説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性及び耐久性を両立できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分と、2種以上のポリオルガノシロキサンを含む球状複合粒子とを含有するタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤ。2種以上のポリオルガノシロキサンがそれぞれ異なる有機基を有するものである。球状複合粒子の組成が粒子中心部から表面方向に向って段階的又は連続的に変化している。ゴム成分100質量部に対する前記球状複合微粒子の含有量が5〜120質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ用ゴム組成物の補強用充填剤としては、カーボンブラックが主に用いられていた。しかし近年、省エネルギーの社会的な要請及び環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに伴い、自動車の低燃費化に対する要求が高まっている。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減と耐久性(耐摩耗性や耐亀裂成長性)の向上が求められてきている。
【0003】
タイヤの転がり抵抗を低減する手法としては、タイヤ構造の最適化による手法についても検討されているが、ゴム組成物としてより発熱性の低い材料を用いる手法がより一般的である。
【0004】
低発熱性(低燃費性)を改善する方法として、カーボンブラックをシリカで置換する方法が知られている。しかし、シリカは、カーボンブラックに比べて、(1)相溶性が悪い、(2)自己凝集性が高く、分散が容易ではない、(3)得られるゴム組成物の耐久性が劣るという点で改善の余地がある。そのため、低燃費性及び耐久性を両立できる方法が求められている。また、特許文献1には、特定の脱蛋白天然ゴムを配合し、低燃費性及び耐久性に優れたゴム組成物を得る方法が記載されているが、他の方法の提供も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−47993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性及び耐久性を両立できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム成分と、2種以上のポリオルガノシロキサンを含む球状複合粒子とを含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0008】
上記2種以上のポリオルガノシロキサンがそれぞれ異なる有機基を有するものであることが好ましい。
【0009】
上記ゴム成分100質量部に対する上記球状複合微粒子の含有量が5〜120質量部であることが好ましい。
【0010】
上記球状複合粒子の組成が粒子中心部から表面方向に向って段階的又は連続的に変化していることが好ましい。
【0011】
上記ゴム成分100質量部に対する上記球状複合微粒子の含有量が5〜70質量部であり、上記球状複合粒子100質量部に対するシランカップリング剤の含有量が2〜15質量部であることが好ましい。
【0012】
上記ゴム組成物は、サイドウォール用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゴム成分と、2種以上のポリオルガノシロキサンを含む球状複合粒子とを含有するタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性及び耐久性(特に引張強度)が両立した空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、2種以上のポリオルガノシロキサンを含む球状複合粒子とを含有する。該球状複合粒子は、シリカやカーボンブラックなどの従来のフィラー(補強用充填剤)と比較してゴム成分との相溶性が高く、分散性に優れるという性質を有するとともに、カーボンブラックと同等の補強性を発揮することができる。従って、該球状複合粒子を補強用充填剤として配合することで、カーボンブラックと同等の耐久性を確保しつつ、低燃費性を改善し、これらの性能を両立させることができる。
【0016】
本発明で使用するゴム成分については特に限定はなく、一般的なタイヤ用ゴム組成物に使用される任意のジエン系ゴムを使用することができる。具体例としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、良好な低燃費性及び耐久性が得られるという理由から、NR、BRが好ましい。NR、BRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0017】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。5質量%未満であると、十分なゴム強度が得られない傾向がある。また、本発明の効果が良好に得られるという点から、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。
【0018】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。25質量%未満であると、十分な耐屈曲性が得られない傾向がある。また、本発明の効果が良好に得られるという点から、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
【0019】
本発明で使用する球状複合粒子は、2種以上のポリオルガノシロキサンを含む。本発明の効果が良好に得られるという理由から、該2種以上のポリオルガノシロキサンは、それぞれ異なる有機基を有するものであることが好ましい。
【0020】
上記球状複合粒子の原料としては、1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基とが結合したケイ素原子を有する有機ケイ素化合物を2種以上使用する。上記有機ケイ素化合物としては、例えば、下記一般式(I)
Si(OR4−n (I)
(一般式(I)において、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示し、該アルキル基は(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基又はグリシドキシ基を有していてもよい。Rは炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは1〜3の整数を示す。Rが複数ある場合、各Rは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
で表される化合物を用いることができる。
【0021】
のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。また、Rのアルキル基が(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基又はグリシドキシ基を有する場合の具体例としては、γ−アクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0022】
のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などが挙げられ、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましい。
【0023】
のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
【0024】
のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられ、炭素数7〜10のアラルキル基が好ましい。
【0025】
のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0026】
本発明の効果が良好に得られるという理由から、Rは、アルキル基、アルケニル基が好ましく、メチル基、ビニル基がより好ましい。また、Rは、メチル基が好ましい。
【0027】
上記一般式(I)で表されるケイ素化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。なかでも、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランを好適に使用できる。
【0028】
上記球状複合粒子は、例えば、1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基とが結合したケイ素原子を有する有機ケイ素化合物単独又は2種以上の混合物で、それぞれ組成が異なる複数組を二段階以上で加水分解、縮合反応させる方法(方法1)や、1〜3個の非加水分解性基と3〜1個のアルコキシル基とが結合したケイ素原子を有する有機ケイ素化合物を2種以上使用し、該有機ケイ素化合物を含む水溶液を、その組成を連続的に変化させながら一段階で加水分解、縮合反応させる方法(方法2)により、球状複合粒子前駆体を調製し、該球状複合粒子前駆体を焼成処理することで製造することができる。上記(方法1)によれば、2種以上のポリオルガノシロキサンを含み、粒子中心部から表面方向に向って組成が実質上段階的に変化している球状複合粒子が得られる。一方、上記(方法2)の方法によれば、2種以上のポリオルガノシロキサンを含み、粒子中心部から表面方向に向って組成が実質上連続的に変化している球状複合粒子が得られる。
【0029】
まず、上記(方法1)について説明する。上記(方法1)における加水分解、縮合反応は、上記有機ケイ素化合物単独又は2種以上の混合物と、アンモニア及び/又はアミンを含有する溶液とを、好ましくは実質上混合することなく、2層状態を保持しながら、界面で反応させることにより行う。アンモニア及び/又はアミンを含有する溶液は、水溶液であってもよいし、水及び有機溶剤の混合溶液であってもよい。以後、この水溶液及び混合溶液を水性溶液ともいう。
【0030】
上記アンモニアやアミンは、有機ケイ素化合物の加水分解及び縮合反応の触媒として機能する。ここで、アミンとしては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミンなどを使用することができる。このアンモニアやアミンは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、毒性が少なく、除去が容易で、かつ安価なことから、アンモニアが好適である。
【0031】
このアンモニアやアミンは、水溶液、又は水及び有機溶剤の混合溶液として用いられる。ここで、有機溶剤としては、水との混和性が高いものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類;アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。
【0032】
アンモニアやアミンの使用量としては特に制限はないが、反応開始前の下層の水層のpHが7.5〜11.0の範囲になるように調整することが好ましい。また、反応温度は、原料の有機ケイ素化合物の種類などに左右されるが、一般的には0〜60℃の範囲とすればよい。
【0033】
次に、上層(有機ケイ素化合物の層)が実質上消失した後、消失した上層とは組成の異なる有機ケイ素化合物単独又は2種以上の混合物を用い、上記と同様にして2段目の加水分解、縮合反応を行い、更に、必要に応じ、組成の異なる有機ケイ素化合物単独又は2種以上の混合物を用い、上記と同様の操作を所望回数繰り返す。
【0034】
最後の加水分解、縮合反応において、上層が消失した後、反応系にアンモニア及び/又はアミンを添加し、熟成させる。この熟成は反応の際と同じ温度で行ってもよいし、若干昇温して行ってもよい。熟成終了後は、常法に従い生成した粒子を充分に洗浄した後、必要に応じて分級処理を行い、極大粒子又は極小粒子を取り除き、乾燥処理を行う。分級処理方法としては特に制限はないが、粒径により沈降速度が異なることを利用して分級を行う湿式分級法が好ましい。乾燥処理は、通常、常温〜150℃の範囲の温度で行えばよい。
【0035】
次に、上記(方法2)について説明する。上記(方法2)における加水分解、縮合反応は、まず、上記有機ケイ素化合物単独又は2種以上を含有し、かつそれぞれ組成の異なる水溶液2種以上を調製する。次いで、これらの水溶液を、連続的に同一速度で順番に他の水溶液に加えながら、最後の水溶液を前述のアンモニア及び/又はアミンを含有する水性溶液中に上記と同一速度で連続的に滴下する。具体的には、例えば(A)、(B)、(C)及び(D)のそれぞれ組成の異なる有機ケイ素化合物含有水溶液を調製した場合、同一速度で連続的に(D)を(C)に加え、その(C)を(B)に加え、更にその(B)を(A)に加えながら、上記と同一速度で該(A)をアンモニア及び/又はアミンを含有する水性溶液中に連続的に滴下する。滴下終了後、1〜4時間程度熟成して、加水分解、縮合反応させる。反応温度は、通常0〜60℃の範囲とすればよい。次に、反応系にアンモニア及び/又はアミンを添加し、十分に熟成させる。この熟成は反応の際と同じ温度で行ってもよいし、若干昇温して行ってもよい。
【0036】
その後は、上記(方法1)の場合と同様の操作を行うことにより、所望の球状複合粒子前躯体が得られる。この(方法2)によれば、反応場に滴下される有機ケイ素化合物含有水溶液の組成が連続的に変化していくため、上記(方法1)の方法で得られたものが、実質上段階的な傾斜構造を有するのに対し、実質上連続的な傾斜構造を有する粒子が得られる。また、各有機ケイ素化合物をそれぞれ水に溶かし、水溶液として用いるため、反応場における溶媒に対する溶解速度差による影響を粒子形成において受けなくなる。そのため、上記(方法1)の2層系の反応よりも傾斜複合構造を形成しやすい。
【0037】
このようにして、単分散性の球状複合粒子前駆体を得た後、焼成処理することにより、異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを含む球状複合粒子が得られる。この焼成処理温度は、通常200〜700℃の範囲とすればよいが、該球状複合粒子中のポリオルガノシロキサンが2種類のみである場合には、有機成分の熱分解温度の低いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より高く、かつ有機成分の熱分解温度の高いポリオルガノシロキサンの熱分解温度より低い範囲の温度とすることが好ましい。すなわち、2種類のポリオルガノシロキサンの内、一方のポリオルガノシロキサンの有機成分のみが熱分解する温度とすることが好ましい。また、この焼成処理は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができる。焼成時間は、球状複合粒子の種類及び焼成温度などにより左右され、一概に定めることはできないが、一般的には0.5〜10時間程度とすればよい。
【0038】
本発明の効果が良好に得られるという理由から、上記球状複合粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下である。また、上記球状複合粒子の変動係数(CV値)は、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
なお、上記球状複合粒子の平均粒子径は、パーティクルカウンターによって測定できる。また、上記球状複合粒子の変動係数は、パーティクルカウンターで測定した上記球状複合粒子の平均粒子径及び粒子径の標準偏差を用いて、以下の式から算出できる。
変動係数(%)=[粒子径の標準偏差(μm)]/[平均粒子径(μm)]×100
【0039】
上記球状複合粒子の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。5質量部未満であると、低燃費性及び耐久性を充分に改善できないおそれがある。また、上記球状複合粒子の含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。120質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0040】
上記球状複合粒子は、シランカップリング剤と併用することが好ましい。これにより、低燃費性及び耐久性をより改善できる。
シランカップリング剤の種類は特に限定されるものではなく、従来から、ゴムやプラスチックなどに配合されるシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、良好な低燃費性及び耐久性が得られるという理由から、スルフィド系のシランカップリング剤が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが更に好ましい。
【0041】
シランカップリング剤の含有量は、上記球状複合粒子100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、更に好ましくは6質量部以上である。2質量部未満では、低燃費性及び耐久性を充分に改善できないおそれがある。また、シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、耐久性が低下するおそれがある。
【0042】
本発明のゴム組成物は、上記球状複合粒子とともに、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、良好な耐久性が得られる。
【0043】
カーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が20〜90m/gであることが好ましく、ジブチルフタレート(DBP)吸収量が60×10−5〜150×10−5/kgであることが好ましい。カーボンブラックのNSAやDBP吸収量が上記範囲の下限未満では、補強効果が小さく耐久性が低下する傾向があり、上記範囲の上限を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001に従って測定でき、カーボンブラックのDBP吸収量は、JIS K6217−4:2001に従って測定できる。
【0044】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは35質量部以上である。15質量部未満であると、耐摩耗性を充分に改善できないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、好ましくは75質量部以下、より好ましくは55質量部以下である。75質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0045】
本発明に係るゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物として一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り従来の一般的な配合量とすることができる。
【0046】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に使用することができ、サイドウォールに好適に使用できる。
【0047】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でサイドウォールなどのタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0048】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0049】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
BR:宇部興産(株)製のBR130B
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN351(NSA:69m/g、DBP吸収量:128×10−5/kg)
球状複合粒子(A):下記製造例1で製造
球状複合粒子(B):下記製造例1で製造
球状複合粒子(C):下記製造例2で製造
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)の製粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
【0050】
(製造例1)
1300ミリリットルのプラスチック容器に、1モル/リットル濃度のアンモニア水0.2ミリリットル/リットルを含有する水溶液250ミリリットルを入れ、これを磁気撹拌装置によって約60rpmで撹拌しながら、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)5gをゆっくり添加し、上層にVTMS層を形成させた。次いで、これを室温にて上層が完全に消失するまで撹拌した後、VTMS3.3gとメチルトリメトキシシラン(MTMS)1.7gとの均質混合液をゆっくり添加し、上層にVTMSとMTMSの混合液層を形成させ、更にこの上層が完全に消失するまで撹拌した。次に、VTMS2.5gとMTMS2.5gとの均質混合液、VTMS1.7gとMTMS3.3gとの均質混合液及びMTMS5gを、上記と同様にして、それぞれ順次添加していき、傾斜的にケイ素化合物の組成を変化させてポリメチルシルセスキオキサン(PMSO)/ポリビニルシルセスキオキサン(PVSO)粒子の形成を行った。最後に添加したMTMS層消失後から、約2時間そのまま撹拌を行った後、25質量%アンモニア水2ミリリットルを添加し、形成した粒子を固化させた。更に、一夜熟成後、遠心分離して得られた粒子をメタノール中に投入してデカンテーションした後、アンモニア水の添加による粒子固化時に形成した微小粒子の除去を行い、約50℃で乾燥処理して、乾燥粉末(球状複合粒子前躯体)を得た。得られた球状複合粒子前躯体について、コールカウンターにて粒度分布及び粒子径を測定した結果、大きな粒子径ピークは1つだけ観察され、平均粒子径が3.232μm、CV値が1.55%の単分散粒子が得られていることが確認された。また、この球状複合粒子前躯体の赤外吸収スペクトルの測定により、PVSOとPMSOの複合粒子であることが確認された。次に、このようにして得られた球状複合粒子前躯体を、窒素雰囲気下、280℃又は400℃で2時間焼成を行い、下記表1記載の球状複合粒子(A)、(B)を得た。
【0051】
(製造例2)
300ミリリットルのプラスチック容器に、イオン交換水225ミリリットル及びVTMS25gを入れ、均一になるまで撹拌して部分加水分解液(i)を得た。同様に、300ミリリットルのプラスチック容器に、イオン交換水225ミリリットル及びMTMS25gを入れ、均一になるまで撹拌して部分加水分解液(ii)を得た。 一方、1000ミリリットル容のプラスチック容器に、イオン交換水500ミリリットル及び1モル/リットル濃度のアンモニア水0.2ミリリットルを入れ、均一になるまで撹拌して液(iii)を得た。次に、上記部分加水分解液(ii)を撹拌中の部分加水分解液(i)に連続的に滴下させながら、その部分加水分解液(i)を撹拌中の液(iii)に同速度で滴下し、最終的な部分加水分解液(i)から液(iii)への滴下までを5時間かけて行った。滴下終了後、そのまま約2.5時間撹拌した後、25質量%アンモニア水2ミリリットルを添加し、形成した粒子を固化させた。その後は、製造例1と同様の操作を行い、乾燥粉末(球状複合粒子前躯体)を得た。得られた球状複合粒子前躯体について、コールターカウンターにて粒度分布及び粒径を測定した結果、大きな粒径ピークは1つだけ観察され、平均粒径が2.20μm、CV値が2.01%の単分散粒子が得られていることが確認された。また、赤外吸収スペクトルにより、PMSOとPVSOの複合粒子であることが確認された。次に、このようにして得られた球状複合粒子前躯体を、窒素雰囲気下で350℃の温度にて2時間焼成を行い、下記表1記載の球状複合粒子(C)を得た。
【0052】
【表1】

【0053】
(実施例及び比較例)
表2に示す配合処方に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を1.7Lの密閉型バンバリーミキサー中に投入し、145℃になったところで放出し、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤1質量部を添加し、オープンロールで約2分間混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0054】
上記加硫ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0055】
(粘弾性試験)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度60℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で上記加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗が低く、低燃費性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0056】
(引張り試験)
JIS−K6251に準じて上記加硫ゴム組成物から作成した3号ダンベルを用いて引張り試験を実施し、破断強度及び破断伸びを測定し、引張強度(破断強度×破断伸び)を算出した。そして、比較例1の引張強度を100として、下記計算式により指数表示した(引張強度指数)。指数が大きいほど引張強度が高く、耐久性(耐亀裂成長性など)に優れていることを示す。
(引張強度指数)=(各配合の引張強度)/(比較例1の引張強度)×100
【0057】
(分散性(ペイン効果))
アルファーテクノロジー社製RPA2000を用いて、測定温度110℃(予熱1分)、周波数6cpm、振幅0.28〜10%の条件で、上記加硫ゴム組成物の貯蔵弾性率の歪依存性を測定し、歪量0.56%時の貯蔵弾性率の値を求めた。結果は、比較例1の値を100として指数表示した(分散性指数)。指数が小さいほどフィラーの分散不良塊が少なく、フィラーの分散性が良好であることを示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表2より、2種以上のポリオルガノシロキサンを含む球状複合粒子を含有する実施例は、低燃費性及び耐久性がバランス良く改善され、これらの性能を両立させることができた。また、分散性指数の結果から、上記球状複合粒子は、カーボンブラックよりも分散性が優れていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、2種以上のポリオルガノシロキサンを含む球状複合粒子とを含有するタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記2種以上のポリオルガノシロキサンがそれぞれ異なる有機基を有するものである請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量部に対する前記球状複合微粒子の含有量が5〜120質量部である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記球状複合粒子の組成が粒子中心部から表面方向に向って段階的又は連続的に変化している請求項1〜3のいずれかに記載タイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量部に対する前記球状複合微粒子の含有量が5〜70質量部であり、
前記球状複合粒子100質量部に対するシランカップリング剤の含有量が2〜15質量部である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
サイドウォール用ゴム組成物として用いられる請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−43901(P2013−43901A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180666(P2011−180666)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】