説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム、BET比表面積が170〜270m/gのシリカ、硫黄及び軟化点−20〜45℃の液状樹脂を含み、ゴム成分100質量部に対して、前記液状樹脂の含有量が0.5〜20質量部、前記シリカの含有量が40〜120質量部であるタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴム組成物に、BET比表面積が大きいシリカ(微粒子シリカ)を配合して、グリップ性能、低燃費性、耐摩耗性を向上させる試みが行われている。しかし、微粒子シリカは、凝集力が強く、ゴム組成物中で均一に分散させることが困難である。そのため、ゴム組成物中での微粒子シリカの分散性が低く、微粒子シリカを配合したゴム組成物の破断時伸びが低下するという問題があった。
【0003】
シリカメーカーは、微粒子シリカの表面活性や粒径分布を調整し、微粒子シリカの分散性の向上を図る試みを行っているが、まだ満足のいく微粒子シリカの分散性は得られていない。また、シリカ用に末端を変性した変性ポリマーを配合する場合には、シリカが充分に分散する前にポリマーとシリカが結合してしまい、かえってシリカの分散を妨げる場合もあった。
【0004】
従って、ゴム中に微粒子シリカを均一分散させ、優れた破断時伸びを有する配合ゴムを提供することが望まれている。
【0005】
一方、タイヤ用ゴム組成物には、硫黄が汎用されている。しかし、硫黄は、ポリマーへの溶解時において、S8構造で、融点113℃、二硫化炭素に近い(SP値10)極性を有しているので、タイヤ用ゴム組成物に汎用されている、低極性(SP値8〜9)の天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴム中に均一分散することが一般に難しい。
【0006】
そのため、硫黄含有ハイブリッド架橋剤(1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物などを使用して、S8の使用量を減じる手法が提案されているが、硫黄含有ハイブリッド架橋剤は一般に高価であり、また、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物は分散性が悪く、破断時伸びや耐摩耗性が悪化してしまう。
【0007】
従って、ゴム中に硫黄を均一分散させ、優れた破断時伸びを有する配合ゴムを提供することが望まれている。
【0008】
一方、各種タイヤ部材には、操縦安定性や低燃費性などの性能も要求され、例えば、フィラーとの結合力が強いスズ変性ブタジエンゴムを使用し、操縦安定性を維持しつつ、低燃費性を改善することが提案されている。
【0009】
しかしながら、前述の各手法による破断時伸びの改善効果は未だ満足できるものではなく、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性をバランスよく得るという点について、更なる改善が求められている。例えば、特許文献1には、特定のスチレンブタジエンゴムとクマロンインデン樹脂を用いてグリップ性能などを改善することが開示されているが、操縦安定性、低燃費性、破断時伸びの改善は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−124601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記課題を解決し、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ジエン系ゴム、BET比表面積が170〜270m/gのシリカ、硫黄及び軟化点−20〜45℃の液状樹脂を含み、ゴム成分100質量部に対して、上記液状樹脂の含有量が0.5〜20質量部、上記シリカの含有量が40〜120質量部であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0013】
上記液状樹脂が、液状クマロンインデン樹脂及び/又は液状テルペン系樹脂であることが好ましい。
【0014】
上記タイヤ用ゴム組成物は、軟化点46〜160℃のテルペン系樹脂、軟化点46〜140℃のロジン系樹脂、及び軟化点46〜140℃の芳香族系石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0015】
上記芳香族系石油樹脂が、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、及び/又は芳香族ビニル重合体であり、上記芳香族ビニル重合体が、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂であることが好ましい。
【0016】
上記シリカのBET比表面積が190〜250m/gであることが好ましい。
【0017】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、酸化亜鉛の含有量が0.5〜2.9質量部であることが好ましい。
【0018】
上記ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ジエン系ゴム、所定量の特定のBET比表面積を有するシリカ、硫黄、及び所定量の特定の軟化点を有する液状樹脂を含むタイヤ用ゴム組成物であるので、該ゴム組成物をタイヤ部材(特に、トレッド)に使用することにより、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性がバランスよく優れた空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム、所定量のBET比表面積が170〜270m/gのシリカ(微粒子シリカ)、硫黄に対し、軟化点−20〜45℃の液状樹脂を所定量配合したものである。これにより、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性をバランスよく改善できる。この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
【0022】
ジエン系ゴムを含むゴム組成物に微粒子シリカ、硫黄を均一に分散させることは困難であるが、特定の軟化点を有する液状樹脂を微粒子シリカ、硫黄と共に配合すると、該樹脂自体の良好な分散性やジエン系ゴムのポリマー鎖への適度な滑性付与により、ジエン系ゴムのポリマー鎖と、微粒子シリカ、硫黄間に適度な潤滑性が生じ、混練工程において微粒子シリカ、硫黄がゴム組成物全体に均一に分散される。更に、硫黄が均一に分散されるため、加硫工程でポリマー間の架橋が均一化される。
【0023】
このように、ジエン系ゴム、微粒子シリカ、硫黄に対し、特定の軟化点を有する液状樹脂を配合することにより、微粒子シリカの分散不良が解消され、更に、ポリマー間の架橋が均一化されるため、良好な破断時伸びが得られ、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性をバランスよく改善できる。
【0024】
特に、液状樹脂として、特定の軟化点を有する液状クマロンインデン樹脂を使用すると、該樹脂と硫黄(特に、液状クマロンインデン樹脂中に含まれる酸素原子と硫黄)がファンデルワールス力で引き合うことで硫黄表面が該樹脂でコーティングされ、硫黄の表面エネルギーが低下する(凝集力が低下する)。その結果、硫黄表面とジエン系ゴムのSP値の差が小さくなることで硫黄の分散がより促進されるとともに、該樹脂自体の良好な分散性やジエン系ゴムのポリマー鎖への滑性付与により、混練工程において硫黄がゴム組成物全体により均一に分散され、加硫工程でポリマー間の架橋がより均一化され、上記性能の向上効果がより好適に得られる。
【0025】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分としてジエン系ゴムを含む。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。なお、ゴム成分として、ジエン系ゴム以外のゴム成分(例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)等)を配合してもよい。これらゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性がバランスよく得られるという理由から、NR、BR、SBRが好ましく、BR、SBRを併用することがより好ましく、NR、BR、SBRを併用することが更に好ましい。BR、SBRと共にNRを配合することにより、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性がよりバランスよく得られる。
【0026】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、低燃費性と破断時伸びがバランスよく得られるという理由から、希土類系BRが好ましい。
【0027】
上記希土類元素系触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
【0028】
ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の希土類金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等が挙げられる。なかでも、前述のとおり、Nd系触媒の使用が高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる点で好ましい。
【0029】
有機アルミニウム化合物としては、AlR(式中、R、R、Rは、同一若しくは異なって、水素又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。)で表されるものを使用できる。アルミノキサンとしては、鎖状アルミノキサン、環状アルミノキサンが挙げられる。ハロゲン含有化合物としては、AlX3−k(式中、Xはハロゲン、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基、kは1、1.5、2又は3を表す。)で表されるハロゲン化アルミニウム;MeSrCl、MeSrCl、MeSrHCl、MeSrClなどのストロンチウムハライド;四塩化ケイ素、四塩化錫、四塩化チタン等の金属ハロゲン化物が挙げられる。ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯体化するのに用いられ、アセチルアセトン、ケトン、アルコール等が好適に用いられる。
【0030】
上記希土類元素系触媒は、ブタジエンの重合の際に、有機溶媒(n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン等)に溶解した状態で用いても、シリカ、マグネシア、塩化マグネシウム等の適当な担体上に担持させて用いてもよい。重合条件としては、溶液重合又は塊状重合のいずれでもよく、好ましい重合温度は−30〜150℃であり、重合圧力は他の条件に依存して任意に選択してもよい。
【0031】
上記希土類系BRは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。1.2未満であると、加工性の悪化が顕著になる傾向がある。該Mw/Mnは、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。5を超えると、耐摩耗性の改善効果が少なくなる傾向がある。
【0032】
上記希土類系BRのMwは、好ましくは30万以上、より好ましくは50万以上であり、また、好ましくは150万以下、より好ましくは120万以下である。更に、上記希土類系BRのMnは、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下である。MwやMnが下限未満であると、耐摩耗性が低下したり、低燃費性が悪化する傾向がある。上限を超えると、加工性の悪化が懸念される。
なお、本発明において、Mw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
【0033】
上記希土類系BRのシス含量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。90質量%未満であると、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0034】
上記希土類系BRのビニル含量は、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。1.8質量%を超えると、耐摩耗性が低下するおそれがある。
なお、本発明において、希土類系BRのビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)及びシス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0035】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。5質量%未満であると、耐摩耗性が低下する傾向がある。該BRの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。50質量%を超えると、加工性の悪化が顕著になる傾向がある。
【0036】
SBRとしては、特に限定されず、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)、第1級アミノ基等により変性された変性SBR等が挙げられる。なかでも、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性の向上効果が高いという理由から、変性SBRが好ましい。
【0037】
変性SBRとしては、スズやケイ素などでカップリングされたものが好ましく用いられる。変性SBRのカップリング方法としては、常法に従って、例えば、変性SBRの分子鎖末端のアルカリ金属(Liなど)やアルカリ土類金属(Mgなど)を、ハロゲン化スズやハロゲン化ケイ素などと反応させる方法などが挙げられる。
【0038】
また、変性SBRとしては、スチレン及びブタジエンの共重合体で、第1級アミノ基やアルコキシシリル基を有するものも好ましい。第1級アミノ基は、重合開始末端、重合終了末端、重合体主鎖、側鎖のいずれに結合していてもよいが、重合体末端からエネルギー消失を抑制してヒステリシスロス特性を改良し得る点から、重合開始末端又は重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0039】
変性SBRのなかでも、特に溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S−SBR)の重合末端(活性末端)を下記式(1)で表される化合物により変性したもの(変性S−SBR(特開2010−111753号公報に記載の変性SBR))が好適に用いられる。これにより、ポリマーの分子量をコントロールし易く、tanδを増大させる低分子量成分を少なくすることができ、更にシリカとポリマー鎖の結合を強め、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸びをより向上できる。
【0040】
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)を表す。nは整数(好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3)を表す。)
【0041】
、R及びRとしては、アルコキシ基が望ましく、R及びRとしては、アルキル基が望ましい。これにより、優れた操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性を得ることができる。
【0042】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記式(1)で表される化合物(変性剤)によるスチレンブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を用いることができる。例えば、スチレンブタジエンゴムと変性剤とを接触させればよく、アニオン重合によりスチレンブタジエンゴムを合成した後、該重合体ゴム溶液中に変性剤を所定量添加し、スチレンブタジエンゴムの重合末端(活性末端)と変性剤とを反応させる方法、スチレンブタジエンゴム溶液中に変性剤を添加して反応させる方法などが挙げられる。
【0044】
SBRの結合スチレン量は、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。35質量%を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。また、SBRの結合スチレン量は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは23質量%以上である。15質量%未満であると、グリップ性能、リバージョン性が劣る傾向がある。
なお、スチレン量は、H−NMR測定により算出される。
【0045】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。50質量%未満であると、ウェットグリップ性能、低燃費性が悪化するおそれがある。該SBRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。90質量%を超えると、併用するゴム成分の含有量が低下し、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性の向上効果が充分に得られないおそれがある。
【0046】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0047】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは5〜15質量%である。NRの含有量が上記範囲内であると、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性がよりバランスよく得られる。
【0048】
本発明のゴム組成物は、硫黄を含む。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.3質量部以上であり、また、該含有量は、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.7質量部以下である。上記範囲内であると、優れた操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性が得られる。
【0049】
本発明のゴム組成物は、BET比表面積が170〜270m/gのシリカ(微粒子シリカ)を含む。
【0050】
微粒子シリカのBET比表面積は、好ましくは190m/g以上、より好ましくは195m/g以上、更に好ましくは210m/g以上である。BET比表面積が170m/g未満であると、操縦安定性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性の充分な向上が得られない。該BET比表面積は、好ましくは250m/g以下、より好ましくは245m/g以下である。BET比表面積が270m/gを超えると、分散性に劣り、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性の充分な向上が得られない。
なお、本明細書において、シリカのBET比表面積は、ASTM D3037−81に準じて測定される。
【0051】
微粒子シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上、好ましくは50質量部以上である。40質量部未満であると、充分な操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性の改善効果が得られない。該含有量は、120質量部以下、好ましくは110質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは85質量部以下である。120質量部を超えると、分散性が悪化し、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、耐摩耗性が低下する。
【0052】
本発明では、微粒子シリカと共に微粒子シリカ以外のシリカ(大粒径シリカ)を配合してもよい。これにより、操縦安定性、低燃費性、耐摩耗性をより向上できる。なお、微粒子シリカ以外のシリカのBET比表面積は、100〜130m/gが好ましい。
この場合、シリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは55質量部以上である。また、該合計含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。下限未満の場合や上限を超える場合は、前述の微粒子シリカの配合量と同様の傾向がある。
【0053】
本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0054】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上である。3質量部未満では、耐摩耗性、破断時伸び、粘度(加工性)が悪化する傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0055】
本発明のゴム組成物は、軟化点が−20〜45℃の液状樹脂を含む。上記液状樹脂は、オイルに置き換えて配合することが好ましい。
【0056】
上記液状樹脂の軟化点は、−20℃以上であり、好ましくは−10℃以上である。−20℃未満であると、低燃費性、破断時伸び、操縦安定性の改善効果が充分に得られない。該軟化点は、45℃以下、好ましくは40℃以下である。45℃を超えると、低燃費性、破断時伸び、耐摩耗性が悪化する。
なお、液状樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0057】
液状樹脂としては、上記軟化点を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、液状芳香族系石油樹脂(上記軟化点を有する芳香族系石油樹脂(特に、液状クマロンインデン樹脂(上記軟化点を有するクマロンインデン樹脂)))、液状テルペン系樹脂(上記軟化点を有するテルペン系樹脂)、液状ロジン系樹脂(上記軟化点を有するロジン系樹脂)等が挙げられる。なかでも、本発明の効果が好適に得られるという理由から、液状芳香族系石油樹脂(特に、液状クマロンインデン樹脂)、液状テルペン系樹脂が好ましく、液状クマロンインデン樹脂がより好ましい。
【0058】
上記芳香族系石油樹脂とは、一般にナフサの熱分解によって得られるビニルトルエン、インデン、メチルインデンを主要なモノマーとする炭素数8−10(C8−10)の芳香族系留分を重合して得られる樹脂である。ここで、芳香族系留分の他の例としては、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどのスチレン同族体やスチレンが挙げられる。また、上記芳香族系石油樹脂は、クマロン単位を含んでいてもよい。また、脂肪族オレフィン単位、フェノール単位、クレゾール単位を含んでいてもよい。
【0059】
芳香族系石油樹脂としては、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、芳香族ビニル重合体(α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂)、C9ハイドロカーボン樹脂等が挙げられる。なかでも、本発明の効果が好適に得られるという理由から、クマロンインデン樹脂が好ましい。すなわち、上記軟化点を有するクマロンインデン樹脂が好ましい。
【0060】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0061】
上記テルペン系樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂が挙げられ、ポリテルペン樹脂が好ましい。すなわち、液状テルペン系樹脂としては、液状ポリテルペン樹脂(上記軟化点を有するポリテルペン樹脂)が好ましい。
【0062】
ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂及びそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。
【0063】
ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β−ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。なかでも、グリップ性能に優れるという理由から、リモネン樹脂が好ましい。
【0064】
テルペンフェノール樹脂としては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とする樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びホルマリンを縮合させた樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
【0065】
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの原料ロジン;原料ロジンの不均化物;原料ロジンを水素添加処理した安定化ロジン;重合ロジンなどのロジン類や、ロジン類のエステル化物(ロジンエステル樹脂)、フェノール変性ロジン類、不飽和酸(マレイン酸など)変性ロジン類、ロジン類を還元処理したホルミル化ロジン類などの各種公知のものを使用できる。
【0066】
上記液状樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上である。0.5質量部未満では、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、耐摩耗性の改善効果が充分に得られない。該含有量は、20質量部以下、好ましくは10質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。20質量部を超えると、硬度が不足し、操縦安定性が悪化する。
【0067】
本発明のゴム組成物は、軟化点46〜160℃のテルペン系樹脂、軟化点46〜140℃のロジン系樹脂、及び軟化点46〜140℃の芳香族系石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。これにより、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性をより好適に向上できる。これは、これらの樹脂が、ゴム組成物中で100nm〜1μmの球体として分布し、グリップ発現時には、物理的にグリップ(例えば、スパイク効果。路面温度が高い場合は、樹脂が溶解し粘着テープ効果)を発現するためと推測される。
【0068】
上記群より選択される樹脂としては、テルペン系樹脂、芳香族系石油樹脂が好ましい。テルペン系樹脂は、ウェットグリップ性能、低燃費性の改善効果が高く、芳香族系石油樹脂は、ウェットグリップ性能の改善効果が高い。
【0069】
上記群より選択される樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。該合計含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。該合計含有量が上記範囲内であると、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性をより好適に向上できる。
【0070】
軟化点46〜160℃のテルペン系樹脂は、上記液状テルペン系樹脂と軟化点が異なるのみであり、該テルペン系樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂を好適に使用できる。
なお、該ポリテルペン樹脂としては、グリップ性能に優れるという理由から、リモネン樹脂が好ましい。
【0071】
テルペン系樹脂の軟化点は、好ましくは46℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは100℃以上である。46℃未満であると、グリップ性能の向上効果が低下するおそれがある。また、該軟化点は、好ましくは160℃以下、より好ましくは135℃以下である。160℃を超えると、樹脂の分散性が低下し、破断時伸び、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0072】
上記群より選択される樹脂として、テルペン系樹脂のみを配合する場合、テルペン系樹脂の好ましい配合量は、上述の上記群より選択される樹脂の合計含有量と同様である。
【0073】
軟化点46〜140℃のロジン系樹脂は、上記液状ロジン系樹脂と軟化点が異なるのみであり、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性がバランスよく得られるという点から、ガムロジンが好ましい。
【0074】
ロジン系樹脂の軟化点は、好ましくは46℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上である。46℃未満であると、グリップ性能の向上効果が低下するおそれがある。また、該軟化点は、好ましくは140℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下である。140℃を超えると、樹脂の分散性が低下し、破断時伸び、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0075】
上記群より選択される樹脂として、ロジン系樹脂のみを配合する場合、ロジン系樹脂の好ましい配合量は、上述の上記群より選択される樹脂の合計含有量と同様である。
【0076】
上記軟化点46〜140℃の芳香族系石油樹脂とは、一般にナフサの熱分解によって得られるビニルトルエン、インデン、メチルインデンを主要なモノマーとする炭素数8−10(C8−10)の芳香族系留分を重合して得られる樹脂のうち軟化点が46〜140℃の樹脂である。ここで、芳香族系留分の他の例としては、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどのスチレン同族体やスチレンが挙げられる。また、上記芳香族系石油樹脂は、クマロン単位を含んでいてもよい。また、脂肪族オレフィン単位、フェノール単位、クレゾール単位を含んでいてもよい。
【0077】
芳香族系石油樹脂の軟化点は、46℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上である。46℃未満であると、グリップ性能の向上効果が低下するおそれがある。また、該軟化点は、140℃以下、好ましくは130℃以下である。140℃を超えると、樹脂の分散性が低下し、破断時伸び、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0078】
芳香族系石油樹脂としては、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、芳香族ビニル重合体(α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂)、C9ハイドロカーボン樹脂等が挙げられる。なかでも、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性がバランスよく得られるという点から、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、芳香族ビニル重合体が好ましく、クマロンインデン樹脂、芳香族ビニル重合体がより好ましい。また、クマロンインデン樹脂、芳香族ビニル重合体を併用することも好ましい。
【0079】
上記芳香族系石油樹脂であるクマロンインデン樹脂は、上記液状クマロンインデン樹脂と軟化点が異なるのみである。上記群より選択される樹脂として、上記芳香族系石油樹脂であるクマロンインデン樹脂のみを配合する場合、該クマロンインデン樹脂の好ましい配合量は、上述の上記群より選択される樹脂の合計含有量と同様である。
【0080】
上記芳香族ビニル重合体では、芳香族ビニル単量体(単位)として、スチレン、α−メチルスチレンが使用され、それぞれの単量体の単独重合体、両単量体の共重合体のいずれでもよい。上記芳香族ビニル重合体としては、経済的で、加工しやすく、ウェットグリップ性能に優れていることから、α−メチルスチレン若しくはスチレンの単独重合体又はα−メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。
【0081】
上記芳香族ビニル重合体としては、たとえばArizona chemical社製のSYLVARES SA85、SA100、SA120、SA140、Eastman chemical社製のR2336などの市販品を好適に用いることができる。
【0082】
芳香族ビニル重合体の軟化点は、好ましくは46℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上である。46℃未満であると、ドライグリップ性能が低下するおそれがある。また、該軟化点は、好ましくは140℃以下、より好ましくは100℃以下である。140℃を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。
なお、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、芳香族系石油樹脂、芳香族ビニル重合体の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0083】
上記群より選択される樹脂として、芳香族ビニル重合体のみを配合する場合、芳香族ビニル重合体の好ましい配合量は、上述の上記群より選択される樹脂の合計含有量と同様である。
【0084】
本発明のゴム組成物はカーボンブラックを含むことが好ましい。これにより、良好な補強性が得られ、優れた操縦安定性、破断時伸び、耐摩耗性が得られる。
【0085】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は40m/g以上が好ましく、90m/g以上がより好ましい。40m/g未満では、充分な破断時伸び、耐摩耗性が得られないおそれがある。該NSAは200m/g以下が好ましく、130m/g以下がより好ましい。200m/gを超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0086】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上である。3質量部未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。50質量部を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0087】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.2質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。0.5質量部未満では、充分な操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、加工時の粘度(加工性)が得られない傾向がある。また、該酸化亜鉛の含有量は、好ましくは2.9質量部以下、より好ましくは2.7質量部以下である。2.9質量部を超えると、充分な耐摩耗性が得られない傾向がある。
【0088】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、ステアリン酸、各種老化防止剤、ワックス、オイル、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0089】
オイル、液状樹脂、及び上記群より選択される樹脂の合計含有量は、本発明の効果が充分に得られる点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2〜30質量部、より好ましくは6〜25質量部である。
【0090】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。該ゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッドに好適に使用できる。
【0091】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【実施例】
【0092】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0093】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BR:ランクセス(株)製のCB24(Nd系触媒を用いて合成したBR(Nd系BR)、シス含量:96質量%、ビニル含量:0.7質量%、ML1+4(100℃):45、Mw/Mn:2.69、Mw:50万、Mn:18.6万)
SBR:JSR(株)製のHPR355(変性S−SBR、結合スチレン量:27質量%、アルコキシシランでカップリングし末端に導入、上記式(1)で表される化合物によりSBRの重合末端が変性された変性S−SBR)
NR:TSR20
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(NSA:111m/g)
シリカ1:Rhodia社製のZeosil 1085Gr(BET比表面積:90m/g)
シリカ2:Rhodia社製のZeosil 1115Gr(BET比表面積:115m/g)
シリカ3:Rhodia社製のZeosil 1165MP(BET比表面積:165m/g)
シリカ4:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(BET比表面積:175m/g)
シリカ5:Rhodia社製のZeosil Premium 200MP(BET比表面積:215m/g)
シリカ6:エボニックデグッサ社製のU9000Gr(BET比表面積:235m/g)
シリカ7:トクヤマ(株)製の試作品(BET比表面積:260m/g)
シリカ8:トクヤマ(株)製の試作品(BET比表面積:280m/g)
クマロンインデン樹脂1:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:5〜15℃)
クマロンインデン樹脂2:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C30(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:20〜30℃)
クマロンインデン樹脂3:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C80(クマロンインデン樹脂、軟化点:75〜85℃)
クマロンインデン樹脂4:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C100(クマロンインデン樹脂、軟化点:95〜105℃)
クマロンインデン樹脂5:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C120(クマロンインデン樹脂、軟化点:115〜125℃)
石油系C5レジン:丸善石油化学(株)製のマルカレッツレジンT−100AS(C5系石油樹脂、軟化点:102℃)
芳香族ビニル重合体:Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃、Mw:1000)
ポリテルペン樹脂1:アリゾナケミカル社製のSylvares TRA25(液状ポリテルペン樹脂、軟化点:25℃)
ポリテルペン樹脂2:アリゾナケミカル社製のSylvares TR5147(ポリテルペン樹脂(リモネン樹脂)、軟化点:115℃)
テルペンフェノール樹脂:アリゾナケミカル社製のSylvares TP115(テルペンフェノール樹脂、軟化点:115℃、水酸基価:50KOHmg/g)
ガムロジン樹脂:荒川化学工業(株)製の中国ガムロジンWW(ガムロジン樹脂、軟化点:60℃)
石油系C9レジン:Rutger chemical Gmbb社製のTT120(C9ハイドロカーボン樹脂、軟化点:120℃)
TDAE:H&R社製のVIVATEC500
ワックス:日本精蝋(株)製のOzoace355
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
TMQ:大内新興化学工業(株)製のノクラック224
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
シランカップリング剤:デグッサ(株)製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
5%オイル含有粉末硫黄:細井化学(株)製のHK−200−5
TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
【0094】
実施例及び比較例
表1及び2に示す配合処方にしたがい、1.7Lのバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外のものを、フィラー薬品投入完了後、5分間練り込み、最高温度150℃に達した時点で、排出した。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加して95℃で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件下で12分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:245/40R18)を得た。
【0095】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1及び2に示す。
【0096】
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、温度40℃、周波数10Hz、初期歪10%及び動歪2%の条件下で、上記加硫ゴム組成物の複素弾性率E*(MPa)及び損失正接tanδを測定した。なお、E*が大きいほど剛性が高く、操縦安定性が優れることを示し、tanδが小さいほど発熱性が低く、低燃費性が優れることを示す。
【0097】
(ウェットグリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行なった。その際における、操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、実施例8を100として指数表示をした。数値が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0098】
(引張試験)
加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定した。EBが大きいほど、破断時伸びに優れることを示す。
【0099】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行なった。その際におけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時8.0mm)、耐摩耗性として評価した。残溝量が多いほど、耐摩耗性に優れる。実施例8の残溝量を100として指数表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
ジエン系ゴム、所定量の特定のBET比表面積を有するシリカ、硫黄、及び所定量の特定の軟化点を有する液状樹脂を含む実施例は、操縦安定性、低燃費性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、耐摩耗性がバランスよく得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム、BET比表面積が170〜270m/gのシリカ、硫黄及び軟化点−20〜45℃の液状樹脂を含み、
ゴム成分100質量部に対して、前記液状樹脂の含有量が0.5〜20質量部、前記シリカの含有量が40〜120質量部であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記液状樹脂が、液状クマロンインデン樹脂及び/又は液状テルペン系樹脂である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
軟化点46〜160℃のテルペン系樹脂、軟化点46〜140℃のロジン系樹脂、及び軟化点46〜140℃の芳香族系石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記芳香族系石油樹脂が、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、及び/又は芳香族ビニル重合体であり、
前記芳香族ビニル重合体が、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂である請求項3記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカのBET比表面積が190〜250m/gである請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
ゴム成分100質量部に対して、酸化亜鉛の含有量が0.5〜2.9質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−53296(P2013−53296A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90339(P2012−90339)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】