説明

タイヤ外層用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】広い環境温度域で優れた耐オゾン性が得られるとともに、変色を良好に抑制できるタイヤ外層用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】炭素数20〜32の各ノルマルアルカンと、フェニレンジアミン系老化防止剤及び/又はキノン系老化防止剤とを含み、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、前記炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量が0.7〜3.5質量部、前記フェニレンジアミン系老化防止剤及び前記キノン系老化防止剤の合計含有量が1.5〜3質量部であるタイヤ外層用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ外層用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッドやサイドウォールなどのゴム組成物には、オゾン劣化や酸化劣化、熱分解劣化を防止するために、ワックスなどが配合されている。配合されたワックスは、ゴム表面へ染みだし、ゴム表面に膜を張ることで、物理的にオゾン、酸素、有害気体の刺激からゴムを守ることができる。
【0003】
低温地域や温帯地域では、ワックスがブルームしにくく、耐オゾン性を確保することが難しい。このため、従来公知のワックスを変色の抑制が可能な量で配合すると、温帯冬季など低温環境での耐オゾン性が不足する場合がある。一方、高温地域では、ゴムの分子運動が活発であるため、ワックスがブルームしやすく耐オゾン性を確保し易いが、タイヤ表面が白変色し易い。このように、寒帯〜熱帯という広い温度域で、優れた耐オゾン性を得ながら、白変色を抑制することは困難である。
【0004】
特にシリカ配合トレッドゴムの場合、金型内での加硫中の状態に比べ、加硫、常温への冷却後、トレッドゴムが体積収縮し易く、トレッド溝底に、タイヤ使用空気圧を充填する前、或いは充填した後で、引張り歪が生じ易い。ゴムが引っ張られた状態になると、オゾンアタックを受けやすい状態となり、トレッドグルーブクラック(TGC)が発生しやすい。ゆえに、耐オゾン性、白変色性を両立させることが重要である。
【0005】
また、耐オゾン性を改善する方法として、老化防止剤3PPDを使用する方法が知られているが、6PPDや6QDIに比べブルームし易く、低温環境での耐オゾン性を改善できるが、揮発性が高くすぐに減ってしまうため、耐オゾン性を長期間確保することが困難である。
【0006】
特許文献1では、特定のワックスを配合することが提案されているが、低温地域や温帯地域冬季における耐オゾン性については改善の余地が大きく、広い温度域で優れた耐オゾン性を得ながら、変色を抑制できる技術が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−116847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、広い環境温度域で優れた耐オゾン性が得られるとともに、変色を良好に抑制できるタイヤ外層用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、炭素数20〜32の各ノルマルアルカンと、フェニレンジアミン系老化防止剤及び/又はキノン系老化防止剤とを含み、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、前記炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量が0.7〜3.5質量部、前記フェニレンジアミン系老化防止剤及び前記キノン系老化防止剤の合計含有量が1.5〜3質量部であるタイヤ外層用ゴム組成物に関する。
【0010】
前記タイヤ外層用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、炭素数48以上の各ノルマルアルカンを合計0.1質量部以下含むことが好ましい。
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、前記炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量が0.9〜2.4質量部であることが好ましい。前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、プロセスオイルを15質量部以下含むことが好ましい。
【0011】
前記タイヤ外層用ゴム組成物は、トレッド、サイドウォール、ウイング及びクリンチエイペックスからなる群より選択される少なくとも1種として使用されることが好ましい。
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭素数20〜32の各ノルマルアルカンと、フェニレンジアミン系老化防止剤及び/又はキノン系老化防止剤とを含み、前記炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量が特定量であり、かつ前記フェニレンジアミン系老化防止剤及び前記キノン系老化防止剤の合計含有量も特定量であるタイヤ外層用ゴム組成物であるので、広い環境温度域で優れた耐オゾン性が得られるとともに、変色を良好に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ワックスの炭素数分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤ外層用ゴム組成物は、炭素数20〜32の各ノルマルアルカンと、フェニレンジアミン系老化防止剤及び/又はキノン系老化防止剤とを含み、ジエン系ゴム成分に対する前記炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量が特定量であり、かつ前記フェニレンジアミン系老化防止剤及び前記キノン系老化防止剤の合計含有量も特定量である。
【0015】
本発明のゴム組成物は、トレッド、サイドウォール、ウイング、クリンチエイペックスなどのタイヤ外層部材に使用される。
【0016】
ジエン系ゴム成分としては、たとえば、天然ゴム(NR)、高純度化天然ゴム(Highly purified NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、スチレンイソプレンゴム、イソプレンブタジエンゴムなどがあげられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、トレッドに適用する場合、グリップ性能、破断強度が良好に得られるという理由から、SBR、BRを使用することが好ましい。サイドウォール及びクリンチエイペックスに適用する場合、破断強度が良好に得られるという理由から、NR、IRなどのイソプレン系ゴム、亀裂成長性に優れるという理由から、BRを使用することが好ましい。
【0017】
SBRとしては特に限定されず、例えば、従来公知の変性剤で変性されたもの(変性SBR)などを好適に使用できる。
【0018】
SBRの結合スチレン量は、グリップ性能向上という点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。一方、耐摩耗性向上という点から、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
なお、本発明において、SBRのスチレン量は、H−NMR測定により算出される。
【0019】
本発明のゴム組成物をトレッドに適用する場合、ジエン系ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。20質量%未満であると、グリップ性能が充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0020】
BRとしては特に限定されないが、二重結合部分のシス含量が95モル%以上のBR(ハイシスBR)が好ましい。
【0021】
本発明のゴム組成物をトレッドに適用する場合、ジエン系ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。10質量%未満であると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。80質量%を超えると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。
【0022】
本発明のゴム組成物をサイドウォール及びクリンチエイペックスに適用する場合、ジエン系ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。10質量%未満であると、亀裂成長性、加硫戻り性が悪化する傾向がある。該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。80質量%を超えると、充分な破断時伸び、引き裂き性が得られないおそれがある。
【0023】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20、ENR25など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、IRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0024】
本発明のゴム組成物をサイドウォール及びクリンチエイペックスに適用する場合、ジエン系ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。20質量%未満であると、機械的強度が充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、亀裂成長性などが低下するおそれがある。
【0025】
本発明のゴム組成物は、炭素数20〜32の各ノルマルアルカンを含む。これにより、0〜20℃程度の温度域での耐オゾン性が良好に得られる。
炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、0.7質量部以上、好ましくは0.9質量部以上である。0.7質量部未満であると、20℃以下の温度域で充分な耐オゾン性が得られないそれがある。また、該合計含有量は、3.5質量部以下、好ましくは2.4質量部以下である。3.5質量部を超えると、耐変色性、成型時粘着性が低下するおそれがある。
【0026】
本発明のゴム組成物は、通常、炭素数33〜44の各ノルマルアルカンを含む。これにより、40〜50℃程度の温度域での耐オゾン性が良好に得られる。
炭素数33〜44の各ノルマルアルカンの合計含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.45質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。0.45質量部未満であると、40〜50℃程度の温度域での耐オゾン性が充分に得られないおそれがある。また、該合計含有量は、好ましくは1.7質量部以下、より好ましくは1.6質量部以下である。1.7質量部を超えると、40〜50℃程度の温度域で炭素数33〜44のノルマルアルカンのブルーム析出量が多く、白変色する傾向がある。
【0027】
本発明のゴム組成物は、後述するワックスの精製、製造工程の都合上、通常、炭素数45〜47の各ノルマルアルカンを含む。
炭素数45〜47の各ノルマルアルカンの合計含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上である。0.01質量部未満であると、60℃程度の温度域の耐クラック性が若干悪化する傾向がある。また、該合計含有量は、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.15質量部以下である。1質量部を超えると、60℃程度の温度域の耐変色性(白変色)が悪化する傾向がある。
【0028】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、炭素数48以上のノルマルアルカンを0.1質量部以下含むことが好ましい。これにより、60℃以上の温度域での耐変色性(白変色)が良好に得られる。炭素数48以上のノルマルアルカンの含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、より好ましくは0.08質量部以下である。0.1質量部を超えると、白変色するおそれがある。
【0029】
また、本発明では、炭素数25〜27の各ノルマルアルカンの合計含有量が特定量であることが好ましい。炭素数25〜27の各ノルマルアルカンの合計含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。0.2質量部未満であると、10℃程度の温度域で充分な耐オゾン性が得られないそれがある。また、該合計含有量は、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下である。2質量部を超えると、変色する傾向がある。
【0030】
炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量を特定量とするには、例えば、炭素数20〜32の各ノルマルアルカンを含むワックスを配合すればよい。
【0031】
炭素数20〜32の各ノルマルアルカンを含むワックスとしては特に限定されず、炭素数20〜55の各ノルマルアルカンを含むワックスなどを使用できる。なかでも、優れた耐オゾン性が得られるという理由から、ワックス100質量%中のノルマルアルカンの含有量が70質量%以上のものを好適に使用でき、80質量%以上のものをより好適に使用できる。
【0032】
上記ワックス100質量%中、炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量は30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。30質量%未満であると、0〜20℃程度の低温域での耐オゾン性が充分に得られないおそれがある。該含有量は、90質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。90質量%を超えると、0〜20℃程度の低温域で、白変色しやすくなる傾向がある。
【0033】
上記ワックス100質量%中、炭素数25〜27の各ノルマルアルカンの含有量はそれぞれ4.1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。4.1質量未満であると、10℃程度の温度域での耐オゾン性の改善効果が充分に得られないおそれがある。該含有量の上限は特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。50質量%を超えると、10℃程度の温度域で白変色しやすい傾向がある。また、相対的に30〜50℃程度の温度域での耐オゾン性が充分に得られないおそれがある。
【0034】
以上のような炭素数分布を有する各ノルマルアルカンを含むワックスは、例えば、公知のワックスを適宜混合することなどによって調製できる。
【0035】
本発明では、フェニレンジアミン系老化防止剤及び/又はキノン系老化防止剤が使用される。これら特定の老化防止剤と特定炭素数のノルマルアルカンとをそれぞれ特定量配合することで、広い温度域で優れた耐オゾン性が得られるとともに、変色を良好に抑制できる。一方、TMQなどの他の老化防止剤では、老化防止剤自体の色が薄く変色が大きな問題とならないが、耐オゾン性などの改善効果が充分に得られない傾向がある。
【0036】
フェニレンジアミン系老化防止剤としては、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−4−メチル−2−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリール−p−フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。なかでも、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンが好ましい。
【0037】
キノン系老化防止剤としては、ベンゾキノン系、ヒドロキノン系、カテコール系、キノンジイミン系、キノメタン系、キノジメタン系老化防止剤などが挙げられ、なかでも、キノンジイミン系老化防止剤が好ましい。
【0038】
キノンジイミン系老化防止剤としては、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−キノンジイミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニルキノンジイミン、N,N’−ジフェニル−p−キノンジイミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−キノンジイミン、N−nヘキシル−N’−フェニル−p−キノンジイミン、N,N’−ジオクチル−p−キノンジイミンなどが挙げられる。なかでも、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニルキノンジイミン(6QDI)が好ましい。
【0039】
フェニレンジアミン系老化防止剤及びキノン系老化防止剤の合計含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、1.5質量部以上、好ましくは2質量部以上である。1.5質量部未満であると、充分な耐オゾン性が得られないおそれがある。また、該含有量は、3質量部以下、好ましくは2.8質量部以下である。3質量部を超えると、変色(茶変色)する傾向がある。
【0040】
本発明のゴム組成物はカーボンブラックを含むことが好ましい。これにより、補強効果、紫外線防止効果が得られ、本発明の効果が良好に得られる。
【0041】
本発明のゴム組成物をトレッドに適用する場合、カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2〜20質量部、より好ましくは2〜20質量部である。上記範囲内であると、補強効果、紫外線防止効果が得られ、本発明の効果が良好に得られる。
【0042】
また、本発明のゴム組成物をサイドウォール及びクリンチエイペックスに適用する場合、カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10〜50質量部である。上記範囲内であると、補強効果が得られ、本発明の効果が良好に得られる。
【0043】
本発明のゴム組成物はシリカを含むことが好ましい。これにより、良好な低燃費性が得られる。
【0044】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などを用いることができる。シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカ(含水シリカ)が好ましい。
【0045】
本発明のゴム組成物をトレッドに適用する場合、シリカの含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは60質量部以上である。該含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。該含有量が上記範囲内であると、良好な低燃費性、加工性が得られる。
【0046】
本発明のゴム組成物をサイドウォール及びクリンチエイペックスに適用する場合、シリカの含有量の下限は特に限定されないが、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上である。該含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。該含有量が上記範囲内であると、良好な破断伸び、低燃費性、加工性が得られる。
なお、本発明では、シリカを使用する場合、シランカップリング剤を使用することが好ましい。
【0047】
TGCなどの点から、本発明のゴム組成物は、特にシリカ配合ゴム組成物として好適に使用できるが、例えば、該ゴム組成物をトレッドに適用する場合、シリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のシリカの含有率は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。なお、上限は特に限定されず、100質量%でもよい。
【0048】
また、本発明のゴム組成物をサイドウォール及びクリンチエイペックスに適用する場合、シリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のシリカの含有率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0049】
本発明ではプロセスオイルを配合してもよい。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。
【0050】
プロセスオイルの含有量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下である。15質量部を超えると、変色し易い傾向がある。該含有量の下限は特に限定されないが、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、加工性が悪化するおそれがある。
【0051】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、C5系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる芳香族ビニル重合体、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合できる。
【0052】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0053】
本発明のゴム組成物は、タイヤの外層部材であれば特に制限なく使用できるが、前述のとおり、トレッド、サイドウォール、ウイング、クリンチエイペックスに好適に使用できる。
【0054】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、上記ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤの各外層部材(トレッド、サイドウォール、ウイング、クリンチエイペックスなど)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0055】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0056】
以下、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
ハイシスBR(CB25):ランクセス社製のBUNA−CB25(Nd系触媒を用いて合成したBR、シス含量:96%)
変性SSBR(HPR355):JSR(株)製のHPR355(変性S−SBR、スチレン含量:27質量%、ビニル含量55質量%)
TSR20:NR(TSR20)
カーボンブラック(N220):キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(NSA:120m/g、DBP吸油量:115ml/100g)
カーボンブラック(N550):キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550(NSA:42m/g、DBP吸油量:115ml/100g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
クマロンインデン樹脂:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(クマロンインデン樹脂、軟化点:5〜15℃)
C5系石油樹脂:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS(C5系石油樹脂:ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂)(軟化点:102℃)
芳香族ビニル重合体(SA85):Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃、Mw:1000)
プロセスオイル:H&R社製のvivatec500(TDAE)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
亜鉛華:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
5%オイル含有粉末硫黄:細井化学(株)製のHK−200−5(オイル分5%)
10%オイル含有不溶性硫黄:日本乾溜工業(株)セイミサルファー(2硫化炭素による不溶分60%、オイル分10%)
加硫促進剤(TBBS):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(DPG):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
ワックス1:試作品1(ノルマルアルカン分:平均85質量%)
ワックス2:試作品2(ノルマルアルカン分:平均87質量%)
ワックス3:試作品3(ノルマルアルカン分:平均81質量%)
ワックス4:ソルビタンモノステアレート(Lonza Chemical Company製のGlycomul STM
6PPD:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
6QDI:フレキシス社製の6QDI(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニルキノンジイミン)
TMQ:大内新興化学工業(株)製ノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
【0057】
ワックスの炭素数分布は、以下の方法により測定した。結果を図1及び表4に示す。
【0058】
測定装置としてキャピラリーGC、カラムとしてアルミニウムコーティングされたキャピラリーカラムを用い、キャリアガスヘリウム、流量4ml/分、カラム温度180〜390℃、昇温速度15℃/分の条件にて測定した。
【0059】
(実施例及び比較例)
表1〜3の上段に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を用いて、トレッド部、サイドウォール部及びクリンチエイペックス部となる部材を作製して、生タイヤを製造し、170℃で加硫して試験用タイヤ(205/65R15)を得た。得られた試験用タイヤの性能を以下の試験により評価した。
【0060】
(クラック試験)
高温地域は中近東アラブ首長国連邦で約1年間(夏を含む)、亜寒冷地域は北海道で約1年間(冬を含む)ロードテストを行ない、発生したクラックの度合いを、以下の基準にしたがって評価した。数字が大きいほど、耐クラック性能に優れている。
【0061】
(基準)
1:3mm以上の亀裂または切断が見られる。
2:1mm以上3mm未満の深い亀裂が見られる。
3:1mm未満の深くて比較的大きな亀裂が見られる。
4:肉眼では、やっとのことで亀裂または切断が確認できる。
5:肉眼では確認できないが、拡大鏡(10倍)では亀裂または切断が確認できる。
【0062】
(変色試験)
屋外:茶変色評価
神戸にて、タイヤを屋外の日の当たる場所に6カ月間(冬〜夏)放置し、色差度計を用いて、a*、b*を測定し、その値により、以下の基準にしたがって5段階に分けて評価した。数字が大きいほど、茶変色の度合いが小さい。
【0063】
(基準)
1:−(a*+b*)×10≦−30
2:−30<−(a*+b*)×10≦−20
3:−20<−(a*+b*)×10≦−10
4:−10<−(a*+b*)×10≦0
5:−(a*+b*)×10>0
屋内:白変色評価
神戸にて、タイヤを屋内の倉庫に6カ月間(冬〜夏)放置し、色差度計を用いて、L*を測定し、その値により、以下の基準にしたがって5段階に分けて評価した。数字が大きいほど、白変色の度合いが小さい。
【0064】
(基準)
1:100−L*≦60
2:60<100−L*≦65
3:65<100−L*≦70
4:70<100−L*≦75
5:100−L*>75
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
炭素数20〜32の各ノルマルアルカンと、フェニレンジアミン系老化防止剤及び/又はキノン系老化防止剤とをそれぞれ特定量配合した実施例では、広い温度域で優れた耐オゾン性が得られた。また、変色を良好に抑制できた。
特に、フェニレンジアミン系老化防止剤及びキノン系老化防止剤を多量に含む比較例5〜8、10、14では、茶変色してしまった。なお、これら老化防止剤の配合量を減量すると耐オゾン性が低下する傾向があった(実施例9〜11、22)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数20〜32の各ノルマルアルカンと、フェニレンジアミン系老化防止剤及び/又はキノン系老化防止剤とを含み、
ジエン系ゴム成分100質量部に対して、前記炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量が0.7〜3.5質量部、前記フェニレンジアミン系老化防止剤及び前記キノン系老化防止剤の合計含有量が1.5〜3質量部であるタイヤ外層用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、炭素数48以上のノルマルアルカンを0.1質量部以下含む請求項1記載のタイヤ外層用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、前記炭素数20〜32の各ノルマルアルカンの合計含有量が0.9〜2.4質量部である請求項1又は2記載のタイヤ外層用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、プロセスオイルを15質量部以下含む請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ外層用ゴム組成物。
【請求項5】
トレッド、サイドウォール、ウイング及びクリンチエイペックスからなる群より選択される少なくとも1種として使用される請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ外層用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−82884(P2013−82884A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139877(P2012−139877)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】