説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性及びウェットグリップ性能をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】1,3−ブタジエン、下記一般式(I)で表される化合物、及び特定の置換基を有するスチレン系化合物を共重合して得られ、末端が窒素、酸素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する変性剤で変性された共重合体と、リン含有量が200ppm以下である改質天然ゴムとを含むタイヤ用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物を含む空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年省資源、省エネルギー、加えて、環境保護の立場から、排出炭酸ガスの低減に対する社会的要求が強まっている。自動車に対しても排出炭酸ガスの低減を目的として、自動車の軽量化、電気エネルギーの利用等の様々な対応策が検討されている。
【0003】
自動車の共通の課題として、タイヤの転がり抵抗改善による低燃費性の向上が必要とされており、更に自動車に対しては、走行時の安全性向上の要求も強まっている。これら自動車の低燃費性及び安全性は使用されるタイヤの性能に負うところが大きく、自動車用のタイヤに対しては、低燃費性、ウェットグリップ性能、操縦安定性、耐久性の改善要求が強まっている。これらのタイヤ特性は、タイヤの構造・使用材料等種々の要素に左右されるが、特に路面に接するトレッド部分に用いるゴム組成物の性能に大きく左右される。このため、タイヤ用ゴム組成物の技術的改良が多く検討・提案され、実用化されている。
【0004】
例えば、タイヤトレッドゴムの性能として、低燃費性向上にはヒステリシスロスが小さいこと、ウェットグリップ性能向上にはウェットスキッド抵抗性が高いことが要求されている。しかしながら、低ヒステリシスロスと高ウェットスキッド抵抗性との関係は相反するものであり、一つだけの性能向上では問題点の解決は難しいのが現状である。タイヤ用ゴム組成物の改良の代表的な手法は、使用する原材料の改良であり、スチレンブタジエンゴムやブタジエンゴムに代表される原料ゴムの構造の改良、カーボンブラック、シリカ等の補強用充填剤、加硫剤、可塑剤等の構造や組成の改良が行われている。
【0005】
低燃費性及びウェットグリップ性能をバランス良く改善する方法として、充填剤としてシリカを用いる方法が挙げられるが、シリカは自己凝集性が強く、分散が困難であるという点で改善の余地がある。また、特許文献1では、窒素原子及びケイ素原子を含む特定の化合物で末端変性されたスチレンブタジエンゴムと脂肪族カルボン酸亜鉛塩などとを配合し、低燃費性及びウェットグリップ性能に優れたゴム組成物を得る方法が記載されているが、他の方法の提供も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−111754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性及びウェットグリップ性能をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1,3−ブタジエン、下記一般式(I)で表される化合物、及び下記一般式(II)で表される化合物を共重合して得られ、末端が窒素、酸素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する変性剤で変性され、重量平均分子量Mwが1.0×10〜2.5×10である共重合体と、リン含有量が200ppm以下である改質天然ゴムとを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式中、R〜Rは、炭化水素基を表す。rは整数を表す。)
【化2】

(式中、R及びRは、炭化水素基を表す。R及びRは互いに結合していてもよい。Rは水素原子又は炭化水素基を表す。)
【0009】
上記共重合体が、少なくとも上記1,3−ブタジエン、上記一般式(I)で表される化合物、及び上記一般式(II)で表される化合物とともに、スチレンを共重合して得られることが好ましい。
【0010】
上記一般式(I)中、R、R及びRで表される炭化水素基の炭素数が1〜10、rが1〜30の整数、上記一般式(II)中、R、R及びRで表される炭化水素基の炭素数が1〜10であることが好ましい。
【0011】
上記共重合体における上記一般式(I)で表される化合物の含有量が0.05〜35質量%、上記一般式(II)で表される化合物の含有量が0.05〜35質量%であることが好ましい。
【0012】
上記変性剤が下記一般式(III)又は下記一般式(IV)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R10及びR11は、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【化4】

(式中、R12、R13及びR14は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R15は、環状エーテル基を表す。p及びqは整数を表す。)
【0013】
上記改質天然ゴムの窒素含有量が0.3質量%以下であることが好ましい。
【0014】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、上記共重合体の含有量が5質量%以上、上記改質天然ゴムの含有量が10質量%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1,3−ブタジエン及び特定の化合物を共重合して得られ、末端が特定の変性剤で変性され、重量平均分子量Mwが特定の範囲内である共重合体と、リン含有量が特定量以下である改質天然ゴムとを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性及びウェットグリップ性能をバランス良く向上できる。該ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に使用することにより、上記性能に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、1,3−ブタジエン、上記一般式(I)で表される化合物、及び上記一般式(II)で表される化合物を共重合して得られ、末端が窒素、酸素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する変性剤で変性され、重量平均分子量Mwが1.0×10〜2.5×10である共重合体と、リン含有量が200ppm以下である改質天然ゴム(HPNR)とを含む。
【0018】
上記共重合体は、上記一般式(I)で表される化合物、上記一般式(II)で表される化合物で主鎖が変性されていると共に、上記変性剤により少なくとも一方の末端が変性されているため、上記化合物(特に、上記化合物中に含まれる酸素原子)とフィラーとの相互作用、及び上記変性剤とフィラーとの相互作用が生じ、フィラーの分散性が向上するとともに、共重合体の動きが拘束される。その結果、ヒステリシスロスが低減して低燃費性が改善でき、また、良好なウェットグリップ性能も得られ、これらの性能を相乗的に改善できる。
【0019】
また、天然ゴム(NR)中に含まれるリン脂質を低減、除去した改質天然ゴム(好ましくはタンパク質やゲル分も除去した改質天然ゴム)は、発熱しにくい性質があるため、NRの使用に比べて、更なる低燃費化を図ることができる。また、ウェットグリップ性能の向上も図ることができる。
【0020】
更に、本発明では、上記共重合体と、上記改質天然ゴムとを併用することにより、低燃費性、ウェットグリップ性能を相乗的に改善できる。
【0021】
(共重合体)
本明細書において「共重合体」は、ゴム成分に含まれる概念として記載する。
上記共重合体は、少なくとも1,3−ブタジエン、下記一般式(I)で表される化合物、及び下記一般式(II)で表される化合物を共重合して得られ、末端が窒素、酸素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する変性剤で変性されている。
【化5】

(式中、R〜Rは、炭化水素基を表す。rは整数を表す。)
【化6】

(式中、R及びRは、炭化水素基を表す。R及びRは互いに結合していてもよい。Rは水素原子又は炭化水素基を表す。)
【0022】
一般式(I)のR及びRで表される炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。炭素数が10を超えると、高コストになる傾向がある。得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜3である。
【0023】
一般式(I)のR及びRで表される炭化水素基としては、例えば、アルキレン基などの2価の脂肪族炭化水素基、アリーレン基などの2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、R及びRは、アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基がより好ましい。なお、R及びRは同一であっても異なってもよい。
また、rが2以上の場合、それぞれのRは、同一であっても異なってもよい。
【0024】
一般式(I)のRで表される炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。炭素数が10を超えると、高コストになる傾向がある。得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
【0025】
一般式(I)のRで表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基などの1価の脂肪族炭化水素基、アリール基などの1価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、Rは、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基がより好ましく、n−ブチル基が更に好ましい。
【0026】
一般式(I)のr(整数)としては、1〜30が好ましい。更には、rは1〜20がより好ましく、1〜15が更に好ましく、5〜12が特に好ましい。rが30を超えると、コストが増大する。
【0027】
また、得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、一般式(I)で表される化合物のなかでも、下記一般式(I−I)で表される化合物が好ましい。
【化7】

(上記一般式(I−I)中のR〜R及びrは、上記一般式(I)中のR〜R及びrと同様である。)
【0028】
一般式(I)で表される化合物は、公知の方法で合成できる。例えば、強塩基の存在下、ハロゲン化アルキルスチレンとポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとを反応させることにより得られる。具体的には、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを使用して、水素化ナトリウムの存在下、ハロゲン化アルキルスチレン(例えば、4−クロロメチルスチレン)とポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(トリエチレングリコールモノブチルエーテルなど)とを反応させることにより得られる。一般式(I)で表される化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0029】
上記共重合体における上記一般式(I)で表される化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは35質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%以下である。0.05質量%未満では低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が得られにくく、一方、35質量%を超えると高コストになる傾向がある。
【0030】
一般式(II)のR及びRで表される炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。炭素数が10を超えると、高コストになる傾向がある。得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
【0031】
一般式(II)のR及びRで表される炭化水素基としては、例えば、Rと同様のものが挙げられる。また、R及びRが互いに結合した炭化水素基としては、例えば、R及びRが連結して形成されるエチレン基などのアルキレン基などが挙げられる。なお、R及びRが連結して形成される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4である。得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、R及びRは、アルキル基、アルキレン基が好ましく、n−ブチル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、エチレン基がより好ましい。なお、R及びRは同一であっても異なってもよい。R及びRは、互いに結合していることが好ましい。
【0032】
一般式(II)のRで表される炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましい。炭素数が10を超えると、高コストになる傾向がある。得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
【0033】
一般式(II)のRで表される炭化水素基としては、Rと同様のものが挙げられる。得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、Rは、水素原子であることが好ましい。
【0034】
また、得られる共重合体による低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が高いという点から、一般式(II)で表される化合物のなかでも、下記一般式(II−I)で表される化合物が好ましい。
【化8】

(上記一般式(II−I)中のR〜Rは、上記一般式(II)中のR〜Rと同様である。)
【0035】
一般式(II)で表される化合物は、ビニルベンズアルデヒド(例えば、4−ビニルベンズアルデヒド)を公知の方法でアセタール化することにより得られる。その具体例としては、4−ビニルベンズアルデヒドジブチルアセタール、4−ビニルベンズアルデヒドエチレンアセタール、4−ビニルベンズアルデヒドジメチルアセタール、4−ビニルベンズアルデヒドジエチルアセタール、4−ビニルベンズアルデヒドジ−n−プロピルアセタール、4−ビニルベンズアルデヒドジイソプロピルアセタール、3−ビニルベンズアルデヒドジブチルアセタールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0036】
上記共重合体における上記一般式(II)で表される化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは35質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%以下である。0.05質量%未満では低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が得られにくく、一方、35質量%を超えると高コストになる傾向がある。
【0037】
上記共重合体は、少なくとも上記1,3−ブタジエン、上記一般式(I)で表される化合物、及び上記一般式(II)で表される化合物とともにスチレンを共重合して得られるものであってもよい。上記共重合体がスチレンを含有する場合、スチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。5質量%未満ではウェットグリップ性能が悪化する傾向があり、一方、40質量%を超えると低燃費性が悪化する傾向がある。
【0038】
上記共重合体における1,3−ブタジエンの含有量は特に限定されず、他の成分の含有量に合わせて適宜調整すればよいが、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られる。
【0039】
上記共重合体における一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物、1,3−ブタジエン及びスチレンの含有量は、後述する実施例の方法で測定できる。
【0040】
<変性剤>
上記共重合体は、少なくとも一方の末端が、窒素、酸素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する変性剤で変性されている。
【0041】
上記官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基等が挙げられる。なかでも、低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が大きいという点から、アミノ基(好ましくはアルキルアミノ基、より好ましくはジアルキルアミノ基)、アルコキシシリル基、エーテル基が好ましい。
【0042】
上記変性剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1−(4−N,Nジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3,5−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−グリシジル−4−(2−ピリジル)ピペラジン、1−グリシジル−4−フェニルピペラジン、1−グリシジル−4−メチルピベラジン、1−グリシジル−4−メチルホモピベラジン、1−グリシジルヘキサメチレンイミン、11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、1−ベンジル−4−グリシジルピペラジン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール、2−(6−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2−(2−ピリジルエチル)チオプロピルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)チオプロビルトリメトキシシラン、2,2−ジエトキシ−1,6−ジアザ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジメトキシ−1,6−ジアザ−2−シラシクロオクタン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、2,4−ジニトロベンゼンスルホニルクロライド、2,4−トリレンジイソシアナート、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−トリブチルスタニル−1,3−ブタジエン、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2−ビニルピリジン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリメトキシシラン、2−ラウリルチオエチルフェニルケトン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1,3−ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(1,3−ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3,4−ジアミノ安息香酸、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシジエトキシ)シラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエトキシ(メチル)シリルプロピル無水コハク酸、3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)ジエトキシメチルシラン、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸、3−トリエトキシシリルプロピル無水酢酸、3−トリフェノキシシリルプロピル無水コハク酸、3−トリフェノキシシリルプロピル無水酢酸、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−ヘキサメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4’−(イミダゾール−1−イル)−アセトフェノン、4−[3−(N,N−ジグリシジルアミノ)プロピル]モルホリン、4−グリシジル−2,2,6,6−テトラメチルピベリジニルオキシ、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−ビニルピリジン、4−モルホリノアセトフェノン、4−モルホリノベンゾフェノン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノブロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)サクシンイミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ピロール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−3−[アミノ(ポリプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[5−(トリエトキシシリル)−2−アザ−1−オキソペンチル]カプロラクタム、N−[5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソペンチル]カプロラクタム、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリメトキシシラン、N−アリル−アザ−2,2−ジエトキシシラシクロペンタン、N−アリル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、N−n−ブチル−アザ−2,2−ジエトキシシラシクロペンタン、N−n−ブチル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、N,N,N’,N’−テトラエチルアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチルチオ尿素、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N’−エチレン尿素、N,N’−ジエチルアミノベンゾフェノン、N,N’−ジエチルアミノベンゾフェノン、N,N’−ジエチルアミノベンゾフラン、N,N’−ジエチルカルバミン酸メチル、N,N’−ジエチル尿素、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N,N−ジオクチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、N,N−ジオクチル−N’−トリメトキシシリルプロピルウレア、N,N−ジエチルカルバミン酸メチル、N,N−ジグリシジルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−エチルアミノイソブチルトリエトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−ビニルベンジルアザシクロヘプタン、N−フェニルピロリドン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、n−ブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−メチルインドリノン、N−メチルピロリドン、p−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)−3−イソブチルジエトキシシラン、(アミノエチルアミノ)−3−イソブチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、アクリル酸、アジピン酸ジエチル、アセタミドプロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノベンゾフェノン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、エチレンオキシド、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリド、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリセロールトリステアレート、クロロトリエトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロポリジメチルシロキサン、クロロメチルジフェノキシシラン、ジアリルジフェニルスズ、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、ジエチル(グリシジル)アミン、ジエチルジチオカルバミン酸2−ベンゾチアゾイルエステル、ジエトキシジクロロシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシラン、ジグリシジルポリシロキサン、ジクロロジフェノキシシラン、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジビニルベンゼン、ジフェニルカルボジイミド、ジフェニルシアナミド、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェノキシメチルクロロシラン、ジブチルジクロロスズ、ジメチル(アセトキシ−メチルシロキサン)ポリジメチルシロキサン、ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、ジメチル(メトキシ−メチルシロキサン)ポリジメチルシロキサン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルエチレン尿素、ジメチルジクロロシラン、ジメチルスルホモイルクロライド、シルセスキオキサン、ソルビタントリオレイン酸エステル、ソルビタンモノラウリン酸エステル、チタンテトラキス(2−エチルヘキシオキシド)、テトラエトキシシラン、テトラグリシジル−1、3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラフェノキシシラン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)シアヌレート、トリフェニルホスフェート、トリフェノキシクロロシラン、トリフェノキシメチルケイ素、トリフェノキシメチルシラン、二酸化炭素、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス[(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−ア
ミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(2−メチルブトキシ)メチルクロロシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)−N−メチルアミン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−エチルヘキシルオキシ)シラン、ビニルベンジルジエチルアミン、ビニルベンジルジメチルアミン、ビニルベンジルトリブチルスズ、ビニルベンジルピペリジン、ビニルベンジルピロリジン、ピロリジン、フェニルイソシアナート、フェニルイソチオシアナート、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、フタル酸アミド、ヘキサメチレンジイソシアナート、ベンジリデンアニリン、ポリジフェニルメタンジイソシアネート、ポリジメチルシロキサン、メチル−4−ピリジルケトン、メチルカプロラクタム、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ラウリルチオプロピオン酸メチル、四塩化ケイ素等があげられる。
【0043】
低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が大きいという点から、上記変性剤としては、下記一般式(III)又は下記一般式(IV)で表される化合物が好ましく、下記一般式(III)で表される化合物がより好ましい。また、上記一般式(I)のrが5〜12で、上記一般式(II)のR及びRが互いに結合しており、上記変性剤が下記一般式(III)で表される化合物である場合の共重合体を配合した場合、低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が特に大きい。
【化9】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R10及びR11は、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【化10】

(式中、R12、R13及びR14は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R15は、環状エーテル基を表す。p及びqは整数を表す。)
【0044】
上記一般式(III)で表される化合物において、R、R及びRのアルキル基としては、例えば、メチル基等の炭素数1〜4のアルキル基(好ましくは炭素数1〜3)等が挙げられる。R、R及びRのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基も含まれる。R、R及びRのシリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0045】
上記一般式(III)で表される化合物において、R10及びR11のアルキル基としては、例えば、上記アルキル基(R、R及びRのアルキル基)と同様の基を挙げることができる。
【0046】
低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が大きいという理由から、R、R及びRとしては、アルコキシ基が好ましく、R10及びR11としては、アルキル基が好ましい。
【0047】
n(整数)としては、入手容易性という理由から0〜5が好ましい。更には、nは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。nが6以上であるとコストが増大する。
【0048】
上記一般式(III)で表される化合物の具体例としては、上記変性剤として例示した3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0049】
上記一般式(IV)で表される化合物において、R12、R13及びR14は、上記一般式(III)で表される化合物におけるR、R及びRと同様である。R12、R13及びR14としては、低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が大きいという理由から、アルコキシ基が好ましい。
【0050】
上記一般式(IV)で表される化合物において、R15の環状エーテル基としては、例えば、オキシラン基等のエーテル結合を1つ有する環状エーテル基、ジオキソラン基等のエーテル結合を2つ有する環状エーテル基、トリオキサン基等のエーテル結合を3つ有する環状エーテル基等が挙げられる。なかでも、低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が大きいという点から、エーテル結合を1つ有する環状エーテル基が好ましく、オキシラン基がより好ましい。環状エーテル基の炭素数は、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜4である。また、環状エーテル基は環骨格内に不飽和結合を有していないことが好ましい。
【0051】
p(整数)としては、入手容易性、反応性という理由から0〜5が好ましい。更には、pは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。pが6以上であるとコストが増大する。
【0052】
q(整数)としては、入手容易性、反応性という理由から0〜5が好ましい。更には、qは1〜3がより好ましく、1が最も好ましい。qが6以上であるとコストが増大する。
【0053】
上記一般式(IV)で表される化合物の具体例としては、上記変性剤として例示した3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0054】
上記一般式(III)又は(IV)で表される化合物以外の好適な変性剤として、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、四塩化ケイ素などを挙げることもできる。
【0055】
<共重合体の製造方法>
上記共重合体は、例えば、1,3−ブタジエン、一般式(I)で表される化合物、及び一般式(II)で表される化合物と、必要に応じてスチレンとを共重合し、得られた共重合体の少なくとも一方の末端に上記変性剤を反応させることにより製造でき、具体的には、以下の製造方法で製造できる。
【0056】
《重合方法》
上記共重合体の重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物の安定性の観点から、溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
【0057】
溶液重合法を用いた場合には、溶液中のモノマー濃度(スチレン、1,3−ブタジエン、一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物などの合計)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。溶液中のモノマー濃度が5質量%未満では、得られる共重合体の量が少なく、高コストになる傾向がある。また、溶液中のモノマー濃度は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。溶液中のモノマー濃度が50質量%を超えると、溶液粘度が高くなりすぎて撹拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。
【0058】
《アニオン重合における重合開始剤》
アニオン重合を行う場合、重合開始剤としては特に制限はないが、有機リチウム化合物が好ましく用いられる。上記有機リチウム化合物としては、炭素数2〜20のアルキル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、入手容易性、安全性などの観点からn−ブチルリチウム又はsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0059】
《アニオン重合の方法》
上記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、ブチルリチウムなどを重合開始剤とし、必要に応じてランダマイザーの存在下で、1,3−ブタジエン、一般式(I)で表される化合物、及び一般式(II)で表される化合物と、必要に応じてスチレンなどとをアニオン重合させればよい。なお、アニオン重合後に、必要に応じて、公知の老化防止剤や、重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えてもよい。
【0060】
《アニオン重合における炭化水素系溶剤》
上記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。
【0061】
《アニオン重合におけるランダマイザー》
また、上記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御(例えば、ブタジエンにおける1、2−結合の増加など)や、共重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御(例えば、ブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化など)などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。
【0062】
ランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当たり、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル当量未満では、添加効果が小さく、ランダム化しにくい傾向がある。また、ランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当たり1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モル当量を超えると、モノマーの反応速度が大きく変化してしまい、逆にランダム化しにくくなる傾向がある。
【0063】
変性剤による変性方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、アニオン重合で主鎖が変性された共重合体を合成した後、該共重合体と変性剤とを接触させることにより、共重合体末端部のアニオンと変性剤の官能基とが反応し、共重合体末端部が変性される。その結果、主鎖及び末端が変性された共重合体が得られる。変性剤を反応させる量は、通常、共重合体100質量部に対して0.01〜10質量部とすればよい。上記共重合体は、少なくとも一方の末端が変性されていることが好ましく、両末端が変性されていることがより好ましい。
【0064】
本発明においては、上記変性剤による変性反応を行った後に、必要に応じて、公知の老化防止剤や、重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えてもよい。
【0065】
上記共重合体の重量平均分子量Mwは、1.0×10〜2.5×10である。Mwが1.0×10未満の場合は低燃費性が悪くなる傾向があり、一方、Mwが2.5×10を超えると加工性が悪くなる傾向がある。Mwの下限は、好ましくは2.0×10以上、より好ましくは3.0×10以上であり、上限は、好ましくは1.5×10以下、より好ましくは1.0×10以下である。
なお、Mwは、重合時に使用する重合開始剤の量を変更するなどの方法により適宜調節することができ、後述の実施例の方法で測定できる。
【0066】
ゴム成分100質量%中の共重合体の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。5質量%未満であると、低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が得られにくい傾向がある。また、共重合体の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。50質量%を超えると、高コストになる傾向がある。
【0067】
(改質天然ゴム(HPNR))
上記改質天然ゴム(HPNR)は、リン含有量が200ppm以下である。
200ppmを超えると、tanδが上昇して低燃費性が悪化したり、未加硫ゴムのムーニー粘度が上昇して加工性が悪化したり、ウェットグリップ性能が低下したりする傾向がある。該リン含有量は、150ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。ここで、リン含有量は、たとえばICP発光分析等、従来の方法で測定することができる。リンは、リン脂質(リン化合物)に由来するものである。
【0068】
改質天然ゴムにおいて、窒素含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましく、0.10質量%以下が更に好ましい。窒素含有量が0.3質量%を超えると、貯蔵中にムーニー粘度が上昇して加工性が悪化したり、低燃費性、ウェットグリップ性能が悪化したりする傾向がある。窒素含有量は、例えばケルダール法等、従来の方法で測定することができる。窒素は、蛋白質に由来するものである。
【0069】
リン含有量が100ppm以下、窒素含有量が0.15質量%以下(好ましくは0.10質量%以下)の改質天然ゴムと、上記一般式(II)のR及びRが互いに結合しており、上記変性剤が上記一般式(III)で表される化合物である場合の共重合体とを併用した場合、低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が特に大きい。
【0070】
改質天然ゴム中のゲル含有率は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。20質量%を超えると、加工性が悪化したり、低燃費性、ウェットグリップ性能が悪化したりする傾向がある。ゲル含有率とは、非極性溶媒であるトルエンに対する不溶分として測定した値を意味し、以下においては単に「ゲル含有率」または「ゲル分」と称することがある。ゲル分の含有率の測定方法は次のとおりである。まず、天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×10rpmで30分間遠心分離して、不溶のゲル分とトルエン可溶分とを分離する。不溶のゲル分にメタノールを加えて固形化した後、乾燥し、ゲル分の質量と試料の元の質量との比からゲル含有率が求められる。
【0071】
改質天然ゴムは、例えば、特開2010−138359号公報に記載の製法などで得られるが、なかでも、天然ゴムラテックスをケン化処理し、ケン化天然ゴムラテックスを調製する工程(A)、該ケン化天然ゴムラテックスを凝集させて得られた凝集ゴムをアルカリ処理する工程(B)、及びゴム中に含まれるリン含有量が200ppm以下になるまで洗浄する工程(C)を含む製造方法で調製されるものが好ましい。該製法により、リン含有量を減量できる。また、酸で凝集させた際、残存する酸をアルカリ処理で中和することで、酸によるゴムの劣化を防ぐだけでなく、ゴム中の窒素含有量を一層低減できる。
【0072】
上記製造方法において、ケン化処理は、天然ゴムラテックスに、アルカリと、必要に応じて界面活性剤を添加して所定温度で一定時間、静置することにより行うことができる。なお、必要に応じて撹拌等を行っても良い。上記製造方法によれば、天然ゴムのリン含有量、窒素含有量を抑えることができる。
【0073】
天然ゴムラテックスとしては、生ラテックス、精製ラテックス、ハイアンモニアラテックスなどの従来公知のものを使用できる。ケン化処理に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アミン化合物等が挙げられ、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。界面活性剤としては、公知の陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が使用可能であり、なかでも、陰イオン性界面活性剤が好ましく、スルホン酸系の陰イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0074】
ケン化処理において、アルカリの添加量は適宜設定すればよいが、天然ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは5〜10質量部である。また、界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。なお、ケン化処理の温度及び時間も適宜設定すればよく、通常は20〜70℃で1〜72時間程度である。
【0075】
ケン化反応終了後、反応により得られたケン化天然ゴムラテックスを凝集させて得られた凝集ゴムを、必要に応じて破砕し、次いで、得られた凝集ゴムや破砕ゴムとアルカリを接触させてアルカリ処理を行う。アルカリ処理により、ゴム中の窒素量などをより低減でき、本発明の効果が一層発揮される。凝集方法としては、例えば、ギ酸等の酸を添加する方法が挙げられる。アルカリ処理方法としては、ゴムとアルカリを接触させる方法であれば特に限定されず、例えば、凝集ゴムや破砕ゴムをアルカリに浸漬する方法などが挙げられる。アルカリ処理に使用できるアルカリとしては、例えば、上記ケン化処理におけるアルカリの他に、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水などが挙げられる。なかでも、本発明の効果に優れるという点から、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0076】
上記浸漬にてアルカリ処理する場合、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%の濃度のアルカリ水溶液にゴム(破砕ゴム)を浸漬することにより、処理できる。これにより、ゴム中の窒素量などを一層低減できる。
【0077】
上記浸漬によりアルカリ処理する場合、アルカリ処理の温度は、適宜設定できるが、通常は20〜70℃が好ましい。また、アルカリ処理の時間は、処理温度にもよるが、十分な処理と生産性を併せ考慮すると1〜20時間が好ましく、2〜12時間がより好ましい。
【0078】
アルカリ処理後、洗浄処理を行うことにより、リン含有量を低減できる。洗浄処理としては、例えば、ゴム分を水で希釈して洗浄後、遠心分離処理する方法、静置してゴムを浮かせ、水相のみを排出して、ゴム分を取り出す方法が挙げられる。遠心分離する際は、まず天然ゴムラテックスのゴム分が5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるように水で希釈する。次いで、5000〜10000rpmで1〜60分間遠心分離すればよく、所望のリン含有量になるまで洗浄を繰り返せばよい。また、静置してゴムを浮かせる場合も水の添加、攪拌を繰り返して、所望のリン含有量になるまで洗浄すればよい。洗浄処理終了後、乾燥することにより、上記改質天然ゴムが得られる。
【0079】
ゴム成分100質量%中の改質天然ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が得られにくい傾向がある。また、改質天然ゴムの含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。40質量%を超えると、ウェットグリップ性能が低下する傾向がある。
【0080】
上記共重合体、上記改質天然ゴム以外に使用できるゴム成分としては、ジエン系ゴムが挙げられる。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ジエン系合成ゴムを使用でき、ジエン系合成ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。なかでも、低燃費性及びウェットグリップ性能をバランス良く示すことから、BR、SBRが好ましく、上記共重合体、上記改質天然ゴムと共にBR、SBRを併用することがより好ましい。これらのゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0081】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。上記範囲内であれば、低燃費性及びウェットグリップ性能がバランス良く得られる。
【0082】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、特に好ましくは55質量%以下である。上記範囲内であれば、低燃費性及びウェットグリップ性能がバランス良く得られる。
【0083】
(シリカ)
本発明のゴム組成物は、補強剤としてシリカを配合することが好ましい。上記共重合体によってシリカの分散が促進され、低燃費性及びウェットグリップ性能の向上効果を高めることができる。使用できるシリカとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、シリカは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは80m/g以上であり、また、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。チッ素吸着比表面積が50m/g未満のシリカでは補強効果が小さく耐摩耗性が低下する傾向があり、300m/gを超えるシリカでは分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し、低燃費性が低下する傾向がある。
なお、シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準拠した方法により測定することができる。
【0085】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。シリカの含有量が5質量部未満であると耐摩耗性が充分でない傾向があり、一方、シリカの含有量が150質量部を超えると、シリカが分散しにくくなり、加工性、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0086】
(シランカップリング剤)
本発明では、シリカとともに、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されず、従来からタイヤ分野において汎用されているものを使用でき、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィド系を好適に使用できる。補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。シランカップリング剤の含有量が1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高く、加工性が悪くなる傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対し、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。シランカップリング剤の含有量が20質量部を超えると、その含有量ほどのシランカップリング剤の配合効果が得られず、高コストになる傾向がある。
【0088】
(老化防止剤)
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含むことができる。老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックスなどを適宜選択して使用することが可能である。
【0089】
(軟化剤)
本発明のゴム組成物は、軟化剤を含むことができる。軟化剤としては、石油系軟化剤、脂肪油系軟化剤、脂肪酸などが挙げられる。軟化剤の含有量は、ウェットグリップ性能を低下させる危険性が少ないという理由から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以下である。
【0090】
(加硫剤)
本発明のゴム組成物は、加硫剤を含むことができる。加硫剤としては、有機過酸化物、硫黄系加硫剤などを使用できる。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという点から、硫黄系加硫剤が好ましく、硫黄がより好ましい。
【0091】
(加硫促進剤)
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含むことができる。加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
(加硫助剤)
本発明のゴム組成物は、加硫助剤を含むことができる。加硫助剤としては、ステアリン酸、酸化亜鉛(亜鉛華)などを使用することができる。
【0093】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物には、その他の補強剤、各種オイル、可塑剤、カップリング剤などのタイヤ用又は一般のゴム組成物用に配合される各種配合剤及び添加剤を配合することができる。また、これらの配合剤、添加剤の含有量も一般的な量とすることができる。
【0094】
本発明のゴム組成物は、従来公知の製造方法により製造することができ、その製造方法が限定されるものではない。例えば、上記各成分をバンバリーミキサーや混練ロールなどの混練機を用いて、通常の方法及び条件で混練することによって製造することができる。
【0095】
このようにして得られた本発明のゴム組成物を用いることで、低燃費性及びウェットグリップ性能がバランス良く改善された空気入りタイヤが得られる。上記ゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッド、サイドウォールなどに好適に使用できる。
【0096】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより空気入りタイヤを得る。
【実施例】
【0097】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0098】
以下、合成、重合、HPNR調製時に用いた各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
天然ゴムラテックス:Muhibbah Lateks社から入手したフィールドラテックス
エマール−E27C:花王(株)製のエマール−E27C(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
NaOH:和光純薬工業(株)製
ギ酸:和光純薬工業(株)製
炭酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
DMF:関東化学(株)製N,N−ジメチルホルムアミド
水素化ナトリウム:関東化学(株)製
トリエチレングリコールモノブチルエーテル:関東化学(株)製
4−クロロメチルスチレン:和光純薬工業(株)製
オクタエチレングリコールモノブチルエーテル:アルドリッチ社製
トルエン:関東化学(株)製
4−ビニルベンズアルデヒド:シグマアルドリッチ社製
1−ブタノール:関東化学(株)製
p−トルエンスルホン酸:関東化学(株)製
t−ブチルカテコール:関東化学(株)製
エチレングリコール:関東化学(株)製
n−ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:東京化成工業(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
変性剤(1):アヅマックス(株)製の3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン
変性剤(2):アヅマックス(株)製の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0099】
<HPNR(1)の調製>
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000g(wet状態)に対し、10%エマール−E27C水溶液25gと40%NaOH水溶液50gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してゴム濃度15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり攪拌しながらギ酸を添加しpHを4.0に調整し、凝集させた。
凝集したゴムを粉砕し、それを1%炭酸ナトリウム水溶液に室温で5時間浸漬した後に引き上げ、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後90℃で4時間乾燥して固形ゴム(HPNR(1))を得た。
【0100】
<HPNR(2)の調製>
NaOH水溶液の添加量を25gに変更した以外はHPNR(1)と同様に、固形ゴム(HPNR(2))を得た。
【0101】
<HPNR(3)の調製>
ケン化天然ゴムラテックスに水を添加してゴム濃度15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり攪拌しながらギ酸を添加しpHを4.0に調整し、凝集させるまでは、HPNR(1)と同様に行った。
次に、凝集したゴムを粉砕し、それを1%炭酸ナトリウム水溶液に浸漬せずに水1000mlで洗浄を繰り返し、その後90℃で4時間乾燥して固形ゴム(HPNR(3))を得た。
【0102】
HPNR(1)〜(3)及びTSRについて以下に示す方法により、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業社製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、各固形ゴム又はTSR約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量とした。
【0104】
(リン含有量の測定)
ICP発光分析装置(ICPS−8100、島津製作所(株)製)を使用してリン含有量を求めた。
【0105】
(ゲル含有率の測定)
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
【0106】
【表1】

【0107】
表1に示すように、HPNR(1)〜(3)は、TSRに比べて、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率が低減していた。また、HPNR(1)、(3)を比較すると、炭酸ナトリウム水溶液に浸漬することにより、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率を低減できることが分かった。
【0108】
<一般式(I)で表される化合物の合成>
(化合物A)
充分に窒素置換した三つ口フラスコにDMF100mL、水素化ナトリウム1.8gを加え、0℃でトリエチレングリコールモノブチルエーテル13gを滴下した。室温で1時間撹拌後、再び0℃に冷却し、4−クロロメチルスチレン7.5gを滴下し、そのまま1時間撹拌した。得られた溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、抽出、濃縮、カラム精製の処理により精製し、下記構造式で表される化合物Aを得た。(R=メチレン基、R=エチレン基、R=n−ブチル基、r=3)
【化11】

【0109】
(化合物B)
トリエチレングリコールモノブチルエーテルの代わりにオクタエチレングリコールモノブチルエーテル22gを添加する以外は化合物Aと同様の処方により、下記構造式で表される化合物Bを得た。(R=メチレン基、R=エチレン基、R=n−ブチル基、r=8)
【化12】

【0110】
<一般式(II)で表される化合物の合成>
(化合物C)
充分に窒素置換した三つ口フラスコにトルエン100mL、4−ビニルベンズアルデヒド5.3g、1−ブタノール8.9g、p−トルエンスルホン酸5mg、t−ブチルカテコール1mgを添加し、110℃で2時間還流させた。その後、得られた溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、さらに減圧蒸留で精製し、下記構造式で表される化合物C(4−ビニルベンズアルデヒドジブチルアセタール)を得た。(R、R=n−ブチル基、R=水素原子)
【化13】

【0111】
(化合物D)
1−ブタノールの代わりにエチレングリコール4.1gを添加する以外は化合物Cと同様の処方により、下記構造式で表される化合物D(4−ビニルベンズアルデヒドエチレンアセタール)を得た。(R、R=連結したエチレン基、R=水素原子)
【化14】

【0112】
<共重合体の分析>
下記により得られた共重合体の分析は以下の方法で行った。
【0113】
(重量平均分子量Mwの測定)
共重合体の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0114】
(共重合体の構造同定)
共重合体の構造同定は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて行った。測定結果から、共重合体中の一般式(I)で表される化合物(化合物A、化合物B)、一般式(II)で表される化合物(化合物C、化合物D)、スチレン、及び1,3−ブタジエンの含有量を算出した。
【0115】
<共重合体の合成>
(共重合体(1))
十分に窒素置換した耐熱容器にn−ヘキサン1500mL、スチレン100mmol、1,3−ブタジエン800mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、0℃で48時間攪拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により共重合体(1)を得た。分析の結果、重量平均分子量Mwは470,000、スチレン含有量は19質量%であった。
【0116】
(共重合体(2))
十分に窒素置換した耐熱容器にn−ヘキサン1500mL、スチレン100mmol、1,3−ブタジエン800mmol、化合物A2.5mmol、化合物C2.5mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、0℃で48時間攪拌した。その後、変性剤(1)を0.15mmol加えて0℃で1時間撹拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により共重合体(2)を得た。分析の結果、重量平均分子量Mwは500,000、化合物A含有量は0.7質量%、化合物C含有量は0.7質量%、スチレン含有量は19質量%であった。
【0117】
(共重合体(3))
変性剤(1)の代わりに変性剤(2)を加える以外は共重合体(2)と同様の処方により共重合体(3)を得た。
分析の結果、重量平均分子量Mwは490,000、化合物A含有量は0.7質量%、化合物C含有量は0.8質量%、スチレン含有量は20質量%であった。
【0118】
(共重合体(4))
化合物Cの代わりに、化合物Dを2.5mmol加える以外は共重合体(2)と同様の処方により共重合体(4)を得た。分析の結果、重量平均分子量Mwは460,000、化合物A含有量は0.7質量%、化合物D含有量は0.5質量%、スチレン含有量は20質量%であった。
【0119】
(共重合体(5))
化合物Aの代わりに、化合物Bを2.5mmol加える以外は共重合体(4)と同様の処方により共重合体(5)を得た。
分析の結果、重量平均分子量Mwは500,000、化合物B含有量は0.7質量%、化合物D含有量は0.6質量%、スチレン含有量は19質量%であった。
【0120】
(共重合体(6))
スチレンを加えない以外は共重合体(2)と同様の処方により共重合体(6)を得た。分析の結果、重量平均分子量Mwは560,000、化合物A含有量0.9質量%、化合物C含有量は0.8質量%であった。
【0121】
(共重合体(7))
テトラメチルエチレンジアミン8mmol、n−ブチルリチウム5mmolを加える以外は共重合体(2)と同様の処方により共重合体(7)を得た。分析の結果、重量平均分子量Mwは20,000、化合物A含有量は0.8質量%、化合物C含有量は1.1質量%、スチレン含有量は20質量%であった。
【0122】
共重合体(1)〜(7)のモノマー成分、変性剤、重量平均分子量Mwについて表2にまとめた。
【0123】
【表2】

【0124】
<実施例及び比較例>
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:TSR
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B
SBR:JSR(株)製のSL574
HPNR(1)〜(3):上記方法で調製
共重合体(1)〜(7):上記方法で合成
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0125】
表3に示す配合処方にしたがって薬品を混練り配合し、未加硫ゴム組成物を得た。そして、得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、上記未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫し、試験用タイヤ(サイズ195/65R15)を製造した。
得られた加硫ゴム組成物及び試験用タイヤについて以下に示す試験方法により低燃費性及びウェットグリップ性能を評価した。
【0126】
<評価項目及び試験方法>
(低燃費性)
得られた加硫ゴム組成物について、(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃でtanδを測定した。そして、下記計算式により測定結果を指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
(低燃費性指数)=(比較例5のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0127】
(ウェットグリップ性能(1))
(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてウェットグリップ性能を評価した。上記加硫ゴム組成物からなる幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片をサンプルとして用い、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0〜70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。そして、下記計算式により測定結果を指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能(1)指数)=(各配合の摩擦係数の最大値)/(比較例5の摩擦係数の最大値)×100
【0128】
(ウェットグリップ性能(2))
水を撒いて湿潤路面としたテストコースにて、上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、速度70km/hで制動し、タイヤに制動をかけてから停車するまでの走行距離(制動距離)を測定した。そして、下記計算式により測定結果を指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能(2)指数)=(比較例5の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0129】
【表3】

【0130】
表3に示すように、1,3−ブタジエン及び特定の化合物を共重合して得られ、末端が特定の変性剤で変性され、重量平均分子量Mwが特定の範囲内である共重合体と、リン含有量が特定量以下である改質天然ゴムとを含む実施例は、比較例に比べて、低燃費性及びウェットグリップ性能がバランス良く改善された。比較例2,4では、重量平均分子量Mwが特定の範囲外である共重合体を配合したため、実施例に比べて、低燃費性が大きく劣っていた。
【0131】
比較例1,5,6、実施例1の比較、及び比較例3,5,6、実施例6の比較より、上記共重合体と、上記改質天然ゴムとを併用することにより、低燃費性、ウェットグリップ性能を相乗的に改善できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−ブタジエン、下記一般式(I)で表される化合物、及び下記一般式(II)で表される化合物を共重合して得られ、末端が窒素、酸素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する変性剤で変性され、重量平均分子量Mwが1.0×10〜2.5×10である共重合体と、
リン含有量が200ppm以下である改質天然ゴムとを含むタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式中、R〜Rは、炭化水素基を表す。rは整数を表す。)
【化2】

(式中、R及びRは、炭化水素基を表す。R及びRは互いに結合していてもよい。Rは水素原子又は炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記共重合体が、少なくとも前記1,3−ブタジエン、前記一般式(I)で表される化合物、及び前記一般式(II)で表される化合物とともに、スチレンを共重合して得られる請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)中、R、R及びRで表される炭化水素基の炭素数が1〜10、rが1〜30の整数、前記一般式(II)中、R、R及びRで表される炭化水素基の炭素数が1〜10である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記共重合体における前記一般式(I)で表される化合物の含有量が0.05〜35質量%、前記一般式(II)で表される化合物の含有量が0.05〜35質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記変性剤が下記一般式(III)又は下記一般式(IV)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化3】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R10及びR11は、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【化4】

(式中、R12、R13及びR14は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R15は、環状エーテル基を表す。p及びqは整数を表す。)
【請求項6】
前記改質天然ゴムの窒素含有量が0.3質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
ゴム成分100質量%中、前記共重合体の含有量が5質量%以上、前記改質天然ゴムの含有量が10質量%以上である請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−224768(P2012−224768A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94351(P2011−94351)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】