説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】石油資源依存度を充分に低減しつつ、操縦安定性、低燃費性、加工性を向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(例えば、ビードエイペックス)に用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分と、天然由来のフェノール樹脂とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、石油資源由来の原料の使用量を低減するための方法が種々の技術分野で検討されている。現在一般的に市販されているタイヤは、例えば、合成ゴム約20質量%、カーボンブラック約20質量%、その他にも軟化剤、合成繊維などを含んでいるため、タイヤ全体の約50質量%以上が石油資源由来の原料から構成されている。石油資源由来の原料への依存度を減らすこと、タイヤの低燃費性を向上させることは、タイヤにとって重要な環境技術開発であるといえる。
【0003】
一方、自動車の性能向上に伴い、タイヤにおいても高い操縦安定性が要求されるようになってきている。高い操縦安定性を有するタイヤを得るためには、ビードエイペックスゴムの硬度を向上させる必要がある。ビードエイペックスゴムの硬度を向上させるために、多量のカーボンブラック等の補強用充填剤を配合すると、加工性や低燃費性が悪化するという問題が生じる。そこで、この問題を解決するものとして、フェノール樹脂等を配合したビードエイペックス用ゴム組成物が開発されている。
【0004】
特許文献1、2には、熱硬化性フェノール樹脂やリグノフェノール誘導体をゴム補強成分として使用したゴム組成物、およびこれを用いた空気入りタイヤについて開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の熱硬化性フェノール樹脂や特許文献2に記載のリグノフェノール誘導体の合成原料の一部に石油資源由来の原料が使用されており、石油資源依存度の観点からは、改善の余地がある。
【0005】
また、特許文献2のリグノフェノール誘導体については、70℃付近でのtanδ(損失正接)を低く抑えつつE*(複素弾性率)を向上させることで、転がり抵抗を増大させることなく操縦安定性を改善できることが記載されている。しかし、汎用の熱硬化性フェノール樹脂に比べて、ゴムの硬度、操縦安定性はかなり低いレベルであり、リグノフェノール誘導体によるゴムの硬度、剛性を高める効果は十分とはいえない。
【0006】
以上のように、従来の技術では、石油資源依存度を充分に低減しつつ、操縦安定性、低燃費性を向上する点については、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−68240号公報
【特許文献2】特開2008−285626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、石油資源依存度を充分に低減しつつ、操縦安定性、低燃費性、加工性を向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(例えば、ビードエイペックス)に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ゴム成分と、天然由来のフェノール樹脂とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0010】
上記フェノール樹脂が植物由来フェノール類とアルデヒド類から誘導されたものであることが好ましい。
【0011】
上記ゴム成分が、天然ゴム、改質天然ゴム、合成ゴム及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0012】
上記フェノール樹脂の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましい。
【0013】
上記タイヤ用ゴム組成物は、硬化促進用の触媒を含むことが好ましい。
【0014】
上記硬化促進用の触媒がヘキサメチレンテトラミンであることが好ましい。
【0015】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ビードエイペックス用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゴム成分と、天然由来のフェノール樹脂とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、石油資源依存度を充分に低減しつつ、操縦安定性、低燃費性、加工性を向上できる。よって、該ゴム組成物をタイヤの各部材(例えば、ビードエイペックス)に使用することにより、石油資源依存度を充分に低減しつつ、操縦安定性、低燃費性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、天然由来のフェノール樹脂とを含む。
【0019】
本発明では、従来の石油資源由来原料を含む原料から誘導されたフェノール樹脂に代えて、天然由来のフェノール樹脂を使用している。これにより、石油由来資源の使用量を減らすことができるだけでなく、剛性(硬度)が高く、発熱性が低く、加工性に優れたゴム組成物を提供でき、該ゴム組成物をタイヤの各部材(例えば、ビードエイペックス)に使用することにより、石油資源依存度を充分に低減しつつ、操縦安定性、低燃費性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【0020】
ゴム成分は、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム、合成ゴム及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記改質天然ゴムとしては、例えば、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴム等が挙げられる。
上記合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等のジエン系ゴムや、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
上記変性合成ゴムとしては、例えば、上記合成ゴムの末端を有機ケイ素化合物等で変性したゴム等が挙げられる。
これらのゴム成分は、単独で使用してもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。ブレンドする場合のブレンド比においても、各種用途に応じて適宜配合すればよい。なかでも、石油資源依存度を低減でき、操縦安定性、低燃費性、加工性を向上できるという理由から、NR、ENR、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴム、石油資源以外から合成されたBRが好ましい。
【0021】
ゴム成分100質量%中のNRと改質天然ゴムの合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。60質量%未満であると、石油資源依存度を充分に低減できないおそれがある。また、操縦安定性、低燃費性、加工性を充分に向上できないおそれがある。
【0022】
本発明では、天然由来のフェノール樹脂(以下、単にフェノール樹脂ともいう)が使用される。フェノール樹脂が天然由来か否かはC14の量を定量する方法(ASTM−D6866)等により確認できる。
天然由来のフェノール樹脂は、植物由来フェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒下で反応させることで得られるフェノール樹脂(固形レゾール型フェノール樹脂)である。また、フェノール樹脂は、カシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、ロジンなどの化合物を用いて変性させたものでもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
植物由来フェノール類としては、カシューナット殻液(CNSL)や、カシューオイル、カルダノール、ウルシオールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、不純物が少なく、入手容易な点でカルダノールが好ましい。
【0024】
アルデヒド類としては、植物由来アルデヒド類、非植物由来アルデヒド類、これらの混合物等が挙げられる。
植物由来アルデヒド類としては、フルフラール類等が挙げられ、例えば、フルフラール、5−メチルフルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
非植物由来アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
フェノール樹脂を得る際のフェノール類とアルデヒド類との質量比率は、アルデヒド類を1としたときに、フェノール類が1〜20倍であることが好ましく、1.5〜6倍であることがより好ましい。フェノール類が1倍以上であれば、ゲル化を抑制でき、20倍以下であれば、反応率を高くして分子量を大きくし固形化することができる。
【0026】
フェノール類とアルデヒド類との反応の際には塩基性触媒が用いられる。塩基性触媒としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化リチウムなど)、アミン類(例えば、水酸化アンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンなど)が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
塩基性触媒の使用量は、フェノール類とアルデヒド類の合計質量に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。塩基性触媒の使用量が0.1質量%以上であれば、充分に反応を進行させることができ、50質量%以下であれば、ゲル化を抑制できる。
【0028】
反応条件は、一般的な固形レゾール型フェノール樹脂と同様の条件で製造することができる。
【0029】
フェノール樹脂の軟化点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上である。60℃未満であると、保存中にブロッキングするため取り扱いが困難になる傾向がある。また、軟化点は好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。120℃を超えると、ゴムへの混練性が極端に悪くなる傾向がある。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 2207に従って測定される値である。フェノール樹脂の軟化点が上記温度範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0030】
フェノール樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。1質量部未満であると、操縦安定性、低燃費性、加工性が充分に向上できないおそれがある。また、上記フェノール樹脂の含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。100質量部を超えると、加工性が悪化したり、硬度が上昇し過ぎたりするおそれがある。
【0031】
本発明では、硬化促進用の触媒を配合することが好ましい。硬化促進用の触媒を配合することにより、フェノール樹脂の硬化を促進し、本発明の効果が良好に得られる。
硬化促進用の触媒としては、加硫工程でフェノール樹脂を硬化させるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、メラミン、メチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールパンタメチルエーテルや、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性炭酸塩や、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ性炭酸水素塩や、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、シュウ酸、クエン酸、炭酸等の酸類及びその各種金属塩等が挙げられる。なかでも、フェノール樹脂の硬度を上昇させる作用に優れるという点から、ヘキサメチレンテトラミンが好ましい。
【0032】
硬化促進用の触媒の含有量は、フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。1質量部未満であると、フェノール樹脂を充分に硬化できない場合がある。硬化促進用の触媒の含有量は、フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。50質量部を超えると、フェノール樹脂の硬化が不均一になるおそれがある。
【0033】
本発明では、シリカを配合することが好ましい。シリカを配合することにより、良好な低燃費性及び高いゴム強度や操縦安定性が得られる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多く、更に加工性が良好であるという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0034】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましく、150m/g以上が更に好ましい。30m/g未満では、補強効果が小さく、ゴム強度や操縦安定性が充分に向上できないおそれがある。また、シリカのNSAは、500m/g以下が好ましく、250m/g以下がより好ましく、200m/g以下が更に好ましい。500m/gを超えると、シリカの分散性が低下し、低発熱性、加工性が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0035】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは35質量部以上である。5質量部未満であると、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、加工性が低下する傾向がある。
【0036】
上記ゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0037】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、クレー等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル等の軟化剤、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0038】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上である。1.5質量部未満であると、加硫反応が充分に進まず、高いゴム強度や操縦安定性、良好な低燃費性が得られにくくなる傾向がある。上記酸化亜鉛の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。20質量部を超えると、不必要にコストが上昇したり、酸化亜鉛の分散不良が起こって物性が低下したりするおそれがある。
【0039】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0040】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(例えば、ビードエイペックス)に好適に使用できる。ビードエイペックスとは、カーカスの折り返しの間に配置され、タイヤのサイドウォール方向に向かって延びる部位であり、具体的には、特開2009−001681号公報の図1等に示される部材である。
【0041】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤの各部材(例えば、ビードエイペックス)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0042】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0043】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
天然ゴム:RSS#3(テックビーハング社製)
フェノール樹脂1:群栄化学工業(株)製、軟化点85℃、植物由来フェノール類:カシューオイル、植物由来アルデヒド類:フルフラール、植物由来アルデヒド類の使用量:100質量%(全使用アルデヒド類100質量%中)、当該樹脂の石油資源依存度:0質量%)
フェノール樹脂2:群栄化学工業(株)製、軟化点80℃、植物由来フェノール類:カシューオイル、植物由来アルデヒド類:フルフラール、植物由来アルデヒド類の使用量:80質量%(全使用アルデヒド類100質量%中)、当該樹脂の石油資源依存度:0質量%)
フェノール樹脂3:群栄化学工業(株)製、軟化点86℃、植物由来フェノール類:カルダノール、植物由来アルデヒド類:フルフラール、植物由来アルデヒド類の使用量:90質量%(全使用アルデヒド類100質量%中)、当該樹脂の石油資源依存度:0質量%)
フェノール樹脂4:群栄化学工業(株)製、軟化点90℃、植物由来フェノール類:カルダノール、植物由来アルデヒド類:フルフラール、植物由来アルデヒド類の使用量:100質量%(全使用アルデヒド類100質量%中)、当該樹脂の石油資源依存度:0質量%)
フェノール樹脂5:PR12686(住友ベークライト(株)製)(カシューオイル変性フェノール樹脂、融点75℃)
シリカ:ウルトラジルVN3(デグッサ社製)(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:Si69(デグッサ社製)(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
ステアリン酸:ビーズステアリン酸つばき(日油(株)製)
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(三井金属鉱業(株)製)
硫黄:粉末硫黄(鶴見化学工業(株)製)
加硫促進剤:ノクセラーNS(大内新與化学工業(株)製)
へキサメチレンテトラミン:ノクセラーH(大内新興化学工業(株)製)
【0044】
実施例1〜4及び比較例1〜2
表1に示す配合処方に従い、神戸製鋼所(株)製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤、及びへキサメチレンテトラミンを除く配合成分を充填率が60%になるように充填し、回転数80rpmで150℃に到達するまで3分間混練りした。次いで、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤、及びへキサメチレンテトラミンを表1に示す配合量で加えた後、オープンロールを用いて、80℃で5分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、加硫ゴム組成物を作製した。
また、得られた未加硫ゴム組成物をビードエイペックスの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、乗用車用タイヤ(サイズ;195/65R15)を製造した。
【0045】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、乗用車用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
(ムーニー粘度)
JIS K6300「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度およびスコーチタイムの求め方」に従い、測定温度を130℃とし、L形ローターを用いて、前記未加硫ゴム組成物(加硫可能なゴム配合)のムーニー粘度(ML1+4)を測定した。さらに、下記計算式、
(ムーニー粘度指数)=(各配合のムーニー粘度)/(比較例1のムーニー粘度)×100
により、ムーニー粘度指数を算出した。ムーニー粘度指数が小さいほど未加硫ゴム組成物の粘度が低く、加工性に優れることを示す。
【0047】
(硬度試験)
JIS K6253「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に従い、タイプAデュロメーターにてゴム硬度を測定した。さらに、下記計算式、
(ゴム硬度指数)=(各配合のゴム硬度)/(比較例1のゴム硬度)×100
により、ゴム硬度指数を算出した。ゴム硬度指数が大きいほど剛性が高く、ゴムが良好に補強されており、空気入りタイヤとして用いた場合に良好な操縦安定性を与えることを示す。
【0048】
(粘弾性試験)
粘弾性スペクトロメータVES((株)岩本製作所製)を用いて、初期歪10%および動歪2%の条件下で、70℃における加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定した。さらに、下記計算式、
(損失正接指数)=(各配合のtanδ)/(比較例1のtanδ)×100
により、損失正接指数を算出した。損失正接指数が小さいほど加硫ゴム組成物の発熱性が低く、空気入りタイヤとして用いた場合に良好な転がり抵抗特性を与えることを示す。
【0049】
(操縦安定性)
製造した乗用車用タイヤを装着した乗用車(トヨタ自動車(株)製のノア)により、テストコースを走行し、操縦安定性およびハンドル応答性についての官能試験を実施した。そして、比較例1の操縦安定性およびハンドル応答性を5(基準)として、そのほかの操縦安定性およびハンドル応答性を6点満点で評価した。なお、点数が高いほど、操縦安定性およびハンドル応答性が良好であることを示し、5+とは、5より優れ、6より劣ることを示す。
【0050】
(転がり抵抗)
(株)神戸製鋼所製の転がり抵抗試験機を用い、製造した乗用車用タイヤを、荷重30N、タイヤの内圧200kPa、速度80km/時間の条件下で走行させて、転がり抵抗を測定した。そして、下記計算式により、比較例1を基準(0)とし、各配合の転がり抵抗変化率(%)を指数で表示した。なお、転がり抵抗変化率が小さいほど、転がり抵抗が低減され、好ましいことを示し、具体的には、マイナスであることが好ましい。
(転がり抵抗変化率)=(各配合の転がり抵抗−比較例1の転がり抵抗)/(比較例1の転がり抵抗)×100
【0051】
【表1】

【0052】
天然由来のフェノール樹脂(フェノール樹脂1〜4)を含む実施例は、操縦安定性、低燃費性、加工性を向上できた。また、フェノール樹脂1〜4は、植物由来フェノール類とアルデヒド類から製造されているため、ゴム組成物(空気入りタイヤ)の石油資源依存度を低減でき、バイオマス度を向上できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、天然由来のフェノール樹脂とを含むタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記フェノール樹脂が植物由来フェノール類とアルデヒド類から誘導されたものである請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分が、天然ゴム、改質天然ゴム、合成ゴム及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記フェノール樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1〜100質量部である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
硬化促進用の触媒を含む請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記硬化促進用の触媒がヘキサメチレンテトラミンである請求項5記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
ビードエイペックス用ゴム組成物として用いられる請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−23659(P2013−23659A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162265(P2011−162265)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】