説明

タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いる空気入りタイヤ

【課題】メルカプトシラン配合ゴムにおいて、転がり抵抗の低減を維持しながら加工性を改善できるゴム組成物及びこれを用いる空気入りタイヤの提供。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対して、メルカプト基含有シランカップリング剤0.5〜15質量部、シリカ20〜120質量部、及び下記構造式(1)で示され、カルボキシル基を1つ以上有する変性シリコーンオイル1〜20質量部を配合するタイヤ用ゴム組成物、並びにこれを用いる空気入りタイヤ。


(式中、R1、R2はそれぞれカルボキシル基を有する基、メチル基であり、R3はカルボキシル基を有する基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ用ゴム組成物及びこれを用いる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
1992年にグリーンタイヤ技術が導入されて以来、シリカは転がり抵抗低減に必要不可欠なフィラーとなっている。近年、転がり抵抗低減を目的にブロックされたメルカプトシランの配合が検討されている(例えば特許文献1)が、ブロックされたメルカプトシランを配合するゴム組成物は加工性(ゴムのスコーチ性が早い)に改善の余地があった。
また天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムに対してアミン変性シリコーンオイル等を配合するゴム組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/132909号
【特許文献2】特許第3479084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者はメルカプトシラン配合ゴムにおけるスコーチ性の悪化の原因がメルカプトシランにあると考えた。また、メルカプトシラン配合のゴム組成物に従来のような変性シリコーンを配合するゴム組成物もスコーチ性が早いことを見出した。
そこで、本発明は、メルカプトシラン配合ゴムにおいて、転がり抵抗の低減(60℃tanδ低減効果)を維持しながら加工性を改善(粘度低減またはスコーチ抑制)できるゴム組成物及びこれを用いる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ジエン系ゴム100質量部に対して、メルカプト基含有シランカップリング剤0.5〜15質量部、シリカ20〜120質量部、及び下記構造式(1)で示され、カルボキシル基を1つ以上有する変性シリコーンオイル1〜20質量部を配合するタイヤ用ゴム組成物が転がり抵抗の低減(60℃tanδ低減効果)を維持しながら加工性を改善(粘度低減またはスコーチ抑制)できるとなりうることを見出し、本発明を完成させた。
【化1】

(式中、R1、R2はそれぞれカルボキシル基を有する基、メチル基であり、R3はカルボキシル基を有する基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜4を提供する。
1. ジエン系ゴム100質量部に対して、メルカプト基含有シランカップリング剤0.5〜15質量部、シリカ20〜120質量部、及び下記構造式(1)で示され、カルボキシル基を1つ以上有する変性シリコーンオイル1〜20質量部を配合することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【化2】

(式中、R1、R2はそれぞれカルボキシル基を有する基、メチル基であり、R3はカルボキシル基を有する基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
2. 前記R1及び前記R2がカルボキシル基を有する基である上記1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
3. 前記変性シリコーンオイルの重量平均分子量が1,000〜10,000である上記1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
4. 上記1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに配置した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は転がり抵抗の低減を維持しながら加工性に優れる。本発明の空気入りタイヤは転がり抵抗の低減を維持しながら加工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示す、タイヤ子午線方向の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物(本発明の組成物)は、
ジエン系ゴム100質量部に対して、メルカプト基含有シランカップリング剤0.5〜15質量部、シリカ20〜120質量部、及び下記構造式(1)で示され、カルボキシル基を1つ以上有する変性シリコーンオイル1〜20質量部を配合することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物である。
【化3】

(式中、R1、R2はそれぞれカルボキシル基を有する基、メチル基であり、R3はカルボキシル基を有する基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
【0010】
ジエン系ゴムについて以下に説明する。本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、天然ゴム、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムが挙げられる。
ジエン系ゴムは、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、芳香族ビニル含有量が20〜45質量%であり、共役ジエン中のビニル結合量が10〜50%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体、ブタジエンゴムを含むのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、芳香族ビニルモノマーと共役ジエンモノマーとを含有する単量体を用いて得られる共重合体である。例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム、αメチルスチレンブタジエンゴム、αメチルスチレンイソプレンゴム、αメチルスチレンイソプレンブタジエンゴムなどが挙げられる。なかでも容易に入手可能で加工性により優れ、物性に優れるという観点から、スチレンブタジエンゴムが好ましい。
【0011】
ジエン系ゴムが有することができる共役ジエン部中の1,2−結合量(例えば、ブタジエンによる1,2−結合量)は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させ、加工性に優れるという観点から、10〜50%であるのが好ましく、25〜48%であるのがより好ましい。1,2−結合量の単位%は質量%、モル%と同義とすることができる。
ジエン系ゴムが、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体である又は芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含む場合その芳香族ビニル含有量(例えば、スチレン含有量)は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、20〜45質量%であるのが好ましく、23〜42質量%であるのがより好ましい。
【0012】
ジエン系ゴムが芳香族ビニル−共役ジエン共重合体である場合、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基のような官能基を有するのが好ましい。官能基は芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の末端もしくは両末端に及び/又は側鎖として結合することができる。
ジエン系ゴムの重量平均分子量は、加工性により優れ、物性をより向上させることができ、転がり抵抗に優れるという観点から、100,000〜2,000,000であるのが好ましく、300,000〜1,500,000であるのがより好ましい。ジエン系ゴム(芳香族ビニル−共役ジエン共重合体)の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0013】
ジエン系ゴムはその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
ジエン系ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上のジエン系ゴムを併用する場合その組合わせは、例えば、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選ばれる少なくとも2種とすることができる。なかでも、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体と天然ゴム及び/又はブタジエンゴムとの組み合わせが好ましい。
【0014】
ジエン系ゴムとして芳香族ビニル−共役ジエン共重合体と天然ゴム及び/又はブタジエンゴムとを併用する場合、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の量は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム全量中の50質量%以上であるのが好ましく、55質量%以上であるのがより好ましく、60〜95質量%であるのがさらに好ましい。
他のジエン系ゴムが天然ゴム及び/又はブタジエンゴムである場合その含有量は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム全量中の、50質量%以下であるのが好ましく、45質量%以下であるのがより好ましく、5〜40質量%であるのが更に好ましい。
【0015】
ジエン系ゴムが有することができる1,2−結合の総量は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム全量中の10〜55質量%(%)であるのが好ましく、15〜55質量%であるのがより好ましく、20〜55質量%であるのがさらに好ましい。なお、ジエン系ゴムが1,2−結合が20〜40質量%の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の他に、さらに、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40質量%以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含む場合、及び/又は芳香族ビニル−共役ジエン共重合体以外の1,2−結合を有するジエン系ゴム(例えば、ブタジエンゴム)を含む場合、1,2−結合の量は、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40質量%の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が有する1,2−結合、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40質量%以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が有する1,2−結合、及び芳香族ビニル−共役ジエン共重合体以外の1,2−結合を有するジエン系ゴムが有する1,2−結合の合計とすることができる。
【0016】
メルカプト基含有シランカップリング剤について以下に説明する。本発明の組成物はメルカプト基含有シランカップリング剤を含有することによって、ゴム組成物中におけるシリカの分散を優れたものとすることができる。本発明の組成物に含有されるメルカプト基含有シランカップリング剤は、メルカプト基及びシリル基又は加水分解性シリル基を有する化合物であれば特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、下記式(2)で表される化合物(メルカプト基含有シランカップリング剤)が挙げられる。
【化4】

(2)
[式中、R1、R2およびR3のうちの少なくとも1つまたは全部が−O−(R5−O)m−R6(R5は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、R6は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基であり、mは0又は1〜30の整数であり、R5が複数の場合複数のR5は同じかまたは異なってもよい。)であり、
1、R2およびR3のうちの1つまたは2つが前記−O−(R5−O)m−R6である場合、残りの基を、炭素数1〜12のアルキル基、−O−R7(R7は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、または炭素数7〜30のアラルキル基である。)、水素原子または炭素数6〜30のアリール基とすることができ、
1、R2およびR3は同じかまたは異なってもよく、
4は炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。]
【0017】
4、R5で表される、炭素数1〜30の2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基(例えばメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基)のような脂肪族炭化水素基;芳香族炭化水素基;これらの組み合わせが挙げられる。
6、R7で表される、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基;ビニル基、アリル基のようなアルケニル基;フェニル基、トリル基のようなアリール基;ベンジル基、フェネチル基のようなアラルキル基が挙げられる。
mは、1〜30の整数であるのが好ましい。
1、R2およびR3のうちの1つまたは2つが前記−O−(R5−O)m−R6である場合、残りの基としての、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基;フェニル基、トリル基のようなアリール基が挙げられる。
【0018】
式(1)で表される化合物は、転がり抵抗の低減により優れるという観点から、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、デグザ社の商品名「VP Si363」が好ましい。VP Si363は下記式(3)で表される。
【化5】

(3)
式(3)中、R1、R2およびR3は−O−(C24−O)n−C1327と−O−C25であり、−O−C25が有する−C25の平均含有量は33%以下であり、nの平均数は5であり、R4はトリメチレン基である。
メルカプト基含有シランカップリング剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においてメルカプト基含有シランカップリング剤の量は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して0.5〜15質量部であり、1.0〜13質量部であるのが好ましく、1.2〜12.5質量部であるのがより好ましい。
【0019】
シリカについて以下に説明する。本発明の組成物に含有されるシリカは特に制限されない。例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。なかでも、加工性を確保しながら物性をより向上させることができ、転がり抵抗に優れるという観点から、湿式シリカ(含水ケイ酸)が好ましい。
シリカは、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、N2SA(窒素吸着比表面積)100〜300m2/gのシリカを少なくとも含むのが好ましく、N2SA150〜300m2/gのシリカを少なくとも含むのがより好ましい。
シリカはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、20〜120質量部であり、同様の理由から、30〜115質量部であるのが好ましく、35〜110質量部であるのがより好ましい。
【0020】
変性シリコーンオイルについて以下に説明する。本発明の組成物に含有される変性シリコーンオイルは、下記構造式(1)で示され、カルボキシル基を1つ以上有する化合物である。
【化6】

(式中、R1、R2はそれぞれメチル基、カルボキシル基を有する基であり、R3はカルボキシル基を有する基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
本発明の組成物は変性シリコーンオイルを含有することによって、メルカプト基含有シランカップリング剤から発生すると推察されるラジカルによるラジカル反応をカルボキシル基によって阻害し(ラジカルトラップ剤の機能)、主鎖がポリシロキサン骨格であることによってゴム組成物の粘度を低下させることができる(可塑剤、分散助剤の機能。例えば、シリカの凝集を抑制することができる。)。このように本発明の組成物において変性シリコーンオイルは上記のような2つの機能を有するので反応性可塑剤として作用することができる。
【0021】
カルボキシル基を有する基は例えば、−R−COOHと表すことができ、Rは2価の炭化水素基であれば特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合わせが挙げられる。
m、n、m+nは以下に示す、変性シリコーンオイルの重量平均分子量の範囲に対応する値とすることができる。
【0022】
変性シリコーンオイルが有するカルボキシル基の数は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から官能基等量で、500〜9000g/molであるのが好ましい。カルボキシル基は変性シリコーンオイルの末端もしくは両末端に及び/又は側鎖に結合することができる。
変性シリコーンオイルは、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、少なくとも両末端にカルボキシル基を有するのが好ましい。つまりR1及びR2はカルボキシル基を有する基であるのが好ましい。
変性シリコーンオイルの重量平均分子量は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、1,000〜10,000であるのが好ましく、1,200〜9,000であるのがより好ましい。
変性シリコーンオイルはその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。変性シリコーンオイルはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明の組成物において、変性シリコーンオイルの量は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜20質量部であり、同様の理由から1.2〜18質量部であるのが好ましく2.0〜15質量部であるのがより好ましい。変性シリコーンオイルの量が20質量部以下である場合、得られるゴムの硬さを適正な範囲とすることができ、操縦安定性に優れる。
【0024】
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、メルカプト基含有シランカップリング剤以外のシランカップリング剤、構造式(1)で示される変性シリコーンオイル以外の(変性)シリコーンオイル、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック)、老化防止剤、加工助剤、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤が挙げられる。添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0025】
本発明の組成物はその製造について特に制限されない。例えば、ジエン系ゴム、メルカプト基含有シランカップリング剤、シリカ、及び必要に応じて使用することができる添加剤(加硫剤、加硫促進剤等を除く。)を予め混練してマスターバッチを製造し、マスターバッチに構造式(1)で示される変性シリコーンオイルを添加してさらに混練し、その後加硫剤、加硫促進剤等を添加して混練する方法が挙げられる。このような場合、構造式(1)で示される変性シリコーンオイルをマスターバッチに後添加するので、構造式(1)で示される変性シリコーンオイルがメルカプト基含有シランカップリング剤とシリカとの反応を阻害することがなく、シリカの分散を十分なものとし転がり抵抗を低減させることができる。
【0026】
変性シリコーンオイルを用いた後の混練温度は、転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性により優れるという観点から、140℃未満であるのが好ましく、120〜139℃であるのがより好ましい。
【0027】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を加硫する際の条件は特に制限されない。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤ(例えば、タイヤトレッド)に好適に使用することができる。
【0028】
本発明の空気入りタイヤについて以下に説明する。本発明の空気入りタイヤは本発明のタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに配置(使用)した空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤについて添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示す、タイヤ子午線方向の部分断面図である。図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。
【0029】
図1において、左右のビード部3間にタイヤ径方向に延在する補強コードをタイヤ周方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のカーカス層4が延設され、その両端部がビード部3に埋設したビードコア5の周りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。カーカス層4の内側にはインナーライナー層7が配置されている。トレッド部1のカーカス層4の外周側には、タイヤ周方向に傾斜して延在する補強コードをタイヤ軸方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のベルト層8が配設されている。この2層のベルト層8の補強コードは層間でタイヤ周方向に対する傾斜方向を互いに逆向きにして交差している。ベルト層8の外周側には、ベルトカバー層9が配置されている。このベルトカバー層9の外周側に、トレッド部1がトレッドゴム層12により形成される。トレッドゴム層12は本発明のタイヤ用ゴム組成物により構成されている。各サイドウォール部2のカーカス層4の外側にはサイドゴム層13が配置され、各ビード部3のカーカス層4の折り返し部外側にはリムクッションゴム層14が設けられている。
【0030】
本発明の空気入りタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を空気入りタイヤのタイヤトレッドに用いる以外特に制限はなく、例えば従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<ゴム組成物の製造>
下記第1表に示す成分を同表に示す量(質量部)で用いて(ただしここでは変性シリコーン、硫黄、加硫促進剤を除く。)これらを16Lの密閉型ミキサーで150℃、6分間混練して混合物を得た。次に、得られた混合物に変性シリコーンを加え、135℃で5分間混練しマスターバッチを得た。得られたマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を同表に示す量(質量部)で加えてオープンロールで混練することにより製造した。
【0032】
<加硫ゴムサンプルの製造>
上記のようにして得られたタイヤ用ゴム組成物を所定形状の金型中で、160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴムサンプルを製造した。
<評価>
ムーニー粘度、ムーニースコーチ、60℃tanδを以下の方法で評価した。結果を第1表に示す。評価結果は従来例を100とする指数で示され、基準例を基準として評価される。
【0033】
・ムーニー粘度
JIS K6300に基づき100℃にてムーニー粘度を測定した。指数が低いほどムーニー粘度が良いことを意味する。
・ムーニースコーチ
JIS K6300に準拠し125℃にてムーニースコーチを測定した。指数が大きいほどムーニースコーチが良いことを意味する。
・60℃tanδ(転がり性能)
上記のようにして得られた、加硫ゴムサンプルを用いて、下記に示す方法で転がり性能(60℃のtanδ)を測定した。
tanδは、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件下で測定した。指数が大きいほど60℃tanδが小さく低発熱性であり、空気入りタイヤにしたとき転がり抵抗が小さく、転がり性能、燃費性能が優れることを意味する。
【0034】
【表1】

【0035】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・SBR1:水酸基を有さないSBR。ゴム成分100質量部に対しオイル分37.5質量部を含む油展品。ランクセス社製Buna「VSL5025−HM−1」。
・SBR2:水酸基を有するSBR。ゴム成分100質量部に対しオイル分37.5質量部を含む油展品。旭化成社製 E581。共役ジエン中の1,2−結合43質量%、重量平均分子量12.5×105
・BR:日本ゼオン社製「Nipol1220」。1,2−結合1.0質量%
・シリカ1:ローディア社製「Zeosil 1165MP」、CTAB160m2/g
・シランカップリング剤1:デグッサ社製「Si69」、スルフィド系
・シランカップリング剤2:デグッサ社製「VP Si363」
・変性シリコーン1:構造式(1)においてR1、R2はカルボキシル基を有する基(−R−COOH)であり、mは1以上の整数であり、nは0で表される化合物であり、その官能基当量(Mw)が2300g/molである。信越化学社製「X22−162C」
・変性シリコーン2:下記式で表される化合物(式中、mは1以上の整数であり、nは0で表される化合物であり、その官能基当量(Mw)が2200g/molである。)。信越化学社製「KF−8012」
【化7】

・変性シリコーン3:変性シリコーン2と同じ式で表される化合物(式中、mは1以上の整数であり、nは0で表される化合物であり、その官能基当量(Mw)が5700g/molである。)。信越化学社製「KF−8008」
・変性シリコーン4:構造式(1)においてR1はカルボキシル基を有する基(−R−COOH)であり、R2はメチル基であり、mは1以上の整数であり、nは0で表される化合物であり、その官能基当量(Mw)が5700g/molである。信越化学社製「X22−3710」
・未変性シリコーン:信越化学社製「KF−96」
・亜鉛華:酸化亜鉛、正同化学工業(株)製、「酸化亜鉛3種」
・ステアリン酸:日本油脂製「ビーズステアリン酸」
・老化防止剤:フレキシス製「6PPD」
・オイル:昭和シェル石油社製「エキストラクト4号S」
・硫黄:鶴見化学工業社製、「金華印油入微粉硫黄」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業製、「ノクセラーCZ−G」
・加硫促進剤2:三新化学工業製、加硫促進剤「サンセラーD−G」
【0036】
第1表に示す結果から明らかなように、構造式(1)で示される変性シリコーンオイルを含有せず代わりに未変性のシリコーンオイルを含有する比較例1は基準例と比較してスコーチが改善されなかった。構造式(1)で示される変性シリコーンオイルの量がジエン系ゴム100質量部に対して1質量部未満である比較例2はムーニー粘度が上昇してしまい、転がり抵抗が悪かった。構造式(1)で示される変性シリコーンオイルの量がジエン系ゴム100質量部に対して20質量部を超える比較例3は転がり抵抗が悪かった。構造式(1)で示される変性シリコーンオイルを含有せず、構造式(1)で示される変性シリコーン以外の変性シリコーンを含有する比較例4はムーニースコーチが改善されなかった。構造式(1)で示される変性シリコーン以外の変性シリコーンを含有する比較例5〜7は転がり抵抗が悪かった。
これに対して実施例1〜6は転がり抵抗の低減を維持又は転がり抵抗をより低減させながら加工性を改善(粘度低減またはスコーチ抑制)させることができる。なかでも実施例1〜4(構造式(1)で示される変性シリコーンオイルがカルボキシル基を有する基を2個以上有する場合。)はカルボキシル基を有する基が1個の実施例5、6より転がり抵抗の低減、加工性(ムーニー粘度、ムーニースコーチ)により優れる。
このように本発明の組成物は、転がり抵抗の低減を維持(又は転がり抵抗をより低減)しながら加工性に優れるものであり、転がり抵抗の低減と優れた加工性とを両立させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 トレッド部
12 トレッドゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対して、メルカプト基含有シランカップリング剤0.5〜15質量部、シリカ20〜120質量部、及び下記構造式(1)で示され、カルボキシル基を1つ以上有する変性シリコーンオイル1〜20質量部を配合することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式中、R1、R2はそれぞれカルボキシル基を有する基、メチル基であり、R3はカルボキシル基を有する基であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
【請求項2】
前記R1及び前記R2がカルボキシル基を有する基である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記変性シリコーンオイルの重量平均分子量が1,000〜10,000である請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに配置した空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−100426(P2013−100426A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245767(P2011−245767)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】