説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】シリカを配合したゴム組成物の発熱性及びウェットグリップ性能を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラックを5〜18重量部、シリカを前記カーボンブラックとの合計が70〜110重量部になるように配合すると共に、前記カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が60〜140m2/g、DBP吸収量が100〜150ml/100gであり、かつ1.55<D75/D25<2.0及びCA<0.35×DBP+2.0の関係(D25及びD75は、遠心沈降法で測定したアグリゲートの25%及び75%頻度値、DBPはDBP吸収量、CAは透過型電子顕微鏡によるアグリゲートの二次元投影画像を画像解析し、アグリゲートの包絡面積Sと投影面積Aから計算される形状係数CA=(S−A)/A)×100を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカを配合したゴム組成物の発熱性及びウェットグリップ性能を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤには、燃費性能が優れることとウェットグリップ性能などの操縦安定性が優れることを高度に向上させることが求められる。空気入りタイヤの燃費性能を向上するためには転がり抵抗を低減すること、即ちタイヤを構成するゴム組成物の発熱性を小さくすることが必要である。ゴム組成物の発熱性を小さくすることの指標としては、高温領域のヒステリシスロス(tanδ)を小さくすることが知られている。またウェットグリップ性能を改良する指標としては、低温領域のヒステリシスロス(tanδ)を大きくすることが知られている。
【0003】
低発熱性及びウェットグリップ性能を共に改良するため、トレッドゴムの補強充填剤としてカーボンブラックの一部又は全部に代えてシリカを配合することにより、高温領域のヒステリシスロス(tanδ)を小さくしながら低温領域のヒステリシスロス(tanδ)を大きくすることが行なわれている。しかし、シリカはジエン系ゴムに対する分散性が悪いため、シリカと共にシランカップリング剤を配合することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載のようにシランカップリング剤を併用しても、シリカの配合量を多くすると、シリカの分散性を十分に改良することができず、2次凝集が起きるためシリカの配合量に見合うようにヒステリシスロスのバランスを改良する効果を得ることができなかった。すなわちシリカを配合したゴム組成物の低発熱性とウェットグリップ性能とをいっそう向上するには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−48476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シリカを配合したゴム組成物の低発熱性及びウェットグリップ性能を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラックを5〜18重量部、シリカを前記カーボンブラックとの合計が70〜110重量部になるように配合すると共に、前記カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が60〜140m2/g、DBP吸収量が100〜150ml/100gであり、かつ下記式(1)及び(2)の関係を満たすことを特徴とする。
1.55<D75/D25<2.0 (1)
CA<0.35×DBP+2.0 (2)
(上記式中、D25及びD75は、遠心沈降法で測定したアグリゲートの25%頻度値(単位:nm)及び75%頻度値(単位:nm)、DBPはDBP吸収量(単位:ml/100g)、CAは透過型電子顕微鏡によるアグリゲートの二次元投影画像を画像解析し、アグリゲートの包絡面積Sと投影面積Aから計算される形状係数CA=(S−A)/A×100である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に対し、CTAB吸着比表面積が60〜140m2/g、DBP吸収量が100〜150ml/100g、かつ前記条件(1)及び(2)を満たすカーボンブラックを5〜18重量部配合すると共に、シリカとカーボンブラックの合計量を70〜110重量部にするようにしたので、ジエン系ゴム中のシリカの分散性を改良し、低発熱性及びウェットグリップ性能を従来レベル以上に向上することができる。
【0009】
前記ジエン系ゴムとしては、ガラス転移温度が−45℃〜−25℃のスチレンブタジエンゴムが好ましく、ゴム組成物の低発熱性及びウェットグリップ性能を一層高いレベルで両立することができる。
【0010】
このタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に使用した空気入りタイヤは、転がり抵抗を低減して燃費性能を優れたものにすると共に、操縦安定性、特にウェットグリップ性能が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムで構成される。ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。なかでも天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムが好ましく、特にスチレンブタジエンゴムが好ましい。これらのジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0012】
本発明において、好適に使用されるスチレンブタジエンゴムのガラス転移温度は、好ましくは−45℃〜−25℃、より好ましくは−40℃〜−30℃であるとよい。このようなスチレンブタジエンゴムを含有することにより、空気入りタイヤのトレッド部に使用したときの低発熱性及びウェットグリップ性能のバランスを一層向上することができる。本明細書において、スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。なお、スチレンブタジエンゴムが油展品である場合には、オイルを除いた原料ゴムのガラス転移温度とする。
【0013】
ガラス転移温度−45℃〜−25℃のスチレンブタジエンゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80〜100重量%である。ガラス転移温度−45℃〜−25℃のスチレンブタジエンゴムの含有量が70重量%未満であると、低発熱性及びウェットグリップ性能を十分に改良することができないことがある。
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、シリカを配合することにより低発熱性及びウェットグリップ性能を改良する。シリカは、ゴム組成物のヒステリシスロスに作用しtanδ(60℃)を小さくしタイヤにしたときの転がり抵抗を低減すると共に、tanδ(0℃)を大きくしウェットグリップ性能を改良することができる。しかしシリカは粒子表面に存在するシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集しやすいため、ジエン系ゴムに対する分散性が悪いという課題がある。ゴム組成物中にシリカの凝集塊が存在すると高歪み域の動的弾性率が低歪み域の動的弾性率よりも低くなるという現象(ペイン効果)が発生する。このようにシリカの分散性が悪いと、ヒステリシスロスを調節するというシリカを配合した作用効果が十分に得られない。このため後述するように、特定のカーボンブラックを配合することにより、シリカの分散性を向上しペイン効果を低減すること、すなわち低発熱性及びウェットグリップ性能を改良することができる。
【0015】
シリカとしては、BET比表面積が好ましくは50〜300m2/g、より好ましくは100〜230m2/gのものを使用するとよい。シリカのBET比表面積が50m2/g未満であると、フィラーとしての補強性が不十分になり耐摩耗性が低下することがある。また、シリカのBET比表面積が300m2/gを超えると、シリカを良好に分散させるのが困難になり低発熱性及びウェットグリップ性能を改良する効果が十分に得られないことがある。なお、本発明において、シリカのBET比表面積は、ISO 5794/1に準拠して測定するものとする。
【0016】
シリカの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し特定のカーボンブラックとの合計が70〜110重量部、好ましくは85〜100重量部になるようにする。シリカ及びカーボンブラックの合計が70重量部未満では、ゴムに対する補強性能が十分に得られず耐摩耗性が不足する。またシリカ及びカーボンブラックの合計が110重量部を超えると、発熱性が大きくなりタイヤにしたときの転がり抵抗が悪化する。
【0017】
シリカの種類としては、通常タイヤ用ゴム組成物に配合されるシリカ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。
【0018】
また、シリカと共にシランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を改良することができ好ましい。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し、好ましくは3〜15重量%、より好ましくは4〜10重量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量が3重量%未満であると、シリカの分散性を改良する効果が得られないことがある。また、シランカップリング剤の配合量が15重量%を超えると、シランカップリング剤同士が凝集・縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0019】
シランカップリング剤の種類としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましい。硫黄含有シランカップリング剤としては、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0020】
本発明のタイヤ用ゴム組成物では、特定のアグリゲートの形状特性を有するカーボンブラックを配合することにより、ジエン系ゴム中のシリカの分散性を改良し、シリカ配合効果を最大にし低発熱性及びウェットグリップ性能を向上することができる。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し5〜18重量部、好ましくは7〜15重量部にする。カーボンブラックの配合量が5重量部未満であると、ジエン系ゴム中のシリカの分散性を改良することができない。またカーボンブラックの配合量が18重量部を超えると、シリカの分散性の改良効果が却って低下し、低発熱性及びウェットグリップ性能を共に改良することができない。
【0021】
本発明で使用するカーボンブラックは、CTAB吸着比表面積が60〜140m2/g、好ましくは65〜130m2/gのハードカーボンブラック領域に属する。CTAB吸着比表面積が60m2/g未満であると、ゴム組成物にしたときの引張り破断伸びが低下し、トレッドゴムに要求される性能が不足する。また耐摩耗性が低下する。CTAB吸着比表面積が140m2/gを超えると、ゴム組成物の発熱性が大きくなる。CTAB吸着比表面積は、JIS K6217−3に準拠して、測定するものとする。
【0022】
また、カーボンブラックのDBP吸収量は、100〜150ml/100gであり、好ましくは115〜140ml/100gである。DBP吸収量が100ml/100g未満であるとウェットグリップ性能及び耐摩耗性が不足する。またゴム組成物の成形加工性が低下しカーボンブラックの分散性が悪化するのでカーボンブラックの補強性能が十分に得られない。DBP吸収量が150ml/100gを超えると、粘度が高くなり加工性が悪化する。DBP吸収量は、JIS K6217−4吸油量A法に準拠して、測定するものとする。
【0023】
本発明において、カーボンブラックは上述したコロイダル特性を有すると共に、そのアグリゲートが以下の式(1)及び式(2)の両方を満たすことを特徴とする。下記式(1)及び/又は(2)を満たさないカーボンブラックでは、ジエン系ゴム中のシリカの分散性を改良することができない。
1.55<D75/D25<2.0 (1)
CA<0.35×DBP+2.0 (2)
(上記式中、D25及びD75は、遠心沈降法で測定したアグリゲートの25%頻度値(単位:nm)及び75%頻度値(単位:nm)、DBPはDBP吸収量(単位:ml/100g)、CAは透過型電子顕微鏡によるアグリゲートの二次元投影画像を画像解析し、アグリゲートの包絡面積Sと投影面積Aから計算される形状係数CA=(S−A)/A×100である。)
【0024】
上記式(1)において、D25及びD75は、JIS K6217−6に準拠した遠心沈降法で測定したアグリゲートのストークス相当径を小粒径のものから累積させたとき、それぞれ25%頻度値及び75%頻度値(単位:nm)である。D25及びD75の比D75/D25は、アグリゲートのストークス相当径の分布の広さに相当し、本発明で使用するカーボンブラックは、アグリゲートのストークス相当径の分布がブロードであることを意味する。
【0025】
本発明では、D75/D25は、1.55より大きく2.0より小さい。好ましくは1.75〜1.85であるとよい。D75/D25が1.55以下の場合には、シリカの分散性を改良する効果が得られない。またゴム組成物の発熱性が大きくなる。またD75/D25が2.0以上であると、ゴム組成物の耐摩耗性が悪化する。
【0026】
上記式(2)において、DBPはDBP吸収量(単位:ml/100g)、CAは形状係数でありアグリゲートの二次元投影画像の画像解析から求められる。カーボンブラックを透過型電子顕微鏡で観察し、撮像されたアグリゲートの二次元投影画像の画像解析により、投影面積A(nm2)及び包絡面積S(nm2)を求める。投影面積Aはアグリゲートの二次元投影画像の面積(nm2)、包絡面積Sはアグリゲートの二次元投影画像においてアグリゲートの分岐状部分の頂点を結んだ多角形の面積(nm2)である。これら投影面積A及び包絡面積Sから、形状係数CA=(S−A)/A×100を算出する。
【0027】
カーボンブラックのアグリゲートの二次元投影画像は、以下の方法で観察した。先ず、乾燥させたカーボンブラック試料1mgを試験管に入れ、クロロホルム2mlを加え、超音波で3分間分散させた。分散させた試料をカーボンブラック支持膜に固定し、透過型電子顕微鏡(直接倍率60000倍)で撮影した。得られた二次元投影画像を画像解析装置(NIRECO社製LUZEX−F)にかけ、1000個以上のアグリゲートについて、投影面積A、包絡面積Sを求め、それぞれの個数平均値から形状係数CAを算出した。
【0028】
形状係数CAの計算式の分子に相当する(S−A)は、包絡面積Sから投影面積Aを差し引いたアグリゲートの内部の空隙面積の指標である。形状係数CAは、この空隙面積の指標(S−A)の投影面積Aに対する百分率であり、アグリゲートの単位投影面積当たりの空隙面積の割合を意味する。
【0029】
上記式(2)は、形状係数CAが、DBP吸収量の関係式(0.35×DBP+2.0)の値より小さいことを意味する。形状係数CAが、DBP吸収量の関係式(0.35×DBP+2.0)の値以上であると、ゴム中の隣接するカーボンブラックのアグリゲート間の過剰な接触が多くなるため、ゴムの発熱が大きくなる。
【0030】
上述したコロイダル特性を有するカーボンブラックは、例えば、炉の軸方向に装着した燃料バーナーの周囲から燃焼用空気を供給する空気導入口を有する燃焼室に引き続き、同軸的に連設された原料供給口を有する2〜3段階の狭径反応室と広径反応室からなるオイルファーネス炉を用い、原料の供給箇所や供給量、燃料油及び空気、酸素ガス又はその混合物からなる燃焼用ガスの供給量、反応停止時間等を調整することによって製造することができる。2〜3段階の狭径反応室と広径反応室からなるオイルファーネス炉ではその段差形状によって、高温高速の燃焼ガスの縮流と拡大流れが存在する。一方、アグリゲート形状は力一ポンブラック粒子同士の衝突頻度や衝突強度、衝突方向で決まるため、アグリゲート形状を制御するにはオイルファーネス炉の縮流や拡大流れを考慮して反応ポイントを制御しなければならない。上述したカーボンブラックを製造するには、段差形状による燃焼ガスの縮流及び拡大流れを考慮し、適宜、原料供給箇所や供給量、燃料量、酸素ガス又はその混合物からなる燃焼用ガスの供給量、反応停止時間等を調整することが有効である。特に、狭径反応室とその上流に位置する広径反応室で分割して原料を供給することが望ましい。
【0031】
タイヤ用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、各種無機充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0032】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤの構成部材、特にトレッド部を構成するのに好適に使用することができる。このタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能を従来レベル以上に向上することができる。このため、優れた燃費性能を有すると共に、操縦安定性にも優れた空気入りタイヤが得られる。
【0033】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
カーボンブラックCB1〜CB6の製造及び性状
炉の軸方向に装着した燃料バーナーの周囲から燃焼用空気を供給する空気導入口を有する燃焼室(内径900mm、長さ2100mm)に引続き、半角15°のテーパ角を有する縮小テーパ部、円筒直管部(内径530mm、長さ400mm)、炉軸に対して直角方向に原料が供給できる原料供給口を備えた第一反応室(内径370mm、長さ3700mm)、第二反応室(内径254mm、長さ500mm)、半角15°のテーパ角を有する第三反応室(長さ900mm)及び複数の反応停止用冷却水スプレー装置(QWNo.1〜QWNo.8)を備えた反応停止部(内径420mm)からなるファーネス炉を用いた。尚、原料供給口は、第一反応室に4箇所(FNo.1〜FNo.4)、第二反応室に一箇所(FNo.5)、第三反応室に3箇所(FNo.6〜FNo.8)設置されている。
【0035】
原料に比重1.05(100/4℃)、BMCI150、エングラー粘度(70/20℃)1.32、トルエン不溶分0.02%の石炭系原料油を、燃料に比重0.96(15/4℃)、灰分0.001%、エングラー粘度(40/20℃)1.11、トルエン不溶分0.007の炭化水素油を用いて、燃焼用空気供給量、燃焼用空気温度、燃料油供給量、燃料霧化空気量、原料供給量、原料供給箇所(第1段及び第2段の2段供給、又は第1段供給)、第1段原料供給量比率、反応停止箇所、後段原料反応滞留時間を調整することにより製造し、これらについて表1に示すように調整することにより、CB1〜CB6の6種類のカーボンブラックを製造した。また、得られたカーボンブラックのコロイダル特性及びアグリゲートの二次元投影画像を画像解析した特性値を前述した方法により求め、得られた結果を表1に示した。また市販されているカーボンブラックから3種類のカーボンブラックCB7〜CB9を入手し、それぞれのカーボンブラックのコロイダル特性及びアグリゲートの二次元投影画像を画像解析した特性値を前述した方法により求め、得られた結果を表2に示した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
タイヤ用ゴム組成物の調製及び評価
表1,2に示す9種類のカーボンブラック(CB1〜CB9)を用いて、表3,4に示す配合からなる15種類のゴム組成物(実施例1〜6、比較例1〜9)を調製するに当たり、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く成分を秤量し、1.6L密閉式バンバリーミキサーで4分間混練しマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチをラボロールに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え、混合しタイヤ用ゴム組成物を得た。
【0039】
得られた15種類のゴム組成物を、それぞれ所定形状の金型中で、150℃、30分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法により動的粘弾性特性(△G′,0℃及び60℃のtanδ)を評価した。
【0040】
△G′(ペイン効果)
αテクノロジー社製RPA2000を用い、得られた試験片の歪せん断応力G′を、歪0.28%〜30.0%の間で測定した。歪0.28%のときの歪せん断応力G′(0.28)と歪30.0%のときの歪せん断応力G′(30)との差△G′=G′(0.28)−G′(30)をペイン効果として算出した。得られた結果は、比較例1を100とする指数として表3,4に示した。この指数が小さいほどペイン効果が小さくシリカの分散性が良好であることを意味する。
【0041】
tanδ(0℃及び60℃)
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度0℃及び60℃におけるtanδを測定した。得られた結果は、比較例1の値をそれぞれ100とする指数として表3,4に示した。tanδ(0℃)の指数が大きいほどタイヤにしたときウェットグリップ性能が優れることを意味する。またtanδ(60℃)の指数が小さいほど発熱性が小さく、タイヤにしたとき転がり抵抗が小さく燃費性能が優れることを意味する。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
なお、表3,4において使用した原材料の種類を下記に示す。
・E−SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1723、ガラス転移温度=−56℃、ゴム成分100重量部にオイル37.5重量部を配合した油展品。
・S−SBR:スチレンブタジエンゴム、旭化成社製E581、ガラス転移温度=−36℃、ゴム成分100重量部に対しオイル37.5重量部を配合した油展品。
・CB1〜CB6:上述した製造で得られた表1に示す試作カーボンブラック
・CB7:カーボンブラックN220、新日化カーボン社製ニテロン#300
・CB8:カーボンブラックN234、新日化カーボン社製ニテロン#300IH
・CB9:カーボンブラックN339、新日化カーボン社製ニテロン#200IS
・シリカ:ローディア社製Zeosil 1165MP
・カップリング剤:シランカップリング剤、エボニックデグサ社製Si69
・アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・老化防止剤1:FLEXSYS社製SANTOFLEX6PPD
・老化防止剤2:Lanxess社製Vulkanox TMQ
・加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ
・加硫促進剤2:大内新興化学工業社製ノクセラーD
・硫黄:アクゾノーベル社製クリステックスHS OT 20
【0045】
表3から明らかなように実施例1〜6のタイヤ用ゴム組成物は、ペイン効果(△G′)が小さくシリカの分散性が良好であり、ウェットグリップ性能(0℃のtanδ)及び発熱性(60℃のtanδ)が優れることが確認された。
【0046】
比較例1のゴム組成物は、カーボンブラックCB4が上述したアグリゲート特性の関係式(1)及び(2)を同時に満たしていないため、実施例1,2及び5のゴム組成物に比べシリカの分散性(△G′)が劣る。このためtanδ(0℃)及びtanδ(60℃)も不十分である。
【0047】
表4から明らかなように、比較例2〜6のゴム組成物は、カーボンブラックCB5〜CB9が上述したアグリゲート特性の関係式(1)及び(2)を同時に満たしていないため、実施例1,2及び5のゴム組成物に比べシリカの分散性(△G′)が劣る。またtanδ(0℃)及びtanδ(60℃)も不十分である。
【0048】
比較例7のゴム組成物は、カーボンブラックCB2の配合量が5重量部未満であるため、シリカの分散性(△G′)、tanδ(0℃)及びtanδ(60℃)が劣る。比較例8のゴム組成物は、カーボンブラックCB2の配合量が20重量部を超えるため、シリカの分散性(△G′)、tanδ(0℃)及びtanδ(60℃)が劣る。比較例9のゴム組成物は、シリカ及びカーボンブラックCB2の配合量の合計が110重量部を超えるため、シリカの分散性(△G′)、tanδ(0℃)及びtanδ(60℃)が劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラックを5〜18重量部、シリカを前記カーボンブラックとの合計が70〜110重量部になるように配合すると共に、前記カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が60〜140m2/g、DBP吸収量が100〜150ml/100gであり、かつ下記式(1)及び(2)の関係を満たすことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
1.55<D75/D25<2.0 (1)
CA<0.35×DBP+2.0 (2)
(上記式中、D25及びD75は、遠心沈降法で測定したアグリゲートの25%頻度値(単位:nm)及び75%頻度値(単位:nm)、DBPはDBP吸収量(単位:ml/100g)、CAは透過型電子顕微鏡によるアグリゲートの二次元投影画像を画像解析し、アグリゲートの包絡面積Sと投影面積Aから計算される形状係数CA=(S−A)/A×100である。)
【請求項2】
前記ジエン系ゴムが、ガラス転移温度が−45℃〜−25℃のスチレンブタジエンゴムを含む請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物でトレッド部を構成した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−23538(P2013−23538A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158312(P2011−158312)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】