タイヤコード処理装置
【課題】タイヤコードのディップ処理などの加工処理を無休止連続運転で行うことができ、さらにコードのジョイントが製品に混入することを防止できるようにするタイヤコードの処理方法の提供。
【解決手段】タイヤコード11を走行させつつ該コード11を処理する処理装置本体17と、前記処理装置本体17にタイヤコード11を供給する供給装置19と、処理済タイヤコードの巻き取る巻き取り装置20を備えたタイヤコード処理装置10において、前記供給装置19から供給されるタイヤコード11のジョイント36を検出し、そのジョイント検出信号を前記巻き取り装置20に発信するジョイント検出器21を設け、前記巻き取り装置20が2軸の巻き取り軸18a、18bを有し、前記ジョイント検出信号に基づいて前記処理済みコードの巻き取り軸を18aから18bに自動交換する。
【解決手段】タイヤコード11を走行させつつ該コード11を処理する処理装置本体17と、前記処理装置本体17にタイヤコード11を供給する供給装置19と、処理済タイヤコードの巻き取る巻き取り装置20を備えたタイヤコード処理装置10において、前記供給装置19から供給されるタイヤコード11のジョイント36を検出し、そのジョイント検出信号を前記巻き取り装置20に発信するジョイント検出器21を設け、前記巻き取り装置20が2軸の巻き取り軸18a、18bを有し、前記ジョイント検出信号に基づいて前記処理済みコードの巻き取り軸を18aから18bに自動交換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤコードの処理装置に関し、無休止連続運転でタイヤコードのディップ処理などの加工処理を行うことができるタイヤコードの処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気入りタイヤの補強材として使用されるナイロン、ポリエステル等の有機繊維タイヤコードは、耐久性、耐摩耗性等のタイヤ性能を維持、向上する上で、コード材料とゴム間との接着性、コード特性が重要であり、これらの特性を付与するため接着処理液(ディップ液)に生コードを浸漬した後熱処理を施す、いわゆるディップ処理が行われている。
【0003】
シングルコードを連続ディップ処理する場合、図13に示すようなディッピングマシン100により、まず、コード供給装置109に横取りに搭載された繰り出しボビン103から引き出された生コード101をディップ液を貯留したディップタンク104中で浸漬ロール105を通してディップ液中を通過させディッピングすることによって、ディップ液を生コード101に付着させる。ディッピングによりディップ液を含浸された生コード101は絞りロール106によって引き上げられ、長さ方向に張力をかけた状態で乾燥、熱処理工程107に搬送され、ベーキングされ接着性と目的のコード特性に調整された処理コード102となり、巻き取り装置110により巻き取りボビン108にロール状に巻き取られる。
【0004】
従来、繰り出しボビン103の生コード101が無くなると、ボビン103を交換し新たな生コード101をジョイントしディップ処理を継続していたが、ボビン103の交換はそのタイミングを計りながらの人手にたより、またコード101をジョイントするために一時装置100を停止する必要があった。従来、この装置の一時停止を回避するには、フェスツーンが用いられていたが、装置の大型化、設備費用の増大などの問題がある。
【0005】
ボビンに巻かれたコードが、リング、トラベラーを通り糸ガイドを通じて導かれ、連続的にコードを引き出す縦取り構成のコード取り出し方法が、特許文献1に記載されているが、ボビンの残コードが少なくなる(数百m)と、ボビンからのコードがトラベラーに追従できなくなりコード切れを発生するという問題が見られる。
【0006】
また、コードのジョイントがタイヤなどの製品に混入すると、その部分の補強効果が不均一になりやすく、品質上ジョイントは除去することが好ましいが、前記巻き取りボビン108にロール状に巻き取られると、ジョイントの位置が不明となって製品中に混入してしまうことがある。
【特許文献1】特開2004−316049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、タイヤコードのディップ処理などの加工処理を無休止連続運転で行うことができ、さらにコードのジョイントが製品に混入することを防止できるように巻き取り側でのジョイント位置を明確にできるタイヤコードの処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タイヤコードを走行させつつ該タイヤコードを加工処理する処理装置本体と、前記処理装置本体にタイヤコードを供給する供給装置と、処理済タイヤコードを巻き取る巻き取り装置を備えたタイヤコード処理装置において、前記処理装置本体から供給されるタイヤコードのジョイントを検出し、そのジョイント検出信号を前記巻き取り装置に発信するジョイント検出器を設け、前記巻き取り装置が複数軸の巻き取り軸を有し、前記ジョイント検出信号に基づいて前記処理済みコードの巻き取り軸を自動交換する交換装置を有することを特徴とするタイヤコード処理装置である。
【0009】
本発明のタイヤコード処理装置においては、前記タイヤコードの供給装置が、タイヤコードを巻いた複数の巻物を配し、引き出し中の前記巻物に巻かれた前記タイヤコードの巻き始め部と、次に引き出される巻物に巻かれた前記タイヤコードの巻き終わり部とをジョイントし、前記引き出し中の巻物と次に引き出される巻物とを並列し、前記引き出し中の巻物から前記タイヤコードを該巻物の軸方向に引き出し、引き出し中の前記巻物に巻かれた前記タイヤコードが無くなると同時に前記ジョイントを介して前記次に引き出される巻物からタイヤコードを連続して該巻物の軸方向に引き出し、前記複数の巻物から前記タイヤコードを連続的に前記処理装置本体に供給するものとすることができる。
【0010】
また、前記巻物端部に該巻物の中心を軸として回転する回転自在の回転子が配され、前記回転子は引き出された前記タイヤコードに架かり従動して回転し、前記タイヤコードの引き出しの停止と同時に前記回転を停止し、前記回転子が、前記タイヤコードを前記巻物端部外周の当接部と巻物のコード表層部との間において該タイヤコードに張力を付与し静止させるものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コード供給側でジョイントするための時機、時間などに制約を受けることがなく、またジョイントを行うのに装置を一時停止する必要がないので、タイヤコード処理装置の無休止連続運転が可能となり、装置稼働率の向上、運転経費の節減に寄与することができる。また、巻き取り側でコードジョイントの位置が明確になるのでジョイントが製品内に混入することを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。本実施形態においては、タイヤ用シングルコードのディップ処理加工の例に従い説明するが、本発明は本例に限定されるものではない。
【0013】
タイヤコードのディップ処理工程は、図1に示すように、ディッピングマシン10により、レットオフ装置19に搭載された繰り出し側のフランジ付きボビン13から引き出されたタイヤコード11をディップ液を貯留したディップタンク14中で浸漬ロール15を通してディップ液中を通過させディッピングすることによって、ディップ液をタイヤコード11に付着させる。ディッピングによりディップ液を含浸されたタイヤコード11は絞りロール16によって引き上げられ、長さ方向に張力をかけた状態で乾燥、熱処理工程17に搬送され、ベーキングされ接着性とコード特性が調整された処理コード12となり、巻き取り装置20により巻き取りボビン18aにロール状に巻き取られる。
【0014】
タイヤコード11が引き出されるボビン13は、図2に示すように、ボビン13の両側部にフランジ21を有するもので、レットオフ装置19に非回転状態で保持されている。
【0015】
なお、ボビン13は両側部にフランジ21を有さないタイプ、例えば、筒状をなすパーン、コーン、チーズなどを用いることもできる。この場合はフランジを代用する円盤状の板体をコード引き出し側のボビン側面に配してボビンに固定し使用すればよい。
【0016】
ボビン13は、レットオフ装置19に立設された支持軸23にボビン中心孔22を挿入し、レットオフ装置19に縦置きに配置され、非回転状態となっている。なお、ボビン13は保持具等によりレットオフ装置19に固定してもよく、またボビン自体の自重あるいはレットオフ装置19とフランジ21との摩擦力により非回転状態に保持されてもよい。
【0017】
前記支持軸23には、軸23を中心として、すなわちフランジ21の中心を軸として、フランジ21上を滑りながら回転する回転自在の回転子24が設けられている。
【0018】
タイヤコード11は、ボビン13からボビン軸方向に引き出されることで、フランジ21の外周に沿って周回し、引き出されたタイヤコード11が回転子24に架かって回転子24をタイヤコード11に従動させながら回転させる。
【0019】
そして、タイヤコード11の引き出しが停止すると同時に、回転子24は回転を停止し、これによりタイヤコード11は回転子24によりフランジ21の端部外周とボビン13のタイヤコード表層間で張力を与えられた状態で停止・保持されるようにする。すなわち、タイヤコード11の引き出しが停止した時に、タイヤコード11に弛みが生じてボビン13の下方にずり落ちないように、回転子24の回転停止により生じる惰力によってタイヤコード11に張力を与えるものである。
【0020】
上記タイヤコード11に張力を与えるには、回転子24の設定が重要となる。すなわち、タイヤコード11の引き出し条件と、回転子24及びフランジ21表面との摩擦抵抗が要因となる。
【0021】
回転子24の材料、形状は、特に限定されることはない。材料としては、鉄、銅、アルミニウム、真鍮などの金属、ナイロン、ポリエステルなどの合成樹脂、セラミックなどが挙げられる。形状は、図3に示すように、(a)板状体に回転孔25を空けたもの、(b)棒状体に回転孔25を設けたもの、(c)先端部の重量を大きくしたものなどが挙げられる。
【0022】
中でも、回転子24とフランジ21表面との摩擦抵抗を任意、かつ容易に調整できる観点から、回転子24の形状、重量など摩擦力に係る条件を調整しやすい金属製ワイヤーが好適であり、具体的には、直径1〜4mmの鉄線、銅線、アルミニウム線が挙げられる。
【0023】
これらの回転子24は、フランジ21上で回転孔25を支持軸23に挿入することで、複数の回転子から選択し摩擦抵抗を調整することができる。
【0024】
また、フランジ側の摩擦抵抗を回転子24に対して均一するために、図4に示すように、フランジ21と回転子24との間に、円盤状板体26を配置することができる。
【0025】
円盤状板体26としては、その表面の摩擦抵抗が均一なものであれば特に限定されることはなく、鉄、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、真鍮などの金属板、ナイロン、ポリエステルなどの合成樹脂板、セラミック板などが挙げられるが、摩擦抵抗の均一性、加工の容易さ、価格の点から厚み0.05〜3mm程度の金属板、合成樹脂製フィルムを好適に使用することができる。
【0026】
さらに、上記摩擦抵抗は、タイヤコード11の太さなどのコード構造、引き出し速度やフランジ外径などを考慮し、設定することができる。
【0027】
また、上記円盤状板体26は、図3(d)に示すように、円盤状板体26の周縁部の一部に切り込み26aを設け、この切り込み26aにコード11を通して回転子とすることもできる。
【0028】
本発明では、上記タイヤコードの供給方法により、複数のボビンに巻かれたタイヤコードをタイヤコード加工装置などに供給する場合に、ボビン間のコードをジョイントするために装置を一時停止させることなくコードを加工装置に連続供給することができる。
【0029】
図5〜図7は、2個のボビン13A、13Bからタイヤコード11をタイヤコード加工装置、例えば、上記ディップ処理装置10に連続供給する場合のレットオフ装置を示している。
【0030】
図5に示すように、ボビン13Aからタイヤコード11が引き出されディップ処理装置10に供給されており、次にタイヤコード11が引き出されるボビン13Bが並列して配置されている。ボビン13A、13Bは縦置きでレットオフ装置19の支持軸23に中心孔22が挿入され、非回転状態になっている。
【0031】
引き出し中のボビン13Aに巻かれたタイヤコード11の巻き始め部11aと、次に引き出されるボビン13Bに巻かれたタイヤコード11の巻き終わり部11bとがジョイント36されている。
【0032】
ボビン13A、13Bには、上記で説明した通り、フランジ21の中心を軸として、フランジ21外周上を滑りながら回転する回転自在の回転子24が設けられ、タイヤコード11は、ボビン13からボビン中心の垂直方向に引き出されることで、フランジ21の外周に沿って周回し、引き出されたタイヤコード11が回転子24に架かって回転子24をタイヤコード11に従動させながら回転させている。
【0033】
これにより、ディップ処理装置10にトラブルなどが発生し装置が停止した際に、タイヤコード11の引き出しが停止されても、それと同時に回転子24が回転を停止し、タイヤコード11は回転子24によりフランジ21の端部外周とボビン13のタイヤコード表層間で張力を与えられた状態で停止・保持されるので、タイヤコード11に弛みが生じてボビンの下方にずり落ちることがなく、トラブル復帰時の運転再開をスムーズに行うことができる。
【0034】
そして、ボビン13Aのタイヤコード11が無くなると、図7に示すようにジョイント36を介して連結されたボビン13Bのタイヤコード11が自動的に引き出され、前記ボビン13Aの場合と同様にタイヤコード11を連続してディップ処理装置10に連続供給することができる。
【0035】
また、複数のボビンに巻かれたタイヤコードを連続的に供給する場合には、ボビンから引き出されるタイヤコードが常に該ボビン中心の垂直方向に引き出されることが好ましい。
【0036】
このため、図8に示すように(図8ではボビンが2本の場合を示す)、引き出し中のボビン13Aに巻かれたタイヤコード11が無くなると、ジョイント36を介して連結されたボビン13Bのタイヤコード11が自動的に引き出される際に、ボビン13Aの位置に次にコード11が引き出されるボビン13Bの位置を変更することにより、ボビン13A、Bから引き出されるタイヤコード11を常に該ボビン中心の垂直方向に引き出すことができる。
【0037】
上記ボビン13A、13Bの位置の変更は、ボビン13A、13Bの間に設けたタイヤコード11の引き出し交換時にコード11を検知するセンサー37を設けて自動的にボビン13A、13Bを搭載したスタンド29を左右にスライドさせる、スタンド29を回転させるなどの方法によりボビン13A、13Bの位置交換を行うことができる。
【0038】
さらに、ボビン13Bから装置10にタイヤコード11を供給中に、ボビン13A側の空ボビンを外し新たなタイヤコード11の満巻きボビン13Aを装着し、その巻き終わり部と引き出し中のボビン13Bのタイヤコード11の巻き始め部とをジョイントしておけば、ボビン13A、B間でタイヤコード11の交互供給を繰り返し、ディップ処理装置10へのタイヤコード11供給を無限に連続することができる。
【0039】
なお、レットオフ装置19上でのボビン13の配置は、上記縦置きで使用できるが、ボビンを非回転に維持し、コードをボビン軸方向に引き出せるものであれば、図8(a)に示す横置きでもよく、また(b)に示す中央寄りに傾斜配置したものでもよい。また、3本以上のボビンを使用することもできる。
【0040】
次に、タイヤコード11に発生したコードジョイント36を検出し、その検出信号を巻き取り装置20に発信する異常部検出装置(ジョイント検出器)21と、この検出信号に基づいて巻き取り軸を自動交換する2軸巻き取り装置20について説明する。
【0041】
図1に示すディップ処理装置10において、乾燥、熱処理工程17と巻き取り装置20の間に、本発明に係るタイヤコードの異常部検出装置21が設けられている。なお、異常部検出装置21の設置位置は、図1に示す位置に限定されない。
【0042】
図10は、タイヤコードの異常部検出装置21の1例を示すものである。
【0043】
タイヤコードの異常部検出装置21は、図1に示すように、乾燥、熱処理工程17を終えて走行する処理コード12の正常部を通過させ、前記処理コード12正常部よりも径大のコード異常部36を通過させないスリット123を設けたスリット板122を有している。
【0044】
ここで、コード正常部とは、コードジョイント、フィラメントの飛び出しなどの撚り不良、コードの捻れなどがない、いわゆる正常なコード径の範囲にあるものを指し、コード異常部とは、前記コードジョイント、フィラメントの飛び出しなどの撚り不良、コードの捻れなどの発生によってコード径が正常部よりも大となった部分を指し、具体的には、正常部コード径の1.1倍以上のコード径にある部分を言う。
【0045】
上記タイヤコードの異常部検出装置21は、図11に示すように、コード異常部(ジョイント)36(以下、ジョイントと言う)がスリット板122に到達すると、ジョイント36はスリット123の間隙を通過することができず、ジョイント36がスリット123を引っ掛けるようにしてスリット板122を回動軸124を支点にしコード走行方向にドアー状に回動させる。
【0046】
回動軸124としては、例えば、ディップ処理装置10に設けた固定柱40に対して、異常部検出装置21を回動自在に接続する蝶番などが挙げられる。
【0047】
図12は、スリット板122の1例を示す側面図(a)及び正面図(b)である。スリット板122は、スリット基板132とスリット123の間隔Sを設定する一対のスリット形成板133からなり、スリット123の間隔Sを設定したスリット形成板133がスリット基板132にネジ134により固定される。そして、スリット123の間隔Sを任意に設定するためのバカ穴135がスリット形成板133に開けられている。
【0048】
また、スリット123の間隔Sを固定した上記スリット基板132とスリット形成板133を一体に形成したスリット板を使用することもできる。
【0049】
前記スリット形成板133の素材としては、特に限定されないが、金属、セラミック、プラスチックなどが挙げられる。また、スリット123を走行する処理コード12が毛羽立ちなど損傷を発生しないように、スリット面は滑らかに加工されることが好ましい。
【0050】
スリット123の間隔Sは、特に限定されないが、コード正常部のコード径の1.1〜3.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.3〜2.0倍である。間隔Sがコード正常部のコード径の1.1倍未満であると、走行中のコード振動により誤作動するおそれが多くなり作業性が低下し、3.0倍を超えるとジョイント36を通過させるようになり異常部の検出感度が低下しジョイントなどを混入させてしまう。
【0051】
また、ジョイント36の接触により回動したスリット板122は、スリット板122を縦型配置として自重により元の位置に復帰することが好ましい。また、前記蝶番をスプリング式蝶番としたり、バネ、ゴム紐などの利用により復帰させるものでもよい。
【0052】
タイヤコードの異常部検出装置21は、スリット板122の回動によりジョイント36を検知し、その検知信号を発信する検出部とを備えている。
【0053】
検出部は、図10、11に示すように、本例の場合、検知センサー125と近接スイッチ126とで構成されている。
【0054】
検知センサー125は前記スリット板122と回動軸124を介して接続され、ジョイント36を検知しスリット板122が回動すると、同時に回動軸124を支点に逆方向に回動する。
【0055】
また、近接スイッチ126は通常は検知センサー125と接触状態にあるが、検知センサー125の回動により非接触状態になると電流が遮断され、ディップ処理装置10の各部にジョイント検知信号を発信するものであり、例えば後工程の巻き取り装置20に信号を発信し巻き取りの運転停止、運転方法変換などを自動作動させることができる。
【0056】
巻き取り装置20は、ボビンを装着する2軸18a、18bの巻き取り軸を有しており、検出装置21からの検出信号に基づいて、一方の巻き取り軸18aに巻き取り中の処理コード12を一旦切断すると同時に、空ボビンを装着した巻き取り軸18bに自動交換することで、ジョイント36は巻き取り中のボビン表層部あるいは交換された新ボビンの心側に存在することになり、ジョイント36の位置が明確になるとともに、ディップ処理装置10を停止せずに運転することができる。そして、巻き取りボビンを外して、空ボビンを補給する限り無休止連続運転が可能となる。なお、巻き取り装置20は3軸以上の複数軸を有するものでもよい。
【0057】
また、上記2軸巻き取り装置は、異常部検出装置21によりジョイント36を検出する都度、巻き取り軸を自動交換する以外に、コード供給装置19と巻き取り装置20の間に長さ計を設け、定尺のコード設定長さ、任意のコード設定長さにおいて処理済タイヤコードを新たな巻き取り軸に巻き取るようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るタイヤコード処理装置は、上記実施形態で説明したシングルコードのディップ処理の他に、複数本のシングルコードを同時処理するコードセッター、シングルコードのゴム糊ディップ処理、シングルコードの未加硫ゴム被覆処理などに適用することができ、得られたタイヤコードは空気入りタイヤ、コンベヤベルト、空気バネ、免震ゴムなどの各種ゴム製品の補強材に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態のディッピング工程を示す概略図である。
【図2】実施形態のコード供給方法を示すボビンの斜視図である。
【図3】回転子を例示する平面図である。
【図4】実施形態のコード供給方法を示すボビンの一部拡大図である。
【図5】実施形態の2本のボビンからコードを供給する場合のボビン正面図である。
【図6】実施形態の2本のボビンからコードを供給する場合のボビン平面図である。
【図7】実施形態の2本のボビンのコードを交互供給する説明図である。
【図8】実施形態の2本のボビンのコードを交互に自動供給する説明図である。
【図9】2本のボビンの配置例を示す説明図である。
【図10】ジョイント検出装置の概略図である。
【図11】ジョイント検出装置の回動時の概略図である。
【図12】スリット板の概略図である。
【図13】従来のディッピング工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0060】
11……タイヤコード
17……コード処理装置本体
18……巻き取り軸
20……巻き取り装置
21……ジョイント検出器
36……ジョイント
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤコードの処理装置に関し、無休止連続運転でタイヤコードのディップ処理などの加工処理を行うことができるタイヤコードの処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気入りタイヤの補強材として使用されるナイロン、ポリエステル等の有機繊維タイヤコードは、耐久性、耐摩耗性等のタイヤ性能を維持、向上する上で、コード材料とゴム間との接着性、コード特性が重要であり、これらの特性を付与するため接着処理液(ディップ液)に生コードを浸漬した後熱処理を施す、いわゆるディップ処理が行われている。
【0003】
シングルコードを連続ディップ処理する場合、図13に示すようなディッピングマシン100により、まず、コード供給装置109に横取りに搭載された繰り出しボビン103から引き出された生コード101をディップ液を貯留したディップタンク104中で浸漬ロール105を通してディップ液中を通過させディッピングすることによって、ディップ液を生コード101に付着させる。ディッピングによりディップ液を含浸された生コード101は絞りロール106によって引き上げられ、長さ方向に張力をかけた状態で乾燥、熱処理工程107に搬送され、ベーキングされ接着性と目的のコード特性に調整された処理コード102となり、巻き取り装置110により巻き取りボビン108にロール状に巻き取られる。
【0004】
従来、繰り出しボビン103の生コード101が無くなると、ボビン103を交換し新たな生コード101をジョイントしディップ処理を継続していたが、ボビン103の交換はそのタイミングを計りながらの人手にたより、またコード101をジョイントするために一時装置100を停止する必要があった。従来、この装置の一時停止を回避するには、フェスツーンが用いられていたが、装置の大型化、設備費用の増大などの問題がある。
【0005】
ボビンに巻かれたコードが、リング、トラベラーを通り糸ガイドを通じて導かれ、連続的にコードを引き出す縦取り構成のコード取り出し方法が、特許文献1に記載されているが、ボビンの残コードが少なくなる(数百m)と、ボビンからのコードがトラベラーに追従できなくなりコード切れを発生するという問題が見られる。
【0006】
また、コードのジョイントがタイヤなどの製品に混入すると、その部分の補強効果が不均一になりやすく、品質上ジョイントは除去することが好ましいが、前記巻き取りボビン108にロール状に巻き取られると、ジョイントの位置が不明となって製品中に混入してしまうことがある。
【特許文献1】特開2004−316049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、タイヤコードのディップ処理などの加工処理を無休止連続運転で行うことができ、さらにコードのジョイントが製品に混入することを防止できるように巻き取り側でのジョイント位置を明確にできるタイヤコードの処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タイヤコードを走行させつつ該タイヤコードを加工処理する処理装置本体と、前記処理装置本体にタイヤコードを供給する供給装置と、処理済タイヤコードを巻き取る巻き取り装置を備えたタイヤコード処理装置において、前記処理装置本体から供給されるタイヤコードのジョイントを検出し、そのジョイント検出信号を前記巻き取り装置に発信するジョイント検出器を設け、前記巻き取り装置が複数軸の巻き取り軸を有し、前記ジョイント検出信号に基づいて前記処理済みコードの巻き取り軸を自動交換する交換装置を有することを特徴とするタイヤコード処理装置である。
【0009】
本発明のタイヤコード処理装置においては、前記タイヤコードの供給装置が、タイヤコードを巻いた複数の巻物を配し、引き出し中の前記巻物に巻かれた前記タイヤコードの巻き始め部と、次に引き出される巻物に巻かれた前記タイヤコードの巻き終わり部とをジョイントし、前記引き出し中の巻物と次に引き出される巻物とを並列し、前記引き出し中の巻物から前記タイヤコードを該巻物の軸方向に引き出し、引き出し中の前記巻物に巻かれた前記タイヤコードが無くなると同時に前記ジョイントを介して前記次に引き出される巻物からタイヤコードを連続して該巻物の軸方向に引き出し、前記複数の巻物から前記タイヤコードを連続的に前記処理装置本体に供給するものとすることができる。
【0010】
また、前記巻物端部に該巻物の中心を軸として回転する回転自在の回転子が配され、前記回転子は引き出された前記タイヤコードに架かり従動して回転し、前記タイヤコードの引き出しの停止と同時に前記回転を停止し、前記回転子が、前記タイヤコードを前記巻物端部外周の当接部と巻物のコード表層部との間において該タイヤコードに張力を付与し静止させるものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コード供給側でジョイントするための時機、時間などに制約を受けることがなく、またジョイントを行うのに装置を一時停止する必要がないので、タイヤコード処理装置の無休止連続運転が可能となり、装置稼働率の向上、運転経費の節減に寄与することができる。また、巻き取り側でコードジョイントの位置が明確になるのでジョイントが製品内に混入することを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。本実施形態においては、タイヤ用シングルコードのディップ処理加工の例に従い説明するが、本発明は本例に限定されるものではない。
【0013】
タイヤコードのディップ処理工程は、図1に示すように、ディッピングマシン10により、レットオフ装置19に搭載された繰り出し側のフランジ付きボビン13から引き出されたタイヤコード11をディップ液を貯留したディップタンク14中で浸漬ロール15を通してディップ液中を通過させディッピングすることによって、ディップ液をタイヤコード11に付着させる。ディッピングによりディップ液を含浸されたタイヤコード11は絞りロール16によって引き上げられ、長さ方向に張力をかけた状態で乾燥、熱処理工程17に搬送され、ベーキングされ接着性とコード特性が調整された処理コード12となり、巻き取り装置20により巻き取りボビン18aにロール状に巻き取られる。
【0014】
タイヤコード11が引き出されるボビン13は、図2に示すように、ボビン13の両側部にフランジ21を有するもので、レットオフ装置19に非回転状態で保持されている。
【0015】
なお、ボビン13は両側部にフランジ21を有さないタイプ、例えば、筒状をなすパーン、コーン、チーズなどを用いることもできる。この場合はフランジを代用する円盤状の板体をコード引き出し側のボビン側面に配してボビンに固定し使用すればよい。
【0016】
ボビン13は、レットオフ装置19に立設された支持軸23にボビン中心孔22を挿入し、レットオフ装置19に縦置きに配置され、非回転状態となっている。なお、ボビン13は保持具等によりレットオフ装置19に固定してもよく、またボビン自体の自重あるいはレットオフ装置19とフランジ21との摩擦力により非回転状態に保持されてもよい。
【0017】
前記支持軸23には、軸23を中心として、すなわちフランジ21の中心を軸として、フランジ21上を滑りながら回転する回転自在の回転子24が設けられている。
【0018】
タイヤコード11は、ボビン13からボビン軸方向に引き出されることで、フランジ21の外周に沿って周回し、引き出されたタイヤコード11が回転子24に架かって回転子24をタイヤコード11に従動させながら回転させる。
【0019】
そして、タイヤコード11の引き出しが停止すると同時に、回転子24は回転を停止し、これによりタイヤコード11は回転子24によりフランジ21の端部外周とボビン13のタイヤコード表層間で張力を与えられた状態で停止・保持されるようにする。すなわち、タイヤコード11の引き出しが停止した時に、タイヤコード11に弛みが生じてボビン13の下方にずり落ちないように、回転子24の回転停止により生じる惰力によってタイヤコード11に張力を与えるものである。
【0020】
上記タイヤコード11に張力を与えるには、回転子24の設定が重要となる。すなわち、タイヤコード11の引き出し条件と、回転子24及びフランジ21表面との摩擦抵抗が要因となる。
【0021】
回転子24の材料、形状は、特に限定されることはない。材料としては、鉄、銅、アルミニウム、真鍮などの金属、ナイロン、ポリエステルなどの合成樹脂、セラミックなどが挙げられる。形状は、図3に示すように、(a)板状体に回転孔25を空けたもの、(b)棒状体に回転孔25を設けたもの、(c)先端部の重量を大きくしたものなどが挙げられる。
【0022】
中でも、回転子24とフランジ21表面との摩擦抵抗を任意、かつ容易に調整できる観点から、回転子24の形状、重量など摩擦力に係る条件を調整しやすい金属製ワイヤーが好適であり、具体的には、直径1〜4mmの鉄線、銅線、アルミニウム線が挙げられる。
【0023】
これらの回転子24は、フランジ21上で回転孔25を支持軸23に挿入することで、複数の回転子から選択し摩擦抵抗を調整することができる。
【0024】
また、フランジ側の摩擦抵抗を回転子24に対して均一するために、図4に示すように、フランジ21と回転子24との間に、円盤状板体26を配置することができる。
【0025】
円盤状板体26としては、その表面の摩擦抵抗が均一なものであれば特に限定されることはなく、鉄、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、真鍮などの金属板、ナイロン、ポリエステルなどの合成樹脂板、セラミック板などが挙げられるが、摩擦抵抗の均一性、加工の容易さ、価格の点から厚み0.05〜3mm程度の金属板、合成樹脂製フィルムを好適に使用することができる。
【0026】
さらに、上記摩擦抵抗は、タイヤコード11の太さなどのコード構造、引き出し速度やフランジ外径などを考慮し、設定することができる。
【0027】
また、上記円盤状板体26は、図3(d)に示すように、円盤状板体26の周縁部の一部に切り込み26aを設け、この切り込み26aにコード11を通して回転子とすることもできる。
【0028】
本発明では、上記タイヤコードの供給方法により、複数のボビンに巻かれたタイヤコードをタイヤコード加工装置などに供給する場合に、ボビン間のコードをジョイントするために装置を一時停止させることなくコードを加工装置に連続供給することができる。
【0029】
図5〜図7は、2個のボビン13A、13Bからタイヤコード11をタイヤコード加工装置、例えば、上記ディップ処理装置10に連続供給する場合のレットオフ装置を示している。
【0030】
図5に示すように、ボビン13Aからタイヤコード11が引き出されディップ処理装置10に供給されており、次にタイヤコード11が引き出されるボビン13Bが並列して配置されている。ボビン13A、13Bは縦置きでレットオフ装置19の支持軸23に中心孔22が挿入され、非回転状態になっている。
【0031】
引き出し中のボビン13Aに巻かれたタイヤコード11の巻き始め部11aと、次に引き出されるボビン13Bに巻かれたタイヤコード11の巻き終わり部11bとがジョイント36されている。
【0032】
ボビン13A、13Bには、上記で説明した通り、フランジ21の中心を軸として、フランジ21外周上を滑りながら回転する回転自在の回転子24が設けられ、タイヤコード11は、ボビン13からボビン中心の垂直方向に引き出されることで、フランジ21の外周に沿って周回し、引き出されたタイヤコード11が回転子24に架かって回転子24をタイヤコード11に従動させながら回転させている。
【0033】
これにより、ディップ処理装置10にトラブルなどが発生し装置が停止した際に、タイヤコード11の引き出しが停止されても、それと同時に回転子24が回転を停止し、タイヤコード11は回転子24によりフランジ21の端部外周とボビン13のタイヤコード表層間で張力を与えられた状態で停止・保持されるので、タイヤコード11に弛みが生じてボビンの下方にずり落ちることがなく、トラブル復帰時の運転再開をスムーズに行うことができる。
【0034】
そして、ボビン13Aのタイヤコード11が無くなると、図7に示すようにジョイント36を介して連結されたボビン13Bのタイヤコード11が自動的に引き出され、前記ボビン13Aの場合と同様にタイヤコード11を連続してディップ処理装置10に連続供給することができる。
【0035】
また、複数のボビンに巻かれたタイヤコードを連続的に供給する場合には、ボビンから引き出されるタイヤコードが常に該ボビン中心の垂直方向に引き出されることが好ましい。
【0036】
このため、図8に示すように(図8ではボビンが2本の場合を示す)、引き出し中のボビン13Aに巻かれたタイヤコード11が無くなると、ジョイント36を介して連結されたボビン13Bのタイヤコード11が自動的に引き出される際に、ボビン13Aの位置に次にコード11が引き出されるボビン13Bの位置を変更することにより、ボビン13A、Bから引き出されるタイヤコード11を常に該ボビン中心の垂直方向に引き出すことができる。
【0037】
上記ボビン13A、13Bの位置の変更は、ボビン13A、13Bの間に設けたタイヤコード11の引き出し交換時にコード11を検知するセンサー37を設けて自動的にボビン13A、13Bを搭載したスタンド29を左右にスライドさせる、スタンド29を回転させるなどの方法によりボビン13A、13Bの位置交換を行うことができる。
【0038】
さらに、ボビン13Bから装置10にタイヤコード11を供給中に、ボビン13A側の空ボビンを外し新たなタイヤコード11の満巻きボビン13Aを装着し、その巻き終わり部と引き出し中のボビン13Bのタイヤコード11の巻き始め部とをジョイントしておけば、ボビン13A、B間でタイヤコード11の交互供給を繰り返し、ディップ処理装置10へのタイヤコード11供給を無限に連続することができる。
【0039】
なお、レットオフ装置19上でのボビン13の配置は、上記縦置きで使用できるが、ボビンを非回転に維持し、コードをボビン軸方向に引き出せるものであれば、図8(a)に示す横置きでもよく、また(b)に示す中央寄りに傾斜配置したものでもよい。また、3本以上のボビンを使用することもできる。
【0040】
次に、タイヤコード11に発生したコードジョイント36を検出し、その検出信号を巻き取り装置20に発信する異常部検出装置(ジョイント検出器)21と、この検出信号に基づいて巻き取り軸を自動交換する2軸巻き取り装置20について説明する。
【0041】
図1に示すディップ処理装置10において、乾燥、熱処理工程17と巻き取り装置20の間に、本発明に係るタイヤコードの異常部検出装置21が設けられている。なお、異常部検出装置21の設置位置は、図1に示す位置に限定されない。
【0042】
図10は、タイヤコードの異常部検出装置21の1例を示すものである。
【0043】
タイヤコードの異常部検出装置21は、図1に示すように、乾燥、熱処理工程17を終えて走行する処理コード12の正常部を通過させ、前記処理コード12正常部よりも径大のコード異常部36を通過させないスリット123を設けたスリット板122を有している。
【0044】
ここで、コード正常部とは、コードジョイント、フィラメントの飛び出しなどの撚り不良、コードの捻れなどがない、いわゆる正常なコード径の範囲にあるものを指し、コード異常部とは、前記コードジョイント、フィラメントの飛び出しなどの撚り不良、コードの捻れなどの発生によってコード径が正常部よりも大となった部分を指し、具体的には、正常部コード径の1.1倍以上のコード径にある部分を言う。
【0045】
上記タイヤコードの異常部検出装置21は、図11に示すように、コード異常部(ジョイント)36(以下、ジョイントと言う)がスリット板122に到達すると、ジョイント36はスリット123の間隙を通過することができず、ジョイント36がスリット123を引っ掛けるようにしてスリット板122を回動軸124を支点にしコード走行方向にドアー状に回動させる。
【0046】
回動軸124としては、例えば、ディップ処理装置10に設けた固定柱40に対して、異常部検出装置21を回動自在に接続する蝶番などが挙げられる。
【0047】
図12は、スリット板122の1例を示す側面図(a)及び正面図(b)である。スリット板122は、スリット基板132とスリット123の間隔Sを設定する一対のスリット形成板133からなり、スリット123の間隔Sを設定したスリット形成板133がスリット基板132にネジ134により固定される。そして、スリット123の間隔Sを任意に設定するためのバカ穴135がスリット形成板133に開けられている。
【0048】
また、スリット123の間隔Sを固定した上記スリット基板132とスリット形成板133を一体に形成したスリット板を使用することもできる。
【0049】
前記スリット形成板133の素材としては、特に限定されないが、金属、セラミック、プラスチックなどが挙げられる。また、スリット123を走行する処理コード12が毛羽立ちなど損傷を発生しないように、スリット面は滑らかに加工されることが好ましい。
【0050】
スリット123の間隔Sは、特に限定されないが、コード正常部のコード径の1.1〜3.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.3〜2.0倍である。間隔Sがコード正常部のコード径の1.1倍未満であると、走行中のコード振動により誤作動するおそれが多くなり作業性が低下し、3.0倍を超えるとジョイント36を通過させるようになり異常部の検出感度が低下しジョイントなどを混入させてしまう。
【0051】
また、ジョイント36の接触により回動したスリット板122は、スリット板122を縦型配置として自重により元の位置に復帰することが好ましい。また、前記蝶番をスプリング式蝶番としたり、バネ、ゴム紐などの利用により復帰させるものでもよい。
【0052】
タイヤコードの異常部検出装置21は、スリット板122の回動によりジョイント36を検知し、その検知信号を発信する検出部とを備えている。
【0053】
検出部は、図10、11に示すように、本例の場合、検知センサー125と近接スイッチ126とで構成されている。
【0054】
検知センサー125は前記スリット板122と回動軸124を介して接続され、ジョイント36を検知しスリット板122が回動すると、同時に回動軸124を支点に逆方向に回動する。
【0055】
また、近接スイッチ126は通常は検知センサー125と接触状態にあるが、検知センサー125の回動により非接触状態になると電流が遮断され、ディップ処理装置10の各部にジョイント検知信号を発信するものであり、例えば後工程の巻き取り装置20に信号を発信し巻き取りの運転停止、運転方法変換などを自動作動させることができる。
【0056】
巻き取り装置20は、ボビンを装着する2軸18a、18bの巻き取り軸を有しており、検出装置21からの検出信号に基づいて、一方の巻き取り軸18aに巻き取り中の処理コード12を一旦切断すると同時に、空ボビンを装着した巻き取り軸18bに自動交換することで、ジョイント36は巻き取り中のボビン表層部あるいは交換された新ボビンの心側に存在することになり、ジョイント36の位置が明確になるとともに、ディップ処理装置10を停止せずに運転することができる。そして、巻き取りボビンを外して、空ボビンを補給する限り無休止連続運転が可能となる。なお、巻き取り装置20は3軸以上の複数軸を有するものでもよい。
【0057】
また、上記2軸巻き取り装置は、異常部検出装置21によりジョイント36を検出する都度、巻き取り軸を自動交換する以外に、コード供給装置19と巻き取り装置20の間に長さ計を設け、定尺のコード設定長さ、任意のコード設定長さにおいて処理済タイヤコードを新たな巻き取り軸に巻き取るようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るタイヤコード処理装置は、上記実施形態で説明したシングルコードのディップ処理の他に、複数本のシングルコードを同時処理するコードセッター、シングルコードのゴム糊ディップ処理、シングルコードの未加硫ゴム被覆処理などに適用することができ、得られたタイヤコードは空気入りタイヤ、コンベヤベルト、空気バネ、免震ゴムなどの各種ゴム製品の補強材に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態のディッピング工程を示す概略図である。
【図2】実施形態のコード供給方法を示すボビンの斜視図である。
【図3】回転子を例示する平面図である。
【図4】実施形態のコード供給方法を示すボビンの一部拡大図である。
【図5】実施形態の2本のボビンからコードを供給する場合のボビン正面図である。
【図6】実施形態の2本のボビンからコードを供給する場合のボビン平面図である。
【図7】実施形態の2本のボビンのコードを交互供給する説明図である。
【図8】実施形態の2本のボビンのコードを交互に自動供給する説明図である。
【図9】2本のボビンの配置例を示す説明図である。
【図10】ジョイント検出装置の概略図である。
【図11】ジョイント検出装置の回動時の概略図である。
【図12】スリット板の概略図である。
【図13】従来のディッピング工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0060】
11……タイヤコード
17……コード処理装置本体
18……巻き取り軸
20……巻き取り装置
21……ジョイント検出器
36……ジョイント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤコードを走行させつつ該タイヤコードを加工処理する処理装置本体と、前記処理装置本体にタイヤコードを供給する供給装置と、処理済タイヤコードを巻き取る巻き取り装置を備えたタイヤコード処理装置において、
前記処理装置本体から供給されるタイヤコードのジョイントを検出し、そのジョイント検出信号を前記巻き取り装置に発信するジョイント検出器を設け、
前記巻き取り装置が複数軸の巻き取り軸を有し、前記ジョイント検出信号に基づいて前記処理済みコードの巻き取り軸を自動交換する交換装置を有する
ことを特徴とするタイヤコード処理装置。
【請求項2】
前記タイヤコードの供給装置が、
タイヤコードを巻いた複数の巻物を配し、
引き出し中の前記巻物に巻かれた前記タイヤコードの巻き始め部と、次に引き出される巻物に巻かれた前記タイヤコードの巻き終わり部とをジョイントし、
前記引き出し中の巻物と次に引き出される巻物とを並列し、前記引き出し中の巻物から前記タイヤコードを該巻物の軸方向に引き出し、引き出し中の前記巻物に巻かれた前記タイヤコードが無くなると同時に前記ジョイントを介して前記次に引き出される巻物からタイヤコードを連続して該巻物の軸方向に引き出し、前記複数の巻物から前記タイヤコードを連続的に前記処理装置本体に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤコード処理装置。
【請求項3】
前記巻物端部に該巻物の中心を軸として回転する回転自在の回転子が配され、
前記回転子は引き出された前記タイヤコードに架かり従動して回転し、前記タイヤコードの引き出しの停止と同時に前記回転を停止し、
前記回転子が、前記タイヤコードを前記巻物端部外周の当接部と巻物のコード表層部との間において該タイヤコードに張力を付与し静止させる
ことを特徴とする請求項2に記載のタイヤコード処理装置。
【請求項1】
タイヤコードを走行させつつ該タイヤコードを加工処理する処理装置本体と、前記処理装置本体にタイヤコードを供給する供給装置と、処理済タイヤコードを巻き取る巻き取り装置を備えたタイヤコード処理装置において、
前記処理装置本体から供給されるタイヤコードのジョイントを検出し、そのジョイント検出信号を前記巻き取り装置に発信するジョイント検出器を設け、
前記巻き取り装置が複数軸の巻き取り軸を有し、前記ジョイント検出信号に基づいて前記処理済みコードの巻き取り軸を自動交換する交換装置を有する
ことを特徴とするタイヤコード処理装置。
【請求項2】
前記タイヤコードの供給装置が、
タイヤコードを巻いた複数の巻物を配し、
引き出し中の前記巻物に巻かれた前記タイヤコードの巻き始め部と、次に引き出される巻物に巻かれた前記タイヤコードの巻き終わり部とをジョイントし、
前記引き出し中の巻物と次に引き出される巻物とを並列し、前記引き出し中の巻物から前記タイヤコードを該巻物の軸方向に引き出し、引き出し中の前記巻物に巻かれた前記タイヤコードが無くなると同時に前記ジョイントを介して前記次に引き出される巻物からタイヤコードを連続して該巻物の軸方向に引き出し、前記複数の巻物から前記タイヤコードを連続的に前記処理装置本体に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤコード処理装置。
【請求項3】
前記巻物端部に該巻物の中心を軸として回転する回転自在の回転子が配され、
前記回転子は引き出された前記タイヤコードに架かり従動して回転し、前記タイヤコードの引き出しの停止と同時に前記回転を停止し、
前記回転子が、前記タイヤコードを前記巻物端部外周の当接部と巻物のコード表層部との間において該タイヤコードに張力を付与し静止させる
ことを特徴とする請求項2に記載のタイヤコード処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−91693(P2009−91693A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264227(P2007−264227)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
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