説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善しながら後半グリップ性能を改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】酸及び窒素化合物、並びに/又は、有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を、エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物により変性して得られる重合体混合物とを含み、前記重合体混合物の重量平均分子量が1.0×10〜1.0×10であるタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
レース用タイヤをはじめとした競技用タイヤのトレッドゴムには、一般にグリップ性能及び耐摩耗性がともに優れたゴム組成物が要求される。
【0003】
グリップ性能(特に、ドライグリップ性能)を向上するために、水素結合やイオン結合を用いてtanδの向上が行われている。例えば、特許文献1、2には、窒素化合物と酸を配合して水素結合を形成させることやイオン結合を有する化合物を配合することでグリップ性能(ドライ路面におけるグリップ性能)を向上したゴム組成物が開示されている。しかし、更なるグリップ性能の向上のために、窒素化合物や酸を増量すると、架橋密度が低下し、ブローが発生したり、耐摩耗性が悪化することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−112921号公報
【特許文献2】特開2006−124423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善しながら後半グリップ性能を改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来から、液状のポリマーが可塑剤として使用されている。本発明者らは、鋭意検討した結果、液状のポリマーに、酸として機能する変性基を付与することにより、効果的に水素結合を形成でき、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善しながら後半グリップ性能を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、酸及び窒素化合物、並びに/又は、有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を、エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物により変性して得られる重合体混合物とを含み、上記重合体混合物の重量平均分子量が1.0×10〜1.0×10であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0007】
上記重合体混合物は、下記式(1)で表される変性基を有する変性重合体を含むことが好ましい。
【化1】

(式中、Aは2価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。RはOR又は下記式(2)を表す。Rは水素原子又は1価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。)
【化2】

(式中、Bは2価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。Rは水素原子又は1価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。)
【0008】
上記Aが下記式(3);
【化3】

(式中、mは0〜6の整数を表す。R、Rは同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜2の炭化水素基又はアリール基を表す。)
で表され、
上記Bが下記式(4)〜(7);
【化4】

(式中、nは2〜3の整数を表す。R、Rは同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)
のいずれかで表されることが好ましい。
【0009】
上記重合体混合物が水添重合体の混合物であることが好ましい。
【0010】
上記重合体がスチレンブタジエン共重合体であることが好ましい。
【0011】
上記重合体混合物は、スチレン含有量が5〜45質量%であり、ビニル量が共役ジエン単位の量を100モル%として20〜80モル%であることが好ましい。
【0012】
上記酸がカルボン酸又はフェノール誘導体であることが好ましい。
【0013】
上記窒素化合物がピペリジン誘導体、イミダゾール類及びカプロラクタム類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0014】
上記ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【0016】
上記空気入りタイヤは、高性能タイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、酸及び窒素化合物、並びに/又は、有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を、エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物により変性して得られる重合体混合物とを含み、前記重合体混合物の重量平均分子量が1.0×10〜1.0×10であるタイヤ用ゴム組成物であるので、該ゴム組成物をタイヤ部材(特に、トレッド)に使用することにより、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善されながら後半グリップ性能を改善された空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、酸及び窒素化合物、並びに/又は、有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(グリップ向上剤)と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を、エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物により変性して得られる重合体混合物とを含み、前記重合体混合物の重量平均分子量が1.0×10〜1.0×10である。
【0019】
上記重合体混合物は、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体の一部又は全部に上記化合物を反応させて得られるものであって、該化合物との反応生成物である変性重合体と、任意に該化合物と未反応の非変性重合体とを含む重合体の混合物で、かつ該混合物は特定の重量平均分子量を有している。そして、エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物により変性された変性重合体には、酸として機能する変性基が付与されている。
【0020】
本発明では、グリップ向上剤と共に、上記重合体混合物を配合するため、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善しながら後半グリップ性能を改善できる。これは、上記重合体混合物が、酸として機能する変性基が付与された変性重合体を含むことにより、効果的に水素結合を形成でき、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善(特に、初期グリップ性能は相乗的に改善)しながら後半グリップ性能を相乗的に改善できるものと推測される。なお、上記重合体混合物を構成する重合体は、水素添加されたものであってもよく、この場合、上記効果がより好適に得られる。なお、本明細書において、単にグリップ性能と記載する場合には、初期グリップ性能、後半グリップ性能の両方を含むこととする。
【0021】
上記共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体としては、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善しながら後半グリップ性能を改善できるという理由から、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物の共重合体が好ましい。
【0022】
共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点から1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0023】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用面の観点からスチレンが特に好ましい。
【0024】
なお、1,3−ブタジエンを用いることでブタジエン単独重合体が得られ、スチレンを用いることでスチレン単独重合体が得られ、1,3−ブタジエン及びスチレンを用いることでスチレンブタジエン共重合体が得られる。
【0025】
上記重合体混合物は、例えば、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を重合して得られた重合体に対して上記化合物を反応させ、必要に応じて水素添加処理を施すことで合成でき、具体的には以下の方法で合成できる。
【0026】
共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を重合する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を使用できる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を、有機リチウム化合物を重合開始剤として、必要に応じてランダマイザーの存在下でアニオン重合する方法などが挙げられる。
【0027】
炭化水素系溶剤は、特に限定されないが、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。
【0028】
有機リチウム化合物としては、炭素数2〜20のアルキル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、入手容易性、安全性などの観点からn−ブチルリチウム又はsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0029】
また、上記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御(例えば、ブタジエンにおける1,2−結合の増加など)や、共重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御(例えば、ブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化など)などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。
【0030】
ランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当たり、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル当量未満では、添加効果が小さく、ランダム化しにくい傾向がある。また、ランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当たり1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モル当量を超えると、モノマーの反応速度が大きく変化してしまい、逆にランダム化しにくくなる傾向がある。
【0031】
重合の方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に重合体の設計の自由度、加工性などの観点から溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
【0032】
溶液重合法を用いた場合には、溶液中のモノマー濃度(共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物などの合計)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。溶液中のモノマー濃度が5質量%未満では、得られる共重合体の量が少なく、高コストになる傾向がある。また、溶液中のモノマー濃度は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。溶液中のモノマー濃度が50質量%を超えると、溶液粘度が高くなりすぎて撹拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。
【0033】
次いで、上記で得られた重合体を、エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物により変性することにより、重合体混合物が得られる。ここで、エステル基は、−O−C(=O)−R又は−C(=O)−O−R(R:1価の飽和又は不飽和炭化水素基)で表される基、カルボキシル基は−C(=O)−O−Hで表される基である。
【0034】
エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物(変性剤)としては、これらの官能基を有するものであれば特に限定されず、例えば、無水コハク酸、ブチルコハク酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、デシルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ヘキサデシルコハク酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、オクタデシルコハク酸無水物、n−オクチルコハク酸無水物、n−テトラデシルコハク酸無水物、グルタル酸無水物、1,1−シクロペンタン二酢酸無水物、3,3−ジメチルグルタル酸無水物、2,2−ジメチルグルタル酸無水物、3−メチルグルタル酸無水物、4−tert−ブチルフタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、3−メチルフタル酸無水物、無水マレイン酸などのカルボン酸無水物;ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸i−プロピル、ブロモ酢酸t−ブチル、ブロモ酢酸ベンジル、2−メチルブロモ酢酸ブチル、2−メチルブロモ酢酸t−ブチル、2,2−ジメチルブロモ酢酸エチル、2,2−ジメチルブロモ酢酸t−ブチル、2−ジエチルブロモ酢酸エチル、2−フェニルブロモ酢酸メチル、3−ブロモプロパン酸メチル、3−ブロモプロパン酸エチル、2−メチル−3−ブロモプロパン酸メチル、4−ブロモブタン酸メチル、4−ブロモブタン酸エチル、2−メチル−4−タロローブタン酸メチル、6−ブロモヘキサン酸エチル、5−ブロモペンタン酸エチル、シアノギ酸メチル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸i−プロピル、クロロギ酸i−ブチル、クロロギ酸t−ブチル、クロロギ酸ペンチル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸ヘブチル、クロロギ酸オクチル、クロロギ酸デシル、クロロギ酸ドデシル、クロロギ酸ヘキサデシル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸ベンジル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などが挙げられる。なかでも、アクリル酸t−ブチル、シアノギ酸メチル、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水マレイン酸などのカルボン酸無水物が好ましい。
【0035】
上記化合物(変性剤)による変性方法としては特に限定されず、例えば、上記重合体と上記化合物(変性剤)とを接触させる方法などが挙げられる。具体的には、前述のアニオン重合により作製された活性末端を有する重合体溶液に上記化合物を添加(クエンチせずに上記化合物を添加)し、所定温度で一定時間撹拌する方法(1)、クエンチ後に上記化合物を添加し、所定温度で一定時間撹拌する方法(2)などにより、重合体と上記化合物とを反応させることで、変性重合体を含む重合体混合物を調製できる。また、前述のアニオン重合により作製された活性末端を有する重合体溶液を一度反応停止(クエンチ)させて未変性の重合体を得た後に、炭化水素系溶剤中において、再びラジカル開始剤などの試薬で処理し、更に所定の変性剤を添加し、所定温度で一定時間撹拌する方法(3)などにより、重合体と上記化合物とを反応させることで、変性重合体を含む重合体混合物を調製できる。
【0036】
方法(1)の変性反応において、上記化合物の添加量は、良好に変性できるという点から、重合体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0037】
方法(1)の変性反応の温度、時間は、適宜設定できるが、通常、0〜50℃(好ましくは20〜40℃)、5分〜6時間である。撹拌方法は特に限定されず、公知の方法で実施できる。
なお、通常、変性後に重合反応を停止する目的で水、アルコール、酸などを混合する。さらに必要に応じて公知の老化防止剤を混合してもよい。方法(1)によれば、末端が変性された変性重合体を含む重合体混合物を調製できる。
【0038】
方法(2)のクエンチ後に上記化合物を添加する方法としては、例えば、前述のアニオン重合により作製され、クエンチして得られた重合体をランダマイザー、必要に応じて有機溶剤などに溶解して得られた溶液に、有機リチウム化合物及び上記化合物を添加する方法などが挙げられる。なお、該重合体としては、市販の重合体も使用できる。方法(2)によれば、主鎖が変性された変性重合体を含む重合体混合物を調製できる。
【0039】
方法(2)の有機溶剤、ランダマイザー、有機リチウム化合物としては、前述と同様のものが好ましい。
【0040】
方法(2)において、ランダマイザーの添加量は、有機リチウム化合物1モル当たり0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましく、また、1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。
【0041】
方法(2)において、有機リチウム化合物の添加量は、重合体1gに対して、0.00001モル以上が好ましく、0.0001モル以上がより好ましく、また、0.1モル以下が好ましく、0.01モル以下がより好ましい。
【0042】
また、方法(2)の上記化合物の添加量、変性反応の温度、時間は、適宜設定できるが、方法(1)と同様であることが好ましい。
【0043】
方法(3)において、活性末端の反応を停止させる方法としては特に限定されず、水、アルコール、酸などを添加する方法などが挙げられる。炭化水素系溶剤としては、重合で用いる炭化水素系溶剤と同様のものを使用できる。ラジカル開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)などのアゾ化合物、前述の有機リチウム化合物などを使用できる。
【0044】
方法(3)において、ラジカル開始剤の使用量は、良好に変性できるという点から、重合体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
【0045】
方法(3)において、変性剤の使用量は、良好に変性できるという点から、重合体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0046】
方法(3)において、上記変性反応の温度、時間は、適宜設定できるが、通常、0〜80℃(好ましくは40〜70℃)、5分〜6時間である。撹拌方法は特に限定されず、公知の方法で実施できる。なお、通常、変性(撹拌)後に重合反応を停止する目的で、水、アルコール、酸などを添加する。さらに必要に応じて公知の老化防止剤を混合してもよい。
【0047】
前述のとおり、本発明における重合体混合物を構成する重合体は、水素添加されたものでもよい。その場合、上記重合体を上記化合物で変性した後、更に水素添加処理を施して水素添加重合体を調製することにより、目的の水素添加重合体混合物を合成できる。また、上記重合反応の後、得られた重合体に更に水素添加処理を施して水素添加重合体を調製し、次いで上記化合物で変性することにより、目的の水素添加重合体混合物を合成してもよい。
【0048】
水素添加処理は、公知の水添方法により実施でき、例えば、公知の水素化触媒(均一系水素化触媒、不均一系水素化触媒など)を使用し、1〜100気圧の加圧水素下で処理することなどで、重合体を水素化できる。
【0049】
上記により得られた重合体混合物としては、エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に由来する下記式(1)で表される変性基を有する変性重合体、又は該変性重合体の二量体や三量体などの多量体を含むものが挙げられる。
【化5】

(式中、Aは2価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。RはOR又は下記式(2)を表す。Rは水素原子又は1価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。)
【化6】

(式中、Bは2価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。Rは水素原子又は1価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。)
【0050】
Aは2価の飽和又は不飽和炭化水素基であれば特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基などが挙げられる。なかでも、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善しながら後半グリップ性能を改善できるという理由から、下記式(3)で表される基が好ましい。
【化7】

(式中、mは0〜6の整数を表す。R、Rは同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜2の炭化水素基又はアリール基を表す。)
【0051】
式中、mは0〜6の整数を表し、好ましくは0〜2、より好ましくは1である。
6を超えると、硬くなり、グリップ性能が低下するおそれがある。
【0052】
及びRの炭素数1〜2の炭化水素基としては、メチル基、エチル基などが挙げられ、R及びRのアリール基としては、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。
及びRとしては、硬くなりすぎないという理由から、水素原子が好ましい。
なお、上記式(1)で表される変性基は、Aで示される2価の飽和又は不飽和炭化水素基が存在するもの、存在しないもののいずれでもよい。
【0053】
の1価の飽和又は不飽和炭化水素基は特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基などが挙げられる。なかでも、炭素数1〜16の炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などのアルキル基;フェニル基、ベンジル基などのアリール基;などが挙げられる。
としては、硬くなりすぎないという理由から、炭素数1〜16のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。
【0054】
Bは2価の飽和又は不飽和炭化水素基であれば特に限定されず、例えば、Aの炭化水素基と同様のものが挙げられる。なかでも、硬くなりすぎないという理由から、下記式(4)〜(7)のいずれかで表される基が好ましく、(5)、(7)がより好ましく、(5)が更に好ましい。
【0055】
【化8】

(式中、nは2〜3の整数を表す。R、Rは同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)
【0056】
及びRの炭素数1〜18の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などのアルキル基;フェニル基、ベンジル基などのアリール基;などが挙げられる。
【0057】
としては、硬くなりすぎないという理由から、メチル基が好ましい。
【0058】
の炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
【0059】
の1価の飽和又は不飽和炭化水素基は特に限定されず、Rの炭化水素基と同様のものが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1〜6の炭化水素基が列挙される。
としては、硬くなりすぎないという理由から、水素原子が好ましい。
【0060】
上記で得られた重合体混合物は、該混合物を構成する重合体1分子あたり、上記変性基を平均0.1個以上有すること、すなわち重合体混合物を構成する全重合体中の10%以上が上記化合物により変性された変性重合体であることが好ましい。重合体混合物を構成する全重合体中、上記化合物により変性された変性重合体の割合は、より好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは100%である。
なお、本明細書において、重合体1分子あたりの上記変性基の平均個数(変性基含有量)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0061】
重合体混合物の重量平均分子量(Mw)は1.0×10以上、好ましくは2.0×10以上、より好ましくは4.0×10以上である。Mwが1.0×10未満では、ヒステリシスロスが大きく充分な低燃費性が得られにくいだけでなく、耐摩耗性も低下する上、ブリードアウトし、耐ブロー性が低下する傾向がある。該Mwは1.0×10以下、好ましくは1.0×10以下、より好ましくは6.0×10以下である。Mwが1.0×10を超えると、初期グリップ性能、後半グリップ性能、耐ブロー性の悪化が懸念される。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0062】
重合体混合物のスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。スチレン含有量が5質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。スチレン含有量が45質量%を超えると、初期グリップ性能が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0063】
重合体混合物のビニル量は、共役ジエン単位の量を100モル%として、初期グリップ性能の観点から、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは70モル%以下である。また、グリップ性能の観点から、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは25モル%以上である。
なお、本明細書において、該ビニル量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0064】
重合体混合物における共役ジエン部の二重結合の水素添加率は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは45モル%以上、特に好ましくは50モル%以上である。水素添加率が20モル%未満では、水素添加処理による初期グリップ性能、後半グリップ性能の改善効果が充分に得られないおそれがある。また、水素添加率は、100モル%であってもよいが、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。80モル%を超えると、マトリックスゴム中からのブリードアウトが懸念され、耐摩耗性、耐ブロー性が低下するおそれがある。
上記重合体混合物を配合することにより、ゴム組成物の酸性が高くなり、架橋に悪影響を及ぼし、耐摩耗性、耐ブロー性が低下することも懸念されるが、重合体を水素添加することにより、架橋への悪影響を抑制できる。特に、水素添加率を45モル%以上とすることにより、耐摩耗性、耐ブロー性をも向上でき、初期グリップ性能、後半グリップ性能の改善効果も更に向上でき、高い次元で、初期グリップ性能、後半グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を両立できる。
なお、本明細書において、水素添加率は、プロトンNMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0065】
重合体混合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。0.5質量部未満であると、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善しながら後半グリップ性能を充分に改善できないおそれがある。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは95質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。100質量部を超えると、耐摩耗性が低下し、更にブリードアウトし、耐ブロー性が低下する上にコストが高くなる傾向がある。
【0066】
本発明では、上記重合体混合物と共に、エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物で変性されていない、下記の重量平均分子量を有する非変性重合体を配合してもよい。該非変性重合体は、例えば、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を重合して得られた重合体に必要に応じて水素添加処理を施すことにより得られる。
【0067】
非変性重合体の重量平均分子量(Mw)は好ましくは1.0×10以上、より好ましくは2.0×10以上、更に好ましくは4.0×10以上である。Mwが1.0×10未満では、ヒステリシスロスが大きく充分な低燃費性が得られにくいだけでなく、耐摩耗性も低下する上、ブリードアウトし、耐ブロー性が低下する傾向がある。該Mwは1.0×10以下、好ましくは1.0×10以下、より好ましくは6.0×10以下である。Mwが1.0×10を超えると、初期グリップ性能、後半グリップ性能、耐ブロー性の悪化が懸念される。
【0068】
非変性重合体のスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。スチレン含有量が5質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。スチレン含有量が45質量%を超えると、初期グリップ性能が悪化する傾向がある。
【0069】
非変性重合体のビニル量は、共役ジエン単位の量を100モル%として、初期グリップ性能の観点から、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは70モル%以下である。また、グリップ性能の観点から、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは25モル%以上である。
【0070】
非変性重合体における共役ジエン部の二重結合の水素添加率は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上である。水素添加率が20モル%未満では、水素添加処理による初期グリップ性能、後半グリップ性能の改善効果が充分に得られないおそれがある。また、水素添加率は、100モル%であってもよいが、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。80モル%を超えると、マトリックスゴム中からのブリードアウトが懸念され、耐摩耗性、耐ブロー性が低下するおそれがある。
【0071】
重合体混合物及び非変性重合体の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。5質量部未満であると、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善しながら後半グリップ性能を充分に改善できないおそれがある。該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。200質量部を超えると、ブリードアウトし、耐ブロー性が低下する上にコストが高くなる傾向がある。
なお、上記重合体混合物及び非変性重合体は、ゴム成分に含まれない。
【0072】
本発明では、グリップ向上剤として、(i−i)酸及び窒素化合物、並びに/又は、(i−ii)有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が使用される。なかでも、上記重合体混合物と共に配合することにより、より効果的に水素結合を形成することができるという理由から、(i−i)酸及び窒素化合物が好ましい。これにより、酸と窒素化合物だけでなく、上記重合体混合物と窒素化合物との間にも相互作用が生じ、より効果的に水素結合を形成でき、グリップ性能(特に、後半グリップ性能)を相乗的に向上できる。
【0073】
酸としては、特に限定されず、例えば、カルボン酸、フェノール誘導体、スルホン酸などが挙げられる。なかでも、加硫特性に悪影響を与えにくいという理由から、カルボン酸、フェノール誘導体が好ましい。
【0074】
カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸、コハク酸、マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸、安息香酸、安息香酸誘導体、ケイ皮酸、ナフトエ酸などの芳香族モノカルボン酸、フタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸などが挙げられる。安息香酸誘導体としては、例えば、安息香酸に炭化水素基(アルキル基、アルコキシ基など)、水酸基などの官能基が導入されたものが挙げられ、具体的には、p−メチル安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0075】
フェノール誘導体としては、例えば、2−tert−ブチルフェノール;2−エチル−6−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;3−メチル−2,6−ビス(1−メチルエチル)フェノール;4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;3−メチル−2,6−ビス(1−メチルプロピル)フェノール;2−ブチル−6−エチルフェノール;4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェノール;6−tert−ブチル−2,3−ジメチルフェノール;2−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−シクロヘキシル−6−tert−ブチルフェノール;2−シクロヘキシル−6−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール;4,4'−ジヒドロキシビフェニル;4,4'−チオビスフェノール;ヒドロキノン;1,5−ヒドロキシナフタレン;4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4'−エチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4'−プロピリデンビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4'−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2'−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)などを挙げることができる。なかでも、窒素化合物と水素結合を形成しやすいという理由から、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が好ましい。
【0076】
上記酸は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。0.5質量部未満であると、窒素化合物と水素結合を充分に形成できず、グリップ性能の向上効果が充分に得られないおそれがある。酸の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。20質量部を超えると、架橋阻害により耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0078】
窒素化合物は、酸と水素結合を形成できるものが好ましく、このような窒素化合物をゴム組成物中に配合することで、中温条件(30〜50℃)下でのグリップ性能を向上させることができる。
【0079】
窒素化合物は、窒素を含む環状構造を1つ以上有することが好ましい。窒素を含む環状構造を1つも含まないと、高温条件(100℃前後)下でのグリップ性能を改善できない傾向がある。
【0080】
このような窒素化合物としては、ピペリジン誘導体、イミダゾール類、及びカプロラクタム類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。なかでも、ピペリジン誘導体がより好ましい。
【0081】
ピペリジン誘導体としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−メタクリレートなどの2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びその誘導体などが挙げられる。なかでも、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンまたはその誘導体が好ましく、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの誘導体がより好ましく、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートが更に好ましい。
【0082】
イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、N−アセチルイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0083】
カプロラクタム類としては、例えば、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。
【0084】
窒素化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、2種以上を組み合わせても効果が小さく、さらにゴム強度が低下するという理由から、1種のみで用いることが好ましい。
【0085】
窒素化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.5質量部未満であると、酸と充分な水素結合が形成されず、グリップ性能の向上効果が充分に得られないおそれがある。窒素化合物の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。20質量部を超えると、架橋が不充分となり、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0086】
本発明では、(i−i)の酸と窒素化合物の混合物に代えて、又は、該混合物と共に(i−ii)有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が使用される。(i−ii)の化合物は、イオン結合を含み、ゴム組成物中に配合することで、グリップ性能(特に、高温条件(100℃前後)下でのグリップ性能)を向上させることができる。
【0087】
有機カルボン酸金属塩としては、脂肪酸金属塩などが挙げられ、塩を形成する金属としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛、ニッケルなどの遷移金属などが挙げられる。具体的には、酢酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸マグネシウムなどがあり、一般的に市販され、入手しやすいことから、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウムが好ましい。
【0088】
チオカルボン酸塩としては、例えば、チオ酢酸塩、チオプロピオン酸塩などが挙げられる。リン酸塩としては、例えば、メタリン酸塩などが挙げられる。チオカルボン酸塩、リン酸塩において、チオカルボン酸又はリン酸と塩を形成する物質としては、例えば、脂肪酸金属塩と同様の金属、アミノ酸などの正電荷を有する有機物などが挙げられる。
【0089】
有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩としては、上記化合物を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、2種以上を組み合わせることによる効果が得られにくく、さらに、ゴム強度が低下し、好ましくないため、単独で用いることが好ましい。
【0090】
有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.5質量部未満では、グリップ性能の向上効果が充分に得られないおそれがある。また、上記合計含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。20質量部を超えると、架橋が不充分となり、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0091】
本発明で使用できるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)などのジエン系ゴムなどが挙げられる。なかでも、高いtanδが得られる(グリップ性能の向上効果が高い)という理由から、SBRが好ましい。
【0092】
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)などを使用できる。なかでも、ブローアウトが起こりにくいという理由から、S−SBRが好ましい。
【0093】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。25質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、上記スチレン含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。50質量%を超えると、発熱しやすくなり、ブローアウトが起こりやすく、耐ブロー性が低下する傾向がある。
なお、スチレン含有量は、H−NMR測定によって算出される。
【0094】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、本発明の効果が好適に得られるという理由から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0095】
本発明のゴム組成物はカーボンブラックを含むことが好ましい。これにより、良好な補強性が得られ、優れたグリップ性能や耐摩耗性が発揮される。
【0096】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は80m/g以上が好ましく、120m/g以上がより好ましい。80m/g未満では、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。該NSAは200m/g以下が好ましく、160m/g以下がより好ましい。200m/gを超えると、カーボンブラックの分散性が悪化し、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0097】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上である。50質量部未満では、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは190質量部以下である。200質量部を超えると、分散性が低く、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0098】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、粘着付与剤、芳香族系石油樹脂、ワックス、オイル、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0099】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。該ゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッドに好適に使用できる。
【0100】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0101】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として用いられ、特に、高性能タイヤとして好適に用いられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤ(カート、ラリー、ジムカーナー、その他市販の4輪レース用タイヤ、2輪競技用タイヤなど)をも含む概念である。
【実施例】
【0102】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0103】
以下、合成、重合時に用いた各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
n−ヘキサン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:高千穂化学工業(株)製
スチレン:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液:関東化学(株)製
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製
変性剤(1):Aldrich社製のシアノギ酸メチル
変性剤(2):東京化成工業(株)製のアクリル酸t−ブチル
変性剤(3):東京化成工業(株)製の4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物
変性剤(4):東京化成工業(株)製の無水マレイン酸
クロロトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I):特表2007−506644号公報に記載の方法により製造(具体的には、ガス装入管、還流冷却器およびガス排出管を備えた500mlの丸底フラスコ500ml中で、ロジウム(III)−クロリド−三水和物 2gを、エタノール70ml中に溶解した。熱いエタノール 350ml中のエタノールから再結晶化したトリフェニルホスフィン12gの溶液を上記丸底フラスコに投入し、かつ該フラスコを窒素で洗浄した。溶液を2時間還流下で沸騰させた後、結晶質生成物をフリット上で熱い溶液から濾過した。得られた結晶質生成物を無水エーテルで洗浄し、クロロトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)を得た。)
【0104】
製造例1(スチレンブタジエン共重合体(1)の合成)
十分に窒素置換した撹拌翼つきの3Lオートクレーブに、表1の仕込み量にしたがい、n−ヘキサン、1,3−ブタジエン、スチレン、テトラメチルエチレンジアミンを投入し、オートクレーブ内の温度を25℃に調整した。次に、1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液を加えて昇温条件下(30℃)で60分間重合し、モノマーの転化率が99%であることを確認した。次に、クロロトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)1gを加え、窒素置換した後、水素圧力が5atmとなるように水素置換して80℃で水素添加反応を行った。水素添加反応終了後、老化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを1.5g加え、スチレンブタジエン共重合体(1)を合成した。
【0105】
製造例2(スチレンブタジエン共重合体(2)〜(7)の合成)
製造例1と同様に、表1に記載の条件でスチレンブタジエン共重合体の重合を行い、クエンチせずにアニオン重合末端を活性のまま、表1にしたがい変性剤を加えて昇温条件下(30℃)で30分間撹拌した。次にメタノールを加え15分間撹拌した後、製造例1と同様の条件で水素添加反応を行った。その後、老化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを1.5g加え、スチレンブタジエン共重合体(2)〜(7)(重合体混合物)を合成した。なお、スチレンブタジエン共重合体(3)については、水素添加反応の水素圧力が3atmとなるように水素置換して80℃で水素添加反応を行った。
【0106】
得られたスチレンブタジエン共重合体(1)〜(7)(スチレンブタジエン共重合体(2)〜(7)は重合体混合物)について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
共重合体、又は重合体混合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0108】
(スチレン含有量の測定)
25℃にてJEOL JNM−A 400NMR装置を用いてH−NMRを測定し、そのスペクトルより求めた6.5〜7.2ppmのスチレン単位に基づくフェニルプロトンと4.9〜5.4ppmのブタジエン単位に基づくビニルプロトンの比からスチレン含有量、又は重合体混合物のスチレン含有量を決定した。
【0109】
(水素添加率の測定)
四塩化炭素を溶媒として用いて15質量%濃度の共重合体溶液を調製して、100MHzのプロトンNMRの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出した。
【0110】
(1分子あたりの変性基含有量の測定:滴定試験)
KOHを0.1g秤量し、100mlのMeOH溶液を調製した。次いで、試料を0.5g量り取りトルエン30mlに溶解させ、調整した。変性ポリテール溶液にフェノールフタレインを一滴加えた。この溶液にKOH溶液を滴下して、滴定試験を行った。計算によって導かれる酸濃度を変性率とした。
【0111】
【表1】

【0112】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:旭化成(株)製のタフデン4850(S−SBR、スチレン含有量:39質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分50質量部含有)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックA(N110、NSA:142m/g)
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種(平均一次粒子径:1.0μm)
窒素化合物:三共(株)製のサノールLS−765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(下記式で表される化合物))
【化9】

酸(フェノール誘導体):川口化学(株)製のアンテージW300(4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール))
酢酸マグネシウム(有機カルボン酸金属塩):キシダ化学(株)製
老化防止剤6C:フレキシス社製サントフレックス13
老化防止剤224:フレキシス社製ノクラック224
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
スチレンブタジエン共重合体(1)〜(7):上記製造例で製造したスチレンブタジエン共重合体(1)〜(7)
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
【0113】
(実施例及び比較例)
表2に示す配合処方にしたがい、1.7Lのバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外のものを150℃で3分間混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加して80℃で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で12分間プレス加硫することで試験用カートタイヤ(タイヤサイズ:11×7.10−5)を製造した。
【0114】
得られた加硫ゴム組成物、試験用カートタイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表2に示す。
【0115】
(架橋度(SWELL))
得られた加硫ゴム組成物をトルエンで抽出し、抽出前後の体積変化率(SWELL)を測定した。なお、SWELLが小さいほど、架橋のバラツキを抑制でき、好ましいことを示す。
【0116】
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、初期歪10%、動歪2%、振動周波数10Hzの条件下で、40℃又は100℃における加硫ゴム組成物の粘弾性(複素弾性率E’及び損失正接tanδ)を測定した。
なお、40℃におけるE’が低く、tanδが大きいほど、初期グリップ性能(低温条件下でのグリップ性能)に優れる。また、100℃におけるE’が低く、tanδが高いほど、後半グリップ性能(高温条件下でのグリップ性能)に優れる。
【0117】
(引張試験)
JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型ゴム試験片を用いて引張試験を行い、300%伸張時応力(M300)を測定した。そして、比較例1の引張強度指数を100とし、下記計算式により、各配合のM300を指数表示した。なお、引張強度指数が大きいほど、耐アブレージョン摩耗性能に優れることを示す。ただし、ブローが発生した場合には、引張強度指数に関わらず、耐アブレージョン摩耗性能は低下する。
(引張強度指数)=(各配合のM300)/(比較例1のM300)×100
【0118】
(実車評価)
試験用カートに試験用カートタイヤを装着させ、1周2kmのテストコース(DRY路面)を8周走行し、比較例1のタイヤの初期グリップ性能、後半グリップ性能を3.0点とし、5点満点でテストドライバーが官能評価した。なお、初期グリップ性能は1〜4周目の(低温条件下での)グリップ性能、後半グリップ性能は5〜8周目の(高温条件下での)グリップ性能を示す。
また、上記テストコースを18周走行した後、タイヤの摩耗外観を観察した。比較例1のタイヤの摩耗外観を3.0点とし、5点満点で評価した。数値が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
さらに、18周走行した後のタイヤを解体し、トレッド断面のブローの発生度合いを観察し、比較例1のブローの発生度合いを3.0点とし、5点満点で評価した。数値が大きいほど耐ブロー性に優れることを示す。
【0119】
【表2】

【0120】
酸及び窒素化合物、並びに/又は、有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(グリップ向上剤)と、上記重合体混合物(スチレンブタジエン共重合体(2)〜(6))とを含む実施例では、良好な初期グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を維持若しくは改善しながら後半グリップ性能を改善できた。
【0121】
特に、水素添加率の高いスチレンブタジエン共重合体(3)を使用した実施例2では、耐摩耗性、耐ブロー性をも向上でき、初期グリップ性能、後半グリップ性能の改善効果も更に向上でき、高い次元で、初期グリップ性能、後半グリップ性能、耐摩耗性、耐ブロー性を両立できた。
【0122】
比較例1、4、5、実施例2の比較により、グリップ向上剤と、上記重合体混合物とを併用することにより、初期グリップ性能を相乗的に向上できることが分かった。
【0123】
特定の重量平均分子量を超えるスチレンブタジエン共重合体(7)を配合した比較例6では、充分な初期グリップ性能、後半グリップ性能、耐ブロー性が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸及び窒素化合物、並びに/又は、有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物の重合体を、エステル基及び/又はカルボキシル基を有する化合物により変性して得られる重合体混合物とを含み、
前記重合体混合物の重量平均分子量が1.0×10〜1.0×10であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記重合体混合物は、下記式(1)で表される変性基を有する変性重合体を含む請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式中、Aは2価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。RはOR又は下記式(2)を表す。Rは水素原子又は1価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。)
【化2】

(式中、Bは2価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。Rは水素原子又は1価の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。)
【請求項3】
前記Aが下記式(3);
【化3】

(式中、mは0〜6の整数を表す。R、Rは同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜2の炭化水素基又はアリール基を表す。)
で表され、
前記Bが下記式(4)〜(7);
【化4】

(式中、nは2〜3の整数を表す。R、Rは同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)
のいずれかで表される請求項2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記重合体混合物が水添重合体の混合物である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記重合体がスチレンブタジエン共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記重合体混合物は、スチレン含有量が5〜45質量%であり、
ビニル量が共役ジエン単位の量を100モル%として20〜80モル%である請求項5記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記酸がカルボン酸又はフェノール誘導体である請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記窒素化合物がピペリジン誘導体、イミダゾール類及びカプロラクタム類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【請求項11】
高性能タイヤである請求項10記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−100449(P2013−100449A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132266(P2012−132266)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】