説明

タイヤインナーライナー用ゴム組成物

【課題】カーカス及びタイゴムとの接着性に優れるNBRをベースとするインナーライナー用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ニトリル含有率が35重量%以上であるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)100重量部に対し、下記式(1)で規定される化合物0.5〜10重量部及びポリハロゲン化ビニル5〜50重量部を含むことを特徴とするタイヤインナーライナー用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤインナーライナー用ゴム組成物に関し、更に詳細には、ニトリル含有率が高いアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)をベースとする、カーカス又はタイゴムとの接着性に優れ、空気透過性および破断特性にも優れたタイヤインナーライナー用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのインナーライナーに要求される最も重要な性能は、空気透過性が低いことである。一般的に、この性能を充たすポリマーとしてブチルゴムが使用されているが、ニトリル含有率の高いNBRは、空気透過性の点でブチルゴムを下回るものもある。従来、タイヤのインナーライナーとしてニトリル含有率の高いNBRを使用する発明は、例えば、下記の特許文献1など多数の発明が提案されているが、NBRはSP値(溶解度パラメーター)が天然ゴム(NR)等と著しく異なり、相溶しないため、これらゴム−ゴム間の接着性に問題があった。当該インナーライナー層とその内側にあるカーカス又はタイゴムとの接着性がよくないと、それらのパーツの界面で剥離を起こし、いわゆる“吹き抜け故障”の原因になるとされている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−260618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明では、ハロゲン基に反応する特定の式(1)で示される化合物とポリハロゲン化ビニルを併用添加したNBRを用いることで、空気透過性に優れ、かつカーカス又はタイゴムとよく接着するタイヤインナーライナー用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ニトリル含有率が35重量%以上であるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)100重量部に対し、下記式(1)で規定される化合物0.5〜10重量部及びポリハロゲン化ビニル5〜50重量部を含むタイヤインナーライナー用ゴム組成物が提供される。
【化1】

(式中、Zは、活性水素含有基を表し、Xは、置換基を有していてもよく、かつ、SO2、O、NおよびSからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい炭素数1〜24個の有機基を表し、Aは、活性水素基を有さず、かつ、置換基を有していてもよい炭素数1〜24個の有機基を表し、そしてnは、1〜4の整数を表す。)
【0006】
また、本発明によれば、ニトリル含有率が35重量%以上であるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)100重量部に対し、上記式(1)で規定される化合物0.5〜10重量部、ポリハロゲン化ビニル5〜50重量部及び窒素吸着比表面積が10〜70m2/gであるカーボンブラック30〜80重量部を含むタイヤインナーライナー用ゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、ニトリル含有率の高いNBRのベースゴムに対し、前記式(1)で示される化合物と、NBRと相溶するポリハロゲン化ビニルとをそれぞれ所定量配合すると、当該ゴム組成物自体が、空気透過性に優れ、かつカーカスやタイゴムとの接着性にも優れたゴム組成物となることを見出した結果、これをタイヤインナーライナー用ゴム組成物として使用することを提案するものである。
【0008】
本発明のタイヤインナーライナー用ゴム組成物のベースゴムとしては、ニトリル含有率が35重量%以上、好ましくは40〜43重量%のNBRが好ましく用いられる。このニトリル含有量が35重量%未満であると、所望の優れた空気透過性が得られないので好ましくない。
【0009】
本発明のタイヤインナーライナー用ゴム組成物に配合されるポリハロゲン化ビニル、例えばポリ塩化ビニルやポリ臭化ビニルなどは、所定のNBRとの相溶性が良好であり、これは、後記するように、先ず当該NBRに相溶して、同じく配合される前記式(1)で示される化合物と協働して、当該NBRをベースとするインナーライナーとそれに隣接するジエン系ゴムをベースとするカーカス又はタイゴムとの間に強固な接合を形成させる一の反応成分として用いられる。当該ポリハロゲン化ビニルは、ニトリル含有率が35重量%以上であるNBR100重量部に対し、5〜50重量部、好ましくは10〜25重量部の量で配合される。この配合量が5重量部未満では、所期の作用効果を発揮できず、逆に50重量部を超えると、破断特性が劣るようになるので好ましくない。
【0010】
本発明のタイヤインナーライナー用ゴム組成物に配合される前記式(1)で規定される化合物は、前記ポリハロゲン化ビニルと協働して、ニトリル含有率が35重量%以上であるNBRをベースとするインナーライナーとそれに隣接するジエン系ゴムをベースとするカーカス又はタイゴムとを共架橋させる働きをする、他方の成分として配合される。当該化合物は、ニトリル含有率が35重量%以上であるNBR100重量部に対し、0.5〜10重量部、好ましくは1〜7重量部の量で配合される。この配合量が0.5重量部未満では、所期の作用効果を発揮できず、逆に10重量部を超えると、ゴムの耐セット性が低下し、走行に伴ないライナーゲージが薄くなるので好ましくない。
【0011】
本発明のタイヤインナーライナー用ゴム組成物に配合される上記式(1)で示される化合物について、更に詳しく説明する。
【0012】
当該式中、Zは、活性水素含有基を表す。Zは、活性水素含有基であれば特に限定されないが、本発明で用いるNBR系インナーライナーゴムとジエン系カーカスゴム又はタイゴムとの接着性をより強化する点で、有する活性水素が1個または2個である活性水素含有基であることが好ましい。有する活性水素が1個または2個である活性水素含有基としては、例えば、チオール基、カルボキシル基、イミノ基、アミノ基が挙げられる。イミノ基としては、例えば、−NHR2(式中、R2は、炭素数1〜20個の有機基を表す。)が挙げられる。より具体的には、例えば、−NHC65などが挙げられる。
【0013】
また、Zで表される活性水素含有基は、本発明におけるゴム組成物が加硫される加硫温度を考慮して選択することもできる。例えば、Zがカルボキシ基のような電子吸引性の高い基である場合には、後述する熱解離(マレイミド化合物の脱離)が起こり易くなるため、加硫温度を低くすることができる。
【0014】
Xは、置換基を有していてもよく、かつ、SO2、O、NおよびSからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい炭素数1〜24個の有機基を表す。より具体的には、Xは、非環状脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基、複素環基、アルキル芳香族基などであるが、中でも芳香族基または複素環基が好ましい。Xの価数は、上記式(1)からも分るように(1+n)価である。置換基は、特に限定されない。
【0015】
Xとしては、例えば、エチレン基、ヘキサメチレン基(−(CH2)6−)、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、キシリル基、イミダゾール環を有する2価の基、ナフタレン環を有する2価の基、下記式(a)で表される2価の基、下記式(b)で表される3価の基が挙げられる。中でも、o−フェニレン基、p−フェニレン基、下記式(a)で表される2価の基、下記式(b)で表される3価の基、下記式(c)で表される2価の基が好ましい。
【0016】
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜24個の有機基を表す。)
【0017】
また、Xも、Zと同様に、本発明におけるゴム組成物が加硫される加硫温度を考慮して選択することができる。
【0018】
本発明で用いる前記式(1)で示される化合物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、チオール基と上記Zで表される活性水素含有基とを有する化合物と、下記式(2)で表されるマレイミド化合物とを用い、前記マレイミド化合物の炭素原子間の二重結合に前記チオール基を付加させる方法を用いることができる。
【0019】
【化3】

(式中、Aは、式(1)中と同様の意味である。)
【0020】
上記製造方法において、上記Zで表される活性水素含有基がチオール基よりも反応性が高いものである場合には、この活性水素含有基を適当な保護基で保護してから反応させるなどの方法を採ればよい。
【0021】
上述した製造方法に用いられるチオール基と上記Zで表される活性水素含有基とを有する化合物としては、例えば、チオサリチル酸、2−アミノエタンチオール、2−ピリジンチオール、4−ピリジンチオール、2−アミノベンゼンチオール、4−アミノベンゼンチオール、4−ヒドロキシベンゼンチオール、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、メタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4′−チオビスベンゼンチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ポリチオール(例えば、チオコールまたはチオールで変性されたゴムおよび/または樹脂)などが挙げられる。
【0022】
中でも、芳香族性チオール、複素環式チオールが、熱による解離を起こし易いという点で好ましい。具体的には、例えば、チオサリチル酸、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメルカプト−トリアジン、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが好適に挙げられる。特に、チオサリチル酸、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンは、固体で臭気がないため取扱い易いという点、および、熱による解離を起こし易いという点で好ましい。
【0023】
上述した製造方法に用いられる上記式(2)で表されるマレイミド化合物としては、従来公知のN−置換マレイミドとして公知のものが挙げられる。具体的には、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ジクロロヘキシルマレイミド等のN−アルキル基置換マレイミド;N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキル基置換マレイミド;N−フェニルマレイミド等のN−芳香族基置換マレイミドが好適に挙げられる。中でも、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが安価に入手することができる点で好ましい。
【0024】
上述した製造方法は、より具体的には、例えば、チオール基と上記Zで表される活性水素含有基とを有する化合物に、上記式(2)で表されるマレイミド化合物を、モル比で、0.90から1.10倍、好ましくは0.95〜1.05倍加え、有機溶媒中、室温から150℃で、1〜24時間攪拌する方法が、好適に挙げられる。
【0025】
前記有機溶媒は、チオール基と上記Zで表される活性水素含有基とを有する化合物および上記式(2)で表されるマレイミド化合物の両者を溶解することができるものであれば、特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドが好適に挙げられる。中でも、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミドが高い溶解性を示す点で好ましい。反応終了後、減圧下で有機溶剤を濃縮除去することにより本発明の化合物が得られる。
【0026】
本発明で用いる前記式(1)で示される化合物の好適な具体例としては、上述したチオール基と上記Zで表される活性水素含有基とを有する化合物と、上記式(2)で表されるマレイミド化合物とのそれぞれの具体例の組み合わせから得ることができる化合物が挙げられる。より具体的には、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンとN−フェニルマレイミドとから得ることができる下記式(3)で表される化合物、チオサリチル酸とN−フェニルマレイミドとから得ることができる下記式(4)で表される化合物、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンとN−フェニルマレイミドとから得ることができる下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化4】

【0028】
本発明の特定のNBRをベースゴムとするタイヤインナーライナー用ゴム組成物が、隣接するジエン系のカーカスゴムやタイゴムと強固に結合する反応機構について説明すると、次のようなものである。
【0029】
前記式(1)で示される化合物とポリハロゲン化ビニルを配合、混練した所定のNBRゴム組成物では、先ず、当該NBRとポリハロゲン化ビニルのビニル部分が相溶し、そのハロゲンが表面部に突出したNBRのハロゲン付加ゴム(NBR系ゴム)が形成される。これに、熱が加わると、このNBR系ゴムにおける付加ハロゲンと前記化合物の活性水素基とが反応して、当該化合物がNBR系ゴムの主鎖と結合した(下記式中の反応1)インナーライナー側のNBR系ゴムとなる。次いで、このインナーライナーと隣接するカーカスゴム又はタイゴムを構成するジエン系ゴムが当該インナーライナーのNBR系ゴムと接した状態で、更に加熱されると、当該ジエン系ゴムが含有する硫黄により架橋すると共に、前記NBR系ゴムの主鎖と結合した化合物から、熱により解離してマレイミド化合物が脱離して、チオール基を発生させ、発生したチオール基とジエン系ゴムの二重結合とが反応して結合する(下記式中の反応2)。このようにして、最終的に、インナーライナーを構成するNBR系ゴムとカーカスゴム又はタイゴムを構成するジエン系ゴムとの両者が共架橋することによって強固に結合する。
【0030】
【化5】

【0031】
本発明のタイヤインナーライナー用ゴム組成物の他の実施態様では、ニトリル含有率が35重量%以上であるNBR100重量部に対し、前記式(1)で規定される化合物0.5〜10重量部及びポリハロゲン化ビニル5〜50重量部に加えて、更に窒素吸着比表面積が10〜70m2/gであるカーボンブラック30〜80重量部、好ましくは40〜60重量部を更に補強剤として添加すると、本発明の前記作用効果に加え、更に耐クラック成長性及び耐疲労性などが向上するので好ましい。当該カーボンブラックの配合量が30重量部未満であると、所期の補強効果が発揮されず、逆に80重量部を超えると、耐疲労性が低下するため好ましくない。
【0032】
本発明におけるタイヤインナーライナー用ゴム組成物には、上記必須及び選択成分に加えて、通常、タイヤ用ゴム組成物に配合される加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤などの各種配合剤を配合することができる。
【0033】
本発明のタイヤインナーライナー用ゴム組成物は、汎用のゴム用混練機、例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、次いで押出機によって所要の厚さに押出してゴムシートとし、これを適当な大きさに切断して、本発明におけるカーカス又はタイゴムとの接着性に優れ、空気透過性および破断特性にも優れたタイヤインナーライナーとすることができる。
【実施例】
【0034】
以下、標準例、実施例および比較例によって本発明を更に説明するが、本発明の技術的範囲をこれら実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
【0035】
化合物1の合成
チオサリチル酸15.4g(0.1モル)、N−フェニルマレイミド17.3g(0.1モル)およびメチルエチルケトン150gを反応器に仕込み、90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応物を減圧下90℃で濃縮して、前記式(4)で表わされる化合物1を32.5g得た(収率99%)。
【0036】
化合物2の合成
2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン23.6g(0.1モル)、N−フェニルマレイミド34.6g(0.2モル)およびジメチルホルムアミド150gを反応器に仕込み、90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応物を減圧下100℃で濃縮して、前記式(5)で表わされる化合物2を56.3g得た(収率97%)。
【0037】
各種試験法
1)カーカスとの剥離試験: JIS K6256(布とゴムとの剥離試験)に準拠して、以下で作製した試験片を50mm/分の速度で剥離することによって剥離試験を行った。結果は、標準例を100として指数で表示した。指数が大なる程剥離力が大きいことを示す。併せて、剥離後の剥離面における剥離形態を目視で観察した。
【0038】
試験片の作製: 先ず、以下の表2の標準例、比較例および実施例における配合組成より成る各例の未加硫ゴム組成物を得、これらを、糸の打ち込み本数50本/5cmで0.8mm厚の補強用カーカス材に対して1.2mm厚のゴムシートにそれぞれ押出して補強用カーカス材に積層した。次いで、この各積層物上のゴムシート側に以下の表1の配合組成よりなるカーカス材用未加硫ゴム組成物をそれぞれ1.2mm厚のシートとして同様に押出し、積層した。更に、これらの各積層物側に、糸の打ち込み本数50本/5cmで0.8mm厚の補強用カーカス材を裏打ち、積層した。サンプルは、最終的に、糸の長手方向に150mm以上とし、幅を100mmとなるように切断して得た。この時、試験機の掴みしろとするために長手方向に端から60mmまでセロファンを挟み込んでおいた。これらの積層ゴム片を150℃で45分間加硫し、16時間放置した後、幅が25mmとなるように切断して、試験片とした。
【0039】
【表1】

2)通気度: JIS K7126の「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法(A法)」に準拠して、以下で作製した試験片を用い、試験気体:空気(N2:O2=8:2)、試験温度:30℃にて試験した。標準例を100として指数で表示した。値が低い程、空気透過性が小さく、良好であることを示す。
【0040】
試験片の作製:測定するゴムの未加硫物を、ラボロールで1mm厚以下のシートとし、このシートより必要な形状を適宜切り出し、これをモールドでプレスしつつ、150℃で45分間、加硫し、直径100mm、厚さ0.7mmの試験片とした。
【0041】
3)切断時伸び(EB): JIS K6251に準拠して、以下の作製による試験片を用いて、500m/分の引張速度の条件下で、切断時伸びを測定した。
試験片の作製: 先ず、以下の表2の標準例、比較例および実施例における配合組成より成る各例の未加硫ゴム組成物を得、次いでこのゴム組成物を15cm×15cm×0.2cmの金型中で150℃、40分間プレス加硫して試験片(ゴムシート)を作製した。
【0042】
標準例、実施例及び比較例
上記試験の結果を以下の表2に示す。
【表2】

【0043】
表2の結果によれば、本発明になる実施例1〜8のゴム組成物では、カーカスとの接合強度、耐空気透過性および破断強度の点でいずれも優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0044】
よって、本発明のゴム組成物は、これをタイヤインナーライナー用ゴム組成物として使用すれば、極めて有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリル含有率が35重量%以上であるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)100重量部に対し、下記式(1)で規定される化合物0.5〜10重量部及びポリハロゲン化ビニル5〜50重量部を含むことを特徴とするタイヤインナーライナー用ゴム組成物。
【化1】

(式中、Zは、活性水素含有基を表し、Xは、置換基を有していてもよく、かつ、SO、O、NおよびSからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい炭素数1〜24個の有機基を表し、Aは、活性水素基を有さず、かつ、置換基を有していてもよい炭素数1〜24個の有機基を表し、そしてnは、1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(1)で規定される化合物のZがカルボキシル基、イミノ基又はアミノ基である、請求項1に記載のタイヤインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項3】
窒素吸着比表面積が10〜70m2/gであるカーボンブラックを更に含む、請求項1又は2に記載のタイヤインナーライナー用ゴム組成物。

【公開番号】特開2007−224140(P2007−224140A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46689(P2006−46689)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】