説明

タイヤスペーサ保持装置

【課題】2つのタイヤの間におけるスペーサのずれを防止することができるタイヤスペーサ保持装置の提供。
【解決手段】ハブ2が挿通される大孔12a、およびこの大孔12aの周囲に設けられボルト8が挿通される複数の小孔12bを有しハブ2のフランジ3に固定される固定部12と、この固定部12と一体に形成されスペーサ10の内周面に沿って位置する円環部13とを備える規制手段11によって、アクスルシャフト1に直交する方向へのスペーサ10の移動を規制するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採石現場や工事現場を走行するホイールショベルやダンプトラック等の作業車に適用され、同軸上に所定の間隔を空けて設けられる2つのタイヤ間に挟持される円環状のスペーサを保持するタイヤスペーサ保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルタイヤには、特許文献1に示すものがある。このダブルタイヤは、同軸上に所定の間隔を空けて設けられる2つのタイヤを備えている。特許文献1には示されていないが、ダブルタイヤには、2つのタイヤにより挟持される円環状のスペーサを備えるものがある。スペーサは、2つのタイヤの間隔を保持するものであるとともに、2つのタイヤの間に異物が噛み込まれることを阻止してタイヤの側部を保護するものである。
【特許文献1】特開平5−116511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述したスペーサを含むダブルタイヤでは、空気圧によるタイヤの膨張を利用して2つのタイヤの間にスペーサを挟持することによってスペーサを定位置に保持している。したがって、タイヤの空気圧が低下してスペーサを挟持する力が弱まると、スペーサがずれて、2つのタイヤの間隔を保持する機能や、タイヤの間への異物の噛み込みを阻止する機能が低下する。
【0004】
本発明は、前述の実状を考慮してなされたものであって、その目的は、2つのタイヤの間におけるスペーサのずれを防止することができるタイヤスペーサ保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕 本発明は、前述の目的を達成するために、同軸上に所定の間隔を空けて設けられる2つのタイヤ間に挟持される円環状のスペーサの内周面に当接する規制手段により、前記スペーサの前記軸に直交する方向への移動を規制することを特徴とする。
【0006】
このように構成した本発明は、規制手段によって、軸に直交する方向へのスペーサの移動を規制する。これにより、2つのタイヤの間におけるスペーサのずれを防止することができる。
【0007】
〔2〕 本発明は、〔1〕記載の発明において、前記規制手段が、前記2つのタイヤのそれぞれが装着される2つのリムの間に挟まれた状態で、前記2つのリムとの共締めによりハブに固定されることを特徴とする。
【0008】
〔3〕 本発明は、〔1〕記載の発明において、前記規制手段が、前記スペーサの内周面に沿って配置される円環部を有することを特徴とする。
【0009】
〔4〕 本発明は、〔1〕記載の発明において、前記規制手段が、前記スペーサの内周面に沿って断続して配置される複数の円弧部を有することを特徴とする。
【0010】
〔5〕 本発明は、〔1〕記載の発明において、前記規制手段が、ハブに固定される固定部と、前記スペーサの内周面の一部に沿って配置される円弧部とを有する複数の部材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、軸に直交する方向へのスペーサの移動を規制手段によって規制するので、2つのタイヤの間におけるスペーサのずれを防止することができる。これにより、2つのタイヤの間隔を従来よりも確実に保持することができ、また、タイヤの間への異物の噛み込みを従来よりも確実に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のタイヤスペーサ保持装置の実施形態について図を用いて説明する。図1は、タイヤスペーサ保持装置の一実施形態がダブルタイヤに装着された状態を示す部分断面図、図2は、図1に示す規制手段の側面図、図3は、図2のIII−III断面図、図4は、規制手段の別の例を示す側面図、図5は、規制手段のさらに別の例を示す側面図である。
【0013】
本実施形態は、採石現場や工事現場等を走行するホイールショベルやダンプトラック等の作業車に備えられるダブルタイヤに適用されるものである。図1において、1は、ホイールショベルのアクスルシャフト、2は、アクスルシャフト1の先端を覆うハブ、3は、ハブ2に形成されたフランジ、6,7は、複数のボルト8およびナット9によりハブ2のフランジ3に共締めされるリム、4,5は、リム6,7のそれぞれに装着されて、同軸上に所定の間隔を空けて設けられるタイヤである。
【0014】
また、タイヤ4,5の間には、円環状のスペーサ10を、タイヤ4,5により挟持させて設けてある。このスペーサ10は、耐摩耗性および反発弾性が高い弾性体、例えばブタジエンゴムからなる。また、このスペーサ10にはテーパ面10b,10cを形成して、スペーサ10の外周面10aの幅寸法を、スペーサ10の他の部分の幅寸法よりも大きくしてある。また、スペーサ10の外周面10aは、タイヤ4,5のそれぞれの張出し部4a,5aよりも外側に配置してある。張出し部4aは、タイヤ5側に位置するタイヤ4の側壁の一部であって、タイヤ4の最も幅寸法の大きな部分を形成している。張出し部5aも同様に、タイヤ4側に位置するタイヤ5の側壁の一部であって、タイヤ5の最も幅寸法の大きな部分を形成している。
【0015】
また、本実施形態は、スペーサ10の内周面に当接する規制手段11により、タイヤ4,5の軸、すなわちアクスルシャフト1に直交する方向へのスペーサ10の移動を規制するようになっている。
【0016】
この規制手段11は、図2,3に示すように、中央に形成された大孔12a、およびこの大孔12aの周囲に設けられた複数の小孔12bを有し、ハブ2のフランジ3に固定される固定部12と、この固定部12と一体に形成され、スペーサ10の内周面に沿って位置する円環部13とを備えている。
【0017】
規制手段11の固定部12は、図1に示すように、リム6,7の間に挟まれ、その大孔12aにはハブ2が挿通され、固定部12の小孔12bのそれぞれにはボルト8が挿通されて、ハブ2のフランジ3にボルト8とナット9により締結されている。つまり、規制手段11は、リム6,7の間に挟まれた状態で、これらのリム6,7との共締めによりハブ2に固定している。
【0018】
このように構成した本実施形態では、タイヤ4,5は、適切な空気圧で膨張している状態では、張出し部4a,5aの間でスペーサ10を挟持し、スペーサ10のテーパ面10b,10cをスペーサ10の外周側へ押圧して、スペーサ10を僅かに径方向に拡張させている。この状態では、スペーサ10の内周面は規制手段11の円環部13に当接した状態、または僅かに離れた状態であり、スペーサ10はタイヤ4,5の挟持によって保持され、規制手段11は保持に関係していない。
【0019】
タイヤ4,5の空気圧が低くなり、タイヤ4,5がスペーサ10を挟む力、およびスペーサ10を拡張させる力が小さくなると、スペーサ10はタイヤ4,5の間で移動可能となって摺動し得る状態になる。この状態では、規制手段11の円環部13が、アクスルシャフト1に対して直交する方向へのスペーサ10の移動を規制する。
【0020】
本実施形態によれば、次の効果を得られる。
【0021】
本実施形態では、アクスルシャフト1に直交する方向へのスペーサ10の移動を、規制手段11によって規制するので、タイヤ4,5間におけるスペーサ10のずれを防止することができる。これにより、タイヤ4,5の間隔を、従来よりも確実に保持することができるとともに、タイヤ4,5の間への異物の噛み込みを、従来よりも確実に阻止することができる。
【0022】
また、本実施形態では、スペーサ10と規制手段11が別体なので、スペーサ10の交換が容易であるとともに、スペーサ10と規制手段11とを一体化した場合よりも交換にかかる費用を少なくすることができる。
【0023】
なお、本実施形態は、スペーサ10の内周面に沿って位置する円環部13を有する規制手段11を備える例であるが、規制手段はこれに限るものではない。例えば図4に示す規制手段20のように、ハブ2を挿通する大孔21a、およびボルト8を挿通する複数の小孔21bを有しハブ2のフランジ3に固定される円環状の固定部21と、この固定部21から放射状に延びる複数、例えば3つの腕部22と、各腕部22の終端部に設けられ、スペーサ10の内周面に沿って断続して位置する円弧部23とを有するものでもよい。このように構成したものでは、規制手段を軽量化することができる。
【0024】
また、図5に示すように、図1に示す規制手段11を複数に分割したようなものであってもよく、ハブ2の外周面に合致する円弧状の当接面31a、およびボルト8が挿通される小孔31bを有しハブ2に固定される固定部31と、スペーサ10の内周面の一部に沿って配置される円弧部32とを有する複数の部材30から規制手段を構成してもよい。このように構成したものでは、個々の規制手段が軽量化できるので、取付作業がし易くなるとともに、部材30の形状が簡単なので製作費を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のタイヤスペーサ保持装置の一実施形態がダブルタイヤに装着された状態を示す部分断面図である。
【図2】図1に示す規制手段の側面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】規制手段の別の例を示す側面図である。
【図5】規制手段のさらに別の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 アクスルシャフト(軸)
2 ハブ
3 フランジ
4 タイヤ
4a 張出し部
5 タイヤ
5a 張出し部
6 リム
7 リム
8 ボルト
9 ナット
10 スペーサ
10a 外周面
10b テーパ面
10c テーパ面
11 規制手段
12 固定部
12a 大孔
12b 小孔
13 円環部
20 規制手段
21 固定部
21a 大孔
21b 小孔
22 腕部
23 円弧部
30 部材(規制手段)
31 固定部
31a 当接面
31b 小孔
32 円弧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に所定の間隔を空けて設けられる2つのタイヤ間に挟持される円環状のスペーサの内周面に当接する規制手段により、前記スペーサの前記軸に直交する方向への移動を規制することを特徴とするタイヤスペーサ保持装置。
【請求項2】
前記規制手段が、前記2つのタイヤのそれぞれが装着される2つのリムの間に挟まれた状態で前記2つのリムとの共締めによりハブに固定されることを特徴とする請求項1記載のタイヤスペーサ保持装置。
【請求項3】
前記規制手段が、前記スペーサの内周面に沿って配置される円環部を有することを特徴とする請求項1記載のタイヤスペーサ保持装置。
【請求項4】
前記規制手段が、前記スペーサの内周面に沿って断続して配置される複数の円弧部を有することを特徴とする請求項1記載のタイヤスペーサ保持装置。
【請求項5】
前記規制手段が、ハブに固定される固定部と、前記スペーサの内周面の一部に沿って配置される円弧部とを有する複数の部材からなることを特徴とする請求項1記載のタイヤスペーサ保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−8224(P2007−8224A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188535(P2005−188535)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)