説明

タイヤ用ゴム組成物および空気入りタイヤ

【課題】低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、およびこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムを5質量%以上含有するゴム成分と、シリカと、(a)フェノール系化合物、(b)テルペン系化合物および(c)芳香族ビニル系化合物を共重合して得られた樹脂とを含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、およびそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の低燃費化の要請に対応して、タイヤの転がり抵抗を低減して、発熱を抑えたタイヤの開発が進められている。タイヤの部材のなかでもタイヤにおける占有比率の高いトレッドに対して、優れた低発熱性(低燃費性)が要求されている。このような問題を解決するために、タイヤのトレッドにおいて、従来補強剤として使用されているカーボンブラックを、一部シリカに置き換えることがなされてきた。さらに低燃費性を満足させる方法として、補強用充填剤であるシリカの配合量を減量する方法や、補強性の小さい充填剤を用いることが知られているが、そうすると破壊性能や耐摩耗性、グリップ性能が大きく低下するという問題があった。
【0003】
一方、ゴムと補強用充填剤であるシリカの結合がより強固になれば低燃費性、グリップ性能のバランスのよいゴム組成物ができると考えられる。そこで、シリカの補強性をカーボンブラックと同程度にするために、シリカの分散性を向上させたり、ゴムとシリカを化学的に結合させたりすることで補強性を増大させることを目的としてシランカップリング剤やシリカと相互作用する官能基を有するシリカ用変性ポリマーの検討がなされてきた(例えば、特許文献1)。しかし、シリカと相互作用する官能基を有するポリマーはシリカの分散性を向上させて低燃費性を向上させるというメリットがある反面、シリカとの反応性が強すぎると破壊性能が悪化するおそれがあるというデメリットもある。
【0004】
また、ウェットグリップ性能を改善するために、これまでレジンとしてスチレンやα−メチルスチレンなどのオリゴマーや、テルペン系樹脂を添加することでウェットグリップ性能を向上させる技術が知られている。
【0005】
スチレンやα−メチルスチレンなどのオリゴマーを配合する場合、ウェットグリップ性能の改善は添加量に依存し、添加量を増やすと、ウェットグリップ性能は向上するが破壊性能が低下するという問題点がある。また、テルペン系樹脂は最適な量では破壊性能の改善効果があるものの、ウェットグリップ性能の向上効果はスチレンやα−メチルスチレンなどのオリゴマー程の効果がなく不十分である。
【0006】
そこで、これらの樹脂をブレンドすることで、低燃費性、破壊性能、ウェットグリップ性能のバランスを向上することが考えられるが、それぞれの樹脂のポリマーへの相溶性が異なるために、それぞれの樹脂が均一にポリマーに分散することは困難であり、単純なブレンドで十分に性能向上をさせることはできていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−111753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、およびこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムを5質量%以上含有するゴム成分と、シリカと、(a)フェノール系化合物、(b)テルペン系化合物および(c)芳香族ビニル系化合物を共重合して得られた樹脂とを含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0010】
フェノール系化合物(a)がフェノールおよび/またはアルキルフェノールであり、テルペン系化合物(b)が水酸基を持たない環状不飽和炭化水素であり、芳香族ビニル系化合物(c)がスチレンおよび/またはアルキル置換スチレンであることが好ましい。
【0011】
テルペン系化合物(b)がα−ピネン、β−ピネン、3−カレン、リモネンおよびジペンテンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
樹脂の配合量が、ゴム成分100質量部に対して1〜25質量部であることが好ましい。
【0013】
上記変性ジエン系ゴムが、下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムおよび/またはスチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【化1】

(式中、R、RおよびRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基またはこれらの誘導体を表す。RおよびRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基または環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【0014】
上記タイヤ用ゴム組成物は、タイヤのキャップトレッドに使用されることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定量の上記変性ジエン系ゴムと、シリカと、(a)フェノール系化合物、(b)テルペン系化合物および(c)芳香族ビニル系化合物を共重合して得られた樹脂とを含有するタイヤ用ゴム組成物であるので、該ゴム組成物をタイヤ部材(特に、キャップトレッド)に使用することにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能がバランスよく優れた空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムを5質量%以上含有するゴム成分と、シリカと、(a)フェノール系化合物、(b)テルペン系化合物および(c)芳香族ビニル系化合物を共重合して得られた樹脂とを含有する。
【0018】
本発明では、特定量の上記変性ジエン系ゴムと、シリカと、(a)フェノール系化合物、(b)テルペン系化合物および(c)芳香族ビニル系化合物を共重合して得られた樹脂とを含有するため、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能を相乗的に向上でき、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能をバランスよく改善できる。
【0019】
本発明では、ゴム成分として、シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムを使用する。
【0020】
変性ジエン系ゴムとしては、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を窒素、酸素およびケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴムや、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖および末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)等が挙げられる。
【0021】
上記官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基等があげられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、低燃費性、破壊性能の向上効果が高いという理由から、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0022】
上記官能基が導入されるジエン系ゴム(変性ジエン系ゴムの骨格を構成するポリマー)としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。なかでも、IR、BR、SBRが好ましく、BR、SBRがより好ましい。
【0023】
上記変性剤としては、下記式(1)で表される化合物(特開2010−111753号公報に記載の化合物)が好ましい。これにより、ポリマーの分子量をコントロールし易く、tanδを増大させる低分子量成分を少なくすることができ、シリカとポリマー鎖の結合を適度に強め、低燃費性、破壊性能をより向上できる。
【化2】

(式中、R、RおよびRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)またはこれらの誘導体を表す。RおよびRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)または環状エーテル基(好ましくはエーテル結合を1つ有する炭素数3〜5の環状エーテル基(例えば、オキセタン基))を表す。nは整数(好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3)を表す。)
【0024】
、RおよびRとしては、アルコキシ基が望ましく、RおよびRとしては、アルキル基が望ましい。これにより、優れた低燃費性、破壊性能を得ることができる。
【0025】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記式(1)で表される化合物(変性剤)によるジエン系ゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を用いることができる。例えば、ジエン系ゴムと変性剤とを接触させればよく、調製したジエン系ゴム溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0027】
また、主鎖変性ジエン系ゴムは、従来公知の手法を用いて重合できる。例えば、重合に使用するモノマーの一部として、上記官能基を有するモノマー(例えば、p−メトキシスチレン等の下記式(2)で表される化合物、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレン等の窒素含有化合物等)を使用して重合することにより得られる。また、主鎖末端変性ジエン系ゴムは、例えば、主鎖変性ジエン系ゴムと変性剤とを接触させることにより得られる。
【化3】

(式中、R21は、炭素数が1〜10の炭化水素基を表す。)
【0028】
上記式(2)において、R21は、炭素数が1〜10の炭化水素基を表す。炭素数が10を超えると、高コストになる傾向がある。また、低燃費性、破壊性能を充分に改善できない傾向がある。得られる重合体による低燃費性、破壊性能の改善効果が高いという点から、炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜3である。
【0029】
21で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基などの1価の脂肪族炭化水素基、アリール基などの1価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。得られる重合体による低燃費性、破壊性能の改善効果が高いという点から、R21は、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0030】
また、得られる共重合体による低燃費性、破壊性能の改善効果が高いという点から、式(2)で表される化合物のなかでも、下記式(2−1)で表される化合物が好ましい。
【化4】

(上記式(2−1)中のR21は、上記式(2)中のR21と同様である。)
【0031】
式(2)で表される化合物としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−(n−プロポキシ)スチレン、p−(tert−ブトキシ)スチレン、m−メトキシスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
変性ジエン系ゴム100質量%中の上記式(2)で表される化合物の含有量(アルコキシスチレン成分含有量)は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。0.05質量%未満では、低燃費性、破壊性能の改善効果が得られにくいおそれがある。該含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。30質量%を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
なお、アルコキシスチレン成分含有量は、NMR(例えば、日本電子(株)製のJNM−ECAシリーズの装置)を用いて測定できる。
【0033】
上記窒素含有化合物としては、例えば、3−または4−(2−アゼチジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。なかでも、シリカをより良好に分散できるという点から、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレンが好ましい。
【0034】
変性ジエン系ゴム100質量%中の上記窒素含有化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。0.05質量%未満では、低燃費性、破壊性能の改善効果が得られにくい傾向がある。該含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。10質量%を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
なお、窒素含有化合物の含有量は、NMR(例えば、日本電子(株)製のJNM−ECAシリーズの装置)を用いて測定できる。
【0035】
上記変性ジエン系ゴムのなかでも、低燃費性、破壊性能(特に、低燃費性)の向上効果が高いという理由から、少なくとも一方の末端が上記式(1)で表される化合物で変性されたブタジエンゴム、少なくとも一方の末端が上記式(1)で表される化合物で変性されたスチレンブタジエンゴムが好ましく、1,3−ブタジエン、スチレンおよび上記式(2)で表される化合物を共重合して得られ、少なくとも一方の末端が上記式(1)で表される化合物で変性されたスチレンブタジエンゴム、1,3−ブタジエンおよび上記窒素含有化合物を共重合して得られ、少なくとも一方の末端が上記式(1)で表される化合物で変性されたブタジエンゴムがより好ましい。また、少なくとも一方の末端が上記式(1)で表される化合物で変性されたブタジエンゴムと、少なくとも一方の末端が上記式(1)で表される化合物で変性されたスチレンブタジエンゴムとを併用することも好ましい。
【0036】
ゴム成分100質量%中の変性ジエン系ゴムの含有量は、5質量%以上であり、好ましくは15質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。5質量%未満であると、充分な低燃費性、破壊性能が得られない。該変性ジエン系ゴムの含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0037】
変性ジエン系ゴム以外に使用できるゴム成分としては、上記ジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、BR、SBRが好ましい。
【0038】
本発明では、(a)フェノール系化合物、(b)テルペン系化合物および(c)芳香族ビニル系化合物を共重合して得られた樹脂が使用される。
【0039】
(a)フェノール系化合物としては、フェノール性水酸基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール(アルコキシ基の炭素原子数はアルキル基と同様である。)、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を含有するハロゲン化フェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどの1価のフェノール類が挙げられる。なかでも、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能をバランス良く改善できる点から、フェノール、o、m、p位の少なくとも1つがアルキル基で置換されたアルキルフェノールが好ましく、フェノールがより好ましい。
【0040】
アルキルフェノールにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
アルキルフェノールの具体例としては、例えば、メチルフェノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ジノニルフェノールが挙げられ、o、m、p位のいずれが置換されたものでもよい。なかでも、t−ブチルフェノール、メチルフェノールが好ましい。
【0041】
アルコキシフェノールとしては、前述のアルキルフェノールのアルキル基に対応するアルコキシ基で置換されたメトキシフェノールなどが挙げられる。
ハロゲン化フェノールとしては、例えば、クロロフェノール、ブロモフェノールが挙げられる。
【0042】
不飽和炭化水素基含有フェノールとしては、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシフェニル基を含み、かつフェニル基の水素原子のうちの少なくとも1個が不飽和炭化水素基で置換された化合物が挙げられる。不飽和炭化水素基における不飽和結合としては、二重結合、三重結合が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、炭素原子数2〜10のアルケニル基が挙げられる。不飽和置換基含有フェノールの具体例としては、イソプロペニルフェノール、ブテニルフェノールなどが挙げられる。これらのフェノール系化合物は単独でもまたは2種以上を併用してもよい。
【0043】
(b)テルペン系化合物は、(Cの組成で表される炭化水素およびその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物が挙げられる。テルペン系化合物は特に限定されないが、環状不飽和炭化水素が好ましく、また、水酸基を持たない化合物が好ましい。
【0044】
テルペン系化合物の具体例としては、α−ピネン、β−ピネン、3−カレン(δ−3−カレン)、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。なかでも、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能をバランス良く改善できる点から、α−ピネン、β−ピネン、3−カレン(δ―3―カレン)、ジペンテン、リモネンが好ましく、α−ピネン、β−ピネン、3−カレンがより好ましい。これらのテルペン系化合物は単独でもまたは2種以上を併用してもよい。
【0045】
(c)芳香族ビニル系化合物としては、芳香環とビニル基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、t−ブチルスチレンなどのアルキル置換スチレンが挙げられる。また他に、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなども挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせても用いてもよい。なかでも、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能をバランス良く改善できる点から、スチレン、アルキル置換スチレンが好ましく、スチレン;α−メチルスチレンがより好ましい。これらの芳香族ビニル系化合物は単独でもまたは2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記樹脂(100質量%)におけるフェノール系化合物(a)の共重合割合は、10〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。10質量%未満では、破壊性能、ウェットグリップ性能が悪くなる傾向があり、70質量%を超えると、低燃費性、破壊性能が悪くなる傾向がある。
【0047】
テルペン系化合物(b)の共重合割合は、10〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。10質量%未満では、破壊性能、低燃費性が悪化する傾向となり、70質量%を超えると、ウェットグリップ性能、低燃費性が悪化する傾向となる。
【0048】
芳香族ビニル系化合物(c)の共重合割合は、10〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。10質量%未満では、ウェットグリップ性能が悪化する傾向となり、70質量%を超えると、破壊性能、低燃費性が悪化する傾向となる。
【0049】
前記樹脂の軟化点は特に限定されないが、30〜180℃が好ましく、40〜150℃がより好ましく、50〜120℃がさらに好ましい。軟化点が30℃未満であれば、ウェットグリップ性能の改善効果が小さくなる傾向があり、180℃を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0050】
前記樹脂の重量平均分子量Mwは特に限定されないが、300〜5000が好ましく、300〜2000がより好ましい。Mwが300未満であればウェットグリップ性能の改善効果が小さくなる傾向があり、5000を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
【0051】
前記樹脂は、(a)、(b)および(c)を公知の方法で共重合することにより合成できる。例えば、トルエンなどの有機溶媒中に、BFなどの触媒存在下において、フェノール系化合物、テルペン系化合物および芳香族ビニル系化合物を任意の順序で滴下し、所定の温度および時間反応させることにより調製できる。
【0052】
樹脂の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、1〜25質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましく、5〜15質量部がさらに好ましい。1質量部未満では、充分なウェットグリップ性能が得られない傾向となり、25質量部を超えると、低燃費性、破壊性能が低下する傾向がある。
【0053】
本発明では、シリカが使用される。上記変性ジエン系ゴム、上記樹脂とともに、シリカを配合することにより、良好な低燃費性、およびウェットグリップ性能が得られる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0054】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、80m/g以上が更に好ましい。30m/g未満では、補強効果が小さく、破壊性能が充分に向上できないおそれがある。また、シリカのNSAは、500m/g以下が好ましく、250m/g以下がより好ましい。500m/gを超えると、シリカの分散性が低下し、低燃費性、加工性、破壊性能が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0055】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。5質量部未満であると、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、低燃費性、加工性、破壊性能が低下する傾向がある。
【0056】
本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0057】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上である。3質量部未満では、耐摩耗性、破壊性能が悪化する傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0058】
本発明では、グリップ性能などの観点から、軟化剤を配合することが好ましい。
軟化剤としては特に限定されないが、鉱物油などのオイルが挙げられる。オイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイルが挙げられる。
【0059】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。3質量部未満であると、加工性、ウェットグリップ性能が低下するおそれがある。上記オイルの含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。40質量部を超えると、充分な低燃費性と破壊性能が得られないおそれがある。
【0060】
また、前記樹脂およびオイルの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上である。3質量部未満では、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、該合計含有量は、好ましくは65質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。65質量部を超えると、耐摩耗性、破壊性能が悪化する傾向がある。
【0061】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、クレー等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0062】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、上記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0063】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッド部に用いられることが好ましく、キャップトレッドに用いられることが特に好ましい。キャップトレッドに使用することで、低燃費性、ウェットグリップ性能および破壊性能の優れた性能バランスが得られる。
【0064】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【実施例】
【0065】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0066】
(製造例1〜4)
<使用薬品>
レジンの合成に使用した薬品を以下に示す。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
トルエン:関東化学(株)製
α−ピネン:東京化成工業(株)製
3−カレン:東京化成工業(株)製
フェノール:和光純薬工業(株)製
スチレン:東京化成工業(株)製
α−メチルスチレン:東京化成工業(株)製
三フッ化ホウ素(BF):東京化成工業(株)製
炭酸ナトリウム:東京化成工業(株)製
【0067】
<合成方法>
温度計、攪拌装置、冷却器、Dean−Starkトラップを備えた三口フラスコを十分に窒素置換し、そこにトルエン200gを添加した。これにフェノールを16g添加し、攪拌、還流を2時間行った。触媒としてBFガスを1.2g添加し、α−ピネン42gを90分程度の時間で滴下し、その後スチレン42gを30分程度の時間で滴下し、40℃において60分間窒素下で攪拌しながら重合を行った。反応終了後、炭酸ナトリウム1.2gを100mlの水に溶解したものを添加して反応を停止させ、水洗を繰り返すことで触媒を除去した。減圧蒸留することでトルエン、未反応モノマーを除去し目的とするレジンAを得た。
α−ピネンの代わりに3−カレンを、スチレンの代わりにα−メチルスチレンを用い、表1の添加量に変更する他は、レジンAと同様の方法でレジンB〜Dを合成した。
合成したレジンの組成、軟化点、分子量を表1に示す。なお、分子量、軟化点は以下の方法で測定した。
【0068】
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定)
Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0069】
(軟化点)
軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度を軟化点とした。
【0070】
【表1】

【0071】
以下、製造例5、6で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
<使用薬品>
n−ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:東京化成工業(株)製
p−メトキシスチレン:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
変性剤:アヅマックス社製の3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(上記式(1)で表される化合物)
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
シクロへキサン:関東化学(株)製
ピロリジン:関東化学(株)製
ジビニルベンゼン:シグマアルドリッチ社製
1.6M n−ブチルリチウムへキサン溶液:関東化学(株)製
イソプロパノール:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
【0072】
(製造例5)
(主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムの調製)
十分に窒素置換した耐熱容器にn−ヘキサン1500ml、スチレン100mmol、1,3−ブタジエン800mmol、p−メトキシスチレン5mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、0℃で48時間撹拌した。その後、変性剤を0.15mmol加えて、0℃で1時間撹拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムを得た。
【0073】
(製造例6)
(主鎖末端変性ブタジエンゴムの調製)
十分に窒素置換した100ml容器に、シクロヘキサン50ml、ピロリジン4.1ml(3.6g)、ジビニルベンゼン6.5gを加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、抽出・精製を行うことでモノマー(4−(2−ピロリジノエチル)スチレン)を得た。
次に、充分に窒素置換した1000ml耐圧製容器に、シクロヘキサン600ml、1,3−ブタジエン71.0ml(41.0g)、モノマー0.29g、テトラメチルエチレンジアミン0.11mlを加え、40℃で1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.2mlを加えて撹拌した。3時間後、変性剤を0.5ml(0.49g)加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて主鎖末端変性ブタジエンゴムを得た。
【0074】
得られた変性ジエン系ゴム(主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、主鎖末端変性ブタジエンゴム)について、以下の方法により分析を行った。
【0075】
(重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0076】
(変性ジエン系ゴム中のアルコキシスチレン成分含有量、スチレン成分含有量、窒素含有化合物の含有量の測定)
変性ジエン系ゴム中のアルコキシスチレン成分含有量、スチレン成分含有量、窒素含有化合物の含有量は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて測定した。
【0077】
実施例および比較例
<使用薬品>
実施例および比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BR:ウベポールBR150B(宇部興産(株)製)
変性BR:製造例6で合成した主鎖末端変性ブタジエンゴム(窒素含有化合物に由来する構成単位を主鎖中に有し、一方の末端が上記式(1)で表される化合物で変性されたブタジエンゴム)(ビニル含量:18質量%、Mw:30万、窒素含有化合物の含有量:2質量%)
SBR:NS116(JSR(株)製、ビニル含量:60質量%、スチレン含有量:20質量%)
変性SBR:製造例5で合成した主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(上記式(2)で表される化合物に由来する構成単位を主鎖中に有し、一方の末端が上記式(1)で表される化合物で変性されたスチレンブタジエンゴム)(アルコキシスチレン成分含有量:1.2質量%、スチレン成分含有量:19質量%、Mw:50万)
シリカ:UltrasilVN3(エボニックデグッサ社製、NSA:175m/g)
シランカップリング剤:Si69(エボニックデグッサ社製、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:プロセスX−140(ジャパンエナジー(株)製)
レジンA〜D:製造例1〜4で合成
レジンE:Kristalex3085(αメチルスチレン樹脂、イーストマンケミカル社製)
レジンF:YSレジンPX1250(テルペン樹脂、ヤスハラケミカル(株)製)
レジンG:YSポリスター T115(テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル(株)製)
酸化亜鉛:酸化亜鉛(三井金属鉱業(株)製)
ステアリン酸:ステアリン酸「椿」(日油(株)製)
老化防止剤:ノクラック6C(大内新興化学工業(株)製)(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:粉末硫黄(鶴見化学工業(株)製)
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0078】
<ゴム組成物の製造法>
表2に示す配合処方にしたがって、神戸製鋼製1.7Lバンバリーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
【0079】
<タイヤの製造法>
得られた未加硫ゴム組成物を使用して、トレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせて170℃で10分間プレス加硫し、サイズ195/65R15の試験用タイヤを作製した。
【0080】
<評価方法>
(転がり抵抗(低燃費性))
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫ゴム組成物)の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1の損失正接tanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗特性(低燃費性)に優れる。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0081】
(破壊性能(ゴム強度))
得られた加硫ゴム組成物を用いて、3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K 6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験をおこない、破断強度(TB)および破断時伸び(EB)を測定し、その積(TB×EB)を算出した。下記計算式により、各配合(加硫物)のゴム強度(TB×EB)を指数表示した。なお、ゴム強度指数が大きいほど、破壊性能(ゴム強度)に優れ、耐久性に優れることを示す。
(ゴム強度指数)=(各配合のTB×EB)/((比較例1のTB×EB)×100
【0082】
(ウェットグリップ性能)
作製した試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、水を撒いて湿潤路面としたテストコースで、速度70km/hで制動し、タイヤに制動をかけてから停車するまでの走行距離(制動距離)を測定した。制動距離の逆数の値を比較例1を100として、それぞれ指数表示した。数値が大きいほどウェットグリップ性能が高いことを示す。
【0083】
【表2】

【0084】
表2の結果から、α−メチルスチレン、テルペン、テルペンフェノールのレジンを配合した比較例1〜3では、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能が対応する実施例に比べて劣っていた。また、これらをブレンドした比較例4でも性能バランスはかなり悪かった。
【0085】
一方、特定量の上記変性ジエン系ゴムと、シリカと、(a)フェノール系化合物、(b)テルペン系化合物および(c)芳香族ビニル系化合物を共重合して得られた樹脂(レジンA〜D)とを含有することで、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能が同時に改善され、これらの性能バランスを顕著に改善できることが明らかとなった。
【0086】
実施例3、比較例2、5、6の比較により、特定量の上記変性ジエン系ゴムと、シリカと、(a)フェノール系化合物、(b)テルペン系化合物および(c)芳香族ビニル系化合物を共重合して得られた樹脂とを併用することで、低燃費性、ウェットグリップ性能、破壊性能を相乗的に向上できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカと相互作用する官能基を有する変性ジエン系ゴムを5質量%以上含有するゴム成分と、シリカと、(a)フェノール系化合物、(b)テルペン系化合物および(c)芳香族ビニル系化合物を共重合して得られた樹脂とを含有するタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
フェノール系化合物(a)がフェノールおよび/またはアルキルフェノールであり、テルペン系化合物(b)が水酸基を持たない環状不飽和炭化水素であり、芳香族ビニル系化合物(c)がスチレンおよび/またはアルキル置換スチレンである請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
テルペン系化合物(b)がα−ピネン、β−ピネン、3−カレン、リモネンおよびジペンテンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
樹脂の配合量が、ゴム成分100質量部に対して1〜25質量部である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記変性ジエン系ゴムが、下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムおよび/またはスチレンブタジエンゴムである請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式中、R、RおよびRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基またはこれらの誘導体を表す。RおよびRは、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基または環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【請求項6】
タイヤのキャップトレッドに使用される請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−91756(P2013−91756A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236232(P2011−236232)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】