説明

タイヤトレッド用ゴム組成物および空気入りタイヤ

【課題】ウェット制動性能および耐摩耗性能がバランス良く向上し、かつ低発熱性を向上させることにより転がり抵抗の低減が可能なタイヤトレッド用ゴム組成物および空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】少なくともゴム成分およびタルクを含有するタイヤトレッド用ゴム組成物であって、ゴム成分は、ゴム成分100質量部中、ポリスチレンブタジエンゴムを少なくとも75質量部以上含有するものであり、タルクは、その安息角が40度以上、モース硬度が2.0以下、BET比表面積(BET5)(m/g)が10m/g以上、かつジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)とBET比表面積(BET5)(m/g)との比(DBP)/(BET5)が2.0以上であって、ゴム成分100質量部に対するタルクの含有量が1〜30質量部であることを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともゴム成分およびタルクを含有するタイヤトレッド用ゴム組成物および空気入りタイヤであって、ウェット制動性能および耐摩耗性能がバランス良く向上し、かつ転がり抵抗の低減が可能なタイヤトレッド用ゴム組成物および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーボンブラックやシリカなどの補強用充填材で補強した加硫ゴムのウェット制動性能および耐摩耗性能を改良する手法として、特殊なカーボンブラックを使用したり、カーボンブラックの一部をシリカで置換する手法が挙げられる。これらの手法では、ウェット制動性能および耐摩耗性能の改善効果は見られるが、未加硫時のゴム組成物の粘度が上昇するなど、加工性が劣るという不具合があった。また、ゴム組成物の加工性や、加硫ゴムの耐摩耗性能を改善する手法として加工助剤やロジン系樹脂を添加する手法も提案されているが、加硫ゴムの弾性率や低発熱性が悪化し、タイヤの耐久力や転がり抵抗が上昇(悪化)する傾向があった。
【0003】
下記特許文献1では、タイヤのインナーライナー用ゴム組成物の加硫ゴムにおいて、良好な気密性を維持しつつ、引裂強度および耐疲労性を向上することを目的として、該ゴム組成物中に、所定のカーボンブラックと共に、扁平度合いの高いタルクを配合する手法が記載されている。しかしながら、かかる手法では、気密性は向上するが、引裂強度および耐疲労性の向上が不十分であり、この点でさらなる改良の余地があった。また、下記特許文献2および3でも、多孔質無機充填材または層状粘度鉱物を配合したゴム組成物が記載されているが、多孔質無機充填材または層状粘度鉱物の形状などの具体的特性は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−528739号公報
【特許文献2】特開2000−79807号公報
【特許文献3】特開2008−189725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウェット制動性能および耐摩耗性能がバランス良く向上し、かつ低発熱性を向上させることにより転がり抵抗の低減が可能なタイヤトレッド用ゴム組成物および空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、少なくともゴム成分およびタルクを含有するタイヤトレッド用ゴム組成物であって、前記ゴム成分は、前記ゴム成分100質量部中、ポリスチレンブタジエンゴムを少なくとも75質量部以上含有するものであり、前記タルクは、その安息角が40度以上、モース硬度が2.0以下、BET比表面積(BET5)(m/g)が10m/g以上、かつジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)とBET比表面積(BET5)(m/g)との比(DBP)/(BET5)が2.0以上であって、前記ゴム成分100質量部に対する前記タルクの含有量が1〜30質量部であることを特徴とする。
【0007】
上記タイヤトレッド用ゴム組成物によれば、特定の扁平度合い(安息角)、特定の比表面積(BET5)、特定のストラクチャーの発達度合い((DBP)/(BET5))、および特定のモース硬度を有するタルクを1〜30質量部含有するため、ウェット制動性能および耐摩耗性能がバランス良く向上し、かつ低発熱性が向上する。また、低発熱性の向上に伴い、かかるゴム組成物を用いた空気入りタイヤでは、転がり抵抗の低減が可能となる。さらに、タルクは天然鉱物であり、かつ低コストであることから、環境面およびコスト面の両方から好ましい。
【0008】
上記タイヤトレッド用ゴム組成物において、さらに、カーボンブラックおよびシリカの少なくとも1種からなる補強用充填材を含有し、前記ゴム成分100質量部に対する前記補強用充填材の含有量が、40〜150質量部であることが好ましい。特定の扁平度合い、特定のストラクチャーの発達度合い、特定の比表面積、および特定のモース硬度を有するタルクと共に、カーボンブラックおよびシリカの少なくとも1種からなる補強用充填材をゴム組成物中に含有する場合、タルクの影響により、補強用充填材単独で含有する場合に比べて、ゴム組成物中での補強用充填材の分散性が向上する。このため、加硫ゴムのウェット制動性能および耐摩耗性能および低発熱性が特にバランス良く向上する。タルクと併用した場合に、補強用充填材の分散性が向上する原因については明らかではないが、タルクおよび補強用充填材をゴム成分と共に混練する際、タルクがゴム成分のポリマー中で滑るため、ポリマー内での補強用充填材の分散を補助する機能を果たすことが考えられる。
【0009】
上記タイヤトレッド用ゴム組成物において、前記ポリスチレンブタジエンゴムの少なくとも一部が末端変性ポリスチレンブタジエンゴムであることが好ましい。タルクは特有の表面性状および層状結晶構造を有するため、末端変性ポリスチレンブタジエンゴムとの相互作用が高まり、加硫ゴムとしたとき、タルクの分散性が向上し、結果的に補強用充填材の分散性も向上する。これにより、特にウェット制動性能および耐摩耗性能がよりバランス良く向上する。
【0010】
上記タイヤトレッド用ゴム組成物において、ゴム組成物中、体積分率で3〜25%のプロセスオイルを含有することが好ましい。かかる構成によれば、ゴム組成物中での補強用充填材の含有量が多くなっても、プロセスオイルを十分量含有するため、ゴム組成物の加工性の悪化を防止することができる。特に、補強用充填材の含有量が多くなる、乗用車用タイヤトレッドゴム組成物において、ゴム組成物中、体積分率で3〜25%のプロセスオイルを含有することが特に好ましい。
【0011】
上記タイヤトレッド用ゴム組成物において、前記タルクに対して、シランカップリング剤を5〜10質量%含有することが好ましい。特有の表面性状を有するタルクとシランカップリング剤との反応により、タルクの分散性が向上し、結果的に補強用充填材の分散性も向上する。これにより、加硫ゴムとしたとき、特に耐摩耗性能が向上する。
【0012】
本発明は、前記いずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。かかる空気入りタイヤでは、ウェット制動性能および耐摩耗性能がバランス良く向上し、かつ低発熱性を向上させることにより転がり抵抗の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】タルクの安息角および高さ(H)を測定する器具および方法について示す側面図
【図2】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、少なくともゴム成分およびタルクを含有する。本発明においては、ゴム成分100質量部中、ポリスチレンブタジエンゴムを少なくとも75質量部以上含有する。これにより、ウェット制動性能が向上する。加硫ゴムのウェット制動性能をさらに向上するためには、ゴム成分100質量部中、ポリスチレンブタジエンゴムを80質量部以上含有することがより好ましい。また、ポリスチレンブタジエンゴムとして、末端変性ポリスチレンブタジエンゴムを使用することが特に好ましい。本発明においては、末端変性ポリスチレンブタジエンゴムとして、含窒素官能基により主としてポリマー鎖末端が変性されているものが好ましい。ウェット制動性能をより向上するためには、ゴム成分100質量部中、末端変性ポリスチレンブタジエンゴムを60質量部含有することが好ましく、75質量部含有することがより好ましい。
【0015】
ゴム組成物中、必要に応じてポリスチレンブタジエンゴム以外のジエン系ゴム、例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、およびポリブタジエンゴム(BR)を含有しても良い。天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、およびポリブタジエンゴム(BR)としては、必要に応じて、末端を変性したもの(例えば、末端スズ変性BRなど)、あるいは所望の特性を付与すべく改質したもの(例えば、改質NR)も好適に使用可能である。また、ポリブタジエンゴム(BR)については、コバルト(Co)触媒、ネオジム(Nd)触媒、ニッケル(Ni)触媒、チタン(Ti)触媒、リチウム(Li)触媒を用いて合成したものに加えて、WO2007−129670に記載のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物を用いて合成したものも使用可能である。
【0016】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分に加えて、安息角が40度以上、モース硬度が2.0以下、BET比表面積(BET5)が10m/g以上、かつジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)とBET比表面積(BET5)(m/g)との比(DBP)/(BET5)が2.0以上であるタルクを含有する。タルクの安息角が40度未満であると、扁平率が高すぎる、あるいは粒子径が大きすぎるため、加硫ゴムのウェット制動性能および耐摩耗性能が低下する。また、タルクのモース硬度が2を超えると、ゴム中での分散性の低下や応力集中の原因となり、低発熱性が悪化する。さらに、(DBP)/(BET5)が2未満であると、十分な補強効果が得られず、弾性率が低下する。加硫ゴムの弾性率、ウェット制動性能および耐摩耗性能をバランス良く向上し、かつ低発熱性を向上するためには、安息角を42度以上、モース硬度を1以下、BET5を10m/g以上、および/または(DBP)/(BET5)を3.0以上とすることが好ましい。なお、安息角の上限については50度以下、BET5の上限については30m/g以下、および/または(DBP)/(BET5)の上限については10以下が例示される。
【0017】
タルクの安息角は、以下の方法により測定可能である。
【0018】
(タルクの安息角および高さ(H)を測定する器具および方法)
図1に示すように、10gの粉末試料1、強化ガラス製の漏斗2(口径45mm、脚内径5mm、全長90mm、脚長さ45mm)、漏斗2を支持して固定する漏斗架台3、及び、漏斗2の脚の下端の排出口21を塞(ふさ)ぐためのゴム栓を用いる。漏斗架台3の高さ調整により、水平台板4から、漏斗2の排出口21までの高さが4cmとなるようにする。漏斗2の排出口21をゴム栓で塞いだ状態で10gの粉末試料をガラス製漏斗中に注いだ後、静かにゴム栓を抜く。粉末試料1が水平台板4上に、ほぼ正確な円錐形状の山をなしたことを確認した上で、この円錐形状の山の高さ(H)及び径(D)を測定する。また、この測定に基づき、下記式(1):
tan(安息角)=H/(D/2) (1)
から「安息角」(度)を求める。
【0019】
本発明において使用するタルクは、前記の方法により測定した安息角が小さいほど、扁平度合いが高い(高扁平)。高扁平であるタルクをゴム組成物中に配合した場合、特に耐破壊特性が悪化する。同様に、前記の方法により測定した高さ(H)が低いほど、タルクの扁平度合いが高くなる(高扁平となる)。このため、前記の方法により測定した高さ(H)が30mm以上となる、低扁平のタルクをゴム組成物中に配合した場合、特に加硫ゴムのウェット制動性能および耐摩耗性能が向上するため好ましい。
【0020】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物中のタルクの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1〜30質量部に設定する。タルクの含有量をかかる範囲内に設定することにより、加硫ゴムのウェット制動性能、耐摩耗性能および低発熱性をバランス良く向上することができる。加硫ゴムの前記物性をよりバランス良く向上するためには、ゴム成分100質量部に対するタルクの含有量を5〜15質量部とすることが好ましい。
【0021】
タルクは、天然滑石という鉱石を微粉砕して得られる無機粉末であって、含水珪酸マグネシウム[MgSi10(OH)]を主成分とする。本発明においては、市販品のタルクも好適に使用可能であり、例えば日本ミストロン社製の「MISTRON VAPOR RE」(安息角44度、モース硬度1、(BET5)13.4m/g、(DBP)/(BET5)3.7)、日本タルク社製の「P−6」(安息角44度、モース硬度1、(BET5)10.5m/g、(DBP)/(BET5)4.3)などを好適に使用できる。
【0022】
補強用充填材として、本発明においてはカーボンブラックおよびシリカの少なくとも1種を使用する。カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられ、特に含水珪酸を主成分とする湿式シリカを用いることが好ましい。加硫ゴムの弾性率、ウェット制動性能、耐摩耗性能、および低発熱性をバランス良く向上するためには、補強用充填材の含有量が、ゴム成分100質量部に対して40〜150質量部であることが好ましく、60〜120質量部であることがより好ましい。特に、加硫ゴムのウェット制動性能および低発熱性を向上するためには、ゴム成分100質量部に対してシリカを30〜120質量部含有することが好ましく、40〜90質量部含有することが好ましい。また、加硫ゴムのウェット制動性能および低発熱性を向上するためには、
【0023】
また、ゴム組成物中、体積分率で3〜25%のプロセスオイルを含有する場合、補強用充填材の含有量が多くても、ゴム組成物の加工性の悪化を防止することができる。プロセスオイルの含有量は、体積分率で5〜20であることがより好ましい。
【0024】
さらに、タルクに対してシランカップリング剤を5〜10質量%含有する場合、加硫ゴムの耐摩耗性能がより向上するため好ましい。また、シリカと併用する際、シリカ−シランカップリング剤−タルク間の相乗効果により、タルクの分散性が向上し、結果的にシリカの分散性も向上する。これにより、ウェット制動性能、耐摩耗性能および低発熱性が特にバランス良く向上する。したがって、補強用充填材全体に対してシリカを30質量%以上含有し、かつタルクに対してシランカップリング剤を5〜10質量%含有することが好ましい。
【0025】
本発明に係るゴム組成物は、上記ゴム成分、タルク、補強用充填材とともに、硫黄、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜配合し用いることができる。
【0026】
硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。加硫後のゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100質量部に対する硫黄の配合量は、硫黄分換算で1〜3質量部が好ましい。
【0027】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。加硫後のゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の配合量は、1〜5質量部が好ましい。
【0028】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。ゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100質量部に対する老化防止剤の配合量は、1〜3質量部が好ましい。
【0029】
本発明に係るゴム組成物は、上記ゴム成分、タルク、補強用充填材、必要に応じて硫黄、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0030】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、ゴム成分およびカーボンブラックのみを予め混練マスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。なお、ゴム成分およびカーボンブラックを予めマスターバッチとする場合、ゴムラテックスにカーボンブラックを混入して得られるウエットマスターバッチを使用してもよい。
【0031】
図2に示すとおり、本発明に係る空気入りタイヤは、一対のビードワイヤー101と、該ビードワイヤー101のタイヤ径方向外側に配されたビードフィラー102と、ビードワイヤー101およびビードフィラー102から各々タイヤ径方向外側に延びるサイドウォール103と、サイドウォール103の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド104と、一対のビードワイヤー101で端部側がタイヤ幅方向内側から外側に巻き上げられたカーカスプライ105と、カーカスプライ105の外周側(タイヤ径方向外側)に配された複数のベルトプライからなるベルト106と、を備える。
【0032】
ビードワイヤー101およびビードフィラー102のタイヤ径方向内側には、カーカスプライ105を介して、チェーハー107およびリムストリップ108が配され、リムストリップ108がタイヤリム(図示せず)に接するように着座する。ビードフィラー102のタイヤ径方向外側には、チェーハー107を挟み込むようにチェーハーパッド109が配される。一方、カーカスプライ105の内周側には、空気圧保持のためのインナーライナー110が配されている。また、ベルト106の端部側であって、タイヤ径方向内側にはショルダーパッド111が配され、複数のベルトプライ端部の間にはベルトエッジフィラー112が配される。
【0033】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて、ゴム用押出機などの公知の設備により、前記トレッド104を製造し、これらを備える未加硫タイヤを成型した後、公知の方法に従い加硫することで、空気入りタイヤを製造することができる。前述のとおり、本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物の加硫ゴムは、ウェット制動性能および耐摩耗性能がバランス良く向上し、かつ転がり抵抗の低減が可能となるため、特に乗用車タイヤトレッドとして有用である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は、各ゴム組成物を150℃にて30分間加熱、加硫して得られたゴムサンプルを下記の評価条件に基づいて評価を行った。
【0035】
(1)ゴム硬度
JIS K6253に準拠し、23℃でのゴム硬度(デュロメータAタイプ)にて評価を行った。比較例1の測定値を100として指数評価で表示し、数値が大きいほどゴム硬度が高いことを意味する。
【0036】
(2)転がり抵抗
テストタイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を使用し、ドラム走行試験にて測定した転がり抵抗を指数評価した。比較例1の転がり抵抗の逆数を100とし、指数が大きいほど転がり抵抗が小さく良好であることを示す。なお走行条件は、ドラム径=1.7m、測定時の雰囲気温度23℃、キャンバー角=0°、空気圧=230kPa、速度=80km/h、荷重=4.4kNとした。
【0037】
(3)ウェット制動性能
テストタイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を乗用車(2000ccクラスのセダン)に装着してウェット路面を走行させ、速度90km/hで制動力をかけてABSを作動させ、20km/hまで減速したときの制動距離の逆数を指数で評価した。評価結果は、比較例1を100としたときの指数で示し、この数値が大きいほどウェット制動性能に優れていることを示す。
【0038】
(4)耐摩耗性
テストタイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を乗用車(2000ccクラスのセダン)に装着し、一般路を10000km走行した後のタイヤの主溝深さと、新品タイヤの主溝深さとを比較することで摩耗量を測定した。比較例1の摩耗量の逆数を100として指数評価し、数値が大きいほど耐摩耗性に優れていることを示す。
【0039】
(ゴム組成物の調製)
表1の配合処方に従い、実施例1〜5および比較例1〜4のゴム組成物を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、ゴム組成物を調整した。表1に記載の各配合剤を以下に示す(表1において、各配合剤の配合量を、ゴム成分100質量部に対する質量部数で示す)。
a)ゴム成分
ポリスチレンブタジエンゴム(SBR−(A)) SBR1502(末端未変性品)、JSR社製
ポリスチレンブタジエンゴム(SBR−(B)) HPR355(含窒素官能基末端変性品)、JSR社製
b)カーボンブラック(HAF−HS) 「シーストKH(N339)」、東海カーボン社製
c)シリカ 「ニップシールAQ」、東ソー・シリカ社製
d)タルク
タルク(A) 「MISTRON VAPOR RE」、比表面積(BET5)13.4、ストラクチャー(DBP/BET5)3.7、扁平指数(高さ(H)35mm、安息角44度)、モース硬度1、日本ミストロン社製
タルク(B) 「HAR」、比表面積(BET5)20、ストラクチャー(DBP/BET5)2.5、扁平指数(高さ(H)25mm、安息角36度)、モース硬度1、日本ミストロン社製
e)亜鉛華 「酸化亜鉛2種」、三井金属鉱業社製
f)ステアリン酸 「ステアリン酸」、日油社製
g)老化防止剤 「アンチゲン6C」、住友化学社製
h)加硫促進剤 「ソクシールCZ」、住友化学社製
i)硫黄 「粉末硫黄」、鶴見化学社製
j)シランカップリング剤 「Si75」、デグサ社製
k)ワックス 「サンノックN」、大内新興化学社製
l)オイル 「プロセスオイルNC140」、JOMO社製
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果から、実施例1〜5に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、比較例1〜5に係るゴム組成物の加硫に比べて、ゴムウェット制動性能および耐摩耗性能がバランス良く向上し、かつ転がり抵抗が低減されていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともゴム成分およびタルクを含有するタイヤトレッド用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分は、前記ゴム成分100質量部中、ポリスチレンブタジエンゴムを少なくとも75質量部以上含有するものであり、
前記タルクは、その安息角が40度以上、モース硬度が2.0以下、BET比表面積(BET5)(m/g)が10m/g以上、かつジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)とBET比表面積(BET5)(m/g)との比(DBP)/(BET5)が2.0以上であって、前記ゴム成分100質量部に対する前記タルクの含有量が1〜30質量部であることを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
さらに、カーボンブラックおよびシリカの少なくとも1種からなる補強用充填材を含有し、前記ゴム成分100質量部に対する前記補強用充填材の含有量が、40〜150質量部である請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリスチレンブタジエンゴムの少なくとも一部が末端変性ポリスチレンブタジエンゴムである請求項1または2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
ゴム組成物中、体積分率で3〜25%のプロセスオイルを含有する請求項2または3に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
前記タルクに対して、シランカップリング剤を5〜10質量%含有する請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−246429(P2012−246429A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120504(P2011−120504)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】