説明

タイヤ温度測定装置および方法

タイヤ温度測定装置および方法が開示されている。該装置は、測定接点と一対の第1および第2の導電性リードとを有する熱電対を含む。測定接点はタイヤに設けられた通路に取り付けられる。一対の第1および第2の導電性リードはタイヤ内の通路を通って延び、界面でタイヤから抜け出る。パッチは界面でタイヤに取り付けられる。一対の第1および第2の導電性リードは、界面からパッチに設けられた通路内へと延びる。第1および第2の導電性リードは、第1および第2の導電性リードがタイヤの表面から抜け出る界面でパッチによって取り囲まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、タイヤ温度測定装置および方法に関する。特に、本発明の主題は、タイヤに埋め込まれるかまたはタイヤに備えられている熱電対を使用した、タイヤ温度測定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の使用中にタイヤの温度を測定するのは困難である。タイヤの温度を測定する一般的な方法はタイヤに熱電対を挿入することである。熱電対は通常、異種金属から形成された2つの導電性リードの接点を含んでいる。2つの導電性リードの接点によって生成された電圧は、公知のゼーベック効果により接点の温度に正比例する。測定接点のタイヤの温度は、基準接点温度も公知であるならば、接点によって生成された電圧を測定することにより判定することができる。熱電対挿入の深度および角度は、熱電対の接点が温度測定の対象点に配置するように制御することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1は、タイヤ構造体100に設けられた通路110に埋め込まれた典型的な熱電対200を示している。図示するように、タイヤ構造体100のゴム材料は熱電対200を取り囲んで保持している。熱電対200は、保護ケーシング208によって取り囲まれた異種導体の測定接点205を含んでいる。異種導体210および220は、導電性リード210および220として測定接点205から外に延びている。一般的な公知の方法により、測定接点205は測定の対象点に配置されるように所望の深度および角度で挿入されていた。導体210および220は通路110を通って延び、界面120でゴム材料のタイヤ100から抜け出ている。
【0004】
上述のやり方で熱電対を使用する上で不利なのは、タイヤの回転中に熱電対の導電性リードに加わる可能性のある著しい繰返し応力である。この繰り返し応力は、導電性リードがタイヤの表面から抜け出る界面に集中すると、特に強くなる可能性がある。導電性リードに加えられた応力は導電性リードを急速に疲労させる可能性があり、温度測定値の誤りや最終的には熱電対の故障を引き起こすことになる。
【0005】
したがって、上記の不利を克服するタイヤ温度測定装置および方法が必要である。熱電対を使用するタイヤ温度測定技法の種々の実装が実行されているが、本発明の主題技術に係る、以下に提示するような所望の特性すべてを一般に包含する設計はなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様および利点はその一部を以下の説明に記載するか、または該説明から明らかになってもよく、または本発明の実践を通して理解されてもよい。
【0007】
本発明の1つの例示的な実施形態はタイヤ温度測定装置を対象としている。該装置は、測定接点と一対の第1および第2の導電性リードとを有する熱電対を含んでいる。測定接点はタイヤに設けられた通路に取り付けられている。一対の第1および第2の導電性リードはタイヤ内の通路を通って延び、界面でタイヤから抜け出ている。パッチは該界面でタイヤに取り付けられている。一対の第1および第2の導電性リードは、界面からパッチに設けられた同様の通路内へと延びている。装置は、一対の第1および第2の導電性リードと動作可能に通信している温度測定回路をさらに含んでいる。第1および第2の導電性リードは、第1および第2の導電性リードがタイヤの表面から抜け出る界面でパッチによって取り囲まれている。したがって、パッチ材料も一対の第1および第2の導電性リードを保持し、この界面で生じる可能性のある繰返し応力の集中を低減する。
【0008】
本発明のこの例示的な実施形態には種々の添加または修正を施すことができる。
【0009】
例えば、本発明の別の例示的な実施形態はタイヤの温度を測定する方法を対象としている。該方法はタイヤの表面にパッチを設置すること、およびパッチとタイヤに通路を設けることを含んでいる。該方法は、熱電対の測定接点がタイヤに設けられた通路に取り付けられ、かつ第1と第2の導電性リードがタイヤの通路を通って延びて界面でタイヤの表面から抜け出るように、パッチとタイヤに設けられた通路内に測定接点と一対の第1および第2の導電性リードとを有する熱電対を挿入することを含んでいる。該方法は、温度測定回路と動作可能に通信している第1および第2の導電性リードを設置することと、熱電対測定接点信号を測定することと、測定接点でタイヤの温度を計算することとを含んでいる。第1および第2の導電性リードは、第1および第2の導電性リードがタイヤの表面から抜け出る界面でパッチによって取り囲まれている。
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の請求項を参照することでよりよく理解されるようになるだろう。添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を示し、かつ記述と共に本発明の原理を説明するのに役立っている。
【0011】
本発明の最良の形態を含み、当業者を対象とする本発明の完全かつ実施可能な開示は、添付の図面に言及しながら本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】タイヤに設けられた通路に設置された例示的な熱電対測定接点の断面図を示す図である。
【図2】本開示の1つの例示的な実施形態による例示的なタイヤ温度測定装置の断面図を示す図である。
【図3】本開示の1つの例示的な実施形態による例示的な温度測定回路の一部として使用することができる、例示的な基準接点の平面図を示す図である。
【図4】本開示の1つの例示的な実施形態による例示的なタイヤ温度測定装置の分解図を示す図である。
【図5】本開示の1つの例示的な実施形態による例示的なタイヤ温度測定装置の断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで本発明の実施形態について詳細に言及するが、実施形態のうち1つまたは複数の例を図面に示している。各例は本発明を制限するものではなく、本発明を説明するために提供している。事実、本発明の範囲または精神を逸脱することなく、本発明に種々の修正および変更を施すことができることは当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として示しまたは説明した特徴は、別の実施形態で使用して、またさらなる実施形態を生み出すことができる。したがって、本発明は、添付の請求の範囲とそれらの等価物の範囲内に入るような修正および変更をカバーすることを意図している。
【0014】
一般に、本発明の主題はタイヤの温度を測定する方法および装置を対象としている。本開示の例示的な態様によれば、測定接点および一対の第1および第2の導電性リードを有する熱電対を、タイヤに挿入することができる。挿入の角度および深度を制御して、タイヤの温度測定の対象点で熱電対の測定接点を挿入することができる。熱電対の導電性リードは接点からタイヤを通って延び、界面でタイヤの表面から抜け出ている。
【0015】
本開示の装置および方法は、導電性リードがタイヤの表面を抜け出る界面でリードをタイヤ材料と同様の材料のパッチで囲んでおくことによって、タイヤの回転中に熱電対導電性リードに加えられた繰返し応力を低減する。例えば、導電性リードが温度測定回路に接続されるまで、導電性リードはパッチで囲まれている。以下で詳細に述べるように、導電性リードは、導電性リードが銅または他の異種導電性金属を接合してもよい必要基準接点で温度測定回路に接続される。
【0016】
導電性リードを、例えばゴム材料から形成されたパッチで囲むことにより、タイヤの回転中の導電性リードの運動および屈曲を、タイヤの材料内で生じるのと同一レベルまたはそれよりも低いレベルまで低減することができる。したがって、導電性リードがタイヤの表面を抜け出る界面で熱電対の導電性リードをパッチで囲むことにより、タイヤの回転中に引き起こされる損傷または他の疲労から導電性リードを保護して、少なくともタイヤの材料に埋め込まれている間に生じる疲労よりも低いレベルの疲労にする。
【0017】
温度測定回路を使用して、熱電対接点により生成された電圧を温度測定値に変換することができる。温度測定回路はプロセッサと基準接点とを含むことができる。基準接点は、熱電対の導電性リードが、熱電対信号をプロセッサに通信するための通信リードに物理的に接合される位置である。以下で詳細に述べるように、通信リードの導電材料は、一対の第1および第2の熱電対リードの導電材料とは異なる場合があり、回路で生じる異種金属の任意の接点もゼーベック効果により電圧を生成するため、熱電対のみにより提供された信号に歪みをもたらすことになる。基準接点は、pn接合、または基準接点で異種金属の接合によって引き起こされた歪みを補正する誤差信号を生成するために使用されるサーミスタのような、独立した温度測定装置を含むことができる。プロセッサは、通信リードにより提供された信号、および独立した温度測定装置により提供された誤差信号を使用することによって、熱電対接点の位置でタイヤの温度を判定するように構成することができる。
【0018】
本開示のある実施形態によると、プロセッサと基準接点とは、タイヤに取り付けられる回路基板に設置することができる。他の実施形態において、基準接点はパッチに設置することができ、プロセッサはタイヤに取り付けられる回路基板に設置することができる。基準接点で異種金属の接合により引き起こされた歪みを補正するために、基準接点の温度を独立して測定することが必要かもしれない。2つの導電性リードが通信リードに接合される基準接点全体で、温度勾配の形成に対する予防措置を講ずることも必要かもしれない。ある実施形態において、この予防措置は、通信リードを持つ2つの導電性リードの接点を、互いに共におよび独立した温度測定トランスデューサーにより熱的に閉じておき、かつ適切な絶縁材の使用を通して基準接点および温度測定トランスデューサーを取り囲んでおくことで達成することができる。
【0019】
マイクロプロセッサおよび/または基準接点を含んでいる回路基板は、種々の技法を使用してタイヤに取り付けることができる。例えば、一実施形態において、回路基板は、熱電対導電性リードおよび/または基準接点を囲むパッチに直接取り付けることができる。別の実施形態において、回路基板は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれている、PCT出願番号第PCT/US2008/074765号およびPCT出願番号第PCT/US2009/042357号の両方で開示されている1―D直交接続回線技法を使用して、タイヤに取り付けることができる。
【0020】
図1は、タイヤ構造体100に備えられた通路110に挿入された典型的な熱電対200を示している。熱電対200は、異種導電性金属の測定接点205を含んでいる。例えば、測定接点205はクロメル導体およびアルメル導体の接点であってもよい。該導体は導電性リード210および220として測定接点205から延びている。導電性リード210は、例えば、クロメル導電性リードであってもよい。導電性リード220は、例えば、アルメル導電性リードであってもよい。公知の原理、すなわちゼーベック効果によると、異種導体の接点によって生成された電圧は、接点の温度に正比例する。したがって、タイヤ上の対象点の温度は熱電対200の導電性リード210と220との間の電圧を測定することにより判定することができる。
【0021】
熱電対接点205は測定接点205を保護するために保護ケーシング208により取り囲まれている。保護ケーシング208は、セラミックス材料、プラスチック材料、ゴム材料、または他の適切な材料を含む種々の材料のいずれかであればよい。好ましくは、この保護ケーシングは、万が一タイヤ材料の電気伝導率が熱電対信号と干渉するのに十分なくらい大きい場合はタイヤ材料からの干渉を避けるために、電気的絶縁材料から形成されているとよい。導電性リード210および220は各々絶縁体覆いを備えている。ある実施形態において、導電性リード210および220は、図1に示すようにマルチフィラメント芯材の周りをきつく巻いたものであってもよい。リード210および220をきつく巻くことにより、熱電対200に対してさらなる安定性、強度、および屈曲耐久性を提供することができる。この手法は、熱電対の線径を低減して線自体の熱伝導により起こり得る温度測定の誤りを避けるように一般的に勧める、熱電対測定の原理に適合する。
【0022】
熱電対200は種々様々な技法を使用して、タイヤ100に挿入することができる。例えば、一実施形態において、通路110は、タイヤ100に小さな従来のドリルで穴を開けることにより、タイヤ100に予め設けておくことができる。熱電対200は、接点205の保護ケーシング208がチューブの端部に接するように、かつ導電性リード210および220がチューブの中空部内に設置されるように、まず熱電対200を硬いチューブに挿入することによりタイヤ100に挿入することができる。チューブ/熱電対アセンブリは次に、通路110に挿入される。接点205の保護ケーシング208は通路110の両側面との摩擦係合によって保持される。チューブは引き抜かれ、タイヤ100に取り付けられた熱電対200から離れる。タイヤ100への熱電対200の挿入角度および深度は、タイヤの温度測定の対象点に熱電対200の測定接点205を設けるための種々の技法を使用して制御することができる。
【0023】
図1に示すように、熱電対200の導電性リード210および220はタイヤ100の通路110を通って延び、界面120でタイヤ100の表面から抜け出ている。タイヤ100の回転中に、導電性リード210および220に著しい繰返し応力が加わる。先に説明したように、これらの繰返し応力は、導電性リードがタイヤ100の表面から空中へと抜け出る界面120に特に集中し、かつ強くなる。この場合、タイヤの回転から加えられた応力は導電性リード210および220を急速に疲労させる可能性があり、その結果、温度測定値の誤りや最終的には熱電対200の故障を引き起こすことになる。
【0024】
これらの不利を克服するために、本開示の実施形態は、熱電対200の導電性リード210および220をタイヤ100の表面から抜け出る界面120でパッチに囲まれた状態で維持している。例えば、ここで図2を参照すると、熱電対200はタイヤ100に設けられた通路110に取り付けられている。熱電対200の接点および保護ケーシングは通路110の底部に保持されるが、熱電対200の導電性リードは通路110を通って延び、界面120でタイヤ100の表面から抜け出ている。
【0025】
図示するように、パッチ300は界面120でタイヤ100の表面に設置されている。パッチ300は、ゴム材料、エラストマー材料、および/または高分子材料を含む種々の材料のいずれからでも形成することができる。好ましくは、パッチ300の材料はタイヤ100の材料と同様であるのがよい。図2に示したパッチ300は回路基板400に支持表面を提供している。回路基板400は、Chemlok(登録商標)接着剤または他の適切な接着剤を使用してパッチ300に固定することができる。パッチ300は回路基板400に支持を提供する働きをし、かつタイヤ100の回転中に回路基板400に加えられる応力および他の力を緩和する働きもしている。
【0026】
熱電対200の導電性リードがタイヤ100の表面から抜け出る界面120で、熱電対200の導電性リードはパッチ300によって完全に取り囲まれている。温度測定回路に動作可能に接続されるまで、熱電対200の導電性リードはパッチ300で囲まれたままである。この方法で、パッチ300はタイヤの回転中の損傷または他の疲労から導電性リードを保護している。
【0027】
図2に示すように、温度測定回路は基準接点410およびプロセッサ420を含んでいる。プロセッサ420は、熱電対200から提供される信号および基準接点410から提供される誤差信号を用いて、温度を判定するために使用される。プロセッサ420はデータベースに温度測定値を保存することができるか、または、例えばRF通信技法を介して外部装置に温度測定値を送信することができる。図2のプロセッサ420は回路基板400に設置され、本発明の技術の態様に係る各種機能を実行する種々の命令をプログラミングすることができる。例えば、プロセッサ420は、コンピュータが読める形状にレンダリングされたソフトウェア命令にアクセスすることにより、所望の機能を提供するように適合された1つまたは複数のコンピューティング装置を含むことができる。ソフトウェアを使用する場合、任意の適切なプログラミング、スクリプト記述、または他の種類の言語もしくは言語の組み合わせを用いてもよい。しかし、ソフトウェアだけを使用する必要はなく、または必ずしも使用する必要はない。例えば、本明細書に記載したいくつかの実施形態も、これに限定されないがアプリケーション固有の回路を含むハードワイヤード論理または他の回路類によって実行されてもよい。当然ではあるが、コンピュータに実行されたソフトウェアおよびハードワイヤード論理または他の回路類の組み合わせも適切かもしれない。
【0028】
熱電対200の導電性リードは、基準接点410で温度測定回路に動作可能に接続される。基準接点410は、熱電対200の導電性リードが温度測定回路に物理的に接続される接点である。図2において、基準接点410はパッチ300内に設置されている。通信リード230は、マイクロプロセッサ230に基準接点410からの信号を通信する。通信リード230は、回路基板400に接続されるまでパッチ300に設けられた通路110を通って延びている。図4および図5に関して述べるように、基準接点410も、熱電対の導電性リードが回路基板400に設置された基準接点に接続されるまでパッチ300の通路110をずっと通って延びるように、回路基板400に設置することができる。
【0029】
ここで、基準接点410について図3に関して詳細に述べる。上述のように、熱電対200の導電性リード210および220は、測定接点205で共に接合される異種導体から形成されている。例えば、熱電対200の導電性リード210および220は、クロメル材料およびアルメル材料からそれぞれ形成することができる。熱電対測定接点205における異種金属の接点は、測定接点205の位置でタイヤ100の温度を判定するために使用される、温度依存の電圧を生成する。
【0030】
プロセッサ420が熱電対信号を温度測定値に変換することができるようにプロセッサ420に適切な熱電対信号を通信するためには、熱電対200の導電性リード210および220が、何らかの位置で温度測定回路の通信リード230に物理的に接合されなければならない。通信リード230は熱電対導電性リード210および220と同一の導電材料から形成することができる。しかし、多くの例では、通信リード230の導電材料は熱電対のリード210および220の導電材料とは異なっている。例えば、通信リード230は銅材料から形成することができ、熱電対の導電性リード210および220は、クロメル・アルメル材料からそれぞれ形成することができる。熱電対接点205と同様に、熱電対の導電性リード210および220の異種金属と通信リード230との間の物理接続により、熱電対接点で生成された電圧とは極性が反対の温度依存の電圧が生成されるだろう。
【0031】
より詳細には、ここで図3を参照すると、導電性リード210は接点414で通信リード230に物理的に接続されている。導電性リード220は接点416で通信リード230に物理的に接続されている。導電性リード210が通信リード230とは異なる導電材料から形成されれば、熱電対の接点電圧とは極性が反対の温度依存の電圧が接点414によって生成されるだろう。同様に、導電性リード220が通信リード230とは異なる導電材料から形成されれば、熱電対の接点電圧とは極性が反対の温度依存の電圧が接点416によって生成されるだろう。
【0032】
基準接点410で作成された熱電対信号に対する歪みを補正するために、温度測定装置は基準接点410と密接に熱的接触して配置することができる。例えば、接点414および接点416は銅または他の熱伝導板412に設置することができる。温度測定装置は、接点414と416との間の伝導板の中心418にある熱伝導板412と熱的接触して設置することができる。温度測定装置は熱伝導板412の温度に基づいた誤差信号を生成するだろう。温度測定装置は、pn接合またはサーミスタを含む基準接点410の温度を測定するための種々の適切な装置のいずれかであればよい。誤差信号は通信リード230を通してプロセッサ420に通信することができる。通信リード230から受信した信号に基づき、プロセッサ420は、測定接点205により生成される電圧に基づいた温度測定値を生成するだろう。
【0033】
図2の装置は、図1にある熱電対200のタイヤ100への挿入に関して述べた技法と同様の技法を用いて構築することができる。例えば、パッチ300は、まずタイヤ100の表面に配置することができる。通路110は、タイヤ100およびパッチ300に小さな従来のドリルで穴を開けることにより、タイヤ100およびパッチ300に設けることができる。プリント回路基板400は、タイヤ100およびパッチ300に穴を開ける前にパッチ300の最上部に配置することができる。回路基板400に設けられた通路110は、パッチ300およびタイヤ100に通路110を開けるガイドとして使用することができる。
【0034】
上述のように、測定接点205の保護ケーシング208がチューブの端部に接するように、かつ導電性リード210および220がチューブの中空部内に設置されるように、熱電対200は、まずチューブに挿入することによってタイヤ100に挿入することができる。チューブ/熱電対アセンブリは次に、スティンガー装置によって設けられた通路110に挿入することができる。測定接点205の保護ケーシング208は、圧縮および通路110の両側面との摩擦係合によって保持される。チューブは引き抜かれ、タイヤ100に取り付けられた熱電対200から離れる。導電性リード210および220は次に、例えば基準接点410で温度測定回路に接続することによって、温度測定回路と動作可能に通信して配置することができる。
【0035】
ある実施形態において、パッチ300に設けられた通路110およびタイヤ100は、充填材130で充填することができる。充填材130は、ウレタン材料、エポキシ材料または他の適切な材料であればよい。充填材130は、熱電対200を保護する追加の層を提供し、タイヤ100の回転中に熱電対200に加えられる応力をさらに低減する働きをする。特定の実施形態において、充填材130は、パッチ300またはタイヤ100の材料の弾性係数と同様の弾性係数を有することができる。
【0036】
図4および図5は、本開示の別の例示的な実施形態を示している。図示のように、パッチ300はタイヤ100の表面に設置されている。パッチ300は、ゴム材料、エラストマー材料、および/または高分子材料を含む種々の材料のいずれからでも形成することができる。パッチ300は回路基板400に対して機械的な支持を提供している。回路基板400は、熱電対200の導電性リードを通して提供された信号から温度測定値を判定するための温度測定回路を含むことができる。
【0037】
パッチ300は、パッチ300内に埋め込まれた第1の支持要素310を含んでいる。第1の支持要素310は、回路基板400に対して機械的な支持を提供するように剛性度を有することができる。第1の支持要素310は、例えばFR4のような任意の絶縁材料または非導電材料から構成することができる。第1の支持要素310はChemlok(登録商標)接着剤のような接着剤、または他の適切な接着剤を介してパッチ300に接着することができる。別の実施形態において、第1の支持要素310は、一体的にまたはパッチ300の一部に埋め込まれる硬質ゴムまたは他の剛性材料で形成することができる。この実施形態において、第1の支持要素310をパッチ300に接着するのに接着剤は必要ない。第1の支持要素310は、パッチ300に加えられる負荷を低減するために丸くした端部を含むことができる。
【0038】
第1の支持要素310は、第1の支持要素310から延びる一対の第1のポスト312および第2のポスト314を含んでいる。第1のポスト312および第2のポスト214は、第1の支持要素310に埋め込まれているナットまたはソケットを介して第1の支持要素310に取り付けることができる。他の実施形態において、第1のポスト312および第2のポスト314は第1の支持要素310と一体にすることができる。第1の支持要素310は、熱電対200の通路への開口部または通路も含むことができる。図4および図5に示すように、熱電対200の通路への開口部または通路は、第1のポスト312と第2のポスト314との間のほぼ線形の関係に配置することができる。
【0039】
第2の支持要素320がパッチ300の最上部上方に設置されている。第2の支持要素320は、プリント回路基板400とパッチ300との間のスペーサとしての役割を果たす。第2の支持要素320は、例えば、タイヤの回転中などのような機械的ストレスにさらされたときに回路基板400がタイヤ400の上面と接触するのを防ぐことができるだけの高さを有することができる。第1の支持要素310同様に、第2の支持要素320も、例えばFR4などのような絶縁材料から形成されてもよい。第2の支持要素320は第1の支持要素310と協働して、回路基板400に対し機械的な支持を提供している。図示するように、第1のポスト312および第2のポスト314は第2の支持要素320に備えられた開口部を通して延び、回路基板400に接続されている。締め具330は、回路基板400を第1のポスト312および第2のポスト314に機械的に接続するために使用することができる。第2の支持要素320は、熱電対200の通路への開口部または通路も含むことができる。図4および図5に示すように、熱電対の通路への開口部または通路は、第1のポスト312および第2のポスト314を受け入れる開口部間のほぼ線形の関係に配置することができる。
【0040】
熱電対200はタイヤ100に備えられた通路110に取り付けられる。熱電対200の測定接点および保護ケーシングは通路110の底部に保持されるが、熱電対200の導電性リードは通路110を通って延び、界面120でタイヤ100の表面から抜け出ている。熱電対200の導電性リードはパッチ300に設けられた通路110を通して延び、熱電対の導電性リードが回路基板400に到達するまで、第1の支持要素310および第2の支持要素320に設けられた開口部または通路を通して延びている。導電性リード220は、回路基板400に設置される基準接点410に接続されている。基準接点410は、図3に関して上述した基準接点と同様であってよい。
【0041】
界面120で、熱電対200の導電性リードはパッチ300によって完全に取り囲まれている。導電性リードが第1の支持要素310および第2の支持要素320の開口部を抜けるまで、熱電対200の導電性リードはパッチ300により完全に取り囲まれたままである。パッチ300で導電性リードを囲むことにより、第1の支持要素310および第2の支持要素320、タイヤの回転中の導電性リードの運動および屈曲を低減することができる。
【0042】
タイヤ100の回転中に熱電対200に加えられた応力をさらに低減するために、回路基板400およびパッチ300を、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれている、PCT出願第PCT/US2008/074765号およびPCT出願第PCT/US2009/042357号の両方で開示されている1―D直交接続回線技法を使用して、タイヤ100に取り付けることができる。
【0043】
例えば、パッチ300は図4のB−B’線によって表される長手方向を有することができる。パッチ300は、A−A’線として図4および図5に表されているパッチ300の長手方向がタイヤ100の回転方向にほぼ垂直になるように取り付けることができる。第1の支持要素310および第2の支持要素320に設けられた通路に加えて、第1のポスト312および第2のポスト314は、パッチ300の長手方向に対し約80度から約100度までの線に沿ったほぼ線形の関係に配置することができる。
【0044】
パッチ300がパッチ300の長手方向がタイヤ100の回転方向にほぼ垂直になるように位置付けられる場合、主要な曲げ方向はパッチ300の長手方向に確立される。第1の支持ポスト312および第2の支持ポスト314、ならびに熱電対200が、パッチ300の長手方向に対して約80度から約100度までの線に沿ったほぼ線形の関係になるように、熱電対200、パッチ300、および回路基板400の取り付けは、熱電対200、パッチ300、および回路基板400が主要な負荷方向、すなわちパッチ300の長手方向に対してほぼ垂直に整列していることに起因する、熱電対200、パッチ300、および回路基板400の間の接続部およびその接続部間の負荷を制限する。
【0045】
図4および図5の装置は、図1および図2にある熱電対200のタイヤ100への挿入に関して述べた技法と同様の技法を用いて構築することができる。例えば、パッチ300は、まずタイヤ100の表面に配置することができる。第1のポスト312および第2のポスト314を有する第1の支持要素310は、パッチ300に埋め込まれている。第1のポスト312および第2のポスト314が第2の支持要素320を通して延びるように、第2の支持要素320はパッチ300の上部に位置付けることができる。回路基板400は、第1の支持要素310から延び、かつ第2の支持要素320を通して延びている第1のポスト312および第2のポスト314に動作可能に接続することができる。図4および図5に示すように、通路110は、第1の支持要素310、第2の支持要素320、および回路基板400に設けられている。
【0046】
通路110は、パッチ300およびタイヤ100に穴を開けることによって、パッチ300およびタイヤ100内に延びることができる。第1の支持要素310、第2の支持要素320、および回路基板400に設けられた通路110は、パッチ300およびタイヤ100内に通路110を開けるためのガイドとして使用することができる。
【0047】
上述のように、測定接点205の保護ケーシング208がチューブの端部に接するように、かつ導電性リード210および220がチューブの中空部内に設置されるように、熱電対200は、まず硬いチューブに挿入することにより、タイヤ100に挿入することができる。チューブ/熱電対アセンブリは次に、通路110に挿入することができる。測定接点205の保護ケーシング208は、圧縮および通路110の両側面との摩擦係合によって保持される。チューブは引き抜かれ、タイヤ100に取り付けられた熱電対200から離れる。導電性リード210および220は次に、例えば基準接点410で温度測定回路に接続することによって、温度測定回路と動作可能に通信して配置することができる。
【0048】
ある実施形態において、回路基板400に設けられた通路110、第1の支持要素310、第2の支持要素320、パッチ300、およびタイヤ100は、充填材130で充填することができる。充填材130は、ウレタン材料、エポキシ材料または他の適切な材料であればよい。充填材130は、熱電対200を保護する追加の層を提供し、タイヤ100の回転中に熱電対200に加えられる応力をさらに低減する働きをする。特定の実施形態において、充填材130は、第1の支持要素310および第2の支持要素320の材料の弾性係数と同様の弾性係数を有することができる。
【0049】
本発明の主題をタイヤに取り付けられた単一の熱電対を参照して述べたが、当業者は、本明細書に提供した開示を用いれば、本発明の範囲から逸脱することなく、複数の熱電対を使用することができることを容易に理解するはずである。該複数の熱電対は、所望であれば、単一の接点もしくは複数の異なる基準接点、および/または温度測定回路に接続することができる。
【0050】
本発明の主題をその具体的実施形態に関して詳細に説明したが、当業者は、前述の内容を理解するに至ると、そのような実施形態の代替、変更、および等価物を容易に生成してもよいことを認識するだろう。したがって、本開示の範囲は制限ではなく例示のためであり、本主題開示は、当業者には容易に明らかであるような本発明の主題の修正、変更、および/または追加を包含することを除外するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ温度測定装置であって、
測定接点と一対の第1および第2の導電性リードとを有する熱電対であって、前記測定接点がタイヤに設けられた第1の通路に取り付けられ、前記一対の第1および第2の導電性リードがタイヤ内の第1の通路を通って延び、かつ界面でタイヤの表面から抜け出ている熱電対と、
前記界面でタイヤに取り付けられたパッチであって、前記一対の第1および第2の導電性リードが界面から前記パッチに設けられた第2の通路内へと延びるパッチと、
前記一対の第1および第2の導電性リードと動作可能に通信している温度測定回路と、を備え、
前記第1および第2の導電性リードは、前記第1および第2の導電性リードがタイヤから抜け出る前記界面で前記パッチによって取り囲まれる、
タイヤ温度測定装置。
【請求項2】
前記温度測定回路は、プロセッサ、および基準接点と熱的接触している温度測定装置を有する前記基準接点を備える、請求項1に記載のタイヤ温度測定装置。
【請求項3】
前記温度測定装置はpn接合を有する、請求項2に記載のタイヤ温度測定装置。
【請求項4】
前記温度測定装置はサーミスタを有する、請求項2に記載のタイヤ温度測定装置。
【請求項5】
前記プロセッサおよび前記基準接点は前記パッチに取り付けられた回路基板に設置される、請求項2に記載のタイヤ温度測定装置。
【請求項6】
前記プロセッサは前記パッチに取り付けられた回路基板に設置され、前記基準接点は前記パッチに埋め込まれている、請求項2に記載のタイヤ温度測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載のタイヤ温度測定装置であって、該装置は、
前記パッチに埋め込まれ、第1の支持要素から延びる一対の第1および第2のポストを有する前記第1の支持要素と、
前記パッチの上面の上方に設置され、前記第1および第2のポストが第2の支持要素を通って延びる前記第2の支持要素と、
前記第2の支持要素の上方に設置され、前記第1および第2のポストが回路基板に動作可能に接続されて前記回路基板に機械的支持を提供している前記回路基板と、をさらに備え、
前記装置は、前記第1の支持要素および前記第2の支持要素を通して設けられた第3の通路であって、前記第1および第2のポストと前記第3の通路とがほぼ線形の関係に配置されるように、前記第1および前記第2のポストの間に設けられた第3の通路を有する、
請求項1に記載のタイヤ温度測定装置。
【請求項8】
前記第1および第2の導電性リードは、前記第1の支持要素および前記第2の支持要素を通して設けられた前記第3の通路を通って延びる、請求項7に記載のタイヤ温度測定装置。
【請求項9】
前記第1の支持要素および前記第2の支持要素を通して設けられた前記第3の通路は、前記第1の支持要素および前記第2の支持要素の弾性係数とほぼ等しい弾性係数を有するウレタン材料またはエポキシ材料で充填される、請求項8に記載のタイヤ温度測定装置。
【請求項10】
前記第1の支持要素および前記第2の支持要素を通して設けられた前記第1および第2のポストと前記第3の通路とは、タイヤの回転方向にほぼ垂直なパッチの長手方向に対して約80度から約100度の線に沿ったほぼ線形の関係に配置される、請求項7に記載のタイヤ温度測定装置。
【請求項11】
タイヤの温度を測定する方法であって、
タイヤの表面にパッチを配置することと、
前記パッチおよびタイヤに第1の通路を設けることと、
測定接点および一対の第1および第2の導電性リードを有する熱電対を、前記熱電対の前記測定接点がタイヤに設けられた前記第1の通路に取り付けられ、かつ前記第1および第2の導電性リードがタイヤ内の前記第1の通路を通って延びて、界面でタイヤの表面から抜け出るように、前記パッチおよびタイヤに設けられた前記第1の通路に挿入することと、
温度測定回路と動作可能に通信している前記第1および第2の線を配置することと、
前記測定接点の位置で前記タイヤの前記温度を判定することと、を含み、
前記第1および第2の導電性リードは、該第1および第2の導電性リードがタイヤの表面から抜け出る前記界面で前記パッチによって取り囲まれる、
タイヤの温度を測定する方法。
【請求項12】
前記温度測定回路は、プロセッサ、および基準接点と熱的接触している温度測定装置を有する前記基準接点を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記温度測定装置はpn接合を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記温度測定装置はサーミスタを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記プロセッサおよび前記基準接点が設置されている回路基板を前記パッチに取り付けることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、前記プロセッサが設置された回路基板を前記基準接点が埋め込まれた前記パッチに取り付けることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって、該方法は、
第1の支持要素から延びる一対の第1および第2のポストを有する前記第1の支持要素を、前記パッチに埋め込むことと、
前記第1および第2のポストが前記第2の支持要素を通って延びるように、前記パッチの上面の上方に第2の支持要素を位置付けることと、
回路基板を前記第1の支持要素から延びる前記第1および第2ポストに動作可能に接続することと、
前記第1および第2のポストと第2の通路とがほぼ線形の関係に配置されるように、前記第1のポストと前記第2のポストとの間に、前記第1の支持要素および前記第2の支持要素を通る前記第2の通路を設けることと、をさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、前記第1および第2の導電性リードを、前記第1の支持要素および前記第2の支持要素を通して設けられた前記第2の通路に通すことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記第1の支持要素および前記第2の支持要素を通して設けられた前記第2の通路を、前記第1の支持要素および前記第2の支持要素の弾性係数とほぼ等しい弾性係数を有するウレタン材料またはエポキシ材料で充填することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記第1の支持要素および前記第2の支持要素を通して設けられた前記第1および第2のポストと前記第2の通路とが、タイヤの回転方向にほぼ垂直なパッチの長手方向に対して約80度から約100度の線に沿ったほぼ線形の関係に配置されるように、前記パッチを前記タイヤ上に配置することを含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−506834(P2013−506834A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532055(P2012−532055)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/059008
【国際公開番号】WO2011/040913
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【Fターム(参考)】