説明

タイプ1ライアノジン受容体に基づく方法

この発明は、心不全の間の欠陥のある骨格筋機能を治療する方法及びそのような治療において有用な化合物を同定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
この出願は、2003年3月7日に出願された仮出願米国連続番号60/452,664の優先権を主張し、その内容を引用により本明細書に取り込む。
本明細書に開示された発明は、ナショナルインスティチュートオブヘルス、ヘルスアンドヒューマンサービスの米国部門の交付番号R01 HL61503−05のもとで、政府の支持においてなされた。従って、米国政府はこの発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の背景
この出願を通して、様々な刊行物が著者及び発行年により括弧で引用される。これらの引用に関する全ての引用文献は、特許請求の範囲の前に明細書の終わりに見いだされる。これらの刊行物全体の開示は、引用によりこの出願に取り込まれ、この発明が属する分野の事情を、より完全に記載する。
【0003】
横紋筋の収縮は、カルシウム(Ca2+)が、細管から、筋小胞体(SR)として知られる筋肉細胞へ放出される時に開始する。SR上のライアノジン受容体(RyR)と呼ばれるカルシウム放出チャネルは、興奮−修飾(EC)のカップリングに必要とされる。タイプ2のライアノジン受容体(RyR2)は心臓に見いだされ、一方、タイプ1のライアノジン受容体(RyR1)は骨格筋に見いだされる。RyR1受容体は、4つの565,000ドルトンのRyR1ポリペプチド及び4つの12,000ドルトンのFK−506結合蛋白質(FKBP12)からなるテトラマーである。FKBP12sはRyRチャネル機能を安定化させ(Brillantes et al.,1994)、そして隣のRyRチャネル間のカップリングされた関門(gating)を容易にする調節サブユニットである;後者はCa2+の細胞内保存物を放出する特化されたSRセクション内で密集したアレイにパックされて、それにより筋肉の修飾を誘導する。FKBP12に加えて、RyR1マクロ分子複合体もPKAの触媒サブユニットと調節サブユニット、及びホスファターゼPP1を含む(Marx et al.,2001)。
【0004】
一つのFKBP12分子は各RyR1サブユニットに結合する。FKBP12の解離はチャネルの生物物理特性を顕著に変え、亜伝導性(subconductance)状態の出現、及びチャネルの開確率(Po)の増加をもたらす(Brillantes et al.,1994;Gaburjakova et al.,2001)。さらに、RyR1チャネルからのEC12の解離は、カップリングされた関門を阻害し、集団としてよりむしろ確率的に関門するチャネルをもたらす(Marx et al.,1998)。RyRチャネルのアレイのカップリングされた関門は、筋肉の収縮を調節する有効なECカップリングに重要であると考えられる(Marx et al.,1998)。FKBPsは、広く発現されて様々な細胞機能の役に立つシス−トランスのペプチジル−プロリルイソメラーゼである(Marks,1996)。FKBP12sは、骨格筋型(RyR1)(Brillantes et al.,1994;Jayaraman et al.,1992)及び心臓型(RyR2)(Kaftan et al.,1996)の筋肉Ca2+放出チャネル、並びにタイプ1イノシトール1,4,5−3リン酸受容体(IP3R1)(Cameron et al.,1997)、及びタイプ1トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)受容体(TβRI)(Chen et al.,1997)として知られる、関連する細胞内放出チャネルに強く結合して、その機能を調節する。
【0005】
心不全(HF)は、世界的に死亡率及び罹患率のトップの原因である。当該疾患は、不可欠な器官の低灌流(hypoperfusion)を導く心臓の収縮機能の累進的低下により特徴付けされる。さらに、中程度の心機能不全(cardiac dysfunction)の多くの患者は、彼らのHFの程度のみによっては説明できない運動能力の実質上の欠陥を有する(Harrington and Coats,1997;Minotti et al.,1991;Sullivan and Hawthorne,1995;Wilson,1995)。これは、根本的な心筋の欠陥に加えて、HFの患者において根本的な骨格筋の欠陥が存在するという仮説を導いてきた(Minotti et al.,1991)。
【0006】
ほとんどのHF患者は、彼らの顕著に低下した運動上の忍耐力のため、生命の質の発達性の劣化を経験する。より重度のHFの場合(ニューヨークハートアソシエーションクラスIV)、2年の死亡率が50%を超える(Braunwald,1992)。HFの患者及び動物のモデルは、慢性の高アドレナリン作用性刺激を含む不順応性応答により特徴付けされる(Bristow et al.,1982)。HFにおける慢性アドレナリン作用性刺激の病理上の重要性は、β−アドレナリン刺激及び左心室の心筋壁のストレスを低下させて心室リモデリングを有力に逆転させる治療上の戦略により支持される(Barbone et al.,2001;Bristow et al.,1996)。
【0007】
HFの間の慢性のβアドレナリン刺激は、心臓のRyR2受容体のcAMP−依存性プロテインキナーゼ(PKA)の高リン酸化に付随する(Marx et al.,2000)。PKA−高リン酸化チャネルを通したSRのCa2+リークにより明らかにされた、結果としてのRyR2の欠陥性機能が、HFにおける抑圧された修飾機能及び不整脈発生に対して寄与する因子として提案された(Marx et al.,2002;Marx et al.,2000)。この仮説に一致して、弱った心臓におけるRyR2のPKA高リン酸化が、動物モデルと心臓移植を経験したHF患者の両方において生体内にて証明された(Antos et al.,2001;Marx et al.,2000;Ono et al.,2000;Reiken et al.,2001;Semsarian et al.,2002;Yano et al.,2000)。
【0008】
HFの動物モデルを用いて、加速された疲労の発現を含む抑圧された収縮機能が、骨格筋(Lunde et al.,2002;Perreault et al.,1993)と横隔膜筋(MacFarlane et al.,2000)の両方において証明された。これらの研究においては、Ca2+シグナリングの欠損が提案されたが、HFにおける欠損した骨格筋機能の下にある分子機構は今のところ明らかにされていない。
【0009】
発明の概要
本発明は、タイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を第1薬剤が阻害するか否かを決定する方法を提供し、(a)別々に、(i)RyR1受容体を発現する細胞又は(ii)そのような細胞からの抽出物からの筋形質網状構造又は細胞質網状構造を、(1)上記の第1薬剤とRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を引き起こすことが知られている第2薬剤の両方と、及び(2)そのような第2薬剤の存在下でRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離に適した条件下で、そのような第2薬剤のみと、接触させ、そして(b)第2薬剤のみの存在下、及び第1と第2薬剤の両方の存在下で、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を測定するが、第1と第2薬剤の両方の存在下でのRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度が第1薬剤のみの存在下でのRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度よりも小さいことが、第1薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を阻害することを示し、それにより、第1薬剤がタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を阻害するか否かを示す。
【0010】
この発明は、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害する薬剤を同定するために、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害することが知られていない多数の薬剤をスクリーニングする方法も提供し、(a)(i)RyR1受容体を発現する細胞又は(ii)そのような細胞からの抽出物からの筋形質網状構造又は細胞質網状構造を引き起こすことが知られている多数の薬剤の一つ又は複数と、そのような解離薬剤の存在下でRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を許容する条件下で接触させ;そして(b)そのような薬剤の不在下でのFKBP12結合蛋白質の解離の程度に比較して、多数の薬剤の一つ又は複数の存在下でRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度が低下するか否かを測定し;そして(c)工程(b)において測定された解離の程度が一つより多い薬剤の存在下において低下したなら、別々に、そのような薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を阻害するか否か測定し、それによりそのような多数の薬剤のうちのそのような薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害すると決定する。
【0011】
発明は、さらに、組成物を製造する方法を提供するが、薬剤を用意し、本発明によるタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を当該薬剤が阻害するか否かを決定し、RyR1受容体と離して当該薬剤を回収し、そして担体と当該薬剤を混合することを含む。
【0012】
発明は、さらに、欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法を提供するが、被験者に、被験者の骨格筋のタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を低下させるのに有効な薬剤をある量投与し、それにより被験者の骨格筋の機能を軽減させることを含む。
【0013】
この発明は、さらに、欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法を提供するが、被験者に、被験者の骨格筋のタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体/カルシウム放出チャネルへのFKBP12結合蛋白質の結合を模倣するのに有効な薬剤をある量投与することによりチャネルの開口の確率を減じ、それにより被験者の骨格筋の機能を軽減させることを含む。
【0014】
この発明は、さらに、欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法を提供するが、被験者に、本明細書にて開示された何れかの方法によりタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害するために決定された治療上有効な量の薬剤、又はそのような薬剤の構造上及び機能上の類似体又は相同体を投与することを含む。
【0015】
最後に、この発明は、本明細書にて開示された何れかの方法によりタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害するために決定された薬剤の異常性の治療のための使用であって、タイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害することにより異常性が緩和される使用を提供する。
【0016】
発明の詳細な説明
定義
以下の定義は、この発明を理解することにおいて助けとなる。
【0017】
本明細書において使用される「RyR1受容体」は、骨格筋の筋小胞体(SR)上に見いだされるカルシウム(Ca2+)放出チャネルであるタイプ1ライアノジン受容体を意味する。「RyR2」受容体は、心臓の筋小胞体(SR)上に見いだされるカルシウム(Ca2+)放出チャネルであるタイプ2ライアノジン受容体を意味する。
【0018】
「FKBP12」は、約12,000ドルトンの分子量を有するFK−506結合蛋白質を意味し、RyR1受容体チャネルに結合してその機能を制御する。「FKBP12.6」は、約12,000ドルトンの分子量を有するFK−506結合蛋白質を意味し、RyR2受容体チャネルに結合してその機能を制御する。
【0019】
「PKA−リン酸化」は、酵素プロテインキナーゼA(PKA)によりリン酸基でヒドロキシル基を置換する反応を意味する。
RyR1又はRyR2受容体の「逆−リン酸化(back-phosphorylation)」は、プロテインキナーゼAによる受容体のインビトロリン酸化を意味する。
【0020】
発明の態様
この出願は、HFのイヌ及びラットのモデルからの骨格筋におけるRyR1チャネルがPKA−高リン酸化されて、FKBP12が消耗し、そして増加した活性を呈したことで、上記チャネルが「リーキー」であることを示唆することを開示する。RyR1のPKA高リン酸化は、HF骨格筋における障害をもったSR Ca2+放出及び初期の疲労に相関した。これらの発見は、SNS刺激に応答してPKAリン酸化によりRyR1の機能を制御する新規な機構を明らかにする。RyR1のPKA高リン酸化は、HFにおける障害を持つ骨格筋機能に寄与するかもしれず、一般化されたEC共役筋疾患が心不全において役割を担うかもしれないことを示唆する。
【0021】
特定すれば、本発明は、タイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を第1の薬剤が阻害するか否かを決定するための方法を提供し、(a)別々に、(i)RyR1受容体を発現する細胞又は(ii)そのような細胞からの抽出物からの筋形質網状構造又は細胞質網状構造を、(1)上記の第1薬剤とRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を引き起こすことが知られている第2薬剤の両方と、及び(2)そのような第2薬剤の存在下でRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離に適した条件下で、そのような第2薬剤のみと、接触させ、そして(b)第2薬剤のみの存在下、及び第1と第2薬剤の両方の存在下で、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を測定するが、第1と第2薬剤の両方の存在下でのRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度が第1薬剤のみの存在下でのRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度よりも小さいことが、第1薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を阻害することを示し、それにより、第1薬剤がタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を阻害するか否かを示す。
【0022】
この発明は、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害する薬剤を同定するために、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害することが知られていない多数の薬剤をスクリーニングする方法も提供し、(a)(i)RyR1受容体を発現する細胞又は(ii)そのような細胞からの抽出物からの筋形質網状構造又は細胞質網状構造を引き起こすことが知られている多数の薬剤の一つ又は複数と、そのような解離薬剤の存在下でRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を許容する条件下で接触させ;(b)そのような薬剤の不在下でのFKBP12結合蛋白質の解離の程度に比較して、多数の薬剤の一つ又は複数の存在下でRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度が低下するか否かを測定し;そして(c)工程(b)において測定された解離の程度が一つより多い薬剤の存在下において低下したなら、別々に、そのような薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を阻害するか否か測定し、それによりそのような多数の薬剤のうちのそのような薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害すると決定する。
【0023】
本明細書に記載された方法の何れかの一つの態様において、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を測定することは、RyR1受容体のプロテインキナーゼAのリン酸化を測定することを含む。一つの態様において、例えば、RyR1受容体のプロテインキナーゼAのリン酸化を測定することは、RyR1受容体の、リン酸化された形態には結合するがリン酸化されていない形態には結合しない抗体の結合を検出することを含む。別の態様において、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を測定することは、カルシウム感受性蛍光染料の蛍光を測定することを含む。さらなる態様において、RyR1受容体は、ヒトRyR1受容体である。
【0024】
本発明の方法の一つの態様においては、細胞を薬剤に接触させ、そしてRyR1受容体をそのような細胞に対して内因性である核酸から発現させる。別の態様においては、細胞を薬剤と接触させ、そしてRyR1受容体をそのような細胞にトランスフェクトした核酸から発現させる。さらなる態様においては、細胞が細菌、酵母、昆虫、両生類、植物又は哺乳類細胞である。哺乳類細胞は、例えば、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS−7細胞、LM(tk)細胞、マウス胚性繊維芽NIH−3T3細胞、マウスY1細胞、293ヒト胚性腎臓細胞及びヒーラ細胞を含む。昆虫細胞は、例えば、Sf9細胞、Sf21細胞及びイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)5B−4細胞を含む。両生類細胞は、例えば、アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞及びアフリカツメガエル黒色胞細胞を含む。
【0025】
別の態様において、細胞は、欠陥を有する心臓を持つ被験者からの骨格筋細胞である。被験者は、例えば、心臓の欠陥が、急速な心臓ペーシング又はヒトにより誘導された動物であり得る。
【0026】
この発明は、組成物を製造する方法も提供するが、薬剤を用意し、本明細書に記載された方法の何れかによりタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を当該薬剤が阻害するか否かを決定し、RyR1受容体と離して当該薬剤を回収し、そして担体と当該薬剤を混合することを含む。
【0027】
この発明は、さらに、欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法を提供するが、被験者に、被験者の骨格筋のタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を低下させるのに有効な薬剤をある量投与し、それにより、被験者の骨格筋の機能を軽減させることを含む。一つの態様において、上記薬剤は、JTV519,1,4−ベンゾチアゼピン誘導体である(Yano et al.,2003)。
【0028】
この薬剤は、以下に記載される他の本発明の方法及び組成物における使用に関して構想される。別の態様において、上記薬剤は、被験者の骨格筋のタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体のプロテインキナーゼA(PKA)リン酸化を低下させる。さらなる態様において、上記薬剤は、ベータアドレナリン様ブロッカーではない。
【0029】
この発明は、さらに、被験者の欠陥のある骨格筋機能を軽減するのに有効なベータアドレナリン様ブロッカーをある量被験者に投与することを含む、欠陥のある骨格筋機能を有する患者を治療する方法を提供する。
【0030】
一つの態様において、ベータアドレナリン様ブロッカーは、カルベジロール(Coreg(登録商標)、スミスクラインビーチャム)又はメトプロロール(Toprol−XL(登録商標)、アストラゼネカ)である。別の態様において、カルベジロールの用量は、1日あたり経口で6.25mgから1日2回経口で50mgまでである。別の態様において、メトプロロールの用量は、1日あたり経口で12.5から200mgである。
【0031】
上記の方法の何れかの一つの態様において、被験者の欠陥のある骨格筋機能は、心不全の間に起こる。別の態様において、上記薬剤は、被験者の心不全を軽減もする。さらなる態様において、上記薬剤は、ベータアドレナリン様ブロッカーではない。上記薬剤は、例えば、ダントロレン、又はダントロレンの誘導体、相同体、類似体、代謝物、又はプロドラッグであり得る。
【0032】
上記の方法の何れかの一つの態様において、被験者の欠陥のある骨格筋機能は、慢性の閉塞性肺疾患、高血圧、喘息又は甲状腺機能亢進症の間に起こる。
この発明は、さらに、欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法を提供するが、被験者に、被験者の骨格筋のタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体/カルシウム放出チャネルへのFKBP12結合蛋白質の結合を模倣するのに有効な薬剤をある量投与することにより、チャネルの開口の確率を減少させ、それにより被験者の欠陥のある骨格筋機能を軽減させることを含む。一つの態様において、被験者の欠陥のある骨格筋機能は、心不全の間に起こる。別の態様において、上記薬剤は、被験者の心不全を軽減もする。さらなる態様において、被験者の欠陥のある骨格筋機能は、慢性の閉塞性肺疾患、高血圧、喘息又は甲状腺機能亢進症の間に起こる。
【0033】
この発明は、さらに、欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法を提供するが、被験者に、本明細書に開示された方法の何れかにより、タイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害すると決定された薬剤又はそのような薬剤の構造上及び機能上の類似体又は相同体を治療上有効な量投与することを含む。
【0034】
上記の方法の何れかの一つの態様において、被験者の欠陥のある骨格筋機能は、心不全の間に起こる。別の態様において、上記薬剤は、被験者の心不全を軽減もする。さらなる態様において、被験者の欠陥のある骨格筋機能は、慢性の閉塞性肺疾患、高血圧、喘息又は甲状腺機能亢進症の間に起こる。またさらなる態様において、上記薬剤は、ベータアドレナリン様ブロッカーではない。
【0035】
この発明は、さらに、異常性を治療するための、本明細書に開示された方法の何れかにより、タイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害すると決定された薬剤の使用を提供するが、異常性は、タイプ1(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害することにより軽減される。一つの態様において、上記化合物は、ベータアドレナリン様ブロッカーではない。別の態様において、薬学組成物の製造は、上記薬剤を治療上有効な量、薬学上受容可能な担体と混合することを含む。
【0036】
この発明は、さらに、本明細書に開示された方法の何れかにより同定された化学化合物を提供する。
この発明は、またさらに、RyR1受容体に特異的に結合する組成物を作成する方法を提供するが、本明細書に開示された方法の何れか一つを用いて化学化合物を同定し、当該化学化合物又はその新規な構造上及び機能上の類似体又は相同体を合成し、そして薬学上有効な量の当該化学化合物を薬学上受容可能な担体と混合することを含む。
【0037】
この発明は、(a)本明細書に開示された方法の何れかを用いて同定された化学化合物をある量、及び(b)細胞膜を通過することができる薬学上受容可能な担体を含む、薬学組成物も提供する。
【0038】
この発明は、さらに、RyR1受容体チャネル機能に関するアッセイを提供するが、RyR1受容体のプロテインキナーゼA(PKA)リン酸化、RyR1受容体によるFKBP12結合蛋白質の解離の程度、RyR1受容体チャネルの亜伝導状態、RyR1受容体チャネルの活性化のためのCa2+感受性、又はRyR1受容体チャネルの開確率(Po)を測定することを含む。
【0039】
主題の発明において、「薬学上有効な量」は、化合物が有効な疾患を罹患する被験者に投与されたときに、疾患の軽減(reduction)、沈静(remission)、又は緩解(regression)を導く、化合物の何れかの量である。
【0040】
一つの態様において、治療上有効な量の化合物は、1日あたり、約0.03から約1000mgの間である。別の態様において、治療上有効な量は、1日あたり約0.30から約300mgの間である。一つの態様において、治療上有効な量は、1日あたり約1.0から約100mgの間である。
【0041】
さらに、本明細書にて使用される、句「薬学上受容可能な担体」は、標準の薬学上受容可能な担体の何れも意味する。例は、限定ではないが、リン酸緩衝塩、生理食塩水、水、及びエマルジョン、例えば、オイル/水エマルジョンを含む。一つの態様において、担体は水ではない。
【0042】
最後に、この発明は、本明細書に開示された化合物又は薬剤の相同体、類似体、アイソマー、プロドラッグ及び代謝物を提供する。化学化合物の「構造上及び機能上の類似体」は、化合物の構造と類似の構造を有するが、特定の成分(1つ又はそれ以上)に関してその化合物とは異なる。化学化合物の「構造上及び機能上の類似体」は、一定の要素の追加により、それの前のものから形成される(formed from the one before it)各々の化合物のシリーズの一つである。用語「類似体」は、用語「相同体」よりも広く、これを包含する。「アイソマー」は、同じ分子式を有する化学化合物であるが、原子の異なる分子構造又は異なる配置(arrangement)が存在する(space)。アイソマーは、構造アイソマー、位置的アイソマー、ステレオアイソマー、光学アイソマー、又はシス−トランスアイソマーであってよい。一般に、「プロドラッグ」は、要求される化合物に生体内で容易に変換可能な化合物の機能性誘導体になる。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び製造のための慣用の手法は、例えば、Design of Prodrugs,ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載される。「代謝物」は、化合物の生物学的環境への導入に際して生産される活性種を含む。
【0043】
受容体選択的化合物をデザイン及び合成するアプローチは、よく知られており、伝統的な医化学及びコンビナトリアルケミストリーの新規な技術を含み、両方とも、コンピューターにより補助される分子モデリングにより支持される。そのようなアプローチにより、化学者及び薬学者らは、これらの受容体サブタイプにおいて活性を有する構造をデザインして合成するために、受容体を結合すると決定された標的化受容体サブタイプ及び化合物の構造に関する彼らの知見を使用する。
【0044】
コンビナトリアルケミストリーは、化学的ビルディングブロックの異なる組み合わせを用いて新規な化合物を集合させることによる、様々な新規な化合物の自動化された合成を含む。コンビナトリアルケミストリーの使用は、化合物を生成するプロセスを多大に加速させる。結果の化合物のアレイはライブラリーと呼ばれ、目的の受容体において十分なレベルの活性を証明する「リード化合物」に関してスクリーニングするために使用される。コンビナトリアルケミストリーを用いることにより、目的の受容体標的に対して多大に偏ったと認識される化合物の「一本化された(focused)」ライブラリーを合成することが可能である。
【0045】
リード化合物が同定されたら、コンビナトリアルケミストリーの使用によるか又は伝統的医化学の使用によるか又はそれ以外かに拘わらず、様々な相同体及び類似体が製造されることにより、化学構造と生物活性又は機能活性の間の関係の理解を促進する。これらの研究は、構造活性関係を規定し、次に、改善された能力、選択性及び薬力学特性を有する薬剤をデザインするために用いられる。コンビナトリアルケミストリーは、リードの最適化のために様々な構造を迅速に製造するのにも用いられる。伝統的な医化学は、一度の一つの化合物の合成を含み、さらなる改善のため、及び自動化された技術により接近可能でない化合物を生成するためにも使用される。そのようなドラッグが規定されたら、薬学工業及び化学工業を通して利用された標準化学製造方法論を用いて、生成物がスケールアップされる。
【0046】
この発明は続く実験の詳細から良好に理解される。しかしながら、当業者は、特定の方法及び考察された結果は単に発明の例示であって、以後に続く特許請求の範囲において、より完全に記載されるものとして容易に認識する。
【0047】
実験の詳細
本出願は、骨格筋のEC共役に必要なSR上のRyR1カルシウム放出チャネルの組成と機能が、心不全の動物モデルにおいてPKA高リン酸化のために変動するという発見に基づく。心不全の間、RyR1のPKA高リン酸化は制御サブユニットFK506結合蛋白質(FKBP12)のRyR1チャネルマクロ分子複合体中での消耗を引き起こし、変更された開門(gating)をもつチャネルをもたらす。RyR1のPKA高リン酸化は、心不全の骨格筋において変更されたCa2+シグナリング及び初期の疲労と相関する。RyR1の構造及び機能の欠陥は、心筋のRyR2に関して以前に報告されたものと類似していることから、心不全は心筋と骨格筋の両方を含む、一般化されたEC共役筋疾患であることを示唆する。本発見は、実際に、不適応の応答を示して筋肉の機能のさらなる障害をもたらす心不全の慢性的高アドレナリン様状態のために、骨格筋が心筋のように変化を受けることを示す。
【0048】
材料と方法
組換え体RyR1を発現及び精製すること
組換え体WT及び変異体RyR1を発現させ、単離し、そして特性決定したが、以前に記載された通りにした(Brillantes et al.,1994;Gaburjakova et al.,2001)。簡単に言えば、RyR1のcDNAをNheI及びXbaI部位を用いて、哺乳類発現ベクターpCMV5にクローン化した。HEK293細胞を最小必須培地(MEM)中で25mMHEPES(Gibco)と共に、10%(v/v)胎児ウシ血清(Gibco)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mg/ml)、及びL−グルタミン(2mM)を追加して生育させた。一つのT175フラスコ(50%コンフルエント)のHEK293細胞に、20μgのRyR1 cDNAを、Ca2+リン酸沈殿法を用いてトランスフェクトした(Gaburjakova et al.,2001)。48時間後のトランスフェクション細胞を2回洗浄して、リン酸緩衝塩溶液中にスクラップし、そして2500xgにて5分間、4℃における遠心分離により沈殿させた。記載されたとおり、マイクロソームを調製し、等分し、そして−80℃に保存した(Gaburjakova et al.,2001)。
【0049】
イムノブロット、免疫沈殿及びリン酸化
骨格筋の筋小胞体(SR)膜を、イヌの後肢骨格筋組織から調製した。簡単に言えば、約10gの組織を切り刻み、そしてNaF(5mM)及びプロテアーゼ阻害剤(1.0mMベンザミジン、5.0μg/mlペプスタチン、5.0μg/mlロイペプチン、1.0μg/mlアプロチン、1.0mMペファブロック)を含む50mlの10mM Tris−マレイン酸バッファー、pH6.8中でホモジェナイズした。ホモジェネートを20分間4,000xgにて遠心分離し、そして上清を再度10,000xgにて20分間遠心分離した。結果の上清を40,000xgにて30分間遠心分離し、そして沈殿物を、0.3Mショ糖及び0.9%NaClを含む0.2mlの10mM Tris−マレイン酸(pH6.8)に懸濁した。蛋白質の濃度はBradfordの方法により、ウシ血清アルブミンを標準として測定し、サンプルを等分し、液体窒素中で急速凍結し、そして−80℃において使用まで保存した。骨格筋溶解物は、50mM Tris−HCl(pH7.4),200mM NaCl,20mM NaF,1.0mM NaVO,1.0mM DTT,及びプロテアーゼ阻害剤を含む1.0mlのバッファー中でホモジェナイズされた1.0gのイヌ組織又は健康な(whole)ラットのひらめ筋から調製した。蛋白質濃度を測定後に、上清を等分し、そして使用まで−80℃に保存した。免疫沈殿に関しては、骨格筋SRサンプルを0.5mlのIPバッファー[50mM Tris−HCl(pH7.4),0.9% NaCl,0.5mM NaF,0.5mM NaVO,0.25% Triton X−100,及びプロテアーゼ阻害剤]に懸濁して、抗−RyR抗体と一晩4℃においてインキュベートした。イムノブロットは、以下の一次抗体:抗−PKA触媒サブユニット(1:1000)、抗−PPl(1:1000)、(Transduction Labs)、抗−FKBP(1:1000)(Jayaraman et al.,1992)、抗−RyR−5029(1:3000)(Jayaraman et al.,1992)、抗体−PDE4D3(1:1000)[カサガイ(keyhole limpet)のヘモシアニン(KLH)へのコンジュゲーションのために追加されたカルボキシル末端のシステインを有するヒトPDE4D3の残基1−14、及び残基6のNに代えてTを有する相当するラットの配列の2つのPDE4D3ペプチド(MMHVNN/TFPFRRHSW(C))の混合物により免疫されたウサギにおいて生じさせた、親和精製されたポリクローナル抗体]、抗−mAKAP(1:750)[KLHへのコンジュゲーションのために追加されたアミノ末端のシステインを有するmAKAP配列(C)ETRFNNRQDSDALKSSDDに相当するペプチドにより免疫されたウサギにおいて生じさせた、親和精製されたポリクローナル抗体]を用いて実施した。プロテインA−セファロースビーズを加え、4℃において1時間インキュベートし、そしてIPバッファーにより3回洗浄した。洗浄後に、膜をペルオキシダーゼ−コンジュゲートされたヤギの抗ウサギ又はヤギ抗マウスのIgG抗血清(1:3000、ベーリンガーマンハイム)と60分間室温においてインキュベートし、Tris−緩衝塩(TBS)、0.1% Tween20により3回洗浄し、そして増強されたケミルミネッセンスにより発色させた(ECL,アマシャム)。
【0050】
リン酸化に関しては、ビーズを1Xリン酸化バッファー[8mM MgCl,10mM EGTA,50mM Tris/ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルフォン酸)、pH6.8]により洗浄し、媒質のみ、PKA触媒サブユニット(5ユニット、シグマ)PKAプラスPKA阻害剤(PKI5−24,500nM,カルビオケム)、又はcAMP(10μM)の何れかを含む、10μlの1.5Xリン酸化バッファーに懸濁した。免疫沈殿されたRyR1のリン酸化は、Mg−ATP(33μM),[γ−32P]−ATPにより開始して、5μlの停止溶液(4%SDS及び0.25M DTT)と共に室温において5分間インキュベートした後に停止させた。脱リン酸化実験に関しては、cAMP反応をPKIの添加、続いてプロタミン(1mg/ml)+/−オカダ酸(5μM)の添加により停止した。サンプルを95℃に加熱し、6%SDS−PAGEによりサイズで分画し、そしてRyR2放射活性をMolecular Dynamics Phosphorimager及びImageQuantソフトウエア(アマシャムファルマシアバイオテック)を用いて定量した。非特異的リン酸化(PKIにより阻害されない)を差し引いて、32P−リン酸化を高親和性[H]−ライアノジン結合の量で割ることにより、32P/RyR1比を計算した(RyR1あたり一つの高親和性ライアノジン結合部位)。全ての実験は3通りに実施され、研究者はサンプルの源を知らなかった。
【0051】
FKBP12結合
マイクロソーム(200μg)を、プロタミン阻害剤を含む0.1mlのイミダゾールバッファー(5mMイミダゾール、pH7.4,及び0.3Mショ糖)に懸濁して、Mg−ATP(100μM)及びPKA(10ユニット)又はcAMP(10μM)の何れかと、30℃において30分間インキュベートした。サンプルを95,000xgにて10分間遠心分離し、そして上清を回収した。沈殿物を2回0.2mlイミダゾールバッファーで洗浄し、そして95,000xgにて10分間遠心分離した。最終沈殿物を0.1mlのイミダゾールバッファーに懸濁した。いくつかの実験においては、沈殿物をcAMPでリン酸化して、次にアルカリホスファターゼにより(1:100 酵素:蛋白質)又はプロタミン(1mg/ml)により内因性ホスファターゼを活性化することにより、脱リン酸化した。組換え体FKBP12をこれらのサンプルに4時間4℃において添加することにより、RyR1への結合を許容した。沈殿物と上清をSDS−PAGEによりサイズ分画して、FKBP12に関してイムノブロットした。
【0052】
筋肉の機能の測定
ひらめ筋を水浴バス中で重力変換器(force transducer)に付着させ(attached)、5%のCO/95%のOで泡立たせた2mMのCa2+を含むクレブスヘンゼライトで潅流した。筋肉を60分間休ませ、次に、単一のパルスにより10秒間隔で刺激した。痙攣の力、痙攣の収縮の時間、及び半弛緩時間を測定した。刺激は、1−30Vにおいて1Hzにおいてであった。50Hzと600msの刺激頻度及び強縮性時間(titanic duration)を用いて、強直性痙攣症の力、半収縮時間、及び半弛緩時間も測定した(Lunde et al.,2001)。疲労は、筋肉の強直性痙攣を2秒ごとに導入し、力が最大の40%に下がるための時間を測定することにより、生じさせた。
【0053】
単一チャネルの記録
対照又はHFの骨格筋からのSR小胞、又は組換え体WT又は変異体RyR1をトランスフェクトされたHEK293細胞からの小胞を、平坦な脂質2層に取り込ませ、そしてRyR1の単一チャネル記録を記載された通りに実施した(Brillantes et al.,1994;Gaburjakova et al.,2001)。WT RyR1を含むマイクロソームを上で記載されたとおりにPKAでリン酸化した。小胞をcisチェンバーに加え、そして3:1のホスファチジルエタノールアミン/ホスファチジルセリンからなる平坦脂質2層に融合するように誘導した(Avanti Polar Lipids)。2層のカップは、0.15mmの開口を有するポリスチレンから作成した。cisチェンバーに添加されたKClにより融合を促進させた。単一Ca2+−放出チャネルの取り込みの後に、cisチェンバーをcis溶液で潅流することにより、KCl勾配を消去した。
【0054】
チャネルの分析のために使用された溶液は、以下のとおりであった:trans溶液、250mM Hepes,53mM Ca(OH),50mM KCl,pH=7.35;cis溶液、250mM HEPES,125mM Tris,50mM KCl,1mM EGTA,0.5mM CaCl,pH=7.35。cisコンパートメント中の遊離の[Ca2+]は、Chelatorソフトウエアを用いて計算した(Schoenmakers et al.,1992)。transチェンバーは、Axon200増幅器(Axon Instruments)のヘッドステージへ、Ag/AgCl電極及びAgar/KClブリッジを用いて接続した。cisチェンバーは、類似の電極によりアースした(held at ground)。単一のチャネルの電流を、1Hzにおいて8−穴Besselフィルター(Warner Instruments)にてフィルターをかけ(filtered)、そして4kHzにおいてデジタル化した。データはPentiumコンピューター上でAxoScopel及びDigidata1200インターフェイス(Axon Instruments)を用いて回収した。pClamp6(Axon Instruments)を単一チャネルデータを分析するのに用いた。開事象及び開門頻度の開確率及び寿命を、少なくとも2分の連続記録を用いて50%閾値分析により確認した。各実験の結論において、ライアノジン(5μM)をcisチェンバーに適用することにより、チャネルがライアノジン受容体であったことを確認した。平均開及び閉休止時間分析を、Fetchanソフトウエア(Axon Instruments)を用いて実施し、そして開時間分散を二指数最小二乗回帰分析(two-exponential least-square regression analysis)により記載されたとおりに適合させた(Marx et al.,2001)。全てのデータを平均±SEとして表した。不対スチューデンツt−試験を実験間の平均値の統計比較の為に使用した。P<0.05の値が有意であると考えた。
【0055】
イヌの心不全モデル
28から30kgの重さの7匹のイヌをこの研究に用いた。早い左心室のペーシング(pacing)を用いることにより、前に記載されたとおりに心不全を誘導した(Wang et al.,1997)。動物たちは、2つのグループのうちの一つに指定された:1)心臓の器具以外は正常(n=2)、及び2)心不全(n=5)。グループ2において、ベースラインの測定が得られた後に、早いLVペーシングが210bpmにて3週間開始し、外部ペースメーカーにより240bpmにてさらに2週間のペーシングが続いた(EV4543,Pace Medical,Inc)。この早い心臓のペーシングの養生法は、よく特性決定された重度のHFを誘導するために以前に使用された(Wang et al,1997)。ペースメーカーを止めた後、少なくとも40分間は血流力学の測定を実施した。早いLVペーシングに供された動物における、圧力割る時間のベースラインのLVの変化(dP/dtmax,mmHg/s)は、3420±105であり、1722.2±322に落ち(p<0.01)、HFの発症と一致する。
【0056】
ラットの梗塞モデル
12匹のSpraque−Dawleyラット(300−400g)及び2匹のWistarラットを、左側の開胸により左の冠動脈を縛った(ligation)。処置の間は、全ての動物に挿管して酸素を供給した(Harvard Apparatus,Holliston,MA)。追加の6匹のSpraque−Dawleyラット及び3匹のWistarラットを冠動脈を縛らずにシャム手術した(対照グループ)。1週間後に、全18匹のラットに超音波心臓検査を行った。冠動脈を縛って6カ月後に、超音波心臓検査を繰り返して、血流力学データを回収した。このため、Millarカテーテル(Millar Instruments,Inc.,Houston,TX)を右の頸動脈に挿入して、左心室まで進ませた。Millarの圧力変換カテーテル(Millar Instruments,Inc.,Houston,TX)及びMacLab(AD Instruments,Grand Junction,CO)を用いて、左心室エンドの拡張期圧、左心室の収縮期圧、平均大動脈圧、心臓レート、心拍及び左心室のdP/dtを測定した。次に、動物を安楽死させて、ひらめ筋を回収した。
【0057】
Ca2+−スパーク測定
繊維の束(4−7繊維)を弛緩溶液(mMにて:K−グルタミン酸 140、HEPES 10、MgCl 10、EGTA 0.1,pH=7.0)中で伸筋のディジトラスロンガム(digitorus longum)(EDL)筋肉からマニュアルで切り出した。束を記載されたとおりにマウントし(Lacampagne et al.,1998)、そして0.01%サポニンを含む弛緩溶液に30−40秒間浸透させた。当該溶液を、イメージの記録のために内部培地(mMにて:K−グルタミン酸 140、NaATP 5,グルコース 10,HEPES 10,MgCl 4.4,EGTA 1.1,CaCl 0.3,Fluo−3 0.05(ペンタカリウム塩、Tef−labs,USA),pH=7.0)に代えた。
【0058】
蛍光イメージを、ラインスキャンモードにて操作された(x vs.t,1.9ms/ライン)Zeiss LSM 510 NLO共焦点システム(63Xオイル浸漬、NA=1.4,Zeiss France)にて捕捉した。Fluo−3をアルゴン/クリトンレーザーにより488nmにおいて励起し、放射された蛍光を約525nmにおいて記録した。ポテンシャルスパークエリアは自動検出アルゴリズムを用いて経験的に同定した(Cheng et al.,1999)。イメージに関する平均F値は、ポテンシャルスパークエリアを無視して、各空間位置において時間的な(temporal)Fを合計して平均化することにより、計算した。このF値を、次に、△F/Fイメージピクセル−バイ−ピクセルを創製するために使用した。Ca2+スパークの選択及び分析は、本質的にはKleinら(1997)により記載されたとおりに実施した。個々のCa2+スパークの空間−時間的特性の決定は、Ca2+スパークのピーク振幅において中央に置かれた(centered)スパークの空間的(x)及び時間的(t)特性の上でなされた。△F/F振幅並びに時間的パラメーター、立ち上がりの時間(ピークの△F/F,RTの10から90%)、及び時間(半最大ピーク振幅における全時間、FDHM)は、時間的プロフィールに由来した。Ca2+スパークの振幅(半最大ピーク振幅における全振幅、FWHM)は、空間的プロフィールから決定した。2つのグループの間の集団パラメーターの統計的比較は、非パラメーターKruskal−Wallis試験を用いて実施した。
【0059】
細胞をトランスフェクトする方法
ライアノジン受容体が発現される細胞を得るためにライアノジン受容体をコードする核酸で細胞をトランスフェクトする方法は、当業界で知られている(例えば、Brillantes et al.,1994を参照)。非筋肉細胞においては、RyR1受容体を内部原形質中で発現させる。当該細胞は、RyR1受容体とベータアドレナリン性受容体の両方が発現される細胞を得るために、ベータアドレナリン受容体をコードする核酸で、追加にトランスフェクトしてよい。そのようなトランスフェクトされた細胞は、受容体を結合する化合物又はそのような細胞内で機能性応答を活性化するか又は活性化を阻害する化合物を得るために化合物を試験して化合物ライブラリーをスクリーンするために使用してもよく、よって、生体内でそうするのが有望である。
【0060】
異種発現される蛋白質を研究するために、広いバライエティの宿主細胞を使用することができる。これらの細胞は、限定ではないが、哺乳類細胞系、例えばCOS−7,チャイニーズハムスター卵巣(CHO),LM(tk),HEK293;昆虫細胞系、例えばSf9,Sf21;両生類細胞系、例えばアフリカツメガエル卵母細胞;雑多な酵母株;雑多な細菌細胞株;及びその他を含む。これらの細胞各々の培養条件は、特別であり、当業界ではよく知られている。
【0061】
研究される蛋白質をコードする核酸は、様々な哺乳類、昆虫、両生類、酵母、細菌及び他の細胞系の中で、いくつかのトランスフェクション方法により一時的に発現させることができ、限定ではないが、リン酸カルシウム媒介性、DEAE−デキストラン媒介性;リポソーム−媒介性、ウイルス媒介性、エレクトロポレーション媒介性、及びマイクロインジェクション送達を含む。これらの方法の各々は、DNA、細胞系、及び後で用いられるアッセイの種類に依存して、雑多な実験パラメーターの最適化を必要とするかもしれない。
【0062】
異種DNAは、宿主細胞へ安定に取り込むことができ、細胞が外来蛋白質を永久に発現するよう誘導する。DNAの細胞への送達の方法は、一時的発現のための上記の方法と類似するが、標的化された宿主細胞に薬剤耐性を付与するためには補助的な遺伝子の同時トランスフェクションを必要とする。結果として起こる薬剤耐性は、DNAを受け取った細胞を選択して保持するように活用され得る。耐性遺伝子の分類は、限定ではないが、ネオマイシン、カナマイシン、及びハイグロマイシンを含むものが利用可能である。
【0063】
結合アッセイ
結合アッセイを実施するための方法は、当業界でよく知られている。標識された化合物を、完全細胞、又は筋形質網状構造又は細胞質網状構造を含み、RyR1受容体を発現する細胞抽出物に接触させる。筋形質網状構造又は細胞質網状構造を含む細胞抽出物を製造する方法は当業界で知られている(例えば、Kaftan et al.,1996)。上記化合物が放射性アイソトープ、例えばH,14C,125I,35S,32P,33Pで標識されたなら、結合した化合物は、液体シンチレーションカウンティング、シンチレーション近接、又は放射性アイソトープの検出のための他のあらゆる方法を用いて検出してよい。化合物を蛍光化合物で標識するなら、結合した標識化合物は、限定ではないが、蛍光強度、時間解析された蛍光、蛍光分極化(polarization)、蛍光転移(transfer)、又は蛍光相関分光学のような方法により測定してよい。この様式において、受容体に結合する化合物は、それらが標識化合物の受容体への結合を阻害するために同定してよい。
【0064】
欠陥のある骨格筋機能及び心臓疾患を治療するための化合物のアッセイ
RyR1のPKAリン酸化は、RyR1チャネルの活性を増加させ、チャネルの所定の活性化剤に関して細胞の細胞質へのカルシウムのより多い放出をもたらす。RyR1のPKA活性化をブロックする化合物は、RyR1チャネルの活性化を低下させ、細胞へのカルシウムのより少ない放出をもたらすと期待されるはずである。FKBP12.6結合部位においてRyR1チャネルに結合するが、チャネルがPKAによりリン酸化されたときに当該チャネルをはずさない(not come off)化合物も、PKAリン酸化又はRyR1チャネルを活性化する他の誘因に応答してチャネルの活性化を低下させるとも予測される。そのような化合物は、細胞へのより少ないカルシウムの放出をももたらす。
【0065】
欠陥のある骨格筋機能を治療するのに有効かもしれない化合物の一つのアッセイは、カルシウム感受性蛍光染料(例えば、Fluo−3,Fura−2)を用いて、RyR1チャネルにより、細胞へのカルシウムの放出を測定することを含む。当該アッセイは、蛍光染料を細胞に負荷し、そしてRyR1受容体により細胞を刺激し、そして細胞に添加された化合物がカルシウム依存性蛍光シグナルを低下させるか否かを測定することを含む(Brillantes et al.,1994;Gillo et al.,1993;Jayaraman et al.,1996)。一つのRyR1活性化剤はカフェインであり、細胞に添加することができる。カルシウムが細胞の細胞質に放出された場合、カルシウム感受性染料により結合されて、次に、蛍光シグナルを放射する。カルシウム依存性蛍光シグナルは、Brillantesら、1994、Gilloら、1993;及びJayaramanら、1996に記載されたとおりに、光電子倍増管により監視されて、適切なソフトウエアにより分析される。このアッセイは、複数ウエルの皿を用いて多数の化合物をスクリーンするために容易に自動化できる。当該アッセイは、異種発現系、例えば、細菌、酵母、昆虫、Sf9,HEK293,CHO,COS−7,LM(tk),マウス胚性繊維芽NIH−3T3細胞、又はヒーラ細胞内で組換え体RyR1チャネルを発現させることを含む(Brillantes et al.,1994)。非筋肉細胞において、RyR1受容体は小胞体(endoplasmic reticulum)上で発現される。RyR1チャネルが活性化されたら、カルシウムが内部原形質から細胞の細胞質に放出される。RyR1受容体はベータアドレナリン性受容体と同時発現させることができた。これは、ベータアドレナリン性受容体アゴニストの添加に応答してRyR1受容体の活性化に対する化合物の評価を可能にする。
【0066】
別のアッセイは、RyR1チャネルのPKAリン酸化をブロックするためにデザインされた化合物の効果を決定するために使用できるRyR1のPKAリン酸化のレベルを測定することを含む。このアッセイは、心不全が早い心臓ペーシングにより誘導された動物モデルとの関連において使用することができる。当該アッセイは、RyR1チャネルに特異的な抗体(抗RyR1抗体)の使用に基づく。このアッセイのためには、RyR1チャネル蛋白質を抗RyR1抗体により免疫沈殿させ、次に、PKA及び[γ−32P]−アデノシン3リン酸(ATP)により逆リン酸化する(back-phosphorylated)。RyR1受容体蛋白質に転移した放射性32Pレベルの量をホスホロイメジャーを用いて測定することができる。別のバージョンのアッセイにおいて、抗体は、RyR1受容体のリン酸化された形態に特異的であって、その場合には逆リン酸化は必要ない。
【0067】
RyR1受容体チャネル機能のための他のアッセイは、FKBP12.6結合蛋白質とRyR2受容体の結合の程度、RyR1受容体チャネルの亜伝導性状態、RyR1受容体チャネルの活性化のためのCa2+感度、又はRyR1受容体チャネルの開確率(Po)を測定することを含む。
【0068】
FK506とラパマイシンの両者はFKBP12をRyR1から解離させる。一つのアッセイはカラムに結合するものを探す化合物のライブラリーをスクリーンするためのFK506−セファロース又はラパマイシン−セファロースカラムの使用を含む。結合は、結合バッファーによりカラムを洗浄し、高塩濃度のバッファーにより溶出することにより、見積もることができる。カラムに結合する化合物は、それらが骨格筋ライアノジン受容体(骨格筋膜調製物中)に結合して、チャネルに結合したFKBP12を置き換える能力に関して試験することができる。この競合アッセイは、チャネルを化合物とインキュベートし、そして次に遠心分離し、そして沈殿物対上清の免役ブロッティングを行うことを含む。沈殿物に結合してFKBP12とコンピートオフする化合物は、上清中でFKBP12の検出をもたらすはずである。これは、96ウエルのプレートをドットブロット装置と共に用い、そして抗−FKBP12抗体によりイムノブロッティングを行うことによりアッセイできた。
【0069】
これらのアッセイを用いて同定される化合物は、カルシウム感受性蛍光染料(例えば、fluo−3又はfura−2)により負荷された細胞における、イソプロテレノール誘導性細胞内カルシウム放出を阻害するそれらの能力に関して試験することができた。
【0070】
FKBP12のRyR1への結合を安定化させる化合物は、例えば96ウエルの皿の中で抗−FKBP12抗体を用いてFKBP12の上清への放出に関してアッセイする高処理量ELISA、次にcAMP及びATPによるRyR1のPKAリン酸化を用いて同定することができた。FKBP12の上清への放出を阻害する化合物は、新規な治療剤に関してリード化合物の候補になるはずであり、そしてHFの動物モデルにおいて後で試験することができる。
【0071】
結果
RyR1中のSer2843のPKAリン酸化はFKBP12結合を制御してチャネルを活性化する
RyR1チャネルが如何にしてPKAリン酸化により制御されるかを理解するため、チャネル上のPKAリン酸化の部位を部位特異的変異導入により最初に決定し、次に、この部位のPKAリン酸化のRyR1マクロ分子シグナリング複合体の組成物に対する効果を試験した(Marx et al.,2001)。アラニン(RyR1−S2843A)及びアスパラギン酸(RyR1−S2843D)置換を、RyR1上のユニークなPKAリン酸化部位としてSer2843を同定するのに使用した(図1A及びB)。RyR1−2843AとRyR1−S2843Dは、をHEK293細胞中で野生型(WT)RyR1と同じ効率にて発現された(図1A)。RyR1に結合するFKBP12は、記載されたとおりに(Gaburjakova et al.,2001)、共沈殿により評価した(図1C)。FKBP12は、RyR1に結合したときにのみ沈殿物中でイムノブロットにより検出され、さもなくば、FKBP12は上清中で検出された。Ser2843(RyR2上のPKAリン酸化部位、Ser2809に相同(Marx et al.,2000))におけるRyR1のPKAリン酸化は、WT RyR1からのFKBP12の解離をもたらしたが、変異体RyR1−S2843Aからの解離はもたらさず、PKAリン酸化できなかった(図1C)。変異体RyR1−S2843Aに結合したが変異体RyR1−S2843DにはしなかったFKBP12は、構成的にPKAリン酸化されたRyR1を模倣する。これらのデータは、Ser2843におけるRyR1のPKAリン酸化がFKBP12のRyR1チャネルへの結合を制御することを確証する。
【0072】
PKAとPP1は、以前に、チャネル上の高度に保存されたロイシン/イソロイシンジッパーに結合する標的化蛋白質によりRyR1を標的とすることが示された(Marx et al.,2001)。RyR1に結合したPKAは、cAMPにより活性化され(10μM)、RyR1のPKAリン酸化を誘導した(図1D)。RyR1に結合したPP1は、プロタミンにより活性化され(1mg/ml)、RyR1の脱リン酸化をもたらした(図1D)。即ち、RyR1マクロ分子複合体中のPKAとPP1は、外因性のキナーゼ又はホスファターゼの添加なしにチャネルのリン酸化/脱リン酸化を制御できる。
【0073】
RyR1マクロ分子複合体中のPKAの活性化の、FKBP12のRyR1への結合に対する効果は、記載されたとおりに(Gaburjakova et al.,2001)、共沈殿により評価した(図1E)。cAMP誘導されたRyR1のPKAリン酸化はRyR1からのFKBP12解離を誘導した(図1E)。過剰なFKBP12はPKAリン酸化されたRyR1には結合できなかった。結合したPKAのPKI5−24(500nM)によるcAMP誘導による活性化を阻害することは、RyR1からのFKBP12のリン酸化−誘導性解離をブロックした(図1E)。PKAリン酸化されたRyR1をアルカリホスファターゼ(1ユニット/mgのSR蛋白質)によるか又は結合した保存された(PP1)をプロタミン(1mg/ml)により活性化することにより脱リン酸化した後に、FKBP12が再度チャネルに結合できた(図1E)。即ち、PKAリン酸化はFKBP12をRyR1から解離させ、そしてFKBP12はPKA−リン酸化されたRyR1に再び結合できない。
【0074】
RyR1のPKAリン酸化の機能上の効果を決定するため、RyR1組換え体チャネルをHEK293細胞内で発現させて、平坦な脂質2層内で再構成することにより、それらの単一チャネル特性を試験した(図2A)。野生型(WT)RyR1チャネル(図2A)を、1)PKAリン酸化できない変異体チャネル(RyR1−S2843A,図2B);2)PKAリン酸化されたWTのRyR1(図2C);3)構成的にPKAリン酸化されたRyR1を模倣する変異体RyR1(RyR1−S2842D,図2D);及び4)FKBP12を結合できない変異体RyR1(RyR1−S2461I,図22E)と比較した。WTのRyR1は、前に報告されたとおり(Brillantes et al.,1994;Gaburjakova et al.,2001)、天然のRyR1と同じ単一チャネル特性を呈した(図2A、表I)。変異体RyR1−S2843Aも、天然RyR1と同じ単一シグナル特性を呈した(図2B)。
【0075】
【表1】

【0076】
RyR1のPKAリン酸化は、WTのRyR1を活性化した(Poを増加させ、そして開及び閉休止時間を減少させた、図2C及び表I)。WTのRyR1のPKAリン酸化は、逆リン酸化により確認された(図1B)。RyR1−S2843AチャネルはPKAにより活性化されなかった(表I)ことから、WTのRyR1のPKAによる活性化はRyR1のPKAリン酸化のためであったことが示唆されたが、WTと変異体のRyR1−S2843Aのチャネルの唯一の違いは、後者がSer2843Ala置換のためにPKAによりリン酸化され得ないことだからである。RyR1−S2843Dは、PKAリン酸化されたWTのRyR1と同じ単一チャネル特性を呈した(図2D及び表I)ことから、PKAリン酸化のRyR1に対する効果はSer2843のリン酸化によったという追加の証拠を提供する。即ち、RyR1のPKAリン酸化は、150nM cis(細胞質)[Ca2+cisにおいてチャネルを有力に活性化する。RyR1のPKAリン酸化がチャネルからのFKBP12の解離を誘導するため(図1C)、PKAリン酸化によるRyR1の活性化がチャネルからのFKBP12の解離によるか否かを決定することが必要であった。この疑問に近づくため、FKBP12結合部位内の変異のためにFKBP12を結合できないRyR1−V2461Iの単一チャネル特性(Gaburjakova et al.,2001)を、PKAリン酸化されたRyR1の特性と比較した。RyR1−V2461Iは、WTのRyR1及びRyR1−S2843D変異体のチャネルと同じ単一チャネル特性の変化を呈し、非リン酸化WTチャネルに比較して、Poを増加させ、そして開及び閉休止時間を減少させた(図2E及び表I)。
【0077】
FKBP12.6は、FKBP12に相同であって、RyR1−V2461Iに結合できるが、FKBP12はできない(Gaburjakova et al.,2001)。RyR1−V2461Iチャネルの変更された単一チャネル特性、増加したPo及び減少した開及び閉休止時間が、F12.6のチャネルへの結合により正常に回復できることは前に示された(Gaburjakova et al.,2001)。即ち、RyR1−V2461I変異体チャネルにより呈された、増加したPo及び減少した開及び閉休止時間は、チャネルの構造又は機能に対する変異の幾つかの定義されていない効果によるより、むしろ、FKBP12の結合の欠如によるのが明確である。総合すると、これらのデータは、Ser2843におけるPKAリン酸化によるRyR1の活性化がチャネルからのFKBP12の解離によることが明確であることを示す。
【0078】
HF骨格筋におけるRyR1のPKA高リン酸化及び欠損機能
HFの動物モデルからの骨格筋からのRyR1チャネル(慢性高アドレナリン条件)がPKA高リン酸化されたか、そして変更された単一チャネル特性を呈したか否かを決定するため、ペーシング誘導されたHFのイヌモデルからの後肢骨格筋からのRyR1のPKAリン酸化を、RyR1の免疫沈殿、続く逆リン酸化を用いて、前に記載されたとおりに(Marx et al.,2000)、評価した(図3A)。このイヌのHFモデルにおいて、低下した左心室(LV)の機能は、血流力学評価により記録され、LV dP/dtmaxが対照において3420±105であり、そしてHFにおいて1722.2±322であったことを示す(mmHg/s,n=4正常、n=5HF,P<0.01)。HF骨格筋からのRyR1は、正常骨格筋からのRyR1に比較して、PKA高リン酸化されていた(図3A)。RyR1のPKAリン酸化の化学量論は:RyR1チャネルのモルあたり、正常0.4+0.2、HF3.6+0.8モルリン酸転移であった(n=4正常、n=5 HF,P<0.01)。即ち、各RyR1上の平均3/4−4/4のPKAリン酸化部位上において、チャネルはHF骨格筋内でリン酸化され、一方チャネルあたり<1/4部位が正常な対照骨格筋からのRyR1内ではPKAリン酸化されていた。
【0079】
心臓のRyR2のPKA高リン酸化がチャネルマクロ分子複合体からのFKBP12.6の消耗を誘導して、弱った心臓において変更された関門特性を有するチャネルをもたらすことは、前に示された(Marx et al.,2000)。本出願においては、骨格筋RyR1マクロ分子複合体中のFKBP12のレベルを、正常な動物とCHFの動物に関して、以前に記載されたとおりに(Marx et al.,2000)、共免疫沈殿を用いて測定した。正常な骨格筋からのRyR1チャネルをインビトロPKAリン酸化に供した場合に観察されるRyR1複合体からのFKBP12の消耗の程度と比較して(図3B)、対照に比較して、HFの骨格筋からのRyR1複合体中のFKBP12の量には顕著な低下があった(約3倍)(n=2対照、n=5 HF,P<0.01,図3B)。細胞のFKBP12の全量(図6C)、並びにPKAの触媒サブユニットのレベル、及びRyR1マクロ分子複合体中のホスファターゼPP1は、変化しなかった(図3C)。即ち、RyR1のPKA高リン酸化は、HFの骨格筋中のチャネルマクロ分子複合体からのFKBP12の消耗に関連しており、弱った心臓におけるRyR2からのFKBP12.6の高リン酸化誘導性消耗に類似している(Marx et al.,2000)。
【0080】
骨格筋中のRyR1マクロ分子複合体からのFKBP12のPKA高リン酸化及び消耗の機能上の因果関係を決定するため、正常骨格筋及びHF骨格筋から単離されたRyR1の単一チャネル特性を比較した。HFのRyR1チャネルは、100nMのcis(細胞質)[Ca2+]において増加した開確率(Po)を有した(図4A及びB、表II)。正常なRyR1チャネルは、100nM[Ca2+cisにおいては活性ではない(Lai et al.,1989;Laver and Lamb,1998;Meissner,1994)。HFのRyR1チャネルは、正常な骨格筋からのRyR1チャネルにおいて稀に観察される亜伝導性状態又は部分的開口(Brillantes et al.,1994)を呈した(例えば、図4B及び表II)。RyR1チャネル間の共役された開門は、チャネルのクラスターが同時に開いて閉じる機構であり(Marx et al.,1998)、対照からのRyR1チャネルに比較して、HFの骨格筋チャネルにおいて顕著に低下した(表II)。平均の開及び閉休止時間は、対照に比較して、HFのRyR1において顕著に低下した(例えば、図4A及びB,及び表II)。サブマイクロモラー[Ca2+cisにおいて増加したPo、低下した開及び閉休止時間、亜伝導性開口、及び減少した共役開門は、FKBP12無しで発現された組換え体RyR1の特徴であり(Brillantes et al.,1994;Marx et al.,1998)、そしてFKBP12除去後の天然FKBP12の特徴である(Ahern et al.,1994;Marx et al.,1998)。さらに、RyR1単一チャネル特性における類似の欠損は、FKBP12の空の(null)マウスからの骨格筋から単離されたRyR1において観察されたが、これらの動物は、発生する欠陥のために子宮内で(in utero)死ぬか、又は生後すぐに死に、骨格筋機能を評価できなかった(Shou et al.,1998)。
【0081】
【表2】

【0082】
HF骨格筋における変更されたSR Ca2+放出
PKAにより高リン酸化されて且つFKBP12により消耗されたRyR1の単一チャネル特性の変化が、HF骨格筋の損なわれた機能に帰し得た変更されたSR Ca2+放出に関連するか否かを決定するため、Ca2+スパークを記録した。個々のRyR1のクラスターからのSR Ca2+放出を表すCa2+スパークを、シャム手術された対照とHFのラットの骨格筋からの筋管において試験した(図5A)。SR Ca2+放出(スパーク)の振幅は、PKA高リン酸化されたRyR1を伴うHF筋肉からの骨格筋管において顕著に減少した。対照に比較して、[Ca2+]の蛍光測定値は、HFにおいて、△F/F=0.92±0.02(シャム手術された対照)から0.76±0.03に減少した(n=6,P<0.01,図5B)。HF骨格筋のCa2+スパークも、遅い上昇時間(対照、3.98±0.14 対 HF,4.66±0.21ms,P<0.05)及び延期された半存続期間(half duration)(対照、12.91±0.50 対 HF,15.46±0.69ms,P<0.05)を呈した(図5B)。最後に、Ca2+スパークの空間的な広がりは、HF骨格筋において大きかった(1.65±0.03 対 1.95±0.09,P<0.05,図5B)。これらのデータは、PKAにより高リン酸化されたRyR1が、ゆっくりとしたSR Ca2+放出の事象に関連しており、遅いピーク振幅を有し、そして対照よりも長く続くことを示す。
【0083】
RyR1のPKAリン酸化は心不全骨格筋における欠陥のある筋肉の機能に相関する
心不全において起こる骨格筋の変化の生理学的な結果を評価するため、及びRyR1のPKA高リン酸化及びRyR1複合体からのFKBP12の消耗が、損なわれた骨格筋機能に関連するか否かを決定するため、齧歯類の後−心筋梗塞(post-myocardial infraction)HFモデルを用いた。このモデルにおいて、HFは左の腹側の下行冠動脈(anterior descending coronary artery)を縛った後の心筋梗塞から6カ月にわたり発症する。HFは、断片の短縮化を、HFにおいては41.4±4.7%(n=10)に減少させ、対して、シャム手術された対照においては51.6±5.3%(n=6,P<0.01)に減少させ;梗塞の収縮の断片面積は、HFにおいて39.1±5.1%に減少したのに対して、対照では68.7±2.4%に減少した(P<0.01 HF 対 シャム手術された対照)。血流力学測定値もHFを確認した(シャム手術された対照に関してLVEDP=9.16±5.19mmHg(n=6) 対 HFに関して18.28±8.56mmHg(n=10),P<0.05;対照に関してdP/dt=5483±1704mmHg/s 対 HFに関して2922±784mmHg/s,P<0.01)。
【0084】
RyR1チャネルは、シャム手術された対照に比較して、ラットHF骨格筋において(n=10)PKAにより高リン酸化されており(図6A,n=6,P<0.01)、そしてRyR1に結合したFKBP12の量はHF骨格筋において58%減少した(図6B,P<0.01)が、FKBP12の全細胞レベルはHF骨格筋中で低下しなかった(図6C)。さらに、RyR2チャネルのPKA高リン酸化に関して有力な説明を提供する、PP1とPP2AのレベルがHFにおいて低下した心筋RyR2マクロ分子複合体に対して(Marx et al.,2000)、RyR1複合体中のPP1の量はHF骨格筋において低下しなかった(図6B)。最近の研究は、ホスホジエステラーゼ、PDE4D3、及び標的化蛋白質筋肉A−キナーゼアンカーリング蛋白質(mAKAP)が、PKAと共にシグナリング複合体を形成することを報告した(Dodge et al.,2001)。PKAはRyR1マクロ分子複合体の一部であり(Marx et al.,2001)、そしてPKAとmAKAPはRyR2複合体の成分であることが(Marx et al.,2000)、以前に示された。mAKAPとPDE4D3がRyR1マクロ分子複合体中に存在したか否かを決定するため、抗−RyR−5029を用いた免疫沈殿、続くmAKAPとPDE4D3を検出する抗体によるイムノブロッティング(図6D)を使用した。mAKAPとPDE4D3の両方がRyR1により免疫沈殿し、よって、RyR1マクロ分子複合体の一部であるらしいことがわかった(図6B)。さらに、対照に比較して(n=4)、RyR1複合体中のRyR1の量は、HF骨格筋において顕著に減少した(n=4,P<0.05,図6B)。RyR1チャネル複合体において低下したPDE4D3のレベルは、cAMPの局所的な増加及び増加したPKA活性に帰し得たことから、HF骨格筋中のRyR1のPKAによる高リン酸化を説明するかもしれない(図3A及び6A)。
【0085】
ひらめ筋機能を、張力変換器を用いて試験した。HFのひらめ筋は、シャム対照の筋肉よりも、早く疲労して、よりゆっくりと強直性痙攣に達した(図6E及びF)。疲労時間は、対照のひらめ筋に関して280±59秒で、対するにHFのひらめ筋に関しては216±26秒であった(n=5 シャム手術された対照、n=8 HF,P<0.05,図6E)。強直性痙攣症の半分収縮時間は、対照のひらめ筋に関して164.6±70.1msで、対するにHFのひらめ筋に関しては297.5±74.1msであった(n=5 シャム手術された対照、n=8 HF,P<0.01,図6F)。HF骨格筋中の遅延した強直性痙攣症と加速した疲労を含む欠陥のある収縮機能の証明は、骨格筋(Lunde et al.,2001;Lunde et al.,2002;Pereault et al.,1993)と横隔膜筋(MacFarlane et al.,2000)の両方における他の発見と一致する。さらに、RyR1の高リン酸化の程度は初期の骨格筋疲労に顕著に相関した(r=0.88,図6G)。即ち、RyR1のPKA高リン酸化とFKBP12のRyR1マクロ分子複合体からの消耗は、変更された骨格筋機能に関連する。
【0086】
考察
ライアノジン受容体(RyRs)は多くの種類の細胞においてシグナリングに関与するが、これらの細胞内Ca2+放出チャネルの機能を変調する生理学上の機構は、よく理解されていない。RyRsを含む最大に理解されている系の一つは、筋肉の収縮を活性化させるSR Ca2+放出にRyRsが必要な横紋筋中のEC共役である。しかしながら、骨格筋及び心筋においてさえ、交感神経系(SNS)のような系統的シグナルがRyR機能を変調させる機構は、まだ明らかにされていない。
【0087】
「ファイトオアフライト」応答は、SNSの活性化を含む古典的なストレス経路であり、筋肉のβ−アドレナリン刺激を導く。SNS刺激の間、カテコールアミンがβ−アドレナリン受容体に結合し、G−蛋白質によりアデニリルシクラーゼを活性化し、そしてPKAを活性化する第2メッセンジャーcAMPの細胞内レベルを増加させる。本研究は、PKAリン酸化がSer2843上でそれらをリン酸化することによりRyR1チャネルを活性化することを示す。このPKAリン酸化部位は部位特異的変異導入を用いて確認され(図1A及びB)、ホスホペプチドマッピングにより同じ部位が同定された以前の研究に一致する(Suko et al.,1993)。RyR1のSer2843上のPKAリン酸化の同定は、PKAリン酸化がRyR1チャネルを活性化する機構を釣り上げるために必要とされる変異RyR1の生成を可能にさせた。
【0088】
このアプローチは、PKAリン酸化がSer2843をリン酸化することによりRyR1を活性化して、チャネルからのFKBP12の解離を引き起こすことを明らかにした(図1)。FKBP12の解離は、チャネル開口の阻害を救済するが、これはFKBP12が結合したときに閉状態にあるRyR1チャネルの安定化による。
【0089】
本研究からのデータは、骨格筋のEC共役のコンテクストにおいてFKBP12がRyR1の機能を変調させる機構に関して新規な洞察を提供する。RyR1チャネル複合体中のFKBP12の役割に関するオリジナルの研究は、この12kDaの蛋白質がRyR1チャネルを安定化するが、おそらくは、チャネルへの結合及びEC共役の間の正常な生理学上の機能に必要とされる好ましいコンフォメーションにそれを安定化させるためであることを示唆した(Brillantes et al.,1994;Jayaraman et al.,1992)。本明細書において記載された結果(図1及び2、及び表I)は、今、チャネル複合体からFKBP12を解離させることにより、RyR1のPKAリン酸化がチャネルを活性化することを示す。この発見は、FKBP12の一つの生理学上の役割が、チャネルの閉状態を安定化することであり、天然のチャネル阻害剤として本質的に作用することを示唆する。FKBP12をチャネル複合体から解放することにより、PKAリン酸化がこの阻害を救済し、そしてチャネルを活性化する。即ち、RyR1のPKAリン酸化は、EC共役のコンテクストにおいてRyR1の活性を増加させるための生理学上の機構を提供する。データはFKBP12がRyR1の開状態及び閉状態の両方を安定化することを示すが、RyR1チャネルは骨格筋中ではVGCCとの相互作用により開くので(Ahern et al.,2001;Rios and Brum,1987;Rios et al.,1992;Schneider and Chandler,1973;Tanabe et al.,1990)、骨格筋中のRyR1マクロ分子複合体中のFKBP12に関しての、より重要な役割は、チャネルの閉状態を安定化することであるらしい(即ち、筋肉が弛緩して骨格筋においてSR Ca2+のリークを妨害するときに閉じたRyR1チャネルを、FKBP12が助け続けるのかもしれない)。
【0090】
以前の報告に一致した(Hain et al.,1994;Sonnleitner et al.,1997)、RyR1のPKAリン酸化による活性化の生理学上の結果を決定するため、正常な骨格筋の機能をHFの動物のモデルの機能と比較した。HFは公知の高アドレナリン状態であり(Chidsey et al.,1962),そしてRyR1がHF骨格筋中でPKA−高リン酸化されているという発見(図3)は、骨格筋機能におけるRyR1のこの形の制御の役割を探索するために、PKA−リン酸化されたRyR1を伴うか又は伴わずに筋肉の機能を比較するモデルを提供した。
【0091】
PKAリン酸化されたRyR1の増加した活性は、HF骨格筋中のSR Ca2+放出の変更に関連した。骨格筋において、Ca2+スパークは、RyR1チャネルのクラスターから起こった基本のCa2+放出事象を表す(Gonzalez et al.,2000)。成体哺乳類骨格筋からのCa2+スパークは、技術的に記録することが難しいが(Shirokova et al.,1998)、それらは示された(Kirsh et al.,2001)。本研究において、Ca2+スパークは、減少した振幅、遅れた上昇時間及び延期された継続時間をHF筋肉において呈した(図5)。FKBP12のRyR1からの消耗はSR Ca2+リークの可能性を増加させると予測されるが、何故なら、これらのチャネルは閉状態において脱安定化されるはずだからである。SR Ca2+リークはSR Ca2+を消耗し、そしてHF骨格筋において観察されたSR Ca2+事象の振幅を減少させることに寄与する。Ca2+スパークを記録するため、筋肉繊維をサポニンで皮をむき、遊離の[Ca2+]を130nMにてクランプした。全部のスパーク頻度が130nMの休止[Ca2+]において極めて低かったため、これらの条件はHF骨格筋においてスパーク頻度が顕著に増加しなかった理由を説明するのに適当である。一部には低(休止)レベルにおいて遊離のCa2+をクランプするために低スパーク率と結合した(combined with)SR Ca2+ ATPase活性がSRを補充したため、130nMにおいて遊離のCa2+をクランプすることが、4−クロロ−m−クレゾール(カフェイン類似体)の急の応用(acute application)を用いて測定されたHF骨格筋内のSR Ca2+含有量の顕著な低下がなかった理由を説明できた。RyR1複合体からのFKBP12の消耗を伴うはずのRyR1共役された関門の減少(Marx et al.,1998)は、HF骨格筋内のSR Ca2+放出事象の延期された時間経過に寄与し得た。RyR1チャネル間の共役された関門は、SR膜内で互いに物理的に接触するチャネルのグループを、単一Ca2+放出ユニットとして開閉可能にする機構であるかもしれない(Marx et al.,1998)。RyR1に結合するFKBP12は、共役された関門に必要である(Marx et al.,1998)。FKBP12の消耗による共役された関門の減少は、それらが完全な共役された関門を伴うはずであるように、それらは全てが一緒に開かないはずであるから、クラスター中のいくつかのRyR1チャネルの開口を遅延させるかもしれない。いくつかのチャネルのこの遅延された開口は、SR Ca2+放出の遅くなった速度に寄与し得た。同様に、減少した共役関門の条件下では、いくつかのRyR1チャネルの閉鎖が遅れるかもしれず、そしてこれがSR Ca2+放出遷移の延期された減衰に寄与し得た。HF骨格筋内のRyR1のPKA高リン酸化のこれらの作用を描写するモデルを図7に示す。
【0092】
PKA高リン酸化されたRyR1を含むHF骨格筋は延期された強直性痙攣症の半分収縮時間を呈した(図6F)。延期された強直性痙攣の半分時間(同じ繰り返しの刺激により強直性痙攣症を達成するには長い時間がかかることを意味する)は、FKBP12の消耗のために起こるかもしれない、損なわれたEC共役を反映し得た(Lamb and Stephenson,1996)が、正常な筋肉のEC共役におけるFKBP12の特定の役割は明らかにされていない。HF骨格筋の初期の疲労(図6Eを参照)は、RyR1の増加したPKAリン酸化に強く相関する(図6G)ことから、これらの2つの発見の間の機能的な関連を示唆する。骨格筋細胞ではCa2+の出入がほとんど無いので、それらはEC共役に必要なCa2+のほとんどをリサイクルするに違いない。骨格筋内のFKBP12を消耗するPKA高リン酸化されたRyR1のために、増加したSR Ca2+リークを補うための一つのコストは、HF骨格筋内で観察される初期の疲労に寄与し得た増加したエネルギー消費であるかもしれない(Ca2+−ATPaseによるSRへのCa2+の戻りを供給するためにATPが必要である;図7Aを参照)。
【0093】
HFにおける主な骨格筋の欠陥の重要性は、患者の疲労が心臓の機能とうまく相関しないという事実により理解される(Harrington and Coats,1997)。さらに、骨格筋の問題は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤の投与(Drexler et al.,1989)及び心臓移植(Sorensen et al.,1999)の両方が心臓の出力及び骨格筋の血流を増加させるが骨格筋の機能を改善しないため、損なわれた骨格筋の血流の単なる問題ではないらしい。多くの研究が、増加した乳酸塩(lactate)の生産及び代謝回転(Katz et al.,1993;Wilson et al.,1993)、より迅速なクレアチンリン酸の分解、及び減少したクレアチンリン酸の再合成を含む、HFにおける骨格筋エネルギーの代謝の変化を記録した(Mancini et al.,1992)。
【0094】
SR Ca2+放出チャネル機能及びCa2+シグナリングの欠陥は、一方で、HFにおいて損なわれた骨格筋機能の基礎となり得た機構をまさに提供する。心筋及び骨格筋の両方においてEC共役筋疾患を推進する根源的病理は、おそらく、このチャネルの心臓の形態及び骨格の形態の両方のPKA高リン酸化を通して欠陥のあるSR Ca2+放出チャネル(RyR1及びRyR2)機能を導く慢性の高アドレナリン状態である。HFにおいて慢性の高アドレナリン状態の逆の役割に関するさらなるサポートは、HFにおいて心臓機能を改善するβ−アドレナリン受容体ブロッカーがRyR2のPKA高リン酸化を逆転させてチャネル機能を標準化させることを示す最近の研究に由来する(Doi et al.,2002;Reiken et al.,2001)。β−ブロッカーは心筋の機能を改善するが(例えば、改善された放出(ejection)フラクション)、それらはHFの患者において改善された運動の忍耐力に関してささやかな利益を有するか又は全く有さないことが示された(Gullestad et al.,2001;Kukin et al.,1999)。しかしながら、上でほのめかしたとおり、運動の忍耐力は、骨格筋機能により単に決定されず、そして代謝の準備(reserve)及び筋肉の強さを含むらしい。β−ブロッカーは骨格筋エネルギー代謝に対して複雑な効果を有する;例えば、プロプラノールはホスホリラーゼキナーゼ及びグリコーゲン合成の両方のβアドレナリン誘導性活性化を阻害する(Dietz et al.,1980)。即ち、改善された骨格筋機能に関するβ−遮断の有益な効果は運動の忍耐力におけるほんの最小の改善をもたらすエネルギー代謝に対する逆作用によりバランスを保たれていた。
【0095】
以前の研究から(Marx et al.,2000)、この出願において開示されたデータは、HFが、心筋と骨格筋の両横紋筋形態に影響する一般化されたEC共役筋疾患として特徴があるらしいことを示す。この一般的EC共役筋疾患を引き起こす根源的な病理は、HFの間に起こる慢性高アドレナリン状態らしい。
【0096】
文献
【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
【表8】

【0103】
【表9】

【0104】
【表10】

【0105】
【表11】

【0106】
【表12】

【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】図1A.RyR1へのFKBP12の結合はRyR1−Ser2843のPKAリン酸化により調節される。(A)WTのRyR1と変異体(RyR1−S2843A及びRyR1−S2843D)のRyR1が等量、HEK293細胞内で発現されたことを示すイムノブロット。
【図1B】図1B.RyR1へのFKBP12の結合はRyR1−Ser2843のPKAリン酸化により調節される。(B)[γ−32P]−ATPを用いたPKAリン酸化を示すオートラジオグラフであり、PKAの阻害剤であるPKI5−24を用いることによりリン酸化反応の特異性を示した。アラニン置換を用いることにより、RyR1上の唯一のPKAリン酸化部位としてSer2843を同定した。
【図1C】図1C.RyR1へのFKBP12の結合はRyR1−Ser2843のPKAリン酸化により調節される。(C)WT及び変異体のRyR1へのFKBP12の結合を示すイムノブロットを、遠心分離(RyR1によるFKBP12共沈殿)及びFKBP12イムノブロッティングにより評価した。FKBP12は、PKA−リン酸化RyR1を構成的に模倣するRyR1−S2843Dには結合しない。
【図1D】図1D.RyR1へのFKBP12の結合はRyR1−Ser2843のPKAリン酸化により調節される。(D)RyR1に結合したPKAのcAMPによる活性化がPKA阻害剤のPKI5−24により阻害されるチャネルのリン酸化を誘導することを示すオートラジオグラフ。チャネルに結合したPP1のプロタミンによる活性化はオカダ酸(okadaic acid)(OA)によりブロックされるチャネルの脱リン酸化を誘導する。
【図1E】図1E.RyR1へのFKBP12の結合はRyR1−Ser2843のPKAリン酸化により調節される。(E)FKBP12イムノブロットは、RyR1のcAMPにより誘導されたPKAリン酸化がFKBP12を上記チャネル複合体から解離させることを示す;FKBP12は、PKAリン酸化されたチャネルには結合できないが、アルカリホスファターゼによる(又は結合したホスファターゼのプロタミンによる活性化による)チャネルの脱リン酸化は、共遠心分離により評価したところ、チャネルへのFKBP12の、のちの再結合を許容する。
【図2A】図2A.Ser2843のPKAリン酸化はRyR1チャネルを活性化する。(A)WTのRyR1の代表的単一チャネルトレーシング。平坦な脂質2層におけるRyR1単一チャネルレコーディングは、1mMのATPの存在下で150nMの[Ca2+cisにおいてチャネルの活性を示し、チャネルを活性化する。レコーディングは0mVにおいてであり、チャネルの閉じた状態が示される(「C」);チャネルの開口は上向きである(upwards)。全ての点の振幅(amplitude)のヒストグラムを示す。開確率(Po)、平均閉時間(Tc)及び開(To)休止時間を各チャネルトレーシングの上に示す。
【図2B】図2B.Ser2843のPKAリン酸化はRyR1チャネルを活性化する。(B)RyR1−S2843A。平坦な脂質2層におけるRyR1単一チャネルレコーディングは、1mMのATPの存在下で150nMの[Ca2+cisにおいてチャネルの活性を示し、チャネルを活性化する。レコーディングは0mVにおいてであり、チャネルの閉じた状態が示される(「C」);チャネルの開口は上向きである(upwards)。全ての点の振幅(amplitude)のヒストグラムを示す。開確率(Po)、平均閉時間(Tc)及び開(To)休止時間を各チャネルトレーシングの上に示す。
【図2C】図2C.Ser2843のPKAリン酸化はRyR1チャネルを活性化する。(C)PKA−リン酸化されたWT RyR1。平坦な脂質2層におけるRyR1単一チャネルレコーディングは、1mMのATPの存在下で150nMの[Ca2+cisにおいてチャネルの活性を示し、チャネルを活性化する。レコーディングは0mVにおいてであり、チャネルの閉じた状態が示される(「C」);チャネルの開口は上向きである(upwards)。全ての点の振幅(amplitude)のヒストグラムを示す。開確率(Po)、平均閉時間(Tc)及び開(To)休止時間を各チャネルトレーシングの上に示す。
【図2D】図2D.Ser2843のPKAリン酸化はRyR1チャネルを活性化する。(D)RyR1−S2843D。平坦な脂質2層におけるRyR1単一チャネルレコーディングは、1mMのATPの存在下で150nMの[Ca2+cisにおいてチャネルの活性を示し、チャネルを活性化する。レコーディングは0mVにおいてであり、チャネルの閉じた状態が示される(「C」);チャネルの開口は上向きである(upwards)。全ての点の振幅(amplitude)のヒストグラムを示す。開確率(Po)、平均閉時間(Tc)及び開(To)休止時間を各チャネルトレーシングの上に示す。
【図2E】(E)RyR1−V2461I(この変異体RyR1はFKBP12.6には結合するがFKBP12にはしないことが以前に示された(Gaburjakova et al.,2001))。平坦な脂質2層におけるRyR1単一チャネルレコーディングは、1mMのATPの存在下で150nMの[Ca2+cisにおいてチャネルの活性を示し、チャネルを活性化する。レコーディングは0mVにおいてであり、チャネルの閉じた状態が示される(「C」);チャネルの開口は上向きである(upwards)。全ての点の振幅(amplitude)のヒストグラムを示す。開確率(Po)、平均閉時間(Tc)及び開(To)休止時間を各チャネルトレーシングの上に示す。
【図3A】図3A.HF骨格筋におけるRyR1のPKA高リン酸化。(A)RyR1のPKAリン酸化を、対照の正常なイヌ及びペーシングにより誘導されたHFのイヌからの骨格筋ホモジェネートにおいて測定した。イムノブロッティングにより示されるとおり、均等な量のRyR1蛋白質を各キナージング反応において用いた。正常(n=2)及びHF(n=5)動物からの骨格筋ホモジェネートからのRyR1の相対的PKAリン酸化は、特異的リン酸化シグナルをRyR1蛋白質の量で割ることにより決定した(イムノブロッティング及びデンシトメトリーにより測定)。結果はPKA−依存性[γ−32P]−ATPシグナル±平均の標準偏差の逆数として表す。
【図3B】図3B.HF骨格筋におけるRyR1のPKA高リン酸化。(B)RyR1へ結合したFKBP12の量は、共免疫沈殿、続くイムノブロッティングにより評価した。
【図3C】図3C.HF骨格筋におけるRyR1のPKA高リン酸化。(C)代表的なイムノブロットは、RyR1マクロ分子複合体:RyR1,PKA,PP1,及びFKBP12の成分に関して、正常(n=2)及びHF動物(n=5)を用いて示される。蛋白質のレベルをイムノブロットのデンシトメトリーを用いて定量した。結果を、各免疫沈殿においてRyR1の量に関して補正されたRyR1マクロ分子複合体の成分の各々の相対量として表す。
【図4A】図4A.HFの間の骨格筋から単離されたRyR1の欠陥性単一チャネルの特性。(A)正常なイヌの骨格筋からのRyR1チャネルからの単一チャネルトレース及び対応する電流の振幅のヒストグラム。A及びBにおいて、上部のトレーシングは100nM[Ca2+cisにおいて記録され、そして底部のトレーシングは、開確率(Po)を増加させるために1mMのATPによりRyR1チャネルを活性化した後に記録された。開(To)及び閉(Tc)休止時間及びPoを、代表的なトレーシングの上に各条件に関して示す。A及びBにおいて、底部トレーシングは延長された時間スケールを示す。PKA−高リン酸化されたチャネルの副伝導性状態に関する電流レベル(0,1,2,3,4pA)をBにおいて底部トレーシングにて示すことを示す線。各チャネルに関して全ての点の振幅のヒストグラムを示す。レコーディングは0mVであり、そしてチャネルの閉じた状態を示す(「C」);チャネルの開口は上向き偏差(deflections)である。
【図4B】図4B.HFの間の骨格筋から単離されたRyR1の欠陥性単一チャネルの特性。(B)HFのイヌの骨格筋からのRyR1チャネルからの単一チャネルトレース及び対応する電流の振幅のヒストグラム。A及びBにおいて、上部のトレーシングは100nM[Ca2+cisにおいて記録され、そして底部のトレーシングは、開確率(Po)を増加させるために1mMのATPによりRyR1チャネルを活性化した後に記録された。開(To)及び閉(Tc)休止時間及びPoを、代表的なトレーシングの上に各条件に関して示す。A及びBにおいて、底部トレーシングは延長された時間スケールを示す。PKA−高リン酸化されたチャネルの副伝導性状態に関する電流レベル(0,1,2,3,4pA)をBにおいて底部トレーシングにて示すことを示す線。各チャネルに関して全ての点の振幅のヒストグラムを示す。レコーディングは0mVであり、そしてチャネルの閉じた状態を示す(「C」);チャネルの開口は上向き偏差(deflections)である。
【図5A】図5A.HF骨格筋における局所Ca2+シグナリングの欠損。(A)シャム及び心筋梗塞後の治療(PMI)HFラットの筋肉内で回収されたCa2+スパークの代表的な例の△F/Fラインスキャンイメージ。各イメージの上部おいては、対応するCa2+スパーク時間経過を表す。各ヒストグラムの上部において、ボックスチャートは25、50及び75百分順位を示す;水平線は1から99%の範囲の分布を示す。シャム:白のシンボル(n=137.3動物)、PMI:グレーのシンボル(n=82.2動物)。(*P<0.05)。FDHM,1/2ピーク振幅における全継続時間。FWHM,1/2ピーク振幅における全振幅。
【図5B】図5B.HF骨格筋における局所Ca2+シグナリングの欠損。(B)記録されたCa2+スパークの集団の時空的な特性の相対的分布。各ヒストグラムの上部において、ボックスチャートは25、50及び75百分順位を示す;水平線は1から99%の範囲の分布を示す。シャム:白のシンボル(n=137.3動物)、PMI:グレーのシンボル(n=82.2動物)。(*P<0.05)。FDHM,1/2ピーク振幅における全継続時間。FWHM,1/2ピーク振幅における全振幅。
【図6A】図6A.RyR1のPKAリン酸化及び筋肉収縮。(A)シャム手術された(対照)ラット及びHFラットの骨格筋からのRyR1のPKA逆−リン酸化(back-phosphorylation)を示すオートラジオグラム。棒グラフは、RyR1の相対的PKAリン酸化を示す(記載されたとおり逆−リン酸化の逆数として表される)(Marx et al.,2000)。
【図6B】図6B.RyR1のPKAリン酸化及び筋肉収縮。(B)対照及びHFの骨格筋からの抗−RyR1抗体により免疫沈殿されたRyR1,mAKAP,PDE4D3,PP1及びFKBP12の相対量を示すイムノブロット及び棒グラフ。
【図6C】図6C.RyR1のPKAリン酸化及び筋肉収縮。(C)対照及びHFイヌ及びラット骨格筋中の等量の全細胞FKBP12を示すイムノブロット。
【図6D】図6D.RyR1のPKAリン酸化及び筋肉収縮。(D)100μgのヒト骨格筋SRにおいて検出されたRyR1,mAKAP及びPDE4D3を示すイムノブロット;陰性対照は対応する抗原ペプチドにより予め吸着された抗体を用いる。
【図6E】図6E.RyR1のPKAリン酸化及び筋肉収縮。(E)HF骨格筋は対照より早く疲労する。各ラット(n=5対照、n=8HF)からの対側性ひらめ筋を組織のバスにマウントすることにより、収縮機能を評価した(筋肉機能プロトコルに関する材料と方法を参照)。代表的な疲労時間トレーシングを、対照とHFの骨格筋に関して示す。棒グラフは、平均(±SD)時間対疲労を示す、*P<0.05。
【図6F】図6F.RyR1のPKAリン酸化及び筋肉収縮。(F)HF骨格筋は、対照よりもゆっくりと強直性痙攣症を達する。代表的な強直性痙攣症トレーシングを、対照とHFの骨格筋に関して示す。強直性痙攣症は、材料と方法に記載されるとおり、高頻度の刺激により誘導された。棒グラフは、強直性痙攣症の1/2収縮時間を示す、**P<0.01。
【図6G】図6G.RyR1のPKAリン酸化及び筋肉収縮。(G)シャム及びHFの動物のラット骨格筋の時間対疲労及びRyR1 PKAリン酸化(=0.88)の間の相関。筋肉の機能及びRyR1のPKAリン酸化を、各動物からの対側性ひらめ筋を用いて評価した。
【図7A】図7A.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(A)骨格筋プラズマ膜(横断細管(transverse tubule))の脱分極は電圧関門Ca2+チャネル(DHPR)を活性化して、次に、DHPRの細胞質ドメインとRyR1の細胞質ドメインの間の相互作用を通してRyR1を活性化する。RyR1の活性化は、チャネルを開き、そしてSR貯蔵所からCa2+を筋形質へ放出させて、筋肉収縮をもたらす。筋肉の弛緩は、Ca2+−ATPase,SERCAにより細胞質からSRに戻るCa2+の取り込みにより測定される。このモデルにおいては、RyR1が、4つのRyR1及び4つのFKBP12(示された)、並びに標的化蛋白質(TP)によりRyR1に結合したPKAとPP1を含むマクロ分子複合体である(各々の4つの内の一つのみを示す)(Marx et al.,2001)。
【図7B】図7B.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(B)正常なRyR1は、チャネルが低いμM[Ca2+cytにおいて活性化されてmM[Ca2+cytにおいて阻害されるように、増加する[Ca2+cytに対してベル型の応答を呈する。
【図7C】図7C.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(C)RyR1はSR膜上でクラスター中に存在し、FKBP12(小さなグレーの円)がチャネルに結合することを必要とする共役された関門(coupled gating)と呼ばれる機構によりチャネルのグループとして開いて閉じる(Marx et al.,1998)。
【図7D】図7D.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(D)Ca2+スパークはRyR1チャネルのグループの活性化のために、本質的なSR Ca2+放出事象を表す(Gonzalez et al.,2000)。
【図7E】図7E.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(E)強直性痙攣症(骨格筋収縮)は、複数の動作のポテンシャルが合計されて、筋形質のCa2+の延期された上昇が連続する収縮を活性化する。
【図7F】図7F.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(F)β−アドレナリン受容体の活性化は、cAMPレベルの上昇を導き、今度はPKAを活性化して、RyR1をリン酸化する。心不全におけるRyR1のPKA高リン酸化は、各チャネルからのFKBP12のほとんどの解離をもたらす。
【図7G】図7G.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(G)FKBP12(小さなグレーの円)のRyR1からの解離は、チャネル間の共役された関門の損失を引き起こす(Marx et al.,1998)。これは、確率論的な関門をもたらすが、解剖学上はたった50%のRyR1チャネルしかDHPRと関連しないので(50%のRyR1はDHPRとの相互作用により活性化できない)、RyR1チャネルのグループ中で同時にチャネルのフラクションのみが開くことを意味する(Franzini−Armstrong and Kish,1995)。
【図7H】図7H.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(H)心不全の骨格筋からのCa2+スパークは、遅延した上昇運動、低下した振幅、及び延期された減衰を呈し、全てはRyR1チャネルのグループの間の共役された関門の損失に一致する。実線は、心不全骨格筋におけるCa2+シグナルであり、破線は正常な骨格筋におけるCa2+シグナルを表す。
【図7I】図7I.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(I)強直性痙攣症は、筋形質Ca2+の保持された上昇をもたらすCa2+放出事象の加重(summation)を引き起こす繰り返された高頻度の作動ポテンシャルの結果として、骨格筋において発症する。
【図7J】図7J.心不全の骨格筋におけるRyR1のPKAリン酸化の効果のモデル。(J)Ca2+の放出の上昇時間の遅延化及び減少した振幅は、心不全の骨格筋において観察された強直性痙攣症の発症における遅延と一致する。実線は、心不全の骨格筋における強直性痙攣症の発症であり、破線は正常な強直性痙攣症を表す。

























【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を第1の薬剤が阻害するか否かを決定するための方法であって、
(a)別々に、(i)RyR1受容体を発現する細胞又は(ii)そのような細胞からの抽出物からの筋形質網状構造又は細胞質網状構造を、(1)上記の第1薬剤とRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を引き起こすことが知られている第2薬剤の両方と、及び(2)そのような第2薬剤の存在下でRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離に適した条件下で、そのような第2薬剤のみと、接触させ;そして
(b)第2薬剤のみの存在下、及び第1と第2薬剤の両方の存在下で、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を測定するが、第1と第2薬剤の両方の存在下でのRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度が第1薬剤のみの存在下でのRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度よりも小さいことが、第1薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を阻害することを示し、それにより、第1薬剤がタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を阻害するか否かを示す
ことを含む方法。
【請求項2】
第1薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害することが以前に知られていない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害する薬剤を同定するために、RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害することが知られていない多数の薬剤をスクリーニングする方法であって、
(a)(i)RyR1受容体を発現する細胞又は(ii)そのような細胞からの抽出物からの筋形質網状構造又は細胞質網状構造を引き起こすことが知られている多数の薬剤の一つ又は複数と、そのような解離薬剤の存在下でRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を許容する条件下で接触させ;
(b)そのような薬剤の不在下でのFKBP12結合蛋白質の解離の程度に比較して、多数の薬剤の一つ又は複数の存在下でRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度が低下するか否かを測定し;そして
(c)工程(b)において測定された解離の程度が一つより多い薬剤の存在下において低下したなら、別々に、そのような薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を阻害するか否か測定し、それによりそのような多数の薬剤のうちのそのような薬剤がRyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害すると決定する
ことを含む方法。
【請求項4】
RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を決定することが、RyR1受容体のプロテインキナーゼAリン酸化を測定することを含む、請求項1又は3記載の方法。
【請求項5】
RyR1受容体のプロテインキナーゼAリン酸化を測定することが、RyR1受容体の非リン酸化形態ではなくてリン酸化形態に結合する抗体の結合を検出することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
RyR1受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離の程度を決定することが、カルシウム−感受性蛍光染料の蛍光を測定することを含む、請求項1又は3記載の方法。
【請求項7】
RyR1受容体がヒトRyR1受容体である、請求項1又は3記載の方法。
【請求項8】
細胞を薬剤に接触させ、そしてRyR1受容体をそのような細胞に対して内因性である核酸から発現させる、請求項1又は3記載の方法。
【請求項9】
細胞を薬剤に接触させ、そしてRyR1受容体をそのような細胞にトランスフェクトされた核酸から発現させる、請求項1又は3記載の方法。
【請求項10】
細胞が細菌、酵母、昆虫、両生類、植物又は哺乳類の細胞である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
細胞が、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS−7細胞、LM(tk)細胞、マウス胚性繊維芽NIH−3T3細胞、マウスY1細胞、293ヒト胚性腎臓細胞及びヒーラ細胞からなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
細胞が、Sf9細胞、Sf21細胞又はイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)5B−4細胞からなる群から選択される昆虫細胞である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
細胞が、アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞又はアフリカツメガエル黒色胞細胞からなる群から選択される両生類細胞である、請求項10記載の方法。
【請求項14】
細胞が、欠陥を有する心臓を持つ被験者からの骨格筋である、請求項1又は3記載の方法。
【請求項15】
被験者が、心臓の欠陥が急速な心臓ペーシング又はヒトにより誘導された動物である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
組成物を製造する方法であって、薬剤を用意し、請求項1又は3記載の方法によるタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を当該薬剤が阻害するか否かを決定し、RyR1受容体と離して当該薬剤を回収し、そして担体と当該薬剤を混合することを含む方法。
【請求項17】
欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法であって、被験者に、被験者の骨格筋のタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を低下させるのに有効な薬剤をある量投与し、それにより、被験者の骨格筋の機能を軽減させることを含む方法。
【請求項18】
薬剤が、被験者の骨格筋のタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体のプロテインキナーゼA(PKA)リン酸化を低下させる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
被験者の欠陥のある骨格筋機能が心不全の間に起こる、請求項17記載の方法。
【請求項20】
薬剤が被験者の心不全を軽減もする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
薬剤がベータアドレナリン様ブロッカーではない、請求項20記載の方法。
【請求項22】
被験者の欠陥のある骨格筋機能が、慢性の閉塞性肺疾患、高血圧、喘息又は甲状腺機能亢進症の間に起こる、請求項17記載の方法。
【請求項23】
欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法であって、被験者に、被験者の骨格筋のタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体/カルシウム放出チャネルへのFKBP12結合蛋白質の結合を模倣するのに有効な薬剤をある量投与することにより、チャネルの開口の確率を減少させ、それにより被験者の欠陥のある骨格筋機能を軽減させることを含む方法。
【請求項24】
被験者の欠陥のある骨格筋機能が心不全の間に起こる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
薬剤が被験者の心不全を軽減もする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
被験者の欠陥のある骨格筋機能が、慢性の閉塞性肺疾患、高血圧、喘息又は甲状腺機能亢進症の間に起こる、請求項23記載の方法。
【請求項27】
欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法であって、被験者に、請求項1又は3記載の方法により、タイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害すると決定された薬剤又はそのような薬剤の構造上及び機能上の類似体又は相同体を治療上有効な量投与することを含む方法。
【請求項28】
被験者の欠陥のある骨格筋機能が心不全の間に起こる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
薬剤が被験者の心不全を軽減もする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
被験者の欠陥のある骨格筋機能が、慢性の閉塞性肺疾患、高血圧、喘息又は甲状腺機能亢進症の間に起こる、請求項27記載の方法。
【請求項31】
薬剤がベータアドレナリン様ブロッカーではない、請求項28記載の方法。
【請求項32】
異常性を治療するための薬学組成物の製造のための、請求項1又は3記載の方法により、タイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害すると決定された薬剤の使用であって、異常性は、タイプ1(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を阻害することにより軽減される、上記使用。
【請求項33】
薬学組成物の製造が、上記薬剤を治療上有効な量、薬学上受容可能な担体と混合することを含む、請求項32の使用。
【請求項34】
欠陥のある骨格筋機能を有する被験者を治療する方法であって、被験者に、被験者の骨格筋のタイプ1ライアノジン(RyR1)受容体からのFKBP12結合蛋白質の解離を低下させるのに有効なベータアドレナリン様ブロッカーをある量投与することにより被験者の骨格筋の機能を軽減させることを含む方法。
【請求項35】
ベータアドレナリン様ブロッカーが、カルベジロール(Coreg(登録商標)、スミスクラインビーチャム)又はメトプロロール(Toprol−XL(登録商標)、アストラゼネカ)である、請求項34記載の方法。

【公表番号】特表2007−525165(P2007−525165A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509231(P2006−509231)
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/006971
【国際公開番号】WO2004/080283
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(505019998)トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク (7)
【Fターム(参考)】