説明

タイヤモニタリングシステム

【課題】各タイヤのセンサユニット30に対してタイヤ圧力データを要求すべく、車体側コントローラ20から各センサユニット30に対して個別に送信されるリクエスト信号のクロストークの発生可能性が十分低減されたタイヤモニタリングシステムを提供する。
【解決手段】前記リクエスト信号送信用の車体側アンテナ(車体側送信用アンテナ11〜14)と前記リクエスト信号受信用のタイヤ側アンテナ(受信アンテナ36)をコイルアンテナとし、タイヤ側アンテナのコイル軸を各タイヤ2〜5の回転軸8に平行とし、車体側アンテナのコイル軸が回転軸8に対して傾斜するように、車体側アンテナを各タイヤの上方に配置し、車体側アンテナのコイル軸が下方に向かって車両の横方向外側に傾斜するように、車体側アンテナのコイル軸の傾斜方向を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪自動車等の車両用のタイヤ圧力などをモニタリングするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、四輪自動車等の車両においてタイヤの状態を監視するシステムとして、タイヤ圧力モニタリングシステム(TPMS)がある。圧力以外にも温度、歪、回転数、加速度などをモニタリングするシステムが考案されている。
TPMSは、例えば車両のタイヤ毎に当該タイヤの近くにそれぞれ設けられた車体側送信用アンテナを介して無線信号を送信可能な車体側コントローラと、車両の各タイヤに設けられて、各タイヤの圧力を測定してその測定結果を無線信号として送信可能なセンサユニットとを備え、前記車体側コントローラが所定タイミングで特定箇所の車体側送信用アンテナから対応するタイヤのセンサユニットに対してリクエスト信号(トリガ信号)を送信し、これを受信した前記センサユニットが前記測定結果を含むアンサー信号を前記車体側コントローラに対して送信し、これを受けた前記車体側コントローラが前記測定結果を読み取って、例えば異常な圧力である場合には警報を出力する制御を実行するといったシステムである。
【0003】
なお、上記TPMSとしては、タイヤ毎の車体側送信用アンテナ(イニシエータを構成するアンテナ)を設けないで、例えばタイヤのセンサユニットから定期的に測定結果を含む無線信号を送信する一方向通信方式もある。しかしこの場合には、タイヤローテーションによりタイヤの位置が変更されることによって、どの位置(例えば四輪車の場合、前輪か後輪か、左側か右側か)のタイヤの測定結果なのかが、車体側コントローラにおいて判断できない。このため、例えばどの位置のタイヤに圧力異常が生じたかという情報を車両ユーザに報知することができないといった不都合がある。
これに対して、前述したように、タイヤ毎に車体側送信用アンテナを設けて、タイヤ毎にリクエスト信号を別個に送信し、このリクエスト信号に対するアンサー信号として各タイヤのセンサユニットからの測定結果を別個に受信するタイヤ毎の双方向通信方式とすれば、どの位置のタイヤの測定結果なのかが、車体側コントローラにおいて判断できる。
【0004】
ところで、上述したようなタイヤ毎の双方向通信方式では、特定のタイヤのセンサユニットに対して送信したリクエスト信号が、他のタイヤのセンサユニットでも受信されるクロストークが発生すると、前述したようなタイヤ位置の識別が結局不可能になる。このため、車体側送信用アンテナからのリクエスト信号の通信範囲は、当然に対応する特定のタイヤ近傍の狭い範囲のみに限定されるべきであり、前記リクエスト信号の送信出力も当然に限定される。
しかし一方で、タイヤは車両の走行によって回転し、センサユニットの受信用アンテナの位置もタイヤの回転に伴って回転移動する。このため、タイヤ側のセンサユニットの受信用アンテナの位置や姿勢は常に変動し、タイヤの回転位置によっては前記リクエスト信号が受信困難となり、前記リクエスト信号の送信出力が弱いと、前記リクエスト信号が受信できずに通信不能となる恐れがある。
【0005】
そこで従来、上述したタイヤ毎の双方向通信方式では、特許文献1に見られるように、車体側送信用アンテナ(トリガ信号発信手段)と、タイヤ側の受信用アンテナ(トリガ信号受信手段)の指向性を、何れもタイヤの回転軸方向に一致させた構成が提案されている。車体側送信用アンテナとタイヤ側の受信用アンテナの指向性をタイヤの回転軸方向に一致させると、タイヤが回転しても、受信用アンテナの指向性の方向が変化せず、しかも車体側送信用アンテナの指向性の方向と常に一致しているので、前述した通信不能となる可能性が低減される。
【0006】
【特許文献1】特開2005−1498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来の構成(各アンテナの指向性を全てタイヤ回転軸方向とする構成)であると、リクエスト信号が他のタイヤのセンサユニットでも受信されるクロストークが発生する可能性を十分低減できないばかりか、かえってこのクロストークが発生し易くなるという問題があった。というのは、上述した従来の構成の場合、全てのタイヤについて各アンテナ(車体側送信用アンテナとタイヤ側の受信用アンテナ)の指向性の方向が一致する。このため、四輪自動車などの横方向両側にタイヤが対を為して装着される車両の場合、例えば前輪左側のタイヤのセンサユニットに対して送信したリクエスト信号が、前輪右側のタイヤのセンサユニットでも受信されるクロストークが発生し易い。
【0008】
そこで本発明は、横方向両側にタイヤが対を為して装着される車両のタイヤモニタリングシステム(TPMS)などのタイヤモニタリングシステムであって、タイヤ毎の双方向通信方式を採用し、前述のクロストークの発生可能性が十分低減されたタイヤモニタリングシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願のタイヤモニタリングシステムは、走行方向に直交する横方向両側にタイヤが対を為して装着される車両において、各タイヤ毎に設けられた車体側アンテナを介して、各タイヤに対して無線信号を送信可能な車体側コントローラと、各タイヤに設けられて、各タイヤの状態を測定してその測定結果に基づいた情報を無線信号として送信可能なセンサユニットとを備え、前記車体側コントローラが各車体側アンテナを介して各センサユニットに対してそれぞれリクエスト信号を送信し、このリクエスト信号を各タイヤに設けられたタイヤ側アンテナを介して受信した各センサユニットが、前記測定結果を含む情報あるいは各センサユニットに付与された固有コードに関する情報などを含むアンサー信号を前記車体側コントローラに対してそれぞれ送信可能なタイヤモニタリングシステムであって、
前記車体側アンテナとタイヤ側アンテナをコイルアンテナによって構成し、
前記タイヤ側アンテナのコイル軸が各タイヤの回転軸にほぼ平行になるように、前記タイヤ側アンテナを前記タイヤに配置するとともに、
前記車体側アンテナのコイル軸が各タイヤの回転軸に対して平行ではなく直角になるか又は傾斜するように、前記車体側アンテナを各タイヤの近傍に配置したことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、「リクエスト信号」とは、必ずしもセンサユニットからの返信を要求するデータを含む必要はなく、この信号に応じてセンサユニットがアンサー信号を返信する起因となる信号であればよい。例えば、省電力モードとなっていていわゆるスタンバイ状態(スリープ状態)となっているセンサユニットを、通常の動作モードに起動させるウェイクアップ信号が、上記リクエスト信号を兼ねている態様でもよい。
また、「リクエスト信号」によってセンサユニットに電力を伝送する態様でもよい。
また、「車両」には、四輪自動車等の一般的な車両に加えて、一般的な車両と均等な乗物(例えば、小型飛行機等)も含まれる。例えば、小型飛行機にも発着用のタイヤがあるので、本発明を適用可能である。また、左右に一対のタイヤがある2輪車であってもよい。
【0011】
本願のタイヤモニタリングシステムでは、前述のクロストークの発生可能性が格段に低減される。
何故なら、車体側アンテナから発生する磁界は、通信すべきでない対を為す他のタイヤのタイヤ側アンテナのコイル軸に対して大きく傾くため、通信すべきタイヤのタイヤ側アンテナのコイルを通過する磁束数が十分確保される一方、通信すべきでない他のタイヤのタイヤ側アンテナのコイルを通過する磁束数は格段に減る。したがって、対を為す他のタイヤのタイヤ側アンテナによる受信レベルが格段に低下し、前述したクロストークの発生可能性が格段に低減される。
【0012】
次に、本願のタイヤモニタリングシステムの好ましい態様は、前記車体側アンテナのコイル軸が各タイヤの回転軸に対して傾斜するように、前記車体側アンテナを各タイヤの上方に配置し、前記車体側アンテナのコイル軸が下方に向かって車両の横方向外側に傾斜するように、前記車体側アンテナのコイル軸の傾斜方向を設定したことを特徴とする。
この場合、車体側アンテナを例えばタイヤハウスの内面に沿って取り付ければよいので、その取り付けが容易になる利点がある。
【0013】
また、本願のタイヤモニタリングシステムの別の好ましい態様は、前記車体側アンテナの中心位置を、車両の横方向において、前記タイヤ側アンテナの中心位置よりも車両外側に配置した態様である。
この場合には、車体側アンテナが横方向外側に離れた位置に設置されているので、離れた距離による減衰によって、対を為す他のタイヤのタイヤ側アンテナによる受信レベルがより低下し、前述したクロストークの発生可能性がさらに低減される。
なお、少なくとも上述した二つの好ましい態様を採用した場合、図3に示す後述の実験によって実証されているように、車体側アンテナのコイル軸がタイヤ回転軸に平行な場合に比較して、通信すべきタイヤのタイヤ側アンテナによる受信レベルがかえって増加し、前述した通信不能やクロストークの発生可能性がより低減される。
【発明の効果】
【0014】
本願のタイヤモニタリングシステムによれば、前述のクロストークの発生可能性が十分低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図4は、本例のタイヤモニタリングシステムの構成を説明する図である。図5は、同システムの車両における主要構成要素の配置を説明する図である。図1は、同システムの各アンテナの配置を説明する図(車両を正面から見た図)である。図2(a)は、本例の作用を説明する図であり、図2(b)は、比較例の作用を説明する図である。
車両1は、この場合図5に示す四輪自動車であり、本システムは、図4に示すように、車体側送信用アンテナ11〜15と、車体側コントローラ(ECU)20と、センサユニット(TPS)30とを備える。
【0016】
ここで、車体側送信用アンテナ11〜15は、図2に示す各タイヤ2〜6(交換用の予備タイヤ6含む)の近傍位置(各タイヤのタイヤハウス、或いは交換用タイヤ6が収納されるトランク下部等)に設けられ、車体側コントローラ20の制御によって、各タイヤ2〜6のセンサユニット30に対してリクエスト信号(LF波、例えば125kHz)を送信するためのコイルアンテナ(例えば、フェライトバーアンテナ)である。なお、LF波は、通信範囲を例えば1m程度に狭く限定する場合に有利であり、数キロメートル先までが近傍電磁界であって、アンテナ近傍に発生する磁界を伝送媒体とする通信方式、例えば非接触ICカードで利用されている通信方式(電磁誘導方式)が可能である。また、コイルアンテナは、上記通信方式に好適である。
また、車体側送信用アンテナ11〜15は、通常樹脂モールドされ、縦横厚さがそれぞれ2〜5cm程度のものである。
【0017】
車体側コントローラ20は、車体内の所定の制御ボックス内に設けられたTPMSのメインコントローラであり、マイクロコンピュータ(以下マイコンという)よりなる制御回路21や、無線信号の通信回路(LF波の送信回路とUHF波の受信回路22)や、受信アンテナ(UHF波の受信アンテナ23)を有する。なおこの場合、制御回路21がLF波の送信回路として機能しているが、LF波の送信回路を制御回路21と別個に設けてもよい。
この車体側コントローラ20は、例えば定期的に各タイヤの圧力監視処理(詳細後述する)を順次実行し、例えば圧力が適正範囲内にないタイヤがある場合には、そのタイヤ位置と圧力異常を示す警報(音や光や文字表示による警報)を出力する制御を実行して運転者に知らせるといったTPMSとしての基本的な制御処理を行う。
なお、この車体側コントローラ20の制御回路21は、例えば、タイヤ圧力監視が必要な状態(例えば、エンジン稼動時等)になるときにのみ起動することによって、消費電力が必要最小限に抑えられている。
【0018】
次に、センサユニット30は、各タイヤ内(例えばバルブの位置)に設けられ、制御回路31(例えば、マイコンよりなるもの)や、各タイヤの圧力を計測する圧力センサ32と、このセンサが計測した圧力データを無線信号(UHF波)として送信する送信回路33及び送信用アンテナ34と、前記リクエスト信号を受信するための受信回路35及び受信アンテナ36を備える。
ここで、センサユニット30の制御回路31は、定常的には、省電力モードであるスタンバイ状態となっていて、適宜、このスタンバイ状態から通常モード(スタンバイ状態でない起動状態)に切り替わって動作する構成となっている。
また、センサユニット30の受信アンテナ36は、前述の通信方式(例えば、電磁誘導方式)に好適なコイルアンテナ(例えば、フェライトバーアンテナ)である。また、センサユニット30(受信アンテナ36を含む)は、通常樹脂モールドされ、縦横厚さがそれぞれ1〜3cm程度のものである。
【0019】
次に、リクエスト信号送受信用のアンテナの特徴的な配置について、図1により説明する。
センサユニット30の受信アンテナ36(タイヤ側アンテナ)は、図1に示すように、そのコイル軸が各タイヤの回転軸8に平行になるように配置されて、各タイヤのホイールに固定されている。
これに対して、交換用タイヤ6を除く各タイヤ2〜5に対応する車体側送信用アンテナ11〜14(車体側アンテナ)は、図1に示すように、車両のタイヤハウス7にネジ止め等によって固定状態に取り付けられている。即ち、車体側送信用アンテナ11〜14は、そのコイル軸が各タイヤの回転軸8に対して傾斜するように、各タイヤの上方に配置されている。そして、車体側送信用アンテナ11〜14のコイル軸が下方に向かって車両の横方向外側に傾斜するように、車体側送信用アンテナ11〜14のコイル軸の傾斜方向が設定されている。このような傾斜方向であると、車体側送信用アンテナ11〜14を例えばタイヤハウス7の内面に沿って取り付ければよいので、その取り付け(タイヤやサスペンションなどの機構との干渉を避けた上での取り付け)が容易になる利点がある。
【0020】
なお、車体側送信用アンテナ11〜14のコイル軸の傾斜角度θ(回転軸8の方向に対する角度、図1に示す)は、例えば70度程度とすることが好ましい。
また図1に示すように、車体側送信用アンテナ11〜14の中心位置は、車両の横方向において、受信アンテナ36の中心位置よりも車両外側に距離L離れて配置することが好ましい。ここで距離Lは、特に限定されるものではないが、クロストークを防止するためには、なるべく大きく設定すべきである。
【0021】
次に、車体側コントローラ20の制御回路21が実行する圧力監視処理を説明する。
車体側コントローラ31の制御回路21は、起動した後、圧力監視処理を各タイヤについて例えば定期的に実行する。
この圧力監視処理では、まず、所定の検出タイミングであるか否かを判定する。この検出タイミングとは、検出対象のタイヤの圧力を読み取って確認すべきタイミングを意味する。例えば、前左側タイヤ2、次いで前右側タイヤ3、次いで後左側タイヤ4、次いで後右側タイヤ5、予備タイヤ6といったように、圧力を順に確認してゆくときに、検出対象のタイヤの順番が回ってきたタイミングである。
そして、検出タイミングであれば、次のリクエスト信号送信ステップを実行し、検出タイミングでなければ、処理を終了する。
リクエスト信号送信ステップでは、検出対象のタイヤに対する車体側送信用アンテナから規定のリクエスト信号を前述の通信方式によって送信する。
【0022】
次に、上記リクエスト信号送信ステップを経ると、次の受信ステップにおいて、所定の受信待ち時間の間に、正規のアンサー信号を受信したか否か判定する。詳しくは、予め記憶された車体固有のIDコードと一致するコードが所定の箇所に含まれた信号が、受信用アンテナ23を介して受信されたか否か判定する。そして、このような正規のアンサー信号が所定の受信待ち時間の間に受信されれば、次のデータ読み取りステップに進み、正規のアンサー信号を受信しないで上記受信待ち時間が経過した場合には、例えば、念のため警報を出力する。
【0023】
次いで、データ読み取りステップでは、受信したアンサー信号に含まれる圧力の測定データを読み取り、この測定データが正常か否か(例えば、圧力が適正範囲にあるか否か)を判定する。そして、正常であれば処理を終了し、正常でなければ、異常報知ステップに進む。なお、ここでの圧力判定は、圧力が高すぎるか否かについても、実行するようにしてもよい。また、圧力が適正範囲にある場合でも、圧力が低下ぎみであること(タイヤの圧力補充が好ましい状態)などを判定するようにしてもよい。
そして異常報知ステップでは、検出対象のタイヤが圧力異常であること(或いは、上述したように圧力が低下ぎみであること、若しくは圧力の値そのものなど)を示す警報(音や光や文字表示による警報)を出力する制御を実行して、処理を終了する。
なお、受信ステップにおいて正規のアンサー信号が受信できなかった場合には、検出対象であるタイヤのセンサユニットと通信ができない異常が発生していることを示す別の警報を出力するようにしてもよい。
【0024】
次に、センサユニット30の制御回路31が実行する圧力データ送信処理を説明する。
即ち、例えばリクエスト信号に相当する規定周波数で規定強度以上の信号(復調前)を受信すると通常モードに移行してこの信号の受信処理を実行し、まずこの信号が正規のリクエスト信号か否か判定する。具体的には、受信した信号(復調後の2値データ列)を分析して、予め記憶された車体固有のIDコードと同じデータが、受信した信号の所定箇所(例えばID部)に含まれるか否か判定し、肯定的であれば正規のリクエスト信号であると判定する。
【0025】
そして、上記判定処理で正規のリクエスト信号であると判定すれば、前記IDコードと搭載されたタイヤの最新の圧力データを含むアンサー信号を所定回数送信する。また、上記判定処理で正規のリクエスト信号であると判定しなかった場合、及び上記アンサー信号の送信を終了した後には、スタンバイ状態に戻って、再度の信号入力を待つ。
【0026】
以上説明した本例のシステムによれば、所定の検出タイミングで各タイヤのセンサユニット30と車体側コントローラ20との間で、リクエスト信号とアンサー信号の送受信がなされ、車体側コントローラ20でアンサー信号が受信できないか、受信したアンサー信号に含まれる圧力測定データが異常であると、検出対象のタイヤが圧力異常であることを示す警報が出力され、タイヤ毎の双方向通信式のTPMSとしての基本的機能が実現される。
【0027】
しかも、リクエスト信号送受信用の各アンテナ11〜14,36が、図1に示すように配置されているため、前述の通信不能やクロストークの発生可能性が格段に低減される。
何故なら、例えば車体側送信用アンテナ12から発生する磁界は、図2(a)に示すように傾くため、通信すべきタイヤ3の受信アンテナ36(図2(a)における左側の受信アンテナ36)のコイルを通過する磁束数が十分確保される一方、通信すべきでない他のタイヤ2の受信アンテナ36(図2(a)における右側の受信アンテナ36)のコイルを通過する磁束数は格段に減る。通信すべきでない他のタイヤ2の受信アンテナ36のコイル軸は、磁束の方向に対して垂直に近くなるからである。したがって、対を為す他のタイヤ2の受信アンテナ36による受信レベルが格段に低下し、前述したクロストークの発生可能性が格段に低減される。
特に本例の場合には、前述した距離Lだけ車体側送信用アンテナ11〜14が横方向外側に離れた位置に設置されているので、距離による減衰によって、対を為す他のタイヤの受信アンテナ36による受信レベルがより低下し、前述したクロストークの発生可能性がより低減される。
【0028】
なお図2(b)は、リクエスト信号送受信用の各アンテナ11〜14,36が全て回転軸8に対して平行に配置された場合(比較例)の磁界の状態を示す図である。この場合、通信すべきタイヤ3の受信アンテナ36(図2(b)における左側の受信アンテナ36)のコイルを通過する磁束数が確保される一方、通信すべきでない他のタイヤ2の受信アンテナ36(図2(b)における右側の受信アンテナ36)のコイルを通過する磁束数も相当程度生じる。このため、例えば前輪左側のタイヤ2のセンサユニットに対して送信したリクエスト信号が、前輪右側のタイヤ3のセンサユニットでも受信されるといったクロストークが発生し易い。
なお、受信アンテナ36の上下方向位置は、タイヤの回転位置によって変動するが、図2(a),(b)では、図中左側の受信アンテナ36(タイヤ3の受信アンテナ)よりも、図中右側の受信アンテナ36(タイヤ2の受信アンテナ)の方が、タイヤの回転によって若干上方に位置する場合を例示している。
【0029】
なお、上記図2(b)で説明したクロストークを、車体側送信用アンテナ11〜14の送信出力等の仕様を車種に応じて微妙に調整し設定することによって回避することは、必ずしも不可能ではない。しかしその場合には、車種毎にシステムの仕様が異なることになり、共用化が図れないという不利がある。しかし、図2(a)に示した本願発明の構成であれば、車体側送信用アンテナ11〜14の送信出力等の仕様を相当の自由度を持って設定しても、クロストークが容易に回避できるので、車種の違いにかかわらずシステムの仕様を共用化できる利点がある。
【0030】
次に図3(a)は、本例の作用を実証する実験を説明する図であり、図3(b)は、同実験の結果を示す図である。この実験は、タイヤハウス7の内面に沿って車体側送信用アンテナ11〜14(LFI、即ちLF波のイニシエータ)の取付位置及び取付角度を変えて、対象輪(通信すべきタイヤ)と非対象輪(通信すべきでない対を成すタイヤ)の受信アンテナ36(TPSのアンテナ)でのリクエスト信号(LF波)の受信レベルを、タイヤの回転角度毎に測定したものである。測定は、図3(a)に示すように、車体側送信用アンテナ11〜14の取付角度が0度の場合(タイヤ回転軸と平行な場合)と、同取付角度が70度の場合(タイヤ回転軸に対して70度傾斜した場合)とで行った。またタイヤの回転角度は、受信アンテナ36が(即ち、TPSが)最低位置にくる0度から、最高位置にくる180度までの範囲で、10度刻みで変化させて測定を行った。そして図3(b)では、車体側送信用アンテナ11〜14の取付角度が0度の場合の受信レベルを基準とする、車体側送信用アンテナ11〜14の取付角度が70度の場合の受信レベルの相対値(dB)を、実験結果として表示している。この実験結果によれば、図3(b)に示すように、上記取付角度を0度から70度に変更することによって、非対象輪において最低でも−7.26dB(約1/5)の受信レベルの低下があり、対象輪においては、全てのタイヤ角度において受信レベルが逆に増加することが実証された。
【0031】
なお、本発明(本願のタイヤモニタリングシステム)は上述した形態例に限られず、各種の変形や応用があり得る。
例えば、車体側送信用アンテナ11〜14の(タイヤ側アンテナ)のコイル軸の角度は、各タイヤの回転軸に対して直角であってもよいし、上記形態例とは逆方向に傾いた状態としてもよい。タイヤの回転軸に対して直角から±40度程度の範囲で、同様の効果(非対象輪へのクロストークが防止される効果)が得られると、発明者は認識している。
また、本発明の「タイヤの状態」は、タイヤ圧力に限定されず、タイヤの温度、歪、回転数、加速度などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】タイヤモニタリングシステムのLFアンテナの配置を説明する図である。
【図2】(a)は、本発明の作用を説明する図であり、(b)は、比較例の作用を説明する図である。
【図3】(a)は、本発明の作用を実証する実験を説明する図であり、(b)は、同実験の結果を示す図である。
【図4】タイヤモニタリングシステムの構成を説明する図である。
【図5】同システムの車両における主要構成要素の配置を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
2〜5 タイヤ
8 タイヤの回転軸
11〜14 車体側送信用アンテナ(車体側アンテナ)
20 車体側コントローラ(ECU)
30 センサユニット(TPS)
36 受信アンテナ(タイヤ側アンテナ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行方向に直交する横方向両側にタイヤが対を為して装着される車両において、各タイヤ毎に設けられた車体側アンテナを介して、各タイヤに対して無線信号を送信可能な車体側コントローラと、各タイヤに設けられて、各タイヤの状態を測定してその測定結果に基づいた情報を無線信号として送信可能なセンサユニットとを備え、前記車体側コントローラが各車体側アンテナを介して各センサユニットに対してそれぞれリクエスト信号を送信し、このリクエスト信号を各タイヤに設けられたタイヤ側アンテナを介して受信できる各センサユニットを有するタイヤモニタリングシステムであって、
前記車体側アンテナとタイヤ側アンテナをコイルアンテナによって構成し、
前記タイヤ側アンテナのコイル軸が各タイヤの回転軸にほぼ平行になるように、前記タイヤ側アンテナを前記タイヤに配置するとともに、
前記車体側アンテナのコイル軸が各タイヤの回転軸に対して平行にならないように、前記車体側アンテナを各タイヤの近傍に配置したことを特徴とするタイヤモニタリングシステム。
【請求項2】
前記車体側アンテナのコイル軸が各タイヤの回転軸に対して傾斜するように、前記車体側アンテナを各タイヤの上方に配置し、
前記車体側アンテナのコイル軸が下方に向かって車両の横方向外側に傾斜するように、前記車体側アンテナのコイル軸の傾斜方向を設定したことを特徴とする請求項1に記載のタイヤモニタリングシステム。
【請求項3】
前記車体側アンテナの中心位置を、車両の横方向において、前記タイヤ側アンテナの中心位置よりも車両外側に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤモニタリングシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−203960(P2007−203960A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27342(P2006−27342)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】