タイヤの成形方法及びゴムストリップの積層装置
【課題】タイヤを構成するゴム部材の成形に際し、内部へのエアの残留を低減する。
【解決手段】回転支持体10と押出機20を相対的にトラバース移動させながら、押出機20から供給されるゴムストリップRを回転支持体10の外周面に巻き付けて積層する成形方法において、回転支持体周面に対するゴムストリップの巻き付き位置で押さえロール30によりゴムストリップRを押圧するとともに、その後の領域部分においてゴムストリップRに対してトラバース移動の進行方向後側の部分をステッチングロール40a又は40bにより押圧して圧着する。ゴムストリップRの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップReに対して進行方向後側の部分を押圧し圧着した後、該最終周のゴムストリップReに対し、少なくともトラバース移動の進行方向前側の部分を、ステッチングロール40b又は40aにより押圧し圧着する。
【解決手段】回転支持体10と押出機20を相対的にトラバース移動させながら、押出機20から供給されるゴムストリップRを回転支持体10の外周面に巻き付けて積層する成形方法において、回転支持体周面に対するゴムストリップの巻き付き位置で押さえロール30によりゴムストリップRを押圧するとともに、その後の領域部分においてゴムストリップRに対してトラバース移動の進行方向後側の部分をステッチングロール40a又は40bにより押圧して圧着する。ゴムストリップRの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップReに対して進行方向後側の部分を押圧し圧着した後、該最終周のゴムストリップReに対し、少なくともトラバース移動の進行方向前側の部分を、ステッチングロール40b又は40aにより押圧し圧着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤにおいて、少なくとも一つのゴム部材をリボン状ストリップゴムの巻き付けにより成形するためのタイヤ成形方法、及びそれに用いるゴムストリップの積層装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは、複数のタイヤ構成部材により形成されている。例えば、図12に示すように、インナーライナー2、トレッド3、サイドウォール4、リムストリップ5等の各部が、各々要求される特性に応じたゴム部材により形成され、これらのゴム部材がカーカス層6やベルト層7等のコードを含むタイヤ用補強部材と組み合されて空気入りタイヤが構成されている。図中の8はビードコア9を含むビード部である。
【0003】
これらの各ゴム部材を成形する方法として、リボン状に押出し成形した未加硫のゴムストリップを、成形ドラム等の円筒状の回転支持体上において、タイヤ周方向に沿って一部を重ねて螺旋状に巻き付けて所定の断面形状に成形する方法が知られている(下記特許文献1〜4参照)。この成形方法では、回転支持体に対して相対的にトラバース動作可能な供給装置によりリボン状のゴムストリップを連続して供給して巻き付けるが、巻き付けの際にゴムストリップ間に空隙が生じるおそれがあり、タイヤ内部にエアが残留するおそれがある。
【0004】
かかる空隙の発生を防止するために、例えば、下記特許文献1には、回転支持体に対する巻き付け位置でゴムストリップを押圧する押さえロールに加えて、ゴムストリップ幅のセンターを挟んで左右に独立したステッチングロールを設け、押さえロールで押圧した後に、進行方向前側のステッチングロールによる押圧動作により、ゴムストリップの進行方向前側の部分を押圧し圧着することが開示されている。詳細には、図10に示すように、トラバース移動の進行方向が図中で左側のB1のときには、左側に位置する進行方向前側のステッチングロール100aを使用し、該ステッチングロール100aを押圧動作させて、ゴムストリップRの進行方向前側の部分(左側部分)を押圧する。一方、トラバース移動の進行方向が図中で右側のB2のときには、右側に位置する進行方向前側のステッチングロール100bを使用し、該ステッチングロール100bを押圧動作させて、ゴムストリップRの進行方向前側の部分(右側)を押圧する。
【0005】
ところで、成形しようとするゴム部材の厚みが厚い場合、ゴムストリップの巻き付けピッチPをゴムストリップRの半幅w/2以下に設定し(P≦w/2)、重なり代を大きくすることで厚みを確保する(図11参照)。その際、ゴムストリップRとして図10に示すような両端部が薄肉で幅方向中央部ほど厚肉の断面形状を持つものを用いる場合、図11に示すように、ゴムストリップR,R同士の重なり代がゴムストリップRの半幅に位置する頂点を越えて、ゴムストリップRの後端Rxでの段差が大きくなる。そのため、進行方向前側のステッチングロール100aにより押圧したのでは、ゴムストリップR,Rの重なり部の押さえが不十分となり、エアを抱え込んでしまうことが判明した。
【0006】
これに対し、下記特許文献2には、トラバース移動の進行方向後側に位置するゴムストリップの重なり部を押圧ローラ(ステッチングロール)により押圧することが開示されている。しかしながら、進行方向後側を押圧する場合、ゴムストリップの最終周の巻き付けを終了した段階で、この最終周のゴムストリップについては、進行方向前側のゴム部分が押圧されておらず、浮いたままの状態になっているため、この部分でエアを抱え込むおそれがある。
【0007】
一方、下記特許文献4には、押出機より押し出されたゴムストリップの表面に幅方向に指向した溝条を設け、得られた溝付きのゴムストリップをタイヤのトレッド形成部位に巻き付けてトレッドを成形する方法が開示されている。しかしながら、未加硫のゴムストリップは柔軟で変形しやすいため、溝付け工程を経て巻き付け工程に至るまでのガイドロール等との当接や、巻き付け時にステッチングロールで押圧されることにより、溝が消失するおそれがあり、十分なエア抜き効果は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2008/018120号
【特許文献2】特開2010−179504号公報
【特許文献3】特開2004−216603号公報
【特許文献4】特開2000−289122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの成形において、ゴム部材内部へのエアの残留を低減することができるタイヤの成形方法及び、そのタイヤ成形に使用するゴムストリップの積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタイヤの成形方法は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、成形用の回転支持体に対して相対的にトラバース移動する供給装置より供給されるリボン状ゴムストリップを、前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持たせながら前記回転支持体の外周面に巻き付けて積層するタイヤ成形方法において、前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で押さえロールにより前記ゴムストリップを押圧するとともに、その後の領域部分において、前記ゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分をステッチングロールにより押圧して圧着するものである。
【0011】
そして、第1の態様では、前記ゴムストリップの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分を押圧し圧着した後、前記最終周のゴムストリップに対し少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側の部分をステッチングロールにより押圧し圧着することを特徴とする。
【0012】
第2の態様では、前記ステッチングロールは周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられてなり、前記ゴムストリップを押圧することで当該ゴムストリップの表面に凹溝を順次転写し形成することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るゴムストリップの積層装置は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、リボン状ゴムストリップを成形用の回転支持体の外周面に巻き付けて積層する積層装置であって、成形用の回転支持体と対向して配置され、該回転支持体に対して相対的にトラバース移動可能に設けられ、リボン状ゴムストリップが前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持って巻き付けられるように該ゴムストリップを前記回転支持体に向けて供給するゴムストリップ供給装置と、前記ゴムストリップ供給装置から供給される前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で該ゴムストリップを押圧可能な押さえロールと、前記押さえロールによる押圧位置の後の領域部分において、前記ゴムストリップ幅のセンターを挟んでトラバース移動方向の前後に並んで個々に押圧動作可能に配された2つのステッチングロールと、を備え、前記2つのステッチングロールは、トラバース移動の進行方向後側のステッチングロールが押圧動作するように設けられたものである。
【0014】
そして、上記第1の態様の実施に使用するものでは、前記回転支持体に巻き付けられた最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側のステッチングロールが押圧動作した後に、前記2つのステッチングロールのうち、少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側のステッチングロールが押圧動作するように設けられたことを特徴とする。
【0015】
上記第2の態様の実施に使用するものでは、前記2つのステッチングロールは、周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、少なくとも一つのタイヤ用ゴム部材についてリボン状ゴムストリップを巻き付けて積層する場合において、該ゴムストリップの進行方向前側の部分はステッチングロールでは押さえず、重なり部となる進行方向後側の部分をステッチングロールで押圧するので、各ゴムストリップの層間のエアの抱え込みを低減することができる。
【0017】
そして、上記第1の態様によれば、ゴムストリップの巻き付けとともに進行方向後側の部分を順次押圧していき、最終周の巻き付けを終了し、その進行方向後側の部分の押圧も終了した段階で、該最終周のゴムストリップに対し、少なくとも進行方向前側の部分をステッチングロールにより押圧するので、最終周のゴムストリップにおいてもエアの抱え込みを低減することができる。
【0018】
上記第2の態様によれば、ステッチングロールの押圧によってゴムストリップの表面に周上同一方向の凹溝を順次形成することができるので、この凹溝をエアの排出路としてエアの残留を低減することができる。また、該凹溝はステッチングロールによる押圧で形成されるので、ゴムストリップの積層時にエア排出路としての機能を十分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ成形方法を実施する成形装置によるリボン状ゴムストリップの巻き付け状態の略示側面図である。
【図2】同上の略示平面説明図である。
【図3】ステッチングロールによる押圧状態の図1のA矢視方向の略示平面図である。
【図4】同上のステッチングロールの動作状態を説明するための概念図である。
【図5】同上のステッチングロールによる押圧状態を示す説明図である。
【図6】(a)は同上のステッチングロールの正面図であり、(b)はその変更例に係る正面図である。
【図7】(a)は同上のステッチングロールの表面部の形状を示す幅方向に沿った要部拡大断面図であり、(b)はその周方向に沿った要部拡大断面図である。
【図8】回転支持体に巻き付けられたゴムストリップの平面図である。
【図9】実施形態に係るゴムストリップの巻き付け方法を示す説明図である。
【図10】従来のステッチングロールの動作状態を説明するための概念図である。
【図11】従来のステッチングロールによる押圧状態を示す説明図である。
【図12】タイヤ構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜3に、実施形態に係る空気入りタイヤの成形装置が示されている。図において、符号10は、中心軸11の回りに回転可能な成形用の回転支持体であり、通常、複数のセグメントに周上で分割されて拡縮可能に構成された円筒状の成形ドラムよりなる。
【0022】
該回転支持体10の外周面に対して、リボン状ゴムストリップRを巻き付けて積層する積層装置は、次の構成を備えてなる。
【0023】
符号20は、前記回転支持体10と対向して配置されたリボン状ゴムストリップRの供給装置としての押出機であり、ヘッド部21の先端に有する口金22から、インナーライナー、トレッド、サイドウォール、リムストリップ等の成形対象のタイヤ用ゴム部材に応じた所定の断面形状のリボン状ゴムストリップRを前記回転支持体10に向かって押し出し供給するように設けられている。ゴムストリップRは、この例では、図4に示すように、幅方向両端部が薄肉状をなし中央部ほど厚肉に形成された断面形状、特には断面三角形状とされている。
【0024】
前記押出機20は、前記回転支持体10に対して軸方向に相対的にトラバース移動可能に設けられている。これにより、前記押出機20より押し出されるリボン状ゴムストリップRは、前記回転支持体10の周面に向かって連続して供給されるとともに、前記のトラバース移動と回転支持体10の回転に伴って、トラバース移動の進行方向B1の後側で重なり部を持たせながら巻き付けられ積層されるようになっている(図2,3参照)。
【0025】
前記ゴムストリップRの巻き付け時のトラバース移動は、回転支持体10の回転とともに連続的に実施してもよく、あるいはまた、回転支持体10が一回転する毎に断続的に実施してもよい。前者の場合、ゴムストリップRは、回転支持体10の周方向に対してわずかに傾斜した状態で螺旋状に巻き付けられる。一方、後者の場合、ゴムストリップRは、回転支持体10の1回転毎にトラバース移動しながら、即ち幅方向に1ピッチ分ずらされながら(ピッチ送り部52)、回転支持体10の周方向に平行に巻き付けられる(平行巻き部51)。この例では、図2に示すように後者としている。
【0026】
なお、該ゴムストリップRの巻き付け時のトラバース移動は、前記押出機20を回転支持体10に対してその軸方向に移動させる場合のほか、回転支持体10を軸方向に移動させてもよい。
【0027】
前記ゴムストリップRの供給装置としては、前記の押出機20には限らず、別工程で押し出し成形されて給送されてくるゴムストリップRを連続して送出し供給するように構成した供給装置の場合もある。
【0028】
そして、前記のように供給されるゴムストリップを巻き付け成形するのに使用する圧着装置は、次の構成を備えてなる。
【0029】
符号30は、前記押出機20のヘッド部21に連結固定された支持ブラケット23により支持された押さえロールであり、押出機20より押し出されて供給されるゴムストリップRを押圧できるように配設されている。この押さえロール30は、ゴムやポリウレタン等の押圧に適した弾性を有する弾性体よりなる円筒状のロール体31を、軸支部材35により、回転支持体10の周面に対し平行に軸支することで構成されている。
【0030】
押さえロール30は、前記支持ブラケット23に取付けられたエアシリンダー等の進退動作用のアクチュエータ33により、前記回転支持体10の周面に向かって進退自在に支持されており、ゴムストリップRの巻き付け時に進出動作することにより、前記ゴムストリップRの巻き付き位置において該ゴムストリップRを押圧するように設けられている。
【0031】
前記ロール体31は、平面よりみて押出機20の口金22から押し出されるゴムストリップRの幅より大きい軸方向幅を持ち、ゴムストリップRの全幅を押圧可能なように、該ゴムストリップRの対応位置に配設されている。
【0032】
符号40a,40bは、押さえロール30による前記押圧位置の直後の領域部分において、ゴムストリップRを押圧するように配された2つのステッチングロールであり、それぞれ押出機20の口金22から回転支持体10の周面に向かって押し出され供給されるゴムストリップRの幅方向センターCを挟んで前記トラバース移動の進行方向B1の前後に並んで配設されている。
【0033】
図3に示すように、前記2つのステッチングロール40a,40bは、それぞれのロール体41,41が前記幅方向センターCを中間にして隣接して並列配置されて軸支部材45、45により回転自在に軸支されている。また、前記2つのステッチングロール40a,40bは、それぞれ前記支持ブラケット23に取付けられたエアシリンダー等の進退動作用のアクチュエータ43,43により各々独立して押圧動作するように支持されている。そして、前記トラバース移動の進行方向に合わせてその進行方向後側になるステッチングロール40a又は40bが押圧動作することにより、回転支持体10上に巻き付け積層される前記ゴムストリップRの後側になる部分を押圧するように設けられている。
【0034】
詳細には、図4に示すように、トラバース移動の進行方向が図中で左側のB1のときには、右側に位置する進行方向後側のステッチングロール40bを使用し、該ステッチングロール40bを押圧動作させて、ゴムストリップRの進行方向後側の部分(右側部分)を押圧する。一方、トラバース移動の進行方向が図中で右側のB2のときには、左側に位置する進行方向後側のステッチングロール40aを使用し、該ステッチングロール40aを押圧動作させて、ゴムストリップRの進行方向後側の部分(左側)を押圧するように構成されている。
【0035】
ステッチングロール40a,40bは、その幅がゴムストリップ幅wの1/2以上であり、この例ではゴムストリップ幅wの半分の幅w/2に設定されている。これにより、ステッチングロール40a,40bは、ゴムストリップRの前記進行方向後側において、好ましくは端縁からゴムストリップ幅wの1/4〜1/2幅、より好ましくは半幅分w/2を押圧する。なお、ステッチングロール40a,40bの材質としては、特に限定されず、ゴムやポリウレタン等の弾性体の他、金属製であってもよい。
【0036】
前記2つのステッチングロール40a,40bは、また、回転支持体10に巻き付けられた最終周のゴムストリップRに対して進行方向後側のステッチングロール40a又は40bが押圧動作した後に、少なくともトラバース移動の進行方向前側のステッチングロール40b又は40aが押圧動作するように構成されている。すなわち、ゴムストリップRの巻き付けが終了し、その最終周のゴムストリップRに対してそれまでと同様に進行方向後側のステッチングロール40a又は40bでの押圧が終了した後、当該最終周のゴムストリップRに対して、更に、進行方向前側のステッチングロール40b又は40aでの押圧を行うか、あるいはまた、2つのステッチングロール40a,40bの両方を使ってゴムストリップRの全体にわたる押圧を行うように構成されている。
【0037】
図6(a)に示すように、ステッチングロール40a,40bは、周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条46と溝条47が外周面の全周にわたって交互に設けられてなる。この例では、突条46と溝条47は、周方向に垂直、即ち幅方向に平行に延びており、それぞれ周方向に所定間隔をおいて交互に設けられている。図7(a)に示すように、2つの突条46,46の間で形成される溝条47は、幅方向の中央部47cで浅く、両端部47eで深く設定されている。なお、特に限定するものではないが、図7(b)に示す幅方向中央部において、突条46の高さh(溝条47の深さと同じ)及び幅i、並びに溝条47の幅jは、ともに2mm以下であることが好ましく、より好ましくはともに0.5〜1.0mmである。
【0038】
突条46と溝条47は、ステッチングロール40a,40bの周方向に対して交差する方向に延びていれば、図6(b)に示すように、幅方向に対して傾斜した方向に延びるものであってもよい。幅方向に対する傾斜角度は、特に限定されないが、±45°以下であることが好ましい。
【0039】
上記の構成の積層装置を備える成形装置により、タイヤを構成する少なくとも一つのゴム部材を成形する方法について説明する。
【0040】
成形は、ゴムストリップ供給装置としての押出機20から押し出されるリボン状のゴムストリップRを、回転支持体10の回転と該回転支持体10に対する押出機20の相対的なトラバース移動により巻き付けて積層する。その際、本実施形態では、ゴムストリップRの巻き付けピッチPをゴムストリップRの半幅w/2以下に設定して(P≦w/2、図5参照)、ゴムストリップRにおけるトラバース移動の進行方向B1の後側の重なり代(重なり部の幅)を大きくしている。
【0041】
成形に際しては、ゴムストリップRの前記回転支持体10の周面に対する巻き付き位置、すなわち押出機20から供給されたゴムストリップRが回転支持体10に当接して巻き付き始める位置において、前記押さえロール30によりゴムストリップRを押圧し圧着する。
【0042】
そして、前記の押圧直後の領域部分においては、左右いずれのトラバース移動方向における巻き付けの場合においても、前記2つのステッチングロール40a,40bのうち、前記トラバース移動の進行方向の後側になる一方のステッチングロール40a又は40bを押圧動作させる。例えば、図5に示すような進行方向B1に対しては、その進行方向後側になる右側のステッチングロール40bを押圧動作させて、該ゴムストリップRの進行方向B1の後側の部分を押圧し圧着する。トラバース移動の進行方向が前記とは反対方向B2の場合は、その進行方向後側になる左側のステッチングロール40aを押圧動作させて、前記同様に進行方向後側の部分を押圧し圧着する(図4参照)。
【0043】
これにより、図5に示すように、ゴムストリップRの重なり部となる進行方向後側の部分をステッチングロール40bにより面で押さえることができるため、ゴムストリップR,R同士の間に空隙を生じさせないように充分に圧着することができ、各ゴムストリップR間のエアの抱え込みを抑制することができる。特に、ステッチングロール40a,40bがゴムストリップRの半幅w/2と同等の幅を有し、これを用いて進行方向後側の部分を押圧することにより、一周前のゴムストリップRの半幅(頂点)を越えて突出するゴムストリップRの後端Rxまで押さえることができ、エアの抱え込みをより一層好適に抑制することができる。
【0044】
また、このようにゴムストリップRの進行方向後側の部分を押圧する場合、進行方向前側の部分は、その巻き付け直後には押圧されないが、その次の周において、当該次の周の進行方向後側の部分を押圧するときに、同時に押圧される。すなわち、一周遅れではあるが、順次に押圧されるので、ゴムストリップRの積層体の断面形状を、目標とするプロファイルに沿った形状としやすく、よって、エア残りのない安定した巻き付けを行い易い。
【0045】
また、ステッチングロール40a,40bの外周面には、上記のように突条46と溝条47が交互に設けられているため、該ステッチングロール40a,40bで押圧することにより、ゴムストリップRの進行方向後側部分の表面には、図8に示すように、突条46によって凹溝50が周方向に所定間隔をおいて順次転写し形成される。かかる凹溝50は、ゴムストリップRの平行巻き部51とピッチ送り部52に関わらず、周上に同一方向の凹状模様として形成されるので、エアの排出路が寸断されずに確保することができる。
【0046】
図9は、ゴムストリップRの巻き付け方法の一例を説明するための図である。この例は、トラバース移動の往復によりゴムストリップRを複数層巻する例であって、往復それぞれのトラバース移動の進行方向後側のステッチングロール40a又は40bによりゴムストリップの進行方向後側部分をそれぞれ押圧する。詳細には、回転支持体10の幅方向中央部をゴムストリップRの巻始め位置にして、トラバース移動の往復により該ゴムストリップRを複数層巻する。
【0047】
まず、図9(a)に示すように、前記中央部から端縁部に至る1層目のトラバース移動時は、図5と同様にその進行方向B1の後側になるステッチングロール40bを押圧動作させる。その際、重なり合うゴムストリップR,R間の空気は、図中の矢印Kで示すように上下に排出される。また、ステッチングロール40bによる押圧により、ゴムストリップRの表面、特には第1層L1の巻き付け後に露出する第1層L1の外周面には、図8に示すように凹溝50が順次に転写される。
【0048】
そして、回転支持体10の端縁部で折り返した後の2層目のトラバース移動時は、図9(b)に示すように、前記とは反対の進行方向B2の後側のステッチングロール40aを押圧動作させる。その際、重なり合うゴムストリップR,R間の空気は、図中の矢印Kで示すように上下に排出される。また、このとき、第1層L1の外周面には上記のように凹溝50が転写形成されているので、第2層L2の巻き付け時に該凹溝50がエア排出路となって、第2層L2のゴムストリップR,R間の空気を第1層L1と第2層L2の間からも良好に排出することができる。そのため、ゴムストリップR,R間や、第1層L1と第2層L2の層間でのエア残りを低減することができ、複数層巻の場合においても、エア残りを低減しつつ、圧着して巻き付け積層することができる。
【0049】
このようにして2層目のトラバース移動が回転支持体10の端縁部まで到達することにより、この例ではゴムストリップRの巻き付けが終了する。その際、ゴムストリップRの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップReに対して、進行方向後側のステッチングロール40aを押圧動作させて、進行方向後側のゴム部分を押圧し圧着させる。このようにして上記通常の巻き付け動作が終了した後、ゴムストリップRを押出機20の口金22から切断してから、該最終周のゴムストリップReに対して、図9(c)に示すように、2つのステッチングロール40a,40bを押圧動作させて、前記トラバース移動の進行方向両側のゴム部分を押圧し圧着する。これにより、最終周のゴムストリップReにおいて進行方向前側の部分の浮き上がりをなくして、目標とするプロファイルに沿った形状とすることができ、エアの抱え込みを解消することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、ゴムストリップRを巻き付けてタイヤ用ゴム部材を積層成形する場合に、ゴムストリップRの重なり部となる進行方向後側の部分をステッチングロール40a又は40bで押圧するので、各ゴムストリップRの層間のエアの抱え込みを低減することができる。
【0051】
また、ゴムストリップRの巻き付けが終了した後、最終周のゴムストリップReに対し、少なくとも進行方向前側の部分をステッチングロール40a又は40bにより押圧するので、最終周のゴムストリップReにおける進行方向前側部分の浮き上がりを防止して、エアの抱え込みを低減することができる。なお、最終周のゴムストリップに対しては、例えば、その巻き付けに伴い進行方向後側のステッチングロールを押圧動作する際に、進行方向前側のステッチングロールも同時に押圧動作することも考えられる。しかしながら、一度に両側から押圧し圧着すると、エアの逃げ道を確保できない。そのため、本実施形態では、一旦、それまでと同様に進行方向後側のステッチングロールで押圧してエアを逃がした後に、最終周のゴムストリップReにおける浮き上がった状態の進行方向前側部分を目標のプロファイルに沿わせるために、更に少なくとも進行方向前側のステッチングロールで押圧するようにしており、上記不具合を解消することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、2つのステッチングロール40a,40bを回転支持体10に対し供給されるゴムストリップRの幅方向センターCを挟んで前後に並列して設けておくことにより、上記進行方向後側の部分と前側の部分の押圧を容易に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、ステッチングロール40a,40bの押圧によってゴムストリップRの表面に周上同一方向の凹溝50を順次形成するので、この凹溝50をエアの排出路として利用することができる。そのため、トラバース移動の往復によりゴムストリップRを複数層巻する場合に、下の層L1の表面に設けられた凹溝50がエアの排出路となって、その上の層L2を形成する際のエア残りを低減することができる。また、得られた積層体の外周面にも凹溝50が形成されるので、該積層体の上に他のゴム部材を積層する際にも該凹溝50をエアの排出路として利用することができ、他の部材間でのエアの残留を低減することもできる。また、この凹溝50はステッチングロール40a,40bによる押圧により回転支持体10上で形成されるものなので、事前に形成したおいた場合のように巻き付けまでの段階で消失するおそれもなく、ゴムストリップの積層時にエア排出路としての機能を十分に発揮することができる。
【0054】
なお、上記した実施形態においては、巻き付け積層するリボン状のゴムストリップRを、回転支持体10としての円筒状の成形ドラム上において巻き付ける場合について説明したが、回転支持体としては、前記成形ドラム上にカーカス層やベルト層あるいは他のゴム層を下地層として巻回積層されている場合も含んでおり、前記下地層上に前記ゴムストリップを前記同様に巻き付け積層することもできる。このほか、例えばサイドウォール等を円筒状のバンドケースやシェーピング変形させたグリーンタイヤに対して巻き付け積層する場合においても、前記バンドケースやグリーンタイヤを回転支持体として上記と同様にして実施することができる。また、従来の押出し部材とゴムストリップ部材の積層を組み合わせて所定のゴム部材を成形する場合においても実施することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、押さえロール30と2つのステッチングロール40a,40bとからなる圧着装置を、ゴムストリップ供給装置である押出機20の一部に、より詳細にはヘッド部21の近傍に一体に組み込んだが、それぞれ独立させて設けてもよい。例えば、ゴムストリップ供給装置と押さえロールを一体に設ける一方、2つのステッチングロールはこれらとは独立させて、周上の他の位置に配設してもよい。但し、一体に設ける方が、巻き付けピッチ、巻き付けパターン等の変化に対して、調整や複雑な制御及び位置決め装置を必要とせず、好ましい。
【0056】
なお、上記のようにゴムストリップを巻き付けてゴム部材を成形する際にエア残りを低減するための方策としては、例えば、押さえロールの硬度を下げてプロファイルに沿いやすくする方策や、ゴムストリップの材料配合を接着性の高いものに変更する方策や、巻き付け終了後に積層体の全体にわたってステッチャーを掛ける方策などがある。これらの方策は、例えば、押さえロールの寿命が短くなる、ゴム材料面から制約を受ける、巻き付け後のステッチャー工程に長時間を要する等の欠点はあるが、許容される範囲内でこれらの方策を適宜組み合わせて、上記実施形態に適用することを妨げるものではない。
【0057】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、成形用の回転支持体に対して相対的にトラバース移動する供給装置より供給されるリボン状ゴムストリップを、前記回転支持体の外周面に巻き付けて積層するタイヤ成形方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10…回転支持体 20…押出機(ゴムストリップ供給装置)
30…押さえロール 40a,40b…ステッチングロール
46…突条 47…溝条 50…凹溝
B1,B2…トラバース移動の進行方向 C…幅方向センター
R…ゴムストリップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤにおいて、少なくとも一つのゴム部材をリボン状ストリップゴムの巻き付けにより成形するためのタイヤ成形方法、及びそれに用いるゴムストリップの積層装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは、複数のタイヤ構成部材により形成されている。例えば、図12に示すように、インナーライナー2、トレッド3、サイドウォール4、リムストリップ5等の各部が、各々要求される特性に応じたゴム部材により形成され、これらのゴム部材がカーカス層6やベルト層7等のコードを含むタイヤ用補強部材と組み合されて空気入りタイヤが構成されている。図中の8はビードコア9を含むビード部である。
【0003】
これらの各ゴム部材を成形する方法として、リボン状に押出し成形した未加硫のゴムストリップを、成形ドラム等の円筒状の回転支持体上において、タイヤ周方向に沿って一部を重ねて螺旋状に巻き付けて所定の断面形状に成形する方法が知られている(下記特許文献1〜4参照)。この成形方法では、回転支持体に対して相対的にトラバース動作可能な供給装置によりリボン状のゴムストリップを連続して供給して巻き付けるが、巻き付けの際にゴムストリップ間に空隙が生じるおそれがあり、タイヤ内部にエアが残留するおそれがある。
【0004】
かかる空隙の発生を防止するために、例えば、下記特許文献1には、回転支持体に対する巻き付け位置でゴムストリップを押圧する押さえロールに加えて、ゴムストリップ幅のセンターを挟んで左右に独立したステッチングロールを設け、押さえロールで押圧した後に、進行方向前側のステッチングロールによる押圧動作により、ゴムストリップの進行方向前側の部分を押圧し圧着することが開示されている。詳細には、図10に示すように、トラバース移動の進行方向が図中で左側のB1のときには、左側に位置する進行方向前側のステッチングロール100aを使用し、該ステッチングロール100aを押圧動作させて、ゴムストリップRの進行方向前側の部分(左側部分)を押圧する。一方、トラバース移動の進行方向が図中で右側のB2のときには、右側に位置する進行方向前側のステッチングロール100bを使用し、該ステッチングロール100bを押圧動作させて、ゴムストリップRの進行方向前側の部分(右側)を押圧する。
【0005】
ところで、成形しようとするゴム部材の厚みが厚い場合、ゴムストリップの巻き付けピッチPをゴムストリップRの半幅w/2以下に設定し(P≦w/2)、重なり代を大きくすることで厚みを確保する(図11参照)。その際、ゴムストリップRとして図10に示すような両端部が薄肉で幅方向中央部ほど厚肉の断面形状を持つものを用いる場合、図11に示すように、ゴムストリップR,R同士の重なり代がゴムストリップRの半幅に位置する頂点を越えて、ゴムストリップRの後端Rxでの段差が大きくなる。そのため、進行方向前側のステッチングロール100aにより押圧したのでは、ゴムストリップR,Rの重なり部の押さえが不十分となり、エアを抱え込んでしまうことが判明した。
【0006】
これに対し、下記特許文献2には、トラバース移動の進行方向後側に位置するゴムストリップの重なり部を押圧ローラ(ステッチングロール)により押圧することが開示されている。しかしながら、進行方向後側を押圧する場合、ゴムストリップの最終周の巻き付けを終了した段階で、この最終周のゴムストリップについては、進行方向前側のゴム部分が押圧されておらず、浮いたままの状態になっているため、この部分でエアを抱え込むおそれがある。
【0007】
一方、下記特許文献4には、押出機より押し出されたゴムストリップの表面に幅方向に指向した溝条を設け、得られた溝付きのゴムストリップをタイヤのトレッド形成部位に巻き付けてトレッドを成形する方法が開示されている。しかしながら、未加硫のゴムストリップは柔軟で変形しやすいため、溝付け工程を経て巻き付け工程に至るまでのガイドロール等との当接や、巻き付け時にステッチングロールで押圧されることにより、溝が消失するおそれがあり、十分なエア抜き効果は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2008/018120号
【特許文献2】特開2010−179504号公報
【特許文献3】特開2004−216603号公報
【特許文献4】特開2000−289122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの成形において、ゴム部材内部へのエアの残留を低減することができるタイヤの成形方法及び、そのタイヤ成形に使用するゴムストリップの積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタイヤの成形方法は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、成形用の回転支持体に対して相対的にトラバース移動する供給装置より供給されるリボン状ゴムストリップを、前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持たせながら前記回転支持体の外周面に巻き付けて積層するタイヤ成形方法において、前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で押さえロールにより前記ゴムストリップを押圧するとともに、その後の領域部分において、前記ゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分をステッチングロールにより押圧して圧着するものである。
【0011】
そして、第1の態様では、前記ゴムストリップの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分を押圧し圧着した後、前記最終周のゴムストリップに対し少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側の部分をステッチングロールにより押圧し圧着することを特徴とする。
【0012】
第2の態様では、前記ステッチングロールは周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられてなり、前記ゴムストリップを押圧することで当該ゴムストリップの表面に凹溝を順次転写し形成することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るゴムストリップの積層装置は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、リボン状ゴムストリップを成形用の回転支持体の外周面に巻き付けて積層する積層装置であって、成形用の回転支持体と対向して配置され、該回転支持体に対して相対的にトラバース移動可能に設けられ、リボン状ゴムストリップが前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持って巻き付けられるように該ゴムストリップを前記回転支持体に向けて供給するゴムストリップ供給装置と、前記ゴムストリップ供給装置から供給される前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で該ゴムストリップを押圧可能な押さえロールと、前記押さえロールによる押圧位置の後の領域部分において、前記ゴムストリップ幅のセンターを挟んでトラバース移動方向の前後に並んで個々に押圧動作可能に配された2つのステッチングロールと、を備え、前記2つのステッチングロールは、トラバース移動の進行方向後側のステッチングロールが押圧動作するように設けられたものである。
【0014】
そして、上記第1の態様の実施に使用するものでは、前記回転支持体に巻き付けられた最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側のステッチングロールが押圧動作した後に、前記2つのステッチングロールのうち、少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側のステッチングロールが押圧動作するように設けられたことを特徴とする。
【0015】
上記第2の態様の実施に使用するものでは、前記2つのステッチングロールは、周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、少なくとも一つのタイヤ用ゴム部材についてリボン状ゴムストリップを巻き付けて積層する場合において、該ゴムストリップの進行方向前側の部分はステッチングロールでは押さえず、重なり部となる進行方向後側の部分をステッチングロールで押圧するので、各ゴムストリップの層間のエアの抱え込みを低減することができる。
【0017】
そして、上記第1の態様によれば、ゴムストリップの巻き付けとともに進行方向後側の部分を順次押圧していき、最終周の巻き付けを終了し、その進行方向後側の部分の押圧も終了した段階で、該最終周のゴムストリップに対し、少なくとも進行方向前側の部分をステッチングロールにより押圧するので、最終周のゴムストリップにおいてもエアの抱え込みを低減することができる。
【0018】
上記第2の態様によれば、ステッチングロールの押圧によってゴムストリップの表面に周上同一方向の凹溝を順次形成することができるので、この凹溝をエアの排出路としてエアの残留を低減することができる。また、該凹溝はステッチングロールによる押圧で形成されるので、ゴムストリップの積層時にエア排出路としての機能を十分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ成形方法を実施する成形装置によるリボン状ゴムストリップの巻き付け状態の略示側面図である。
【図2】同上の略示平面説明図である。
【図3】ステッチングロールによる押圧状態の図1のA矢視方向の略示平面図である。
【図4】同上のステッチングロールの動作状態を説明するための概念図である。
【図5】同上のステッチングロールによる押圧状態を示す説明図である。
【図6】(a)は同上のステッチングロールの正面図であり、(b)はその変更例に係る正面図である。
【図7】(a)は同上のステッチングロールの表面部の形状を示す幅方向に沿った要部拡大断面図であり、(b)はその周方向に沿った要部拡大断面図である。
【図8】回転支持体に巻き付けられたゴムストリップの平面図である。
【図9】実施形態に係るゴムストリップの巻き付け方法を示す説明図である。
【図10】従来のステッチングロールの動作状態を説明するための概念図である。
【図11】従来のステッチングロールによる押圧状態を示す説明図である。
【図12】タイヤ構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜3に、実施形態に係る空気入りタイヤの成形装置が示されている。図において、符号10は、中心軸11の回りに回転可能な成形用の回転支持体であり、通常、複数のセグメントに周上で分割されて拡縮可能に構成された円筒状の成形ドラムよりなる。
【0022】
該回転支持体10の外周面に対して、リボン状ゴムストリップRを巻き付けて積層する積層装置は、次の構成を備えてなる。
【0023】
符号20は、前記回転支持体10と対向して配置されたリボン状ゴムストリップRの供給装置としての押出機であり、ヘッド部21の先端に有する口金22から、インナーライナー、トレッド、サイドウォール、リムストリップ等の成形対象のタイヤ用ゴム部材に応じた所定の断面形状のリボン状ゴムストリップRを前記回転支持体10に向かって押し出し供給するように設けられている。ゴムストリップRは、この例では、図4に示すように、幅方向両端部が薄肉状をなし中央部ほど厚肉に形成された断面形状、特には断面三角形状とされている。
【0024】
前記押出機20は、前記回転支持体10に対して軸方向に相対的にトラバース移動可能に設けられている。これにより、前記押出機20より押し出されるリボン状ゴムストリップRは、前記回転支持体10の周面に向かって連続して供給されるとともに、前記のトラバース移動と回転支持体10の回転に伴って、トラバース移動の進行方向B1の後側で重なり部を持たせながら巻き付けられ積層されるようになっている(図2,3参照)。
【0025】
前記ゴムストリップRの巻き付け時のトラバース移動は、回転支持体10の回転とともに連続的に実施してもよく、あるいはまた、回転支持体10が一回転する毎に断続的に実施してもよい。前者の場合、ゴムストリップRは、回転支持体10の周方向に対してわずかに傾斜した状態で螺旋状に巻き付けられる。一方、後者の場合、ゴムストリップRは、回転支持体10の1回転毎にトラバース移動しながら、即ち幅方向に1ピッチ分ずらされながら(ピッチ送り部52)、回転支持体10の周方向に平行に巻き付けられる(平行巻き部51)。この例では、図2に示すように後者としている。
【0026】
なお、該ゴムストリップRの巻き付け時のトラバース移動は、前記押出機20を回転支持体10に対してその軸方向に移動させる場合のほか、回転支持体10を軸方向に移動させてもよい。
【0027】
前記ゴムストリップRの供給装置としては、前記の押出機20には限らず、別工程で押し出し成形されて給送されてくるゴムストリップRを連続して送出し供給するように構成した供給装置の場合もある。
【0028】
そして、前記のように供給されるゴムストリップを巻き付け成形するのに使用する圧着装置は、次の構成を備えてなる。
【0029】
符号30は、前記押出機20のヘッド部21に連結固定された支持ブラケット23により支持された押さえロールであり、押出機20より押し出されて供給されるゴムストリップRを押圧できるように配設されている。この押さえロール30は、ゴムやポリウレタン等の押圧に適した弾性を有する弾性体よりなる円筒状のロール体31を、軸支部材35により、回転支持体10の周面に対し平行に軸支することで構成されている。
【0030】
押さえロール30は、前記支持ブラケット23に取付けられたエアシリンダー等の進退動作用のアクチュエータ33により、前記回転支持体10の周面に向かって進退自在に支持されており、ゴムストリップRの巻き付け時に進出動作することにより、前記ゴムストリップRの巻き付き位置において該ゴムストリップRを押圧するように設けられている。
【0031】
前記ロール体31は、平面よりみて押出機20の口金22から押し出されるゴムストリップRの幅より大きい軸方向幅を持ち、ゴムストリップRの全幅を押圧可能なように、該ゴムストリップRの対応位置に配設されている。
【0032】
符号40a,40bは、押さえロール30による前記押圧位置の直後の領域部分において、ゴムストリップRを押圧するように配された2つのステッチングロールであり、それぞれ押出機20の口金22から回転支持体10の周面に向かって押し出され供給されるゴムストリップRの幅方向センターCを挟んで前記トラバース移動の進行方向B1の前後に並んで配設されている。
【0033】
図3に示すように、前記2つのステッチングロール40a,40bは、それぞれのロール体41,41が前記幅方向センターCを中間にして隣接して並列配置されて軸支部材45、45により回転自在に軸支されている。また、前記2つのステッチングロール40a,40bは、それぞれ前記支持ブラケット23に取付けられたエアシリンダー等の進退動作用のアクチュエータ43,43により各々独立して押圧動作するように支持されている。そして、前記トラバース移動の進行方向に合わせてその進行方向後側になるステッチングロール40a又は40bが押圧動作することにより、回転支持体10上に巻き付け積層される前記ゴムストリップRの後側になる部分を押圧するように設けられている。
【0034】
詳細には、図4に示すように、トラバース移動の進行方向が図中で左側のB1のときには、右側に位置する進行方向後側のステッチングロール40bを使用し、該ステッチングロール40bを押圧動作させて、ゴムストリップRの進行方向後側の部分(右側部分)を押圧する。一方、トラバース移動の進行方向が図中で右側のB2のときには、左側に位置する進行方向後側のステッチングロール40aを使用し、該ステッチングロール40aを押圧動作させて、ゴムストリップRの進行方向後側の部分(左側)を押圧するように構成されている。
【0035】
ステッチングロール40a,40bは、その幅がゴムストリップ幅wの1/2以上であり、この例ではゴムストリップ幅wの半分の幅w/2に設定されている。これにより、ステッチングロール40a,40bは、ゴムストリップRの前記進行方向後側において、好ましくは端縁からゴムストリップ幅wの1/4〜1/2幅、より好ましくは半幅分w/2を押圧する。なお、ステッチングロール40a,40bの材質としては、特に限定されず、ゴムやポリウレタン等の弾性体の他、金属製であってもよい。
【0036】
前記2つのステッチングロール40a,40bは、また、回転支持体10に巻き付けられた最終周のゴムストリップRに対して進行方向後側のステッチングロール40a又は40bが押圧動作した後に、少なくともトラバース移動の進行方向前側のステッチングロール40b又は40aが押圧動作するように構成されている。すなわち、ゴムストリップRの巻き付けが終了し、その最終周のゴムストリップRに対してそれまでと同様に進行方向後側のステッチングロール40a又は40bでの押圧が終了した後、当該最終周のゴムストリップRに対して、更に、進行方向前側のステッチングロール40b又は40aでの押圧を行うか、あるいはまた、2つのステッチングロール40a,40bの両方を使ってゴムストリップRの全体にわたる押圧を行うように構成されている。
【0037】
図6(a)に示すように、ステッチングロール40a,40bは、周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条46と溝条47が外周面の全周にわたって交互に設けられてなる。この例では、突条46と溝条47は、周方向に垂直、即ち幅方向に平行に延びており、それぞれ周方向に所定間隔をおいて交互に設けられている。図7(a)に示すように、2つの突条46,46の間で形成される溝条47は、幅方向の中央部47cで浅く、両端部47eで深く設定されている。なお、特に限定するものではないが、図7(b)に示す幅方向中央部において、突条46の高さh(溝条47の深さと同じ)及び幅i、並びに溝条47の幅jは、ともに2mm以下であることが好ましく、より好ましくはともに0.5〜1.0mmである。
【0038】
突条46と溝条47は、ステッチングロール40a,40bの周方向に対して交差する方向に延びていれば、図6(b)に示すように、幅方向に対して傾斜した方向に延びるものであってもよい。幅方向に対する傾斜角度は、特に限定されないが、±45°以下であることが好ましい。
【0039】
上記の構成の積層装置を備える成形装置により、タイヤを構成する少なくとも一つのゴム部材を成形する方法について説明する。
【0040】
成形は、ゴムストリップ供給装置としての押出機20から押し出されるリボン状のゴムストリップRを、回転支持体10の回転と該回転支持体10に対する押出機20の相対的なトラバース移動により巻き付けて積層する。その際、本実施形態では、ゴムストリップRの巻き付けピッチPをゴムストリップRの半幅w/2以下に設定して(P≦w/2、図5参照)、ゴムストリップRにおけるトラバース移動の進行方向B1の後側の重なり代(重なり部の幅)を大きくしている。
【0041】
成形に際しては、ゴムストリップRの前記回転支持体10の周面に対する巻き付き位置、すなわち押出機20から供給されたゴムストリップRが回転支持体10に当接して巻き付き始める位置において、前記押さえロール30によりゴムストリップRを押圧し圧着する。
【0042】
そして、前記の押圧直後の領域部分においては、左右いずれのトラバース移動方向における巻き付けの場合においても、前記2つのステッチングロール40a,40bのうち、前記トラバース移動の進行方向の後側になる一方のステッチングロール40a又は40bを押圧動作させる。例えば、図5に示すような進行方向B1に対しては、その進行方向後側になる右側のステッチングロール40bを押圧動作させて、該ゴムストリップRの進行方向B1の後側の部分を押圧し圧着する。トラバース移動の進行方向が前記とは反対方向B2の場合は、その進行方向後側になる左側のステッチングロール40aを押圧動作させて、前記同様に進行方向後側の部分を押圧し圧着する(図4参照)。
【0043】
これにより、図5に示すように、ゴムストリップRの重なり部となる進行方向後側の部分をステッチングロール40bにより面で押さえることができるため、ゴムストリップR,R同士の間に空隙を生じさせないように充分に圧着することができ、各ゴムストリップR間のエアの抱え込みを抑制することができる。特に、ステッチングロール40a,40bがゴムストリップRの半幅w/2と同等の幅を有し、これを用いて進行方向後側の部分を押圧することにより、一周前のゴムストリップRの半幅(頂点)を越えて突出するゴムストリップRの後端Rxまで押さえることができ、エアの抱え込みをより一層好適に抑制することができる。
【0044】
また、このようにゴムストリップRの進行方向後側の部分を押圧する場合、進行方向前側の部分は、その巻き付け直後には押圧されないが、その次の周において、当該次の周の進行方向後側の部分を押圧するときに、同時に押圧される。すなわち、一周遅れではあるが、順次に押圧されるので、ゴムストリップRの積層体の断面形状を、目標とするプロファイルに沿った形状としやすく、よって、エア残りのない安定した巻き付けを行い易い。
【0045】
また、ステッチングロール40a,40bの外周面には、上記のように突条46と溝条47が交互に設けられているため、該ステッチングロール40a,40bで押圧することにより、ゴムストリップRの進行方向後側部分の表面には、図8に示すように、突条46によって凹溝50が周方向に所定間隔をおいて順次転写し形成される。かかる凹溝50は、ゴムストリップRの平行巻き部51とピッチ送り部52に関わらず、周上に同一方向の凹状模様として形成されるので、エアの排出路が寸断されずに確保することができる。
【0046】
図9は、ゴムストリップRの巻き付け方法の一例を説明するための図である。この例は、トラバース移動の往復によりゴムストリップRを複数層巻する例であって、往復それぞれのトラバース移動の進行方向後側のステッチングロール40a又は40bによりゴムストリップの進行方向後側部分をそれぞれ押圧する。詳細には、回転支持体10の幅方向中央部をゴムストリップRの巻始め位置にして、トラバース移動の往復により該ゴムストリップRを複数層巻する。
【0047】
まず、図9(a)に示すように、前記中央部から端縁部に至る1層目のトラバース移動時は、図5と同様にその進行方向B1の後側になるステッチングロール40bを押圧動作させる。その際、重なり合うゴムストリップR,R間の空気は、図中の矢印Kで示すように上下に排出される。また、ステッチングロール40bによる押圧により、ゴムストリップRの表面、特には第1層L1の巻き付け後に露出する第1層L1の外周面には、図8に示すように凹溝50が順次に転写される。
【0048】
そして、回転支持体10の端縁部で折り返した後の2層目のトラバース移動時は、図9(b)に示すように、前記とは反対の進行方向B2の後側のステッチングロール40aを押圧動作させる。その際、重なり合うゴムストリップR,R間の空気は、図中の矢印Kで示すように上下に排出される。また、このとき、第1層L1の外周面には上記のように凹溝50が転写形成されているので、第2層L2の巻き付け時に該凹溝50がエア排出路となって、第2層L2のゴムストリップR,R間の空気を第1層L1と第2層L2の間からも良好に排出することができる。そのため、ゴムストリップR,R間や、第1層L1と第2層L2の層間でのエア残りを低減することができ、複数層巻の場合においても、エア残りを低減しつつ、圧着して巻き付け積層することができる。
【0049】
このようにして2層目のトラバース移動が回転支持体10の端縁部まで到達することにより、この例ではゴムストリップRの巻き付けが終了する。その際、ゴムストリップRの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップReに対して、進行方向後側のステッチングロール40aを押圧動作させて、進行方向後側のゴム部分を押圧し圧着させる。このようにして上記通常の巻き付け動作が終了した後、ゴムストリップRを押出機20の口金22から切断してから、該最終周のゴムストリップReに対して、図9(c)に示すように、2つのステッチングロール40a,40bを押圧動作させて、前記トラバース移動の進行方向両側のゴム部分を押圧し圧着する。これにより、最終周のゴムストリップReにおいて進行方向前側の部分の浮き上がりをなくして、目標とするプロファイルに沿った形状とすることができ、エアの抱え込みを解消することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、ゴムストリップRを巻き付けてタイヤ用ゴム部材を積層成形する場合に、ゴムストリップRの重なり部となる進行方向後側の部分をステッチングロール40a又は40bで押圧するので、各ゴムストリップRの層間のエアの抱え込みを低減することができる。
【0051】
また、ゴムストリップRの巻き付けが終了した後、最終周のゴムストリップReに対し、少なくとも進行方向前側の部分をステッチングロール40a又は40bにより押圧するので、最終周のゴムストリップReにおける進行方向前側部分の浮き上がりを防止して、エアの抱え込みを低減することができる。なお、最終周のゴムストリップに対しては、例えば、その巻き付けに伴い進行方向後側のステッチングロールを押圧動作する際に、進行方向前側のステッチングロールも同時に押圧動作することも考えられる。しかしながら、一度に両側から押圧し圧着すると、エアの逃げ道を確保できない。そのため、本実施形態では、一旦、それまでと同様に進行方向後側のステッチングロールで押圧してエアを逃がした後に、最終周のゴムストリップReにおける浮き上がった状態の進行方向前側部分を目標のプロファイルに沿わせるために、更に少なくとも進行方向前側のステッチングロールで押圧するようにしており、上記不具合を解消することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、2つのステッチングロール40a,40bを回転支持体10に対し供給されるゴムストリップRの幅方向センターCを挟んで前後に並列して設けておくことにより、上記進行方向後側の部分と前側の部分の押圧を容易に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、ステッチングロール40a,40bの押圧によってゴムストリップRの表面に周上同一方向の凹溝50を順次形成するので、この凹溝50をエアの排出路として利用することができる。そのため、トラバース移動の往復によりゴムストリップRを複数層巻する場合に、下の層L1の表面に設けられた凹溝50がエアの排出路となって、その上の層L2を形成する際のエア残りを低減することができる。また、得られた積層体の外周面にも凹溝50が形成されるので、該積層体の上に他のゴム部材を積層する際にも該凹溝50をエアの排出路として利用することができ、他の部材間でのエアの残留を低減することもできる。また、この凹溝50はステッチングロール40a,40bによる押圧により回転支持体10上で形成されるものなので、事前に形成したおいた場合のように巻き付けまでの段階で消失するおそれもなく、ゴムストリップの積層時にエア排出路としての機能を十分に発揮することができる。
【0054】
なお、上記した実施形態においては、巻き付け積層するリボン状のゴムストリップRを、回転支持体10としての円筒状の成形ドラム上において巻き付ける場合について説明したが、回転支持体としては、前記成形ドラム上にカーカス層やベルト層あるいは他のゴム層を下地層として巻回積層されている場合も含んでおり、前記下地層上に前記ゴムストリップを前記同様に巻き付け積層することもできる。このほか、例えばサイドウォール等を円筒状のバンドケースやシェーピング変形させたグリーンタイヤに対して巻き付け積層する場合においても、前記バンドケースやグリーンタイヤを回転支持体として上記と同様にして実施することができる。また、従来の押出し部材とゴムストリップ部材の積層を組み合わせて所定のゴム部材を成形する場合においても実施することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、押さえロール30と2つのステッチングロール40a,40bとからなる圧着装置を、ゴムストリップ供給装置である押出機20の一部に、より詳細にはヘッド部21の近傍に一体に組み込んだが、それぞれ独立させて設けてもよい。例えば、ゴムストリップ供給装置と押さえロールを一体に設ける一方、2つのステッチングロールはこれらとは独立させて、周上の他の位置に配設してもよい。但し、一体に設ける方が、巻き付けピッチ、巻き付けパターン等の変化に対して、調整や複雑な制御及び位置決め装置を必要とせず、好ましい。
【0056】
なお、上記のようにゴムストリップを巻き付けてゴム部材を成形する際にエア残りを低減するための方策としては、例えば、押さえロールの硬度を下げてプロファイルに沿いやすくする方策や、ゴムストリップの材料配合を接着性の高いものに変更する方策や、巻き付け終了後に積層体の全体にわたってステッチャーを掛ける方策などがある。これらの方策は、例えば、押さえロールの寿命が短くなる、ゴム材料面から制約を受ける、巻き付け後のステッチャー工程に長時間を要する等の欠点はあるが、許容される範囲内でこれらの方策を適宜組み合わせて、上記実施形態に適用することを妨げるものではない。
【0057】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、成形用の回転支持体に対して相対的にトラバース移動する供給装置より供給されるリボン状ゴムストリップを、前記回転支持体の外周面に巻き付けて積層するタイヤ成形方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10…回転支持体 20…押出機(ゴムストリップ供給装置)
30…押さえロール 40a,40b…ステッチングロール
46…突条 47…溝条 50…凹溝
B1,B2…トラバース移動の進行方向 C…幅方向センター
R…ゴムストリップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、成形用の回転支持体に対して相対的にトラバース移動する供給装置より供給されるリボン状ゴムストリップを、前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持たせながら前記回転支持体の外周面に巻き付けて積層するタイヤ成形方法において、
前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で押さえロールにより前記ゴムストリップを押圧するとともに、その後の領域部分において、前記ゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分をステッチングロールにより押圧して圧着し、
前記ゴムストリップの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分を押圧し圧着した後、前記最終周のゴムストリップに対し少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側の部分をステッチングロールにより押圧し圧着する
ことを特徴とするタイヤ成形方法。
【請求項2】
前記ステッチングロールとして、ゴムストリップ幅のセンターを挟んでトラバース移動方向の前後に並んで個々に押圧動作可能に配された2つのステッチングロールを用い、
前記押さえロールによる押圧後の領域部分において、前記2つのステッチングロールのうち、前記トラバース移動の進行方向後側のステッチングロールを押圧動作させて、前記ゴムストリップの前記進行方向後側の部分を押圧して圧着し、
前記ゴムストリップの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側のステッチングロールを押圧動作させて前記ゴムストリップの前記進行方向後側の部分を押圧し圧着した後、前記2つのステッチングロールのうち、少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側のステッチングロールを押圧動作させて、前記最終周のゴムストリップに対し少なくとも前記進行方向前側の部分を押圧し圧着する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形方法。
【請求項3】
前記ステッチングロールは周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられてなり、前記ゴムストリップを押圧することで当該ゴムストリップの表面に凹溝を順次転写し形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ成形方法。
【請求項4】
複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、成形用の回転支持体に対して相対的にトラバース移動する供給装置より供給されるリボン状ゴムストリップを、前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持たせながら前記回転支持体の外周面に巻き付けて積層するタイヤ成形方法において、
前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で押さえロールにより前記ゴムストリップを押圧するとともに、その後の領域部分において、前記ゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分をステッチングロールにより押圧して圧着し、
前記ステッチングロールは周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられてなり、前記ゴムストリップを押圧することで当該ゴムストリップの表面に凹溝を順次転写し形成する
ことを特徴とするタイヤ成形方法。
【請求項5】
複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、リボン状ゴムストリップを成形用の回転支持体の外周面に巻き付けて積層する積層装置であって、
成形用の回転支持体と対向して配置され、該回転支持体に対して相対的にトラバース移動可能に設けられ、リボン状ゴムストリップが前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持って巻き付けられるように該ゴムストリップを前記回転支持体に向けて供給するゴムストリップ供給装置と、
前記ゴムストリップ供給装置から供給される前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で該ゴムストリップを押圧可能な押さえロールと、
前記押さえロールによる押圧位置の後の領域部分において、前記ゴムストリップ幅のセンターを挟んでトラバース移動方向の前後に並んで個々に押圧動作可能に配された2つのステッチングロールと、を備え、
前記2つのステッチングロールは、トラバース移動の進行方向後側のステッチングロールが押圧動作するように設けられるとともに、前記回転支持体に巻き付けられた最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側のステッチングロールが押圧動作した後に、前記2つのステッチングロールのうち、少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側のステッチングロールが押圧動作するように設けられた
ことを特徴とするゴムストリップの積層装置。
【請求項6】
前記2つのステッチングロールは、周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられてなることを特徴とする請求項5に記載のゴムストリップの積層装置。
【請求項7】
複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、リボン状ゴムストリップを成形用の回転支持体の外周面に巻き付けて積層する積層装置であって、
成形用の回転支持体と対向して配置され、該回転支持体に対して相対的にトラバース移動可能に設けられ、リボン状ゴムストリップが前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持って巻き付けられるように該ゴムストリップを前記回転支持体に向けて供給するゴムストリップ供給装置と、
前記ゴムストリップ供給装置から供給される前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で該ゴムストリップを押圧可能な押さえロールと、
前記押さえロールによる押圧位置の後の領域部分において、前記ゴムストリップ幅のセンターを挟んでトラバース移動方向の前後に並んで個々に押圧動作可能に配された2つのステッチングロールと、を備え、
前記2つのステッチングロールは、周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられ、かつ前記トラバース移動の進行方向後側のステッチングロールが押圧動作するように設けられた
ことを特徴とするゴムストリップの積層装置。
【請求項1】
複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、成形用の回転支持体に対して相対的にトラバース移動する供給装置より供給されるリボン状ゴムストリップを、前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持たせながら前記回転支持体の外周面に巻き付けて積層するタイヤ成形方法において、
前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で押さえロールにより前記ゴムストリップを押圧するとともに、その後の領域部分において、前記ゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分をステッチングロールにより押圧して圧着し、
前記ゴムストリップの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分を押圧し圧着した後、前記最終周のゴムストリップに対し少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側の部分をステッチングロールにより押圧し圧着する
ことを特徴とするタイヤ成形方法。
【請求項2】
前記ステッチングロールとして、ゴムストリップ幅のセンターを挟んでトラバース移動方向の前後に並んで個々に押圧動作可能に配された2つのステッチングロールを用い、
前記押さえロールによる押圧後の領域部分において、前記2つのステッチングロールのうち、前記トラバース移動の進行方向後側のステッチングロールを押圧動作させて、前記ゴムストリップの前記進行方向後側の部分を押圧して圧着し、
前記ゴムストリップの最終周の巻き付けに伴い、当該最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側のステッチングロールを押圧動作させて前記ゴムストリップの前記進行方向後側の部分を押圧し圧着した後、前記2つのステッチングロールのうち、少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側のステッチングロールを押圧動作させて、前記最終周のゴムストリップに対し少なくとも前記進行方向前側の部分を押圧し圧着する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形方法。
【請求項3】
前記ステッチングロールは周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられてなり、前記ゴムストリップを押圧することで当該ゴムストリップの表面に凹溝を順次転写し形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ成形方法。
【請求項4】
複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、成形用の回転支持体に対して相対的にトラバース移動する供給装置より供給されるリボン状ゴムストリップを、前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持たせながら前記回転支持体の外周面に巻き付けて積層するタイヤ成形方法において、
前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で押さえロールにより前記ゴムストリップを押圧するとともに、その後の領域部分において、前記ゴムストリップに対して前記進行方向後側の部分をステッチングロールにより押圧して圧着し、
前記ステッチングロールは周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられてなり、前記ゴムストリップを押圧することで当該ゴムストリップの表面に凹溝を順次転写し形成する
ことを特徴とするタイヤ成形方法。
【請求項5】
複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、リボン状ゴムストリップを成形用の回転支持体の外周面に巻き付けて積層する積層装置であって、
成形用の回転支持体と対向して配置され、該回転支持体に対して相対的にトラバース移動可能に設けられ、リボン状ゴムストリップが前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持って巻き付けられるように該ゴムストリップを前記回転支持体に向けて供給するゴムストリップ供給装置と、
前記ゴムストリップ供給装置から供給される前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で該ゴムストリップを押圧可能な押さえロールと、
前記押さえロールによる押圧位置の後の領域部分において、前記ゴムストリップ幅のセンターを挟んでトラバース移動方向の前後に並んで個々に押圧動作可能に配された2つのステッチングロールと、を備え、
前記2つのステッチングロールは、トラバース移動の進行方向後側のステッチングロールが押圧動作するように設けられるとともに、前記回転支持体に巻き付けられた最終周のゴムストリップに対して前記進行方向後側のステッチングロールが押圧動作した後に、前記2つのステッチングロールのうち、少なくとも前記トラバース移動の進行方向前側のステッチングロールが押圧動作するように設けられた
ことを特徴とするゴムストリップの積層装置。
【請求項6】
前記2つのステッチングロールは、周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられてなることを特徴とする請求項5に記載のゴムストリップの積層装置。
【請求項7】
複数のタイヤ用ゴム部材を含んで構成されるタイヤの少なくとも一つの前記ゴム部材について、リボン状ゴムストリップを成形用の回転支持体の外周面に巻き付けて積層する積層装置であって、
成形用の回転支持体と対向して配置され、該回転支持体に対して相対的にトラバース移動可能に設けられ、リボン状ゴムストリップが前記トラバース移動の進行方向後側で重なり部を持って巻き付けられるように該ゴムストリップを前記回転支持体に向けて供給するゴムストリップ供給装置と、
前記ゴムストリップ供給装置から供給される前記ゴムストリップの前記回転支持体周面に対する巻き付き位置で該ゴムストリップを押圧可能な押さえロールと、
前記押さえロールによる押圧位置の後の領域部分において、前記ゴムストリップ幅のセンターを挟んでトラバース移動方向の前後に並んで個々に押圧動作可能に配された2つのステッチングロールと、を備え、
前記2つのステッチングロールは、周方向に対して交差する方向に延びる複数の突条と溝条が外周面の全周にわたって交互に設けられ、かつ前記トラバース移動の進行方向後側のステッチングロールが押圧動作するように設けられた
ことを特徴とするゴムストリップの積層装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−111864(P2013−111864A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260496(P2011−260496)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
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