説明

タイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置

【課題】 タイヤ付きホイールから、ビード部を全く損傷することなくタイヤの再利用可能にホイールを除去する。
【解決手段】ホイールHLのセンタ孔Hに挿通するセンタ軸Sと、センタ軸Sを挿通した状態のタイヤ付きホイールのタイヤT部分のみを支持する上下動自在のタイヤ支持台20と、タイヤ支持台20上のタイヤTのホイールリムH2をタイヤTに干渉することなく斜め上方から突き潰すプシャ60とを組み合わせることによって、プシャ60によってホイールリムH2の複数箇所を一箇所ずつ突き潰した後、タイヤ支持台20を上昇させてホイールHLからタイヤTを抜き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール付き廃棄タイヤのタイヤを再利用するに際して、ホイールにタイヤが付いた状態において、タイヤに負荷を加えることなくホイールのみを破壊または押し潰すことによって、タイヤを損傷することなくホイールから抜き取ることができるタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国において廃車処分される車両のなかには、まだ十分に使用可能な状態のタイヤが取り付けられているものが多い。これは、廃車処分の原因の多くは、タイヤの損耗のためではなく車両の老朽化や事故を理由とするものであるからである。また、わが国では、車検制度との関係で使用することができない状態のタイヤであっても、車検制度がないか、あっても規制が緩いアジア諸国等においては、十分に使用可能であることが多い。このような、事情を背景に、使用済みタイヤ(中古、廃棄処分用を含む)は、自動車関連輸出品目の一つを占めている。
【0003】
ただし、使用済みタイヤを輸出する際には、多くの場合、タイヤをホイールから取り外す必要がある。ホイールは、格別に良質な金属資源であるとともに、わが国と輸出先国とでは、ホイールデザインそのもの、またはホイール取付けボルトのPCD等の規格が異なるからである。取り外されたホイールは、鉄系のものとアルミ系のものとに分別されて、金属スクラップ材料として利用される。
【0004】
なお、このようにタイヤをそのまま再利用するとともに、ホイールをスクラップ化する場合には、タイヤについて、特にそのビード部を損傷することなくホイールから分離する必要がある。再利用に際してビード部からのエア漏れを防止するためである。しかし、手作業で実施する場合においても機械的に実施する場合においても、タイヤの着脱作業自体、タイヤレバーを強い力でビード部に擦り付けることを作業内容とするタイヤビード部に大きな負担をかける作業であるとともに、特に、使用済みタイヤにおいては、ゴム系の経時的変質によりビード部が損傷を受け易いという問題がある。一方、ホイールについては、再生過程に流通させるために減容した状態とすることが好ましい。
【0005】
タイヤ付きホイールからタイヤを取り外す装置としては、従来、次のような装置が知られている。
【特許文献1】特開2004−330860号公報
【特許文献2】特開2005−29004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイヤをそのまま利用するとともに、ホイールをスクラップ化する目的に対して、上記特許文献に示される装置を用いる場合には、次のような問題が発生する。
【0007】
特許文献1に示される装置の概念的動作は、強制的に回転駆動するテーブルにタイヤを固定し、回転するタイヤにローラを押し付けてホイールリムからタイヤビード部を剥離し、剥離した箇所から爪付きのレバーを差し込んでビード部の一部をホイールリムの外側に引き出し、この状態でタイヤを強制回転させることにより、ビード部全体をホイールリムの外側に引き出すようにするものである。
【0008】
上記装置の動作は、職人が数本のタイヤレバーを使用して手作業特有の加減をしながらタイヤを取り外す動作を機械力に依存して強引に実行するものであり、ビード部に対して強大な摩擦負荷、曲げ負荷、引っ張り負荷が加わるため、新タイヤまたは取り外したタイヤを使用しない目的には適用可能であっても、使用済みタイヤにおいては、ビード部の裂傷、ひび割れ、ゴム剥離の発生率が高すぎて適用不能であった。一方、ホイールは、そのままの形態で残るため、スクラップ化するには、別途、減容処理が必要となる。もっとも、このような問題は、この装置の欠点と言うべきものではなく、あくまでも、本願の目的に使用した場合に生じる問題であるに過ぎない。
【0009】
特許文献2に示す装置の動作は、直立状態に姿勢固定したタイヤ付きホイールをプレス装置のラムに取り付けた大型の平タガネ様のV字形の金具によって、タイヤごとホイールを径方向から押し潰すというシンプルな動作である。なお、V字形の金具は、タイヤのトレッド幅方向を向けて使用される。装置作動後、ホイールにはV字形の大きな凹みが残り、タイヤはもとの形状に復帰するとの説明がなされている。
【0010】
本願のタイヤの使用目的との関係においては、ホイールが変形することには、何ら支障がないが、タイヤが大きなダメージを受けることが避けられない。タイヤは、外見的にもとの形状に復帰したとしても、ゴム系の内部亀裂や、トレッド部およびビード部内のカーカスベルトやスチールワイヤには、回復不能な塑性変形が残るからである。もっとも、この装置自体は、タイヤを細断して熱源として利用することを目的とするものであるため、タイヤが損傷することには、何ら不都合はない。
【0011】
なお、出願人の知見によれば、使用済みタイヤの再利用を目的として、タイヤ付きホイールからホイールを取り外す装置として、厚肉円筒の下端面に大きな山谷の歯型を形成した押し型を有する縦型プレス装置相当のホイールブレーカ装置が実用に供されている。このホイールブレーカ装置は、水平姿勢に位置決めしたタイヤ付きホイールのホイールを押し型によってタイヤのサイドウォールの一部ごと上下方向に一気に押し潰す方式である。
【0012】
上記装置の問題点は、まず、ホイール全体を一様に押し潰す方式であるため、装置に過大な出力が要求されることである。このため装置が大規模化し、このことにより導入コストが高額となること、また、ホイールとともに押し潰されたタイヤ内部が負圧のまま気密状態となって、もとの形状に復帰しないという奇妙な不都合が頻発するという問題がある。この状態のタイヤは、張り付いた左右のビード部の間にバール等を差し込んで空気を疎通させれば解消するのであるが、タイヤが非常に強靭なものであるため、この作業自体が新たに大きな負担となっている。しかも、装置が大規模であるにもかかわらず、アルミホイールには、適用することができないという問題があった。アルミホイールをホイールのリム幅方向に一気に押し潰すには、強大な圧力を必要とするため、タイヤを取り外すという用途との兼ね合いにおいては、採算目途の策定が不可能であるからである。
【0013】
本発明は、上記従来の技術問題を踏まえて検討した結果、タイヤ付きホイールのホイールリムを一気に押し潰すのではなく、ホイールリムの複数箇所を一箇所ずつ最も変形が容易な内側方向に押し潰す方法を採用することによって、小型の装置規模であっても、鉄ホイールにもアルミホイールにも適用が可能であって、タイヤにまったく負担をかけずに、しかも、タイヤを抜き取った時点でホイールをある程度まで減容した状態に処理することができるタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採用する。
【0015】
本発明の請求項1に記載のタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置は、フレームに直立姿勢で固定設置するセンタ軸と、中心部にホイール通過孔を有し、センタ軸を取り囲むように水平姿勢で配置するタイヤ支持台と、タイヤ支持台を上下動自在に支持する上下動機構と、スライドベースとスライダと駆動源との組合せからなるプシャとを備え、この際のプシャは、スライダをセンタ軸に向けて斜め下向き姿勢で設置され、ホイールのセンタ孔にセンタ軸を挿通してタイヤ支持台上に位置決めしたタイヤ付きホイールのホイールリムの複数箇所をスライダをセンタ軸方向に駆動することによって、斜め上方からタイヤに干渉することなくセンタ軸側に突き潰して押さえ込むとともに、タイヤ支持台は、上下動機構による上昇動作によって、ホイールに干渉することなくタイヤを上方に突き上げてホイールから脱出させることを特徴とする。
【0016】
上記構成におけるセンタ軸は、直立姿勢でタイヤ支持台のホイール通過孔の中央位置に直立した配置となる。そこで、タイヤ付きホイールのセンタ孔にセンタ軸を通すように落とし込むことによって、格別の位置決め作業を要することなくタイヤ支持台上にタイヤ付きホイールを水平姿勢で位置決めすることができる。なお、タイヤ支持台には、ホイール通過孔が設けられていることから、タイヤ支持台とホイールが干渉することはなく、タイヤ支持台は、タイヤのサイドウォール部分のみを支持した状態となる。また、支持したタイヤ付きホイールの上下位置は、タイヤ支持台を支持している上下動機構によってホイールのサイズごとに調節することができる。
【0017】
プシャは、駆動源によってスライダを駆動することができる。プシャのスライダは、センタ軸に向けて斜め下向き姿勢で設置されている。したがって、ホイールのホイールリムがスライダの進路に一致するようにホイールの上下位置決めがなされている適正な段取りを前提とする場合、スライダをセンタ軸側に押し出す向きにプシャを駆動すると、スライダは、進路位置に存在するホイールリムに衝突し、ホイールリムのこの部分をセンタ軸側に押し曲げるように変形させることができる。この際、ホイールの逃げは、センタ軸によって制止される。また、スライダは、斜め上方からホイールリムに接近する動作であるため、タイヤとの干渉を避けることができる。
【0018】
プシャのスライダを後退させると、タイヤ付きホイールは、単にタイヤ支持台に載っているだけの無拘束状態であるから、作業員は、センタ軸を中心にタイヤを回転させる簡単な操作により、スライダに対するタイヤの向きを変えることができる。次いで、再びプシャを駆動することにより、ホイールの異なる箇所を押し潰すことができる。
【0019】
上記操作を通常、5ないし6回反復し、最後の操作において、スライダを後退させることなく、すなわち、スライダでホイールを押さえ込んだ状態で上下動機構を介してタイヤ支持台を上昇動作させることにより、ホイールからタイヤを抜き取ることができる。タイヤ支持台は、ホイール通過孔によってホイールとの干渉を回避しながらタイヤのみを上方に突き上げることができるからである。
【0020】
本発明の請求項2に記載のタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置は、請求項1の構成におけるタイヤ支持台が、上下動機構によって支持する支持ベースと、支持ベースに回転自在に取り付けるロータリベースとの2重構造を備えることを特徴とする。
【0021】
上記構成においては、タイヤは、回転自在のロータリベースによって支持されることとなる。すなわち、タイヤ支持台上に置かれたタイヤは、センタ軸を中心に僅かの操作力で回転させることができる。したがって、スライダに対するタイヤの向きを簡単に変更することができるので、ホイールリムの複数箇所を順次に突き潰す作業の迅速化、省力化が実現される。
【0022】
本発明の請求項3に記載のタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置は、請求項2におけるロータリベースを駆動モータによって角度割出し可能に積極駆動することを特徴とする。
【0023】
上記構成においては、タイヤ支持台上に載せたタイヤを所定角度ずつ、間欠的に駆動することができるので、ホイールリムの複数箇所を順次に突き潰す作業を自動化することができる。ただし、この場合には、スライダがホイールリムを押圧するタイミングでロータリベースが停止し、スライダが後退動作しているタイミングでロータリベースの割出し動作が実行されるように、ロータリベースの割出し動作とスライダの進退動作とを同期制御するものとする。
【0024】
本発明の請求項4に記載のタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置は、センタ軸の直径をホイールのセンタ孔に対して遊嵌直径に設定するとともに、タイヤ支持台を複数の上下動機構を使用して支持することによって、プシャのスライダに対するタイヤ支持台の角度を微調整可能とすることを特徴とする。
【0025】
上記構成においては、ホイールリムから張り出しているタイヤのサイドウォールの張出し量の違いに対する適合性を向上させることができる。タイヤのサイドウォールの張出し量は、ホイールのリム幅と、装着するタイヤのトレッド幅の組合せによって変化する。例えば、リム幅の狭いホイールにトレッド幅の広いタイヤを装着した場合には、タイヤのビード部が狭いホイールに引き寄せられた装着状態となるため、相対的にサイドウォールの張出し量が増大する。そして、このようなタイヤ付きホイールの場合においては、ホイールリムに向けられたスライダの進路内に、サイドウォールの張出し部分が入り込んだ状態となることがある。この状態で、スライダを駆動するとスライダがサイドウォールを傷つけてしまうおそれがある。そこで、このような場合には、タイヤ支持台を支持している複数の上下動機構のうちのいずれかを選択して、または、これらを不均等に作動させてタイヤ支持台を僅かに傾斜させることによって、サイドウォールとスライダとの干渉を回避することができるのである。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、ホイールのセンタ孔に挿通するセンタ軸と、センタ軸を挿通した状態のタイヤ付きホイールのタイヤ部分のみを支持する上下動自在のタイヤ支持台と、タイヤ支持台上のタイヤのホイールリムをタイヤに干渉することなく斜め上方から突き潰すプシャとを組み合わせることによって、プシャによってホイールリムの複数箇所を一箇所ずつ突き潰した後、タイヤ支持台を上昇させてホイールからタイヤを抜き取ることができる。すなわち、ホイールの一部分ずつ順次に変形させる動作であることにより、プシャの出力に代表されるところの装置規模を小型化しながら、ホイール強度の高いアルミホイールにも簡単に適用することができる。また、ホイールリムの片側を完全に内側に変形させてタイヤを抜き取る方式であるため、タイヤのビード部に、無理な機械力が負荷されることがなく、この作業によるビード部の損傷を皆無とすることができる。さらには、金属スクラップとされるホイールの減容にも一定の寄与をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を引用しながら本発明のタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置の実施の形態例を説明する。
【0028】
ホイールブレーカ装置は、フレーム50と、タイヤ支持台20と、上下動機構30と、プシャ60を主要部材としてなる(図1,図2)。
【0029】
フレーム50は、十分な厚みの構造用鋼板を材料とする概ね箱型のフレームであり、水平部51と、水平部51の片側に寄せて直立する姿勢の直立部53とからなり、直立部53の天面には、略45度に傾斜したスラントベース54が取り付けられている。
【0030】
フレーム50の水平部51には、センタ軸Sが直立姿勢で立設されている。センタ軸Sは、上端側を水平部51の天板5A上に突出させた状態で、天板5Aとその下方の底板52とに溶接固定されて、大きな外力に耐えることができる。センタ軸Sは、水平部51の幅中央位置において直立部53の前方に位置しており、直立部53のスラントベース54の傾斜方向は、センタ軸Sに向かって斜め下向き姿勢となる傾斜方向である。なお、市販乗用車に使用されているタイヤのホイールサイズは、12インチから19インチ程度までものであるが、ホイールHLのハブH1の中央位置に設けられるセンタ孔Hのサイズには、ホイールHLのサイズの違いのように大きな違いはなく、本発明のホイールブレーカ装置におけるセンタ軸Sの直径は、もっとも小径のセンタ孔Hに遊嵌可能なサイズに設定されている。
【0031】
タイヤ支持台20は、下側環状板21と上側環状板22とを2枚重ねにした構成であり、中央部分は、円形の大きな開口部であるホイール通過孔2Hになっている。このホイール通過孔2Hは、19インチのホイールHLが余裕を持って通過できるサイズに設定されている。また、上側環状板22は、下側環状板21をベースとして、2枚重ね状態を維持したまま回転動作することができる。
【0032】
タイヤ支持台20は、センタ軸Sを取り囲むようにして水平部51の天板5A上に水平姿勢で配置され、水平部51内に設置する上下動機構30によって上下動自在に支持されている。上下動機構30の基本的な目的は、タイヤ支持台20を上下方向に駆動鶴ことである。したがって、パンタグラフジャッキのような機構を採用することもできるが、本実施の形態では、独立駆動可能な3基の油圧シリンダ31…による3点支持方式を採用している。
【0033】
プシャ60は、スライドベース61とスライダ62と駆動源63の組合せからなり、フレーム50の直立部53のスラントベース54上に設置されている。つまり、プシャ60は、斜め下方に位置するセンタ軸Sの方を向けて設置されていることになる。
【0034】
スライドベース61は、いわゆるガイドレールであって、スラントベース54上に2本並列に敷設されている。スライダ62は、2本のスライドベース61,61を跨ぐ態様で摺動自在に組み付けられている。スライダ62の駆動源63には、油圧シリンダ6Cが採用されている。油圧シリンダ6Cは、スラントベース54の後部フランジ55に固定され、そのロッド6Bがスライダ62に連結されている。スライダ62には、先端部にブレークチップ6Dを取り付けた延長アーム64が固定され、延長アーム64を介してホイールHLに作用する構成である。なお、プシャ60の駆動源63としては、油圧モータと送りねじ軸の組合せや、電動モータと送りねじ軸の組合せ等の直線駆動機構を採用することもできる。
【0035】
本発明のタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置におけるタイヤ支持台20は、角度割出し可能に積極駆動する構成とすることもできる(図3(A),(B))。
【0036】
この形態における上側環状板22の裏面には、外歯のリングギヤ23が取り付けられており、下側環状板21は、リングギヤ23の内側に収納された状態で組み合わせられている。一方、下側環状板21には、モータブラケット21Aが形成され、モータブラケット21Aには、回転数検出機能を備える駆動モータM1が出力軸を上に向けて固定されている。駆動モータM1の出力軸は、リングギヤ23の側方に抜け出しており、出力軸に固定するピニオンギヤ24を介してリングギヤ23に噛合している。
【0037】
駆動モータM1は、スライダ62が後退するタイミングで、上側環状板22を60度ずつ角度送りするように設定されている。また、上下動機構30が作動する際には、タイヤ支持台20に伴って上下動する構成である(図3(B))。
【0038】
上記実施の形態に示すタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置は、次のような要領で使用することができる(図4,図5,図6)。
【0039】
先ず、プシャ60のスライダ62が後退している状態でタイヤ支持台20上にタイヤ付きホイールTYをセットする。タイヤ付きホイールTYは、ハブH1のセンタ孔Hにセンタ軸Sを挿通することによって位置決めされるため、格別の位置決め作業は不要である(図4(A))。
【0040】
次いで、ホイールリムH2の直前位置にブレークチップ6Dがくるようにスライダ62を前進させて、上下動機構30によってレベル調節をする(図4(B))。レベル調節は、同一直径のホイールHLであってもリム幅が異なることがあるために実施するものであり、ホイールリムH2(詳細には、ホイールリムのフランジ部分の最外周部分)がブレークチップ6Dの進路内に位置するようにタイヤ支持台20を介してタイヤ付きホイールTYを上下微動させて行う。この際、ホイールリムH2がブレークチップ6Dの進路内に位置するかどうかの判断は、目測によるが、ブレークチップ6DとホイールリムH2を接近させていることにより、容易に判定することができる。
【0041】
上記レベル調節作業は、フレーム50の水平部51の天板5Aに上下動機構30を通過させるために設ける透孔5H付近に、上下動機構30を構成する油圧シリンダ31のロッドの作動量を検出する近接センサを設け、ホイールHLのリム幅ごとにタイヤ支持台20の高さをプリセットするようにしてもよい。また、ブレークチップ6Dの進路内にタイヤTのサイドウォールT2が張り出すような場合には、上下動機構30を構成する複数の油圧シリンダ31…を不均等に駆動することによってタイヤ支持台20を傾斜させることもできる。この際には、油圧シリンダ31とタイヤ支持台20との連結部に角度変位を吸収する機械要素を介装することが好ましい。
【0042】
タイヤ付きホイールTYの位置決め終了後、スライダ62を介してブレークチップ6Dを前進駆動することによって、ホイールリムH2の一部をめくり起こしてセンタ軸S側に押し曲げるように変形させることができる(図5(A))。この際、スライダ62によってホイールリムH2に加えられる圧力は、センタ軸Sによって受け止められるため、タイヤ支持台20を支持している上下動機構30に過大な負荷が加わるようなことにはならない。また、ホイールリムH2を必要以上に変形させる必要はなく、その部分におけるタイヤTのビード部T1が露出する程度で足りる。
【0043】
ホイールリムH2の一箇所に対する突き潰し作業終了後、スライダ62を後退させた上で、センタ軸Sを中心にタイヤを所定角度順次に回転させ、ホイールHLの加工位置を変更する。タイヤ付きホイールTYは、タイヤ支持台20のロータリベース22上に載っているため、手作業で簡単に回転させることができる。また、ロータリベース22を駆動モータM1で角度割り出し可能に積極駆動する実施の形態においては、スライダ62を後退させると同時に、タイヤTは、自動的に角度送りされることとなる。
【0044】
ホイールHLは、5箇所ないし6箇所突き潰すことによってビード部T1全体を露出させることが可能であり、したがって、タイヤTを手動で角度送りする場合も、自動で角度送りする場合も60度ないし70度ずつ送ることになる(図6(A))。そして、最後の突き潰し箇所において、スライダ62を後退させずにブレークチップ6DによってホイールHLを押さえ込んだ状態で上下動機構30を介してタイヤ支持台20を突き上げる、つまり、タイヤTのみを突き上げることによって、ホイールHLとタイヤTとを無理なく分離することができる(図6(B))。
【0045】
すなわち、ホイールHLの上側のホイールリムH2は、複数方向からセンタ軸S側に突く潰されることによって、丁度、朝顔の花弁状に折畳まれた状態に変形し、タイヤTのビード部T1を拘束することができないからである。なお、同図(B)においては、説明を分かり易くするために上下動機構30を大きく作動させているが、実際の作業においては、下側のホイールリムH2からビード部T1が脱出する僅かの作動量で足りる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のホイールブレーカ装置の実施の形態を示す側面図である。
【図2】上記実施の形態におけるホイールブレーカ装置の平面図である。
【図3】本発明のホイールブレーカ装置の他の実施の形態を示す要部の断面図である。
【図4】本発明のホイールブレーカ装置の実施の形態における動作説明図である。
【図5】本発明のホイールブレーカ装置の実施の形態における動作説明図である。
【図6】本発明のホイールブレーカ装置の実施の形態における動作説明図である。
【符号の説明】
【0047】
TY タイヤ付きホイール
T タイヤ
HL ホイール
H2 ホイールリム
S センタ軸
H センタ孔
M1 駆動モータ
20 タイヤ支持台
21 支持ベース
22 ロータリベース
2H ホイール通過孔
30 上下動機構
50 フレーム
60 プシャ
61 スライドベース
62 スライダ
63 駆動源




【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに直立姿勢で固定設置するセンタ軸と、中心部にホイール通過孔を有し前記センタ軸を取り囲むように水平姿勢で配置するタイヤ支持台と、該タイヤ支持台を上下動自在に支持する上下動機構と、スライドベースとスライダと駆動源との組合せからなるプシャとを備え、
前記プシャは、前記スライダを前記センタ軸に向けて斜め下向き姿勢で設置され、ホイールのセンタ孔に前記センタ軸を挿通して前記タイヤ支持台上に位置決めしたタイヤ付きホイールのホイールリムの複数箇所を前記スライダを前記センタ軸方向に駆動することによって、斜め上方からタイヤに干渉することなく前記センタ軸側に突き潰して押さえ込み、
前記タイヤ支持台は、前記上下動機構による上昇動作によって、ホイールに干渉することなくタイヤを上方に突き上げてホイールから脱出させることを特徴とするタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置。
【請求項2】
前記タイヤ支持台が、前記上下動機構によって支持する支持ベースと、該支持ベースに回転自在に取り付けるロータリベースとの2重構造を備えることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置。
【請求項3】
前記ロータリベースを駆動モータによって角度割出し可能に積極駆動することを特徴とする請求項2に記載のタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置。
【請求項4】
前記センタ軸の直径をホイールのセンタ孔に対して遊嵌直径に設定するとともに、前記タイヤ支持台を複数の前記上下動機構を使用して支持することによって、前記プシャのスライダに対する前記タイヤ支持台の角度を微調整可能とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ付きホイールのホイールブレーカ装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−51279(P2009−51279A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217980(P2007−217980)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(599102321)
【Fターム(参考)】