説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】ウェットグリップ性能、熱ダレ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される化合物と、チウラム化合物(R−CS−Sx−CS−R)と、無機化合物(kM・xSiO・zHO)とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。


式(I)において、Aは炭素数1〜15の炭化水素基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル置換アミノ基、アラルキル置換アミノ基、又は環状アミノ基を表す。nは1〜12の整数を表す。x及びxは、同一若しくは異なって、1〜12の整数を表す。更にR,Rはアミノ基誘導体、xは1〜4の整数、MはAl、Mg、Ti、Caの1つ又はその酸化物・水酸化物、kは1〜5の整数、x,zは0〜10の整数、yは2〜5の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能タイヤのトレッドゴム組成物には、耐摩耗性、ウェットグリップ性能等の背反する性能が要求され、これらの性能を確保するため、従来より様々な工夫がなされている。
【0003】
従来、タイヤトレッド用ゴム組成物において、ウェットグリップ性能を向上させる手段としては、シリカを配合すること、または、カーボンブラックの粒径を細かくして高充填配合にすることなどが知られている。しかし、これらの手法では、満足のいくウェットグリップ性能は得られておらず、更なるウェットグリップ性能の向上が求められている。
【0004】
特許文献1では、水酸化アルミニウムを配合することにより、ウェットグリップ性能が向上することが記載されている。しかしながら、ウェットグリップ性能、熱ダレ性能、耐摩耗性をバランスよく改善するという点については、未だに改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−213353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能、熱ダレ性能、耐摩耗性をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(I)で表される化合物と、下記式(T)で表される化合物と、下記式(M)で表わされる無機化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式(I)において、Aは炭素数1〜15の炭化水素基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル置換アミノ基、アラルキル置換アミノ基、又は環状アミノ基を表す。nは1〜12の整数を表す。x及びxは、同一若しくは異なって、1〜12の整数を表す。)
【化2】

(式(T)において、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル置換アミノ基、アラルキル置換アミノ基、又は環状アミノ基を表す。xは、1〜4の整数を表す。)
kM・xSiO・zHO (M)
(式(M)において、MはAl、Mg、TiおよびCaからなる群より選ばれた少なくとも1つの金属、該金属の酸化物または水酸化物であり、kは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、zは0〜10の整数である。)
【0008】
上記式(I)のAが炭素数4〜12のアルキレン基であることが好ましい。
【0009】
上記式(I)の環状アミノ基が下記式(II)で表される基であることが好ましい。
【化3】

(式(II)において、Rは、ヘテロ原子を含む炭素数1〜15の炭化水素基であり、ヘテロ原子を含む官能基及び/又は芳香族置換基を有してもよい。)
【0010】
上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=1の化合物の含有量が2質量%以上、n=2の化合物の含有量が2質量%以上、n=3の化合物の含有量が2質量%以上であることが好ましい。
【0011】
上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=2以下の化合物の含有量が50質量%以下、x及びx=1の化合物の含有量が80質量%以上、x及びx=2の化合物の含有量が10質量%以上であることが好ましい。
【0012】
ゴム成分100質量部に対して、加硫剤としての硫黄の配合量が0.05質量部以下であることが好ましい。
【0013】
上記無機化合物の平均一次粒子径が10μm以下であることが好ましい。
【0014】
上記無機化合物が水酸化アルミニウムであることが好ましい。
【0015】
上記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、上記無機化合物を5〜30質量部、カーボンブラックを10〜50質量部、シリカを30〜80質量部含むことが好ましい。
【0016】
上記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、上記式(I)で表される化合物を0.1〜10質量部、上記式(T)で表される化合物を0.1〜5質量部含むことが好ましい。
【0017】
上記ゴム組成物は、粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度0℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で測定したtanδが0.35〜0.8であることが好ましい。
【0018】
上記ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【0020】
上記空気入りタイヤは、高性能タイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記式(I)で表される化合物と、上記式(T)で表される化合物と、上記式(M)で表わされる無機化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、該ゴム組成物をタイヤ部材(特に、トレッド)に使用することにより、ウェットグリップ性能、熱ダレ性能(グリップ性能の持続性)、耐摩耗性がバランスよく優れた空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記式(I)で表される化合物と、上記式(T)で表される化合物と、上記式(M)で表わされる無機化合物とを含む。
【0023】
従来から、タイヤ用ゴム組成物には、加硫剤として硫黄が使用されている。この場合には、スルフィド結合(ポリスルフィド結合、モノスルフィド結合)によりゴム成分が架橋されることになる。ポリスルフィド結合は、熱により結合が切れやすく、耐熱性が低いため、熱ダレ性能が劣るという問題があった。また、スルフィド結合の長さが短い(例えば、モノスルフィド結合)場合には、ポリマーネットワークの柔軟性が乏しく、グリップ性能に必要なゴム組成物の柔軟性が低下する問題があった。また、力(応力)が集中し、疲労によりスルフィド結合が切れやすいために、耐摩耗性が低下する問題があった。
【0024】
一方、上記式(I)で表される化合物を加硫剤として用いると、上記式(I)で表される化合物中の構造−(Sx−A−Sx−により、ゴム成分が架橋され、該構造はポリスルフィド結合よりも結合が強いため、熱により結合が切れにくく、耐熱性を向上し、熱ダレ性能を向上できるものと推測される。また、スルフィド結合の長さが短い(例えば、モノスルフィド結合)場合よりも、架橋点間の距離を長くすることができ、フレキシブルな架橋を実現できるものと推測される。そのため、ポリマーネットワークの柔軟性に富み、グリップ性能に必要な、ゴム組成物の柔軟性を確保することが出来る。さらに、このフレキシブルな架橋は応力を分散でき、結合が切れにくいため、耐摩耗性を向上できるものと推測される。
【0025】
しかし、上記式(I)で表される化合物を使用するだけでは、グリップ性能、耐摩耗性が十分と言えるレベルではなかった。そこで、本発明者らは、モノスルフィド結合を増やすことでグリップ性能、耐摩耗性を補うことを考えた。
【0026】
モノスルフィド結合を増やす手法としては、従来から、加硫剤として使用される硫黄と加硫促進剤の配合量を調整する手法がとられていた。例えば硫黄の配合量を減らして、加硫促進剤の配合量を増やすことで、モノスルフィド結合を増やす手法がとられている。しかし、この手法では、硫黄を配合しているために、ポリスルフィド架橋の生成を低減させることには限界があった。
【0027】
一方、上記式(T)で表される化合物を用いると、上記式(T)で表される化合物の構造−Sx−(1≦x≦4)から明らかなように、スルフィド結合を形成する硫黄の数は、最大で4個である。これは従来手法である硫黄を配合した場合に生成されるスルフィド結合の硫黄の最大数である8個に対して、大幅に少ない。従って、上記式(T)で表される化合物を配合することにより、モノスルフィド架橋の比率を大幅に高めることができ、上記式(I)で表される化合物と併用することにより、グリップ性能、耐摩耗性を十分に向上させることが可能となる。
【0028】
本発明では、上記式(I)で表される化合物と、上記式(T)で表される化合物と、上記式(M)で表わされる無機化合物とを含むため、ウェットグリップ性能、耐摩耗性という背反する性能を同時に改善できるだけではなく、相乗的に改善でき、従来技術では達成できなかった、ウェットグリップ性能、熱ダレ性能、耐摩耗性をバランスよく得られる。
【0029】
本発明で使用できるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性がバランスよく得られるという理由からNR、BR、SBRが好ましく、SBRがより好ましい。
【0030】
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。
【0031】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。25質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られない傾向がある。また、上記スチレン含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。60質量%を超えると、耐摩耗性が低下するだけでなく、温度依存性が増大し、温度変化に対する性能変化が大きくなってしまう傾向がある。なお、本発明において、SBRのスチレン含有量は、H−NMR測定により算出される。
【0032】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。10質量%未満であると、十分なウェットグリップ性能、熱ダレ性能が得られない傾向がある。また、SBRの含有量の上限は特に限定されず、100質量%でもよい。
【0033】
本発明では、下記式(I)で表される化合物が加硫剤として使用される。
【化4】

(式(I)において、Aは炭素数1〜15の炭化水素基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル置換アミノ基、アラルキル置換アミノ基、又は環状アミノ基を表す。nは1〜12の整数を表す。x及びxは、同一若しくは異なって、1〜12の整数を表す。)
【0034】
上記式(I)で表される化合物中のAの炭素数は、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることが更に好ましい。炭素数が1未満であると、耐熱性(熱ダレ性能)、耐摩耗性の向上効果が充分に得られないおそれがある。また、Aの炭素数は、12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることが更に好ましい。炭素数が15を超えると、コストが高くなる傾向がある。
【0035】
Aの炭化水素基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基等のアルキレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数4〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜8のアルキレン基がより好ましく、ヘキシレン基が更に好ましい。
【0036】
本明細書において、アルキル置換アミノ基とは、アミノ基に含まれる水素原子がアルキル基により置換されたアミノ基(モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換アミノ基)をいい、ジアルキル置換アミノ基が好ましい。なお、アルキル基には、シクロアルキル基も含まれる。
【0037】
及びRのアルキル置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジsec−ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジtert−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジウンデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジトリデシルアミノ基、ジテトラデシルアミノ基、ジペンタデシルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘプチルアミノ基、ジシクロオクチルアミノ基、ジシクロノニルアミノ基、N,N−メチルエチルアミノ基、N,N−メチルプロピルアミノ基、N,N−メチルブチルアミノ基、N,N−エチルプロピルアミノ基、N,N−エチルブチルアミノ基、N,N−エチルオクチルアミノ基、N,N−メチルシクロペンチルアミノ基、N,N−メチルシクロヘキシルアミノ基、N,N−メチルヘプチルアミノ基、N,N−エチルシクロペンチルアミノ基、N,N−エチルシクロヘキシルアミノ基、N,N−プロピルシクロペンチルアミノ基、N,N−プロピルシクロヘキシルアミノ基、N,N−ブチルシクロペンチルアミノ基、N,N−ブチルシクロヘキシルアミノ基、ジ(2−エチルヘキシル)アミノ基等が挙げられる。アミノ基に含まれる水素原子を置換するアルキル基の炭素数は、本発明の効果が好適に得られるという理由から、1〜15が好ましい。
【0038】
本明細書において、アラルキル置換アミノ基とは、アミノ基に含まれる水素原子がアラルキル基により置換されたアミノ基(モノアラルキル置換アミノ基、ジアラルキル置換アミノ基)をいい、ジアラルキル置換アミノ基が好ましい。
【0039】
及びRのアラルキル置換アミノ基としては、例えば、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基、ジトリチルアミノ基等が挙げられる。また、上述のアルキル置換アミノ基中のアルキル基にフェニル基などのアリール基が結合した基であってもよい。アミノ基に含まれる水素原子を置換するアラルキル基の炭素数は、本発明の効果が好適に得られるという理由から、7〜15が好ましく、7〜8がより好ましい。
【0040】
本明細書において、環状アミノ基とは、環内に1以上の窒素原子を有する環状のアミノ基をいう。環状アミノ基は、ヘテロ原子を含む官能基及び/又は芳香族置換基を有してもよい。
【0041】
本明細書において、ヘテロ原子を含む官能基とは、炭素原子以外の原子(例えば、酸素原子、窒素原子等)を含む官能基であり、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アセチル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。
【0042】
また、本明細書において、芳香族置換基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0043】
及びRの環状アミノ基としては、例えば、ピロリジル基、3−メチルピロリジル基、3−エチルピロリジル基、3−フェニルピロリジル基、3−ヒドロキシピロリジル基、2−メチルピロリジル基、2−エチルピロリジル基、2−フェニルピロリジル基、2−ヒドロキシピロリジル基、ピローリル基、3−アセチルピローリル基、3−メチルピローリル基、3−エチルピローリル基、3−ブチルピローリル基、2−アセチルピローリル基、2−メチルピローリル基、2−エチルピローリル基、2−ブチルピローリル基、イミダゾリル基、2−メチルイミダゾリル基、2−エチルイミダゾリル基、2−プロピルイミダゾリル基、2−ブチルイミダゾリル基、2−アセチルイミダゾリル基、2−フェニルイミダゾリル基、2−ベンジルイミダゾリル基、2−ヒドロキシルイミダゾリル基、2−アミノイミダゾリル基、2−クロロイミダゾリル基、2−ブロモイミダゾリル基、4−メチルイミダゾリル基、4−エチルイミダゾリル基、4−プロピルイミダゾリル基、4−ブチルイミダゾリル基、4−アセチルイミダゾリル基、4−フェニルイミダゾリル基、4−ベンジルイミダゾリル基、4−ヒドロキシルイミダゾリル基、4−アミノイミダゾリル基、4−クロロイミダゾリル基、4−ブロモイミダゾリル基、5−メチルイミダゾリル基、5−エチルイミダゾリル基、5−プロピルイミダゾリル基、5−ブチルイミダゾリル基、5−アセチルイミダゾリル基、5−フェニルイミダゾリル基、5−ベンジルイミダゾリル基、5−ヒドロキシルイミダゾリル基、5−アミノイミダゾリル基、5−クロロイミダゾリル基、5−ブロモイミダゾリル基、2,4−ジヒドロイミダゾリル基、2,5−ジヒドロイミダゾリル基、ピラゾリル基、5−メチルピラゾリル基、5−エチルピラゾリル基、5−プロピルピラゾリル基、5−ブチルピラゾリル基、5−アセチルピラゾリル基、5−フェニルピラゾリル基、5−ベンジルピラゾリル基、5−ヒドロキシルピラゾリル基、5−アミノピラゾリル基、5−クロロピラゾリル基、5−ブロモピラゾリル基、4−メチルピラゾリル基、4−エチルピラゾリル基、4−プロピルピラゾリル基、4−ブチルピラゾリル基、4−アセチルピラゾリル基、4−フェニルピラゾリル基、4−ベンジルピラゾリル基、4−ヒドロキシルピラゾリル基、4−アミノピラゾリル基、4−クロロピラゾリル基、4−ブロモピラゾリル基、3−メチルピラゾリル基、3−エチルピラゾリル基、3−プロピルピラゾリル基、3−ブチルピラゾリル基、3−アセチルピラゾリル基、3−フェニルピラゾリル基、3−ベンジルピラゾリル基、3−ヒドロキシルピラゾリル基、3−アミノピラゾリル基、3−クロロピラゾリル基、3−ブロモピラゾリル基、3,4−ジヒドロピラゾリル基、4,5−ジヒドロピラゾリル基、ピペリジニル基、2−メチルピペリジニル基、2−エチルピペリジニル基、2−プロピルピペリジニル基、2−ブチルピペリジニル基、2−アセチルピペリジニル基、2−フェニルピペリジニル基、2−ベンジルピペリジニル基、2−ヒドロキシルピペリジニル基、2−アミノピペリジニル基、2−クロロピペリジニル基、2−ブロモピペリジニル基、3−メチルピペリジニル基、3−エチルピペリジニル基、3−プロピルピペリジニル基、3−ブチルピペリジニル基、3−アセチルピペリジニル基、3−フェニルピペリジニル基、3−ベンジルピペリジニル基、3−ヒドロキシルピペリジニル基、3−アミノピペリジニル基、3−クロロピペリジニル基、3−ブロモピペリジニル基、4−メチルピペリジニル基、4−エチルピペリジニル基、4−プロピルピペリジニル基、4−ブチルピペリジニル基、4−アセチルピペリジニル基、4−フェニルピペリジニル基、4−ベンジルピペリジニル基、4−ヒドロキシルピペリジニル基、4−アミノピペリジニル基、4−クロロピペリジニル基、4−ブロモピペリジニル基、2,3−ジヒドロピペリジニル基、3,4−ジヒドロキシルピペリジニル基、ピペラジニル基、N−メチルピペラジニル基、2−メチルピペラジニル基、2−エチルピペラジニル基、2−プロピルピペラジニル基、2−ブチルピペラジニル基、2−アセチルピペラジニル基、2−フェニルピペラジニル基、2−ベンジルピペラジニル基、2−ヒドロキシルピペラジニル基、2−アミノピペラジニル基、2−クロロピペラジニル基、2−ブロモピペラジニル基、3−メチルピペラジニル基、3−エチルピペラジニル基、3−プロピルピペラジニル基、3−ブチルピペラジニル基、3−アセチルピペラジニル基、3−フェニルピペラジニル基、3−ベンジルピペラジニル基、3−ヒドロキシルピペラジニル基、3−アミノピペラジニル基、3−クロロピペラジニル基、3−ブロモピペラジニル基、2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−メチル−ピペラジニル基、N−メチル−2−メチルピペラジニル基、N−メチル−2−エチルピペラジニル基、N−メチル−2−プロピルピペラジニル基、N−メチル−2−ブチルピペラジニル基、N−メチル−2−アセチルピペラジニル基、N−メチル−2−フェニルピペラジニル基、N−メチル−2−ベンジルピペラジニル基、N−メチル−2−ヒドロキシルピペラジニル基、N−メチル−2−アミノピペラジニル基、N−メチル−2−クロロピペラジニル基、N−メチル−2−ブロモピペラジニル基、N−メチル−3−メチルピペラジニル基、N−メチル−3−エチルピペラジニル基、N−メチル−3−プロピルピペラジニル基、N−メチル−3−ブチルピペラジニル基、N−メチル−3−アセチルピペラジニル基、N−メチル−3−フェニルピペラジニル基、N−メチル−3−ベンジルピペラジニル基、N−メチル−3−ヒドロキシルピペラジニル基、N−メチル−3−アミノピペラジニル基、N−メチル−3−クロロピペラジニル基、N−メチル−3−ブロモピペラジニル基、N−メチル−2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−エチル−ピペラジニル基、N−エチル−2−メチルピペラジニル基、N−エチル−2−エチルピペラジニル基、N−エチル−2−プロピルピペラジニル基、N−エチル−2−ブチルピペラジニル基、N−エチル−2−アセチルピペラジニル基、N−エチル−2−フェニルピペラジニル基、N−エチル−2−ベンジルピペラジニル基、N−エチル−2−ヒドロキシルピペラジニル基、N−エチル−2−アミノピペラジニル基、N−エチル−2−クロロピペラジニル基、N−エチル−2−ブロモピペラジニル基、N−エチル−3−メチルピペラジニル基、N−エチル−3−エチルピペラジニル基、N−エチル−3−プロピルピペラジニル基、N−エチル−3−ブチルピペラジニル基、N−エチル−3−アセチルピペラジニル基、N−エチル−3−フェニルピペラジニル基、N−エチル−3−ベンジルピペラジニル基、N−エチル−3−ヒドロキシルピペラジニル基、N−エチル−3−アミノピペラジニル基、N−エチル−3−クロロピペラジニル基、N−エチル−3−ブロモピペラジニル基、2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−フェニル−ピペラジニル基、N−フェニル−2−メチルピペラジニル基、N−フェニル−2−エチルピペラジニル基、N−フェニル−2−プロピルピペラジニル基、N−フェニル−2−ブチルピペラジニル基、N−フェニル−2−アセチルピペラジニル基、N−フェニル−2−フェニルピペラジニル基、N−フェニル−2−ベンジルピペラジニル基、N−フェニル−2−ヒドロキシルピペラジニル基、N−フェニル−2−アミノピペラジニル基、N−フェニル−2−クロロピペラジニル基、N−フェニル−2−ブロモピペラジニル基、N−フェニル−3−メチルピペラジニル基、N−フェニル−3−エチルピペラジニル基、N−フェニル−3−プロピルピペラジニル基、N−フェニル−3−ブチルピペラジニル基、N−フェニル−3−アセチルピペラジニル基、N−フェニル−3−フェニルピペラジニル基、N−フェニル−3−ベンジルピペラジニル基、N−フェニル−3−ヒドロキシルピペラジニル基、N−フェニル−3−アミノピペラジニル基、N−フェニル−3−クロロピペラジニル基、N−フェニル−3−ブロモピペラジニル基、N−フェニル−2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−ベンゾイル−ピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−メチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−エチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−プロピルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−ブチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−アセチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−フェニルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−ベンジルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−ヒドロキシルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−アミノピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−クロロピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−ブロモピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−メチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−エチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−プロピルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−ブチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−アセチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−フェニルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−ベンジルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−ヒドロキシルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−アミノピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−クロロピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−ブロモピペラジニル基、N−ベンゾイル−2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−アセチルフェニルピペラジニル基、テトラヒドロキノリノ基、テトラヒドロイソキノリノ基、スクシンイミジル基、モルホリル基等が挙げられる。
【0044】
及びRとしては、上記アルキル置換アミノ基、アラルキル置換アミノ基、環状アミノ基のなかでも、イミダゾリル基、2−メチルイミダゾリル基、2−エチルイミダゾリル基、2−プロピルイミダゾリル基、2−ブチルイミダゾリル基、2−アセチルイミダゾリル基、2−フェニルイミダゾリル基、2−ベンジルイミダゾリル基、2−ヒドロキシルイミダゾリル基、2−アミノイミダゾリル基、2−クロロイミダゾリル基、2−ブロモイミダゾリル基、4−メチルイミダゾリル基、4−エチルイミダゾリル基、4−プロピルイミダゾリル基、4−ブチルイミダゾリル基、4−アセチルイミダゾリル基、4−フェニルイミダゾリル基、4−ベンジルイミダゾリル基、4−ヒドロキシルイミダゾリル基、4−アミノイミダゾリル基、4−クロロイミダゾリル基、4−ブロモイミダゾリル基、5−メチルイミダゾリル基、5−エチルイミダゾリル基、5−プロピルイミダゾリル基、5−ブチルイミダゾリル基、5−アセチルイミダゾリル基、5−フェニルイミダゾリル基、5−ベンジルイミダゾリル基、5−ヒドロキシルイミダゾリル基、5−アミノイミダゾリル基、5−クロロイミダゾリル基、5−ブロモイミダゾリル基、2,4−ジヒドロイミダゾリル基、2,5−ジヒドロイミダゾリル基、ピラゾリル基、5−メチルピラゾリル基、5−エチルピラゾリル基、5−プロピルピラゾリル基、5−ブチルピラゾリル基、5−アセチルピラゾリル基、5−フェニルピラゾリル基、5−ベンジルピラゾリル基、5−ヒドロキシルピラゾリル基、5−アミノピラゾリル基、5−クロロピラゾリル基、5−ブロモピラゾリル基、4−メチルピラゾリル基、4−エチルピラゾリル基、4−プロピルピラゾリル基、4−ブチルピラゾリル基、4−アセチルピラゾリル基、4−フェニルピラゾリル基、4−ベンジルピラゾリル基、4−ヒドロキシルピラゾリル基、4−アミノピラゾリル基、4−クロロピラゾリル基、4−ブロモピラゾリル基、3−メチルピラゾリル基、3−エチルピラゾリル基、3−プロピルピラゾリル基、3−ブチルピラゾリル基、3−アセチルピラゾリル基、3−フェニルピラゾリル基、3−ベンジルピラゾリル基、3−ヒドロキシルピラゾリル基、3−アミノピラゾリル基、3−クロロピラゾリル基、3−ブロモピラゾリル基、3,4−ジヒドロピラゾリル基、4,5−ジヒドロピラゾリル基、ピペラジニル基、2−メチルピペラジニル基、2−エチルピペラジニル基、2−プロピルピペラジニル基、2−ブチルピペラジニル基、2−アセチルピペラジニル基、2−フェニルピペラジニル基、2−ベンジルピペラジニル基、2−ヒドロキシルピペラジニル基、2−アミノピペラジニル基、2−クロロピペラジニル基、2−ブロモピペラジニル基、3−メチルピペラジニル基、3−エチルピペラジニル基、3−プロピルピペラジニル基、3−ブチルピペラジニル基、3−アセチルピペラジニル基、3−フェニルピペラジニル基、3−ベンジルピペラジニル基、3−ヒドロキシルピペラジニル基、3−アミノピペラジニル基、3−クロロピペラジニル基、3−ブロモピペラジニル基、2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−メチル−ピペラジニル基、N−メチル−2−メチルピペラジニル基、N−メチル−2−エチルピペラジニル基、N−メチル−2−プロピルピペラジニル基、N−メチル−2−ブチルピペラジニル基、N−メチル−2−アセチルピペラジニル基、N−メチル−2−フェニルピペラジニル基、N−メチル−2−ベンジルピペラジニル基、N−メチル−2−ヒドロキシルピペラジニル基、N−メチル−2−アミノピペラジニル基、N−メチル−2−クロロピペラジニル基、N−メチル−2−ブロモピペラジニル基、N−メチル−3−メチルピペラジニル基、N−メチル−3−エチルピペラジニル基、N−メチル−3−プロピルピペラジニル基、N−メチル−3−ブチルピペラジニル基、N−メチル−3−アセチルピペラジニル基、N−メチル−3−フェニルピペラジニル基、N−メチル−3−ベンジルピペラジニル基、N−メチル−3−ヒドロキシルピペラジニル基、N−メチル−3−アミノピペラジニル基、N−メチル−3−クロロピペラジニル基、N−メチル−3−ブロモピペラジニル基、N−メチル−2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−エチル−ピペラジニル基、N−エチル−2−メチルピペラジニル基、N−エチル−2−エチルピペラジニル基、N−エチル−2−プロピルピペラジニル基、N−エチル−2−ブチルピペラジニル基、N−エチル−2−アセチルピペラジニル基、N−エチル−2−フェニルピペラジニル基、N−エチル−2−ベンジルピペラジニル基、N−エチル−2−ヒドロキシルピペラジニル基、N−エチル−2−アミノピペラジニル基、N−エチル−2−クロロピペラジニル基、N−エチル−2−ブロモピペラジニル基、N−エチル−3−メチルピペラジニル基、N−エチル−3−エチルピペラジニル基、N−エチル−3−プロピルピペラジニル基、N−エチル−3−ブチルピペラジニル基、N−エチル−3−アセチルピペラジニル基、N−エチル−3−フェニルピペラジニル基、N−エチル−3−ベンジルピペラジニル基、N−エチル−3−ヒドロキシルピペラジニル基、N−エチル−3−アミノピペラジニル基、N−エチル−3−クロロピペラジニル基、N−エチル−3−ブロモピペラジニル基、2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−フェニル−ピペラジニル基、N−フェニル−2−メチルピペラジニル基、N−フェニル−2−エチルピペラジニル基、N−フェニル−2−プロピルピペラジニル基、N−フェニル−2−ブチルピペラジニル基、N−フェニル−2−アセチルピペラジニル基、N−フェニル−2−フェニルピペラジニル基、N−フェニル−2−ベンジルピペラジニル基、N−フェニル−2−ヒドロキシルピペラジニル基、N−フェニル−2−アミノピペラジニル基、N−フェニル−2−クロロピペラジニル基、N−フェニル−2−ブロモピペラジニル基、N−フェニル−3−メチルピペラジニル基、N−フェニル−3−エチルピペラジニル基、N−フェニル−3−プロピルピペラジニル基、N−フェニル−3−ブチルピペラジニル基、N−フェニル−3−アセチルピペラジニル基、N−フェニル−3−フェニルピペラジニル基、N−フェニル−3−ベンジルピペラジニル基、N−フェニル−3−ヒドロキシルピペラジニル基、N−フェニル−3−アミノピペラジニル基、N−フェニル−3−クロロピペラジニル基、N−フェニル−3−ブロモピペラジニル基、N−フェニル−2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−ベンゾイル−ピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−メチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−エチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−プロピルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−ブチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−アセチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−フェニルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−ベンジルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−ヒドロキシルピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−アミノピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−クロロピペラジニル基、N−ベンゾイル−2−ブロモピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−メチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−エチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−プロピルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−ブチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−アセチルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−フェニルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−ベンジルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−ヒドロキシルピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−アミノピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−クロロピペラジニル基、N−ベンゾイル−3−ブロモピペラジニル基、N−ベンゾイル−2,3−ジヒドロキシルピペラジニル基、N−アセチルフェニルピペラジニル基、ジn−ブチルアミノ基、ジデシルアミノ基、ピロリジル基、モルホリル基、N−メチルピペラジニル基、ジベンジルアミノ基が好ましく、ジベンジルアミノ基、ピロリジル基、N−メチルピペラジニル基がより好ましい。
なかでも、加硫速度においてより優位性が得られるという理由から、環状アミノ基が更に好ましく、ヘテロ原子を含む官能基若しくは芳香族置換基を有している環状アミノ基、1以上のヘテロ原子をその環内に含む環状アミノ基が特に好ましい。また、環状アミノ基としては、加硫速度において更なる優位性が得られるという理由から、下記式(II)で表される基が最も好ましい。
【0045】
【化5】

(式(II)において、Rは、ヘテロ原子を含む炭素数1〜15の炭化水素基であり、ヘテロ原子を含む官能基及び/又は芳香族置換基を有してもよい。)
【0046】
上記式(II)で表される化合物中のRの炭素数は、1以上であり、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。また、Rの炭素数は、15以下であり、10以下であることが好ましい。炭素数が15を超えるとコストが高くなる傾向がある。
【0047】
の炭化水素基としては、例えば、上記Aの炭化水素基と同様の基の一以上の炭素原子がヘテロ原子に置換した基、上記Aの炭化水素基と同様の基の1以上のメチレン基に、アミノ基等のヘテロ原子団や酸素原子等のヘテロ原子が結合した基、上記Aの炭化水素基と同様の基の一以上の炭素原子がヘテロ原子に置換した基の1以上のメチレン基に、アミノ基等のヘテロ原子団や酸素原子等のヘテロ原子が結合した基等が挙げられる。
【0048】
上記式(II)で表される基としては、例えば、上記ピペラジニル基およびその誘導体(例えば、N−メチル−ピペラジニル基、N−メチル−2−メチルピペラジニル基等)、モルホリル基等が挙げられる。なかでも、原料が比較的安価であるという理由から、N−メチル−ピペラジニル基、モルホリル基が好ましい。
【0049】
上記式(I)で表される化合物中のnは、12以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。12を超えると、コストが高くなる傾向がある。また、nは、1以上である。n=0であると、ウェットグリップ性能、耐熱性(熱ダレ性能)、耐摩耗性の向上効果が充分に得られないおそれがある。
【0050】
本発明では、上記式(I)で表される化合物として、nが同一の化合物のみを配合した場合よりも、nが異なる複数の上記式(I)で表される化合物を配合した場合の方が、各性能の改善効果をより高めることができる。
【0051】
上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=1の化合物の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。2質量%未満であると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=1の化合物の含有量は、好ましくは96質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。96質量%を超えると、配合コストが上昇してしまう傾向がある。
【0052】
上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=2の化合物の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。2質量%未満であると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=2の化合物の含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。80質量%を超えると、配合コストが上昇してしまう傾向がある。
【0053】
上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=3の化合物の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。2質量%未満であると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=3の化合物の含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、配合コストが上昇してしまう傾向がある。
【0054】
上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=2以下の化合物の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。また、配合コストが上昇してしまう傾向がある。また、上記式(I)で表される化合物100質量%中、n=2以下の化合物の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。10質量%未満であると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0055】
上記式(I)で表される化合物中のxは、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。12を超えると、耐熱性(熱ダレ性能)が悪化するおそれがある。また、xは、好ましくは1以上である。x=0であると、ウェットグリップ性能、耐熱性(熱ダレ性能)及び耐摩耗性の向上効果が充分に得られないおそれがある。
【0056】
上記式(I)で表される化合物中のxは、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。12を超えると、耐熱性(熱ダレ性能)が悪化するおそれがある。また、xは、好ましくは1以上である。x=0であると、ウェットグリップ性能、耐熱性(熱ダレ性能)及び耐摩耗性の向上効果が充分に得られないおそれがある。
【0057】
上記式(I)で表される化合物100質量%中、x及びx=1である化合物の含有量は、好ましくは80質量%以上である。80質量%未満であると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、上記式(I)で表される化合物100質量%中、x及びx=1である化合物の含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。90質量%を超えると、配合コストが上昇してしまう傾向がある。
【0058】
上記式(I)で表される化合物100質量%中、x及びx=2である化合物の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、上記式(I)で表される化合物100質量%中、x及びx=2である化合物の含有量は、好ましくは20質量%以下である。20質量%を超えると、配合コストが上昇してしまう傾向がある。
【0059】
上記式(I)で表される化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは3.0質量部以上である。0.1質量部未満では、上記式(I)で表される化合物を配合したことにより得られる効果が充分に得られないおそれがある。また、上記式(I)で表される化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下である。10質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0060】
本発明では、下記式(T)で表される化合物が使用される。下記式(T)で表される化合物は、いわゆるチウラム系加硫促進剤である。
【化6】

(式(T)において、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル置換アミノ基、アラルキル置換アミノ基、又は環状アミノ基を表す。xは、1〜4の整数を表す。)
【0061】
上記式(T)におけるR及びRのアルキル置換アミノ基としては、上記R及びRのアルキル置換アミノ基と同様の基が挙げられる。アミノ基に含まれる水素原子を置換するアルキル基の炭素数は、本発明の効果が好適に得られるという理由から、1〜30が好ましく、1〜10がより好ましい。
【0062】
上記式(T)におけるR及びRのアラルキル置換アミノ基としては、上記R及びRのアラルキル置換アミノ基と同様の基が挙げられる。アミノ基に含まれる水素原子を置換するアラルキル基の炭素数は、本発明の効果が好適に得られるという理由から、7〜20が好ましく、7〜8がより好ましい。
【0063】
上記式(T)におけるR及びRの環状アミノ基としては、上記R及びRの環状アミノ基と同様の基が挙げられる。
【0064】
及びRとしては、上記アルキル置換アミノ基、アラルキル置換アミノ基、環状アミノ基のなかでも、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジsec−ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジtert−ブチルアミノ基、ピペリジニル基、ジベンジルアミノ基、ジ(2−エチルヘキシル)アミノ基が好ましく、ピペリジニル基、ジベンジルアミノ基、ジ(2−エチルヘキシル)アミノ基がより好ましく、ピペリジニル基が更に好ましい。
【0065】
上記式(T)で表される化合物中のxは、4以下、より好ましくは3以下である。4を超えると、モノスルフィド架橋比率が低下し、充分な熱ダレ性能が得られないおそれがある。また、xは、1以上である。x=0であると、ウェットグリップ性能、耐熱性(熱ダレ性能)、耐摩耗性の向上効果が充分に得られないおそれがある。
【0066】
上記式(T)で表される化合物としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィドなどが挙げられる。
【0067】
上記式(T)で表される化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。0.1質量部未満では、上記式(T)で表される化合物を配合したことにより得られる効果が充分に得られないおそれがある。また、上記式(T)で表される化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。5.0質量部を超えると、加硫速度が速くなり過ぎて、スコーチするおそれがある。
【0068】
耐熱性に劣るポリスルフィド架橋の生成を好適に低減でき、ウェットグリップ性能、耐熱性(熱ダレ性能)、耐摩耗性をより好適に得られるという理由から、本発明のゴム組成物には、加硫剤として硫黄を実質的に配合しないことが好ましい。
ここで、硫黄とは、タイヤ工業において一般的に用いられる加硫剤用硫黄を意味し、上記式(I)で表される化合物、上記式(T)で表される化合物中に含まれる硫黄原子を意味するものではない。上記加硫剤用硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。
加硫剤用硫黄の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下、更に好ましくは0.001質量部以下、最も好ましくは0質量部(配合しない)である。硫黄を配合すると、ウェットグリップ性能、熱ダレ性能、耐摩耗性(特に、熱ダレ性能、耐摩耗性)が低下する。
【0069】
本発明では、下記式(M)で表わされる無機化合物が使用される。
kM・xSiO・zHO (M)
(式(M)において、MはAl、Mg、TiおよびCaからなる群より選ばれた少なくとも1つの金属、該金属の酸化物または水酸化物であり、kは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、zは0〜10の整数である。)
【0070】
上記式(M)で表される無機化合物としては、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、チタン白、チタン黒、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウムマグネシウム、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸マグネシウムなどがあげられる。これらの無機化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの無機化合物のうち、ウェットグリップ性能をより向上させるという点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、アルミナ、アルミナ水和物が好ましく、水酸化アルミニウムがより好ましい。
【0071】
上記無機化合物の平均一次粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上である。0.5μm未満では、上記無機化合物の分散が困難となり、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該平均一次粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。10μmを超えると、上記無機化合物が破壊核となり、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、上記無機化合物の平均一次粒子径は数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0072】
上記無機化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満では、ウェットグリップ性能の改善効果が小さいおそれがある。また、該上記無機化合物の含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。30質量部を超えると、分散不良が発生し、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0073】
本発明のゴム組成物は、シリカを使用することが好ましい。これにより、ウェットグリップ性能を向上でき、また、耐摩耗性や操縦安定性の改善効果も得られる。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。なかでも、湿式法シリカが好ましい。
【0074】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは70m/g以上、より好ましくは120m/g以上である。70m/g未満では、充分な補強性が得らず、充分な耐摩耗性が得られない傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。250m/gを超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化する傾向がある。また、分散性が悪化し、耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0075】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。30質量部未満であると、充分なウェットグリップ性能の改善効果が得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。80質量部を超えると、分散性が悪化し、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0076】
本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0077】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは8質量部以上、より好ましくは12質量部以上である。8質量部未満では、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。40質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0078】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを使用することが好ましい。これにより、ウェットグリップ性能を向上でき、また、耐摩耗性や操縦安定性の改善効果も得られる。カーボンブラックとしては、例えば、GPF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものを用いることができる。
【0079】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。NSAが50m/g未満では、充分な耐摩耗性、ウェットグリップ性能が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは好ましくは200m/g以下、より好ましくは160m/g以下である。NSAが200m/gを超えると、カーボンブラックの分散性が悪く、耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0080】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。10質量部未満では、充分な耐摩耗性、ウェットグリップ性能が得られない傾向がある。また、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、加工性やカーボンブラックの分散性が悪く、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0081】
また、水酸化アルミニウム、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは75質量部以上である。50質量部未満では、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、熱ダレ性能及び操縦安定性がバランス良く得られないおそれがある。また、該合計含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。200質量部を超えると、耐摩耗性や操縦安定性が低下するおそれがある。
【0082】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、粘着付与剤、芳香族系石油樹脂、ワックス、軟化剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0083】
本発明で使用できる軟化剤としては、特に限定するものではないが、例えば、オイルであればアロマチックオイル、プロセスオイル、パラフィンオイル等の鉱物油が挙げられる。また、軟化剤としては、耐熱性(熱ダレ性能)とウェットグリップ性能のバランスに優れるという点から、液状ジエン系重合体を軟化剤として使用することがより好ましい。これら軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
液状ジエン系重合体は、液体状態のジエン系重合体であれば特に限定されず、例えば、液状のスチレンブタジエン共重合体(ゴム)、ブタジエン重合体(ゴム)、イソプレン重合体(ゴム)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(ゴム)等が挙げられる。なかでも、耐熱性(熱ダレ性能)とウェットグリップ性能がバランスよく得られるという理由から、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)が好ましい。
【0085】
液状ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上である。Mwが2000未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、液状ジエン系重合体のMwは好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、更に好ましくは15000以下である。Mwが50000を超えると、ゴム成分との分子量の差が小さくなり、可塑剤としての効果が発揮されにくい傾向がある。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた値である。
【0086】
液状ジエン系重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。20質量部未満では、充分なウェットグリップ性能が得られない傾向がある。また、液状ジエン系重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは120質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。120質量部を超えると、モジュラスが大幅に低下するおそれがある。
【0087】
本発明では、本発明の効果が好適に得られるという理由から、鉱物油の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは10〜30質量部である。
【0088】
本発明では、本発明の効果が好適に得られるという理由から、芳香族系石油樹脂を配合することが好ましい。芳香族系石油樹脂としては、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、ロジン樹脂、DCPD樹脂などがあげられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、クマロンインデン樹脂が好ましい。
【0089】
クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0090】
芳香族系石油樹脂の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。70℃未満であると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、該軟化点は、好ましくは170℃以下、より好ましくは140℃以下である。170℃を超えると、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。
なお、芳香族系石油樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0091】
芳香族系石油樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、ウェットグリップ性能の改善効果が充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは25質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。25質量部を超えると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。また、温度依存性が増大し、温度変化に対する性能変化が大きくなる傾向がある。
【0092】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。該ゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッドに好適に使用できる。
【0093】
本発明のゴム組成物(加硫後)は、粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度0℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で測定したtanδが0.35〜0.8であることが好ましく、0.4〜0.6であることがより好ましい。tanδが上記範囲内であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。
【0094】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0095】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として用いられ、特に、高性能タイヤとして好適に用いられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
【実施例】
【0096】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0097】
以下に、化合物の合成で使用した薬品についてまとめて説明する。
Duralink HTS:Flexsys社製のDuralink HTS(ヘキサメチレン−1,6−ビス(チオスルフェイト)2ナトリウム塩2水和物)
ピロリジン:東京化成工業(株)製
モルホリン:東京化成工業(株)製
N−メチルピペラジン:東京化成工業(株)製
ジベンジルアミン:東京化成工業(株)製
炭酸水素ナトリウム:東京化成工業(株)製
水酸化ナトリウム:東京化成工業(株)製
二硫化炭素:和光純薬工業(株)製
エタノール:和光純薬工業(株)製
ホルムアルデヒド:和光純薬工業(株)製
チオ硫酸ナトリウム5水和物:和光純薬工業(株)製
クロロホルム:和光純薬工業(株)製
酢酸ナトリウム:関東化学(株)製
硫酸マグネシウム:和光純薬工業(株)製
【0098】
(化合物の分析及び分離)
化合物の構造は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置、及び(株)島津製作所製のLC/MS(逆相カラム、溶出液:水/アセトニトリル)を用いて分析した。分析結果は表1に記載した。また、化合物の分離は、(株)島津製作所製のHPLC(逆相カラム、溶出液:水/アセトニトリル)を用いて行った。
【0099】
(合成例1)
三ツ口フラスコにジベンジルアミン78.9g、水酸化ナトリウム16g(0.4mol)、炭酸水素ナトリウム2g(0.02mmol)を含む水溶液をいれ、室温下で撹拌しながら、二硫化炭素60.9g(0.8mol)を滴下した。滴下後、反応混合物を40℃で2時間撹拌した後、室温に戻し、Duralink HTS78.1g、酢酸ナトリウム27.2g(0.2mol)、35%ホルムアルデヒド4g(0.05mol)を含む水溶液を滴下した。反応混合物を室温で20時間撹拌後、クロロホルムにて抽出し、溶媒を留去して生成物(下記式(A)で表される化合物を複数種含む混合物)(化合物1)を得た。
【化7】

【0100】
(合成例2)
Duralink HTSを156.2g、酢酸ナトリウムを54.4gにした以外は合成例1と同様にして合成を行った。生成物は上記式(A)で表される化合物を複数種含む混合物(化合物2)であった。
【0101】
(合成例3)
Duralink HTSを234.3g、酢酸ナトリウムを81.6gにした以外は合成例1と同様にして合成を行った。生成物は上記式(A)で表される化合物を複数種含む混合物(化合物3)であった。
【0102】
(合成例4)
三ツ口フラスコにピロリジン28.4g(0.4mol)、水酸化ナトリウム16g(0.4mol)、炭酸水素ナトリウム2g(0.02mmol)を含む水溶液をいれ、室温下で撹拌しながら、二硫化炭素60.9g(0.8mol)を滴下した。滴下後、反応混合物を40℃で2時間撹拌した後、室温に戻し、Duralink HTS79.1g(0.2mol)、酢酸ナトリウム27.2g(0.2mol)、35%ホルムアルデヒド4g(0.05mol)を含む水溶液を滴下した。反応混合物を室温で20時間撹拌後、クロロホルムにて抽出し、溶媒を留去して生成物(下記式(B)で表される化合物を複数種含む混合物)(化合物4)を得た。
【化8】

【0103】
(合成例5)
Duralink HTSを156.2g、酢酸ナトリウムを54.4gにした以外は合成例4と同様にして合成を行った。生成物は上記式(B)で表される化合物を複数種含む混合物(化合物5)であった。
【0104】
(合成例6)
ピロリジンの代わりにN−メチルピペラジン40.1gを使用し、Duralink HTSを234.3g、酢酸ナトリウムを81.6gにした以外は合成例4と同様にして合成を行った。生成物は下記式(C)で表される化合物を複数種含む混合物(化合物6)であった。
【化9】

【0105】
【表1】

【0106】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol9548(E−SBR、スチレン含有量:35質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有(表2、3に示す量はゴム固形分の量))
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシースト9SAF(NSA:142m/g)
液状SBR:サートマー社製のRICON100(Mw:5000)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
レジン:日塗化学(株)製のエスクロンG90(クマロンインデン樹脂、軟化点:90℃)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
シリカ:日本シリカ工業(株)製のニプシルVN3(NSA:175m/g)
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製のハイジライトH−43(平均一次粒子径:1μm)
シランカップリング剤:デグッサ(株)製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
KA9188:ランクセス社製のKA9188(1,6ービス(ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)
化合物1〜6:上記合成例1〜6で得られた化合物1〜6
TRA:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTRA(ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(加硫促進剤))
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(加硫促進剤))
【0107】
実施例及び比較例
表2及び3に示す配合処方にしたがい、1.7Lのバンバリーミキサーを用いて、加硫剤(合成例1〜6で得られた生成物、硫黄)および加硫促進剤以外のものを130℃で5分間混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に加硫剤および加硫促進剤を添加して120℃で2分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃の条件下で30分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、150℃の条件下で30分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を得た。
【0108】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表2及び3に示す。なお、表2、3の基準比較例をそれぞれ比較例1、7とした。
【0109】
(ウェットグリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行なった。その際における、操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、基準比較例を100として指数表示をした。数値が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0110】
(熱ダレ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行なった。その際に、走行3周目における操舵時のコントロールの安定性と、走行10周目における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが比較評価し、基準比較例を100として指数表示をした。数値が大きいほどドライ路面における熱ダレ性能(グリップ性能の持続性)に優れることを示す。
基準比較例の熱ダレ性能=(基準比較例の10周目の操舵時のコントロール安定性)/(基準比較例の3周目の操舵時のコントロール安定性)
熱ダレ性能=((各例の10周目の操舵時のコントロール安定性)/(各例の3周目の操舵時のコントロール安定性))/(基準比較例の熱ダレ性能)×100
【0111】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行なった。その際におけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時15mm)、耐摩耗性として評価した。残溝量が多いほど、耐摩耗性に優れる。基準比較例の残溝量を100として指数表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0112】
(tanδ)
上記加硫ゴム組成物からなるゴムスラブシート(2mm×130mm×130mm)から測定用試験片を切り出し、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度0℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、測定用試験片のtanδを測定した。
【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
上記式(I)で表される化合物と、上記式(T)で表される化合物と、上記式(M)で表わされる無機化合物とを含む実施例は、ウェットグリップ性能、熱ダレ性能(グリップ性能の持続性)、耐摩耗性がバランスよく得られた。
【0116】
実施例1と実施例2〜4、実施例5と実施例6〜8の比較より、上記式(I)で表される化合物として、nが同一の化合物のみを配合した場合よりも、nが異なる複数の上記式(I)で表される化合物を配合した場合の方が、各性能の改善効果をより高めることができることが分かった。
【0117】
比較例1、5、6、実施例1の比較、比較例7、11、12、実施例5の比較により、上記式(I)で表される化合物と、上記式(T)で表される化合物と、上記式(M)で表わされる無機化合物とを併用することにより、ウェットグリップ性能、耐摩耗性という背反する性能を同時に改善できるだけではなく、相乗的に改善でき、従来技術では達成できなかった、ウェットグリップ性能、熱ダレ性能、耐摩耗性をバランスよく得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物と、下記式(T)で表される化合物と、下記式(M)で表わされる無機化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式(I)において、Aは炭素数1〜15の炭化水素基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル置換アミノ基、アラルキル置換アミノ基、又は環状アミノ基を表す。nは1〜12の整数を表す。x及びxは、同一若しくは異なって、1〜12の整数を表す。)
【化2】

(式(T)において、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル置換アミノ基、アラルキル置換アミノ基、又は環状アミノ基を表す。xは、1〜4の整数を表す。)
kM・xSiO・zHO (M)
(式(M)において、MはAl、Mg、TiおよびCaからなる群より選ばれた少なくとも1つの金属、該金属の酸化物または水酸化物であり、kは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、zは0〜10の整数である。)
【請求項2】
前記式(I)のAが炭素数4〜12のアルキレン基である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記式(I)の環状アミノ基が下記式(II)で表される基である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化3】

(式(II)において、Rは、ヘテロ原子を含む炭素数1〜15の炭化水素基であり、ヘテロ原子を含む官能基及び/又は芳香族置換基を有してもよい。)
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物100質量%中、n=1の化合物の含有量が2質量%以上、n=2の化合物の含有量が2質量%以上、n=3の化合物の含有量が2質量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記式(I)で表される化合物100質量%中、n=2以下の化合物の含有量が50質量%以下、x及びx=1の化合物の含有量が80質量%以上、x及びx=2の化合物の含有量が10質量%以上である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
ゴム成分100質量部に対して、加硫剤としての硫黄の配合量が0.05質量部以下である請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記無機化合物の平均一次粒子径が10μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記無機化合物が水酸化アルミニウムである請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
ゴム成分100質量部に対して、前記無機化合物を5〜30質量部、カーボンブラックを10〜50質量部、シリカを30〜80質量部含む請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
ゴム成分100質量部に対して、前記式(I)で表される化合物を0.1〜10質量部、前記式(T)で表される化合物を0.1〜5質量部含む請求項1〜9のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度0℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で測定したtanδが0.35〜0.8である請求項1〜10のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項12】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜11のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【請求項14】
高性能タイヤである請求項13記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−18814(P2013−18814A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151080(P2011−151080)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】