説明

タイムスタンプ装置およびタイムスタンプシステム

【課題】 日時と処置の記録を残す簡便且つ確実な装置の提供。
【解決手段】 日時を計測するクロックと、記憶手段と、特定のイベントに対応可能なスイッチとを備え、前記スイッチが操作されたときに、当該スイッチが対応するイベントの内容を示すデータと操作の日時を前記記憶手段に記憶させるタイムスタンプ装置。該タイムスタンプ装置からデータを受信して解析可能なサーバコンピュータとを備えたタイムスタンプシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、スイッチを操作することによって操作の日時と共に、操作されたスイッチに予め対応関係が定められているイベントの内容を記憶するタイムスタンプ装置および当該タイムスタンプ装置とサーバとを備えたタイムスタンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
諸々の作業現場、たとえば医療や介護の現場では、必要な処置を適切且つタイムリーに実施することが必要であるのみならず、適切且つタイムリーな処置が実際に行われたことを随時確認し、また、後に証明することが必要になる場合がある。
【0003】
日時と処置の記録を残す目的のためは、従来メモを採ることが行われているが、第三者による客観的な確認や後に用いる証拠としての証明力の点では不十分であった。一方、撮影時の日付や時刻を同時に移しこむデジタルカメラも存在するが、映像がどのようなイベントに対応するものであるかを表示することができず、また当該イベントの内容をコンピュータによる処理が可能な形式で記録することもできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、従来技術が有する上記のような課題を解決し、スイッチが操作された記録をイベントに対応させて記録することによって、簡便且つ確実にイベントの記録を残すことのできるタイムスタンプ装置およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するために、本発明は、日時を計測するクロックと、記憶手段と、特定のイベントに対応可能なスイッチとを備え、前記スイッチが操作されたときに、当該スイッチが対応するイベントの内容を示すデータと操作の日時を前記記憶手段に記憶させるタイムスタンプ装置を提供する。
【0006】
ここでクロックは通常の電気式時計でも良いが、記録の正確を期すためには時刻放送を受信して随時誤差を修正する電波式時計が好ましい。記憶手段は、所定のデータを記録できるものであればフラッシュメモリ、RAM、DRAM、ハードディスク等の形態を問わない。また、記憶されるデータの形式は、後の処理の都合上はデジタルデータが好ましいが、アナログデータであっても良い。本明細書において、特定のイベントとは、日時を記録する対象となる何らかの作業や事象を広く指し示す意味で用いており、作業の開始、作業の終了、中断開始、中断終了、確認、承認、観測、観察、警ら、測定等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0007】
特定のイベントに対応可能なスイッチとは、例えば、4つのスイッチがそれぞれ「観察」、「測定の開始」、「測定結果の承認」、「測定の終了」のようなイベントに対応付けられているものであっても良いし、選択ボタンを押して複数のイベントを表示させ、その中から適切なイベントを選択することによって1つのスイッチを当該イベントに対応付けるもの(つまり、スイッチ自体は1つしかないもの)であっても良い。イベントの内容を示すデータは、前記「○○作業の開始」等のように直接意味をなすデータであっても良いし、後のコンピュータ等による処理を前提として、例えば「01011」というように「○○作業の開始」に対して付与された番号・記号等であっても良い。
【0008】
上記構成からなる本発明によれば、イベントごとに対応するスイッチを操作することによってその操作日時、つまりは当該イベントの日時を簡易かつ正確に記憶することができる。したがって、例えば、他の機器への悪影響を排除するために一般に無線データ通信が認められていない病院内において、患者に対して特定の処置(例えば点滴)を開始した場合、点滴の開始を内容とするイベントについて日時を記憶し、当該記憶を後にサーバ等に読み取らせることによって、点滴の開始時刻を正確に記録すると共に、管理者による監督が容易で、かつ後に作業の証拠としても利用できる記録を残すことができる。
【0009】
本発明のタイムスタンプ装置はさらに、測位システムを備え、前記スイッチが操作された際、位置情報を前記記憶手段に記憶させるものであっても良い。測位システムは、全地球測位システム(Global Positioning System)であってもよいし、建物内においてのみ作動してタイムスタンプ装置がどの部屋に存在するかを示す、ローカルな測位システムであっても良い。さらに、イベントが特定の機器と関連付けられる場合、前出の例に従えば、イベントが点滴の開始であれば、タイムスタンプ装置はバーコード読取装置を備え、点滴液に記載されたバーコードを読み取ってこれをイベントの日時と共に記憶するものであっても良い。これによって、単にイベントの日時だけでなく、イベントに用いられた機器・設備を具体的に記憶して再現できるので、管理および証拠としての有用性が大幅に向上する。
【0010】
本発明のタイムスタンプ装置はさらに、前記スイッチが操作された際、さらに、所定の時間長にわたって音声を録音する機能を備えているのが好ましい。録音は、読み出し後にもイベント情報と関連付けが可能なように記憶される必要があることは言うまでもない。所定の時間長とは、スイッチの操作後10秒間というような予め設定された一定時間であっても良いし、スイッチの操作後次にスイッチが操作されるまでの間隔というような不定長の時間であっても良い。当該構成によれば、「警ら」イベントと共に「チェックポイントA異常なし」というような音声を録音することが可能になり、記録の信頼性を一層高めることができる。
【0011】
本発明のタイムスタンプ装置はさらに、前記スイッチが操作された際、さらに、静止画像または所定の時間長にわたる動画を撮像して記録する機能を備えているのが好ましい。静止画像または動画は、スイッチの操作と同時に撮影されるものでも良いし、別途撮像用のスイッチがあっても良い。前期所定の時間長が一定時間または不定長の時間であって良いことは前述の通りである。撮影された画像はイベントと関連付けられて処理可能なような形で記憶されているのが好ましい。当該構成を有するタイムスタンプ装置によれば、例えば、測定の開始イベントにおいて、機器設定の状態を画像として残すことによって、機器が間違いなく設定されていたことを確認し、証拠として残すことができる。「警ら」の場合であれば、例えば、「チェックポイントB侵入跡あり」というような音声と共に、侵入跡を示す状況の映像を静止画像または動画で残すことができる。
【0012】
本発明のタイムスタンプ装置はさらに、前記記憶手段に記憶されたデータを外部の装置に転送するための通信部を備えているのが望ましい。データ転送方法は特に限定されないが、例えば、赤外線通信、ブルートゥース、USB等、無線あるいは有線の通信手段を用いることができる。イベント毎の日時や画像など必要な情報を記憶した後で、記憶した情報を一括して外部に通信するものであっても良いし、イベント毎に情報を記憶すると同時に外部に通信するものであっても良い。さらには、外部への例えば有線通信が確立されたことを確認した後にイベント情報を記録するものであっても良い。例えば、警らにおいてチェックポイント毎に有線あるいは無線のデータ送受信装置が設けられており、チェックポイントにおいてデータ送受信が確立された後にイベントに対応するスイッチを操作することによって、タイムスタンプ装置に必要なデータが記憶されると同時に、同じデータが中央管制室のサーバに送信されれば、警らの進捗を中央管制室でオンタイムで確認することができる。
【0013】
前記スイッチは複数存在し、それぞれのスイッチが特定のイベントに対応するのが好ましい。例えば、診療および看護を例にとれば、前記スイッチは、食事、就寝、起床、入浴、位置変え、排泄、リハビリ、点滴、注射、血圧測定、診察から選択された1つ以上の項目である。1つのスイッチが複数のイベントに対応するものであっても良いが、想定されるイベント毎にスイッチが設けられてスイッチとイベントの関係が固定されていれば、操作は一層迅速確実である。その場合、稀にしか使用されないイベントについては、「その他のイベント」に対応するスイッチがもうけられ、当該スイッチについては内容を複数のイベントから選択可能であれば、幅広いイベントに対応可能である。
【0014】
本発明は、また、前記タイムスタンプ装置と、該タイムスタンプ装置からデータを受信して解析可能なサーバコンピュータとを備えたタイムスタンプシステムを提供する。タイムスタンプ装置とサーバコンピュータとの間のデータの送受信は、無線あるいは有線によるものであっても良いし、ここでは、フラッシュメモリやディスク等の着脱可能な記憶手段を解してデータを授受するものであっても良い。サーバは複数のタイムスタンプ装置とデータの授受を行うことができるのが望ましい。そのような状況において整理を容易にするためには、タイムスタンプ装置はそれぞれ固有の識別番号を有し、送受信されるデータには当該識別番号を含めるのが良い。
【0015】
さらに、前記タイムスタンプ装置とデータ送受信可能で且つネットワークを介して前記サーバコンピュータに接続可能な中継装置とを備えていてもよい。タイムスタンプ装置と中継装置との間のデータの送受信は無線あるいは有線で行うことができる。前記ネットワークは、専用の有線又は無線LANであってもよいし、インターネットであっても良い。中継装置の位置が固定されていれば、タイムスタンプ装置との間でデータの送受信を行った中継装置を知ることによってタイムスタンプ装置の位置を判別することができる。そのためには、中継装置は固有の識別番号を有し、サーバとのデータ送受信の際には当該識別番号を含めるのが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照しながら本願発明の実施例を説明するが、実施例は発明の理解を助けるために記載するものであって、発明が以下に記載する実施例に限定されるわけではないことは自明である。
【0017】
図1は、本発明に基づくタイムスタンプ装置100の第1実施例の概念を示す図面である。手持ちが容易なように小型のタイムスタンプ装置100には、現在の日時を表示するための液晶表示装置を備えた表示窓110、それぞれが1つのイベント、例えば、食事、起床、就寝、入浴に対応する4つのスイッチ、誤操作を防止するためのロックボタン130、外部機器とのデータ送受信のための赤外線通信装置140を備える。さらに、手持ち時に滑落を防止するためのストラップが備えられていても良い。
【0018】
当該タイムスタンプ装置を病院内での診療介護に使用する場合には、外部機器とのデータ送受信に赤外線通信装置を用いることにして、MHzやGHz領域電磁波を使用することによる他の機器への干渉を防止するのが好ましい。この場合、イベント毎の日時は一旦タイムスタンプ装置100に記憶し、その後、所定の場所で所定の装置に対して、赤外線通信によってデータを送信することになる。
【0019】
図2は、本発明に基づくタイムスタンプ装置の第2の実施例を図示するものである。第2の実施例に基づくタイムスタンプ装置は、ボイスレコーダ機能およびそのためのマイク200を備えている点が前記第1の実施例とは異なる。各イベントに対応するスイッチを操作することによって一定時間(例えば10秒間)録音機能が作動する。録音を開始、終了するためには、そのための録音開始ボタン、録音終了ボタンが設けられていても良いが、第2の実施例の構成は、そのような構成よりも簡便で使いやすい。
【0020】
図3は、本発明に基づくタイムスタンプ装置の第3の実施例を図示するものである。第3の実施例に基づくタイムスタンプ装置は、撮像機能およびそのためのカメラ210を備えている点が前記第1、第2の実施例とは異なる。各イベントに対応するスイッチを操作することによって1枚の静止画像撮影あるいは一定時間(例えば10秒間)の録画機能が作動する。撮影のためには、そのための開始ボタン、終了ボタンが設けられていても良いが、第3の実施例の構成は、そのような構成よりも簡便で使いやすい。イベントに対応してその時の画像を記録することができるので、処理記録としての価値が高い。
【0021】
図4は、本発明に基づくタイムスタンプ装置の第4の実施例を図示するものである。第4の実施例に基づくタイムスタンプ装置は、ボイスレコーダ機能およびそのためのマイク200、さらに撮像機能およびそのためのカメラ210を備えている点が前記実施例とは異なる。当該実施例の構成と作用効果は、前記第2第3の実施例に記載した通りである。
【0022】
図5および図6は、それぞれ第5および第6の実施例を図示したものである。第5の実施例は、イベントに対応するスイッチが6個もうけられている点が第1ないし第4の実施例とは異なる。必要に応じてスイッチの数を、さらに多くあるいは少なくすることができることは自明である。第6の実施例はスイッチを2列に配置したものである。表示窓には、イベントの日時だけでなく、録音の有無、画像の有無、タイムスタンプ装置の識別番号等、記憶される内容を表示するものであっても良い。また、画像を記録する場合には、記録画像を確認する機能を有するのが好ましい。
【0023】
図7は、前記タイムスタンプ装置100を含む本発明のシステム構成の1実施例の概念を示す図である。図示した実施例によれば、タイムスタンプ装置100は、記憶したイベント情報やタイムスタンプ装置自体の識別番号、音声、画像等の必要な情報をパーソナルコンピュータ300との間で送受信する。パーソナルコンピュータ300はインターネット400を介してサーバ500と接続され、サーバ500はタイムスタンプ装置から送られた情報に基づき、イベント毎の情報を整理して記憶・表示する。必要に応じて処理を行い、またプリンタ出力などを行うことができることは自明である。サーバ500が受信したイベント毎の情報を一覧表示した際の表示概念を表形式で図示したものが510である。表の各列は、左から、タイムスタンプ装置の識別番号、イベントの日時、記録場所、音声および画像の有無、位置情報の有無である。
【0024】
各タイムスタンプ装置は操作者が手持ちで入力を行い、サーバが工場の管理制御室の設けられているような場合、各操作者が記録したイベント情報は、タイムスタンプ装置に記憶されると共にサーバに送られ、管理制御室ではオンタイムでイベントの状況を把握することができる。
【0025】
図7には、さらにタイムスタンプ装置100は携帯電話600とデータの送受信が可能で、携帯電話基地局700とインターネット400を解してサーバにデータを送信可能であることが示されている。パーソナルコンピュータ300経由のデータ送信経路と、携帯電話600および携帯電話基地局700経由のデータ送信経路は、何れか一方でもよく、あるいは両方併用されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施例に基づくタイムスタンプ装置の概念図
【図2】本発明の第2の実施例に基づくタイムスタンプ装置の概念図
【図3】本発明の第3の実施例に基づくタイムスタンプ装置の概念図
【図4】本発明の第4の実施例に基づくタイムスタンプ装置の概念図
【図5】本発明の第5の実施例に基づくタイムスタンプ装置の概念図
【図6】本発明の第6の実施例に基づくタイムスタンプ装置の概念図
【図7】本発明の実施例に基づくタイムスタンプ・システムの概念図
【符号の説明】
【0027】
100 タイムスタンプ装置
110 表示窓
120、122、124、126、128、129 イベントに対応するスイッチ
130 ロックボタン
140 赤外線通信装置
200 マイク
210 カメラ
300 パーソナルコンピュータ
400 インターネット
500 サーバ
510 イベント毎の情報一覧表示
600 携帯電話
700 携帯電話基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日時を計測するクロックと、
記憶手段と、
特定のイベントに対応可能なスイッチとを備え、
前記スイッチが操作されたときに、当該スイッチが対応するイベントの内容を示すデータと操作の日時を前記記憶手段に記憶させるタイムスタンプ装置。
【請求項2】
さらに、測位システムを備え、前記スイッチが操作された際、位置情報を前記記憶手段に記憶させるタイムスタンプ装置。
【請求項3】
前記スイッチが操作された際、さらに、所定の時間長にわたって音声を録音する請求項1または2に記載のタイムスタンプ装置。
【請求項4】
前記スイッチが操作された際、さらに、静止画像または所定の時間長にわたる動画を撮像して記録する請求項1ないし3のいずれかに記載のタイムスタンプ装置。
【請求項5】
さらに、前記記憶手段に記憶されたデータを外部の装置に転送するための通信部を備えた、前記請求項1ないし4の何れかに記載のタイムスタンプ装置。
【請求項6】
前記スイッチは複数存在し、それぞれのスイッチが特定のイベントに対応する、前記請求項1ないし5の何れかに記載のタイムスタンプ装置。
【請求項7】
前記スイッチは、食事、就寝、起床、入浴、位置変え、排泄、リハビリ、点滴、注射、血圧測定、診察から選択された1つ以上の項目に対応可能である請求項1ないし6の何れかに記載のタイムスタンプ装置。
【請求項8】
前記請求項1ないし7の何れかに記載のタイムスタンプ装置と、該タイムスタンプ装置からデータを受信して解析可能なサーバコンピュータとを備えたタイムスタンプシステム。
【請求項9】
さらに、前記タイムスタンプ装置とデータ送受信可能で且つネットワークを介して前記サーバコンピュータに接続可能な中継装置とを備えた、請求項8に記載のタイムスタンプシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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