説明

ゾーン調整機能付き移動無線方法と装置。

【課題】設置作業中に、通信障害の発生原因となる接続装置あるいは移動無線端末を把握して、その障害を解消する指示を出すこと。
【解決手段】複数の経路を経て受信した電波の強度情報を移動電波強度情報として、それぞれ異なるタイミングで移動電波強度情報送信をする複数の移動無線端末MTと、複数の移動無線端末MTから受信して、この受信した電波の強度情報および移動電波強度情報を得て、それぞれ異なるタイミングで送信をし、他からの送信を受信して接続電波強度情報を得るための複数の接続装置CSと、移動電波強度情報および接続電波強度情報を所定期間受けて平均化し、平均化した電波強度情報を所定の範囲を示す閾値と比較して、所定の範囲外となった移動無線端末または接続装置が所定の範囲内となるようにゾーン調整の指示をするための中央処理装置CPとを含むように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾーン調整機能付き移動無線方法と装置に関する。具体的には、構内無線通信システムにおける接続装置(基地局)と移動する無線端末との間の交信が障害なく実行できるゾーンの設計および調整を可能とする新規な移動無線方法と装置を提供せんとするものである。
【背景技術】
【0002】
複数の接続装置(基地局)と、複数の移動無線端末とが交信する構内無線通信システムを設置する場合、緻密なゾーン設計および調整が要求され、これが不十分であると、ゾーン内であるにもかかわらず移動無線端末が使用できないデッドゾーンができてしまう。ゾーン内に大きな構築物が存在する場合には、その構築物の内部と外部において、構築物の影響を強く受ける場合もあるため、運用時に支障のない構内無線通信システムを設置することは困難であった。
【0003】
システム設置は、以下のように行われていた。
従来例1. 過去に他の場所で測定したデータにもとづき机上でゾーン設計をし、その通りに設置する。この場合には、他の場所とは設置環境が必ず異なるために、再現性が乏しく、目標通りの性能を得ることが極めて困難であった。
【0004】
従来例2. 設置現場において電界強度計により測定したデータを目安に電波到達距離を予測し、それに従って設置する。この場合には、電界強度計の使い方の習得が必要であること。電界強度計のアンテナ利得が、実際に設置される接続装置や使用される移動無線端末とは異なるので、電界強度計による測定データを換算して使用する必要がある。さらに、接続装置は壁掛けにして設置することが多いが、設置現場において電界強度計を壁掛けにして測定することは困難である。
【0005】
従来例3. 基地局(接続装置)に受信電界強度測定部を設け、各基地局は、異なるタイミングで送信し、他の基地局からの電波の電界強度を測定する。測定された電界強度が大きすぎて電波障害を発生する場合には、該当する基地局間の距離を広げて、通信障害を低減している(特許文献1)。この場合には、基地局間の通信障害に関する電界強度のみを測定し、基地局と移動無線端末との関係が考慮されていない。さらに、基地局と移動無線端末との間の電波伝搬の経路に反射波を生ずるような構築物がある場合には、基地局と移動無線端末との間の電波伝搬経路は複数となり、経路による時間差から、電界強度は十分であるにもかかわらず、正確に情報を受信できないという問題については、解決されていない。
【特許文献1】特開平10-209946
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例1および2の問題点については、従来例3において解決されたが、従来例3においても、なお、未解決の問題がある。すなわち、
課題1. 基地局(接続装置)間の通信障害に関する電界強度のみを測定し、基地局(接続装置)と移動無線端末との関係が考慮されていない。
課題2. 基地局(接続装置)と移動無線端末との間の電波伝搬の経路に反射波を生ずるような構築物がある場合には、基地局(接続装置)と移動無線端末との間の電波伝搬経路は複数となり、経路による時間差から、電界強度は十分であるにもかかわらず、正確に情報を受信できない。
課題3. 通信障害の発生原因となる基地局(接続装置)あるいは移動無線端末を把握して、その障害を解消する指示が出されない。
【0007】
課題1について、説明する。基地局(接続装置)間の通信障害に関する電界強度のみを測定しても、基地局(接続装置)間の通信障害を除去することはできるが、全基地局(接続装置)によってカバーできるゾーンが、所望のゾーンをカバーしているか否か判らないという問題が残されている。たとえば1つの基地局(接続装置)から半径100メートル以内は、その基地局(接続装置)のサービス・エリアであるというように設計上は規格化されていたとしても、実際の構築物の内外においては、規格とはかけ離れたものとなる。現地において、基地局(接続装置)を仮設置し移動無線端末との間の電波伝搬状況を実測しなければ、所望のゾーンをカバーしているか否か判らないからである。
【0008】
課題2について、説明する。基地局(接続装置)と移動無線端末との間の電波伝搬の経路に反射波を生ずるような構築物がある場合には、基地局(接続装置)と移動無線端末との間の電波伝搬経路は複数となり、経路による時間差から、基地局(接続装置)と移動無線端末との間の電界強度は十分であるにもかかわらず、正確に情報を受信できないという問題が発生する場合がある。電波伝搬経路が複数となる場合の障害の1例として、テレビにおけるゴーストの発生にみられるように、電界強度は十分であるにもかかわらず、著しい障害が発生する。電界強度は必要条件ではあっても、十分条件ではないのである。また、デジタル信号を伝搬する電波が時間差をもって複数の経路で到達した場合には、デジタル信号を正確に受信することができなくなる。
【0009】
電界強度、および電波伝搬の時間差が問題となる場合には電波による情報伝達、すなわち、データ伝達の正確度が十分に得られるか、を表す新用語として「電波強度」を定義し以下において用いる。すると、基地局(接続装置)と移動無線端末との間に十分な電波強度がある場合には、基地局(接続装置)と移動無線端末との間に良好な通信が可能となる。
【0010】
課題3について、説明する。通信障害の発生原因となる基地局(接続装置)あるいは移動無線端末を把握しても、その障害を解消するために必要とされる手段あるいは方法については指示されない。そこで、通信障害の発生原因となる基地局(接続装置)あるいは移動無線端末に関するデータを観て、必要とされる手段あるいは方法を考え得る熟練者を必要とする、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
受信した電波の強度情報を移動電波強度情報として、それぞれ異なるタイミングで移動電波強度情報送信をする複数の移動無線端末手段と、
複数の移動電波強度情報送信を受信して、この受信した電波の強度情報である受信電波強度情報および移動電波強度情報を得て、それぞれ異なるタイミングで接続電波強度測定用送信をし、他からの接続電波強度測定用送信を受信して接続電波強度情報を得るための複数の接続手段と、
移動電波強度情報、受信電波強度情報および接続電波強度情報を受けて所定の範囲を示す閾値と比較して、所定の範囲外となった移動無線端末手段または接続手段が所定の範囲内で動作できるようにゾーン調整の指示をするための中央処理手段とを含むように構成した。
【発明の効果】
【0012】
全接続手段(基地局)によってカバーできるゾーンが、所望のゾーンをカバーしているか否かが明らかになり、所望のエリアをカバーするように接続手段を配置することが容易になった。また、接続手段と移動無線端末手段との間の電波伝搬経路が複数となり、経路による時間差から、接続手段と移動無線端末手段との間の電界強度は十分であるにもかかわらず、正確に情報を受信できないという問題も、新たに定義した「電波強度」を測定することにより、正確に受信することができるようになった。
【0013】
設置作業において、通信障害の発生原因となる接続手段あるいは移動無線端末手段を把握し、その障害の解消に必要とされる手段あるいは方法について指示を出すようにしたから、必要とされる手段あるいは方法を考え得る熟練者を必要としなくなり、緻密なゾーン設定が可能となり、所望のゾーン内に通信のできないエリアが生ずることもなくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
新たに定義した「電波強度」を測定することにより、
受信した電波の強度情報を移動電波強度情報として、それぞれ異なるタイミングで移動電波強度情報送信をする複数の移動無線端末と、
複数の移動電波強度情報送信を受信して、この受信した電波の強度情報である受信電波強度情報および移動電波強度情報を得て、それぞれ異なるタイミングで接続電波強度測定用送信をし、他からの接続電波強度測定用送信を受信して接続電波強度情報を得るための複数の接続装置と、
移動電波強度情報、受信電波強度情報および接続電波強度情報を受けて所定の範囲を示す閾値と比較して、所定の範囲外となった移動無線端末または接続装置が所定の範囲内で動作できるようにゾーン調整の指示をするための中央処理装置とを含むように構成した。
【実施例1】
【0015】
図1は、本願発明の実施例1を示した回路構成図である。ここで、中央処理装置CP、 接続装置CSa〜CSdおよび移動無線端末MTa〜MTfは、いわゆる構内無線通信網としての機能を有し、それに加えて、この構内無線通信網を構築する場合のゾーン調整機能も有している。本願発明は、ゾーン調整機能に関するものであるから、構内無線通信網としての機能に関する説明は、以下において省略する。
【0016】
移動無線端末MTa〜MTfは、接続装置CSa〜CSdとの間で無線による交信をし、中央処理装置CPは各接続装置CSa〜CSdへの指示および移動無線端末MTa〜MTfの通話交換をしている。それと同時に、移動無線装置を設置する場合のゾーン調整がなされる。ゾーン調整機能の動作開始や、必要とされるゾーン調整事項の表示および指示は、中央処理装置CPに接続された、たとえば、パーソナル・コンピュータ(パソコン)による入力装置PCにおいてなされる。ゾーン調整機能の動作開始に先立って、移動無線装置を設置現場に仮置きする。入力装置PCの指示によりゾーン調整機能の動作は開始され、その開始後は入力装置PCの指示に従って、接続装置CSa〜CSdや移動無線端末MTa〜MTfの配置を変更すればよい。このゾーン調整機能の動作中において、たとえば、接続装置CSa〜CSdや移動無線端末MTa〜MTfの配置を変更するためにゾーン内の会話を必要とする場合には、移動無線端末MTa〜MTfが使用される。
【0017】
図2には、図1の重要な構成要素である中央処理装置CPの内部の詳細を示す回路構成が示されている。接続装置インタフェイスCSIFは、接続装置CSa〜CSdとの間の伝送路に接続されている。接続装置CSa〜CSdから伝送路と接続装置インタフェイスCSIFを介して受信した伝送路信号から、受信データ抽出部4において受信データを抽出する。この受信データには、移動無線端末MTa〜MTfからの通話がある場合の音声データの他に、移動電波強度情報、受信電波強度情報および接続電波強度情報が含まれている。ただし、ゾーン調整機能の動作中の通話が無い場合には、音声データは含まれず制御データのみとなる場合がある。
【0018】
ここに、
(1)移動電波強度情報とは、接続装置CSa〜CSdからの電波を各移動無線端末MTa〜MTfが受信したときの電波強度の情報である。この移動電波強度が不足する場合には、各移動無線端末MTa〜MTfは良好な受信をすることはできない。
(2)受信電波強度情報とは、各接続装置CSa〜CSdが各移動無線端末MTa〜MTfから受信した電波の電波強度情報である。この受信電波強度が不足する場合には、各接続装置CSa〜CSdは各移動無線端末MTa〜MTfから良好な受信をすることはできない。
(3)接続電波強度情報とは、各接続装置CSa〜CSdの送信する電波を他の各接続装置CSa〜CSdが受信したときの電波強度の情報である。この接続電波強度が大きい場合には、隣接する接続装置CSa〜CSdからの干渉が強く、各移動無線端末MTa〜MTfとの間の交信が妨害を受けるおそれがある。
【0019】
通話がある場合の音声データは、音声データ受信部5 において受信され、複数の移動無線端末MTa〜MTf間で通話できるようにするべく、音声交換スイッチ6において音声交換されて、音声データ送出部7を介して送信データ重畳部8 に送られ、各接続装置CSa〜CSdへの伝送路に重畳される。受信データ抽出部4 において抽出された電波強度情報は、電波強度情報平均化部11において所定の期間平均化されて、電波強度判定部12 に送られる。メモリ13には、動作に必要なプログラムの他、過去において得たデータ、現在のゾーンの調整状況および電波強度閾値が格納されている。電波強度閾値には、移動電波強度、受信電波強度および接続電波強度の各閾値が含まれている。ここで、電波強度情報平均化部11において所定の期間平均化される場合を例示したが、抽出された電波強度情報のばらつきが無視できるようなときには、平均化を省略して電波強度判定部12 に送るようにしてもよい
【0020】
電波強度判定部12は、メモリ13から電波強度閾値を読み出して、電波強度情報平均化部11からの平均化された電波強度情報と比較し、閾値の示す所定の範囲内にあるか否かを判定する。その判定結果は、ゾーン調整制御部14 に送られる。ゾーン調整制御部14 では、閾値の示す所定の範囲内に無い接続装置CSあるいは各移動無線端末MTを検出し、それらの配置調整をパーソナル・コンピュータ・インタフェイスPCIFを介して入力装置PC において表示し指示する。
【0021】
移動電波強度および受信電波強度がメモリ13から読み出した電波強度閾値を下まわる場合は、その移動無線端末MTが所定のゾーン内にあるにもかかわらず接続装置CSの電波が十分に届いていない(所定の範囲外)ことを意味するから、特定の接続装置CSの配置を変更するか、あるいは、接続装置CSの増設を指示することになる。接続電波強度がメモリ13から読み出した電波強度閾値の範囲を越える場合は、隣接する接続装置CSの電波が強く(所定の範囲外)干渉妨害を受けるおそれがあるから、その間隔を離して所定の範囲内になるようにゾーン調整するべく指示が出される。
【0022】
接続電波強度が、メモリ13から読み出した電波強度閾値の範囲を下まわる場合は、隣接する接続装置CSとの間に電波強度が不十分なデッドゾーンの生ずる可能性がある(所定の範囲外となる)から、この場合も隣接の接続装置CSとの距離を近づける指示を入力装置PC側へ出して所定の範囲内になるようにゾーン調整する。このような調整の結果は、メモリ13に格納される。ゾーン調整をするときには、電波強度測定が必要となるから、それをタイミング信号生成部15 に伝える。
【0023】
タイミング信号生成部15 は、基準発信器16からの基準クロックを受けて、電波強度測定用のタイミング信号を生成する。このタイミング信号は、タイミング信号伝送路重畳部17 において伝送路重畳され、接続装置インタフェイスCSIFを介して各接続装置CSa〜CSdへ送られる。さらに、各接続装置CSa〜CSdからは、各移動無線端末MTa〜MTfに対してこのタイミング信号が送出される。
【0024】
図3には、図1の重要な構成要素である接続装置CSの内部の詳細を示す回路構成が示されている。移動無線端末MTa〜MTfとの間で、アンテナにより送受する電波を送受切替スイッチ31 で切り替えて、無線受信部32が受信する。受信した信号から受信データ抽出部33 において受信データを抽出し、それを受信情報伝送路重畳部34に送る。この受信データには、移動無線端末MTで得た移動電波強度情報が含まれている。電波強度測定部35は、無線受信部32が受信した電波の電波強度測定を行う。この電波強度測定結果は、受信電波強度情報として、受信情報伝送路重畳部34と送信タイミング・データ生成部42 に送られ、移動無線端末MT側に送られる。
【0025】
受信電波強度情報、移動電波強度情報および接続電波強度情報を受けた受信情報伝送路重畳部34は、伝送路重畳をして中央処理装置インタフェイスCPIFおよび伝送路経由で、中央処理装置CPに伝達する。タイミング信号抽出部44 は、中央処理装置CP側から送られてきたタイミング信号を伝送路の信号から抽出し、これを受信データ抽出部33、送信タイミング・データ生成部42 および送信タイミング作成部45 に供給する。
【0026】
送信タイミング作成部45は送信タイミングを作成して、それを送信タイミング・データ生成部42に印加する。送信用データ抽出部41は、中央処理装置CP側から送られてきた送信用データを伝送路の信号から抽出し、送信タイミングとデータを生成する送信タイミング・データ生成部42を経て、電波強度測定部35から送られてきた受信電波強度情報とともに、無線送信部43および送受切替スイッチ31を介して、移動無線端末MTへ無線送信する。
【0027】
図4には、図1の重要な構成要素である移動無線端末MTの内部の詳細を示す回路構成が示されている。接続装置CSa〜CSdとの間で、アンテナにより送受する電波を送受切替スイッチ61 で切り替えて、無線受信部62が受信する。受信した信号から受信データ・タイミング抽出部63 において受信データおよびタイミングを抽出し、それを受信コーデック64、基準クロック生成部75および送信タイミング作成部76 に送る。この受信データには、接続装置CS側からの通話データが含まれているので、これを受信コーデック64において復号化して受話器66から音声出力を得る。
【0028】
基準クロック生成部75は抽出されたタイミングより送受タイミングを作成して、これを受信コーデック64および送信コーデック71に印加している。電波強度測定部65は、無線受信部62が接続装置CSから受信した電波の電波強度測定を行う。この電波強度測定結果は、端末電波強度情報として、送信タイミング・データ生成部72 に送られ、接続装置CS側に送られる。 送話器67から入力された音声は、送信コーデック71で基準クロック生成部75からの送受タイミングで符号化されて、送信タイミング・データ生成部72 に送られ、電波強度測定部65からの端末電波強度情報とともに、送信タイミングで無線送信部73および送受切替スイッチ61を介して、接続装置CSへ無線送信する。
【0029】
ここで、接続装置CSの電波強度測定部35および移動無線端末MTの電波強度測定部65の機能について説明する。電波強度測定部35,65は、電波強度を測定している。電波強度は、電界強度のみならず複数の電波伝搬経路により生ずる時間差が問題となる場合に、電波によるデータ伝達の正確度をも表している。電界強度が十分である場合を前提条件として、説明する。複数の電波伝搬経路により生ずる時間差が問題となるのは、たとえば、デジタル信号の場合には、デジタル・パルス波形が崩れてしまうからである。この崩れが大きくなると、ビット・エラーが発生する。そこで、無線受信部32,62で受信したデータの誤り率を公知の方法により、データ伝達の正確度を測定してもよい。
【0030】
あるいは、デジタル・パルス波形の崩れを測定することによりデータ伝達の正確度を得ても良い。この波形の崩れを簡単に測定するには、1周期のパルスの振幅50%のパルス幅W50と振幅10%および90%のパルス幅W10およびW90を比較すればよい。波形の崩れがほとんど無い場合には、W10およびW90の値はW50と近似の値を示すであろう。波形の崩れが大きくなると、W10の値はW50の2倍の値に近づき、W90の値はゼロに近づくからである。すなわち、パルスの立ち上がり時間および立ち下がり時間が大きくなってしまうから、ビット誤り率も大きくなり、ビット・エラーが発生する。このパルス幅測定技術も公知である。
【0031】
図5には、接続装置間及び移動無線端末受信の電波強度測定タイミングが示されている。接続装置CSa〜CSdが中央処理装置CPからの指示で、所定の時間間隔で順次送信する。この送信を他の接続装置CSa〜CSdと全移動無線端末MTa〜MTfが受信する。接続装置CSa〜CSdが受信することによって、接続装置CSa〜CSd間が近づき過ぎであるか、離れすぎであるかを示す接続電波強度情報を得ることができる。同時に、全移動無線端末MTa〜MTfが受信することによって、接続装置CSとの間で良好な通信をすることができるか否かを示す移動電波強度情報を得ることができる。
【0032】
図6には、移動無線端末送信の受信電波強度測定タイミングが示されている。移動無線端末MTa〜MTfが中央処理装置CPからの指示を接続装置CSa〜CSd経由で受けて、所定の時間間隔で順次送信する。この送信を全接続装置CSa〜CSdが受信する。全接続装置CSa〜CSdが受信することによって、どの移動無線端末MTがどの接続装置CSのサービス・エリア内に存在しているのか、あるいは、存在していないのかを示す受信電波強度情報を得ることができる。所望のゾーン内に存在する移動無線端末MTならば、いずれかの接続装置CSとの間で良好な通信をすることができるように接続装置CSa〜CSdを配置することができる。
【0033】
図7および図8には、接続装置間電波強度測定機能の動作の流れを示している。接続装置間電波強度測定機能の動作を開始するために、入力装置PCから中央処理装置CPのパーソナル・コンピュータ・インタフェイスPCIFとゾーン調整制御部14 を介してメモリ13に移動電波強度閾値、受信電波強度閾値および接続電波強度閾値を入力し、登録しておく(S1,S2、図7)。その登録しておいた電波強度閾値をメモリ13から読み出す(S3)。各接続装置CSa〜CSdは、中央処理装置CPから指示されたタイミングで図5のように順次送信し(S4)、各接続装置CSa〜CSdは、他の接続装置CSa〜CSdからの電波を受信する(S5)。このとき同時に、全移動無線端末MTa〜MTfもその電波を受信して、移動電波強度情報を得ている。
【0034】
他の接続装置CSa〜CSdから受信した電波強度を、各接続装置CSa〜CSdは測定し、接続電波強度情報を得る(S6)。各接続装置CSa〜CSdは、この接続電波強度情報を移動電波強度情報とともに伝送路重畳して、中央処理装置CPに対して送出する(S7)が、図7および図8の説明においては、移動電波強度情報に関する説明は省略する。この送出を受信した中央処理装置CPは、接続電波強度情報を伝送路信号から抽出して(S8)、所定の期間平均化して(S9)、平均化した接続電波強度情報を、接続電波強度閾値と比較する(S10)。中央処理装置CPは、接続電波強度比較情報を入力装置PCへ送り(S11、図8)、入力装置PCはそれを表示する(S12)。
【0035】
接続電波強度が閾値よりも小さい場合には(S13Y)、接続装置間の干渉のおそれも無く、所定の範囲内にあるとして動作は終了する。接続電波強度が閾値よりも小さくはなかった場合には(S13N)、接続装置CS間の干渉のおそれがあり、所定の範囲外であるとして、該当する接続装置CSの間隔を広げるように、入力装置PCは表示し指示する(S14)。入力装置PCの指示に従って指示された接続装置CSを配置して、再測定のためにステップS4にもどる。このようにして、接続装置CS間の干渉のない配置調整がなされる。
【0036】
図9および図10には、ゾーン調整機能の動作の流れを示している。各移動無線端末MTa〜MTfは、所望されるゾーンの周辺部に配置してある。これらの全移動無線端末MTa〜MTfが、良好な通信をすることができるならば、所望のゾーンを確保することができるからである。一部の移動無線端末MTに良好な通信が得られないときには、この移動無線端末MTの配置された周辺は、所望のゾーン内であるにもかかわらず、通信不能エリアであることが判明するから、ゾーン調整が必要となる。
【0037】
ゾーン調整機能の動作を開始するために、入力装置PCから中央処理装置CPのパーソナル・コンピュータ・インタフェイスPCIFとゾーン調整制御部14 を介してメモリ13に移動電波強度閾値、受信電波強度閾値および接続電波強度閾値を入力し、登録しておく(S31,S32、図9)。その登録しておいた電波強度閾値をメモリ13から読み出す(S33)。各移動無線端末MTa〜MTfは、中央処理装置CPから接続装置CSを介して指示されたタイミングで図6のように順次送信する(S34)。この送信には、各移動無線端末MTa〜MTfが各接続装置CSa〜CSdから順次送信の指示を受けたとき、あるいは接続装置間電波強度測定時(図5)に得た移動電波強度情報が含まれている。
【0038】
各接続装置CSa〜CSdは、各移動無線端末MTa〜MTfからの電波を受信する(S35)。そこで各移動無線端末MTa〜MTfからの電波を受信した各接続装置CSa〜CSdは、その電波強度を測定して受信電波強度情報を得て、また、その電波で伝えられた移動電波強度情報を得る(S36)。各接続装置CSa〜CSdは、その受信電波強度情報および移動電波強度情報を伝送路重畳して、中央処理装置CPに対して送出する(S37)。これを受信した中央処理装置CPは、受信電波強度情報および移動電波強度情報を伝送路信号から抽出して(S38)、所定の期間平均化して(S39)、平均化した受信電波強度情報および移動電波強度情報を、受信電波強度閾値および移動電波強度閾値と比較する(S40)。
【0039】
中央処理装置CPは、受信電波強度比較情報および移動電波強度比較情報を入力装置PCへ送り(S41、図10)、入力装置PCはそれを表示する(S42)。 受信電波強度および移動電波強度が閾値以上の場合には(S43Y)、各接続装置CSa〜CSdと移動無線端末MTa〜MTfとの間の通信は良好であり、所定の範囲内にあるとして動作は終了する。受信電波強度および移動電波強度が閾値以上ではなかった場合には(S43N)、所定の範囲外にあり、所望されるゾーン内であるにもかかわらず、通信不能エリアであることが判明するから、ゾーン調整が必要となる。
【0040】
そこで、該当する移動無線端末MTを近くに位置する接続装置CSのゾーンに入れるためには、接続装置CSの配置をどのように変更すべきか、入力装置PCは表示し指示する(S44)。入力装置PCの指示に従って指示された接続装置CSを配置して、再測定のためにステップS34にもどる(S45)。このようにして、所望されるゾーン内のどこからでも移動無線端末MTa〜MTfは移動無線端末MTa〜MTfと通信できることが保証される。
【0041】
以上の説明においては、説明の都合上、移動無線端末MTa〜MTf と接続装置CSa〜CSdについて一例として述べたが、移動無線端末MTと接続装置CSの数はこれに限定されるものではないことは、明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願発明の実施例を示した回路構成図である。(実施例1)
【図2】図1の重要な構成要素である中央処理装置の内部の詳細を示す回路構成図である。
【図3】図1の重要な構成要素である接続装置の内部の詳細を示す回路構成図である。
【図4】図1の重要な構成要素である移動無線端末の内部の詳細を示す回路構成図である。
【図5】接続装置間及び移動無線端末受信の電波強度測定タイミング図である。
【図6】移動無線端末送信の受信電波強度測定タイミング図である。
【図7】接続装置間電波強度測定機能の動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】図7とともに、接続装置間電波強度測定機能の動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】ゾーン調整機能の動作の流れを示すフローチャートである。
【図10】図9とともに、ゾーン調整機能の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
4 受信データ抽出部
5 音声データ受信部
6 音声交換スイッチ
7 音声データ送出部
8 送信データ重畳部
11 電波強度情報平均化部
12 電波強度判定部
13 メモリ
14 ゾーン調整制御部
15 タイミング信号生成部
16 基準発振器
17 タイミング信号伝送路重畳部
31 送受切替スイッチ
32 無線受信部
33 受信データ抽出部
34 受信情報伝送路重畳部
35 電波強度測定部
41 送信用データ抽出部
42 送信タイミング・データ生成部
43 無線送信部
44 タイミング信号抽出部
45 送信タイミング作成部
61 送受切替スイッチ
62 無線受信部
63 受信データ・タイミング抽出部
64 受信コーデック
65 電波強度測定部
66 受話器
67 送話器
71 送信コーデック
72 送信タイミング・データ生成部
73 無線送信部
75 基準クロック生成部
76 送信タイミング作成部
77 子機番号スイッチ
CP 中央処理装置
CPIF 中央処理装置インタフェイス
CSa〜CSd 接続装置
CSIF 接続装置インタフェイス
MTa〜MTf 移動無線端末
PC 入力装置
PCIF パーソナル・コンピュータ・インタフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した電波の強度情報を移動電波強度情報として、それぞれ異なるタイミングで移動電波強度情報送信をする複数の移動無線端末処理(MT)をし、
前記複数の移動電波強度情報送信を受信して、この受信した電波の強度情報である受信電波強度情報および前記移動電波強度情報を得て、それぞれ異なるタイミングで接続電波強度測定用送信をし、他からの接続電波強度測定用送信を受信して接続電波強度情報を得るための複数の接続処理(CS)をし、
前記移動電波強度情報、前記受信電波強度情報および前記接続電波強度情報を受けて所定の範囲を示す閾値と比較して、所定の範囲外となった移動無線端末処理(MT)または接続処理(CS)が前記所定の範囲内で実行できるようにゾーン調整の指示をするための中央処理(CP)をする
ゾーン調整機能付き移動無線方法。
【請求項2】
前記中央処理(CP)が、
前記移動電波強度情報、前記受信電波強度情報および前記接続電波強度情報を所定の期間受けて平均化する平均化処理(11)と、平均化した電波強度情報を所定の範囲を示す閾値と比較して前記所定の範囲内か否かを判定する判定処理(12)とを含んでいる
請求項1のゾーン調整機能付き移動無線方法。
【請求項3】
前記移動無線端末処理(MT)が、
受信した電波の電波強度測定をすることにより、前記移動電波強度情報を得るための移動電波強度測定処理(65)を含んでいる
請求項1のゾーン調整機能付き移動無線方法。
【請求項4】
前記接続処理(CS)が、
前記複数の移動電波強度情報送信を受信して、この受信した電波の電波強度測定をすることにより、前記受信電波強度情報を得るための受信電波強度測定処理(35)を含んでいる
請求項1のゾーン調整機能付き移動無線方法。
【請求項5】
前記移動電波強度情報、前記受信電波強度情報および前記接続電波強度情報が、
電波の強さを表す電界強度およびデータ伝達の正確度のうちの、すくなくとも一方を表す情報である
請求項1のゾーン調整機能付き移動無線方法。
【請求項6】
中央処理(CP)において、
所望のゾーンの周辺部における送受信から得られた前記移動電波強度情報および前記受信電波強度情報を受けて所定の範囲を示す閾値と比較して、所定の範囲外となったとき、前記移動無線端末処理(MT)または前記接続処理(CS)が前記所定の範囲内で実行できるようにゾーン調整することにより、前記所望のゾーンを確保する
請求項1のゾーン調整機能付き移動無線方法。
【請求項7】
受信した電波の強度情報を移動電波強度情報として、それぞれ異なるタイミングで移動電波強度情報送信をする複数の移動無線端末手段(MT)と、
前記複数の移動電波強度情報送信を受信して、この受信した電波の強度情報である受信電波強度情報および前記移動電波強度情報を得て、それぞれ異なるタイミングで接続電波強度測定用送信をし、他からの接続電波強度測定用送信を受信して接続電波強度情報を得るための複数の接続手段(CS)と、
前記移動電波強度情報、前記受信電波強度情報および前記接続電波強度情報を受けて所定の範囲を示す閾値と比較して、所定の範囲外となった移動無線端末手段(MT)または接続手段(CS)が前記所定の範囲内で動作できるようにゾーン調整の指示をするための中央処理手段(CP)とを含む
ゾーン調整機能付き移動無線装置。
【請求項8】
前記中央処理手段(CP)が、
前記移動電波強度情報、前記受信電波強度情報および前記接続電波強度情報を所定の期間受けて平均化する平均化手段(11)と、平均化した電波強度情報を所定の範囲を示す閾値と比較して前記所定の範囲内か否かを判定する判定手段(12)とを含んでいる
請求項7のゾーン調整機能付き移動無線装置。
【請求項9】
前記移動無線端末手段(MT)が、
受信した電波の電波強度測定をすることにより、前記移動電波強度情報を得るための移動電波強度測定手段(65)を含んでいる
請求項7のゾーン調整機能付き移動無線装置。
【請求項10】
前記接続手段(CS)が、
前記複数の移動電波強度情報送信を受信して、この受信した電波の電波強度測定をすることにより、前記受信電波強度情報を得るための受信電波強度測定手段(35)を含んでいる
請求項7のゾーン調整機能付き移動無線装置。
【請求項11】
前記移動電波強度情報、前記受信電波強度情報および前記接続電波強度情報が、
電波の強さを表す電界強度およびデータ伝達の正確度のうちの、すくなくとも一方を表す情報である
請求項7のゾーン調整機能付き移動無線装置。
【請求項12】
前記中央処理手段(CP)が、
所望のゾーンの周辺部における送受信から得られた前記移動電波強度情報および前記受信電波強度情報を受けて所定の範囲を示す閾値と比較して、所定の範囲外となったとき、前記移動無線端末手段(MT)または前記接続手段(CS)が前記所定の範囲内で動作できるようにゾーン調整することにより、前記所望のゾーンを確保する
請求項7のゾーン調整機能付き移動無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−128957(P2006−128957A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313177(P2004−313177)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】