説明

タイヤ状態のための撓み特徴解析

【課題】タイヤ状態監視システムを提供する。
【解決手段】タイヤ(10)の様々な選択した状態に関連したデータを導き出すための方法が開示される。1つ以上のセンサを、人間の患者から採られた心電図を解析する方法と同様な方法で解析して、監視対象のタイヤ(10)複数の選択した動作特性を得る。信号波形の解析は、1つのタイヤ又はタイヤ対(10)に付属するセンサから発せられる1つの波形の解析及び/又は波形対の比較を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両タイヤに使用するためのタイヤ状態監視システムに関するものである。詳述するならば、本発明は、そのタイヤ状態監視システムの強化に、特に、付属するタイヤセンサが発生する波形の性質に一部に基づいて選択したタイヤ関連パラメータを特定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気タイヤ及びホイールの構造体に電子装置を組み込むことにより、多くの実際的な利点が得られる。タイヤ電子装置は、タイヤ識別パラメータを中継するために、そして例えば温度、圧力、トレッド摩耗、タイヤ回転数、車両速度、その他のタイヤの様々な物理的なパラメータに関する情報を得るために、センサ及びその他のコンポーネントを含むことができる。例えば、フレイ(Frey)他への米国特許第5,749,984号は、タイヤ変形、タイヤ速度及びタイヤ回転数のような情報を得ることができるタイヤ監視システム及び方法を開示している。かかる性能情報は、タイヤ監視及び警報システムにおいて有用であり、タイヤ・パラメータ又は車両システムの動作及び/又は性能を適切に調整するフィードバック・システムに利用できる潜在的可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,749,984号
【0004】
更に、タイヤ構造体に一体化された電子装置システムによって得られる他の潜在的可能性としては、商業的な車両利用分野及びその他の形式の車両利用分野のための資産追跡及び性能特性がある。商用トラック群、航空機及び土木/採鉱車両は全て、タイヤ電子装置システム及び関連情報伝送の利点を利用できる実現可能な工業分野である。無線識別(RFID)タグは、タイヤのための追跡を可能にする、タイヤごとに独特な識別情報を与えるように利用することができる。タイヤセンサは、車両の各タイヤが走行した距離を求めることができ、従って、この種の商用システムのための保守計画の助けとなる。
【0005】
タイヤ状態監視装置及びシステム並びにそれらの付属センサに係る関心のある1つの特定な分野は、タイヤ及び/又は車両の動作に関してタイヤセンサから可能な限り最大のデータを取り出す方法に関する。これらの努力はしばしば、必要情報を得るために複数の異なる種類の様々に組み合わせられ且つ局部的に配置したセンサを使用していた。
【0006】
そのような例には、タイヤ圧力監視があり、その場合、その他のタイヤ又は車両の関連パラメータ、例えば、タイヤ温度、回転速度、走行距離、特定の速度での走行距離、その他のパラメータを追跡することが重要である場合もある。多少なりとも時系列的な記録の保存のために使用できるデータに加えて、リアルタイムでデータを収集通報することもできる。タイヤ圧力監視システムに関して、運転者への圧力不足状態のリアルタイムの通報は、特に車両がハイウェイ速度で走行しているときに車両の方向制御及び安定性に影響を及ぼす可能性がある例えば「急激な空気圧損失」の発生によって圧力不足状態が極めて突然に生じる場合、極めて重要になることがある。それに加えて、タイヤセンサは、車両の或る機能のリアルタイム制御に能動的に利用することができる。かかる機能の例としては、アンチロック又はアンチスキッド制動システムを挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
様々な実施形態の車両状態監視システムが既に開発されており、又、従来技術を利用した様々な組み合わせのセンサが提案されてはいるが、本発明により以下に提案する所望な特徴の全てを包括的に有する構成は従来なかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術において直面し本発明が注目した問題に鑑みて、様々な選択したタイヤ状態に関連したデータを導き出すための改良した方法を開発した。本明細書の以下の主な部分は、タイヤ内に又はタイヤ上に一体化又は取り付けられた圧電式センサを使用した場合を参照するが、詳細に後述するように信号処理方法と組み合わせて他の形式のセンサを使用することも可能であるので、本発明の具体的な限定例を示すものではない。更に、データの並行処理又は順次処理のためにデータを監視対象タイヤに送り及び/又は監視対象タイヤから受けることができるように、データの転送及び処理方法を、様々なセンサから得られる信号に関連させなければならないことは、当業者には明らかな筈である。更に、空気タイヤに関してセンサを組み合わせ且つ信号を処理する例を参照するが、それは、本発明の思想は非空気タイヤにも適用可能であるので、本発明を具体的に限定するものではない。
【0009】
1つの典型的な実施例において、タイヤセンサによって発生された波形は、タイヤ及び車両に関連する沢山の選択したパラメータを得るために調べられ解析される。人間の患者に対して行われる心電図(EKG)に多少類似している方法で、本発明の方法は、タイヤ付属センサによって発生された波形の同様な解析を提案する。
【0010】
本発明の更に別の典型的な実施例において、タイヤ及び/又は車両に関連する複数のパラメータを得るために解析可能な1つ以上の信号を供給するように、1つ以上のタイヤ付属センサをタイヤに取付けることができる。かかる例の非限定的な例としては、車両に取付けられているタイヤの様々な内面、例えば、タイヤの頂部すなわちトレッドと反対側の領域の内側ライナ、タイヤのサイドウオールの内側、タイヤのサイドウオールの外面にセンサを取付け、及び/又は、タイヤ構造体自体内にセンサを一体化することを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0011】
本発明の典型的な実施例を詳細に参照するならば、本明細書においては「圧電パッチ」とも称する場合もある圧電センサは車両タイヤ上に又は車両タイヤ内に固定することができる。圧電式タイヤセンサは、極めて感度の高いデバイスであり、センサを取りけることができるタイヤのどこにでも加えられるいかなる力にも実質的に応答することが証明されている。従って、かかるセンサから得られる信号の選択的な解析は、豊富な情報を提供することが可能な筈である。
【0012】
圧電センサを使用することの別の積極的な特徴として、センサに付属させることができる様々なコンポーネントを動作させるための電源としてもセンサを使用することができる二重機能センサを実現できる可能性がある。この場合のコンポーネントには、限定するものではないが、マイクロプロセッサ、記憶素子、データ送受信回路、又は、任意の具体的な状況又は設備において望ましい要素又はコンポーネントのような要素がある。
【0013】
圧電センサ及び現在の技術の波形解析技術の使用の別の好ましい特徴は、他のタイヤ関連情報源に由来するデータを独立して評価できる能力にある。例えば、本発明による解析技術により、タイヤが過負担であるか及び/又は圧力不足であるどうかを独立して推定することができる。
【0014】
本発明のその他の特徴は、以下の詳細な記載に説明し、又、当業者には以下の詳細な記載から明らかであろう。更に、以下に詳細に図解し説明する特徴及び要素に対する様々な変更及び修正は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な実施例並びに本発明の実施において実現可能であることも理解されたい。その変更には、限定するものではないが、以下に図解し又は説明する手段、特徴又は工程の均等な手段、特徴又は工程への置換、及び様々な部品、特徴及び工程などの機能上、動作上又は位置上の逆転が含まれるものである。
【0015】
更に又は、本発明の様々な本実施例及び様々な現時点で好ましい実施例には、本明細書において開示する特徴、工程或いは要素又はそれらの均等物の様々な組合せ又は特徴、工程或いは要素の様々な形状(これは、図面に明示していない又は図面を参照しての詳細な説明において説明していない特徴、部品或いは工程の組合せ又は特徴、部品或いは工程の形状を含む)を含むことは理解されたい。更に、「発明の開示」の項において必ずしも開示していない本発明のその他の実施例には、「発明の開示」の項において説明した特徴、要素或いは工程及び/又は以下に説明する特徴、要素或いは工程の様々な組合せを含むものである。当業者には、本明細書の以下の記載からそのような実施例又はその他の実施例の特徴はよりよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】地表面に対して転がり接触しているときに表れるタイヤ輪郭を概略的に図解している。
【図2】タイヤが回転してタイヤが地表面に接触しているときの、図1に示すタイヤに付属して取付けられているタイヤセンサが発生する典型的な信号を概略的に図解している。
【図3】車両加速中の、地表面に対して転がり接触しているときに表れるタイヤ輪郭を概略的に図解している。
【図4】タイヤが回転してタイヤが地表面に接触しているときの、図3に示すタイヤに付属して取付けられているタイヤセンサが発生する典型的な信号を概略的に図解している。
【図5】タイヤと、タイヤパラメータセンサのための様々な配置位置とを組み合わせて概略的に図解している。
【図6】タイヤと複数のタイヤパラメータセンサとの組み合わせを概略的に図解している。
【図6(a)−(b)】図6に図解したタイヤに付属したセンサが発生する典型的な波形を図解している。
【図7】横方向の力を受けている図6に図解したタイヤの例を概略的に図解している。
【図7(a)−(b)】横方向の力を受けた結果として、図7に図解したタイヤに付属したセンサが発生する典型的な波形を図解している。
【図8】横方向の力を全く受けていない一対のタイヤを概略的に図解している。
【図9】横方向の力を受けている一対のタイヤを概略的に図解している。
【図9(a)−(b)】横方向の力を受けているときに、図9に図解したタイヤに付属したセンサが発生する典型的な波形を図解している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最良の態様を含む当業者に向けた本発明の十分且つ実施可能な開示を、添付図面を参照して以下に説明する。
【0018】
本明細書及び添付図面を通して、本発明の同一又は類似の特徴又は要素を表示するために参照符号を繰り返して使用する。
【0019】
「発明の開示」の項で説明したように、本発明は、タイヤに付属するセンサからデータを導き出すための方法に特に係るものである。詳述するならば、本発明は、タイヤが取付けられている車両の走行中に、走行中又は動作中にタイヤに加わる圧力でタイヤが撓むときに様々なタイヤセンサが発生する波形を解析することにより、有意なタイヤ関連データを導き出すことができることを発見したものである。
【0020】
詳細に後述するように、動作中のタイヤの撓みにより、付属するセンサが「特徴的な」波形を発生し、その波形を解析することにより、現在のタイヤの状態に係る有意なデータを取り出すことができる。類似したこととして、医者が患者の心電図を解析して、鼓動に現れている患者の心臓の多くの異なる状態を識別することができることはよく知られている。同様に、タイヤの内部のひずみの特徴は、タイヤの状態についての豊富な情報源として使用することができる。
【0021】
ここに開示する本発明の特徴の選択的な組合せが、本発明の複数の異なる実施例に相当する。本明細書に示し説明する典型的な実施例の各々は、本発明を限定するものではないことは理解されたい。又、1つの実施例の一部として図解し又は説明した特徴又は工程は、別の実施例の特徴と組み合わせて使用して、更に別の実施例を構成することもできる。更に、或る特徴は、同一又は類似の機能を達成する明示的に説明していない同様な装置又は特徴と置換可能である。
【0022】
本発明の撓み特徴解析の現在の好ましい実施例を以下詳細に説明する。添付図面を参照するならば、図1は、軸20を中心にして回転するように取付けられているタイヤ10が表面30に接触していることを概略的に図解しており、タイヤと表面との接触により、ブラケット40で範囲を示している接触領域を発生している。
【0023】
図1の表示からわかるように、本発明の撓み特徴解析は、空気で膨張させられ且つ荷重が加えられているタイヤ内に、4つの曲率が異なる領域が基本的にあるという事実を利用するものである。タイヤの大部分は、領域2で表示されており、当該領域は、表面30に接触してもおらず、領域6に非常に近いために相当に撓んでいるということもないタイヤ10の部分に対応する。その領域6は、表面30に完全に接触しているタイヤ部分に対応する。タイヤ部分4及び8は、静的状態で、すなわち、車両が止まっているとき又は等速走行をしているときは、実質的に同一である遷移領域であり、当該遷移領域は、詳細に後述するように、加速状態又は制動状態では、互いに形状が異なってくる。本明細書において、タイヤの回転方向が矢印26で示す方向であると仮定すると、遷移領域8は、「入」領域と考えることができ、遷移領域4は「出」領域と考えることができ、領域6は「接触」領域と考えることができる。
【0024】
図2を参照するならば、本発明に従ってタイヤ付属センサが発生する波形すなわち撓み特徴を概略的に図解している。非制限的な例として、タイヤ付属センサは圧電センサとすることができ、その圧電センサは、自己給電式でも、外部給電式でもよく、更に又は、センサを動作させるために両方の給電方式の素子を組み合わせることもできる。更に、波形発生センサは、現在入手可能な他のセンサでも、新たに開発されているセンサでもよい。本発明の技術思想は、特定の形式のセンサを使用することに基づくものではなく、任意の適切なセンサが発生した波形に対して、タイヤ撓み特徴波形解析を行い、特定のセンサ形式に限定されることなく、タイヤに関連した有意なデータを得ることができるというものであることは明らかであろう。
【0025】
本発明の主な特徴は、特にタイヤ内面上の、排他的ではないが、クラウンのトレッドの反対側のライナ上の、縦方向(車両長手方向)及び/又は横方向の歪みを表している波形を調べることである。時間経過に基づいて上述した4つの領域の各々の曲率並びにそれら領域の大きさ又は範囲を実際に求めることによって、タイヤの状態及び使用状態についての多くの事実を得ることが可能である。上述したように、圧電式タイヤセンサは極めて感度の高いデバイスであって、センサを取りけることができるタイヤのどこにでも加えられるいかなる力にも実質的に応答することが証明されている。従って、かかる圧電センサの使用は、本発明にとって効果的である。しかし、圧電センサの使用は、本発明を限定するものではない。
【0026】
このようなセンサから得られる信号の適切な解析により、(時間の関数としてだけでなく遠心力による波形の関数としての)速度、荷重、タイヤ圧、空気圧不足又は過荷重の状態(これらは、剛性の変化が撓みの変化と同一ではないので、恐らく互いに独立している)、トレッド摩耗(ビームの厚さが摩耗で変化して、中立面の位置及びビームの剛性を変化させる)、加速/制動トルク(「入」領域及び「出」領域の曲率の変化の履歴)、ベルト分離(センサが感度が高いので、センサ直下でなくとも、タイヤのどの場所での不均等にも応答する)、スキッド(高周波成分が現れる)、縦方向の力、横方向の力(特に第2のセンサが横方向に設置されている場合)、ハイドロプレーニング、自己心出しトルク、キャンバーのような実際的な関心対象の多くのパラメータを得ることができる。
【0027】
図2を更に参照すれば、典型的な波形は、等速走行状態下でタイヤ付属センサが発生する信号を図解している。図示するように、タイヤ10が軸20を中心にして矢印26の方向に回転している場合、タイヤは上述した4つの領域の各々に入って出るときに、波形に揺れが生じる。例えば、波形部分22とその繰返し部分24は、表面30に接触していないタイヤ部分で発生する信号に対応する。正方向パルス84は、「入」領域8の開始、即ち非接触領域2と完全接触領域6の開始との間の遷移部分の開始を表している。負方向パルス82は、「入」領域8の終了と完全接触領域6の開始を表している。波形部分62は、完全接触領域6に対応している。正方向パルス44は、完全接触領域6の終了と「出」領域4の開始に対応している。負方向パルス42は、「出」領域4の終了と非接触領域2の開始に対応する。
【0028】
図2の波形から明らかなように、安定状態下において、「入」領域8及び「出」領域4のそれぞれの開始と終了を表すパルスは、同一である。更に、「入」領域8及び「出」領域4のそれぞれの開始パルスと終了パルスとの間隔も同一である。様々なパルスの振幅及び様々なパルスの間の時間差を解析することにより、上述したようにタイヤ回転速度、タイヤ荷重、タイヤ圧力、圧力不足状態又は過圧力状態、及びその他のパラメータのような情報を得ることができる。
【0029】
図3を参照するならば、車両加速時に見ることができる典型的なタイヤ輪郭が図解されている。図1に図解したタイヤ輪郭と同様に、4つのはっきりと区別できるタイヤ領域を識別することができる。これらの領域は、非接触領域200、「入」領域800、「接触」領域600及び「出」領域400として識別することができる。図1及び図3に図示されているタイヤ輪郭の主な違いは、「入」領域800に見ることができる。特に、車両が加速しているとき、タイヤは、図3に参照番号810で図示するように「盛り上がり」又は「膨れ」るようになる。この現象は、1つには、タイヤに加わるトルクの増大により、「接触」領域600のタイヤと地表面30との間のトラクションによりタイヤ回転方向26においてタイヤ材料が圧縮されるためである。「接触」領域600及び「出」領域400の範囲の変動は、車両加速の結果として見ることができる。
【0030】
ここで図4を参照するならば、加速状態においてタイヤ10に付属するセンサが発生する典型的な波形を見ることができる。パルス284及び282の形状及びパルス284と282との間の間隔が、パルス84及び82の形状及びパルス84と82との間の間隔と主に異なる点で、図4に図示される波形は、図2の波形とは異なることが明らかである。これらのパルスに関連する波形パラメータを、図2の対応するものと対比して解析することにより、加速、加速度、加えられているトルク及び上述したような他のパラメータを表すデータを発生することができる。例えば、図2の対応するパルス84と比較してパルス284が幅広く且つ振幅が大きいということがわかる。更に、図4のパルス282と284とは、図2のそれぞれに対応するパルス82と84と比較して大きく離されている。これらの違いを解析して、図1において図示される静的な「入」領域8と比較して「入」領域800の曲率の変化の指標を与えることができる。
【0031】
同様な態様で、多様なパルスを解析することによって他のデータを得ることもできる。例えば、任意の単一パルス42、44、82、84、242、244、282又は284の連続発生の時間間隔は、瞬間速度の指標として使用することができる。パルス44と82との間又はパルス244と282との間の時間差は、タイヤ圧力又は荷重の指標として使用することができる。これらパルスの組合せの間の時間差の急速な変化が、急激に空気が抜けているような圧力の急激な低下の指標として使用することができる。
【0032】
図示してはいないが、図3及び図4に図解したものと同様なタイヤ輪郭及びパルス波形が制動状態でもそれぞれ発生し、「盛り上がり」又は「膨れ」が、「入」領域800と反対側の「出」領域400で発生することは明らかである筈である。その場合、図4の波形は、図2に図解したパルス44及び42に比較して、パルス244及び242に有意な違いを示す。制動状態でのそのようなパルスの解析により、減速情報、トラクション情報、スキッド及びハイドロプレーニングに係る情報、更には上述した他のデータを含む有意なタイヤ及び車両に係る情報を得ることができる。接地領域サイズ間の違いの解析により、例えば、図1に参照番号6で図示し図2の波形図において参照番号62で示す接地領域サイズと、図3に参照番号600で図示し図4の波形図において参照番号262で示す接地領域サイズとの間の違いの解析により、タイヤ圧力及びタイヤに加わる下向きの力に係る情報を含むタイヤ関連情報を得ることができる。これら後者の特徴は、詳細に後述するように、圧力又は下向きの力のタイヤ対間の違いを検討するとき、大きな有意性をもつ。
【0033】
図5を参照するならば、本発明に従ってタイヤ内に又はタイヤ上に又はタイヤ内部にセンサを取付けることができる様々な取付け場所が図解されている。図5に示すように、1つ以上のセンサを、参照番号90で示すようにサイドウオールの外側に、参照番号92で示すようにタイヤのクラウンに、又は参照番号94で示すようにサイドウオールの内側に取付けることによって、又は、参照番号96で示す点線矩形で図解するようにタイヤ構造体内に物理的に埋め込んで、タイヤ10に設けることができる。上述した位置のどの1つの位置でも又はそのうちのいくつかの位置でも又は上述した全ての位置を、任意の1つのタイヤのセンサ配置位置として使用することができる。縦方向及び横方向の力を簡単に検出して、可能な限り最大限の範囲の識別可能なデータを得ることができるように複数のセンサを配置することもできる。更に、本発明を限定するものではないが、複数のセンサは全て同一形式とすることもできる。反対に、特定の形式の状態に多少とも応答することができる別々の撓み特徴を得るために望ましい又は必要な複数の異なる形式のセンサを使用することもできる。
【0034】
ここで図6を参照して、上述したタイヤとセンサとの組合せの変更例を説明する。上述したように、本発明では、1つのタイヤに複数のセンサを組み合わせる。そのような実施例の1つを図6に概略的に図解しており、一対のセンサ310及び320がタイヤ10の互いに向かい合うサイドウオール内面に取り付けられている。図6に図示したように、タイヤは、直線に沿って前進している車両に設けられていると考える。この場合、タイヤ10のサイドウオールが両方とも、同じ力ra及びrbを実質的に受けており、サイドウオール自体が、曲線「a」及び「b」で図解するように実質的に同じ形の輪郭を描いていることに特に気付かれたい。かかる状態は、一つには、タイヤに加えられている横方向の力がないためである。図6(a)及び図6(b)からわかるように、上述した条件下でセンサ310及び320によって発せられる波形312及び322は実質的に同一である。
【0035】
次いで図7を参照するならば、図6に示したタイヤと実質的に同一なタイヤが、矢印FLで表示されるような横方向の力を受けた場合の影響が図解されている。タイヤ10に加えられる横方向の力は、タイヤが装着されている車両が旋廻運動をしている場合を含む沢山の原因により生じる。一般的に、かかる旋廻運動は、センサ310が設けられているサイドウオールに関しては実質的に直線の輪郭「a」を描き、センサ320が設けられているサイドウオールに関しては実質的に更に湾曲した輪郭「b」を描くように、タイヤ10のサイドウオールを不均一に変形させる。かかる条件下では、センサ310及び320は、それぞれ図7(a)及び図7(b)に図示したような波形312及び322を発生する。図示した波形からわかるように、センサ310に係る信号312の振幅はセンサ320に係る信号322の振幅より小さい。更に、図7(a)に図示したように、信号312の振幅が、図6(a)に図示した信号の振幅に比較して同じ比率で小さくなっており、他方、図7(b)及び図6(b)に図示されている信号322に関しては逆になっている。
【0036】
図6に図示した上述した動作条件下での、すなわち、等速前進運動において横方向の力が全くタイヤに加えられていない条件下での例示的に図解したベースライン信号と考えることができるものを越える信号312及び322の振幅変化は、一つには、横方向の力のために不均一な力がタイヤに加えられるためである。センサ312及び322によって生成される信号の間の違いを解析して、タイヤに加えられている横方向の力の大きさをもちろん含む関心対象のタイヤ関連情報を得ることができる。加えられた横方向の力の上流側のセンサが生成する信号(本例の場合、センサ310及び信号312)がゼロ又は少なくとも非常に低い値に低下し、下流側のセンサが大きな値信号を生成している場合、それを、そのタイヤが装着されている車両が転覆する危険にあることの指標としてとることもできる。
【0037】
残りの図面を見るならば、タイヤ対に複数のセンサを組み合わせた例を図示する本発明の実施例が示されている。図8を参照するならば、車両(不図示)の共通の軸12に装着された一対のタイヤ10及び10’が例示的に図示されている。図8に図示されているように、タイヤ10及び10’は、タイヤ10及び10’が横方向の力を全く受けないように直線路上を走行している車両に装備されていると考えることができる。更に、各タイヤの空気圧が実質的に等しいと仮定するならば、各タイヤ10及び10’の接地領域がほぼ等しい。図8及び図9に図示していないセンサを、図5に図示して上述した方法のでタイヤ10及び10’に設けることができる。本発明の他の実施例と同様に、本実施例は、タイヤ10及び10’の各々に複数のセンサを設けることもできる。しかし、センサの形式は本発明にとって限定要因ではないので、センサの形式に関係なく、別々のタイヤ10及び10’に付属するセンサから生成される信号を比較する。
【0038】
図9に図示される構成に関しては、一対のタイヤ10及び10’が、図示される共通の車軸12に設けられている。なお、本実施例は、例示のためのみのものであり、タイヤ対が、同じ車軸に設けられている必要ななく、車両の両側に取り付けられているば、本発明の利点を享受することができることは理解されたい。図9に図示するタイヤ対10及び10’は、矢印14で示す道路に沿ったカーブに車両が入っていくときにようにみえるよう概略的に図解している。当然、そのような運転の間に沢山の力が車両及びそのタイヤに加わっているけれども、ここでは3つの力について主に検討する。それら力は、下向きの矢印Fa及びFbで表されている。それら下向きの矢印Fa及びFbは、カーブ14に沿って曲がる過程においてタイヤ10及び10’にそれぞれ加わる下向きの力を表している。図9からわかるように、タイヤ10’に作用する力Fbが、タイヤ10に作用する力Faより大きい。力Fbの矢印の長さの力Faの矢印の長さより長い部分が、力の差を表している。
【0039】
3つの力の内の第3の力は、矢印Fcによって概略的に図示される横方向の力である。この横方向の力が、下向きのFbと合成されて、タイヤ10’の一部の変形16を引き起こし、同時に、タイヤ10’の接触領域を増大させる。図1を参照することで思い出されるように、接触領域6は、タイヤが通過する地表面と接触しているタイヤの面積である。図9に図示される本発明の実施例において、この接触領域が、図9(a)及び図9(b)に図示されるように、タイヤ10及び10’に付属するセンサから生成されるデータによって正確に決定することができる。
【0040】
図9(a)は、タイヤ10に付属するセンサが発生する信号を表しており、図9(b)は、タイヤ10’に付属するセンサが発生する信号を表している。図9(a)と図9(b)との比較からわかるように、図9(a)に図示される信号の振幅は、図9(b)に図示される信号の振幅より相当小さい。更に、それぞれタイヤ10及び10’の接触領域の大きさを表している図9(a)の信号部分Laと図9(b)の信号部分Lbとの間の時間長差は、横方向の力Fcと下向きの力Fbとの合成効果の指標として使用することができる。下向きの力Fb及び横方向の力Fcが大きくなればなるほど、図9(b)の信号部分Lbで表されるタイヤ10’の接触領域の大きさが大きくなり、他方、図9(a)の信号部分Laで表されるタイヤ10の接触領域の大きさが小さくなる。同時に、タイヤ10’に付属するセンサが発生する信号の振幅が大きくなり、他方、タイヤ10に付属するセンサが発生する信号の振幅が小さくなる。タイヤ10に付属するセンサからの信号の振幅が、絶対値としてより小さくなり、又は、タイヤ10’ に付属するセンサからの信号の振幅と比較してより小さくなった場合、タイヤが道路面と接触していない、すなわち車両が転覆する危険にあるかもしれないと判定することができる。
【0041】
本発明を、本発明の特定の実施例に関して詳細に説明したが、上述した説明を理解した当業者には、上述した実施例に対して変更や修正又は均等物へに置換は容易にできるであろう。本発明の開示は、限定のためではなく、例示のためであり、当業者に明らかな本発明に対する上述した変更、修正及び/又は追加を含むことを除外するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の一対のタイヤを用意する工程と、
前記1つ以上の一対のタイヤに、電子信号を発生する複数のセンサを設ける工程と、
前記1つ以上の一対のタイヤの各タイヤにおける異なる部分にそれぞれ対応する複数の空間的に異なる領域を定める工程と、を含み、前記複数の空間的に異なる領域は、少なくとも、非接触領域、入領域、接触領域及び出領域を含み、
さらに、前記1つ以上の一対のタイヤが転動して前記複数の空間的に異なる領域を通るとき複数の電子信号発生センサによって発生する電子信号を監視する工程と、
前記複数の空間的に異なる領域の内の選択した領域の少なくとも1つの特性を評価するように前記1つ以上の一対のタイヤの内の選択された一対のタイヤからの電子信号を解析する工程とを含み、
前記電子信号を解析する前記工程は、荷重、過荷重、トレッド摩耗、不均一トレッド摩耗、加速トルク、制動トルク、ベルト分離、縦方向の力、横方向の力、自己心出しトルク、及びキャンバーの内の1つ以上に係る情報を得ることであることを特徴とする、選択したタイヤに関連する情報を得るための方法。
【請求項2】
前記複数のセンサを設ける工程は、前記1つ以上の一対のタイヤの各タイヤに複数のセンサを設けることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子信号を解析する工程は、単一のタイヤ内における前記電子信号を発生する複数のセンサの内の複数の選択したセンサが発生する信号の間の違いを解析することを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電子信号を解析する工程は、前記1つ以上の一対のタイヤの内の選択された一対のタイヤにおける前記電子信号を発生する複数のセンサの内の複数の選択したセンサが発生する信号の間の違いを解析することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のセンサを設ける工程は、前記1つ以上の一対のタイヤの各タイヤのサイドウオールの内側部分、前記1つ以上の一対のタイヤの各タイヤのサイドウオールの外側部分、前記1つ以上の一対のタイヤの各タイヤのクラウンの内側部分のうちの1つ以上に、1つ以上の電子信号発生センサを取り付けることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のセンサを設ける工程は、タイヤ内に1つ以上の電子信号発生センサを埋め込むことを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のセンサを設ける工程は、前記1つ以上の一対のタイヤの各タイヤ内に1つ以上の電子信号発生センサを埋め込む工程を更に含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記信号を解析する工程は、前記複数の空間的に異なる領域の内の前記選択した領域の曲率を評価することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記信号を解析する工程は、前記複数の空間的に異なる領域の内の前記選択した領域の大きさを評価することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記信号を解析する工程は、前記複数の空間的に異なる領域の内の前記選択した領域の大きさを評価することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の一対のタイヤの内の選択された一対のタイヤは、車両の共通の軸に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記電子信号を監視する工程は、前記1つ以上の一対のタイヤの各タイヤに加わる下向きの力を監視すると共に前記1つ以上の一対のタイヤにおける対となるタイヤ間で横方向の力を監視することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記電子信号を解析する工程は、前記1つ以上の一対のタイヤの各タイヤが前記接触領域の時間長さを評価することを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6(a)−(b)】
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【図7】
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【図7(a)−(b)】
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【図8】
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【図9】
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【図9(a)−(b)】
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【公開番号】特開2012−162259(P2012−162259A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−64508(P2012−64508)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【分割の表示】特願2008−500687(P2008−500687)の分割
【原出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】