説明

タイヤ形状検査方法、及びタイヤ形状検査装置

【課題】凹凸マーク上に重なるように凹凸欠陥が存在する場合にも、凹凸マークの高さ分だけを差し引いて凹凸欠陥のみの高さを算出・取得する。
【解決手段】凹凸マークが形成されたサイドウォール面を有するサンプルタイヤの画像を用いて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査するタイヤ形状検査方法において、次の工程を実行する。まず、ティーチング作業工程として、サンプルタイヤのサンプル原画像において、凹凸マークの境界線を検出し、境界線を示すマスク画像を生成し、サンプル原画像からマスク画像に示された境界線に対応する領域を除き、残りの領域の高さを1又は複数のオフセット値で表す高さオフセット画像を生成する。次に、検査作業工程として、検査タイヤの検査画像から、高さオフセット画像を差し引くと共に、マスク画像が表す境界領域を除去し、得られた凹凸除去画像に基づいて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの検査技術に関し、特に、凹凸のあるマークが形成されたサイドウォール面の形状欠陥を画像処理の手法を用いて検査するタイヤ形状検査方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、ゴムや化学繊維、スチールコード等の各種材料が積層された構造を有している。その積層構造に不均一な部分が存在すると、空気が充填されたときに相対的に耐圧性の弱い部分においてバルジ(Bulge)と呼ばれる隆起部(凸部)や、デント(Dent)又はデプレッションと呼ばれる窪み部(凹部)が生じる。そのようなバルジやデント等の形状欠陥が生じるタイヤは、安全上の問題或いは外観不良の問題から、検査して出荷対象から除外する必要がある。
【0003】
そこで、タイヤ製造の最終工程(タイヤ加硫後の検査工程)では、タイヤ表面、特にサイドウォール面での凹凸形状不良の検査が行われている。なお、タイヤのサイドウォール面には、製品の型式やサイズ、メーカのロゴ等を表示する表示マーク(正常凹凸であるマーク)が形成されている。そのため、サイドウォール面の形状欠陥検査処理においては、この表示マークを形状欠陥として誤検知しないようにする必要がある。
【0004】
このような凹凸形状不良の検査は、従来、人手による目視検査と触手検査によって行われていたが、近年では、レーザ距離センサ、三次元形状計測装置、又はカメラによる画像検査等の自動化技術、正常凹凸であるマークに影響されない検査技術への取組みが行われている。
例えば、特許文献1には、相対的に回転するタイヤの表面に照射したライン光の像を撮像し、その撮像画像に基づいて光切断法による形状検出を行うことによって前記タイヤの表面形状を検出するタイヤ形状検出装置であって、前記タイヤの表面に一の光切断線が形成されるように、該光切断線における検出高さ方向とは異なる方向から複数のライン光を連ねて照射するライン光照射手段と、前記タイヤの表面に照射された前記複数のライン光それぞれの主光線が前記タイヤの表面に対して正反射する方向において撮像する撮像手段と、を具備するタイヤ形状検出装置が開示されている。
【0005】
このタイヤ形状検出装置は、特に、タイヤ表面に複数のライン光を連ねて照射し、照射された複数のライン光の像を撮像することで、タイヤ表面形状を検出するものとなっている。
また、特許文献2には、タイヤ表面の、凹凸により形成された一以上の図形の三次元形状を検査する方法であって、これらの図形を含む、所定のタイヤ表面領域内の各面積要素について凹凸の高さを測定して凹凸分布データを取得する工程と、それぞれの図形に対して、図形の雛形として予め準備された図形モデルの三次元形状データと、取得された前記凹凸分布データとから、前記タイヤ表面領域のうち図形モデルに対応するタイヤ表面部分を特定する工程と、それぞれの図形に対して、特定されたタイヤ表面部分の凹凸分布データと図形モデルの三次元データとの一致度を求め、この一致度に基づいて前記図形の三次元形状の合否を判定する工程とを有するタイヤ凹凸図形の検査方法が開示されている。
【0006】
このタイヤ凹凸図形の検査方法は、特に、シート光をタイヤ表面に照射して得られた三次元凹凸分布データと、CADデータから作成された図形モデルの三次元形状データとの一致度を計算することで、欠陥の有無を検査する技術が開示されている。本技術は、正常な凹凸図形(文字等)そのものの良否判定を行うため、正常な凹凸図形の雛形として予め準備された図形モデルをティーチングデータとして用いるものである。雛形は、タイヤCADデータや金型CADデータより生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−221896号公報
【特許文献2】特開2005−331274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のタイヤ形状検出装置では、光切断法によってタイヤの表面形状を検出することができるので、タイヤ表面の凹凸形状を検出することが可能である。しかしながら、検出されたタイヤ表面の凹凸形状が、タイヤ表面に形成された正常な図形であるのか、欠陥であるのかを知ることができない。また、正常な図形の位置に欠陥が存在する場合、その欠陥を検出することはなおさら困難となる。
【0009】
そこで、特許文献2に開示されるように、タイヤCADデータや金型CADデータを用いてティーチングデータ(参照データ)とすれば、タイヤの変形や欠陥に影響されない数値を得ることができ、特許文献1の技術の困難性を回避できるかもしれない。しかしながら、タイヤがゴム製品であることと、本発明が対象とするタイヤ形状検査では空気の入ったタイヤを検査することから、CADデータからのタイヤの変形量が大きい。それゆえ、実用的には対応する座標を合致させるだけでも計算及び演算量が膨大になり、実用的には適用し難い。
【0010】
さらに、特許文献2に開示された技術であるCADデータの使用に対比して、実際に測定したタイヤの高さデータをティーチングデータとして使用するのは容易に類推できる。この方法によれば、簡便に実際の高さデータを取得することができる。
しかしこの場合、使用するタイヤ高さ画像中には正常な凹凸図形のみが存在し、且つ検出対象の凹凸欠陥(Bulge/Dent)や、タイヤ周方向の大きなうねり変形成分であるRunout成分の高さ変化が全く無い高さ画像データが要求される。検出対象の凹凸欠陥やRunout成分が存在する高さ画像データをティーチングデータとして使用した場合、文字等の正常凹凸マークは、オンライン検査時に差分処理によって平面化(除去)されるが、ティーチングデータに存在する凹凸欠陥やRunout成分が検査対象の高さ画像に転写される結果となるため、このような高さ画像データを検査に使うことはできない。また、Runout成分が存在しない真平らなタイヤを特にティーチングデータ登録用に製作することは、現実的では無い。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、タイヤのサイドウォール面上に存在する正常凹凸であるマーク(文字、ロゴ、模様等)に影響されることなく、サイドウォール面の凹凸欠陥を確実に検査可能とするタイヤ形状検査方法、及びタイヤ形状検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係るタイヤ形状検査方法は、凹凸マークが形成されたサイドウォール面を有するサンプルタイヤの前記サイドウォール面の画像を用いて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査するタイヤ形状検査方法であって、ティーチング作業工程として、前記サンプルタイヤのサイドウォール面の二次元画像であるサンプル原画像において、前記凹凸マークの輪郭である境界線を検出し、前記境界線の位置を示すマスク画像を生成するマスク画像生成工程と、前記サンプル原画像において、前記マスク画像に示された前記境界線の位置に対応する領域を除き、残りの領域の高さを1又は複数のオフセット値を用いて表すことで得られる高さオフセット画像を生成する高さオフセット画像生成工程と、を具備し、前記検査作業工程として、前記検査タイヤのサイドウォール面の二次元画像である検査画像から、前記高さオフセット画像を差し引くと共に、前記マスク画像が表す境界領域を除去する差分処理工程と、前記差分処理工程の結果として得られた凹凸除去画像に基づいて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査する形状欠陥検査工程と、を具備し、前記高さオフセット画像生成工程では、サンプル原画像において、凹凸マークが形成されていないサイドウォール面であるベース面を近似するオフセットプロファイルを作成し、作成されたオフセットプロファイルを基にサンプル原画像から凹凸マークを抽出し、抽出された凹凸マークの高さを前記オフセット値とする、ことを特徴とする。
【0013】
ここで、前記高さオフセット画像生成工程は、
(I)前記サンプル原画像のタイヤ周方向に沿ったラインデータを抽出し、
(II)前記ラインデータを基に前記サンプルタイヤのベースラインを抽出し、
(III)前記ラインデータから前記ベースラインデータを減算することで凹凸マークの凹凸ラインデータを作成し、
(IV)作成した凹凸ラインデータの高さを凹凸マークのオフセット値としてもよい。
【0014】
さらに、上記(IV)工程においては、
(IV-1)凹凸マーク部の高さ方向に所定幅を有する評価窓を設定し、
(IV-2)前記評価窓を凹凸ラインデータの高さ方向にシフトしつつ、前記評価窓に含まれる凹凸ラインデータの平均値を求め、
(IV-3)求めた平均値を凹凸ラインデータの凹凸マークの高さに置き換えた上で、前記オフセット値として用いてもよい。
【0015】
さらに、前記マスク画像生成工程は、微分フィルタを適用することで前記凹凸マークの境界線部分を強調した微分画像を得て、前記得られた微分画像に対して所定の閾値を適用することで、前記微分画像を二値化して、前記マスク画像を生成してもよい。
加えて、前記微分フィルタの適用前に、前記サンプル原画像内の未検出点を補間して除去し、前記サイドウォール面のプロファイル形状を基に、前記未検出点を除去した画像からサイドウォール面の湾曲成分を除去して、前記未検出点を除去した画像を平面化してもよい。
【0016】
また、前記高さオフセット画像生成工程は、前記サンプル原画像と、前記マスク画像と、前記凹凸マークに対して設定された前記複数のオフセット値とを用いて、
(I)前記サンプル原画像のタイヤ周方向に沿った1つのラインデータに対応するラインデータを、前記マスク画像から抽出し、
(II)前記サンプル原画像の1ラインデータ上で、マスク画像から抽出した前記ラインデータが示す境界線で区切られる各領域を、それぞれ1つのラベル領域とし、
(III)前記ラベル領域のうち、周方向に最も長いラベル領域を高さオフセット値の計算開始領域とし、又は、前記マスク画像が示す境界線で囲まれた領域中、最も面積が大きい領域を高さオフセット値の計算開始領域とし、
(IV)前記計算開始領域から順に、隣接するラベル領域との高さ差を求め、
(V)前記複数のオフセット値のうち、求めた高さ差に最も近いオフセット値を、隣接するラベル領域の高さオフセット値としてすべてのラベル領域について設定し、
前記サンプル原画像の全てのラインデータについて、前記(I)から(V)のステップを繰り返すことで高さオフセット画像を生成していてもよい。
【0017】
ここで、前記高さオフセット画像生成工程は、前記マスク画像を前記高さオフセット画像に重ね合わせ、前記マスク画像が示す境界線で囲まれた領域ごとに、領域内で最も数多く存在する高さオフセット値を、該領域全体の高さオフセット値として設定してもよい。
また、前記差分処理工程で得られた画像内における、当該差分処理工程にて用いたマスク画像でマスクされたマスク範囲に対し、下記の(I)〜(III)のいずれかの処理で高さ座標値を補間する補間工程を有していてもよい。
【0018】
(I)前記マスク範囲を挟む2つの位置での高さ座標値を選び、一方の高さ座標値から他方の高さ座標値に向かって線形的に変化させて得られる高さ座標値を、前記マスク範囲に割り当てることで補間する。
(II)前記マスク範囲を挟む2つの位置での高さ座標値を選び、一方の高さ座標値と他方の高さ座標値の平均値を求めることで得られる平均高さ座標値を、前記マスク範囲に割り当てることで補間する。
(III)前記マスク範囲に少なくとも一部が重なり且つ前記マスク範囲よりも短いウインドを設け、前記ウインドを前記マスク範囲の一端から一端へ移動させつつ、前記検査画像において前記ウインドに対応する位置の最大の高さ座標値又は最小の高さ座標値を選択して、選択した高さ座標値を前記マスク範囲に割り当てることで補間する。
【0019】
本発明に係るタイヤ形状検査装置は、凹凸マークが形成されたサイドウォール面を有するサンプルタイヤの前記サイドウォール面の画像を用いて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査するタイヤ形状検査装置であって、前記サイドウォール面の二次元画像を撮像する撮像手段と、前記サンプルタイヤのサイドウォール面の二次元画像であるサンプル原画像において、前記凹凸マークの輪郭である境界線を検出し、前記境界線の位置を示すマスク画像を生成するマスク画像生成手段と、前記サンプル原画像において、前記マスク画像に示された前記境界線の位置に対応する領域を除き、残りの領域の高さを1又は複数のオフセット値を用いて表すことで得られる高さオフセット画像を生成する高さオフセット画像生成手段と、を具備し、前記検査タイヤのサイドウォール面の二次元画像である検査画像から、前記高さオフセット画像を差し引くと共に、前記マスク画像が表す境界領域を除去する差分処理手段と、前記差分処理工程の結果として得られた凹凸除去画像に基づいて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査する形状欠陥検査手段と、を具備し、複数のオフセット値は、サンプル原画像において、凹凸マークが形成されていないサイドウォール面であるベース面を近似するオフセットプロファイルを作成し、且つ作成されたオフセットプロファイルを基にサンプル原画像から凹凸マークを抽出することで得られる凹凸マークの高さであることを特徴とする。
【0020】
ここで、前記撮像手段は、前記サイドウォール面に一の光切断線を照射するライン光照射手段と、前記サイドウォール面に照射された前記ライン光の像を撮像する撮像カメラと、前記撮像カメラが撮像した1ライン画像を逐次蓄えることで、前記サイドウォール面の二次元画像を構成する撮像メモリと、を具備してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るタイヤ形状検査方法、及びタイヤ形状検査装置によれば、タイヤのサイドウォール面上に存在する正常凹凸であるマーク(文字、ロゴ、模様等)に影響されることなく、サイドウォール面の凹凸欠陥を確実に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は、本発明の実施形態によるタイヤ形状検査装置の構成を表す概略図であり、(b)は、タイヤ形状検査装置が備えるセンサユニットにおけるライン光照射手段及びカメラの三次元配置を表した模式図である。
【図2】タイヤのサイドウォール面を表す模式図である。
【図3】本発明の実施形態によるタイヤ形状検査方法の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】(a)は、本発明の実施形態によるタイヤ形状検査方法におけるマスク画像生成処理を示すフローチャートであり、(b)は、本発明の実施形態によるタイヤ形状検査方法におけるオフセット画像生成処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態によるタイヤ形状検査方法における画像処理の過程を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態によるタイヤ形状検査方法において高さ画素プロファイルとラベル領域との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態によるタイヤ形状検査方法において、ベースラインを求める方法を示す概略図である。
【図8】ベースラインを利用して得られる凹凸マークの高さ画像データを示す図である。
【図9】無段階オフセット値で表現された高さ画像データから、高さオフセット値(有段階オフセット値)を求める方法を示す概略図である。
【図10】本発明の実施形態によるタイヤ形状検査方法において、マスク範囲に対応する位置への高さ画素値の補間方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
本発明の実施形態に係るタイヤ形状検査装置1は、回転するタイヤTの表面に照射したライン光の像をカメラによって撮像し、その撮像画像に基づいて光切断法による形状検出を行うことでタイヤT各部の高さを測定する。次にタイヤ形状検査装置1は、測定されたタイヤT各部の高さをそれぞれ対応する輝度値に置き換え、タイヤT表面の二次元画像(検査画像)を得る。
【0024】
さらに、タイヤ形状検査装置1は、上述の「検査画像」と、サンプルタイヤ(欠陥のないタイヤ)を撮像して得られた「サンプル原画像」を用いて予め作成した「マスク画像」及び「高さオフセット画像」とに基づいて、サイドウォール面(ベース面)上に形成された表示マークを除去し、その後、タイヤ表面に存在する欠陥を検査するものである。なお、「サンプル原画像」、「マスク画像」、「高さオフセット画像」の詳細は後述する。
【0025】
ところでタイヤTの形状検査の場合、タイヤTのトレッド面及びサイドウォール面が測定対象となりうるが、本実施形態では、サイドウォール面を測定対象とする。
図2に示す如く、タイヤTにおけるサイドウォール面とは、路面と接するトレッド面とリムに挟み込まれるビード部との間の部分である。図2において、白抜きで示された部分は、サイドウォール面(ベース面)上に形成された表示マーク(文字、ロゴ、模様等の正常図形)であり「正常凹凸マーク」と考えることができる。この正常凹凸マークは、サイドウォール面上で正常凹凸マークが形成されていない基面(ベース面)に対して、所定の高さを有する凹凸で構成されている。
【0026】
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係るタイヤ形状検査装置1の全体構成を説明する。
図1(a)に示すように、タイヤ形状検査装置1は、タイヤ回転機2、センサユニット(撮像手段)3(3a、3b)、エンコーダ4、画像処理装置5等を備えている。
タイヤ回転機2は、形状検査の対象であるタイヤTをその回転軸を中心に回転させるモータ等を備えた回転装置である。タイヤ回転機2は、例えば60rpmの回転速度でタイヤTを回転させる。この回転中に、後述するセンサユニット3によって、サイドウォール面の全周範囲の表面形状を検出する。
【0027】
本実施形態では、タイヤTの2つのサイドウォール面それぞれの形状測定に用いられる2つのセンサユニット3(3a、3b)を備えている。センサユニット3a、3bはそれぞれ、回転するタイヤTの表面にライン光(光切断線)を照射するライン光照射手段、及びタイヤT表面で反射したライン光の像を撮像する撮像カメラ6などが組み込まれたユニットである。
【0028】
図1(b)は、センサユニット3が備える機器の配置を模式的に表した図である。
図1(b)において、Y軸はタイヤTの形状検出位置におけるタイヤT円周の半径方向、Z軸はタイヤTの形状検出位置におけるサイドウォール表面からの検出高さ方向(検出する表面高さの方向)、X軸はY軸及びZ軸に直交する方向を表す。即ち、タイヤTのサイドウォール面の形状検出に用いられるセンサユニット3においては、Z軸はタイヤTの回転軸と平行の座標軸であり、Y軸はタイヤTの回転軸に対する法線の方向を表す座標軸である。なお、タイヤTと座標軸との対応関係は、カメラの支持の態様に応じて変わり得る。
【0029】
ライン光照射手段は、複数(図1(b)では3つ)のライン光源7a、7b、及び7cを備え、それら複数のライン光源7a、7b、及び7cにより、タイヤT表面の一の線Ls上に1本の光切断線が形成されるように、その一の線Ls(光切断線)における検出高さ方向(Z軸方向)とは異なる方向から複数のライン光を連ねて照射する装置である。
また、撮像カメラ6は、カメラレンズ8及び撮像素子9を備え、タイヤTのサイドウォール面に連ねて照射された複数のライン光の像v1(一の線Ls上の光切断線の像)を撮像するものである。
【0030】
一方、上記のタイヤ回転機2には、エンコーダ4が設けられている。このエンコーダ4は、タイヤ回転機2の回転軸の回転角度、即ちタイヤTの回転角度を検出し、検出した回転角度を検出信号として出力するセンサである。その検出信号は、センサユニット3a、3bが備える撮像カメラ6の撮像タイミングの制御に用いられる。
例えば、60rpmの速度で回転するタイヤTが所定の角度で回転するたびにエンコーダ4から出力される検出信号を受信し、検出信号の受信タイミングに合わせてシャッターが切られるようにセンサユニット3a、3bの撮像カメラ6を制御する。これにより、検出信号の受信タイミングに合った所定の撮像レートで撮像が行われる。
【0031】
センサユニット3a、3bからの信号(1ライン画像)は、画像処理装置5へと入力される。
画像処理装置5は、入力された1ライン画像に対して三角測量法の原理を適用することで、光切断線が照射された部分(サイドウォール面上の1ライン部分)の高さ分布情報を得る。次に画像処理装置5は、測定されたタイヤT表面各部の高さをそれぞれ対応する輝度値に置き換えると共に、内蔵されたフレームメモリ(撮像メモリ)に記憶し、タイヤT表面の二次元画像(検査画像)を得る。
【0032】
この二次元画像(検査画像)は、そのサイドウォール面の周方向360°の範囲に亘る各位置の表面高さ測定値(輝度値)が、そのタイヤTの半径方向を表すY軸及びタイヤTの周方向を表すX軸(フレーム)からなる2次元の座標系内に配列された情報である。
なお、高さ分布情報としては、図7(b)に例示したものが相当し、検査画像やサンプル原画像としては、図7(a)に例示したものが対応する。なお、高さ分布情報における縦軸の値(高さ画素値)と、検査画像の輝度値とは一対一に対応するものであって、以降の説明では同義的に使用することとする。
【0033】
さらに、本実施形態の画像処理装置5は、得られた検査画像及びこの検査画像中の1ラインに相当する高さ分布情報を基に、検査画像から正常凹凸マークのみを除去し、除去後の画像に対して、既存の画像処理手法を適用することで、タイヤサイドウォール面であって非正常凹凸マーク部分に存在する凹凸欠陥を検査する。
なお、画像処理装置5は、例えばパーソナルコンピュータなどで構成されたハードウエアによって実現される。
【0034】
続いて、本実施形態のタイヤ形状検査装置1の画像処理装置5が実施する処理について説明する。
図3は、画像処理装置5が実施する処理内容を示すフローチャートである。
この図から明らかなように、画像処理装置5が実施する処理は、タイヤのサイドウォール面に存在する凹凸欠陥をオンライン検査する「検査作業工程」を有している。更に、検査作業工程に先立つ前工程として、「ティーチング作業工程」を有している。
【0035】
検査作業工程は、検査タイヤのサイドウォール面の二次元画像である検査画像から、高さオフセット画像を差し引くと共に、マスク画像が表す境界領域を除去する「差分処理工程(S6)」と、差分処理工程(S6)の結果として得られた正常凹凸マーク除去画像に基づいて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査する「形状欠陥検査工程(S7)」とを具備している。それぞれの工程S6、S7は、画像処理装置5内に設けられた差分処理手段、形状欠陥検査手段で行われる。
【0036】
図3に示す如く、ティーチング作業工程は、サンプルタイヤのサイドウォール面の二次元画像であるサンプル原画像において、正常凹凸マークの輪郭である境界線を検出し、境界線の位置を示すマスク画像を生成する「マスク画像生成工程(S2)」と、サンプル原画像において、マスク画像に示された境界線の位置に対応する領域を除き、残りの領域の高さを、オフセット値を用いて分類することで得られる高さオフセット画像を生成する「高さオフセット画像生成工程(S3)」と、を具備している。それぞれの工程S2、S3は、画像処理装置5内に設けられたマスク画像生成手段、高さオフセット画像生成手段で行われる。
【0037】
なお、通常、検査対象となるタイヤの種別は複数あるため、タイヤ種別(TireID)毎にオンライン検査前の登録作業として、セットアップ作業を行う。このセットアップ作業は、TireID毎に異なるタイヤ直径サイズや接地面(トレッド面)の幅等のタイヤ形状等に関わる設計情報を検査前に登録する作業であり、必須である。本実施形態によるタイヤ形状検査では、上述のセットアップ作業も検査作業工程に先立ち行うこととしている。
【0038】
ところで、本発明のタイヤ形状検査方法においては、検査作業工程の「差分処理工程(S6)」、ティーチング作業工程の「マスク画像生成工程(S2)」及び「高さオフセット画像生成工程(S3)」に顕著な特徴がある。そこで、これらの工程を重点的に説明すると共に、本タイヤ形状検査方法の詳細を述べることとする。
まず、図4を参照して、ティーチング作業工程の詳細を説明する。
【0039】
最初に、欠陥のない理想的なタイヤであるサンプルタイヤのサイドウォール面の高さ画像(生データ)を取得する。
ここで得られた高さ画像(生データ)には、「未検出点」が存在する。未検出点とは、正常凹凸マークの段差の影響でシート光がカメラに戻らず受光強度が規定値以下となったために、高さ座標を取得できなかった点であって、高さ座標0(黒点)が出力されている。そこで、未検出点近傍で高さ座標を検出済みであって、且つ未検出点を挟んでタイヤ周方向に並ぶ2つの画素の高さ座標を用いて直線補間値を計算し、計算した直線補間値を未検出点の座標として埋め込む。
【0040】
未検出点の座標を決定する方法は、この他にも、未検出点近傍の高さをそのままコピーする(0次近似)か、未検出点を囲む4点(周方向の2点と径方向の2点)により平面を形成して平面補間を行う等により、未検出点の座標を決定することができる。なお、未検出点の高さ座標を不定のままにしておいた場合、次の平滑微分処理において予期せぬ大きな微分値がでてしまい、最終的な正常凹凸マークの位置(境界線)検出に悪影響を及ぼす可能性もあるので注意が必要である。
【0041】
ところで、一般的にタイヤ半径方向には低次の湾曲成分が存在するため、上記直線補間後の高さ画像には、タイヤ半径方向及びタイヤ周方向の低次の湾曲成分が含まれている。この湾曲成分を残したまま次の平滑微分処理工程を行うと、湾曲成分に起因して微分値が高くなる。この湾曲成分に起因する微分値は、本来検知したい正常凹凸マークの境界線の微分値と区別するのが困難であるため、直線補間後の高さ画像からこの湾曲成分を除去する平面化処理は、重要である。
【0042】
タイヤ設計CADデータや金型CADデータを反映しているであろうと予測されるこの低次の湾曲成分は、これらCADデータからの形状モデルを使って補正することができる。しかし、一般的にはCADデータとの連携はシステム的にも難しく、本実施形態では、取得した高さ画像そのものから理想的な湾曲成分を取得する。
まず、湾曲成分方向の平均的な断面プロファイル形状を求め、例えば、断面プロファイ
ル形状の二次曲線による最小二乗フィッティングにより湾曲成分を数式モデル化し、数式モデル化された湾曲成分を、上記直線補間後の高さ画像から除去する。
【0043】
これによって、直線補間後の高さ画像は、周回全体に渡って高さ座標が変化する周回図形等の図形凹凸を残したままで高精度に平面化され、図5(a)に示すサンプル原画像を得る(S21)。
続いて、図3におけるマスク画像生成工程(S2)について説明する。
このマスク画像生成工程(S2)は、図4(a)において、マスク画像生成のフローチャートとして示されている。
【0044】
上述の処理(S21)で得られた、平面化された高さ画像(以下、サンプル原画像という)に対して、例えば、ソーベルフィルタやラプラシアンフィルタを用いた微分フィルタ(二次元平滑微分フィルタ)処理を施した微分値の画像を得る(S22)。
このように得られた微分値の画像に対して、1ラインごとに平均値(Ave)および分散(1σ)を求める。求めた平均値(Ave)および分散(1σ)を用いて、正常凹凸マークの境界線を背景ノイズ的な微分値から分離することのできる二値化閾値を決定し、この二値化閾値を基に微分値の画像を二値化する。これによって、正常凹凸マークの境界線を示す二値化画像が得られる(S23)。
【0045】
なお、得られた二値化画像内の孤立した画素点を、孤立点除去フィルタにより除去し、さらに、孤立した画素点を除去して得られた画像内での正常凹凸マークの境界線部分を、膨張フィルタにより膨張する処理を行うことは好ましい。
以上の処理を経て得られた画像は、境界線部分の二値画素点の値が1、境界線以外の部分の二値画素点の値が0となるマスク画像であり、図5(c)に示されるようなものである。このマスク画像は、画像処理装置5内のメモリに保存される(S24)。
【0046】
次に、図4、図6〜図9を用いて、図3の高さオフセット画像生成工程(S3)について説明する。この高さオフセット画像生成工程(S3)は、図4(b)において、オフセット画像生成のフローチャートとして示されている。本工程では、マスク画像生成工程(S2)と同様に、直線補間と平面化処理を経たサンプル原画像を用いる(S31)。
図7(a)に模式図として示す平面化後のサンプル原画像中、実線で表す部分は、走査ラインの一部であり、正常凹凸マーク部分を指している。図7(b)のグラフは、例えば、図7(a)で模式的に示した1走査ライン分の高さ画素プロファイル(断面形状)を示している。このプロファイルには、サイドウォール面のうねりである低周波の高さ画素変化(低周波成分)が全体的に存在した上で、正常凹凸マークの部分では、高さ画素値が急激に変化していることがわかる。なお、低周波の高さ画素変化とは、例えば、20次〜70次程度(離散フーリエ変換後の20次〜70次程度)の低周波が示す変化である。
【0047】
図7(b)のグラフに示される高さ画素プロファイルでは、サンプル原画像の実線に対応する部分が矢印で示されている。ここに示される各正常凹凸マーク(凹凸マーク面)は、それぞれほぼ同じ高さであるが、先に説明した低周波の高さ画素変化(Runout成分)の上に乗っているので、低周波の高さ画素変化に従ってそれぞれ異なった高さとなっている。
【0048】
ここで、図7(b)にラインデータとして示す高さ画素プロファイルは、サイドウォール面上の位置座標(Distance)に対応する輝度値(Gray value)を表す点データの集合であり、各点データを線分でつないでグラフ化したものである。よって、線分の両端点が実際の輝度値を表す点データであり、これら両端点を除いた線分は実際の輝度値データを表すものではない。
【0049】
まず、このような、高さ画素プロファイルを構成する各点データを、サンプルタイヤのサイドウォール面のベース面を表すものと、凹凸マーク面等のベース面以外を表すものとに分けて、オフセットプロファイルを作成する。そのために、図7(b)の高さ画素プロファイルにおいて、例えば、位置座標0から順に隣の点データとの輝度値の差分量(変化量)を検出して、図7(c)のグラフに示すような変化量の絶対値の変化を得る。
【0050】
つまり、図7(c)のグラフでは、図7(b)における輝度値が正方向及び負方向に大きく変化した位置において大きな値となる。よって、図7(c)のグラフからは、その大きな値をとる位置が、ベース面とベース面以外の面との境界となる位置であることがわかる。
このような図7(c)において、縦軸で示す輝度値の変化量に対して判定閾値Pthを設定する。具体的には、輝度値の変化量の値に対して設定したある判定閾値を0から順に高さ+0.1mmに相当する輝度値のステップで徐々に増加させる。その上で設定した各判定閾値について、その判定閾値を境として、高さ画素プロファイルにてベース面の点データ群とベース面以外の点データ群とを弁別した上で、それぞれの点データの判定閾値からの差異(距離)を積算し、その積算した距離が最も小さくなる(又は、二乗誤差が最小となる)ときの判定閾値を最終的な判定閾値Pthとして設定する。
【0051】
図7(c)において判定閾値Pthと各点データを比較して、点データの示す変化量が判定閾値Pthよりも大きくなっている位置が、「ベース面とベース面以外の面との境界」となる位置であると判定する。つまり、図7(c)を参照すると、点データの示す変化量が、位置P1,P2,P3,P4,P5で判定閾値Pthよりも大きくなっているので、図7(b)では位置P1,P2,P3,P4,P5に相当する位置が、ベース面とベース面以外の面との境界となる位置であると判定される。このような判定に従って、図7(b)に示す高さ画素プロファイルを構成する各点データを、ベース面を表すものと、凹凸マーク面等のベース面以外を表すものとに分ける。
【0052】
例えば、図7(b)において、輝度値が小さくベース面に対応する位置座標(Distance)0の点データから、図7(c)で輝度値の変化量が初めて判定閾値Pthを超える位置P1に対応する位置の直前までの点データに、ベース面のデータであることを示すフラグを付す。
続いて、図7(b)において、図7(c)の位置P1から2度目に判定閾値Pthを超える位置P2に対応する位置の直前までの点データに、ベース面以外の面であることを示すフラグを付す。このように、ベース面を示すフラグとベース面以外の面を示すフラグとを判定閾値Pthを超える位置を境に交互に変更して、位置座標(Distance)0の点データから順に図7(b)の点データに付す。
【0053】
このような処理によって、図7(b)に示す高さ画素プロファイルを構成する各点データを、ベース面を表すものと、ベース面以外の面(例えば、文字面)に対応するものとに分ける。
その後に、図7(b)の高さ画素プロファイルからベース面を表す点データのみを抽出し、ベース面を表現した高さ画素データを得る。このとき得られる高さ画素データは、ベース面以外を表す点データが欠けたデータであるため、欠けた部分は直線補間してベース面全体を表現する高さ画素データを作成する。
【0054】
また、直線補間以外にもベース面全体を表現する高さ画素データを作成する方法を採用することもできる。例えば、図7(b)において、ベース面以外を表す点データの輝度値を判定閾値Pthの分だけ減算すると共に、減算した高さ画素データをベース面を表現した高さ画素データに合わせるようにする。つまり、ベース面以外の高さを判定閾値Pth分だけ低くし、ベース面の高さ画素データに近づける。このようにベース面以外の高さを所定値だけ下げることで、図7(d)に示すベース面全体を表現する高さ画素データを作成することもできる。
【0055】
このようにして得られた図7(d)の高さ画素データは一見連続的なデータであるが、不連続な点データをつないだものであるので、サイドウォールの実際のベース面と同じように連続した曲線としてのデータで表現した方が好ましい。
図7(e)は、図7(d)のグラフを、例えば、ローパスフィルタによって滑らかにしたグラフである。ローパスフィルタとしては、高さ画素データをFFT(高速フーリエ変換)した後、高周波成分をカットする処理を採用している。図7(e)のグラフは、ほぼ正確にサイドウォールのベース面の低周波の高さ画素変化(Runout成分)を、ベースラインとして表現していると考えられる。
【0056】
次に、図7(e)に示すように得られたベースラインを、図7(b)のラインデータに適用して、各正常凹凸マーク(凹凸マーク面)の高さを求めるための方法を、図8を参照しながら説明する。
図8では、図7(b)に示すラインデータから図7(e)に示すベース面のRunout成分を差し引くことで、ラインデータを補正する手順を示している。図8に示すように、ラインデータからベース面のRunout成分を差し引けば、図8(f)に示すように、Runout成分(大きなうねり)が無く且つほぼ凹凸マークの高さだけを示す平面化された高さ画像データ(凹凸ラインデータ)を得ることができる。この平面化された高さ画像データは、高さ0付近の平面部と、複数の高さの凹凸マーク面とから構成されている。
【0057】
このように得られた図8(f)の平面化された高さ画像データに対して、先に作成したマスク画像を用いてマスク処理すると、急峻な高さ変化をしている境界部分の高さが0(画素値)となる。その上で、平面部を、一つのラベル図形として認識した上で高さ0として分類処理(クラスタリング)するので、高さ0付近の平面部は全て高さ0(黒)の一つの値となる。さらに、マスク画像のラベル領域毎に、各ラベル領域に含まれる全ての画素値の平均値(平均高さ)を求めて、各ラベル領域の画素値(高さ)とする。本実施形態では、これらラベル領域毎に平均化された複数の異なる画素値(高さ)を無段階オフセット値という。
【0058】
図9(g)は、このような無段階オフセット値として複数の異なる値で表現された高さ画像データを示している。図9(g)では、上側2本の点線付近に凹凸マークの高さが表現されていることが見てとれる。つまり、図9(g)では、上側2本の点線付近に2種類の凹凸マークの高さが表現されているといえる。続いて、図9(g)の高さ画像データから、2種類の凹凸マークの高さを検出する方法を説明する。
【0059】
図9(g)の右側に示すように、高さ(輝度値)方向に所定幅を有する評価窓(ウィンドウ)を設定する。その上で評価窓を、高さ0から高さ方向にシフトさせつつ評価窓に含まれる点データ(評価窓内に高さ値をもつ全ての点データ)の個数を評価する。
まず、図9(g)に示す上側2本の点線のうち、下の点線付近で、評価窓に含まれる点データの数が増加し始めるので、点データの数が増加し始めた高さの前後で、評価窓に最も多くの点データが含まれる評価窓の位置を検出する。その上で、検出した評価窓の位置において、評価窓に含まれる各点データとの誤差が最小となる輝度値を用いて、評価窓に含まれる各点データを置き換える。
【0060】
さらに評価窓を高さ方向にシフトさせると、上の点線付近で評価窓に含まれる点データの数が増加し始めるので、同様にして評価窓に最も多くの点データが含まれる評価窓の位置を検出する。その上で、検出した評価窓の位置において、評価窓に含まれる各点データとの誤差が最小となる輝度値を用いて、評価窓に含まれる各点データを置き換える。
このようにして、無段階オフセット値で表された図9(g)の高さ画像データは、図9(h)で上側2本の点線が示すように、2種類の高さ(輝度値Pth1,Pth2)つまり、有段階オフセット値で平均化されて表されることとなり、これら2つの高さ(輝度値)が、ラインデータにおける2種類の凹凸マークのオフセット値として用いられる。
【0061】
図7〜図9を参照しながら説明した一連の処理は、コンピュータプログラムなどによって自動的に行われるので、凹凸マークのオフセット値を人の手を介することなく自動的に得ることができる。
このように得られた凹凸マークのオフセット値を用いて正常凹凸マークの高さを示す高さオフセット画像を生成する工程について、以下に説明する。
【0062】
図6は、本実施形態によるタイヤ形状検査方法において高さ画素プロファイルとラベル領域との関係を示す図である。
図6(a)は、サンプル原画像におけるサイドウォール周方向の高さプロファイル1ラインにおいて、タイヤ周方向のX座標に沿って数百点分を拡大したグラフである。グラフ中の矩形波は、先に求めたマスク画像を反転して生成された反転マスク画像の内、高さプロファイルと同じ位置にある画像を重ねて表示している。
【0063】
反転マスク画像は、反転前のマスク画像と同じく高さ画素値0と1の間で振動する矩形波であるが、グラフを見やすくするために、反転マスク画像を、高さ画素値正方向に移動させている。
反転マスク画像では、境界線部分の二値画素点の値が0、境界線以外の部分の二値画素点の値が1となるので、図6においては、反転マスク画像の高さ画素値0に相当する領域が正常凹凸マークの境界線部分を指している。反転マスク画像において、境界線部分で区切られる高さ画素値1に相当する領域にそれぞれラベル番号を割り振り、それら領域をラベル領域として決定する。
【0064】
これらラベル領域中、最も長いラベル領域(図6(b)の場合グラフ最左部のラベル領域)W1の平均の高さを高さオフセット=0として、該ラベル領域を高さオフセット計算の開始領域として登録する。その後高さプロファイルから、上述の最長ラベル領域において、正常凹凸マークの境界線と接する端点を含む近傍での平均の高さを求め、次に境界線を挟んで隣接するラベル領域W2の平均の高さを求める。その後、求めた2つの高さの差(高さ差)を計算する。
【0065】
この求めた高さ差と、先に取得した凹凸マークのオフセット値とを比較して最も差が小さい(略一致する)オフセット値を、最長ラベル領域W1に隣接するラベル領域W2の高さオフセットとして割り当て、オフセット画像メモリ領域内に記録する。
以降は、同様の方法で、順に隣接する2つの領域W3、W4、・・・の高さ差を求め、求めた高さ差と最も差が小さいオフセット値を高さオフセット値として割り当てる(S33)。1ライン1周分に対して高さオフセット値を割り当てると、順に別の1ライン1周分に対して同様の割り当てを行いサンプル原画像の全範囲のラインに対して高さオフセット値を割り当てて、図5(b)に示す高さオフセット画像を得る(S34)。
【0066】
もしティーチング時に取得した高さ画像に、低周波数のRunout成分が全く無く、正常凹凸マークがタイヤ設計CADデータそのものと同じ値であれば、上述のような「凹凸マークのオフセット値」を用いることなく、取得したサンプル原画像(高さ画像)そのものをオフセット画像として登録するか、又は、「凹凸マークのオフセット値」を用いることなく、求めた高さ差そのものを隣り合う領域間での高さ差=相対的なオフセット値として設定すればよい。
【0067】
しかしながら、ゴム製品であり空気挿入するタイヤにおいては、Runout成分の無いタイヤは皆無と言え、取得したサンプル原画像そのものをオフセット画像として用いるのは実用的でなく、求めた高さ差そのものを連続的なオフセット値として登録した場合、1周分を計算する中でRunout成分に起因する誤差が累積して、1ライン終点の高さオフセット値が1ライン始点の高さオフセット値と連続しなくなるという問題が起こる。
【0068】
従って、空気が挿入された状態でのタイヤ形状を反映しつつ、凹凸マークのオフセット値を用いて、サイドウォール面の正常凹凸マークの高さを一定のオフセットで推測計算する本手法により、実用的なティーチング時のオフセット画像を取得することができる。
図3の情報登録工程(S4)でマスク画像とオフセット画像とを画像処理装置5に登録して、ティーチング作業工程を終了する。以上により、ティーチングしたタイヤサンプル画像に対して、コンピュータGUI上での確認・修正作業が可能となり、短時間でのティーチング作業を実現できる。
【0069】
上述のティーチング処理の後、検査対象タイヤのサイドウォール面の凹凸欠陥(Bulge(膨らみ)/Dent(へこみ))を検査する検査作業工程(オンライン検査)を実施する。
図3及び図5を参照しつつ、以下に、検査作業工程について説明する。
検査作業工程においては、まず、図5(a)に示す検査対象タイヤのサイドウォール面の原画像(検査画像)を取得する。
【0070】
次に、図3の座標系ズレ補正工程(S5)で、検査画像の座標系ズレ(主には周回方向の位相差=回転角度)を修正する。位置合わせの手法としては、サイドウォール面に存在する正常凹凸マーク(例えばロゴ)が一致するように画像マッチングを行い、位相差を修正する。
続いて、図3の差分処理工程(S6)で、検査画像から、ティーチング時に登録された高さオフセット画像を差し引く。これにより、正常凹凸マークの高さが差し引かれたサイドウォール面の高さ画像が得られる。
【0071】
この得られた高さ画像では、マスク画像が示す境界線部分(マスク範囲)のデータが必ずしも適正な値を示していないので、マスク画像を基にして境界線部分を補間する。以下に、その補間処理を説明する。
例えば、1ライン上で周回方向のマスク範囲が連続するX座標値にして数点分程度である場合、マスク画像のマスク範囲を挟んで隣接する2つの正常凹凸マークの両端の平均高さ座標を求め、その平均高さ座標をマスク範囲の高さ座標に採用することで直線補間する。
【0072】
一方、例えば、周回方向のマスク範囲が連続するX座標値にして数十点分以上連続する場合、マスク画像のマスク範囲内の高さ画素値に対してマスク範囲長以下の部分的な範囲における最大値又は最小値を選択し、その選択された高さ座標値をマスク範囲の高さ座標に採用することで、マスク範囲内の全ての高さ座標を補間する。
このような処理を経て、図5(d)に示す文字凹凸除去後の画像を得る。
【0073】
この文字凹凸除去後の画像を用いて、図3の形状欠陥検査工程(S7)を行う。図5(d)に示す文字凹凸除去後の画像では、正常凹凸マークの高さ変化のみが除去され、画像左側に白く楕円状に示される凸欠陥部の高さは、図5(a)の原画像(検査画像)に比較して変化せず残っている。形状欠陥検査工程(S7)は、このように文字凹凸除去後の画像に残っている凸欠陥部又は凹欠陥部を検出する。
【0074】
形状欠陥検査工程(S7)としては、既存の画像処理手法が採用可能である。2値化による欠陥抽出やパターンマッチングによる欠陥抽出を採用してもよい。
以上述べたような本発明のタイヤ形状検査方法を用いることで、タイヤサイドウォール面上に存在する正常凹凸であるマーク(文字、ロゴ、模様等)に影響されることなく、正常凹凸マークと同程度の高さ変化を持つ凹凸欠陥(凸欠陥=Bulge、 凹欠陥=Dent)を確実に検査することができるようになる。特に、タイヤ形状の検査において、ゴム製品特有の変形やタイヤに空気を入れたことによる変形等の影響を受けることなくタイヤ形状の検査が可能となる。
【0075】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、マスク画像生成工程(S2)や高さオフセット画像生成工程(S3)などの各工程を自動で行うようにしてもよいしオペレータが画像を参照しつつ手動で行うようにしてもよい。また、各工程を複数回繰り返し行ってもよい。
【0076】
具体的には、画像処理装置5において、検査画像、マスク画像、高さオフセット画像、正常凹凸マーク除去後の画像などを、並列表示又は切替えて表示し、オペレータは各画像を確認し、本来接続されるべき境界線が切断されていないか、また不適切な部分が境界線として認識されていないかを確認できるようにするとよい。
仮に確認作業によって、マスク画像に不具合箇所があれば、GUIにより境界線の追加・削除を行い、修正した場合はマスク画像の再計算を行うようにするとよい。次に、設定された高さオフセット画像を確認し、ラベル毎に設定されている一種類のオフセット値が異常ではないかどうかを確認する。不具合箇所があれば、修正領域を指定して高さオフセット値を変更(±1ずつ増減)し、修正した場合は高さオフセット画像の再計算を行うようにするとよい。
【0077】
正常凹凸マーク除去後の画像は、今回設定したティーチング情報に基づいて実際にオンライン検査した場合の平面化状態を示すものであり、処理後の高さ画像を確認の上、不具合箇所があれば、マスク画像又は高さオフセット画像の確認・修正に戻り、それぞれ修正・再計算を行うことが望ましい。
ところで、本実施形態で生成されたマスク画像には、検出したい凹凸欠陥(Bulge/Dent)よりも大きなマスク範囲(マスク領域)が存在することがある。このような大きなマスク範囲に凹凸欠陥が存在する場合、マスクされているがゆえに検出したい凹凸欠陥を見落とすことになる。そのため、高さ座標値を補間する処理を設けることは好ましい。マスク範囲の大きさ(長さ)によってマスク範囲の補間処理を変えると、さらに好ましい。
【0078】
そこで図10を参照し、上述の図3における差分処理工程(S6)に続いて行われる補間処理(補間工程)について、詳しく説明する。図10において、X軸は、タイヤ回転方向(周方向)を示し、Y軸は、タイヤ表面の高さ変化量を示している。
先に説明したように、差分処理工程(S6)では、まず、検査画像からティーチング時に登録された高さオフセット画像を差し引いて、タイヤサイドウォール面の高さ画像を得る。図10(a)は、得られた高さ画像の1ラインにおける一部分を示している。
【0079】
図10(a)に示す高さ画像では、タイヤ回転方向であるX軸方向における画素数が少ない(短い)正常凹凸マークが多く存在し、且つ、それら正常凹凸マークの境界線であって高さ座標値(高さ画素値)が急激に変化する部分が近接している。そのため、当該正常凹凸マークは、図4(a)に示すマスク画像生成工程で得られるマスク画像において、ほぼ全てがマスク範囲となる。このように得られたマスク画像を反転し、反転マスク画像を得る。
【0080】
図10(b)は、得られた反転マスク画像における、図10(a)の高さ画像に対応する部分を示している。反転マスク画像において、高さ画像の正常凹凸マークに対応するマスク範囲の二値画素点の値は、0である。このような反転マスク画像と高さ画像の論理積をとることで、図10(a)に示す高さ画像におけるマスク範囲に対応する位置をマスクして高さ座標値を0とし、図10(c)に示すマスク後高さ画像を得る。
【0081】
このマスク後高さ画像ではマスク範囲に対応する位置の高さ座標値が全て0となっているので、当該マスクした位置に高さ座標値を補間しなくてはならない。高さ座標値を補間する方法として、直線補間、平均補間、及び包絡線補間の3つの補間処理が考えられる。マスク後高さ画像のマスク範囲に対応する位置が、数画素程度(例えば10画素未満)の長さである場合、直線補間又は平均補間によって高さ座標値を補間する。マスク後高さ画像のマスク範囲に対応する位置が、数画素を超える(例えば10画素以上の)長さである場合、包絡線補間によって高さ座標値を補間する。
【0082】
直線補間とは、図10(d)に示すように、マスク画像のマスク範囲に対応する位置を挟んで隣接する2つの正常凹凸マークの両端の高さ座標値を直線で結び、線形的に変化する直線上の値をマスク範囲に対応する位置の高さ座標値として割り当てることで補間する方法である。
平均補間とは、図10(d)に示すように、マスク画像のマスク範囲に対応する位置を挟んで隣接する2つの正常凹凸マークの両端の高さ座標値の平均を求め、その高さ座標値の平均(平均高さ座標値)をマスク範囲に対応する位置の高さ座標値として割り当てることで補間する方法である。
【0083】
また、包絡線補間とは、図10(e)に示すように、マスク範囲に対応する位置における部分的な範囲としてのウインドをX軸方向に沿って設定し、当該ウインド範囲における最大の高さ座標値をマスク範囲に対応する位置の高さ座標値として割り当てて補間する方法である。
ウインドの設定方法について説明する。以下の説明において、図10(b)の反転マスク画像に示すマスク範囲は、例えば、X軸方向に40画素の長さを持つと仮定する。図10(a)の高さ画像において、マスク範囲の最もX座標が小さい点(最左点)をウインド中心点とする。このウインド中心点とウインド中心点の左右数画素を含む範囲をウインドとして、図10(a)の高さ画像に設定する。例えば、ウインド中心点とその左右10画素を含んでウインドを設定する場合、マスク範囲の最左点をウインド中心点として、21画素分が、ウインドとして設定される。一般に、ウインドの画素数は、マスク範囲の画素数の半分程度又は半分以下が望ましい。
【0084】
このように設定したウインド内で、最大の高さ座標値を検出し、検出した値を、ウインド中心点に対応する位置の高さ座標値として、図10(c)のマスク後高さ画像に割り当てる。
次に、ウインド中心点をX軸方向に1画素分移動させ、上述の方法で、移動後のウインド中心点を含む新たなウインドを設定する。設定された新たなウインド内で、最大の高さ座標値を検出し、検出した値を、ウインド中心点に対応する位置の高さ座標値としてマスク後高さ画像に割り当てる。
【0085】
この処理を、ウインド中心点がマスク範囲の最もX座標が大きい点(最右点)に対応する位置に移動するまで繰り返し、最大の高さ座標値で包絡線を描いて補間を行うと、マスク範囲に対応する位置全体にわたって高さ座標値を補間することができる。図10(e)は、上述の包絡線補間を施した高さ画像を示しており、図10(a)の高さ画像が示す正常凹凸マークのプロファイルの概形を、ほぼ再現している。
【0086】
なお、上記包絡線補間では、ウインド範囲における最大の高さ座標値をウインド中心点に対応する位置の高さ座標値として割り当てたが、最小の高さ座標値をマスク範囲の高さ座標値として割り当ててもよい。
最小の高さ座標値を割り当てた場合、得られる高さ画像は、図10(a)の高さ画像が示す正常凹凸マークのベース部分のプロファイルの概形をほぼ再現するものとなる。つまり、最大の高さ座標値を割り当てた場合でも、最小の高さ座標値を割り当てた場合でも、タイヤサイドウォール面におけるマスク範囲の大局的な(低周波成分が示す)凹凸変化を評価することができる。また、ウインド範囲における高さ座標値の最大値と最小値の平均を、ウインド中心点に対応する位置の高さ座標値として割り当てることもできる。
【符号の説明】
【0087】
1 タイヤ形状検査装置
2 タイヤ回転機
3a、3b センサユニット
4 エンコーダ
5 画像処理装置
6 撮像カメラ
7 ライン光源
8 カメラレンズ
9 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸マークが形成されたサイドウォール面を有するサンプルタイヤの前記サイドウォール面の画像を用いて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査するタイヤ形状検査方法であって、
ティーチング作業工程として、
前記サンプルタイヤのサイドウォール面の二次元画像であるサンプル原画像において、前記凹凸マークの輪郭である境界線を検出し、前記境界線の位置を示すマスク画像を生成するマスク画像生成工程と、
前記サンプル原画像において、前記マスク画像に示された前記境界線の位置に対応する領域を除き、残りの領域の高さを1又は複数のオフセット値を用いて表すことで得られる高さオフセット画像を生成する高さオフセット画像生成工程と、を具備し、
前記検査作業工程として、
前記検査タイヤのサイドウォール面の二次元画像である検査画像から、前記高さオフセット画像を差し引くと共に、前記マスク画像が表す境界領域を除去する差分処理工程と、
前記差分処理工程の結果として得られた凹凸除去画像に基づいて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査する形状欠陥検査工程と、を具備し、
前記高さオフセット画像生成工程では、サンプル原画像において、凹凸マークが形成されていないサイドウォール面であるベース面を近似するオフセットプロファイルを作成し、作成されたオフセットプロファイルを基にサンプル原画像から凹凸マークを抽出し、抽出された凹凸マークの高さを前記オフセット値とする、
ことを特徴とするタイヤ形状検査方法。
【請求項2】
前記高さオフセット画像生成工程は、
(I)前記サンプル原画像のタイヤ周方向に沿ったラインデータを抽出し、
(II)前記ラインデータを基に前記サンプルタイヤのベースラインを抽出し、
(III)前記ラインデータから前記ベースラインデータを減算することで凹凸マークの凹凸ラインデータを作成し、
(IV)作成した凹凸ラインデータの高さを凹凸マークのオフセット値とする、ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ形状検査方法。
【請求項3】
請求項2の(IV)工程においては、
(IV-1)凹凸マーク部の高さ方向に所定幅を有する評価窓を設定し、
(IV-2)前記評価窓を凹凸ラインデータの高さ方向にシフトしつつ、前記評価窓に含まれる凹凸ラインデータの平均値を求め、
(IV-3)求めた平均値を凹凸ラインデータの凹凸マークの高さに置き換えた上で、前記オフセット値として用いる、ことを特徴とする請求項2に記載のタイヤ形状検査方法。
【請求項4】
前記マスク画像生成工程は、
微分フィルタを適用することで前記凹凸マークの境界線部分を強調した微分画像を得て、
前記得られた微分画像に対して所定の閾値を適用することで、前記微分画像を二値化して、前記マスク画像を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ形状検査方法。
【請求項5】
前記微分フィルタの適用前に、
前記サンプル原画像内の未検出点を補間して除去し、
前記サイドウォール面のプロファイル形状を基に、前記未検出点を除去した画像からサイドウォール面の湾曲成分を除去して、前記未検出点を除去した画像を平面化することを特徴とする請求項4に記載のタイヤ形状検査方法。
【請求項6】
前記高さオフセット画像生成工程は、
前記サンプル原画像と、前記マスク画像と、前記凹凸マークに対して設定された前記複数のオフセット値とを用いて、
(I)前記サンプル原画像のタイヤ周方向に沿った1つのラインデータに対応するラインデータを、前記マスク画像から抽出し、
(II)前記サンプル原画像の1ラインデータ上で、マスク画像から抽出した前記ラインデータが示す境界線で区切られる各領域を、それぞれ1つのラベル領域とし、
(III)前記ラベル領域のうち、周方向に最も長いラベル領域を高さオフセット値の計算開始領域とし、又は、前記マスク画像が示す境界線で囲まれた領域中、最も面積が大きい領域を高さオフセット値の計算開始領域とし、
(IV)前記計算開始領域から順に、隣接するラベル領域との高さ差を求め、
(V)前記複数のオフセット値のうち、求めた高さ差に最も近いオフセット値を、隣接するラベル領域の高さオフセット値としてすべてのラベル領域について設定し、
前記サンプル原画像の全てのラインデータについて、前記(I)から(V)のステップを繰り返すことで高さオフセット画像を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ形状検査方法。
【請求項7】
前記高さオフセット画像生成工程は、
前記マスク画像を前記高さオフセット画像に重ね合わせ、
前記マスク画像が示す境界線で囲まれた領域ごとに、領域内で最も数多く存在する高さオフセット値を、該領域全体の高さオフセット値として設定することを特徴とする請求項6に記載のタイヤ形状検査方法。
【請求項8】
前記差分処理工程で得られた画像内における、当該差分処理工程にて用いたマスク画像でマスクされたマスク範囲に対し、下記の(I)〜(III)のいずれかの処理で高さ座標値を補間する補間工程を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ形状検査方法。
(I)前記マスク範囲を挟む2つの位置での高さ座標値を選び、一方の高さ座標値から他方の高さ座標値に向かって線形的に変化させて得られる高さ座標値を、前記マスク範囲に割り当てることで補間する。
(II)前記マスク範囲を挟む2つの位置での高さ座標値を選び、一方の高さ座標値と他方の高さ座標値の平均値を求めることで得られる平均高さ座標値を、前記マスク範囲に割り当てることで補間する。
(III)前記マスク範囲に少なくとも一部が重なり且つ前記マスク範囲よりも短いウインドを設け、前記ウインドを前記マスク範囲の一端から一端へ移動させつつ、前記検査画像において前記ウインドに対応する位置の最大の高さ座標値又は最小の高さ座標値を選択して、選択した高さ座標値を前記マスク範囲に割り当てることで補間する。
【請求項9】
凹凸マークが形成されたサイドウォール面を有するサンプルタイヤの前記サイドウォール面の画像を用いて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査するタイヤ形状検査装置であって、
前記サイドウォール面の二次元画像を撮像する撮像手段と、
前記サンプルタイヤのサイドウォール面の二次元画像であるサンプル原画像において、前記凹凸マークの輪郭である境界線を検出し、前記境界線の位置を示すマスク画像を生成するマスク画像生成手段と、
前記サンプル原画像において、前記マスク画像に示された前記境界線の位置に対応する領域を除き、残りの領域の高さを1又は複数のオフセット値を用いて表すことで得られる高さオフセット画像を生成する高さオフセット画像生成手段と、を具備し、
前記検査タイヤのサイドウォール面の二次元画像である検査画像から、前記高さオフセット画像を差し引くと共に、前記マスク画像が表す境界領域を除去する差分処理手段と、
前記差分処理工程の結果として得られた凹凸除去画像に基づいて、検査タイヤのサイドウォール面の形状欠陥を検査する形状欠陥検査手段と、を具備し、
複数のオフセット値は、サンプル原画像において、凹凸マークが形成されていないサイドウォール面であるベース面を近似するオフセットプロファイルを作成し、且つ作成されたオフセットプロファイルを基にサンプル原画像から凹凸マークを抽出することで得られる凹凸マークの高さであることを特徴とするタイヤ形状検査装置。
【請求項10】
前記撮像手段は、
前記サイドウォール面に一の光切断線を照射するライン光照射手段と、
前記サイドウォール面に照射された前記ライン光の像を撮像する撮像カメラと、
前記撮像カメラが撮像した1ライン画像を逐次蓄えることで、前記サイドウォール面の二次元画像を構成する撮像メモリと、を具備することを特徴とする請求項9に記載のタイヤ形状検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96972(P2013−96972A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243270(P2011−243270)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】