説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】良好な加工性を維持しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を向上できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系重合体とシリカと式(I)で表される化合物とを含み、前記ジエン系重合体が、(A)と(B)を反応させて得られる変性されたジエン系重合体であるタイヤ用ゴム組成物。(A):(C)の存在下に、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体(B):官能基を有する変性剤(C):式(1)で表される化合物と有機アルカリ金属化合物を反応させて得られる化学種



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤの転がり抵抗を低減することにより(転がり抵抗性能の向上)、車の低燃費化が行われてきたが、近年、車の低燃費化への要求はますます強くなってきており、タイヤ部材の中でもタイヤにおける占有比率の高いトレッド部を製造するためのゴム組成物に対して、優れた低発熱性(低燃費性)が要求されている。
【0003】
ゴム組成物において低発熱性を満足させる方法として、補強用充填剤の含有量を減量する方法が知られている。しかし、この場合、ゴム組成物の硬度が低下するためタイヤが軟化し、車のハンドリング性能(操縦安定性)やウェットグリップ性能が低下したり耐摩耗性が低下したりするという問題があった。
【0004】
特許文献1には、アルコキシ基を含有する所定の有機ケイ素化合物で変性した変性スチレンブタジエンゴムを使用することにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を改善できることが開示されている。しかし、これらの性能をすべて満足させるには未だ改善の余地がある。また、加工性についても改善の余地がある。更に、スチレンブタジエンゴムの片末端(1の末端)のみが変性されており、両末端や2以上の末端を変性することについては検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−114938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、良好な加工性を維持しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を向上できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ジエン系重合体とシリカと下記式(I)で表される化合物とを含み、上記ジエン系重合体が、下記(A)と(B)を反応させて得られる変性されたジエン系重合体であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
(A):下記(C)の存在下に、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体
(B):官能基を有する変性剤
(C):下記式(1)で表される化合物と有機アルカリ金属化合物を反応させて得られる化学種
【化1】

(式(1)中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアリール基、分岐若しくは非分岐のアルコキシ基、分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基、分岐若しくは非分岐のアセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を示す。Aは、分岐若しくは非分岐のアルキレン基、分岐若しくは非分岐のアリーレン基又はこれらの誘導体を示す。)
【化2】

(式(I)中、R11は、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。R12及びR13は、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(II)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよい。R11とR12、R11とR13、又はR12とR13とで環構造を形成してもよい。qは、0〜8の整数を表す。)
【化3】

(式(II)中、R14は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。R15は、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【0008】
上記式(1)で表される化合物が下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】

【0009】
上記変性剤が下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【化5】

(式(3)中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。nは1〜6の整数を表す。)
【0010】
上記活性共役ジエン系重合体の両末端に導入した変性剤が同一であることが好ましい。
【0011】
ゴム成分100質量%中の上記ジエン系重合体の含有量が5質量%以上であることが好ましい。
【0012】
上記共役ジエンモノマーが1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンであり、上記芳香族ビニルモノマーがスチレンであることが好ましい。
【0013】
上記変性されたジエン系重合体が1,3−ブタジエン及びスチレンを重合させることにより得られる変性スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【0014】
上記シリカのチッ素吸着比表面積が40〜250m/gであることが好ましい。
【0015】
上記タイヤ用ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、変性された特定のジエン系重合体と、シリカと、上記式(I)で表される化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、良好な加工性を維持しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を向上できる。従って、該ゴム組成物をトレッドなどタイヤの各部材に使用することで前述の性能に優れた空気入りタイヤを生産性良く提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系重合体とシリカと下記式(I)で表される化合物とを含み、上記ジエン系重合体が、下記(A)と(B)を反応させて得られる変性されたジエン系重合体(以下、変性ジエン系重合体ともいう)である。
(A):下記(C)の存在下に、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体
(B):官能基を有する変性剤
(C):下記式(1)で表される化合物と有機アルカリ金属化合物を反応させて得られる化学種
【化6】

(式(1)中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアリール基、分岐若しくは非分岐のアルコキシ基、分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基、分岐若しくは非分岐のアセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を示す。Aは、分岐若しくは非分岐のアルキレン基、分岐若しくは非分岐のアリーレン基又はこれらの誘導体を示す。)
【化7】

(式(I)中、R11は、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。R12及びR13は、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(II)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよい。R11とR12、R11とR13、又はR12とR13とで環構造を形成してもよい。qは、0〜8の整数を表す。)
【化8】

(式(II)中、R14は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。R15は、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【0019】
上記式(1)で表される化合物と有機アルカリ金属化合物を反応させて得られる化学種(C)を重合開始剤として、重合反応を行うため、重合反応により得られるポリマー鎖(上記(A)(活性共役ジエン系重合体))は、その両末端がリビングポリマー末端となる。そのため、活性共役ジエン系重合体(A)の両末端を変性剤(B)により変性することができ、上記(A)の両末端を上記(B)により変性された上記変性ジエン系重合体は、片末端のみが変性されている場合に比べて、優れた低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られ、これらの性能をバランス良く改善できる。
【0020】
これに対し、両末端に官能基(変性基)を導入する方法として、官能基を有する重合開始剤を用いて重合し、さらに、重合末端に変性剤を反応させる方法が考えられる。この場合には、片方の末端には、重合開始剤が有する官能基が、もう一方の末端には、変性剤による官能基が存在することとなる。しかし、重合開始剤が有する官能基は、一般的にシリカとの相互作用が弱いため、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランス性能が劣る。また、重合開始剤が有する官能基は、脱離しやすいため、エネルギー損失増大の一因となり、低燃費性に劣る。さらに、重合開始剤が有する官能基の極性が高い場合には、リビングポリマー末端に配位して重合末端と変性剤との反応に影響を及ぼし、任意の官能基を重合末端に導入することができない。
【0021】
一方、上記(A)は、重合開始剤として上記(C)を使用して得られるため、重合反応により2方向にポリマー鎖が伸び、2個のリビングポリマー末端が存在するため、任意の変性剤により官能基を導入することができる。そのため、上記(A)と(B)を反応させて得られる上記変性ジエン系重合体を配合することにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランス性能に優れたゴム組成物が得られる。
【0022】
上記変性ジエン系重合体とシリカを併用すると、加工性が著しく悪化するが、上記変性ジエン系重合体とシリカと共に上記式(I)で表される化合物を併用することにより、上記変性ジエン系重合体を配合することにより得られる良好な低燃費性、耐摩耗性を維持しつつ、加工性、ウェットグリップ性能を向上でき、良好な加工性を維持しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性(特に、低燃費性、ウェットグリップ性能)を相乗的に向上できる。
【0023】
本発明において、ジエン系重合体は、(A)と(B)を反応させて得られる変性されたジエン系重合体である。
【0024】
(A)は、(C)の存在下に、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体である。なお、活性共役ジエン系重合体は、2個のアルカリ金属末端を有する。
【0025】
(C)は、下記式(1)で表される化合物と有機アルカリ金属化合物とを反応させて得られる化学種である。
【0026】
【化9】

(式(1)中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアリール基、分岐若しくは非分岐のアルコキシ基、分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基、分岐若しくは非分岐のアセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を示す。Aは、分岐若しくは非分岐のアルキレン基、分岐若しくは非分岐のアリーレン基又はこれらの誘導体を示す。)
【0027】
及びRの上記分岐若しくは非分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4、更に好ましくは炭素数1〜2)のアルキル基等が挙げられる。なお、アルキル基には、アルキル基が有する水素原子がアリール基(フェニル基等)により置換された基も含む。
【0028】
及びRの上記分岐若しくは非分岐のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などの炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜8)のアリール基が挙げられる。なお、アリール基には、アリール基が有する水素原子がアルキル基(メチル基等)により置換された基も含む。
【0029】
及びRの上記分岐若しくは非分岐のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等の炭素数5〜8のシクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭素数6〜8のアリールオキシ基等)も含まれる。
【0030】
及びRの上記分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0031】
及びRの上記分岐若しくは非分岐のアセタール基としては、例えば、−C(RR’)−OR″、−O−C(RR’)−OR″で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基等が挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基等を挙げることができる。
【0032】
及びRとしては、水素原子、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアリール基が好ましい。これにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランスを改善できる。また、2方向へ均等にポリマーを成長させることができるという理由から、R、Rが同一の基であることが好ましい。
【0033】
Aの上記分岐若しくは非分岐のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4)のアルキレン基が挙げられる。
【0034】
Aの上記アルキレン基の誘導体としては、例えば、アリール基やアリーレン基が置換したアルキレン基等が挙げられる。
【0035】
Aの上記分岐若しくは非分岐のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
【0036】
Aの上記アリーレン基の誘導体としては、例えば、アルキレン基が置換したアリーレン基等が挙げられる。
【0037】
Aとしては、分岐若しくは非分岐のアリーレン基が好ましく、フェニレン基(下記式(2)で表される化合物)がより好ましい。これにより、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランスを改善できる。
【0038】
【化10】

【0039】
上記式(2)のR及びRは、上記式(1)のR及びRと同様である。
【0040】
上記式(1)又は(2)で表される化合物の具体例としては、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,2−ジイソブテニルベンゼン、1,3−ジイソブテニルベンゼン、1,4−ジイソブテニルベンゼン、1,3−フェニレンビス(1−ビニルベンゼン)、1,4−フェニレンビス(1−ビニルベンゼン)、1,1’−メチレンビス(2−ビニルベンゼン)、1,1’−メチレンビス(3−ビニルベンゼン)、1,1’−メチレンビス(4−ビニルベンゼン)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,3−ジビニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−フェニレンビス(1−ビニルベンゼン)が好ましい。
【0041】
本発明に用いられる有機アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属を含有する炭化水素化合物が挙げられる。なかでも、2〜20個の炭素原子を有するリチウム又はナトリウム化合物が好ましい。その具体例としては、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4−シクロペンチルリチウム、1,4−ジリチオ−ブテン−2等が挙げられる。なかでも、迅速に反応が進行して分子量分布が狭いポリマーを与える点で、n−ブチルリチウム又はsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0042】
(C)の調製方法は、上記式(1)で表される化合物と上記有機アルカリ金属化合物とを接触させる方法であれば特に制限はない。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば炭化水素溶剤に、上記式(1)で表される化合物、上記有機アルカリ金属化合物をそれぞれ別々に溶解し、当該式(1)で表される化合物溶液に当該有機アルカリ金属化合物溶液を撹拌下で滴下することにより(C)を調製できる。なお、(C)を調製する際の反応温度は、40〜60℃が好ましい。
【0043】
炭化水素溶剤としては、上記有機アルカリ金属化合物(アルカリ金属触媒)を失活させないものであり、適当な炭化水素溶剤としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素から選ばれ、特に炭素数が2〜12であるプロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、iso−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどをあげることができる。また、これらの溶剤は2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
本発明に用いられる共役ジエンモノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン(ピペリン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。なかでも、得られる重合体の物性、工業的に実施する上での入手容易性の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0045】
本発明に用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。なかでも、得られる重合体の物性、工業的に実施する上での入手容易性の観点から、スチレンが好ましい。
【0046】
モノマーとしては、共役ジエンモノマーのみを用いてもよく、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを併用してもよい。共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを併用する場合の両者の比率は、共役ジエンモノマー/芳香族ビニルモノマーの質量比で50/50〜90/10が好ましく、より好ましくは55/45〜85/15である。該比が50/50未満であると、重合体ゴムが炭化水素溶剤に不溶となり、均一な重合が不可能となる場合があり、一方該比が90/10を越えると重合体ゴムの強度が低下する場合がある。
【0047】
変性ジエン系重合体としては、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーを共重合させることにより得られるものが好ましく、1,3−ブタジエン及びスチレンを共重合させることにより得られるもの(変性スチレンブタジエンゴム)が特に好ましい。このような変性共重合体を使用すると、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を改善できる。また、シリカ、上記式(I)で表される化合物との併用により、良好な加工性を維持しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を好適に向上できる。
【0048】
(A)の調製方法としては、重合開始剤として(C)を用いる以外は特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば炭化水素溶剤中において、重合開始剤として(C)を用いて、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを必要に応じてランダマイザーの存在下で重合させることにより、目的の2個のアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体が得られる。
【0049】
炭化水素溶剤としては、上記(C)の調製の場合と同様のものを好適に使用できる。
【0050】
ランダマイザーとは、重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御、例えばブタジエンにおける1,2−結合、イソプレンにおける3,4−結合の増加など、あるいは重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。
【0051】
ランダマイザーとして、各種の化合物を使用できる。なかでも、エーテル化合物又は第三級アミンが、工業的実施上の入手容易性の点で好ましい。エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどの脂肪族ジエーテル;ジフェニルエーテル、アニソールなどの芳香族エーテルがあげられる。また、第三級アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどのほかに、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、キノリンなどをあげることができる。
【0052】
(B)は、官能基を有する変性剤である。(B)としては、窒素、酸素、およびケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物が好ましい。
官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基(特に、エポキシ基)、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基、ジグリシジルアミノ基等があげられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、シリカとの反応性が高いという理由から、アミノ基、アルコキシシリル基、エーテル基(特に、エポキシ基)、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ジグリシジルアミノ基が好ましい。
【0053】
(B)としては、下記式(3)で表される化合物が好ましい。また、使用する(B)は、1種類である((A)の両末端に導入する変性剤が同一である)ことが好ましい。使用する(B)を1種類とすることにより、(A)の両末端に同一の官能基を導入することができ、均一なポリマー末端となることで、シリカとの反応性が安定する。
【0054】
下記式(3)で表される化合物は、2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物である。活性共役ジエン系重合体(A)の活性末端と、エポキシ基が反応することにより、重合体鎖に水酸基を導入できる。さらに、上記多官能化合物は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するため、1の多官能化合物が複数の活性共役ジエン系重合体(A)の活性末端と反応することにより、2個以上の重合体鎖をカップリングすることができる。そのため、該多官能化合物により変性された部位(末端など)を3個以上有する変性ジエン系重合体も得られる。変性ジエン系重合体の変性された部位(末端など)の数が増加することにより、より低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性のバランスを改善できる。
【0055】
【化11】

(式(3)中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。nは1〜6の整数を表す。)
【0056】
及びRは、炭素数1〜10のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜3)が好ましい。R及びRは、水素原子が好ましい。Rは、炭素数3〜20の炭化水素基(好ましくは炭素数6〜10、より好ましくは炭素数8)が挙げられ、下記式などで表されるシクロアルキル基、シクロアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基がより好ましい。
【0057】
【化12】

【0058】
また、nは2〜3であることが好ましい。上記式(3)で表される化合物としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が好適に用いられる。
【0059】
本発明において、ジエン系重合体(変性ジエン系重合体)は、反応に不活性な有機溶剤、例えば炭化水素溶剤中において、(A)と(B)を反応させて得られる。
【0060】
炭化水素溶剤としては、上記(C)の調製の場合と同様のものを好適に使用できる。
【0061】
官能基を有する変性剤(B)の量は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜10モルであり、より好ましくは0.5〜2モルである。0.1モル未満であると、低燃費性の改良効果が少なく、逆に10モルを超えると、(B)が重合溶媒中に残存するため、その溶媒をリサイクル使用する場合には溶媒からの分離工程を必要とする等、経済的に好ましくない。
【0062】
(A)と(B)との反応は、迅速に起きるため、反応温度及び反応時間は広範囲に選択できる。一般的には、室温(25℃)〜80℃、数秒〜数時間である。反応は、(A)と(B)とを接触させればよく、例えば、(C)を用いて、ジエン系重合体を重合し、該重合体溶液中に(B)を所定量添加する方法が、好ましい態様として例示できるが、この方法に限定されるものではない。
【0063】
混練加工性の観点から、(A)と(B)の反応前又は反応後に、一般式RMXで示されるカップリング剤を添加してもよい(式中Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又は芳香族炭化水素基、Mはケイ素又はスズ原子、Xはハロゲン原子、aは0〜2の整数、bは2〜4の整数を表す)。カップリング剤の量は、使用する有機アルカリ金属化合物(アルカリ金属触媒)1モル当たり、好ましくは0.03〜0.4モルであり、より好ましくは0.05〜0.3モルである。該使用量が0.03モル未満の場合は加工性の改良効果が少なく、逆に0.4モルを超える場合は、官能基を有する変性剤と反応するアルカリ金属末端が少なくなり、低燃費性改良効果が小さくなる。
【0064】
反応終了後、変性されたジエン系重合体は、凝固剤の添加あるいはスチーム凝固など通常の溶液重合によるゴムの製造において使用される凝固方法により凝固でき、反応溶媒中から分離できる。なお、凝固温度も何ら制限されない。
【0065】
反応溶媒から分離した凝固物を乾燥することにより、ジエン系重合体(変性ジエン系重合体)が得られる。凝固物の乾燥は、通常の合成ゴムの製造で用いられるバンドドライヤー、押し出し型のドライヤー等が使用でき、乾燥温度も何ら制限されない。
【0066】
上記ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4)(100℃)は、好ましくは10〜200、より好ましくは20〜150である。上限は、更に好ましくは100以下、特に好ましくは75以下である。ムーニー粘度が10未満であると、加硫物の引張り強度等の機械物性が低下する場合があり、一方該粘度が200を越えると、他のゴムと組み合わせて使用する場合に混和性が悪く、加工操作性が悪化し、得られたゴム組成物の加硫物の機械物性が低下する場合がある。なお、ムーニー粘度は、実施例に記載の方法により測定出来る。
【0067】
上記ジエン系重合体の共役ジエン部のビニル含量は、特に限定されないが、好ましくは10〜70モル%、より好ましくは15〜60モル%である。下限は、更に好ましくは35モル%以上、特に好ましくは40モル%以上、最も好ましくは50モル%以上である。10モル%未満であると、重合体のガラス転移温度が低温となり、タイヤ用のポリマーとして用いた場合、グリップ性能(ウェットグリップ性能)が劣る場合があり、一方、70モル%を越えると、重合体のガラス転移温度が上昇し、反撥弾性に劣る場合がある。
なお、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0068】
ゴム成分100質量%中の上記ジエン系重合体の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。5質量%未満であると、充分な低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を得ることができないおそれがある。該ジエン系重合体の含有量は、100質量%であってもよいが、好ましくは90質量%以下である。
【0069】
本発明のゴム組成物は、上記ジエン系重合体と共に、他のゴム成分を併用してもよい。他のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴムの強度向上と、耐摩耗性、耐亀裂成長性が高いという理由から、NR、BRが好ましい。
【0070】
NRとしては、特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0071】
本発明のゴム組成物にNRが配合される場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、充分なゴム強度が得られず、耐摩耗性が低下するおそれがある。また、加工性、低燃費性も低下するおそれがある。該NRの含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。40質量%を超えると、グリップ性能(ウェットグリップ性能)が低下するおそれがある。
【0072】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、BR1250H、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。なかでも、ガラス転移温度(Tg)が低く、良好な耐摩耗性が得られるという理由から、シス含量が95質量%以上のBRが好ましい。
【0073】
本発明のゴム組成物にBRが配合される場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、耐亀裂成長性、耐摩耗性、加工性、低燃費性が低下するおそれがある。該BRの含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。40質量%を超えると、グリップ性能(ウェットグリップ性能)が低下するおそれがある。
【0074】
本発明では、下記式(I)で表される化合物が使用される。上記ジエン系重合体、シリカとともに、下記式(I)で表される化合物を配合することにより、良好な加工性を維持しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を好適に向上できる。
【化13】

(式(I)中、R11は、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基(−OH)を表す。R12及びR13は、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(II)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基(−OH)又はカルボキシル基(−COOH)で置換されていてもよい。R11とR12、R11とR13、又はR12とR13とで環構造を形成してもよい。qは、0〜8の整数を表す。)
【化14】

(式(II)中、R14は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。R15は、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基(−OH)を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【0075】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20、更に好ましくは炭素数15〜20)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0076】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20、更に好ましくは炭素数15〜20)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
【0077】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0078】
11としては、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、水酸基(−OH)が好ましく、上記アルキル基がより好ましい。
【0079】
12及びR13の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜25、より好ましくは炭素数1〜20、更に好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0080】
12及びR13の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜25、より好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜5)のアルケニル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0081】
12及びR13の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜25、より好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜5)のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等が挙げられる。
【0082】
12及びR13の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリール基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0083】
12及びR13としては、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、上記式(II)で表される基が好ましく、上記アルキル基、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された上記アルキル基がより好ましく、上記アルキル基と、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された上記アルキル基との組合せが更に好ましい。
【0084】
qは、0〜8の整数を表すが、より好適に加工性、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をバランス良く向上できるという理由から、qは0〜3であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0085】
14の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。
【0086】
15の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20)のアルキル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0087】
15の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20)のアルケニル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0088】
15の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリール基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0089】
15としては、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
【0090】
pは、0〜10の整数を表すが、より好適に加工性、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をバランス良く向上できるという理由から、pは0〜3であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0091】
上記式(I)で表される化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、オクタデカンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカンアミド、ε−カプロラクタム、サルコシン、N−ラウロイルサルコシン、N−オクタデシルサルコシン、N,N’−エチレンビスオクタデカンアミド、N−(1−オキソオクタデシル)サルコシンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
上記式(I)で表される化合物の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。0.1質量部未満であると、上記式(I)で表される化合物を配合したことにより得られる効果を充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8質量部以下である。20質量部を超えると、加硫後の硬度が低下し、操縦安定性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0093】
本発明では、上記式(I)で表される化合物に加えて、更にアミノ酸誘導体を配合することが好ましい。これにより、より好適にシリカの分散性を向上でき、良好な加工性を維持しつつ、より好適に低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を向上できる。
【0094】
上記式(I)で表される化合物に加えて、更にアミノ酸誘導体を配合する場合には、上記式(I)で表される化合物とアミノ酸誘導体との混合物として市販されているSchill+Seilacher社製のHT254等を使用してもよい。
【0095】
上記式(I)で表される化合物とアミノ酸誘導体の合計含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.2質量部未満であると、上記式(I)で表される化合物を配合したことにより得られる効果を充分に得られないおそれがある。また、該合計含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは25質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。25質量部を超えると、加硫後の硬度が低下し、操縦安定性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0096】
本発明では、シリカが使用される。上記ジエン系重合体、上記式(I)で表される化合物とともに、シリカを配合することにより、良好な加工性を維持しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を好適に向上できる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0097】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、40m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましく、150m/g以上が特に好ましい。40m/g未満では、破断強度が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、250m/g以下が好ましく、220m/g以下がより好ましく、200m/g以下が更に好ましい。250m/gを超えると、低燃費性、加工性が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0098】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。10質量部未満であると、シリカの配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、ゴムの加工性が悪化する傾向がある。
【0099】
本発明のゴム組成物には、シリカと共に、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、スルフィド系が好ましい。
【0100】
スルフィド系シランカップリング剤としては、本発明の効果が良好に得られるという理由から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドが好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0101】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満では、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能を充分に改善できない傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0102】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、良好な補強性が得られ、耐摩耗性をより改善できる。
カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、GPF、HAF、ISAF、SAFなどを用いることができる。
【0103】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は30m/g以上が好ましく、70m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。NSAが30m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは250m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、125m/g以下が更に好ましい。NSAが250m/gを超えると、未加硫時の粘度が非常に高くなり、加工性が悪化する傾向がある。また、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001に準拠して測定される。
【0104】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、好ましくは70ml/100g以上、より好ましくは90ml/100g以上である。また、カーボンブラックのDBP吸油量は、好ましくは160ml/100g以下、より好ましくは117ml/100g以下である。該範囲内とすることによって、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できる。
なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
【0105】
本発明のゴム組成物にカーボンブラックが配合される場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。5質量部未満の場合、カーボンブラックを配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。60質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0106】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業で従来使用されている配合剤、例えば、クレー等の補強用充填剤、各種軟化剤、各種老化防止剤、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄などの加硫剤、各種加硫促進剤などを配合することができる。
【0107】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又は、キサンテート系加硫促進剤が挙げられる。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0108】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)等が挙げられる。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、CBSが好ましく、CBSとN,N’−ジフェニルグアニジンとを併用することがより好ましい。
【0109】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0110】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド))に好適に使用できる。
【0111】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド))の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0112】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等として好適に用いられ、特に乗用車用タイヤとしてより好適に用いられる。
【実施例】
【0113】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0114】
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
シクロヘキサン:東京化成(株)製(純度99.5%以上)
スチレン:東京化成(株)製(純度99%以上)
1,3−ブタジエン:東京化成(株)製
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン:和光純薬(株)製
n−ブチルリチウム:和光純薬(株)製
1,3−ジビニルベンゼンのヘキサン溶液(1.6M):東京化成(株)製
イソプロパノール:和光純薬(株)製
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:和光純薬(株)製
テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン:和光純薬(株)製(下記式で表される化合物(変性剤))
【化15】

メタノール:関東化学(株)製
【0115】
製造例1
(重合開始剤の調製)
十分に窒素置換した100ml耐圧製容器に、1,3−ジビニルベンゼンのヘキサン溶液(1.6M)10mlを加え、0℃にてn−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M)20mlを滴下し、1時間攪拌することで重合開始剤溶液を得た。
【0116】
製造例2
(ジエン系重合体(変性ジエン系重合体)の調製)
十分に窒素置換した1000ml耐圧製容器に、シクロヘキサン600ml、スチレン0.12mol、1,3−ブタジエン0.8mol、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.7mmolを加え、更に、製造例1で得られた重合開始剤溶液1.5mlを加えて40℃で攪拌した。3時間後、変性剤であるテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを1.0mmol加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させてジエン系重合体(変性された部位(末端など)を2個以上有する変性ジエン系重合体)を得た。
【0117】
得られたジエン系重合体について下記の評価を行った。
【0118】
(ムーニー粘度)
JIS K 6300−1「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の予熱によって熱せられた100℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点でのジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4/100℃)を測定した。なお、小数点以下は、四捨五入した。その結果、ジエン系重合体のムーニー粘度は、60であった。
【0119】
(ビニル含量)
赤外吸収スペクトル分析により、ジエン系重合体のビニル含量を測定した。その結果、ジエン系重合体のビニル含量は、57モル%であった。
【0120】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
ジエン系重合体:上記製造例2で調製したジエン系重合体
SBR:旭化成ケミカルズ(株)製のE15(エポキシ基を有する化合物(テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン)でカップリングしたS−SBR、スチレン単位量:23質量%、ビニル単位量:64質量%、末端基:OH(片末端変性SBR))
BR:日本ゼオン(株)製のNipolBR1220(シス含量:97質量%)
NR:RSS#3
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックN220(N220、NSA:114m/g、DBP吸油量:114ml/100g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
化合物A:東京化成工業(株)製のN,N−ジメチルホルムアミド(上記式(1)で表される化合物)
化合物B:東京化成工業(株)製のN,N’−エチレンビスオクタデカンアミド(上記式(I)で表される化合物)
化合物C:東京化成工業(株)製のN−オクタデシルサルコシン(上記式(I)で表される化合物)
化合物D:東京化成工業(株)製のN−ラウロイルサルコシン(上記式(I)で表される化合物)
化合物E:Schill+Seilacher社製のHT254(脂肪酸アミド系加工助剤(脂肪酸アミド(上記式(I)で表される化合物(N−(1−オキソオクタデシル)サルコシン))とアミノ酸誘導体の混合物)(脂肪酸アミドの含有率:25〜50質量%))
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0121】
実施例及び比較例
表1に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を165℃で、4分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、80℃で、4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。更に、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材とはりあわせ、150℃で35分間25kgfの条件下で加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を作製した。
【0122】
得られた未加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
(ムーニー粘度の測定)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定した。比較例1のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
【0124】
(低燃費性)
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した。指数が大きい方が、低燃費性に優れている。
【0125】
(ウェットグリップ性能)
アンチロックブレーキシステム(ABS)評価試験により得られた制動性能をもとにして、ウェットグリップ性能を評価した。すなわち、1800cc級のABSが装備された乗用車に試験用タイヤを装着して、アスファルト路面(ウェット路面状態、スキッドナンバー約50)を実車走行させ、時速100km/hの時点でブレーキをかけ、乗用車が停止するまでの距離(停止距離)を測定した。そして、比較例1のウェットグリップ性能指数を100とし、下記計算式により、各配合の停止距離をウェットグリップ性能指数として示した。なお、ウェットグリップ性能指数が大きいほどウェット路面における制動性能が良好であり、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(比較例1の停止距離)/(各配合の停止距離)×100
【0126】
(耐摩耗性)
試験用タイヤを1800cc級のABSが装備された乗用車に装着し、市街地を30000km走行した後の溝深さの減少量を測定し、溝深さが1mm減少するときの走行距離を算出した。さらに、比較例1の耐摩耗性指数を100とし、下記計算式により、各配合の溝深さの減少量を指数表示した。なお、耐摩耗性指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(各配合で1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤの溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0127】
【表1】

【0128】
表1より、変性された特定のジエン系重合体と、シリカと、上記式(I)で表される化合物とを併用した実施例は、良好な加工性を維持しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を向上できた。
また、比較例1,4,5、実施例5の比較より、上記3成分を併用することにより、低燃費性、ウェットグリップ性能を相乗的に向上できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系重合体とシリカと下記式(I)で表される化合物とを含み、
前記ジエン系重合体が、下記(A)と(B)を反応させて得られる変性されたジエン系重合体であるタイヤ用ゴム組成物。
(A):下記(C)の存在下に、共役ジエンモノマー又は共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させることにより得られるアルカリ金属末端を有する活性共役ジエン系重合体
(B):官能基を有する変性剤
(C):下記式(1)で表される化合物と有機アルカリ金属化合物を反応させて得られる化学種
【化1】

(式(1)中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアリール基、分岐若しくは非分岐のアルコキシ基、分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基、分岐若しくは非分岐のアセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を示す。Aは、分岐若しくは非分岐のアルキレン基、分岐若しくは非分岐のアリーレン基又はこれらの誘導体を示す。)
【化2】

(式(I)中、R11は、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。R12及びR13は、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(II)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよい。R11とR12、R11とR13、又はR12とR13とで環構造を形成してもよい。qは、0〜8の整数を表す。)
【化3】

(式(II)中、R14は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。R15は、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が下記式(2)で表される化合物である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化4】

【請求項3】
前記変性剤が下記式(3)で表される化合物である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化5】

(式(3)中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。nは1〜6の整数を表す。)
【請求項4】
前記活性共役ジエン系重合体の両末端に導入した変性剤が同一である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
ゴム成分100質量%中の前記ジエン系重合体の含有量が5質量%以上である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記共役ジエンモノマーが1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンであり、前記芳香族ビニルモノマーがスチレンである請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記変性されたジエン系重合体が1,3−ブタジエン及びスチレンを重合させることにより得られる変性スチレンブタジエンゴムである請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記シリカのチッ素吸着比表面積が40〜250m/gである請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−229384(P2012−229384A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100084(P2011−100084)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】