して、密閉反応容器内に超臨界二酸化炭素を流通量(密閉反応容器内への導入・排出量)170L/分/mで流通させ、ゾルゲルシリカ粒子の懸濁液(ゾルゲルシリカ粒子分散液の溶媒除去を行い、ゾルゲルシリカ粒子の粉末を得た。
得られたゾルゲルシリカ粒子は、平均粒子径150nm、平均円形度0.94の球形状のゾルゲルシリカ粒子であった。
【0112】
得られたゾルゲルシリカ粒子の粉末が収容された密閉反応容器内(密閉反応容器の容積に対するゾルゲルシリカ粒子の量(仕込み量)200g/Lに相当)に、ヘキサメチルジシラザン(和光純薬製)を40部投入した。その後、密閉反応容器内を液化二酸化炭素で満たした。ヒーターにより160℃まで昇温後、二酸化炭素ポンプにより20MPaまで昇圧した。温度160℃及び圧力20MPaに達し、二酸化炭素が超臨界状態(超臨界二酸化炭素の密度0.163g/ml)となった時点で撹拌機を200rpmで運転させ、疎水化処理時間として30分間保持した。30分間保持した後、密閉反応容器背圧弁より圧力を大気圧まで開放し室温まで冷却させた。その後、撹拌機を停止し密閉反応容器より疎水化処理された疎水性ゾルゲルシリカ粒子1の粉体を取り出した。
【0113】
(樹脂分散液の調製)
・スチレン 290質量部
・n−ブチルアクリレート 120質量部
・アクリル酸 8質量部
・10−ドデカンチオール 6質量部
以上の成分を混合して溶解したものを、非イオン性界面活性剤(ノニポール400、三
洋化成(株)製)6質量部及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株
)製)10質量部をイオン交換水550質量部に溶解したものにフラスコ中で乳化分散さ
せ、10分間ゆっくり混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4質量部を溶解したイオ
ン交換水50質量部を投入した。窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内
容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間乳化重合を継続した。その結果、D
50v=162nmであり、Tg=59℃、重量平均分子量Mw=33500の樹脂
粒子が分散した樹脂分散液が得られた。
【0114】
(着色剤分散液の調製)
・シアン顔料(PB15:3) 70質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノニポール400、三洋化成(株)製) 5質量部
・イオン交換水 220質量部
以上の成分を混合して、溶解し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA
社製)を用いて10分間分散し、D50vが260nmである着色剤(シアン顔料)
粒子が分散した着色剤分散剤を調製した。
【0115】
(離型剤分散液)
・パラフィンワックス(HNP0190、日本精蝋(株)製、融点85℃)53質量部
・カチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王(株)製) 6質量部
・イオン交換水 200質量部
以上の成分を、95℃に加熱して、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(
ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて10分間分散した後、圧力吐出型ホモ
ジナイザーで分散処理し、D50vが550nmである離型剤粒子が分散した離型剤分散
液を調製した。
【0116】
(トナー粒子の作製)
・樹脂分散液 230質量部
・着色剤分散液 200質量部
・離型剤分散液 40質量部
・カチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王(株)製) 1.5質量部
以上の成分を、丸型ステンレス鋼鉄フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックス
T50、IKA社製)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を
撹拌しながら50℃まで加熱した。45℃で20分間保持した。その時点での平均粒径は
約4.4μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。更に上記混合液に、樹
脂分散液を緩やかに60質量部追加した。そして、加熱用オイルバスの温度を50℃まで
上げて30分間保持した。平均粒径が約5.2μmである凝集粒子が形成されていること
が確認された。
上記混合液にアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製)3質量部
を追加した後、前記ステンレス鋼鉄フラスコ中を密閉し、磁力シールを用いて撹拌しなが
ら105℃まで加熱し、4時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン
交換水で充分に洗浄した後、乾燥させることにより、形状係数120.5、D50v5.
6μmのトナー粒子を得た。
その後トナー粒子100部に対して、外添剤として、疎水性ゾルゲルシリカ粒子1を5質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで5分間混合した。更に超音波振動篩(45μm/ダルトン社製)にかけて静電荷像現像用トナーを得た。
【0117】
(キャリアの製造)
フェライト粒子(体積平均粒径50μm) 100質量部
トルエン 15質量部
スチレン−メチルメタクリレート共重合体(成分モル比:90/10) 2質量部
カーボンブラック(R330、キャボット社製) 0.25質量部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラで撹拌させ、分散した被覆液
を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダに入れ、60℃で25
分撹拌した後、更に加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアAを作
製した。このキャリアAは、形状係数=120、真比重=4.4、飽和磁化=63emu
/g、1000V/cmの印加電界時の体積固有抵抗値が1000Ω・cmであった。
【0118】
(現像剤の作製)
上記で作製したトナー8質量部とキャリア92質量部をVブレンダーにいれ20分間撹拌した後、105μmメッシュで篩分し、静電荷像現像剤を作製した。
【0119】
(実施例2)
アルカリ触媒溶液に対して滴下するアンモニア水(NHOH)のアンモニア濃度3.8%(TMOSの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対してNH量が0.27molになるようにアンモニア水を流量で滴下する場合に相当)に変更して、ゾルゲルシリカ粒子の懸濁液(ゾルゲルシリカ粒子分散液)を得た以外は、実施例1と同様にして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子2の粉末を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子2を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0120】
(実施例3)
溶媒除去工程での超臨界二酸化炭素の温度(乾燥温度)を150℃、超臨界二酸化炭素の流通量(密閉反応容器内への導入・排出量)を34L/分/mに、疎水化処理工程で、ヒーターによる昇温温度を140℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子3の粉末を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子3を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0121】
(実施例4)
疎水化処理工程で、ヒーターによる昇温温度を175℃に変更した以外は、実施例2と同様にして疎水性ゾルゲルシリカ粒子4の粉末を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子4を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0122】
(実施例5)
ヘキサメチルジシラザンの投入量を20.0部に変更して疎水化処理を行った以外は、実施例2と同様にして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子5の粉末を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子5を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0123】
(比較例1)
実施例1の疎水性ゾルゲルシリカ粒子1を、マッフル炉にて600℃・1時間加熱処理を施し、疎水性ゾルゲルシリカ粒子6を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子6を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0124】
(比較例2)
テトラメトキシシラン(TMOS)270部を18部/mimの速度で、3.8%アンモニア水(NHOH)210部を14部/minの速度で同時に滴下し(TMOSの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対してNH量が0.26molになるように流量で同時に滴下)に変更して、ゾルゲルシリカ粒子の懸濁液(ゾルゲルシリカ粒子分散液)を得た以外は、疎水性ゾルゲルシリカ粒子11同様の方法疎水性ゾルゲルシリカ粒子7の粉末を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子7を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0125】
(比較例3)
ゾルゲルシリカ粒子の懸濁液(ゾルゲルシリカ粒子分散液)30部に対して、ヘキサメチルジシラザン2.4部を添加し、オイルバスで溶液温度を50℃に調整し、その温度で3時間保持して、疎水化処理を行った後、150℃に昇温して溶媒除去を行って、疎水性ゾルゲルシリカ粒子を得た以外は、実施例1同様の方法で作製し、疎水性ゾルゲルシリカ粒子8の粉末を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子8を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0126】
(比較例4)
溶媒除去工程での超臨界二酸化炭素の温度(乾燥温度)を150℃に、疎水化処理工程で、ヒーターによる昇温温度を160℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子9の粉末を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子9を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0127】
(比較例5)
ゾルゲルシリカ粒子の疎水化処理工程で、ヒーターによる昇温温度を175℃に変更した以外は、実施例2と同様の方法で作製し、疎水性ゾルゲルシリカ粒子10の粉末を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子10を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0128】
(比較例6)
疎水化処理工程でのヒーターによる昇温温度を120℃に変更した以外は、実施例3と同様の方法で作製し、疎水性ゾルゲルシリカ粒子11の粉末を得た。
そして、疎水性ゾルゲルシリカ粒子11を実施例1と同様にトナー粒子に外添し、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像剤を得た。
【0129】
(評価)
得られた疎水性ゾルゲルシリカ粒子の粉末、静電荷像現像剤について、以下の評価を行った。
【0130】
−BET比表面積特性−
各例で得られた疎水性ゾルゲルシリカ粒子の粉末に対して、既述の方法に従って、温度50℃で30分乾燥させた後のBET比表面積SA、温度200℃で30分乾燥させた後のBET比表面積SBをそれぞれ測定した。
【0131】
−凝集性−
各例で得られた疎水性ゾルゲルシリカ粒子の粉末を高湿環境下(30℃、90%RH環境下)で1日放置後、トナー粒子100部に対して疎水性ゾルゲルシリカ粒子2部をサンプルミルで外添し、SEM(×3000倍観察)でトナー粒子表面に、疎水性ゾルゲルシリカ粒子の凝集体がいないか観察して、凝集性について評価した。
評価基準は、以下の通りである。
◎:凝集体が全体の1%以下
○:凝集体が全体の1%超え2%以下
△:凝集体が全体の2%超え5%以下
×:凝集体が全体の5%超え
【0132】
−帯電性−
低湿環境下(21℃、10%RH環境下)で、各例で得られた疎水性ゾルゲルシリカ粒子の粉末0.1部に対して、キャリア2gをターブラ撹拌機で10分間撹拌を行い、Trek社製吸引式帯電測定装置で疎水性ゾルゲルシリカ粒子の帯電量を測定した。
評価基準は以下の通りである。
○:帯電が70μC/g以上200μC/g以下
△:帯電が70μC/g未満、200μC/g超え300μC/g以下
×:帯電が300μC/g超える
【0133】
−画質評価−
各例で得られた静電荷像現像用現像剤を用いて、富士ゼロックス社製DocuCentre f450を用い、高温高湿度(30℃90%RH)の環境下で10000枚印刷を行った後、ハーフトーン画質、ソリッド画質、文字再現性を確認した。
評価基準は、以下の通りである。
○:いずれにおいても問題ない場合
×:いずれか一つでも問題となる場合
また、低温低湿度(21℃10%RH)の環境下で上記と同様の方法・評価基準で画質評価を実施。
【0134】
【表1】

【0135】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、凝集性、帯電性、画質特性が共に良好な結果が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0136】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ(帯電手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3、110 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置
8Y、8M、8C、8K 現像剤カートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(転写手段の一例)
28、115 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ、
P、300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度50℃で30分乾燥させた後のBET比表面積をSA(m/g)とし、温度200℃で30分乾燥させた後のBET比表面積をSB(m/g)としたとき、下記条件式(1)及び(2)を満たすゾルゲルシリカ粒子。
・条件式(1):35≦SA≦50
・条件式(2):5≦|SA−SB|≦15
【請求項2】
超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により表面が疎水化処理されている請求項1に記載のゾルゲルシリカ粒子。
【請求項3】
トナー粒子と、外添剤として請求項1又は2に記載のゾルゲルシリカ粒子と、を有する静電荷像現像トナー。
【請求項4】
請求項3に記載の静電荷像現像トナーを少なくとも含む静電荷像現像剤。
【請求項5】
請求項3に記載の静電荷像現像トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項6】
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体上に形成されたトナー画像を被転写体上に転写する転写手段と、
前記被転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項8】
像保持体を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項4に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体上に形成されたトナー画像を被転写体上に転写する転写工程と、
前記被転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−67545(P2013−67545A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209274(P2011−209274)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】