説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、サイドウォール)に用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】天然ゴムと、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される化合物と、カーボンブラック及び/又はシリカとを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
[化1]


[式(1)中、pは2〜8の整数を表す。式(2)中、qは2〜8の整数を表す。Mr+は金属イオンを表し、rはその価数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車の低燃費化への要求が高まっており、トレッドだけではなく、サイドウォールにおいても、優れた低発熱性(低燃費性)が要求されている。
【0003】
低燃費性を向上させる方法として、補強用充填剤を減量する方法が知られている。しかし、この場合、機械的強度が低下するという問題がある。また、低燃費性を向上させる他の方法として、充填剤であるカーボンブラックをシリカで置換する方法が知られているが、この場合も、機械的強度が低下するという問題がある。
【0004】
一方、ゴム組成物において機械的強度を高める方法として、オイルを減量する方法が知られているが、この場合、加工性が悪化するという問題がある。以上のように、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く改善する方法が望まれている。
【0005】
特許文献1〜3では、低燃費性の向上を目的として、シリカを含む配合において、ゴムに特定の極性基を付加することによりシリカと親和性を持たせ、シリカの分散性を高め、低燃費性に優れたゴム組成物を得る方法が記載されているが、他の方法の提供も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−114939号公報
【特許文献2】特開2005−126604号公報
【特許文献3】特開2005−325206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、サイドウォール)に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天然ゴムと、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される化合物と、カーボンブラック及び/又はシリカとを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】

[式(1)中、pは2〜8の整数を表す。式(2)中、qは2〜8の整数を表す。Mr+は金属イオンを表し、rはその価数を表す。]
上記式(2)中のMr+で表される金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、コバルトイオン、銅イオン、又は亜鉛イオンであることが好ましく、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンであることがより好ましい。
【0009】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量が10〜90質量%であることが好ましい。
【0010】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0011】
上記タイヤ用ゴム組成物は、上記式(1)及び上記式(2)で表される化合物の合計含有量が、カーボンブラック及びシリカの合計100質量部に対して0.2〜10質量部であることが好ましい。
【0012】
上記タイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して10〜90質量部であることが好ましい。
【0013】
上記タイヤ用ゴム組成物は、シリカの含有量が、ゴム成分100質量部に対して5〜90質量部であることが好ましい。
【0014】
上記タイヤ用ゴム組成物は、サイドウォール用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、天然ゴムと、上記式(1)及び/又は上記式(2)で表される化合物と、カーボンブラック及び/又はシリカとを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できる。該ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、サイドウォール)に使用することにより、低燃費性、機械的強度(耐久性)に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴムと、上記式(1)及び/又は上記式(2)で表される化合物と、カーボンブラック及び/又はシリカとを含む。
【0018】
天然ゴムと、上記式(1)及び/又は上記式(2)で表される化合物と、カーボンブラック及び/又はシリカとを併用することにより、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できる。
【0019】
本発明では、ゴム成分として天然ゴム(NR)が使用される。NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0020】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。10質量%未満であると、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できないおそれがある。NRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。90質量%を超えると、低燃費性、機械的強度が悪化するおそれがある。
【0021】
NR以外に本発明に使用されるゴム成分としては、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性、機械的強度及び加工性がバランスよく得られるという理由から、BRが好ましい。
【0022】
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含量(好ましくはシス含量が95質量%以上)のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、ケイ素含有化合物により変性された変性BRなどを使用できる。なかでも、高シス含量のBR、変性BRが好ましく、変性BRがより好ましい。
【0023】
変性BRのなかでも、下記式(A)で表される化合物により変性した変性BR(特開2010−111753号公報に記載の変性BR)が好適に用いられる。これにより、ポリマーのTg(ガラス転移温度)を低下させることができ、また、シリカやカーボンブラックなどのフィラーの分散性を改善することができ、低燃費性、機械的強度をより向上できる。
【0024】
【化2】

(式中、R11、R12及びR13は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R14及びR15は、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)又は環状エーテル基(好ましくはエーテル結合を1つ有する炭素数3〜5の環状エーテル基(例えば、オキセタン基))を表す。nは整数(好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3)を表す。)
【0025】
11、R12及びR13としては、アルコキシ基が望ましく、R14及びR15としては、アルキル基が望ましい。これにより、優れた低燃費性、機械的強度を得ることができる。
【0026】
上記式(A)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記式(A)で表される化合物(変性剤)によるブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を用いることができる。例えば、ブタジエンゴムと変性剤とを接触させればよく、ブタジエンゴムを重合し、該重合体ゴム溶液中に変性剤を所定量添加する方法、ブタジエンゴム溶液中に変性剤を添加して反応させる方法などが挙げられる。
【0028】
変性BRのビニル含量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。ビニル含量が35質量%を超えると、低発熱性が損なわれる傾向にある。ビニル含量の下限は特に限定されない。
なお、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0029】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。10質量%未満であると、低燃費性、機械的強度が悪化するおそれがある。該BRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できないおそれがある。
【0030】
本発明では、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される化合物が使用される。
【化3】

[式(1)中、pは2〜8の整数を表す。式(2)中、qは2〜8の整数を表す。Mr+は金属イオンを表し、rはその価数を表す。]
【0031】
上記式(2)で表される化合物は任意の公知の方法により製造することができる。具体的には、ハロアルキルアミンとチオ硫酸ナトリウムとを反応させる方法、フタルイミドのカリウム塩とジハロアルカンとを反応させて、得られた化合物とチオ硫酸ナトリウムとを反応させ、次いで、得られた化合物を加水分解する方法等が挙げられる。
【0032】
具体的には、qが6の化合物の場合、例えば、6−ハロヘキシルアミンとチオ硫酸ナトリウムとを反応させる方法、フタルイミドのカリウム塩と1,6−ジハロヘキサンとを反応させて、得られた化合物とチオ硫酸ナトリウムとを反応させ、次いで、得られた化合物を加水分解する方法等が挙げられる。
【0033】
また、qが3の化合物の場合、例えば、3−ハロプロピルアミンとチオ硫酸ナトリウムとを反応させる方法、フタルイミドのカリウム塩と1,3―ジハロプロパンとを反応させて、得られた化合物とチオ硫酸ナトリウムとを反応させ、次いで、得られた化合物を加水分解する方法等が挙げられる。
【0034】
上記式(1)で表される化合物は、例えば、上記式(2)で表される化合物とプロトン酸とを反応させることにより製造することができる。
【0035】
本発明では、上記式(1)で表される化合物と上記式(2)で表される化合物の混合物を用いることもできる。かかる混合物は、上記式(1)で表される化合物と上記式(2)で表される化合物とを混合する方法、金属アルカリ(上記Mで示される金属を含有する水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等)を用いて上記式(1)で表される化合物の一部を金属塩化する方法、プロトン酸を用いて上記式(2)で表される化合物の一部を中和する方法により製造することができる。このようにして製造した上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物は、濃縮、晶析等の操作により、反応混合物から取り出すことができ、取り出された上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物は、通常0.1〜5%程度の水分を含む。本発明では、上記式(1)で表される化合物のみを用いることができ、また、上記式(2)で表される化合物のみを用いることもできる。また、複数種の上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物を併用することもできる。
【0036】
式(1)中、pは2〜8の整数を表し、2〜5が好ましい。式(2)中、qは2〜8の整数を表し、2〜5が好ましい。
【0037】
r+で示される金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、コバルトイオン、銅イオンおよび亜鉛イオンが好ましく、リチウムイオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。rは金属イオンの価数を表わし、当該金属において可能な範囲であれば、限定されない。金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンのようなアルカリ金属イオンの場合、rは通常1であり、金属イオンがコバルトイオンの場合、rは通常2または3である。金属イオンが、銅イオンの場合、rは通常1〜3の整数であり、金属イオンが、亜鉛イオンの場合、rは通常2である。上記製法によれば、通常、上記式(1)で表される化合物のナトリウム塩が得られるが、カチオン交換反応を行うことにより、ナトリウム塩以外の金属塩に変換することができる。
【0038】
上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物のメディアン径は、好ましくは0.05〜100μmの範囲であり、より好ましくは1〜100μmの範囲である。かかるメディアン径は、レーザー回折法にて測定することができる。
【0039】
上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物は、予め担持剤と混合してから使用してもよい。担持剤としては、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」第510〜513頁に記載されている「無機充てん剤、補強剤」が挙げられ、なかでも、カーボンブラック、シリカ、焼成クレー、水酸化アルミニウムが好ましい。担持剤の使用量は、特に限定されないが、上記式(1)及び/又は上記式(2)で表される化合物の合計量100質量部に対して、10〜1000質量部の範囲が好ましい。
【0040】
上記式(1)及び上記式(2)で表される化合物の合計含有量は、カーボンブラック及びシリカの合計100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。0.2質量部未満であると、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できないおそれがある。また、該合計含有量は、カーボンブラック及びシリカの合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは9.5質量部以下、更に好ましくは9質量部以下である。10質量部を超えると、機械的強度、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0041】
本発明では、カーボンブラックが使用される。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0042】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは35m/g以上である。30m/g未満では、補強性が低下し、充分な機械的強度、耐摩耗性が得られない傾向がある。また、該カーボンブラックのNSAは、好ましくは100m/g以下、より好ましくは80m/g以下、更に好ましくは60m/g以下である。100m/gを超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。また、分散性に劣り、耐摩耗性、機械的強度が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0043】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは80ml/100g以上である。50ml/100g未満であると、補強性が低下し、充分な機械的強度、耐摩耗性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのDBPは、好ましくは300ml/100g以下、より好ましくは200ml/100g以下、更に好ましくは140ml/100g以下である。300ml/100gを超えると、機械的強度、耐疲労特性が悪化するおそれがある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217−4の測定方法によって求められる。
【0044】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは40質量部以上である。10質量部未満であると、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できないおそれがある。上記カーボンブラックの含有量は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。90質量部を超えると、低燃費性、加工性が悪化するおそれがある。
【0045】
シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0046】
シリカの平均一次粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上である。10nm未満の場合、低燃費性及び加工性が悪化する傾向がある。また、シリカの平均一次粒子径は、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下である。40nmを超えると、機械的強度が低下する傾向がある。なお、シリカの平均一次粒子径は、例えば、シリカを電子顕微鏡で観察し、任意の粒子50個について粒子径を測定し、その平均値より求めることができる。
【0047】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは120m/g以上、より好ましくは140m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。120m/g未満であると、充分な補強性が得られず、充分な機械的強度、耐摩耗性が得られない傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。250m/gを超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化する傾向がある。なお、シリカのNSAは、ASTMD3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0048】
シリカを含む場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは13質量部以上、特に好ましくは15質量部以上である。5質量部未満であると、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できないおそれがある。シリカの含有量は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。90質量部を超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり、低燃費性、加工性が悪化する傾向がある。
【0049】
カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。10質量部未満であると、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できないおそれがある。上記合計含有量は、好ましくは130質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。130質量部を超えると、低燃費性、加工性が悪化するおそれがある。
本発明では、カーボンブラック及び/又はシリカと共に、天然ゴムと、上記式(1)及び/又は上記式(2)で表される化合物とを併用することにより、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できる。そのため、低燃費性の向上のために、カーボンブラックやシリカを減量する必要がなく、カーボンブラック及びシリカの合計含有量を上記量とすることができ、機械的強度の低下を抑制でき、低燃費性、機械的強度をよりバランス良く向上できる。
【0050】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレー等の補強用充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、各種老化防止剤、オイル等の軟化剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0051】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又は、キサンテート系加硫促進剤が挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0052】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)等が挙げられる。なかでも、CBSが好ましい。
【0053】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上である。2質量部未満であると、低燃費性、機械的強度及び加工性(特に、加工性)をバランス良く向上できないおそれがある。上記オイルの含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。20質量部を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。
本発明では、カーボンブラック及び/又はシリカと、天然ゴムと、上記式(1)及び/又は上記式(2)で表される化合物とを併用することにより、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できる。そのため、機械的強度の向上のために、オイルを減量する必要がなく、オイルの含有量を上記量とすることができ、加工性の低下を抑制でき、低燃費性、機械的強度及び加工性をよりバランス良く向上できる。
【0054】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0055】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、サイドウォール)に好適に使用できる。
【0056】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、サイドウォール)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0057】
また、本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、ライトトラック用タイヤ等として使用でき、なかでも乗用車用タイヤとして好適に使用できる。
【実施例】
【0058】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0059】
(製造例)(S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩の製造)
反応容器内の気体を窒素ガスに置換した。該反応容器に、3−ブロモプロピルアミン臭素酸塩25g(0.11モル)、チオ硫酸ナトリウム・五水和物28.42g(0.11モル)、メタノール125mlおよび水125mlを仕込み、得られた混合物を70℃で4.5時間還流した。反応混合物を放冷し、減圧下でメタノールを除去した。得られた残渣に、水酸化ナトリウム4.56gを加え、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。減圧下で溶媒を完全に除去した後、残渣にエタノール200mlを加えて1時間還流した。熱ろ過により副生成物である臭化ナトリウムを除去した。ろ液を減圧下で、結晶が析出するまで濃縮し、その後静置した。結晶をろ過により取り出し、エタノール、次いでヘキサンで洗浄した。得られた結晶を真空乾燥して、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩(下記式で表される化合物)を得た。
H−NMR(270.05MHz,MeOD)δppm:3.1(2H,t,J=6.3Hz),2.8(2H,t,J=6.2Hz),1.9−2.0(2H,m)
得られたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩のメディアン径(50%D)を、(株)島津製作所製SALD−2000J型を用い、レーザー回折法(測定操作は下記のとおり)により測定したところ、メディアン径(50%D)は66.7μmであった。得られたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩を粉砕し、そのメディアン径(50%D)が14.6μmであるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩を調製した。メディアン径(50%D)が14.6μmであるS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩を以下の実施例で使用した。
<測定操作>
得られたS−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩を下記の分散溶媒(トルエン)と分散剤(10質量%スルホこはく酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム/トルエン溶液)との混合溶液に室温で分散させ、得られた分散液に超音波を照射しながら、該分散液を5分間撹拌して試験液を得た。該試験液を回分セルに移し、1分後に測定した(屈折率:1.70−0.20i)。
また、S−(3−アミノプロピル)チオ硫酸のナトリウム塩10.0gを水30mlに溶解させて得られる水溶液のpHは11〜12であった。
【化4】

【0060】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
BR:日本ゼオン(株)製のNipol BR1220(シス含量:97質量%、ビニル含量:1.0質量%)
変性BR:住友化学(株)製の変性ブタジエンゴム(ビニル含量:15質量%、上記式(A)中のR11、R12及びR13=−OCH、R14及びR15=−CHCH、n=3)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックE(FEF、NSA:41m/g、DBP:115ml/100g)
化合物1:上記製造例で調製した化合物
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(平均一次粒子径:15nm、NSA:175m/g)
シランカップリング剤1:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤2:Momentive社製のA1891(3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0061】
実施例1〜12及び比較例1〜7
表1〜4に示す配合処方(なお、化合物1の()内の配合量はカーボンブラック及びシリカの合計100質量部に対する化合物1の配合量を示す)に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃で35分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0062】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物について下記の評価を行った。結果を表1〜4に示す。なお、表1〜4の基準配合は、それぞれ比較例1,2,3,4とした。
【0063】
(加工性)
JIS K6300に基づき、上記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度を130℃で測定した。そして、基準配合のムーニー粘度を100とし、下記計算式により、各配合のムーニー粘度を指数表示した。指数が小さいほど、加工性に優れることを示す。
(ムーニー粘度指数)=(各配合のムーニー粘度)/(基準配合のムーニー粘度)×100
【0064】
(機械的強度)
JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、各加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて引張試験を実施し、破断強度(TB)及び破断時伸び(EB)を測定し、破壊エネルギー(TB×EB/2)を算出した。そして、基準配合の破壊エネルギーを100とし、下記計算式により、各配合の破壊エネルギーを指数表示した。指数が大きいほど、機械的強度が高く、耐カット性や耐セパレーション性に優れることを示す。
(強度指数)=(各配合の破壊エネルギー)/(基準配合の破壊エネルギー)×100
【0065】
(低燃費性)
上記加硫ゴム組成物について、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各配合のtanδを測定した。そして、基準配合のtanδを100として、下記計算式により、各配合のtanδを指数表示した。値が大きいほど、低燃費性(転がり抵抗特性)に優れることを示す。
(低燃費性指数)=(基準配合のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
表1〜4の結果より、天然ゴムと、上記式(1)及び/又は上記式(2)で表される化合物と、カーボンブラック及び/又はシリカとを含む実施例は、低燃費性、機械的強度及び加工性をバランス良く向上できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムと、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される化合物と、カーボンブラック及び/又はシリカとを含むタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

[式(1)中、pは2〜8の整数を表す。式(2)中、qは2〜8の整数を表す。Mr+は金属イオンを表し、rはその価数を表す。]
【請求項2】
前記式(2)中のMr+で表される金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、コバルトイオン、銅イオン、又は亜鉛イオンである請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記式(2)中のMr+で表される金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンである請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量が10〜90質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
ブタジエンゴムを含む請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記式(1)及び前記式(2)で表される化合物の合計含有量が、カーボンブラック及びシリカの合計100質量部に対して0.2〜10質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して10〜90質量部である請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
シリカの含有量が、ゴム成分100質量部に対して5〜90質量部である請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
サイドウォール用ゴム組成物として用いられる請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−144598(P2012−144598A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2297(P2011−2297)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】