タイミング同期装置、タイミング同期方法
【課題】基準タイミング信号に自装置の内部タイミング信号を正確に同期させるタイミング同期装置を提供する。
【解決手段】所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報とを取得する取得部と、クロック周波数を有する内部クロック信号を生成するクロック生成部と、内部クロック信号に基づいて、所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成する時刻情報生成部と、基準タイミング信号と内部タイミング信号、及び、基準時刻情報と内部時刻情報を比較することにより、基準タイミング信号に対する内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、基準タイミング信号に対する内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する検出部と、位相の進み量又は遅れ量に応じてクロック周波数を調整する調整部と、を備えるタイミング同期装置。
【解決手段】所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報とを取得する取得部と、クロック周波数を有する内部クロック信号を生成するクロック生成部と、内部クロック信号に基づいて、所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成する時刻情報生成部と、基準タイミング信号と内部タイミング信号、及び、基準時刻情報と内部時刻情報を比較することにより、基準タイミング信号に対する内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、基準タイミング信号に対する内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する検出部と、位相の進み量又は遅れ量に応じてクロック周波数を調整する調整部と、を備えるタイミング同期装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準タイミングに同期したシステムタイミングを生成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局間の無線信号の出力タイミングを一致させるために、無線基地局間でタイミングフレームの同期化が行われる。タイミングフレームの同期化には、例えば、GPS(Global positioning system)受信機から取得され、1秒の間隔を通知する、1PPS(Pulse Per Second)信号が用いられる。GPS受信機からの1PPS信号の他に、IEE
E1588 Precision Time Protocol(PTP)の1秒間隔を知らせるための信号が用いられることもある。以降、GPS衛星から送信される信号を総称して、GPS信号と称する。
【0003】
例えば、LTE(Long Term Evolution)において、GPS信号を使用して無線基地局
装置間における無線フレーム同期や無線周波数同期を行う場合には、以下のような問題がある。
【0004】
例えば、GPS衛星の軌道、天候の影響、又はGPSアンテナの故障などによって、無線基地局装置がGPS衛星からGPS信号を捕捉できない状態になることがある。GPS衛星からGPS信号を捕捉できない状態になると、無線基地局装置は、自装置内に具備される高精度発振器を使用して生成されたクロックを用いて無線信号を出力するなどの処理を行う。無線基地局装置が自装置内に具備される高精度発振器を使用して生成されたクロックを用いて動作することは、以降、「自走する」と称される。高精度発振器には、例えば、水晶発振器がある。
【0005】
無線基地局装置が自走する場合には、無線基地局装置が生成するクロックの精度は高精度発振器の精度に依存するため、時間の経過とともに生成クロックのタイミングがGPS信号のタイミングからずれていくことになる。そうすると、無線基地局装置間で無線信号の出力タイミングがずれてしまう場合がある。そこで、GPS衛星からのGPS信号を捕捉できない状態(GPS衛星未捕捉状態)がしばらく継続したのちに、再びGPS信号を捕捉し始めた場合には、無線基地局装置は、時間の経過とともにずれてしまったGPS信号と自装置の生成クロックとのタイミング位相を修正する必要がある。以降、無線基地局装置がGPS衛星からのGPS信号を捕捉できない状態は「GPS衛星未捕捉状態」、又は単に「GPS未捕捉状態」と称される。また、無線基地局装置がGPS衛星からのGPS信号を捕捉している状態は「GPS衛星捕捉状態」、又は、単に「GPS捕捉状態」と称される。
【0006】
タイミング位相を修正する方法の一つに、例えば、GPS信号と位相が合うように無線基地局装置の生成クロックのクロック周波数を変動させ、徐々にフレーム位置を合わせる方法がある。この場合、DPLL(Digital Phase Locked Loop)やAPLL(Analog PLL)を用いて、GPS信号と生成クロックとの位相比較をし、生成クロックのクロック周
波数を変動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−52280号公報
【特許文献2】特開2000−4152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、DPLLやAPLLが用いられる場合には、GPS信号に対して生成クロックが進んでいるのか遅れているのかは判定されずに近い方に位相が合わせられることによって位相合わせが行われる。GPS衛星未捕捉状態が継続する時間の経過とともに位相のずれは大きくなり、位相差が大きいとPLLでのクロック周波数の変動も大きくなるため、クロック周波数が無線周波数精度の範囲を超えて変動してしまう可能性がある。無線周波数精度は、例えば、LTEが規定されている3GPP(3rd Generation Partnership Project)においては、基準周波数±0.05ppm(Parts Per Million)と規定さ
れている。
【0009】
本発明の一態様は、基準タイミング信号に自装置の内部タイミング信号を正確に同期させるタイミング同期装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様の一つは、タイミング同期装置である。このタイミング同期装置は、
所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と、前記基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報と、を取得する取得部と、
クロック周波数を有する内部クロック信号を生成するクロック生成部と、
前記内部クロック信号に基づいて、前記所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と前記内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成する時刻情報生成部と、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報を比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記クロック周波数を調整する調整部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
開示のタイミング同期装置によれば、基準タイミング信号に自装置の内部タイミング信号を同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】無線基地局装置の構成例を示す図である。
【図2】タイミング同期装置の構成例を示す図である。
【図3】クローズドループで動作するタイミング同期装置の例を示す図である。
【図4】オープンループで動作するタイミング同期装置の例を示す図である。
【図5A】1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも進んでいる場合の、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との比較の例を示す図である。
【図5B】PPS信号が1秒基準カウンタ信号よりも進んでいる場合の、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との比較の例を示す図である
【図6】時刻位相比較部の処理フローの例を示す図である。
【図7】位相調整処理における、クロック周波数の変動の例である。
【図8A】制御値設定部の処理フローの例を示す図である。
【図8B】制御値設定部の処理フローの例を示す図である。
【図9】制御値設定部が実行するDDSTW値平均処理のフローの例を示す図である。
【図10】制御値設定部が実行する位相変化確認統計処理のフローの例を示す図である。
【図11】第2実施形態のタイミング同期装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0014】
<第1実施形態>
タイミング同期装置は、例えば、無線基地局装置内に備えられ、外部装置からの基準クロック信号に基づいて所定の時間間隔を示す基準タイミング信号に無線基地局装置内で生成される内部タイミング信号を同期させる。基準タイミング信号は、例えば、GPS受信機から受信する1PPS信号などである。GPS衛星からの信号の他に、PTPで用いられる信号などもある。第1実施形態では、タイミング同期装置は、GPS衛星からのクロック信号、時刻等に自装置内で生成されるクロック信号、時刻等を同期させる。
【0015】
<<装置構成>>
図1は、無線基地局装置の構成例を示す図である。無線基地局装置500は、無線機制御局(REC:Radio Equipment Controller)510と、無線機(RE:Radio Equipment)520とを有する。
【0016】
無線機制御局510は、局間伝送路インタフェース部(HWY:HighWaY)511,レイヤ
2スイッチ部(L2SW:Layer 2 SWitch)512,ベースバンド部(BB:Base Band)513
,制御部(CNT:CoNTroller)514,GPS受信機515,及びクロックタイミング部(CLK Timing:CLocK Timing)516を含む。
【0017】
局間伝送路インタフェース部511は、他の無線基地局装置と接続する有線伝送路のインタフェースである。レイヤ2スイッチ部512は、局間伝送路インタフェース部511,ベースバンド部513,及び制御部514間のデータのやり取りの中継をする。
【0018】
ベースバンド部513は、送信データの誤り訂正符号化,フレーム化,データ変調等を行う。また、ベースバンド部513は、受信信号の誤り訂正復号化,データの多重分離などのベースバンド信号処理を行う。
【0019】
制御部514は、他の基地局装置や上位の装置と制御信号の送受信を行い、無線回線管理,無線回線の設定,開放などを行う。
【0020】
GPS受信機515は、GPS衛星から送信されるクロック信号や時刻情報等を受信する。また、GPS衛星から送信されたクロック信号に基づいて、例えば、1秒の時間間隔を示す1PPS信号を生成する。
【0021】
クロックタイミング部516は、GPS受信機515から受信されるクロック信号,1PPS信号,時刻情報等を用いて、装置内で使用されるクロック信号や無線フレームの送受信のタイミングを生成する。
【0022】
無線機520は、送受信部(TRX:Transmitter and Receiver)521,送信用パワーアンプ部(T-PA:Transmitter-Power Amplifier)522,送受切り替え部(DUPlexer)523,及び低雑音増幅部(LNA:Low Noise Amplifier)524を含む。
【0023】
無線機制御局510及び無線機520のそれぞれに含まれる処理部は、例えば、各機能を実現するための電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)な
どの特定用途向けの集積回路等を含むカードユニットである。
【0024】
図2は、タイミング同期装置の構成例を示す図である。タイミング同期装置1は、DPD(Digital Phase Detector)部11,DDS(Direct Digital Synthesis)部12,時計カウンタ部13,時刻位相比較部14,制御値設定部15,及びGPS受信部16を有する。タイミング同期装置1は、例えば、無線基地局装置100における無線制御局110内のGPS受信機515及びクロックタイミング部516に相当する。
【0025】
タイミング同期装置1は、自装置内で生成されるクロック信号をGPS衛星から取得されるクロック信号に同期させるための処理を行う。さらに、タイミング同期装置1は、自装置内で保持される時刻と、GPS衛星から取得される時刻とを同期させるための処理を行う。
【0026】
タイミング同期装置1は、クローズドループとオープンループとの2つのモードを切り替えて動作する。
【0027】
図3は、クローズドループで動作するタイミング同期装置の例を示す図である。クローズドループでは、DDS部12は、DPD部11からの入力のみを受け付ける。DDS部12から生成されたクロック信号がDPD部11に入力されるので、DPD部11とDDS部12とで閉じたループを形成する。GPS衛星捕捉状態においては、タイミング同期装置1は、主にクローズドループで動作する。
【0028】
図4は、オープンループで動作するタイミング同期装置の例を示す図である。オープンループでは、DDS部12は、DPD部11からの入力を切断し、制御値設定部15からの入力を受け付ける。タイミング同期装置1は、主に、GPS衛星未捕捉状態やGPS衛星からのクロック信号や1PPS信号に同期するための処理を行う場合に、オープンループで動作する。
【0029】
タイミング同期装置1のオープンループとクローズドループとの切替の詳細については、後述される。
【0030】
(GPS受信部)
GPS受信部16は、例えば、図1におけるGPS受信機515であり、GPS衛星からのクロック信号及び時刻を示す時刻情報等を受信する。GPS受信部16は、GPS衛星から受信されたクロック信号をカウントして、例えば、1秒の時間間隔を示すPPS信
号を生成する。
【0031】
GPS衛星から取得されるクロック信号は、以降、GPSクロック信号、又は、単にGPSクロックと称される。GPS衛星から取得される時刻情報は、以降、GPS時刻情報と称される。GPSクロック信号は、DPD部11に出力される。PPS信号とGPS時刻情報とは、時刻位相比較部14に出力される。
【0032】
GPS受信部16は、所定時間GPS衛星からクロック信号及びGPS時刻情報の何れも受信しなかった場合には、GPS未捕捉状態を判定し、GPS未捕捉状態であることを時刻位相比較部14に出力する。
【0033】
GPS受信部16は、例えば、取得部に相当する。PPS信号は、例えば、基準タイミング信号に相当する。GPS時刻情報は、例えば、基準時刻情報に相当する。
【0034】
(DPD部)
DPD部11は、GPSクロック信号と、DDS部12によって生成されたクロック信号がフィードバックされた帰還クロック信号とを入力として得る。
【0035】
DPD部11は、GPSクロック信号と帰還クロック信号とをそれぞれ8kHzに分周し、8kHzに分周された2つの入力の位相比較を行う回路である。GPSクロック信号は、例えば、10MHzの周波数を有する。また、DDS部12によって生成されるクロック信号は、第1実施形態において、3.84MHzから無線周波数精度(±0.05ppm)の範囲内の周波数を有すると想定される。DPD部11は、Phase Build Out機能を有し、8kHzの分周の出力を調整し、8kHzに分周されたGPSクロック信号と帰還クロック信号との位相差の最大値をDPD部11の出力クロックの1周期分の範囲まで短縮する。
【0036】
DPD部11は、位相比較の結果得られた、8kHzに分周されたGPSクロック信号と生成クロック信号との位相差をDDS部12に出力する。
【0037】
(DDS部)
DDS部12は、内部リファレンスクロックを生成する高精度発振器を備えている。高精度発振器には、例えば、OCXO(Oven Controlled Xtal Oscillator:温度制御型水
晶発振器)、TCXO(Temperature-Compensated crystal Oscillator:温度補償型水晶発振器)などの水晶発振器がある。
【0038】
DDS部12は、制御値であるチューニングワード(DDSTW)を用いて、内部リファレンスクロックから、装置内で用いられるクロック信号を生成する。DDS部12は、例えば、以下の式に基づいたクロック信号を生成する。
【0039】
Fout=(Frefclk×DDSTW)/2^32・・・(式1)
Fout:出力周波数(クロック周波数)
Frefclk:内部リファレンスクロック周波数
DDSTW:チューニングワード
第1実施形態では、基準クロック周波数は3.84MHzであるとする。第1実施形態では、高精度発振器は、OCXOであり、内部リファレンスクロック周波数Frefclkは20MHzであるとする。また、式1において、2の32乗は、DDS部12が32ビットの位相アキュームレータを具備することに由来する。
【0040】
基準クロック周波数(3.84MHz)を出力するための、DDSTW値は、式1より、(3.84MHz×2^32)÷20MHz=824633720.832である。このDDSTW値を基準DDSTW値とする。
【0041】
また、内部リファレンスクロック周波数FrefclkはOCXOで作成され、OCXOの精度に左右される。例えば、OCXOの精度が±100ppb(Parts Per Billion)であ
る場合には、内部リファレンスクロック周波数Frefclkは19.999999〜20.000001MHzの範囲を有する。
Frefclk=19.999999の場合には、
DDSTW=(3.84×2^32)/19.999999=824633762.064
となる。
Frefclk=20.000001の場合には、
DDSTW=(3.84×2^32)/20.000001=824633679.600
となる。このようにして、内部リファレンスクロック周波数の変動に応じてDDSTW値が変動することによって出力周波数(クロック周波数)の精度が基準クロック周波数±0.05ppmに保たれる。
【0042】
タイミング同期装置1はクローズドループで動作している場合には、DDS部12は、DPD部11からGPSクロック信号と帰還クロック信号との位相差を入力として得る。DDS部12は、入力された位相差に対応するDDSTW値の変化量を取得し、DDSTWの現在値に加算する。DDS部12は、求められたDDSTW値を用いて、クロック信号を生成する。DDS部12は、GPSクロック信号と帰還クロック信号との位相差とDDSTW値の変化量との対応を、例えば、予め表や関数などで保持している。
【0043】
タイミング同期装置1がオープンループで動作している場合には、DDS部12は、制御値設定部15からDDSTW値を入力として得る。DDS部12は、入力されたDDSTW値を用いて、式1に従ってクロック信号を生成する。
【0044】
また、GPS未捕捉状態の場合には、タイミング同期装置1にGPSクロックの入力がなく、タイミング同期装置1は自走することになる。自走の場合、タイミング同期装置1はオープンループで動作し、DDS部12は、自走時に使用するために予め設定されたDDSTW値を用いて、式1に従ってクロック信号を生成する。自走用のDDSTW値は、以降、ホールドオーバ値と称される。
【0045】
DDS部12は、生成クロック信号を時計カウンタ部13に出力する。また、DDS部12は、生成クロック信号を帰還クロック信号としてDPD部11にフィードバックする。
【0046】
以降、DDS部12によって生成された信号は、生成クロック信号、又は、単に生成クロックと称される。DDS部12は、クロック生成部に相当する。生成クロック信号は、内部クロック信号に相当する。
【0047】
(時計カウンタ部)
時計カウンタ部13は、DDS部12から生成クロック信号を入力として得る。時計カウンタ部13は、DDS部12から入力される生成クロック信号をカウントしており、生成クロック信号のカウント数によって、例えば、1秒を計測する。時計カウンタ部13は、1秒の時間間隔を示す1秒基準カウンタ信号を生成する。また、時計カウンタ部13は、装置内で用いられる時刻を管理しており、1秒を計測する毎に現時刻に1秒加算して時刻を更新する。時計カウンタ部13は、1秒基準カウンタ信号とともに、その時点の時刻を含む装置内時刻情報も生成する。時計カウンタ部13は、1秒基準カウンタ信号とともに装置内時刻情報を時刻位相比較部14に出力する。
【0048】
時計カウンタ部13は、時刻情報生成部に相当する。1秒基準カウンタ信号は、内部タイミング信号に相当する。装置内時刻情報は、内部時刻情報に相当する。
【0049】
(時刻位相比較部)
時刻位相比較部14は、GPS受信部16からPPS信号とGPS時刻情報とを入力として得る。さらに、時刻位相比較部14は、時計カウンタ部13から1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報とを入力として得る。
【0050】
例えば、PPS信号及び1秒基準カウンタ信号が矩形波であるとすると、時刻位相比較部14は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との立ち上がりを比較することによって、位相差を求める。このとき、時刻位相比較部14は、GPS時刻情報と装置内時刻情報とを比較することによって、1秒基準カウンタ信号がPPS信号に対して進んでいるのか遅れているのかを検出する。
【0051】
また、時刻位相比較部14は、位相差を検出するための検出用クロック(図示せず)を具備しており、PPS信号の立ち上がりと1秒基準カウンタ信号との立ち上がりとの間に存在する検出用クロックのサイクル数を計測することで、位相差値を求める。すなわち、位相差値は、検出用クロックのサイクル数で表わされる。
【0052】
1秒基準カウンタ信号がPPS信号より進んでいる場合には、時刻位相比較部14は、求められた位相差値を負の数として制御値設定部15に出力する。
【0053】
PPS信号が1秒基準カウンタ信号より進んでいる場合には、時刻位相比較部14は、求められた位相差値を正の数として制御値設定部15に出力する。
【0054】
また、時刻位相比較部14は、GPS受信部16からGPS未捕捉状態が通知された場合には、GPS未捕捉状態を制御値設定部15に通知する。
【0055】
図5A及び図5Bは、PPS信号とGPS時刻情報と、1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報と、の比較処理を説明するための図である。図5A及び図5Bでは、一番上段に検出用クロックの波形が示される。検出用クロックは、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との立ち上がりタイミングの時間差を計測するためのクロックである。検出用クロックは時刻位相比較部14に具備されている(図示せず)。検出用クロックは、図5A及び図5Bにおいて、100MHzの周波数を有するものとする。
【0056】
図5A及び図5Bの2段目には、GPS時刻情報に含まれる時刻が表示されている。図5A及び図5Bの3段目には、PPS信号の波形が示される。なお、時刻位相比較部14は、GPS受信部16から、次のPPS信号の立ち上がりに刻まれる時刻を含んだGPS時刻情報をPPS信号に先立って受信しているので、そのGPS時刻情報を次のPPS信号に設定する。
【0057】
図5Aは、1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも進んでいる場合の、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との比較の例を示す図である。
【0058】
図5Aに示される例では、時刻位相比較部14は、1秒基準カウンタ信号の方がPPS信号よりも早く時刻nになることを検出する。すなわち、時刻位相比較部14は、PPS信号に対して、1秒基準カウンタ信号が進んでいることを検出する。時刻位相比較部14は、1秒基準カウンタ信号の立ち上がりからPPS信号の立ち上がりまでの時間を、例えば、100MHzの検出用クロックのサイクル数をカウントして、位相差が5サイクル分あることを検出する。
【0059】
したがって、図5Aにおいては、1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも5サイクル分進んでいるので、時刻位相比較部14は、制御値設定部15に位相差値「−5」を通知する。
【0060】
図5Bは、PPS信号が1秒基準カウンタ信号よりも進んでいる場合の、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との比較の例を示す図である。
【0061】
図5Bに示される例では、時刻位相比較部14は、PPS信号の方が1秒基準カウンタ信号よりも早く時刻nになることを検出する。すなわち、時刻位相比較部14は、PPS信号に対して、1秒基準カウンタ信号が遅れていることを検出する。また、時刻位相比較部14は、PPS信号の立ち上がりから1秒基準カウンタ信号の立ち上がりまでの時間が検出用クロックの6サイクル分であることを検出する。
【0062】
従って、図5Bに示される例では、PPS信号に対して1秒基準カウンタ信号が6サイクル分遅れているので、時刻位相比較部14は、制御値設定部15に位相差値「+6」を通知する。
【0063】
PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差が検出用クロックの1サイクル未満である場合には、時刻位相比較部14は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相があっていると見なす。以降、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相が合っていると見なされる状態、すなわち、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差が検出用クロックの1サイクル未満である状態は、「位相同期状態」と称される。また、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相が合っていると見なされない状態、すなわち、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差が検出用クロックの1サイクル以上である状態は、以降、「位相非同期状態」と称される。
【0064】
また、時刻位相比較部14は、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期しているか否かを判定する処理を実行する。例えば、時刻位相比較部14は、位相差値を図示されていないメモリに保持しており、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値が前回(すなわち、1秒前)の位相差値と一致しているか否かによって、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期しているか否かを判定する。
【0065】
PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値が前回と一致することは、1秒基準カウンタ信号によって示される1秒の時間間隔が変化していないことを示し、すなわち、クロック周波数が変化していないことを示す。クロック周波数が変化していないということは、DDSTW値の変化がないことを示し、すなわち、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していることが示される。なお、位相差値は検出用クロックのサイクル数で示されるため、1サイクル未満の位相差の変化はないものとみなされる。例えば、図5A及び図5Bに示される例の場合には、1サイクルは10ns(検出用クロックの周波数100MHz)であるので、±10ns未満の位相差の変化はないものとみなされる。
【0066】
したがって、時刻位相比較部14は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値が前回と一致している場合には、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していることを判定する。また、時刻位相比較部14は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値が前回と一致していない場合には、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していないことを判定する。
【0067】
以降、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していると判定される状態は、周波数同期状態と称される。また、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していないと判定される状態は、周波数非同期状態と称される。時刻位相比較部14は、検出部に相当する。
【0068】
(時刻位相比較部の処理フロー)
図6は、時刻位相比較部14の処理フローの例を示す図である。時刻位相比較部14は、周波数同期フラグの初期値を0に設定する(OP1)。周波数同期フラグは、周波数同期状態になると1になり、GPS未捕捉状態になると0に設定される。
【0069】
時刻位相比較部14は、GPS受信部16から1秒周期でPPS信号を受信する。また、時刻位相比較部14は、PPS信号に先立って、該PPS信号が示す時刻を含むGPS時刻情報を受信する。また、GPS受信部16がGPS衛星からの信号を受信できない場合には、時刻位相比較部14は、GPS受信部16からGPS未捕捉状態の通知を受ける(OP2)。
【0070】
時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態であるか否かを判定する(OP3)。GPS受信部16からPPS信号及びGPS時刻情報を受信している場合には、時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態であることを判定する。GPS受信部16からGPS未捕捉状態の通知を受けている場合には、時刻位相比較部14は、GPS未捕捉状態であることを判定する。
【0071】
GPS未捕捉状態の場合には(OP3:No)、時刻位相比較部14は、周波数同期フラグを0に設定する(OP4)。時刻位相比較部14は、GPS未捕捉状態を制御値設定部15に通知する(OP5)。その後、処理がOP2に戻る。
【0072】
GPS捕捉状態の場合には(OP3:Yes)、時刻位相比較部14は、周波数同期フラグが0であるか否かを判定する(OP6)。
【0073】
周波数同期フラグが0である場合には(OP6:Yes)、時刻位相比較部14は、周波数同期状態であるか否かを判定する(OP7)。時刻位相比較部14は、GPS受信部16から受信されたPPS信号とGPS時刻情報と、時刻カウンタ部13から受信された1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報と、を比較する。時刻位相比較部14は、得られた位相差値が前回の位相差値と一致するか否かによって、GPSクロックと生成クロックとが同期しているか否か、すなわち、周波数同期状態又は周波数非同期状態を判定する。
【0074】
周波数非同期状態の場合には(OP7:No)、時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態と周波数非同期状態とを制御値設定部15に通知する(OP8)。その後、処理がOP2に戻る。
周波数同期状態の場合には(OP7:Yes)、時刻位相比較部14は、周波数同期フラグを1に設定する(OP9)。
【0075】
周波数同期フラグが1の場合(OP6:No)、又は、周波数同期状態を判定して周波数同期フラグを1に設定した場合には(OP9)、時刻位相比較部14は、位相差があるか否かを判定する(OP10)。位相差値が±0である場合には、時刻位相比較部14は、位相差がないと判定する。位相差値が±0でない場合には、時刻位相比較部14は、位相差があると判定する。
【0076】
位相差がない、すなわち、位相差値が「±0」である場合には(OP10:Yes)、時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態と周波数同期状態と位相同期状態とを制御値設定部15に通知する(OP11)。その後、処理がOP2に戻る。
【0077】
位相差がある場合には(OP10:No)、時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態,周波数同期状態,位相非同期状態,及び位相差値を制御値設定部15に通知する(OP12)。その後、処理がOP2に戻る。
【0078】
OP6において周波数同期フラグが1である場合には、周波数同期状態か否かの判定(OP7)がなされることなく、位相差の有無の判定(OP10)の処理が移る。このことは、周波数同期フラグが1である場合には、時刻位相比較部14は、一旦周波数同期状態になるとGPS未捕捉状態になるまでは、例え周波数非同期状態になったとしても周波数同期状態であると見なすことが示される。
【0079】
(制御値設定部)
制御値設定部15は、時刻位相比較部14からの通知内容に応じて、オープンループとクローズループとの切替を決定する。オープンループとクローズループとの切り替えの詳細については、後述される。
【0080】
制御値設定部15は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差を小さくするための位相調整処理を行う。位相調整処理はオープンループにおいて実行される。位相調整処理の詳細は、以下のとおりである。
【0081】
制御値設定部15は、時刻位相比較部14から位相差値に応じて、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差が小さくなるようなDDSTW値を設定する。位相調整処理の際には、位相調整処理が開始される直前の周波数同期状態におけるDDSTW値である位相調整DDSTW値が用いられる。
【0082】
このとき、制御値設定部15は、クロック周波数の変動幅が大きくならないようにするために、DDSTW値を段階的に変化させる。
【0083】
基準クロック周波数±0.05ppmの範囲にクロック周波数を抑えるために、位相調整処理を通じて、位相調整処理直前のクロック周波数からの変動幅の最大値は、例えば、±20ppb(=0.02ppm)に設定される。
【0084】
式1より、Frefclk=20MHzの場合に、DDSTW値が1増減すると、Foutは3
.84MHzに対して、1.2127ppb増減する。出力周波数Foutが+20ppb
変動するためには、DDSTW値が20÷1.2127≒+16.49変動すればよい。制御値設定部15は、位相調整処理の、位相調整DDSTW値からの変化量の最大値は±16とする。ただし、DDSTW値が±16も変化するとクロック周波数の変動幅が大きくなり、無線周波数精度の範囲を超えてしまう可能性があるため制御値設定部15は、初回のDDSTW値の変化量は±8とする。DDSTW値が±8変化すると、クロック周波数は約10ppb変化する。
【0085】
クロック周波数が+1ppb変化した状態が1秒間続くと、1秒基準カウンタ信号の位相が1ns進む。また、クロック周波数が−1ppb変化した状態が1秒間続くと、1秒基準カウンタ信号の位相が1ns遅れる。すなわち、DDSTW値が+8変化するとクロック周波数が約+10pbbに変化し、この状態が1秒間続くと、1秒基準カウンタ信号の位相が10ns進むことになる。また、DDSTW値が+16変化すると、クロック周波数が約+20ppb変化し、この状態が1秒間続くと、1秒基準カウンタ信号の位相が20ns進むことになる。
【0086】
制御値設定部15は、時刻位相比較部14から入力される位相差値に応じて求められたDDSTW値をDDS部12に出力する。
【0087】
また、制御値設定部15は、PPS信号と1秒基準信号との位相が合うと、すなわち、位相差がなくなったとみなされると、DDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す。ただし、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す場合にも、位相調整処理の初回と同じように、段階的に戻す。例えば、位相差が2サイクル、すなわち、20nsである場合には、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+8変化させた値に設定し、この状態を2秒続けたのちにDDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す。このようにすることで、DDSTW値を一度に±16変化させないようにし、クロック周波数が無線周波数精度を超えて変動することを防ぐ。
【0088】
例えば、図5Aに示される例の場合、制御値設定部15は、時刻位相比較部14から位相差値「−5」を通知される。図5Aにおいて検出用クロックの周波数は100MHzであり、1サイクルは10nsであるので、制御値設定部15は、位相差値が「−5」であることから、1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも50ns進んでいることを検知す
る。
【0089】
制御値設定部15は、初回の位相調整処理の際には、クロック周波数を約−10ppb変動させるために、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数が約−10ppb変動し、1秒後には、1秒基準カウンタ信号の位相が約10ns遅れる。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約10ns縮まり、40ns(位相差値「−4」)になる。
【0090】
次の位相調整処理の際には、位相差が40nsであり、20nsより大きい。制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16変化させた値に設定する。前回の位相調整処理時のDDSTW値は位相調整DDSTW値−8であるので、前回のDDSTW値からの変化量は−8に抑えられる。DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16変化させた値に設定することによって、クロック周波数が約−20ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が20ns遅れる。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約20ns縮まり、20ns(位相差値「−2」)になる。
【0091】
さらに次の位相調整処理の際には、位相差が20nsであるので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定する。なお、仮にここで、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16変化させた値に設定した場合、1秒後に位相差が0になりDDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す必要がある。しかし、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16変化させた値から位相調整DDSTW値に戻すと、DDSTW値を一度に−16変化させることになってしまう。従って、位相差が20ns(位相差値が±2)の場合には、DDSTW値は位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定される。
【0092】
DDSTW値が位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定されることによって、クロック周波数がさらに約−10ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が10ns遅れる。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約10ns縮まり、約10ns(位相差値「−1」)になる。
【0093】
さらに次の位相調整処理の際には、位相差が10nsであるので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数がさらに約−10ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が10ns遅れる。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約10ns縮まり、位相差がないと見なされる(位相差値「±0」)。
【0094】
位相差がなくなったので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す。前回の位相調整処理時のDDSTW値は位相調整DDSTW値から−8変化させた値であるので、前回のDDSTW値からの変化量は+8に抑えられる。
【0095】
すなわち、図5Aに示される例の場合、制御値設定部15は、1秒おきにDDSTW値を、位相調整DDSTW値−8(位相変化10ns)、位相調整DDSTW値−16(位相変化20ns)、位相調整DDSTW値−8(位相変化10ns)、位相調整DDSTW値−8(位相変化10ns)、位相調整DDSTW値と変化させる。これによって、4秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が50ns遅れ、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相が合う。
【0096】
例えば、図5Bに示される例の場合、制御値設定部15は、時刻位相比較部14から位相差値「+6」を通知される。制御値設定部15は、位相差値「+6」から、1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも60ns遅れていることを検知する。
【0097】
制御値設定部15は、初回の位相調整処理の際には、位相差にかかわらず、1秒基準カウンタ信号の位相を進めるために、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+8変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数が約+10ppb変動し、1秒後には、1秒基準カウンタ信号の位相が10ns進む。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は50ns(位相差値「+5」)になる。
【0098】
次の位相調整処理の際には、位相差が50nsであり、20nsより大きいので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+16変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数が約+20ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が20ns進む。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は30ns(位相差値「+3」)になる。
【0099】
さらに次の位相調整処理の際には、位相差が30nsであり、20nsより大きいので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+16変化させた値に設定する。この場合、DDSTW値は、前回と変わらない。これによって、クロック周波数がさらに約+20ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が20ns進む。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約10ns(位相差値「+1」)になる。
【0100】
次の位相調整処理の際には、位相差が10nsであるので、制御値設定部15は、DDSTWを位相調整DDSTW値から+8変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数がさらに約+10ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が10ns進む。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約0ns(位相差値「0」)になる。
【0101】
すなわち、図5Bに示される例の場合、制御値設定部15は、1秒おきにDDSTWを位相調整DDSTW値から、+8(位相10ns進む)、+16(位相20ns進む)、+16(位相20ns進む)、+8(位相10ns進む)と変化させる。これによって、1秒基準カウンタ信号の位相が60ns進み、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相が合う。
【0102】
図7は、図5Bにおいて、位相調整処理が開始される直前の周波数同期状態におけるDDSTW値が基準クロック周波数に対応した基準DDSTW値である場合の、位相調整処理によるクロック周波数の変動を示す図である。この場合、位相調整DDSTW値は基準DDSTW値となる。αは16、βは20ppbである。制御値設定部15は、調整部に相当する。
【0103】
また、制御値設定部15は、位相差値の減り方の統計をとり、位相調整DDSTW値を調整するための位相変化確認統計処理を行う。
【0104】
図5A及び図5Bに示される例では、−50nsや+60nsなどの小さい位相差であり、位相調整処理に4秒程度しかかからない。例えば、位相差値の通知に16ビット用いる場合には、−32767から+32767サイクルまで計測することができ、−327.67から+327.67μsの位相差まで検出可能である。DDSTWの最大の変動幅が±20ppbである場合には、1秒間に1秒基準カウンタ信号の位相変化が±20nsである。したがって、位相差が327.67μsである場合には、327670÷20≒16,384秒≒4.5時間かかる。
【0105】
位相調整処理の実行中はオープンループとなり、GPSクロックの入力は切断される。
また、位相調整処理によってクロック周波数が変更されるので、GPSクロックとも同期しなくなる。位相差が−327.67μsもあるような場合、位相調整処理の実行時間が約4.5時間と長くなり、その間GPSクロックに同期していない状態が続く。この場合、DDS部12によって用いられるOCXOなど内部発振器の周波数が温度特性、経年変化により変化する可能性がある。内部発振器の周波数が温度特性や経年変化によって変化している場合、位相差DDSTW値を一定の値を用いて位相調整処理を実行していると、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差の変化量にずれが生じる。制御値設定部15は、この位相差の変化量のずれを補正するために位相変化確認統計処理を実行する。
【0106】
例えば、DDSTW値を位相差DDSTW値±20ppbとして動作させている場合には、毎秒20nsずつPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相が近づいていくはずであるである。すなわち、1秒毎のPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差の変化量は20nsのはずである。しかし、内部リファレンスクロックの周波数が温度特性や経年変化等で変動している場合には、1秒毎のPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差の変化量が20nsよりも小さくなったり大きくなったりして変動する。
【0107】
そこで、制御値設定部15は、毎秒のPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値の変化量の平均値を求め、平均値に基づいて位相差調整DDSTW値を調整することで位相差値の変化量のずれを補正する。位相変化確認統計処理の詳細については、後述される。
【0108】
また、制御値設定部15は、クローズドループにおいて調整されたDDSTW値を読み取り、DDSTWの平均値を求めるためのDDSTW値平均処理を実行する。求められたDDSTWの平均値は、位相調整DDSTW値及びホールドオーバDDSTW値として設定される。ホールドオーバ値は、オープンループにおいて、自走する場合に用いられるDDSTWの値である。DDSTW値平均処理の詳細については、後述される。
【0109】
(制御値設定部の処理フロー)
図8A及び図8Bは、制御値設定部15の処理フローの例を示す図である。制御値設定部15は、まず変数nの初期値を0に設定する(OP21)。変数0は、位相調整処理の回数を計測するための変数である。
【0110】
制御値設定部15は、時刻位相比較部14から通知を受ける(OP22)。この通知内容に基づいて、処理の内容が決まる。
【0111】
制御値設定部15は、GPS捕捉状態か否かを判定する(OP23)。時刻位相比較部14からの通知内容にGPS捕捉状態の通知が含まれるか又はGPS未捕捉状態の通知が含まれるかにより判定される。
【0112】
GPS未捕捉状態である場合には(OP23:No)、制御値設定部15はオープンループに設定し、自走するようにDDS部12に指示を出す(OP24)。オープンループで自走する旨の指示を受けるとDDS部12は、自走用のDDSTW値であるホールドオーバDDSTW値を用いてクロックを生成する。その後、処理がOP22に戻る。
【0113】
GPS捕捉状態である場合には(OP23:Yes)、制御値設定部15は、周波数同期状態であるか否かを判定する(OP25)。制御値設定部15は、時刻位相比較部14からの通知内容に周波数同期状態の通知又は周波数非同期状態の通知のどちらか一方が含まれていることによって、周波数同期状態か否を判定する。
【0114】
周波数非同期状態である場合(OP25:No)、すなわち、時刻位相比較部14から
の通知内容に周波数非同期状態の通知が含まれていた場合には、制御値設定部15は、クローズドループに設定するようにDDS部12に指示を出す(OP26)。クローズドループの指示を受けると、DDS部12は、DPD部11からの入力の受付を開始し、GPSクロックと生成クロックとを同期させるための処理を行う。
【0115】
制御値設定部15は、DDS部12に設定されているDDSTW値を読み取り、位相調整DDSTW値として保持する(OP27)。その後、処理がOP22に戻る。
【0116】
周波数同期状態である場合には(OP25:Yes)、すなわち、時刻位相比較部14からの通知内容に周波数同期状態の通知が含まれている場合には、制御値設定部15は、位相同期状態か否かを判定する(OP28)。制御値設定部15は、時刻位相比較部14からの通知内容に位相同期状態の通知又は位相非同期状態の通知のどちらか一方が含まれていることによって、位相同期状態か否かを判定する。
【0117】
位相同期状態である場合には(OP28:Yes)、すなわち、時刻位相比較部14からの通知内容に位相同期状態の通知が含まれている場合には、クローズドループに設定するようにDDS部12に指示を出す(OP30)。制御値設定部15は、DDSTW値平均処理を行い(OP31)、得られた平均値を位相調整DDSTW値として保持する(OP32)。その後、処理がOP22に戻る。DDSTW値平均処理の詳細については、後述される。
【0118】
位相非同期状態である場合には(OP28:No)、制御値設定部15は、オープンループに設定するようにDDS部12に指示を出す(OP41)。制御値設定部15は、位相変化確認統計処理を実行する(OP42)。位相変化確認統計処理の詳細は、後述される。
【0119】
制御値設定部15は、時刻位相比較部14からの通知内容に含まれる位相差値が正の数であるか否かを判定する(OP43)。
【0120】
位相差値が正の数である場合には(OP43:Yes)、制御値設定部15は、変数nが0であるか否か、及び、位相差が2サイクル以下か否かを判定する(OP44)。変数nが0である場合には、初回の位相調整処理であることが示される。
【0121】
変数nが0である、又は、位相差が2サイクル以下の少なくともどちらか一方に合致する場合には(OP44:Yes)、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+8(16進数表記:+0x8)変化させた値に設定する(OP45)。位相差値が正であることから、PPS信号よりも1秒基準カウンタ信号が遅れていることが示され、DDSTW値が位相調整DDSTW値から+8変化させた値になることによって、1秒後の1秒基準カウンタ信号を約10ns進めることができる。制御値設定部15は、設定されたDDSTW値をDDS部12に通知する。その後、処理がOP50に進む。
【0122】
変数nが0である、及び、位相差が2サイクル以下のどちらにも合致しない場合には(OP44:No)、初回の位相調整処処理ではなく、且つ、位相差が2サイクルより大きいことが示される。制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+16(16進数表記:+0x10)変化させた値に設定する(OP46)。位相差値が正であることから、PPS信号よりも1秒基準カウンタ信号が遅れていることが示され、DDSTW値が位相調整DDSTW値から+16変化させた値になることによって、1秒後の1秒基準カウンタ信号を約20ns進めることができる。制御値設定部15は、設定されたDDSTW値をDDS部12に通知する。その後、処理がOP50に進む。
【0123】
位相差値が負の数である場合には(OP43:No)、制御値設定部15は、変数nが0であるか否か、及び、位相差が2サイクル以下か否かを判定する(OP47)。変数nが0である場合には、初回の位相調整処理であることが示される。
【0124】
変数nが0である、又は、位相差が2サイクル以下の少なくともどちらか一方に合致する場合には(OP47:Yes)、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−8(16進数表記:−0x8)変化させた値に設定する(OP48)。位相差値が負であることから、1PPS信号よりも1秒基準カウンタ信号が進んでいることが示され、DDSTW値が位相調整DDSTW値から−8変化させた値になることによって、1秒後の1秒基準カウンタ信号を約10ns遅くすることができる。制御値設定部15は、設定されたDDSTW値をDDS部12に通知する。その後、処理がOP50に進む。
【0125】
変数nが0である、及び、位相差が2サイクル以下のどちらにも合致しない場合には(OP47:No)、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16(16進数表記:−0x10)変化させた値に設定する(OP49)。位相差値が負であることから、PPS信号よりも1秒基準カウンタ信号が進んでいることが示され、DDSTW値が位相調整DDSTW値から−16変化させた値に設定されることによって、1秒後の1秒基準カウンタ信号を約20ns遅らせることができる。制御値設定部15は、設定されたDDSTW値をDDS部12に通知する。その後、処理がOP50に進む。
【0126】
位相調整DDSTW値をDDS部12に通知すると、制御値設定部15は、1秒後のPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差の予測値が1サイクル未満か否かを判定する(OP50)。制御値設定部15は、例えば、検出用クロックの周波数が100MHzで1サイクルが10nsであり、DDSTW値が位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定した場合には、位相差値を−1だけ変化させた値を位相差の予測値とする。
【0127】
位相差の予測値が1サイクル未満の場合には(OP50:Yes)、制御値設定部15は、1秒後には位相差がなくなるものとみなし、位相調整処理の終了を決定する。制御値設定部15は、変数nを0にしてリセットする(OP51)。その後処理がOP22に戻る。
【0128】
位相差の予測値が1サイクル以上の場合には(OP50:No)、1秒後も位相調整の必要があることが示される。制御値設定部15は、変数nに1を加算して更新する(OP52)。その後処理がOP22に戻る。
【0129】
図9は、制御値設定部15が実行するDDSTW値平均処理のフローの例を示す図である。図9に示されるDDSTW値平均処理は、図8AのOP30において実行される処理である。
【0130】
制御値設定部15は、クローズドループにおいて調整されたDDSTW値を読み取り、メモリ(図示せず)に蓄積する(OP61)。
【0131】
制御値設定部15は、蓄積された最大1時間分のDDSTW値の平均値を求める(OP62)。求められた平均値は、ホールドオーバDDSTW値に設定され、自走設定になった場合に用いられる。その後、処理が図8AのOP31に進む。
【0132】
ホールドオーバDDSTW値として、クローズドループにおいて調整されたDDSTW値の平均値を用いることによって、DDS部12に具備される高精度発振器の周波数変動の影響を抑えることができ、より精度のよいDDSTW値を用いることができる。
【0133】
図10は、制御値設定部15が実行する位相変化確認統計処理のフローの例を示す図である。図10に示される位相変化確認統計処理は、図8BのOP42において実行される処理である。
【0134】
制御値設定部15は、n回目の位相調整処理に用いられる位相差をメモリ(図示せず)に蓄積する(OP71)。
【0135】
制御値設定部15は、n−1回目の位相差とn回目の位相差との変化量の最大過去50回分の平均値を求める(OP72)。
【0136】
制御値設定部15は、求められた平均値が1.5サイクルと2.5サイクルの間にあるか否かを判定する(OP73)。第1実施形態では、クロック周波数の最大変動幅を±20ppbと設定しており、クロック周波数を最大変動幅±20ppb変動させるためのDDSTW値の最大変動幅は±16である。また、DDSTW値を±16変化させた後の1秒後の1秒基準カウンタ信号の位相変化は約±20nsである。1秒間で1秒基準カウンタ信号の位相が約±20ns変化するため、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差も1秒間で約±20ns変化する。20nsは、100MHzの検出用クロックの2サイクルに相当する。制御値設定部15は、過去の位相差の変化量の平均が2サイクルから±0.5サイクル離れることによって、DDS部12に具備される高精度発振器の温度変化や経年変化による周波数の変動を検知する。
【0137】
求められた平均値が1.5サイクルと2.5サイクルの間にある場合には(OP73:No)、制御値設定部15は、DDS部12に具備される高精度発振器の周波数に変動がないとみなす。その後、処理がOP43に進む。
【0138】
求められた平均値が1.5サイクル未満又は2.5サイクル以上である場合には(OP73:No)、制御値設定部15は、DDS部12に具備される高精度発振器の周波数(内部リファレンスクロック周波数)に変動があったとみなす。制御値設定部15は、内部リファレンスクロック周波数の変動による位相差の変化量のずれを補正するために、位相調整DDSTW値を+4または−4変化させた値に更新する(OP74)。位相調整DDSTW値を±4変化させるのは、位相差の変化量を約±5ns変化させるためである。その後、処理がOP43に進む。
【0139】
<<第1実施形態の作用効果>>
図8A及び図8Bより、GPS未捕捉状態になった場合には(図8A、OP23:No)、タイミング同期装置1は、オープンループ設定で自走する(図8A、OP24)。
【0140】
GPS未捕捉状態が続いた後、再びGPS捕捉状態になると(図8A、OP23:Yes)、GPSクロック信号と生成クロック信号とを同期させるため、タイミング同期装置1は、クローズドループ設定で動作する(図8A、OP26)。
【0141】
クローズドループで動作することによって、周波数同期状態になると(図8A、OP25:Yes)、タイミング同期装置1は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相を
合わせるために、オープンループに設定し、位相調整処理を行う(図8B,OP41−OP52)。
【0142】
位相調整処理によって、位相同期状態になると(図8A、OP28:Yes)、タイミング同期装置1は、再びクローズドループを設定する(図8A、OP29)。
【0143】
タイミング同期装置1は、位相調整処理の際に、GPS時刻情報と装置内時刻情報とを比較して、PPS信号に対して1秒基準カウンタ信号が進んでいるのか、遅れているのかを判定する。これによって、より正確にPPS信号と1秒基準カウンタ信号とを同期させ
ることができる。PPS信号と1秒基準タイミング信号とが同期することによって時刻位相も同期するので、例えば、LTEの10msの無線フレーム位相とフレーム単位のSFN(System Frame Number)とを基地局間で合わせることができる。
【0144】
また、タイミング同期装置1は、クロック周波数の変動幅が±20ppbに抑えられるようなDDSTW値を設定する。これによって、GPS未捕捉状態が続き、再びGPS捕捉状態になった場合に、クロック周波数の無線周波数精度を守れなくなるような変動を防ぐことができる。また、無線フレームの位相飛びが生じて、タイミング同期装置1が属する無線システムに影響を与えることを防ぐことができる。
【0145】
<第2実施形態>
第2実施形態のタイミング同期装置は、第1実施形態で説明されたタイミング同期装置を二重化したものである。第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明は省略される。
【0146】
二重化した場合、GPS未捕捉状態における自走や、GPS未捕捉状態からGPS捕捉状態に戻った際のGPS衛星からのクロックおよび時刻に同期する処理などにおいて、周波数変動がある。このため、運用系、待機系のそれぞれで生成されるクロックが異なり、位相が合わない場合がある。また、運用系、待機系の切替によって、位相差及び周波数差の影響などによって、無線周波数精度が規格外となる場合がある。
【0147】
第2実施形態のタイミング同期装置1Bでは、待機系のクロックは、GPSクロックに同期するのではなく運用系の生成クロックに同期することによって、運用系と待機系とのクロックの位相差を抑圧することができる。
【0148】
図11は、第2実施形態のタイミング同期装置の構成例を示す図である。タイミング同期装置1Bは、N系クロック部10と、E系クロック部20と、GPS受信部16とを備える。図11に示される例では、N系クロック部10の入力及び出力は実線で示される。E系クロック部20の入力及び出力は破線で示される。
【0149】
N系クロック部10、E系クロック部20ともに、DPD部111,211,DDS部112,212,時計カウンタ部113,213,時刻位相比較部114,214,制御値設定部115,215,及び、切替部117A,117B,217A,217Bを含む。
【0150】
切替部117A,117B,217A,217Bは、運用系(ACT)と待機系(STBY)との切替指示受けて、入力を切り替える。なお、図11に示される例においては、運用系と待機系との切替の指示を行う処理部は図示されない。また、運用系と待機系との切替は、例えば、所定の周期で行われたり、タイミング同期装置1Bを備える無線基地局装置内の障害の発生を検知することによって行われる。
【0151】
N系クロック部10の切替部117Aは、運用系として動作する場合には、GPSクロック信号の入力を採用して、GPSクロック信号をDPD部111に出力する。切替部117Aは、待機系として動作する場合には、E系クロック生成部20の生成クロックの入力を採用して、DPD部111に出力する。
【0152】
N系クロック部10の切替部117Bは、運用系として動作する場合には、DDS部1
12の生成クロック信号の入力を採用して、マスタクロックとして時計カウンタ部113に出力する。切替部117Bは、待機系として動作する場合には、E系クロック部20のDDS部212の生成クロックの入力を採用して、時計カウンタ部113に出力する。
【0153】
E系クロック部20の切替部217Aは、運用系として動作する場合には、GPSクロック信号の入力を採用して、GPSクロック信号をDPD部211に出力する。切替部217Aは、待機系として動作する場合には、N系クロック生成部10の生成クロックの入力を採用して、DPD部211に出力する。
【0154】
E系クロック部20の切替部217Bは、運用系として動作する場合には、DDS部212の生成クロックの入力を採用して、マスタクロックとして時計カウンタ部213に出力する。切替部217Bは、待機系として動作する場合には、N系クロック部10のDDS部112の生成クロックの入力を採用して、時計カウンタ部213に出力する。
【0155】
時計カウンタ部113によって生成される1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報とは、時刻位相比較部114に加え、E系クロック部20の時計カウンタ部213にも出力される。同様に、時計カウンタ部213によって生成される1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報とは、時刻位相比較部214に加え、N系クロック部10の時計カウンタ部113にも出力される。
【0156】
待機系として動作する場合、時計カウンタ部113、213は、運用系のクロック部から入力された1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報とを時刻位相比較部114,214に出力する。この場合、時刻位相比較部114,214は、運用系のクロック部の1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報と、PPS信号とGPS時刻情報と、を比較して位相差値を得る。
【0157】
タイミング同期装置1Bは、待機系として動作する場合には、GPSクロックを無視して運用系のクロック部の生成クロックを入力として採用する。また、位相調整処理中でも、待機系として動作する場合には、運用系のクロック部の生成クロックを入力として採用し、運用系のクロック部から入力される1秒基準カウンタ信号をPPS信号に同期させることによって、運用系の生成クロックに追従する。これによって、運用系のクロック部の状態がいかなる場合でも、待機系は運用系に追従した動作となり、いつ切り替えられても周波数変動を最小限に抑えて切り替えが可能となる。
【符号の説明】
【0158】
1,1B タイミング同期装置
11,111,211 DPD部
12,112,212 DDS部
13,113,213 時計カウンタ部
14,114,214 時刻位相比較部
15,115,215 制御値設定部
16 GPS受信部
17,117A,117B,217A,217B 切替部
10 N系クロック部
20 E系クロック部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準タイミングに同期したシステムタイミングを生成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局間の無線信号の出力タイミングを一致させるために、無線基地局間でタイミングフレームの同期化が行われる。タイミングフレームの同期化には、例えば、GPS(Global positioning system)受信機から取得され、1秒の間隔を通知する、1PPS(Pulse Per Second)信号が用いられる。GPS受信機からの1PPS信号の他に、IEE
E1588 Precision Time Protocol(PTP)の1秒間隔を知らせるための信号が用いられることもある。以降、GPS衛星から送信される信号を総称して、GPS信号と称する。
【0003】
例えば、LTE(Long Term Evolution)において、GPS信号を使用して無線基地局
装置間における無線フレーム同期や無線周波数同期を行う場合には、以下のような問題がある。
【0004】
例えば、GPS衛星の軌道、天候の影響、又はGPSアンテナの故障などによって、無線基地局装置がGPS衛星からGPS信号を捕捉できない状態になることがある。GPS衛星からGPS信号を捕捉できない状態になると、無線基地局装置は、自装置内に具備される高精度発振器を使用して生成されたクロックを用いて無線信号を出力するなどの処理を行う。無線基地局装置が自装置内に具備される高精度発振器を使用して生成されたクロックを用いて動作することは、以降、「自走する」と称される。高精度発振器には、例えば、水晶発振器がある。
【0005】
無線基地局装置が自走する場合には、無線基地局装置が生成するクロックの精度は高精度発振器の精度に依存するため、時間の経過とともに生成クロックのタイミングがGPS信号のタイミングからずれていくことになる。そうすると、無線基地局装置間で無線信号の出力タイミングがずれてしまう場合がある。そこで、GPS衛星からのGPS信号を捕捉できない状態(GPS衛星未捕捉状態)がしばらく継続したのちに、再びGPS信号を捕捉し始めた場合には、無線基地局装置は、時間の経過とともにずれてしまったGPS信号と自装置の生成クロックとのタイミング位相を修正する必要がある。以降、無線基地局装置がGPS衛星からのGPS信号を捕捉できない状態は「GPS衛星未捕捉状態」、又は単に「GPS未捕捉状態」と称される。また、無線基地局装置がGPS衛星からのGPS信号を捕捉している状態は「GPS衛星捕捉状態」、又は、単に「GPS捕捉状態」と称される。
【0006】
タイミング位相を修正する方法の一つに、例えば、GPS信号と位相が合うように無線基地局装置の生成クロックのクロック周波数を変動させ、徐々にフレーム位置を合わせる方法がある。この場合、DPLL(Digital Phase Locked Loop)やAPLL(Analog PLL)を用いて、GPS信号と生成クロックとの位相比較をし、生成クロックのクロック周
波数を変動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−52280号公報
【特許文献2】特開2000−4152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、DPLLやAPLLが用いられる場合には、GPS信号に対して生成クロックが進んでいるのか遅れているのかは判定されずに近い方に位相が合わせられることによって位相合わせが行われる。GPS衛星未捕捉状態が継続する時間の経過とともに位相のずれは大きくなり、位相差が大きいとPLLでのクロック周波数の変動も大きくなるため、クロック周波数が無線周波数精度の範囲を超えて変動してしまう可能性がある。無線周波数精度は、例えば、LTEが規定されている3GPP(3rd Generation Partnership Project)においては、基準周波数±0.05ppm(Parts Per Million)と規定さ
れている。
【0009】
本発明の一態様は、基準タイミング信号に自装置の内部タイミング信号を正確に同期させるタイミング同期装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様の一つは、タイミング同期装置である。このタイミング同期装置は、
所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と、前記基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報と、を取得する取得部と、
クロック周波数を有する内部クロック信号を生成するクロック生成部と、
前記内部クロック信号に基づいて、前記所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と前記内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成する時刻情報生成部と、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報を比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記クロック周波数を調整する調整部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
開示のタイミング同期装置によれば、基準タイミング信号に自装置の内部タイミング信号を同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】無線基地局装置の構成例を示す図である。
【図2】タイミング同期装置の構成例を示す図である。
【図3】クローズドループで動作するタイミング同期装置の例を示す図である。
【図4】オープンループで動作するタイミング同期装置の例を示す図である。
【図5A】1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも進んでいる場合の、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との比較の例を示す図である。
【図5B】PPS信号が1秒基準カウンタ信号よりも進んでいる場合の、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との比較の例を示す図である
【図6】時刻位相比較部の処理フローの例を示す図である。
【図7】位相調整処理における、クロック周波数の変動の例である。
【図8A】制御値設定部の処理フローの例を示す図である。
【図8B】制御値設定部の処理フローの例を示す図である。
【図9】制御値設定部が実行するDDSTW値平均処理のフローの例を示す図である。
【図10】制御値設定部が実行する位相変化確認統計処理のフローの例を示す図である。
【図11】第2実施形態のタイミング同期装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0014】
<第1実施形態>
タイミング同期装置は、例えば、無線基地局装置内に備えられ、外部装置からの基準クロック信号に基づいて所定の時間間隔を示す基準タイミング信号に無線基地局装置内で生成される内部タイミング信号を同期させる。基準タイミング信号は、例えば、GPS受信機から受信する1PPS信号などである。GPS衛星からの信号の他に、PTPで用いられる信号などもある。第1実施形態では、タイミング同期装置は、GPS衛星からのクロック信号、時刻等に自装置内で生成されるクロック信号、時刻等を同期させる。
【0015】
<<装置構成>>
図1は、無線基地局装置の構成例を示す図である。無線基地局装置500は、無線機制御局(REC:Radio Equipment Controller)510と、無線機(RE:Radio Equipment)520とを有する。
【0016】
無線機制御局510は、局間伝送路インタフェース部(HWY:HighWaY)511,レイヤ
2スイッチ部(L2SW:Layer 2 SWitch)512,ベースバンド部(BB:Base Band)513
,制御部(CNT:CoNTroller)514,GPS受信機515,及びクロックタイミング部(CLK Timing:CLocK Timing)516を含む。
【0017】
局間伝送路インタフェース部511は、他の無線基地局装置と接続する有線伝送路のインタフェースである。レイヤ2スイッチ部512は、局間伝送路インタフェース部511,ベースバンド部513,及び制御部514間のデータのやり取りの中継をする。
【0018】
ベースバンド部513は、送信データの誤り訂正符号化,フレーム化,データ変調等を行う。また、ベースバンド部513は、受信信号の誤り訂正復号化,データの多重分離などのベースバンド信号処理を行う。
【0019】
制御部514は、他の基地局装置や上位の装置と制御信号の送受信を行い、無線回線管理,無線回線の設定,開放などを行う。
【0020】
GPS受信機515は、GPS衛星から送信されるクロック信号や時刻情報等を受信する。また、GPS衛星から送信されたクロック信号に基づいて、例えば、1秒の時間間隔を示す1PPS信号を生成する。
【0021】
クロックタイミング部516は、GPS受信機515から受信されるクロック信号,1PPS信号,時刻情報等を用いて、装置内で使用されるクロック信号や無線フレームの送受信のタイミングを生成する。
【0022】
無線機520は、送受信部(TRX:Transmitter and Receiver)521,送信用パワーアンプ部(T-PA:Transmitter-Power Amplifier)522,送受切り替え部(DUPlexer)523,及び低雑音増幅部(LNA:Low Noise Amplifier)524を含む。
【0023】
無線機制御局510及び無線機520のそれぞれに含まれる処理部は、例えば、各機能を実現するための電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)な
どの特定用途向けの集積回路等を含むカードユニットである。
【0024】
図2は、タイミング同期装置の構成例を示す図である。タイミング同期装置1は、DPD(Digital Phase Detector)部11,DDS(Direct Digital Synthesis)部12,時計カウンタ部13,時刻位相比較部14,制御値設定部15,及びGPS受信部16を有する。タイミング同期装置1は、例えば、無線基地局装置100における無線制御局110内のGPS受信機515及びクロックタイミング部516に相当する。
【0025】
タイミング同期装置1は、自装置内で生成されるクロック信号をGPS衛星から取得されるクロック信号に同期させるための処理を行う。さらに、タイミング同期装置1は、自装置内で保持される時刻と、GPS衛星から取得される時刻とを同期させるための処理を行う。
【0026】
タイミング同期装置1は、クローズドループとオープンループとの2つのモードを切り替えて動作する。
【0027】
図3は、クローズドループで動作するタイミング同期装置の例を示す図である。クローズドループでは、DDS部12は、DPD部11からの入力のみを受け付ける。DDS部12から生成されたクロック信号がDPD部11に入力されるので、DPD部11とDDS部12とで閉じたループを形成する。GPS衛星捕捉状態においては、タイミング同期装置1は、主にクローズドループで動作する。
【0028】
図4は、オープンループで動作するタイミング同期装置の例を示す図である。オープンループでは、DDS部12は、DPD部11からの入力を切断し、制御値設定部15からの入力を受け付ける。タイミング同期装置1は、主に、GPS衛星未捕捉状態やGPS衛星からのクロック信号や1PPS信号に同期するための処理を行う場合に、オープンループで動作する。
【0029】
タイミング同期装置1のオープンループとクローズドループとの切替の詳細については、後述される。
【0030】
(GPS受信部)
GPS受信部16は、例えば、図1におけるGPS受信機515であり、GPS衛星からのクロック信号及び時刻を示す時刻情報等を受信する。GPS受信部16は、GPS衛星から受信されたクロック信号をカウントして、例えば、1秒の時間間隔を示すPPS信
号を生成する。
【0031】
GPS衛星から取得されるクロック信号は、以降、GPSクロック信号、又は、単にGPSクロックと称される。GPS衛星から取得される時刻情報は、以降、GPS時刻情報と称される。GPSクロック信号は、DPD部11に出力される。PPS信号とGPS時刻情報とは、時刻位相比較部14に出力される。
【0032】
GPS受信部16は、所定時間GPS衛星からクロック信号及びGPS時刻情報の何れも受信しなかった場合には、GPS未捕捉状態を判定し、GPS未捕捉状態であることを時刻位相比較部14に出力する。
【0033】
GPS受信部16は、例えば、取得部に相当する。PPS信号は、例えば、基準タイミング信号に相当する。GPS時刻情報は、例えば、基準時刻情報に相当する。
【0034】
(DPD部)
DPD部11は、GPSクロック信号と、DDS部12によって生成されたクロック信号がフィードバックされた帰還クロック信号とを入力として得る。
【0035】
DPD部11は、GPSクロック信号と帰還クロック信号とをそれぞれ8kHzに分周し、8kHzに分周された2つの入力の位相比較を行う回路である。GPSクロック信号は、例えば、10MHzの周波数を有する。また、DDS部12によって生成されるクロック信号は、第1実施形態において、3.84MHzから無線周波数精度(±0.05ppm)の範囲内の周波数を有すると想定される。DPD部11は、Phase Build Out機能を有し、8kHzの分周の出力を調整し、8kHzに分周されたGPSクロック信号と帰還クロック信号との位相差の最大値をDPD部11の出力クロックの1周期分の範囲まで短縮する。
【0036】
DPD部11は、位相比較の結果得られた、8kHzに分周されたGPSクロック信号と生成クロック信号との位相差をDDS部12に出力する。
【0037】
(DDS部)
DDS部12は、内部リファレンスクロックを生成する高精度発振器を備えている。高精度発振器には、例えば、OCXO(Oven Controlled Xtal Oscillator:温度制御型水
晶発振器)、TCXO(Temperature-Compensated crystal Oscillator:温度補償型水晶発振器)などの水晶発振器がある。
【0038】
DDS部12は、制御値であるチューニングワード(DDSTW)を用いて、内部リファレンスクロックから、装置内で用いられるクロック信号を生成する。DDS部12は、例えば、以下の式に基づいたクロック信号を生成する。
【0039】
Fout=(Frefclk×DDSTW)/2^32・・・(式1)
Fout:出力周波数(クロック周波数)
Frefclk:内部リファレンスクロック周波数
DDSTW:チューニングワード
第1実施形態では、基準クロック周波数は3.84MHzであるとする。第1実施形態では、高精度発振器は、OCXOであり、内部リファレンスクロック周波数Frefclkは20MHzであるとする。また、式1において、2の32乗は、DDS部12が32ビットの位相アキュームレータを具備することに由来する。
【0040】
基準クロック周波数(3.84MHz)を出力するための、DDSTW値は、式1より、(3.84MHz×2^32)÷20MHz=824633720.832である。このDDSTW値を基準DDSTW値とする。
【0041】
また、内部リファレンスクロック周波数FrefclkはOCXOで作成され、OCXOの精度に左右される。例えば、OCXOの精度が±100ppb(Parts Per Billion)であ
る場合には、内部リファレンスクロック周波数Frefclkは19.999999〜20.000001MHzの範囲を有する。
Frefclk=19.999999の場合には、
DDSTW=(3.84×2^32)/19.999999=824633762.064
となる。
Frefclk=20.000001の場合には、
DDSTW=(3.84×2^32)/20.000001=824633679.600
となる。このようにして、内部リファレンスクロック周波数の変動に応じてDDSTW値が変動することによって出力周波数(クロック周波数)の精度が基準クロック周波数±0.05ppmに保たれる。
【0042】
タイミング同期装置1はクローズドループで動作している場合には、DDS部12は、DPD部11からGPSクロック信号と帰還クロック信号との位相差を入力として得る。DDS部12は、入力された位相差に対応するDDSTW値の変化量を取得し、DDSTWの現在値に加算する。DDS部12は、求められたDDSTW値を用いて、クロック信号を生成する。DDS部12は、GPSクロック信号と帰還クロック信号との位相差とDDSTW値の変化量との対応を、例えば、予め表や関数などで保持している。
【0043】
タイミング同期装置1がオープンループで動作している場合には、DDS部12は、制御値設定部15からDDSTW値を入力として得る。DDS部12は、入力されたDDSTW値を用いて、式1に従ってクロック信号を生成する。
【0044】
また、GPS未捕捉状態の場合には、タイミング同期装置1にGPSクロックの入力がなく、タイミング同期装置1は自走することになる。自走の場合、タイミング同期装置1はオープンループで動作し、DDS部12は、自走時に使用するために予め設定されたDDSTW値を用いて、式1に従ってクロック信号を生成する。自走用のDDSTW値は、以降、ホールドオーバ値と称される。
【0045】
DDS部12は、生成クロック信号を時計カウンタ部13に出力する。また、DDS部12は、生成クロック信号を帰還クロック信号としてDPD部11にフィードバックする。
【0046】
以降、DDS部12によって生成された信号は、生成クロック信号、又は、単に生成クロックと称される。DDS部12は、クロック生成部に相当する。生成クロック信号は、内部クロック信号に相当する。
【0047】
(時計カウンタ部)
時計カウンタ部13は、DDS部12から生成クロック信号を入力として得る。時計カウンタ部13は、DDS部12から入力される生成クロック信号をカウントしており、生成クロック信号のカウント数によって、例えば、1秒を計測する。時計カウンタ部13は、1秒の時間間隔を示す1秒基準カウンタ信号を生成する。また、時計カウンタ部13は、装置内で用いられる時刻を管理しており、1秒を計測する毎に現時刻に1秒加算して時刻を更新する。時計カウンタ部13は、1秒基準カウンタ信号とともに、その時点の時刻を含む装置内時刻情報も生成する。時計カウンタ部13は、1秒基準カウンタ信号とともに装置内時刻情報を時刻位相比較部14に出力する。
【0048】
時計カウンタ部13は、時刻情報生成部に相当する。1秒基準カウンタ信号は、内部タイミング信号に相当する。装置内時刻情報は、内部時刻情報に相当する。
【0049】
(時刻位相比較部)
時刻位相比較部14は、GPS受信部16からPPS信号とGPS時刻情報とを入力として得る。さらに、時刻位相比較部14は、時計カウンタ部13から1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報とを入力として得る。
【0050】
例えば、PPS信号及び1秒基準カウンタ信号が矩形波であるとすると、時刻位相比較部14は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との立ち上がりを比較することによって、位相差を求める。このとき、時刻位相比較部14は、GPS時刻情報と装置内時刻情報とを比較することによって、1秒基準カウンタ信号がPPS信号に対して進んでいるのか遅れているのかを検出する。
【0051】
また、時刻位相比較部14は、位相差を検出するための検出用クロック(図示せず)を具備しており、PPS信号の立ち上がりと1秒基準カウンタ信号との立ち上がりとの間に存在する検出用クロックのサイクル数を計測することで、位相差値を求める。すなわち、位相差値は、検出用クロックのサイクル数で表わされる。
【0052】
1秒基準カウンタ信号がPPS信号より進んでいる場合には、時刻位相比較部14は、求められた位相差値を負の数として制御値設定部15に出力する。
【0053】
PPS信号が1秒基準カウンタ信号より進んでいる場合には、時刻位相比較部14は、求められた位相差値を正の数として制御値設定部15に出力する。
【0054】
また、時刻位相比較部14は、GPS受信部16からGPS未捕捉状態が通知された場合には、GPS未捕捉状態を制御値設定部15に通知する。
【0055】
図5A及び図5Bは、PPS信号とGPS時刻情報と、1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報と、の比較処理を説明するための図である。図5A及び図5Bでは、一番上段に検出用クロックの波形が示される。検出用クロックは、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との立ち上がりタイミングの時間差を計測するためのクロックである。検出用クロックは時刻位相比較部14に具備されている(図示せず)。検出用クロックは、図5A及び図5Bにおいて、100MHzの周波数を有するものとする。
【0056】
図5A及び図5Bの2段目には、GPS時刻情報に含まれる時刻が表示されている。図5A及び図5Bの3段目には、PPS信号の波形が示される。なお、時刻位相比較部14は、GPS受信部16から、次のPPS信号の立ち上がりに刻まれる時刻を含んだGPS時刻情報をPPS信号に先立って受信しているので、そのGPS時刻情報を次のPPS信号に設定する。
【0057】
図5Aは、1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも進んでいる場合の、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との比較の例を示す図である。
【0058】
図5Aに示される例では、時刻位相比較部14は、1秒基準カウンタ信号の方がPPS信号よりも早く時刻nになることを検出する。すなわち、時刻位相比較部14は、PPS信号に対して、1秒基準カウンタ信号が進んでいることを検出する。時刻位相比較部14は、1秒基準カウンタ信号の立ち上がりからPPS信号の立ち上がりまでの時間を、例えば、100MHzの検出用クロックのサイクル数をカウントして、位相差が5サイクル分あることを検出する。
【0059】
したがって、図5Aにおいては、1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも5サイクル分進んでいるので、時刻位相比較部14は、制御値設定部15に位相差値「−5」を通知する。
【0060】
図5Bは、PPS信号が1秒基準カウンタ信号よりも進んでいる場合の、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との比較の例を示す図である。
【0061】
図5Bに示される例では、時刻位相比較部14は、PPS信号の方が1秒基準カウンタ信号よりも早く時刻nになることを検出する。すなわち、時刻位相比較部14は、PPS信号に対して、1秒基準カウンタ信号が遅れていることを検出する。また、時刻位相比較部14は、PPS信号の立ち上がりから1秒基準カウンタ信号の立ち上がりまでの時間が検出用クロックの6サイクル分であることを検出する。
【0062】
従って、図5Bに示される例では、PPS信号に対して1秒基準カウンタ信号が6サイクル分遅れているので、時刻位相比較部14は、制御値設定部15に位相差値「+6」を通知する。
【0063】
PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差が検出用クロックの1サイクル未満である場合には、時刻位相比較部14は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相があっていると見なす。以降、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相が合っていると見なされる状態、すなわち、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差が検出用クロックの1サイクル未満である状態は、「位相同期状態」と称される。また、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相が合っていると見なされない状態、すなわち、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差が検出用クロックの1サイクル以上である状態は、以降、「位相非同期状態」と称される。
【0064】
また、時刻位相比較部14は、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期しているか否かを判定する処理を実行する。例えば、時刻位相比較部14は、位相差値を図示されていないメモリに保持しており、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値が前回(すなわち、1秒前)の位相差値と一致しているか否かによって、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期しているか否かを判定する。
【0065】
PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値が前回と一致することは、1秒基準カウンタ信号によって示される1秒の時間間隔が変化していないことを示し、すなわち、クロック周波数が変化していないことを示す。クロック周波数が変化していないということは、DDSTW値の変化がないことを示し、すなわち、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していることが示される。なお、位相差値は検出用クロックのサイクル数で示されるため、1サイクル未満の位相差の変化はないものとみなされる。例えば、図5A及び図5Bに示される例の場合には、1サイクルは10ns(検出用クロックの周波数100MHz)であるので、±10ns未満の位相差の変化はないものとみなされる。
【0066】
したがって、時刻位相比較部14は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値が前回と一致している場合には、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していることを判定する。また、時刻位相比較部14は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値が前回と一致していない場合には、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していないことを判定する。
【0067】
以降、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していると判定される状態は、周波数同期状態と称される。また、GPSクロック信号と生成クロック信号とが同期していないと判定される状態は、周波数非同期状態と称される。時刻位相比較部14は、検出部に相当する。
【0068】
(時刻位相比較部の処理フロー)
図6は、時刻位相比較部14の処理フローの例を示す図である。時刻位相比較部14は、周波数同期フラグの初期値を0に設定する(OP1)。周波数同期フラグは、周波数同期状態になると1になり、GPS未捕捉状態になると0に設定される。
【0069】
時刻位相比較部14は、GPS受信部16から1秒周期でPPS信号を受信する。また、時刻位相比較部14は、PPS信号に先立って、該PPS信号が示す時刻を含むGPS時刻情報を受信する。また、GPS受信部16がGPS衛星からの信号を受信できない場合には、時刻位相比較部14は、GPS受信部16からGPS未捕捉状態の通知を受ける(OP2)。
【0070】
時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態であるか否かを判定する(OP3)。GPS受信部16からPPS信号及びGPS時刻情報を受信している場合には、時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態であることを判定する。GPS受信部16からGPS未捕捉状態の通知を受けている場合には、時刻位相比較部14は、GPS未捕捉状態であることを判定する。
【0071】
GPS未捕捉状態の場合には(OP3:No)、時刻位相比較部14は、周波数同期フラグを0に設定する(OP4)。時刻位相比較部14は、GPS未捕捉状態を制御値設定部15に通知する(OP5)。その後、処理がOP2に戻る。
【0072】
GPS捕捉状態の場合には(OP3:Yes)、時刻位相比較部14は、周波数同期フラグが0であるか否かを判定する(OP6)。
【0073】
周波数同期フラグが0である場合には(OP6:Yes)、時刻位相比較部14は、周波数同期状態であるか否かを判定する(OP7)。時刻位相比較部14は、GPS受信部16から受信されたPPS信号とGPS時刻情報と、時刻カウンタ部13から受信された1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報と、を比較する。時刻位相比較部14は、得られた位相差値が前回の位相差値と一致するか否かによって、GPSクロックと生成クロックとが同期しているか否か、すなわち、周波数同期状態又は周波数非同期状態を判定する。
【0074】
周波数非同期状態の場合には(OP7:No)、時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態と周波数非同期状態とを制御値設定部15に通知する(OP8)。その後、処理がOP2に戻る。
周波数同期状態の場合には(OP7:Yes)、時刻位相比較部14は、周波数同期フラグを1に設定する(OP9)。
【0075】
周波数同期フラグが1の場合(OP6:No)、又は、周波数同期状態を判定して周波数同期フラグを1に設定した場合には(OP9)、時刻位相比較部14は、位相差があるか否かを判定する(OP10)。位相差値が±0である場合には、時刻位相比較部14は、位相差がないと判定する。位相差値が±0でない場合には、時刻位相比較部14は、位相差があると判定する。
【0076】
位相差がない、すなわち、位相差値が「±0」である場合には(OP10:Yes)、時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態と周波数同期状態と位相同期状態とを制御値設定部15に通知する(OP11)。その後、処理がOP2に戻る。
【0077】
位相差がある場合には(OP10:No)、時刻位相比較部14は、GPS捕捉状態,周波数同期状態,位相非同期状態,及び位相差値を制御値設定部15に通知する(OP12)。その後、処理がOP2に戻る。
【0078】
OP6において周波数同期フラグが1である場合には、周波数同期状態か否かの判定(OP7)がなされることなく、位相差の有無の判定(OP10)の処理が移る。このことは、周波数同期フラグが1である場合には、時刻位相比較部14は、一旦周波数同期状態になるとGPS未捕捉状態になるまでは、例え周波数非同期状態になったとしても周波数同期状態であると見なすことが示される。
【0079】
(制御値設定部)
制御値設定部15は、時刻位相比較部14からの通知内容に応じて、オープンループとクローズループとの切替を決定する。オープンループとクローズループとの切り替えの詳細については、後述される。
【0080】
制御値設定部15は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差を小さくするための位相調整処理を行う。位相調整処理はオープンループにおいて実行される。位相調整処理の詳細は、以下のとおりである。
【0081】
制御値設定部15は、時刻位相比較部14から位相差値に応じて、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差が小さくなるようなDDSTW値を設定する。位相調整処理の際には、位相調整処理が開始される直前の周波数同期状態におけるDDSTW値である位相調整DDSTW値が用いられる。
【0082】
このとき、制御値設定部15は、クロック周波数の変動幅が大きくならないようにするために、DDSTW値を段階的に変化させる。
【0083】
基準クロック周波数±0.05ppmの範囲にクロック周波数を抑えるために、位相調整処理を通じて、位相調整処理直前のクロック周波数からの変動幅の最大値は、例えば、±20ppb(=0.02ppm)に設定される。
【0084】
式1より、Frefclk=20MHzの場合に、DDSTW値が1増減すると、Foutは3
.84MHzに対して、1.2127ppb増減する。出力周波数Foutが+20ppb
変動するためには、DDSTW値が20÷1.2127≒+16.49変動すればよい。制御値設定部15は、位相調整処理の、位相調整DDSTW値からの変化量の最大値は±16とする。ただし、DDSTW値が±16も変化するとクロック周波数の変動幅が大きくなり、無線周波数精度の範囲を超えてしまう可能性があるため制御値設定部15は、初回のDDSTW値の変化量は±8とする。DDSTW値が±8変化すると、クロック周波数は約10ppb変化する。
【0085】
クロック周波数が+1ppb変化した状態が1秒間続くと、1秒基準カウンタ信号の位相が1ns進む。また、クロック周波数が−1ppb変化した状態が1秒間続くと、1秒基準カウンタ信号の位相が1ns遅れる。すなわち、DDSTW値が+8変化するとクロック周波数が約+10pbbに変化し、この状態が1秒間続くと、1秒基準カウンタ信号の位相が10ns進むことになる。また、DDSTW値が+16変化すると、クロック周波数が約+20ppb変化し、この状態が1秒間続くと、1秒基準カウンタ信号の位相が20ns進むことになる。
【0086】
制御値設定部15は、時刻位相比較部14から入力される位相差値に応じて求められたDDSTW値をDDS部12に出力する。
【0087】
また、制御値設定部15は、PPS信号と1秒基準信号との位相が合うと、すなわち、位相差がなくなったとみなされると、DDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す。ただし、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す場合にも、位相調整処理の初回と同じように、段階的に戻す。例えば、位相差が2サイクル、すなわち、20nsである場合には、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+8変化させた値に設定し、この状態を2秒続けたのちにDDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す。このようにすることで、DDSTW値を一度に±16変化させないようにし、クロック周波数が無線周波数精度を超えて変動することを防ぐ。
【0088】
例えば、図5Aに示される例の場合、制御値設定部15は、時刻位相比較部14から位相差値「−5」を通知される。図5Aにおいて検出用クロックの周波数は100MHzであり、1サイクルは10nsであるので、制御値設定部15は、位相差値が「−5」であることから、1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも50ns進んでいることを検知す
る。
【0089】
制御値設定部15は、初回の位相調整処理の際には、クロック周波数を約−10ppb変動させるために、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数が約−10ppb変動し、1秒後には、1秒基準カウンタ信号の位相が約10ns遅れる。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約10ns縮まり、40ns(位相差値「−4」)になる。
【0090】
次の位相調整処理の際には、位相差が40nsであり、20nsより大きい。制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16変化させた値に設定する。前回の位相調整処理時のDDSTW値は位相調整DDSTW値−8であるので、前回のDDSTW値からの変化量は−8に抑えられる。DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16変化させた値に設定することによって、クロック周波数が約−20ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が20ns遅れる。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約20ns縮まり、20ns(位相差値「−2」)になる。
【0091】
さらに次の位相調整処理の際には、位相差が20nsであるので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定する。なお、仮にここで、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16変化させた値に設定した場合、1秒後に位相差が0になりDDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す必要がある。しかし、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16変化させた値から位相調整DDSTW値に戻すと、DDSTW値を一度に−16変化させることになってしまう。従って、位相差が20ns(位相差値が±2)の場合には、DDSTW値は位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定される。
【0092】
DDSTW値が位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定されることによって、クロック周波数がさらに約−10ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が10ns遅れる。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約10ns縮まり、約10ns(位相差値「−1」)になる。
【0093】
さらに次の位相調整処理の際には、位相差が10nsであるので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数がさらに約−10ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が10ns遅れる。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約10ns縮まり、位相差がないと見なされる(位相差値「±0」)。
【0094】
位相差がなくなったので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値に戻す。前回の位相調整処理時のDDSTW値は位相調整DDSTW値から−8変化させた値であるので、前回のDDSTW値からの変化量は+8に抑えられる。
【0095】
すなわち、図5Aに示される例の場合、制御値設定部15は、1秒おきにDDSTW値を、位相調整DDSTW値−8(位相変化10ns)、位相調整DDSTW値−16(位相変化20ns)、位相調整DDSTW値−8(位相変化10ns)、位相調整DDSTW値−8(位相変化10ns)、位相調整DDSTW値と変化させる。これによって、4秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が50ns遅れ、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相が合う。
【0096】
例えば、図5Bに示される例の場合、制御値設定部15は、時刻位相比較部14から位相差値「+6」を通知される。制御値設定部15は、位相差値「+6」から、1秒基準カウンタ信号がPPS信号よりも60ns遅れていることを検知する。
【0097】
制御値設定部15は、初回の位相調整処理の際には、位相差にかかわらず、1秒基準カウンタ信号の位相を進めるために、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+8変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数が約+10ppb変動し、1秒後には、1秒基準カウンタ信号の位相が10ns進む。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は50ns(位相差値「+5」)になる。
【0098】
次の位相調整処理の際には、位相差が50nsであり、20nsより大きいので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+16変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数が約+20ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が20ns進む。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は30ns(位相差値「+3」)になる。
【0099】
さらに次の位相調整処理の際には、位相差が30nsであり、20nsより大きいので、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+16変化させた値に設定する。この場合、DDSTW値は、前回と変わらない。これによって、クロック周波数がさらに約+20ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が20ns進む。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約10ns(位相差値「+1」)になる。
【0100】
次の位相調整処理の際には、位相差が10nsであるので、制御値設定部15は、DDSTWを位相調整DDSTW値から+8変化させた値に設定する。これによって、クロック周波数がさらに約+10ppb変動し、1秒後には1秒基準カウンタ信号の位相が10ns進む。また、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相差は約0ns(位相差値「0」)になる。
【0101】
すなわち、図5Bに示される例の場合、制御値設定部15は、1秒おきにDDSTWを位相調整DDSTW値から、+8(位相10ns進む)、+16(位相20ns進む)、+16(位相20ns進む)、+8(位相10ns進む)と変化させる。これによって、1秒基準カウンタ信号の位相が60ns進み、1秒基準カウンタ信号とPPS信号との位相が合う。
【0102】
図7は、図5Bにおいて、位相調整処理が開始される直前の周波数同期状態におけるDDSTW値が基準クロック周波数に対応した基準DDSTW値である場合の、位相調整処理によるクロック周波数の変動を示す図である。この場合、位相調整DDSTW値は基準DDSTW値となる。αは16、βは20ppbである。制御値設定部15は、調整部に相当する。
【0103】
また、制御値設定部15は、位相差値の減り方の統計をとり、位相調整DDSTW値を調整するための位相変化確認統計処理を行う。
【0104】
図5A及び図5Bに示される例では、−50nsや+60nsなどの小さい位相差であり、位相調整処理に4秒程度しかかからない。例えば、位相差値の通知に16ビット用いる場合には、−32767から+32767サイクルまで計測することができ、−327.67から+327.67μsの位相差まで検出可能である。DDSTWの最大の変動幅が±20ppbである場合には、1秒間に1秒基準カウンタ信号の位相変化が±20nsである。したがって、位相差が327.67μsである場合には、327670÷20≒16,384秒≒4.5時間かかる。
【0105】
位相調整処理の実行中はオープンループとなり、GPSクロックの入力は切断される。
また、位相調整処理によってクロック周波数が変更されるので、GPSクロックとも同期しなくなる。位相差が−327.67μsもあるような場合、位相調整処理の実行時間が約4.5時間と長くなり、その間GPSクロックに同期していない状態が続く。この場合、DDS部12によって用いられるOCXOなど内部発振器の周波数が温度特性、経年変化により変化する可能性がある。内部発振器の周波数が温度特性や経年変化によって変化している場合、位相差DDSTW値を一定の値を用いて位相調整処理を実行していると、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差の変化量にずれが生じる。制御値設定部15は、この位相差の変化量のずれを補正するために位相変化確認統計処理を実行する。
【0106】
例えば、DDSTW値を位相差DDSTW値±20ppbとして動作させている場合には、毎秒20nsずつPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相が近づいていくはずであるである。すなわち、1秒毎のPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差の変化量は20nsのはずである。しかし、内部リファレンスクロックの周波数が温度特性や経年変化等で変動している場合には、1秒毎のPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差の変化量が20nsよりも小さくなったり大きくなったりして変動する。
【0107】
そこで、制御値設定部15は、毎秒のPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差値の変化量の平均値を求め、平均値に基づいて位相差調整DDSTW値を調整することで位相差値の変化量のずれを補正する。位相変化確認統計処理の詳細については、後述される。
【0108】
また、制御値設定部15は、クローズドループにおいて調整されたDDSTW値を読み取り、DDSTWの平均値を求めるためのDDSTW値平均処理を実行する。求められたDDSTWの平均値は、位相調整DDSTW値及びホールドオーバDDSTW値として設定される。ホールドオーバ値は、オープンループにおいて、自走する場合に用いられるDDSTWの値である。DDSTW値平均処理の詳細については、後述される。
【0109】
(制御値設定部の処理フロー)
図8A及び図8Bは、制御値設定部15の処理フローの例を示す図である。制御値設定部15は、まず変数nの初期値を0に設定する(OP21)。変数0は、位相調整処理の回数を計測するための変数である。
【0110】
制御値設定部15は、時刻位相比較部14から通知を受ける(OP22)。この通知内容に基づいて、処理の内容が決まる。
【0111】
制御値設定部15は、GPS捕捉状態か否かを判定する(OP23)。時刻位相比較部14からの通知内容にGPS捕捉状態の通知が含まれるか又はGPS未捕捉状態の通知が含まれるかにより判定される。
【0112】
GPS未捕捉状態である場合には(OP23:No)、制御値設定部15はオープンループに設定し、自走するようにDDS部12に指示を出す(OP24)。オープンループで自走する旨の指示を受けるとDDS部12は、自走用のDDSTW値であるホールドオーバDDSTW値を用いてクロックを生成する。その後、処理がOP22に戻る。
【0113】
GPS捕捉状態である場合には(OP23:Yes)、制御値設定部15は、周波数同期状態であるか否かを判定する(OP25)。制御値設定部15は、時刻位相比較部14からの通知内容に周波数同期状態の通知又は周波数非同期状態の通知のどちらか一方が含まれていることによって、周波数同期状態か否を判定する。
【0114】
周波数非同期状態である場合(OP25:No)、すなわち、時刻位相比較部14から
の通知内容に周波数非同期状態の通知が含まれていた場合には、制御値設定部15は、クローズドループに設定するようにDDS部12に指示を出す(OP26)。クローズドループの指示を受けると、DDS部12は、DPD部11からの入力の受付を開始し、GPSクロックと生成クロックとを同期させるための処理を行う。
【0115】
制御値設定部15は、DDS部12に設定されているDDSTW値を読み取り、位相調整DDSTW値として保持する(OP27)。その後、処理がOP22に戻る。
【0116】
周波数同期状態である場合には(OP25:Yes)、すなわち、時刻位相比較部14からの通知内容に周波数同期状態の通知が含まれている場合には、制御値設定部15は、位相同期状態か否かを判定する(OP28)。制御値設定部15は、時刻位相比較部14からの通知内容に位相同期状態の通知又は位相非同期状態の通知のどちらか一方が含まれていることによって、位相同期状態か否かを判定する。
【0117】
位相同期状態である場合には(OP28:Yes)、すなわち、時刻位相比較部14からの通知内容に位相同期状態の通知が含まれている場合には、クローズドループに設定するようにDDS部12に指示を出す(OP30)。制御値設定部15は、DDSTW値平均処理を行い(OP31)、得られた平均値を位相調整DDSTW値として保持する(OP32)。その後、処理がOP22に戻る。DDSTW値平均処理の詳細については、後述される。
【0118】
位相非同期状態である場合には(OP28:No)、制御値設定部15は、オープンループに設定するようにDDS部12に指示を出す(OP41)。制御値設定部15は、位相変化確認統計処理を実行する(OP42)。位相変化確認統計処理の詳細は、後述される。
【0119】
制御値設定部15は、時刻位相比較部14からの通知内容に含まれる位相差値が正の数であるか否かを判定する(OP43)。
【0120】
位相差値が正の数である場合には(OP43:Yes)、制御値設定部15は、変数nが0であるか否か、及び、位相差が2サイクル以下か否かを判定する(OP44)。変数nが0である場合には、初回の位相調整処理であることが示される。
【0121】
変数nが0である、又は、位相差が2サイクル以下の少なくともどちらか一方に合致する場合には(OP44:Yes)、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+8(16進数表記:+0x8)変化させた値に設定する(OP45)。位相差値が正であることから、PPS信号よりも1秒基準カウンタ信号が遅れていることが示され、DDSTW値が位相調整DDSTW値から+8変化させた値になることによって、1秒後の1秒基準カウンタ信号を約10ns進めることができる。制御値設定部15は、設定されたDDSTW値をDDS部12に通知する。その後、処理がOP50に進む。
【0122】
変数nが0である、及び、位相差が2サイクル以下のどちらにも合致しない場合には(OP44:No)、初回の位相調整処処理ではなく、且つ、位相差が2サイクルより大きいことが示される。制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から+16(16進数表記:+0x10)変化させた値に設定する(OP46)。位相差値が正であることから、PPS信号よりも1秒基準カウンタ信号が遅れていることが示され、DDSTW値が位相調整DDSTW値から+16変化させた値になることによって、1秒後の1秒基準カウンタ信号を約20ns進めることができる。制御値設定部15は、設定されたDDSTW値をDDS部12に通知する。その後、処理がOP50に進む。
【0123】
位相差値が負の数である場合には(OP43:No)、制御値設定部15は、変数nが0であるか否か、及び、位相差が2サイクル以下か否かを判定する(OP47)。変数nが0である場合には、初回の位相調整処理であることが示される。
【0124】
変数nが0である、又は、位相差が2サイクル以下の少なくともどちらか一方に合致する場合には(OP47:Yes)、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−8(16進数表記:−0x8)変化させた値に設定する(OP48)。位相差値が負であることから、1PPS信号よりも1秒基準カウンタ信号が進んでいることが示され、DDSTW値が位相調整DDSTW値から−8変化させた値になることによって、1秒後の1秒基準カウンタ信号を約10ns遅くすることができる。制御値設定部15は、設定されたDDSTW値をDDS部12に通知する。その後、処理がOP50に進む。
【0125】
変数nが0である、及び、位相差が2サイクル以下のどちらにも合致しない場合には(OP47:No)、制御値設定部15は、DDSTW値を位相調整DDSTW値から−16(16進数表記:−0x10)変化させた値に設定する(OP49)。位相差値が負であることから、PPS信号よりも1秒基準カウンタ信号が進んでいることが示され、DDSTW値が位相調整DDSTW値から−16変化させた値に設定されることによって、1秒後の1秒基準カウンタ信号を約20ns遅らせることができる。制御値設定部15は、設定されたDDSTW値をDDS部12に通知する。その後、処理がOP50に進む。
【0126】
位相調整DDSTW値をDDS部12に通知すると、制御値設定部15は、1秒後のPPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差の予測値が1サイクル未満か否かを判定する(OP50)。制御値設定部15は、例えば、検出用クロックの周波数が100MHzで1サイクルが10nsであり、DDSTW値が位相調整DDSTW値から−8変化させた値に設定した場合には、位相差値を−1だけ変化させた値を位相差の予測値とする。
【0127】
位相差の予測値が1サイクル未満の場合には(OP50:Yes)、制御値設定部15は、1秒後には位相差がなくなるものとみなし、位相調整処理の終了を決定する。制御値設定部15は、変数nを0にしてリセットする(OP51)。その後処理がOP22に戻る。
【0128】
位相差の予測値が1サイクル以上の場合には(OP50:No)、1秒後も位相調整の必要があることが示される。制御値設定部15は、変数nに1を加算して更新する(OP52)。その後処理がOP22に戻る。
【0129】
図9は、制御値設定部15が実行するDDSTW値平均処理のフローの例を示す図である。図9に示されるDDSTW値平均処理は、図8AのOP30において実行される処理である。
【0130】
制御値設定部15は、クローズドループにおいて調整されたDDSTW値を読み取り、メモリ(図示せず)に蓄積する(OP61)。
【0131】
制御値設定部15は、蓄積された最大1時間分のDDSTW値の平均値を求める(OP62)。求められた平均値は、ホールドオーバDDSTW値に設定され、自走設定になった場合に用いられる。その後、処理が図8AのOP31に進む。
【0132】
ホールドオーバDDSTW値として、クローズドループにおいて調整されたDDSTW値の平均値を用いることによって、DDS部12に具備される高精度発振器の周波数変動の影響を抑えることができ、より精度のよいDDSTW値を用いることができる。
【0133】
図10は、制御値設定部15が実行する位相変化確認統計処理のフローの例を示す図である。図10に示される位相変化確認統計処理は、図8BのOP42において実行される処理である。
【0134】
制御値設定部15は、n回目の位相調整処理に用いられる位相差をメモリ(図示せず)に蓄積する(OP71)。
【0135】
制御値設定部15は、n−1回目の位相差とn回目の位相差との変化量の最大過去50回分の平均値を求める(OP72)。
【0136】
制御値設定部15は、求められた平均値が1.5サイクルと2.5サイクルの間にあるか否かを判定する(OP73)。第1実施形態では、クロック周波数の最大変動幅を±20ppbと設定しており、クロック周波数を最大変動幅±20ppb変動させるためのDDSTW値の最大変動幅は±16である。また、DDSTW値を±16変化させた後の1秒後の1秒基準カウンタ信号の位相変化は約±20nsである。1秒間で1秒基準カウンタ信号の位相が約±20ns変化するため、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相差も1秒間で約±20ns変化する。20nsは、100MHzの検出用クロックの2サイクルに相当する。制御値設定部15は、過去の位相差の変化量の平均が2サイクルから±0.5サイクル離れることによって、DDS部12に具備される高精度発振器の温度変化や経年変化による周波数の変動を検知する。
【0137】
求められた平均値が1.5サイクルと2.5サイクルの間にある場合には(OP73:No)、制御値設定部15は、DDS部12に具備される高精度発振器の周波数に変動がないとみなす。その後、処理がOP43に進む。
【0138】
求められた平均値が1.5サイクル未満又は2.5サイクル以上である場合には(OP73:No)、制御値設定部15は、DDS部12に具備される高精度発振器の周波数(内部リファレンスクロック周波数)に変動があったとみなす。制御値設定部15は、内部リファレンスクロック周波数の変動による位相差の変化量のずれを補正するために、位相調整DDSTW値を+4または−4変化させた値に更新する(OP74)。位相調整DDSTW値を±4変化させるのは、位相差の変化量を約±5ns変化させるためである。その後、処理がOP43に進む。
【0139】
<<第1実施形態の作用効果>>
図8A及び図8Bより、GPS未捕捉状態になった場合には(図8A、OP23:No)、タイミング同期装置1は、オープンループ設定で自走する(図8A、OP24)。
【0140】
GPS未捕捉状態が続いた後、再びGPS捕捉状態になると(図8A、OP23:Yes)、GPSクロック信号と生成クロック信号とを同期させるため、タイミング同期装置1は、クローズドループ設定で動作する(図8A、OP26)。
【0141】
クローズドループで動作することによって、周波数同期状態になると(図8A、OP25:Yes)、タイミング同期装置1は、PPS信号と1秒基準カウンタ信号との位相を
合わせるために、オープンループに設定し、位相調整処理を行う(図8B,OP41−OP52)。
【0142】
位相調整処理によって、位相同期状態になると(図8A、OP28:Yes)、タイミング同期装置1は、再びクローズドループを設定する(図8A、OP29)。
【0143】
タイミング同期装置1は、位相調整処理の際に、GPS時刻情報と装置内時刻情報とを比較して、PPS信号に対して1秒基準カウンタ信号が進んでいるのか、遅れているのかを判定する。これによって、より正確にPPS信号と1秒基準カウンタ信号とを同期させ
ることができる。PPS信号と1秒基準タイミング信号とが同期することによって時刻位相も同期するので、例えば、LTEの10msの無線フレーム位相とフレーム単位のSFN(System Frame Number)とを基地局間で合わせることができる。
【0144】
また、タイミング同期装置1は、クロック周波数の変動幅が±20ppbに抑えられるようなDDSTW値を設定する。これによって、GPS未捕捉状態が続き、再びGPS捕捉状態になった場合に、クロック周波数の無線周波数精度を守れなくなるような変動を防ぐことができる。また、無線フレームの位相飛びが生じて、タイミング同期装置1が属する無線システムに影響を与えることを防ぐことができる。
【0145】
<第2実施形態>
第2実施形態のタイミング同期装置は、第1実施形態で説明されたタイミング同期装置を二重化したものである。第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明は省略される。
【0146】
二重化した場合、GPS未捕捉状態における自走や、GPS未捕捉状態からGPS捕捉状態に戻った際のGPS衛星からのクロックおよび時刻に同期する処理などにおいて、周波数変動がある。このため、運用系、待機系のそれぞれで生成されるクロックが異なり、位相が合わない場合がある。また、運用系、待機系の切替によって、位相差及び周波数差の影響などによって、無線周波数精度が規格外となる場合がある。
【0147】
第2実施形態のタイミング同期装置1Bでは、待機系のクロックは、GPSクロックに同期するのではなく運用系の生成クロックに同期することによって、運用系と待機系とのクロックの位相差を抑圧することができる。
【0148】
図11は、第2実施形態のタイミング同期装置の構成例を示す図である。タイミング同期装置1Bは、N系クロック部10と、E系クロック部20と、GPS受信部16とを備える。図11に示される例では、N系クロック部10の入力及び出力は実線で示される。E系クロック部20の入力及び出力は破線で示される。
【0149】
N系クロック部10、E系クロック部20ともに、DPD部111,211,DDS部112,212,時計カウンタ部113,213,時刻位相比較部114,214,制御値設定部115,215,及び、切替部117A,117B,217A,217Bを含む。
【0150】
切替部117A,117B,217A,217Bは、運用系(ACT)と待機系(STBY)との切替指示受けて、入力を切り替える。なお、図11に示される例においては、運用系と待機系との切替の指示を行う処理部は図示されない。また、運用系と待機系との切替は、例えば、所定の周期で行われたり、タイミング同期装置1Bを備える無線基地局装置内の障害の発生を検知することによって行われる。
【0151】
N系クロック部10の切替部117Aは、運用系として動作する場合には、GPSクロック信号の入力を採用して、GPSクロック信号をDPD部111に出力する。切替部117Aは、待機系として動作する場合には、E系クロック生成部20の生成クロックの入力を採用して、DPD部111に出力する。
【0152】
N系クロック部10の切替部117Bは、運用系として動作する場合には、DDS部1
12の生成クロック信号の入力を採用して、マスタクロックとして時計カウンタ部113に出力する。切替部117Bは、待機系として動作する場合には、E系クロック部20のDDS部212の生成クロックの入力を採用して、時計カウンタ部113に出力する。
【0153】
E系クロック部20の切替部217Aは、運用系として動作する場合には、GPSクロック信号の入力を採用して、GPSクロック信号をDPD部211に出力する。切替部217Aは、待機系として動作する場合には、N系クロック生成部10の生成クロックの入力を採用して、DPD部211に出力する。
【0154】
E系クロック部20の切替部217Bは、運用系として動作する場合には、DDS部212の生成クロックの入力を採用して、マスタクロックとして時計カウンタ部213に出力する。切替部217Bは、待機系として動作する場合には、N系クロック部10のDDS部112の生成クロックの入力を採用して、時計カウンタ部213に出力する。
【0155】
時計カウンタ部113によって生成される1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報とは、時刻位相比較部114に加え、E系クロック部20の時計カウンタ部213にも出力される。同様に、時計カウンタ部213によって生成される1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報とは、時刻位相比較部214に加え、N系クロック部10の時計カウンタ部113にも出力される。
【0156】
待機系として動作する場合、時計カウンタ部113、213は、運用系のクロック部から入力された1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報とを時刻位相比較部114,214に出力する。この場合、時刻位相比較部114,214は、運用系のクロック部の1秒基準カウンタ信号と装置内時刻情報と、PPS信号とGPS時刻情報と、を比較して位相差値を得る。
【0157】
タイミング同期装置1Bは、待機系として動作する場合には、GPSクロックを無視して運用系のクロック部の生成クロックを入力として採用する。また、位相調整処理中でも、待機系として動作する場合には、運用系のクロック部の生成クロックを入力として採用し、運用系のクロック部から入力される1秒基準カウンタ信号をPPS信号に同期させることによって、運用系の生成クロックに追従する。これによって、運用系のクロック部の状態がいかなる場合でも、待機系は運用系に追従した動作となり、いつ切り替えられても周波数変動を最小限に抑えて切り替えが可能となる。
【符号の説明】
【0158】
1,1B タイミング同期装置
11,111,211 DPD部
12,112,212 DDS部
13,113,213 時計カウンタ部
14,114,214 時刻位相比較部
15,115,215 制御値設定部
16 GPS受信部
17,117A,117B,217A,217B 切替部
10 N系クロック部
20 E系クロック部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と、前記基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報と、を取得する取得部と、
クロック周波数を有する内部クロック信号を生成するクロック生成部と、
前記内部クロック信号に基づいて、前記所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と前記内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成する時刻情報生成部と、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報を比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記クロック周波数を調整する調整部と、
を備えるタイミング同期装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記位相の進み量又は遅れ量に応じて、前記クロック周波数の基準周波数に対して、前記クロック周波数の変動幅の許容最大値以下の所定量を変化させて前記クロック周波数を調整する
請求項1に記載のタイミング同期装置。
【請求項3】
前記クロック生成部は、制御値に応じたクロック周波数を有する内部クロック信号を生成し、
前記調整部は、前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記制御値の基準値に所定値を加減することによって、前記クロック周波数を調整する
請求項1に記載のタイミング同期装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量の変化量の統計をとり、前記統計値が所定範囲に含まれない場合に、前記基準値を補正する
請求項3に記載のタイミング装置。
【請求項5】
所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と、前記基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報と、を取得する取得部と、
第1のクロック周波数を有する第1の内部クロック信号を生成する第1のクロック生成部と、
前記第1の内部クロック信号に基づいて、前記所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と前記内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成する第1の時刻情報生成部と、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報を比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記第1のクロック周波数を調整する第1の調整部と、
を含む運用系クロック部と、
第2のクロック周波数を有する第2の内部クロックを生成する第2のクロック生成部と、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報とを比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイ
ミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する第2の検出部と、
前記第2の検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記第2のクロック生成部によって用いられる前記第2のクロック周波数を調整する第2の調整部と、
を含む待機系クロック部と、
を備えるタイミング同期装置。
【請求項6】
所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と、前記基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報と、を取得し、
クロック周波数で内部クロック信号を生成し、
前記内部クロック信号に基づいて、前記所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と前記内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成し、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報を比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出し、
前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記クロック周波数を調整する
タイミング同期方法。
【請求項1】
所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と、前記基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報と、を取得する取得部と、
クロック周波数を有する内部クロック信号を生成するクロック生成部と、
前記内部クロック信号に基づいて、前記所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と前記内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成する時刻情報生成部と、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報を比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記クロック周波数を調整する調整部と、
を備えるタイミング同期装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記位相の進み量又は遅れ量に応じて、前記クロック周波数の基準周波数に対して、前記クロック周波数の変動幅の許容最大値以下の所定量を変化させて前記クロック周波数を調整する
請求項1に記載のタイミング同期装置。
【請求項3】
前記クロック生成部は、制御値に応じたクロック周波数を有する内部クロック信号を生成し、
前記調整部は、前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記制御値の基準値に所定値を加減することによって、前記クロック周波数を調整する
請求項1に記載のタイミング同期装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量の変化量の統計をとり、前記統計値が所定範囲に含まれない場合に、前記基準値を補正する
請求項3に記載のタイミング装置。
【請求項5】
所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と、前記基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報と、を取得する取得部と、
第1のクロック周波数を有する第1の内部クロック信号を生成する第1のクロック生成部と、
前記第1の内部クロック信号に基づいて、前記所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と前記内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成する第1の時刻情報生成部と、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報を比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記第1のクロック周波数を調整する第1の調整部と、
を含む運用系クロック部と、
第2のクロック周波数を有する第2の内部クロックを生成する第2のクロック生成部と、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報とを比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイ
ミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出する第2の検出部と、
前記第2の検出部によって検出された前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記第2のクロック生成部によって用いられる前記第2のクロック周波数を調整する第2の調整部と、
を含む待機系クロック部と、
を備えるタイミング同期装置。
【請求項6】
所定の時間間隔を示す基準タイミング信号と、前記基準タイミング信号に対応する基準時刻を示す基準時刻情報と、を取得し、
クロック周波数で内部クロック信号を生成し、
前記内部クロック信号に基づいて、前記所定の時間間隔を示す内部タイミング信号と前記内部タイミング信号に対応する時刻を示す内部時刻情報とを生成し、
前記基準タイミング信号と前記内部タイミング信号、及び、前記基準時刻情報と前記内部時刻情報を比較することにより、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の進み又は遅れを検出し、且つ、前記基準タイミング信号に対する前記内部タイミング信号の位相の進み量又は遅れ量を検出し、
前記位相の進み量又は遅れ量に応じて前記クロック周波数を調整する
タイミング同期方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−4914(P2012−4914A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138673(P2010−138673)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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