説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】良好な押し出し加工性を維持しつつ、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性をバランス良く得られるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量部に対して、アルキルフェノール樹脂を0.5〜20質量部、メチレン供与体を0.04〜10質量部含み、前記アルキルフェノール樹脂が、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物と、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂であり、前記アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離の2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、及び4−アルキルフェノールの合計含有量が3質量%以下であるタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤに使用されるゴム組成物には、硬度(E)が高いこと、30〜70℃のtanδが低いこと、破断時伸びが優れていること等の性能が要求される。
【0003】
高硬度を満足させるためには、硫黄、加硫促進剤、レゾルシン樹脂、ポリエチレン樹脂等を配合すること、カーボブラックやシリカなどの充填剤の配合量を多くすることなどの手法がある。しかし、これらの手法では、高硬度(E)と、良好な破断時伸び(EB)を両立することは困難である。
【0004】
一般的に、高硬度であっても、破断時伸びが100%未満では、耐久性が要求されるタイヤ用ゴム組成物としては使用できない。例えば、室温(25℃)で測定される破断時伸びが、ビードエイペックスに使用されるゴム組成物では最低100%以上、ブレーカーに使用されるゴム組成物(ブレーカートッピング用ゴム組成物)では最低200%以上、トレッド(キャップトレッド、ベーストレッド)やサイドウォールに使用されるゴム組成物では最低350%以上であることが要求される。
【0005】
フェノール樹脂を配合することにより、高硬度(E)と、破断時伸び(EB)100%以上を両立することが可能である。しかし、tanδが上昇するという問題があり、高硬度(E)、低tanδ(良好な低燃費性)、良好な破断時伸びをバランスよく得ることは困難であった。そのため、フェノール樹脂を配合したゴム組成物は、ビードエイペックスやブレーカー以外のタイヤ部材にはあまり使用されていないのが現状である。
【0006】
特許文献1,2では、アルキルフェノール樹脂として、クレゾール樹脂を配合したゴム組成物が開示されている。しかし、特許文献1,2で使用されているクレゾール樹脂は、アルキルフェノール成分(モノマー成分)として、3−アルキルフェノールであるm−クレゾールのみが使用されて得られた樹脂であり、3−アルキルフェノール以外のモノマー成分(2−アルキルフェノール、4−アルキルフェノール)を使用して得られる樹脂の使用や、アルキルフェノール樹脂に含まれる(残留する)遊離のモノマー成分の含有量については、詳細に検討されておらず、良好な押し出し加工性を維持しつつ、高硬度(良好な操縦安定性)、低tanδ(良好な低燃費性)、破断時伸び、操縦応答性をバランス良く得る点については、改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−31427号公報
【特許文献2】特開2010−52724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決し、良好な押し出し加工性を維持しつつ、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性をバランス良く得られるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下の仮説に想到した。
アルキルフェノール樹脂は、ゴムの混練中に、カーボンブラックと、軟化剤が含まれる場合には更に軟化剤とも相まって複合球体を形成する。この複合球体の分布に偏りがあるため、ゴムが変形した時に、フィラーとの間で大きなエネルギーロスが発生し、低燃費性が悪化する。
そして、上記課題を解決するためには、上記複合球体を、加硫後の複合球体の硬度が高く、かつ、均一な大きさで、かつ、ゴム中に分散性よく分布させることが望ましいと考えられる。
アルキルフェノール樹脂中に含まれる(残留する)不純物、特に、未反応の(遊離の)アルキルフェノール成分(モノマー成分)は、分子量が小さいため、実質的に可塑剤として機能するおそれがある。そのため、樹脂中に残留する未反応のモノマー成分を少なくした方が、複合球体の硬度を高くできるものと思われる。
更に、モノマー成分として、水酸基とアルキル基の位置関係が異なるアルキルフェノール(例えば、2−アルキルフェノールと3−アルキルフェノール)を組み合わせて得られたアルキルフェノール樹脂をゴム組成物に配合すると、上記複合球体をより均一な大きさで、かつ、ゴム中に分散性よく分布させることが可能なことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ゴム成分100質量部に対して、アルキルフェノール樹脂を0.5〜20質量部、メチレン供与体を0.04〜10質量部含み、上記アルキルフェノール樹脂が、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物と、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂であり、上記アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離の2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、及び4−アルキルフェノールの合計含有量が3質量%以下であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0010】
上記2−アルキルフェノール、上記3−アルキルフェノール、上記4−アルキルフェノールが、それぞれo−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールであることが好ましい。
【0011】
上記アルキルフェノール樹脂が、2−アルキルフェノールと、3−アルキルフェノールと、4−アルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂であることが好ましい。
【0012】
上記アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離の2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、及び4−アルキルフェノールの合計含有量が1質量%以下であることが好ましい。
【0013】
上記アルキルフェノール樹脂の軟化点が115〜140℃であることが好ましい。
【0014】
上記アルキルフェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂の含有量が、96〜100質量%であることが好ましい。
【0015】
上記メチレン供与体が、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0016】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ブレーカートッピング用ゴム組成物及び/又はブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物として用いられ、ゴム成分100質量部に対して、上記アルキルフェノール樹脂を1〜5質量部、上記メチレン供与体として、ヘキサメトキシメチロールメラミン、及び/又はヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルを1〜7質量部含むことが好ましい。
【0017】
上記タイヤ用ゴム組成物は、サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、及び/又はソフトビードエイペックス用ゴム組成物として用いられ、ゴム成分100質量部に対して、上記アルキルフェノール樹脂を0.5〜5質量部、上記メチレン供与体として、ヘキサメチレンテトラミンを0.04〜5質量部含むことが好ましい。
【0018】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として用いられ、ゴム成分100質量部に対して、上記アルキルフェノール樹脂を5〜20質量部、上記メチレン供与体として、ヘキサメチレンテトラミンを0.4〜5質量部含むことが好ましい。
【0019】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として用いられ、ゴム成分100質量部に対して、チッ素吸着比表面積が25〜50m/gのカーボンブラックを40〜80質量部含むことが好ましい。
【0020】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したタイヤ部材を有する空気入りタイヤに関する。
【0021】
上記タイヤ部材は、ビードエイペックス、キャップトレッド、ベーストレッド、サイドウォール、タイガム、ブレーカー、ストリップエイペックス、ビードワイヤートッピング、クリンチエイペックス、ソフトビードエイペックス、及びブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、特定量のアルキルフェノール樹脂、メチレン供与体を含み、上記アルキルフェノール樹脂が、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物と、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂であり、上記アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離の(未反応のため樹脂中に残留している)2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、及び4−アルキルフェノールの合計含有量が特定量以下であるタイヤ用ゴム組成物であるので、良好な押し出し加工性を維持しつつ、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性をバランス良く得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特定量のアルキルフェノール樹脂、メチレン供与体を含み、上記アルキルフェノール樹脂が、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物と、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂であり、上記アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離の2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、及び4−アルキルフェノールの合計含有量(遊離のアルキルフェノール総量)が特定量以下である。これにより、良好な押し出し加工性を維持しつつ、操縦安定性、低燃費性、操縦応答性を向上でき、更に、樹脂の配合により低下する破断時伸びの低下幅を小さくでき、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性がバランスよく得られる空気入りタイヤを生産性良く製造できる。
【0024】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分として使用できるものとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、加工性(押し出し加工性)、破断時伸び、低燃費性に優れるという理由から、NR、IRが好ましい。また、耐亀裂成長性、耐摩耗性に優れるという理由から、BRが好ましい。また、グリップ性能、リバージョン性に優れるという理由から、SBRが好ましい。
また、ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合には、NRと共に、BR、SBRを併用することが好ましい。
また、サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物として使用する場合には、NRと共に、BRを併用することが好ましい。
【0025】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0026】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0027】
BRとしては、ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、サイドウォール用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物として使用する場合には、硬度(E)と耐摩耗性を向上できるという理由から、SPB含有BRが好ましい。
また、サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物として使用する場合には、破断時伸び、耐摩耗性、低燃費性を向上できるという理由から、希土類系BRが好ましい。
【0028】
SPB含有BRにおいて、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)は、単にSPB含有BR中に結晶を分散させたものではなく、SPB含有BRと化学結合したうえ、無配向で分散していることが好ましい。前記結晶がゴム成分と化学結合したうえで分散することにより、クラックの発生および伝播が抑制される傾向がある。
【0029】
SPBの融点は180℃以上が好ましく、190℃以上がより好ましい。SPBの融点が180℃未満では、プレスによるタイヤの加硫中に結晶が溶融し、硬度(操縦安定性)が低下する傾向がある。また、SPBの融点は220℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましい。SPBの融点が220℃を超えると、SPB含有BRの分子量が大きくなるため、ゴム組成物中において分散性が悪化し、押し出し加工性が悪化する傾向がある。
【0030】
SPB含有BR中の沸騰n−ヘキサン不溶物の含有率は2.5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。沸騰n−ヘキサン不溶物の含有率が2.5質量%未満では、ゴム組成物の充分な硬度(操縦安定性)が得られない傾向がある。また、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有率は22質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、18質量%以下がさらに好ましい。沸騰n−ヘキサン不溶物の含有率が22質量%を超えると、SPB含有BR自体の粘度が高く、ゴム組成物中におけるSPB含有BRおよびフィラーの分散性が悪化し、押し出し加工性が悪化する傾向がある。ここで、沸騰n−ヘキサン不溶物とは、SPB含有BR中におけるSPBを示す。
【0031】
上記希土類元素系触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
【0032】
ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の希土類金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等が挙げられる。なかでも、前述のとおり、Nd系触媒の使用が高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる点で好ましい。
【0033】
有機アルミニウム化合物としては、AlR(式中、R、R、Rは、同一若しくは異なって、水素又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。)で表されるものを使用できる。アルミノキサンとしては、鎖状アルミノキサン、環状アルミノキサンが挙げられる。ハロゲン含有化合物としては、AlX3−k(式中、Xはハロゲン、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基、kは1、1.5、2又は3を表す。)で表されるハロゲン化アルミニウム;MeSrCl、MeSrCl、MeSrHCl、MeSrClなどのストロンチウムハライド;四塩化ケイ素、四塩化錫、四塩化チタン等の金属ハロゲン化物が挙げられる。ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯体化するのに用いられ、アセチルアセトン、ケトン、アルコール等が好適に用いられる。
【0034】
上記希土類元素系触媒は、ブタジエンの重合の際に、有機溶媒(n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン等)に溶解した状態で用いても、シリカ、マグネシア、塩化マグネシウム等の適当な担体上に担持させて用いてもよい。重合条件としては、溶液重合又は塊状重合のいずれでもよく、好ましい重合温度は−30〜150℃であり、重合圧力は他の条件に依存して任意に選択してもよい。
【0035】
上記希土類系BRは、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が好ましくは35以上、より好ましくは40以上である。35未満であると、未加硫ゴム組成物の粘度が低く、押し出し加工性が悪化するおそれがある。該ムーニー粘度は、好ましくは55以下、より好ましくは50以下である。55を超えると、未加硫ゴム組成物が硬くなりすぎて、スムーズなエッジで押し出すことが困難になる(押し出し加工性が悪化する)おそれがある。
なお、ムーニー粘度は、ISO289、JIS K6300に準じて測定される。
【0036】
上記希土類系BRは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。1.2未満であると、押し出し加工性の悪化が顕著になる傾向がある。該Mw/Mnは、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。5を超えると、耐摩耗性の改善効果が少なくなる傾向がある。
【0037】
上記希土類系BRのMwは、好ましくは30万以上、より好ましくは40万以上であり、また、好ましくは150万以下、より好ましくは120万以下である。更に、上記希土類系BRのMnは、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下である。MwやMnが下限未満であると、耐摩耗性が低下したり、低燃費性が悪化する傾向がある。上限を超えると、押し出し加工の悪化が懸念される。
なお、本発明において、Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
【0038】
上記希土類系BRのシス含量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。90質量%未満であると、耐摩耗性が低下し、耐摩耗性及び低燃費性を両立できないおそれがある。
【0039】
上記希土類系BRのビニル含量は、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。1.8質量%を超えると、耐摩耗性が低下し、耐摩耗性及び低燃費性を両立できないおそれがある。
なお、本明細書において、希土類系BRのビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)及びシス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0040】
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等が挙げられる。なかでも、良好な加工性(押し出し加工性)、高硬度(E)が得られ、安価であるという理由から、E−SBRが好ましい。
【0041】
ブレーカーに使用されるゴム組成物(ブレーカートッピング用ゴム組成物)、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物として使用する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよい。60質量%未満であると、良好な破断時伸びが得られないおそれがある。
【0042】
ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。30質量%未満では、良好な加工性(押し出し加工性)、リバージョン、破断時伸びが得られないおそれがある。NRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。90質量%を超えると、リバージョンしやすく、高硬度(E)が得られにくい傾向がある。
【0043】
ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満では、硬度(E)、リバージョンが悪化するおそれがある。SBRの含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。40質量%を超えると、良好な破断時伸びが得られないおそれがある。
【0044】
サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物として使用する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。40質量%未満では、良好な加工性(押し出し加工性)、破断時伸びが得られないおそれがある。NRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。80質量%を超えると、良好な耐亀裂成長性、耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0045】
サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物として使用する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。20質量%未満では、良好な耐亀裂成長性、耐摩耗性が得られないおそれがある。BRの含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。60質量%を超えると、良好な加工性(押し出し加工性)、破断時伸びが得られないおそれがある。
【0046】
本発明では、特定のアルキルフェノール樹脂が使用される。本発明で使用するアルキルフェノール樹脂は、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物と、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂であり、前記アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離の2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、及び4−アルキルフェノールの合計含有量(すなわち、遊離のアルキルフェノール総量)が3質量%以下である。
【0047】
本発明で使用するアルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノール樹脂中に含まれる未反応のアルキルフェノール成分(モノマー成分)が特定量以下であるため、上述の複合球体の硬度を高くできるものと思われる。
更に、本発明で使用するアルキルフェノール樹脂は、モノマー成分として、水酸基とアルキル基の位置関係が異なるアルキルフェノール(例えば、2−アルキルフェノールと3−アルキルフェノール)を複数組み合わせて使用して得られるアルキルフェノール樹脂であるため、該アルキルフェノール樹脂をゴム組成物に配合することにより、上述の複合球体をより均一な大きさで、かつ、ゴム中に分散性よく分布させることができるものと思われる。これは、水酸基とアルキル基の位置関係が異なるアルキルフェノールを組み合わせたことにより、アルキル基の配向性がランダムとなり、架橋しやすい構造となるため、架橋密度が高くなり、上述の複合球体の硬度をより高くできると共に、上述の複合球体をより均一な大きさで、かつ、ゴム中に分散性よく分布させることができるものと思われる。
【0048】
以上の作用により、上記特定のアルキルフェノール樹脂をゴム組成物に配合することにより、上述の複合球体を、加硫後の複合球体の硬度が高く、かつ、均一な大きさで、かつ、ゴム中に分散性よく分布させることができ、良好な押し出し加工性を維持しつつ、操縦安定性、低燃費性、操縦応答性を向上でき、更に、樹脂の配合により低下する破断時伸びの低下幅を小さくできるため、良好な押し出し加工性を維持しつつ、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性がバランスよく得られるものと推測される。
【0049】
上記アルキルフェノール樹脂は、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物と、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂である。具体的には、上記アルキルフェノール樹脂は、酸触媒を用いて、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物と、ホルムアルデヒドとを反応させて得られる樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)である。
【0050】
モノマー成分として使用されるアルキルフェノールは、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物であるが、本発明の効果が好適に得られるという理由から、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールの3種の化合物を使用することが好ましい。
【0051】
アルキルフェノールが有するアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、本発明の効果が好適に得られるという理由から、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1が特に好ましい。アルキルフェノールとしては、アルキル基の炭素数が異なるものを組み合わせて使用してもよい。
【0052】
最も好ましいモノマー成分としては、上記2−アルキルフェノール、上記3−アルキルフェノール、上記4−アルキルフェノールが、それぞれo−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールである場合である。すなわち、前記アルキルフェノール樹脂が、クレゾール樹脂である場合が好ましい。
【0053】
酸触媒としては、特に限定されず、例えば、三フッ化ホウ素・エーテル錯体、三フッ化ホウ素・フェノール錯体、三フッ化ホウ素・水錯体、三フッ化ホウ素・アルコール錯体、三フッ化ホウ素・アミン錯体、または、これらの混合物等が用いられる。このなかでも特に好ましいものは、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・フェノール錯体、三フッ化ホウ素・エーテル錯体等が使用できる。
【0054】
酸触媒の存在下、アルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させる方法は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、適当な溶媒に、酸触媒、アルキルフェノール、ホルムアルデヒドを溶解させ、100〜180℃で1〜10時間反応させればよい。
【0055】
上記反応により得られたアルキルフェノール樹脂の精製方法としては特に制限されないが、例えば溶剤に溶解させた後、再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の精製操作を、アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離のアルキルフェノール総量が特定量以下となるまで行うことにより、上記アルキルフェノール樹脂が得られる。なお、蒸留方法としては、特開2011−74205号公報に記載の方法を好適に用いることができる。
【0056】
上記アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離の2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、及び4−アルキルフェノールの合計含有量(遊離のアルキルフェノール総量)は、3質量%以下であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。3質量%を超えると、加硫後の複合球体の硬度が低下し、本発明の効果が充分に得られない。
遊離のアルキルフェノール総量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0057】
上記アルキルフェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂の含有量が、好ましくは96〜100質量%、より好ましくは98〜100質量%、更に好ましくは99〜100質量%である。ノボラック型フェノール樹脂の含有量が96質量%未満であると、加硫後の複合球体の硬度が低下し、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。
ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0058】
上述の複合球体をより均一な大きさで、かつ、ゴム中により分散性よく分布させるためには、ゴムの混練中に、アルキルフェノール樹脂自体が充分に分散し、その後にアルキルフェノール樹脂が液化することが好ましい。軟化点が低すぎると、混練中にフィラーがある程度分散する前に、アルキルフェノール樹脂が液化し、アルキルフェノール樹脂の良好な分散が達成できないおそれがある。一方、軟化点が高すぎると、温度上昇に伴いポリマーが軟化するため、アルキルフェノール樹脂の塊を砕くトルクが充分でなく、アルキルフェノール樹脂の分散が悪化したり、その液化が不充分となり、上述の複合球体の形成が不十分となってしまうおそれがある。アルキルフェノール樹脂の軟化点を以下の範囲内とすることにより、上述の複合球体をより均一な大きさで、かつ、ゴム中により分散性よく分布させることができ、本発明の効果がより好適に得られる。
【0059】
上記アルキルフェノール樹脂の軟化点は、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは125℃以上である。また、該軟化点は、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下である。
なお、アルキルフェノール樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0060】
アルキルフェノール樹脂の軟化点は、モノマー成分として使用する2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールの組み合わせやその比率を調整し、適度な異方性、結晶性を付与することにより調整できる。例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールの融点は、それぞれ、30℃、12℃、35.5℃であるので、当業者であれば、融点の情報を基にして、これらの比率を調整することによりアルキルフェノール樹脂の軟化点を望む温度に調整できる。
また、アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離のアルキルフェノール総量も軟化点に影響を与えるため、この量を調整することによっても、アルキルフェノール樹脂の軟化点を調整できる。
【0061】
上記アルキルフェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上である。Mwは、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、更に好ましくは1900以下である。Mwが上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した。
【0062】
なお、本明細書において、GPCは、下記の条件(1)〜(8)で測定を行った。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL(2本直列)
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)注入量:5μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
【0063】
上記アルキルフェノール樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5〜20質量部である。0.5質量部未満であると、操縦安定性、低燃費性、操縦応答性が充分に得られない。一方、20質量部を超えると、破断時伸び、低燃費性が悪化する。
【0064】
ブレーカートッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物として使用する場合、ゴム成分100質量部に対して、上記アルキルフェノール樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1〜5質量部が好ましく、2〜4質量部がより好ましい。これらのゴム組成物では、ビードエイペックス用ゴム組成物に比べて要求される硬度(E)が低く、上記アルキルフェノール樹脂の含有量が上記範囲内であれば、これらのゴム組成物に要求される硬度(E)を確保しつつ、良好な低燃費性、破断時伸びが得られ、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性がバランスよく得られる。
【0065】
サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物として使用する場合、ゴム成分100質量部に対して、上記アルキルフェノール樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5〜5質量部が好ましく、1〜4質量部がより好ましい。
これらのゴム組成物では、ビードエイペックス用ゴム組成物に比べて要求される硬度(E)が低く、チッピング性(破断時伸び)等も重要であり、上記アルキルフェノール樹脂の含有量が上記範囲内であれば、これらのゴム組成物に要求される硬度(E)を確保しつつ、良好な低燃費性、破断時伸びが得られ、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性がバランスよく得られる。
【0066】
ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、上記アルキルフェノール樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5〜20質量部が好ましく、7〜16質量部がより好ましい。
これらのゴム組成物では、高い硬度(E)が要求されるため、上記アルキルフェノール樹脂の含有量は、他の部材に使用される場合に比べて多い。
【0067】
本発明では、メチレン供与体が使用される。アルキルフェノール樹脂と共にメチレン供与体を使用することにより、良好な押し出し加工性を維持しつつ、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性をバランス良く得られる。
【0068】
メチレン供与体としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)、ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)やヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)、スミカノール507A等が挙げられる。なかでも、HMT、HMMM、HMMPMEが好ましい。
ブレーカートッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物として使用する場合、HMMM、HMMPMEが好ましい。これは、HMTが加硫時にメチレン以外にもコードとの接着に悪影響を及ぼすアンモニアを発生させるためである。ただし、HMTを使用した場合であっても、有機酸コバルトを増量することにより、コードとの接着性を確保できる。
サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物として使用する場合、HMTが好ましい。
ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、HMTが好ましい。
【0069】
メチレン供与体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.04〜10質量部である。0.04質量部未満であると、操縦安定性、低燃費性、操縦応答性が充分に得られない。10質量部を超えると、破断時伸び、低燃費性が悪化する。
【0070】
ブレーカートッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物として使用する場合、メチレン供与体(好ましくはHMMM及び/又はHMMPME)の含有量は、上記アルキルフェノール樹脂の含有量の場合と同様の理由から、ゴム成分100質量部に対して、1〜7質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。
【0071】
サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物として使用する場合、メチレン供与体(好ましくはHMT)の含有量は、上記アルキルフェノール樹脂の含有量の場合と同様の理由から、ゴム成分100質量部に対して、0.04〜5質量部が好ましい。
【0072】
ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、メチレン供与体(好ましくはHMT)の含有量は、上記アルキルフェノール樹脂の含有量の場合と同様の理由から、ゴム成分100質量部に対して、0.4〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
【0073】
本発明では、アロマオイル、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、アロマ/アリファティック混合レジン、TDAEオイル等の軟化剤を含有してもよい。
【0074】
本発明では、カーボンブラックを含有してもよい。これにより、良好な補強性が得られ、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性をバランス良く得られる。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。カーボンブラックは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
ブレーカートッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物として使用する場合、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は50〜110m/gが好ましく、70〜90m/gがより好ましい。
サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物として使用する場合、カーボンブラックのNSAは20〜70m/gが好ましく、30〜50m/gがより好ましい。
ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、カーボンブラックのNSAは20〜90m/gが好ましく、25〜50m/gがより好ましい。
SAが下限未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。一方、NSAが上限を超えると、未加硫時の粘度が非常に高くなり、押し出し加工性が悪化する傾向がある。また、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001に準拠して測定される。
【0076】
本発明のタイヤ用ゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。30質量部未満の場合、カーボンブラックを配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは65質量部以下である。80質量部を超えると、押し出し加工性、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0077】
ブレーカートッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物として使用する場合、有機酸コバルトを含むことが好ましい。
有機酸コバルトは、スチールコードとゴムとを架橋する役目を果たすため、有機酸コバルトを含有することにより、スチールコードとゴムとの接着性を向上させることができる。有機酸コバルトの具体例としては、例えば、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ホウ素酸デカン酸コバルトなどが挙げられる。なかでも、ステアリン酸コバルトが好ましい。
【0078】
ブレーカートッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物として使用する場合、有機酸コバルトの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、コバルトに換算して0.05質量部以上、好ましくは0.08質量部以上である。0.05質量部未満であると、接着性が低下し、耐久性が低下する。
該含有量は、コバルトに換算して0.30質量部以下、好ましくは0.20質量部以下、より好ましくは0.12質量部以下である。0.30質量部を超えると、破断時伸び、接着性が低下し、耐久性が低下する。
【0079】
上記メチレン供与体以外にも架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、硫黄、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物等が挙げられる。ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、高硬度のゴム組成物を得ることができるため、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含有することが好ましい。
アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の具体例としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200等が挙げられる。また、必要に応じて加硫促進剤も含有してよい。
【0080】
ブレーカートッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物、ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。また、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。硫黄の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、オイルを含有する硫黄を使用する場合、硫黄の含有量は、硫黄分の含有量を示す。
【0081】
ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0082】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、シリカ等の補強用充填剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、各種老化防止剤、ワックスなどを適宜配合することができる。
【0083】
ブレーカートッピング用ゴム組成物、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物、ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として使用する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。また、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。酸化亜鉛の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0084】
サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物として使用する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは4質量部以上である。また、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。酸化亜鉛の含有量が上記範囲であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0085】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0086】
本発明のゴム組成物は、各タイヤ部材に使用できる。タイヤ部材としては、特に限定されないが、ビードエイペックス、キャップトレッド、ベーストレッド、サイドウォール、タイガム、ブレーカー(タイヤコードを上記ブレーカートッピング用ゴム組成物で被覆して得られる部材)、ストリップエイペックス、ビードワイヤートッピング、クリンチエイペックス、ソフトビードエイペックス、及びブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ブレーカー、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート、ビードエイペックス、サイドウォール、ベーストレッド、タイガムがより好ましく、ブレーカー、ビードエイペックス、サイドウォールが更に好ましい。
【0087】
ビードエイペックスとは、ビードコアから半径方向外側にのびるように、タイヤクリンチの内側に配される部材であり、具体的には、特開2008−38140号公報の図1〜3などに示される部材である。
キャップトレッドとは、多層構造を有するトレッドの表層部である。ベーストレッドとは、多層構造を有するトレッドの内層部である。2層構造のトレッドの場合には、表面層(キャップトレッド)及び内面層(ベーストレッド)から構成される。
サイドウォールとは、トレッド部からビード部のビードコアに至るカーカスの外側に配された部材である。
タイガムとは、ケースコードの内側でインナーライナーの外側に配設される部材であり、具体的には、特開2010−095705号公報の図1などに示される部材である。
ブレーカーとは、トレッドの内部で、かつカーカスの半径方向外側に配される部材であり、具体的には、特開2003−94918号公報の図3などに示される部材である。
ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシートとは、ブレーカーの端部や、ブレーカーのタイヤ半径方向の内側(ブレーカー及びプライ間)や外側(ブレーカー及びトレッド間)に配される部材であり、具体的には、特開2009−046576号公報の図1などに示される部材である。
ストリップエイペックスとは、サイドウォール部の補強内層ゴムであり、具体的には、特開2010−149677の図1、特開2008−038140の図5などに示される部材である。
ビードワイヤートッピングとは、ビードワイヤーを被覆するゴムである。
クリンチエイペックスとは、サイドウォールの内方端に配されるゴム部であり、具体的には、例えば、特開2008−75066号公報の図1、特開2004−106796号公報の図1等に示される部材である。
ソフトビードエイペックスとは、通常のビードエイペックスよりも軟らかいビードエイペックスであり、具体的には、サイドウォール補強層(インサート)が配されたランフラットタイヤに用いられる通常のビードエイペックスよりも軟らかいビードエイペックスや、トラック・バス用タイヤに使用される2層構造のビードエイペックス(タイヤ半径方向内側に硬いゴム層、タイヤ半径方向外側に軟らかいゴム層)の軟らかいゴム層である。
【0088】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階で各部材の形状(ブレーカーの場合は、未加硫の段階でタイヤコードに被覆してブレーカーの形状)に成形した後、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0089】
本発明で使用できるタイヤコードとしては、有機繊維コード、スチールコード、有機繊維とスチールのハイブリッドコードなどが挙げられる。具体的には、タイヤ用スチールコード、2+2/0.23(線経0.23mmの2本と2本のコードを和して撚り合せたタイヤコード)、黄銅メッキ付高張力コードなどが挙げられる。
【0090】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車、トラック/バス、ライトトラック等に用いることができる。本発明の空気入りタイヤは、高硬度(E)、良好な破断時伸びを有するため、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び(耐久性)、操縦応答性をバランス良く得られる。また、高硬度(E)、良好な破断時伸びを有するため、軽量化した場合であっても、良好な操縦安定性、操縦応答性、耐外傷性を維持できる。また、フラットスポット(タイヤのトレッドの変形)を好適に抑制できる。
【実施例】
【0091】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0092】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
カーボンブラック(1):キャボットジャパン(株)製のN326(NSA:81m/g)
老化防止剤:FLEXSYS(株)製の老化防止剤6C(SANTOFLEX、6PPD)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛(平均粒子径:290nm)
ステアリン酸コバルト:大日本インキ化学工業(株)製のcost−F(コバルト含有量:9.5質量%)
硫黄:フレキシス製のクリステックスHSOT20(硫黄80質量%およびオイル分20質量%含む不溶性硫黄)
加硫促進剤DCBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDZ−G(N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
HMT:大内新興化学工業(株)製のノクセラーH(ヘキサメチレンテトラミン)
HMMPME:田岡化学工業(株)製のスミカノール507AP(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル)
C5系石油樹脂:三井化学(株)製のハイレッツG−100
クレゾール樹脂(PR−X11061):住友ベークライト(株)製のPR−X11061(アルキルフェノール成分(モノマー成分)として、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールを使用、遊離のアルキルフェノール総量:0.6質量%、ノボラック型フェノール樹脂の含有量:99.4質量%、軟化点:128℃、Mw:1800)
クレゾール樹脂(試作A):PR−X11061の製造において精製方法を変更し、遊離のアルキルフェノール総量を変えた樹脂(アルキルフェノール成分は、PR−X11061と同様、遊離のアルキルフェノール総量:1.5質量%、ノボラック型フェノール樹脂の含有量:98.5質量%、軟化点:124℃、Mw:1880)
クレゾール樹脂(試作B):PR−X11061の製造において精製方法を変更し、遊離のアルキルフェノール総量を変えた樹脂(アルキルフェノール成分は、PR−X11061と同様、遊離のアルキルフェノール総量:5質量%、ノボラック型フェノール樹脂の含有量:95質量%、軟化点:110℃、Mw:2090)
スミカノール610 ロットA:住友化学工業(株)製のスミカノール610(メタクレゾール樹脂(アルキルフェノール成分(モノマー成分)として、m−クレゾールのみを使用(樹脂の製造に使用したアルキルフェノール成分100質量%中のm−クレゾールの量は100質量%)、遊離のアルキルフェノール総量:8質量%、ノボラック型フェノール樹脂の含有量:92質量%、軟化点:100℃、Mw:2000)
スミカノール610 ロットB:住友化学工業(株)製のスミカノール610(メタクレゾール樹脂(アルキルフェノール成分(モノマー成分)として、m−クレゾールのみを使用(樹脂の製造に使用したアルキルフェノール成分100質量%中のm−クレゾールの量は100質量%)、遊離のアルキルフェノール総量:12質量%、ノボラック型フェノール樹脂の含有量:88質量%、軟化点:95℃、Mw:2000)
カシューオイル変性フェノール樹脂:住友ベークライト(株)製のPR12686(カシューオイル変性フェノール樹脂、遊離のフェノール量:0.2質量%、ノボラック型フェノール樹脂の含有量:99.8質量%、軟化点:94℃、Mw:5330)
SPB含有BR:宇部興産(株)製のVCR617(SPBの融点:200℃、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有率:15〜18質量%、SPBの含有率:15〜18重量%)
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol 1502(E−SBR)
カーボンブラック(2):キャボットジャパン(株)製のN550(NSA:40m/g)
カーボンブラック(3):キャボットジャパン(株)製のN330(NSA:78m/g)
非反応性アルキルフェノール樹脂:住友ベークライト(株)製のPR−19900(軟化点:90℃)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
V200:田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物)
PVI:大内新興化学工業(株)製のリターダーCTP
Nd系BR:ランクセス(株)製のCB24(Nd系触媒を用いて合成したBR、シス含量:96質量%、ビニル含量:0.7質量%、ML1+4(100℃):45、Mw/Mn:2.69、Mw:50万、Mn:18.6万)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
TDAE:H&Rグループ社製のVivatec 500
【0093】
実施例1〜21及び比較例1〜21
表1〜3に示す配合処方(表中の硫黄量は、硫黄成分の量を示す)に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、架橋剤以外の材料を150℃になるまで混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に架橋剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
また、実施例1〜7及び比較例1〜7では、得られた未加硫ゴム組成物でスチールコードを被覆し、ブレーカー形状に加工し、他のタイヤ部材と貼り合わせ、170℃の条件下で12分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:225/40R18 92Y XL)を得た。
また、実施例8〜14及び比較例8〜14では、得られた未加硫ゴム組成物でビードワイヤーとアッセンブルし、ビードエイペックス形状に加工し、上記と同様に試験用タイヤ(タイヤサイズ:225/40R18 92Y XL)を得た。
また、実施例15〜21及び比較例15〜21では、得られた未加硫ゴム組成物でサイドウォール形状に加工し、上記と同様に試験用タイヤ(タイヤサイズ:225/40R18 92Y XL)を得た。
【0094】
なお、表1は、ブレーカートッピング用ゴム組成物の配合であるが、ブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物も同様の配合である。
また、表2は、ビードエイペックス用ゴム組成物の配合であるが、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物も同様の配合である。
また、表3は、サイドウォール用ゴム組成物の配合であるが、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、ソフトビードエイペックス用ゴム組成物も同様の配合である。ただし、クリンチエイペックス用ゴム組成物とする場合、BR量、カーボンブラック量を増量し、カーボンブラックをN200又はN300番に変更することが好ましい。
【0095】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0096】
(複素弾性率(硬度)(E)、低燃費性(tanδ))
岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、70℃、初期歪10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で、各加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)及び複素弾性率(E)を測定した。
tanδが小さいほど、転がり抵抗が低く、低燃費性に優れることを示す。Eが大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。
【0097】
(引張試験)
加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定した。EBが大きいほど、破断時伸びに優れることを示す。
【0098】
(操縦応答性)
試験用タイヤをSUV車の全輪に装着してテストコースを実車走行し、ドライバーの官能評価により操縦応答性を10点満点で評価した。評点が大きいほど操縦応答性が良好である。
【0099】
(押し出し加工性)
未加硫ゴム組成物をコールドフィード押し出し機に投入し、厚み0.85mm×幅約0.7mmのゴムシートを作製した。
実施例1〜7及び比較例1〜7では、作製したゴムシートをスチールコードの上下から圧着し、得られたシート表面の平坦性、仕上り、ゴム焼け、エッジの平坦性を観察し、下記の基準で評価した。
◎:優れている
○:満足レベル
△:要対策レベル(工程の生産性を阻害するレベル)
×:標準生産ができないレベル
また、実施例8〜14及び比較例8〜14では、作製したゴムシートをビードワイヤーとアッセンブルした後の、エッジの平坦性、直立性、仕上り、ゴム焼けを観察し、下記の基準で評価した。
◎:優れている
○:満足レベル
△:要対策レベル(工程の生産性を阻害するレベル)
×:標準生産ができないレベル
また、実施例15〜21及び比較例15〜21では、作製したゴムシート表面の平坦性、仕上り、ゴム焼け、エッジの平坦性を観察し、下記の基準で評価した。
◎:優れている
○:満足レベル
△:要対策レベル(工程の生産性を阻害するレベル)
×:標準生産ができないレベル
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
表1〜3より、特定量のアルキルフェノール樹脂、メチレン供与体を含み、上記アルキルフェノール樹脂が、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物と、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂であり、遊離のアルキルフェノール総量が特定量以下である実施例は、良好な押し出し加工性を維持しつつ、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、操縦応答性がバランス良く得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部に対して、アルキルフェノール樹脂を0.5〜20質量部、
メチレン供与体を0.04〜10質量部含み、
前記アルキルフェノール樹脂が、2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、4−アルキルフェノールからなる群より選択される少なくとも2種の化合物と、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂であり、前記アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離の2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、及び4−アルキルフェノールの合計含有量が3質量%以下であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記2−アルキルフェノール、前記3−アルキルフェノール、前記4−アルキルフェノールが、それぞれo−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールである請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記アルキルフェノール樹脂が、2−アルキルフェノールと、3−アルキルフェノールと、4−アルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとから得られる樹脂である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記アルキルフェノール樹脂中に含まれる遊離の2−アルキルフェノール、3−アルキルフェノール、及び4−アルキルフェノールの合計含有量が1質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記アルキルフェノール樹脂の軟化点が115〜140℃である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記アルキルフェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂の含有量が、96〜100質量%である請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記メチレン供与体が、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
ブレーカートッピング用ゴム組成物及び/又はブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシート用ゴム組成物として用いられ、
ゴム成分100質量部に対して、前記アルキルフェノール樹脂を1〜5質量部、
前記メチレン供与体として、ヘキサメトキシメチロールメラミン、及び/又はヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルを1〜7質量部含む請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
サイドウォール用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、タイガム用ゴム組成物、クリンチエイペックス用ゴム組成物、及び/又はソフトビードエイペックス用ゴム組成物として用いられ、
ゴム成分100質量部に対して、前記アルキルフェノール樹脂を0.5〜5質量部、
前記メチレン供与体として、ヘキサメチレンテトラミンを0.04〜5質量部含む請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として用いられ、
ゴム成分100質量部に対して、前記アルキルフェノール樹脂を5〜20質量部、
前記メチレン供与体として、ヘキサメチレンテトラミンを0.4〜5質量部含む請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
ビードエイペックス用ゴム組成物、ストリップエイペックス用ゴム組成物、ビードワイヤートッピング用ゴム組成物として用いられ、
ゴム成分100質量部に対して、チッ素吸着比表面積が25〜50m/gのカーボンブラックを40〜80質量部含む請求項1〜7、10のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したタイヤ部材を有する空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記タイヤ部材は、ビードエイペックス、キャップトレッド、ベーストレッド、サイドウォール、タイガム、ブレーカー、ストリップエイペックス、ビードワイヤートッピング、クリンチエイペックス、ソフトビードエイペックス、及びブレーカーエッジ/ブレーカートッピングシートの上下に位置するシートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項12記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−241065(P2012−241065A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110558(P2011−110558)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】