説明

タイヤおよび該タイヤの加硫金型

【課題】加硫時におけるエア溜まりを抑制しながら、タイヤのリム装着時におけるエア漏れを効果的に抑制する。
【解決手段】両ビード部13の軸方向外側面13aに高さが0.05mm以上の半径方向に延びる突条27を複数設けているが、このような突条27は加硫時にゴムが該突条27と補完関係にある加硫金型の凹溝に流動侵入することで形成される。ここで、加硫開始時に前記凹溝を通じてエアが外部に誘導排出されるため、エア溜まりが抑制される。しかも、突条27の高さは 0.5mm未満であるので、加硫済のタイヤ11をリムに装着し内圧を充填すると、該突条27は容易に潰れ、タイヤ11のリム装着時におけるエア漏れを効果的に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビード部の外側面に複数の突条が形成されたタイヤおよび該タイヤの加硫に用いられる加硫金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビード部の外側面に複数の突条が形成されたタイヤとしては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−139116号公報
【0004】
このものは、両ビード部の軸方向外側面に突出量が 0.5〜 1.0mmである格子模様を設けたもので、該格子模様をタイヤ径方向に延びる複数本の径方向線条と、タイヤ周方向に延びる複数本の周方向線条との組み合わせから構成したものである。そして、このような格子模様を前記部位に設けることにより、加硫時に前記格子模様に対応するモールド側の凹部を介してエアの移動を可能とし、加硫時にビード部に生じるエア溜まりを抑制するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のタイヤにあっては、両ビード部の軸方向外側面に設けられた格子模様の突出量が大であるため、リムに該タイヤをリム組みし内圧を充填することでビード部をリムのリムフランジに押し付けても、前記格子模様を十分に潰すことができず、これにより、リムフランジとビード部の軸方向外側面との間に僅かな間隙が発生し、この結果、時間の経過と共に内圧(エア)が漏れて内圧が早期に低下してしまうという課題があった。
【0006】
この発明は、加硫時におけるエア溜まりを抑制しながら、タイヤのリム装着時におけるエア漏れを効果的に抑制することができるタイヤおよび該タイヤの加硫金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、第1に、両ビード部の軸方向外側面に半径方向に延び高さが0.05mm以上で 0.5mm未満である突条を周方向に離して複数設けたタイヤにより、達成することができる。
第2に、開閉可能で、閉止されたとき内部に収納された未加硫タイヤを加硫して加硫済みのタイヤとする、少なくとも上、下モールドから構成されたタイヤの加硫金型において、加硫時に未加硫タイヤの両ビード部の軸方向外側面に接する内表面に、半径方向に延び深さが0.05mm以上で 0.5mm未満である凹溝を周方向に離して複数設けたタイヤの加硫金型により、達成することができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明においては、両ビード部の軸方向外側面に高さが0.05mm以上の半径方向に延びる突条を複数設けているが、このような突条は加硫時にゴムが該突条と補完関係にある加硫金型の凹溝に流動侵入することで形成される。ここで、前述の加硫開始時に前記凹溝を通じて未加硫タイヤと加硫金型との間に滞留しているエアが誘導排出されるため、加硫時におけるエア溜まりが抑制される。しかも、前述した突条の高さは 0.5mm未満であるので、加硫済みのタイヤをリムにリム組みし内圧を充填することでビード部をリムのリムフランジに押し付けると、該突条は容易に潰れてビード部の軸方向外側面とリムフランジとの間に間隙が殆ど発生することはなく、これにより、タイヤのリム装着時におけるエア漏れを効果的に抑制することができる。そして、このようなタイヤは請求項7に記載された加硫金型を用いることで、容易に加硫成形することができる。
【0009】
また、請求項2、3に記載のように構成すれば、内圧によりビード部がリムフランジに押し付けられたとき、突条が容易に潰れエア漏れを強力に抑制することができる。さらに、請求項4、5に記載のように構成すれば、ビード部とリムフランジとの間に残留するエアを確実に誘導排出することができる。また、請求項6に記載のように構成すれば、前記エアの誘導排出をさらに円滑とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施形態1を示すタイヤおよびリムの断面図である。
【図2】その斜視図である。
【図3】図2のI−I矢視図である。
【図4】図3のII−II矢視断面図である。
【図5】加硫金型の正面断面図である。
【図6】図5のIII−III矢視断面図である。
【図7】この発明の実施形態2を示す図3と同様の矢視図である。
【図8】この発明の実施形態3を示す図3と同様の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2、3、4において、11は乗用車やトラック、バス等に用いられるタイヤ、ここでは空気入りタイヤであり、この空気入りタイヤ11は一対のビード部13を有し、各ビード部13には対をなす(ここでは一対であるが、複数対のこともある)ビードコア12が埋設されている。また、前記空気入りタイヤ11は、これらビード部13から略半径方向外側に向かってそれぞれ延びるサイドウォール部14と、両サイドウォール部14の半径方向外端同士を連結する略円筒状のトレッド部とをさらに備えている。
【0012】
そして、この空気入りタイヤ11は前記ビードコア12間をトロイダル状に延びてサイドウォール部14、トレッド部を補強するカーカス層18を有し、このカーカス層18の両端部は前記ビードコア12の回りを軸方向内側から軸方向外側に向かって折り返されている。また、この空気入りタイヤ11は、前記ビードコア12からほぼ半径方向外側に向かって延びるスティフナー19をさらに有し、各スティフナー19はカーカス層18の本体部18aと折返し部18bとの間に介装されている。前記ビード部13におけるカーカス層18の周囲には、比較的硬度の高いゴムから構成されたゴムチェーファー20が配置されている。また、前記カーカス層18の半径方向外側にはベルト層およびトップトレッドが配置されている。
【0013】
23は軸方向両端部に略半径方向外側に向かって延びるリムフランジ24がそれぞれ形成されたリムであり、このリム23に前記空気入りタイヤ11がリム組みされた後、前記空気入りタイヤ11内にエア、窒素ガス等の内圧が充填されると、該空気入りタイヤ11の両ビード部13は内周面がリム23の外周面に圧接しながら軸方向外側に両ビード部13の軸方向外側面13aがリムフランジ24に当接するまで移動する。これにより、前記空気入りタイヤ11のビード部13はリム23に着座されるが、このとき、リム23の外周面に接触している空気入りタイヤ11の内周面およびリム23のリムフランジ24に接触している空気入りタイヤ11の軸方向外側面13aはリムフィット部となる。
【0014】
前記両ビード部13の軸方向外側面13a(前記ゴムチェーファー20のうちリムフランジ24に接触している部位)には半径方向に延びる、この実施形態においては半径方向線Lに沿って延びる突条27が周方向に等距離離れて複数形成されている。ここで、前述の半径方向とは、周方向ではなくどちらかと言えば半径方向という意味で、半径方向線Lに対して45度未満の傾斜角で傾斜しているものを含む。なお、この実施形態においては、前記突条27の半径方向内端をビードヒール13bから若干半径方向外側に位置させ、一方、突条27の半径方向外端をビード部13のリムフランジ24からの離反点Rより僅かに半径方向内側に位置させたが、外観上の問題がなければ、前記半径方向外端を離反点Rより半径方向外側に位置させてもよい。
【0015】
そして、このような突条27が軸方向外側面13aに設けられている空気入りタイヤ11を製造するには、例えば、図5、6に示すような加硫金型28を用いる。ここで、前記加硫金型28は周方向に並べて配置された複数の弧状を呈するセクターセグメント31を有し、これらセクターセグメント31の内表面(内周面)には主に未加硫タイヤのトレッド部を型付けする型付け面32が形成されている。そして、これらセクターセグメント31は図示していない拡縮機構により半径方向に同期移動して拡縮することができ、半径方向内側限まで移動したとき、隣接するセクターセグメント31の周方向端面同士が密着(面接触)して連続リング状となる。前述した複数のセクターセグメント31は全体として、セクターモールド33を構成する。
【0016】
34は前記セクターモールド33の直下に配置された略リング状の下モールドであり、この下モールド34の内表面(上面)には主に未加硫タイヤの下側サイドウォール部14および下側ビード部13を型付けする型付け面35が形成されている。36は前記下モールド34の上方に配置された略リング状の昇降可能な上モールドであり、この上モールド36の内表面(下面)には主に未加硫タイヤの上側サイドウォール部14および上側ビード部13を型付けする型付け面37が形成されている。
【0017】
そして、前述のようにセクターセグメント31が半径方向内側限まで移動して連続リング状を呈しているとき、該セクターセグメント31に下降限の上モールド36および下モールド34が上下から密着すると、これらセクターセグメント31、下、上モールド34、36の内部には未加硫タイヤを収納するドーナツ状の加硫空間が形成される。前述したセクターモールド33、下、上モールド34、36は全体として、開閉可能な前記加硫金型28を構成する。なお、この発明においては、前記加硫金型28は2つのモールド、即ち、下、上モールドから構成してもよく、少なくとも2つのモールドから構成していればよい。
【0018】
38はバグ本体であり、このバグ本体38の上端部には下クランプリング39が取り付けられ、この下クランプリング39は下モールド34の内端部に当接することができる。前記バグ本体38内には該バグ本体38と同軸の図示していない昇降可能なセンターポストが挿入され、このセンターポストの上端には上クランプリング40が取り付けられている。41は下端部が下クランプリング39に、上端部が上クランプリング40にそれぞれ気密状態で挟持された屈曲可能な加硫ブラダであり、この加硫ブラダ41は、内部に高温、高圧の加硫媒体が供給されると、未加硫タイヤ内でドーナツ状に膨張し、閉止された加硫金型28内に収納されている未加硫タイヤを型付け面32、35、37に押し付けながら加硫して加硫済みの空気入りタイヤ11とする。
【0019】
ここで、前述のように両ビード部13の軸方向外側面13aに複数の突条27を設けるには、前記下、上モールド34、36の型付け面35、37のうち、加硫時に両ビード部13の軸方向外側面13aがそれぞれ接触する部位に、前述した突条27と同様に半径方向に延びるとともに、前記突条27と補完関係にある複数の凹溝44を周方向に離して設ける。このように下、上モールド34、36の型付け面35、37に凹溝44をそれぞれ設けると、加硫開始時には未加硫タイヤのビード部13の軸方向外側面13aは凹凸の無い平滑な面であるため、ビード部13と加硫金型28との間に凹溝44によって半径方向に延びる通路が形成され、これにより、該通路を通じて未加硫タイヤと加硫金型28との間に滞留しているエアを外部に誘導排出することができる。この結果、加硫時におけるエア溜まりが抑制され、ビードベアの発生が効果的に抑制される。
【0020】
そして、前述のような加硫が進行すると、ビード部13の軸方向外側部を構成するゴム(ゴムチェーファー20)が流動により凹溝44内に侵入して該凹溝44を埋め尽くし、両ビード部13の軸方向外側面13aに突条27をそれぞれ形成する。ここで、前記突条27の高さ(突出量)h(加硫金型28においては凹溝44の深さd)は0.05mm以上で 0.5mm未満とする。その理由は、以下の通りである。即ち、前記高さh(深さd)が0.05mm未満であると、加硫時における凹溝44を通じてのエアの誘導排出が困難となってベアが発生し易くなり、一方、 0.5mm以上であると、リム組みされた空気入りタイヤ11内に内圧が充填されても、リムフランジ24に押し付けられたゴムチェーファー20からなる突条27は十分に潰れることができず、これにより、リムフランジ24とビード部13の軸方向外側面13aとの間に僅かな間隙が発生し、この結果、時間の経過と共に内圧(エア)が漏れて内圧が早期に低下してしまうのである。
【0021】
しかしながら、前述のように突条27の高さh(加硫金型28においては凹溝44の深さd)を0.05mm以上とすると、加硫開始時に半径方向に延びる凹溝44を通じて未加硫タイヤと加硫金型28との間に滞留しているエアを外部に容易に誘導排出することができるため、加硫時におけるエア溜まりが抑制され、これにより、ビードベアの発生を抑制することができ、また、 0.5mm未満とすると、加硫済の空気入りタイヤ11をリム23にリム組みし内圧を充填することでビード部13をリムフランジ24に押し付けたとき、該突条27はゴムチェーファー20から構成されていても容易に潰れて、ビード部13の軸方向外側面13aとリムフランジ24との間に間隙が殆ど発生することはなく、これにより、空気入りタイヤ11のリム装着時におけるエア漏れを効果的に抑制することができるのである。
【0022】
そして、前述した突条27の高さh(凹溝44の深さd)を 0.2〜 0.4mmの範囲内とすれば、前述の効果がより確実となるので、好ましい。なお、この発明においては前記突条27の高さh(凹溝44の深さd)を従来技術より低くしているため、各凹溝44の断面積が狭くなるが、前記突条27(凹溝44)の本数を多くすることで、エアの誘導排出に必要な合計断面積を確保するようにすればよい。また、前述の実施形態においては、突条27(凹溝44)は直線状であったが、ジグザグ状に折れ曲がっていてもよい。
【0023】
ここで、前記突条27の基端における幅w(凹溝44の開口端における幅x)は前記高さh(深さd)の 0.7〜 1.3倍の範囲内であることが好ましい。その理由は、前記幅w(幅x)が高さh(深さd)の 0.7倍以上であると、加硫時における凹溝44を通じてのエアの誘導排出を十分に行うことができ、一方、 1.3倍以下であると、隣接する突条27の基端同士が該突条27の半径方向内端部で互いに重なり合う事態を有効に防止することができるからである。また、隣接する突条27の半径方向内端間の周方向距離m(隣接する凹溝44の半径方向内端間の周方向距離)を 0.2〜 1.0mmの範囲内とすることが、リム23への空気入りタイヤ11の装着時における突条27の潰れを容易とするとともに、加硫開始時におけるエアの誘導排出を効果的に行うために、好ましい。
【0024】
また、前記突条27の断面形状は、先端に向かう(高さ方向に向かう)に従い(凹溝44の断面形状においては深さ方向に向かうに従い)先細りとすれば、内圧によりビード部13がリムフランジ24に押し付けられたとき、突条27が容易に潰れエア漏れを強力に抑制することができるので、好ましく、この実施形態では、前記突条27の断面形状(凹溝44の断面形状)を三角形とし、前述のエア漏れを強力に抑制するようにしている。なお、突条27(凹溝44)の断面形状が先端(深さ方向)に向かうに従い先細りとなった形状としては、三角形の他に台形を挙げることができる。
【0025】
前述のような空気入りタイヤ11を製造する場合には、まず、横置きの未加硫タイヤを加硫金型28に搬入して円筒状をした加硫ブラダ41の外側に嵌合した後、下モールド34上に載置する。次に、センターポスト、上クランプリング40を下降させながら加硫ブラダ41内に低圧流体を供給して該加硫ブラダ41を膨張させ未加硫タイヤ内に侵入させる。次に、上モールド36を型付け面37が未加硫タイヤに当接するまで下降させた後、セクターセグメント31を半径方向内側限まで同期移動させ、該セクターセグメント31と下降限の上モールド36および下モールド34とを密着させる。これにより、これらセクターモールド33、下、上モールド34、36(加硫金型28)は閉型し、加硫空間に未加硫タイヤが収納される。その後、加硫金型28のプラテンおよび加硫ブラダ41内に高温、高圧の加硫媒体を供給し、未加硫タイヤを型付け面32、35、37に押し付けて型付けしながら加硫する。
【0026】
ここで、前述のような未加硫タイヤに対する加硫の開始時には、未加硫タイヤのビード部の軸方向外側面は凹凸の無い平滑な面であるため、ビード部13と加硫金型28との間に、深さd(突条27では高さh)が0.05mm以上である凹溝44によって半径方向に延びる通路が形成される。そして、未加硫タイヤと加硫金型28との間に滞留しているエアは前記通路を通じて外部に誘導排出することができるため、加硫時におけるエア溜まりを抑制することができ、ビードベアの発生を効果的に抑制することができる。そして、前述のような加硫が進行すると、ビード部13の軸方向外側面13aを構成するゴム(ゴムチェーファー20)が流動により凹溝44内に侵入して該凹溝44を埋め尽くし、両ビード部13の軸方向外側面13aに凹溝44と補完関係にある複数の突条27がそれぞれ形成される。
【0027】
このようにして製造された加硫済みの空気入りタイヤ11を加硫金型28から取出した後、該空気入りタイヤ11をリム23に装着して内圧を充填するが、このとき、前記空気入りタイヤ11のビード部13は内圧によりリム23のリムフランジ24に押し付けられる。ここで、前記両ビード部13の軸方向外側面13aに形成されている突条27の高さhは前述のように 0.5mm未満であるため、該突条27はゴムチェーファー20から構成されていても前述の押付け力により容易に潰される。この結果、ビード部13の軸方向外側面13aとリムフランジ24との間に間隙が殆ど発生することはなく、これにより、空気入りタイヤ11のリム装着時における内圧低下(エア漏れ)を効果的に抑制することができる。
【0028】
図7はこの発明の実施形態2を示す図である。この実施形態においては、両ビード部13の軸方向外側面13aに半径方向に延びる、ここでは前記実施形態1と同様に半径方向線Lに沿って延びる突条27を周方向に等距離離して複数形成するとともに、該突条27が形成されている形成領域Sに周方向に延びる周突条47を半径方向に等距離離して複数形成している。このように半径方向に延びる突条27の他に周方向に延びる周突条47を形成すると、これら突条27と周突条47とは複数箇所で互いに交差することになり、この結果、これら突条27、周突条47は全体として格子模様を呈することになる。
【0029】
前述のように半径方向に延びる突条27の他に周方向に延びる周突条47を形成するには、前記下、上モールド34、36の型付け面35、37のうち、加硫時に両ビード部13の軸方向外側面13aがそれぞれ接触する部位に、前述した周突条47と同様に周方向に延びるとともに、前記周突条47と補完関係にある複数の凹溝を半径方向に等距離離して設ければよい。そして、前述のように軸方向外側面13aに突条27、周突条47の双方を形成するようにすれば、加硫開始時に周方向に延びる凹溝を通じてビード部13とリムフランジ24との間に残留するエアが凹溝44に導かれ、前記エアの誘導排出が確実となるとともに、エアを誘導排出する通路(凹溝44および周方向の凹溝)の合計長が長くなってエアの誘導排出がさらに確実となる。
【0030】
ここで、前記突条27の高さh(凹溝44の深さd)と周突条47の高さ(周方向凹溝の深さ)とを同一高さ(同一深さ)とすれば、誘導排出通路として機能する凹溝44、周方向凹溝をエアが円滑に流れ、ビード部13とリムフランジ24との間に残留するエアの誘導排出をさらに確実なものとすることができる。なお、この実施形態においては、隣接する突条27間に位置する周突条47をいずれも空気入りタイヤ11の回転軸線を中心とする円弧としたが、この発明においては、前記円弧の両端を結ぶ直線としてもよい。また、前述の実施形態においては、周突条47を半径方向に等距離離して配置したが、この発明においては、半径方向外側に向かうに従い隣接する周突条47間の半径方向距離を徐々に大または小としてもよい。
【0031】
図8はこの発明の実施形態3を示す図である。この実施形態においては、前記突条27を半径方向線Lに対して周方向一側に45度未満の所定角度Aで傾斜した複数の一側突条27aと、半径方向線Lに対して周方向他側に45度未満の所定角度Aで傾斜した複数の他側突条27bとから構成している。そして、前述の所定角度Aは25〜44度の範囲内が好ましい。ここで、前述した一側突条27aの傾斜角Aと他側突条27bの傾斜角Aとは、この実施形態では同一であるが、異なる角度としてもよい。また、この実施形態では隣接する一側突条27a間の周方向間隔と、隣接する他側突条27b間の周方向間隔とを同一としているため、これら一側、他側突条27a、27b同士は複数箇所で互いに交差している。なお、この発明においては、隣接する一側突条27a間の周方向間隔と、隣接する他側突条27b間の周方向間隔とを異なる値としてもよい。
【0032】
前述のように突条27を一側に傾斜した一側突条27aと他側に傾斜した他側突条27bとから構成するには、前記下、上モールド34、36の型付け面35、37のうち、加硫時に両ビード部13の軸方向外側面13aがそれぞれ接触する部位に、前述した一側、他側突条27a、27bと同様に半径方向線Lに対して一側、他側に傾斜し、前記一側、他側突条27a、27bと補完関係にある複数の凹溝を設ければよい。そして、このように突条27を一側に傾斜した一側突条27aと、他側に傾斜することで前記一側突条27aに対し交差する他側突条27bとから構成すれば、エアを誘導排出する通路(一側および他側に傾斜した凹溝)の合計長が長くなってエアの誘導排出をさらに円滑とすることができる。
【実施例1】
【0033】
次に、試験例1について説明する。この試験例1においては、両ビード部の軸方向外側面に突条が形成されていない従来タイヤ1と、両ビード部の軸方向外側面に高さ0.55mmの半径方向に延びる複数の突条が形成された従来タイヤ2と、両ビード部の軸方向外側面に高さ0.70mmの半径方向に延びる複数の突条が形成された従来タイヤ3と、両ビード部の軸方向外側面に高さ0.03mmの半径方向に延びる複数の突条が形成された比較タイヤ1と、ビード部の軸方向外側面に高さ0.04mmの半径方向に延びる複数の突条が形成された比較タイヤ2と、ビード部の軸方向外側面に高さ0.05mmの半径方向に延びる複数の突条が形成された実施タイヤ1と、ビード部の軸方向外側面に高さ0.15mmの半径方向に延びる複数の突条が形成された実施タイヤ2と、ビード部の軸方向外側面に高さ0.30mmの半径方向に延びる複数の突条が形成された実施タイヤ3と、ビード部の軸方向外側面に高さ0.49mmの半径方向に延びる複数の突条が形成された実施タイヤ4とを準備した。
【0034】
ここで、前記各タイヤのサイズはいずれも155/65R13 73Sであり、突条の断面形状は正三角形、突条の半径方向中央点における周方向ピッチは0.94mmであった。そして、前述した各タイヤを1000本ずつ加硫により製造したが、加硫済タイヤのビード部の軸方向外側面にエア溜まりによるベアが発生した本数を以下の表1に示す。この表1に示すように突条の高さが0.05mm未満であると、ベアが発生したタイヤの本数が多いが、0.05mm以上とすると、ベアの発生が効果的に抑制されている。
【0035】
【表1】

【0036】
また、前述した各タイヤを同一サイズのリム( 13×4.00B)にリム組みした後、 200kPaの内圧を充填し、3ヶ月放置後の残内圧(kPa)を測定した。その結果を前記表1に示すが、突条の高さが 0.5mm以上であると、突条の潰れが十分ではないため、内圧が大幅に低下しているが、 0.5mm未満であると、突条が容易に潰れて内圧の低下が効果的に抑制され、エアシール性が向上している。
【実施例2】
【0037】
次に、試験例2について説明する。この試験においては、前記実施形態2で説明したような両ビード部の軸方向外側面に高さ0.15mmの半径方向および周方向に延びる複数の突条および周突条がそれぞれ形成された実施タイヤ5と、前記実施形態3で説明したような両ビード部の軸方向外側面に高さが共に0.15mmで、半径方向線に対して周方向一側に傾斜角40度で傾斜した複数の一側突条および周方向他側に傾斜角40度で傾斜した複数の他側突条がそれぞれ形成された実施タイヤ6とを準備した。
【0038】
ここで、各タイヤのサイズ、突条(一側、他側突条)および周突条の断面形状、周方向ピッチは前記試験例1と同様である。そして、この試験例2においても、前述した各タイヤを1000本ずつ加硫により製造したが、加硫済タイヤのビード部の軸方向外側面にエア溜まりによるベアが発生した本数を以下の表2に示す。また、前述した各タイヤを前記試験例1と同一のリムにリム組みした後、 200kPaの内圧を充填し、3ヶ月放置後の残内圧(kPa)を測定した。その結果(エアシール性)を以下の表2に示す。このように実施形態2、3で説明したタイヤは、実施形態1で説明したタイヤよりベアの発生を強力に抑制することができるとともに、エアシール性を向上させることができる。
【0039】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、ビード部の外側面に複数の突条が形成されたタイヤの産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
11…タイヤ 13…ビード部
13a…軸方向外側面 27…突条
27a…一側突条 27b…他側突条
28…加硫金型 34…下モールド
36…上モールド 44…凹溝
47…周突条 L…半径方向線
h…高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両ビード部の軸方向外側面に半径方向に延び高さが0.05mm以上で 0.5mm未満である突条を周方向に離して複数設けたことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記突条の断面形状を先端に向かうに従い先細りとした請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記突条の断面形状は三角形である請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記突条が形成されている形成領域に周方向に延び前記突条と交差する周突条を半径方向に離して複数設けた請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記周突条を前記突条の高さと同一高さとした請求項4記載のタイヤ。
【請求項6】
前記突条を、半径方向線に対して一側に傾斜した複数の一側突条と、半径方向線に対して他側に傾斜することで前記一側突条に対し交差する複数の他側突条とから構成した請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
開閉可能で、閉止されたとき内部に収納された未加硫タイヤを加硫して加硫済みのタイヤとする、少なくとも上、下モールドから構成されたタイヤの加硫金型において、加硫時に未加硫タイヤの両ビード部の軸方向外側面に接する内表面に、半径方向に延び深さが0.05mm以上で 0.5mm未満である凹溝を周方向に離して複数設けたことを特徴とするタイヤの加硫金型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−78966(P2013−78966A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218805(P2011−218805)
【出願日】平成23年10月1日(2011.10.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】