説明

タイヤ用印刷装置およびタイヤ表面印刷方法

【課題】煩雑な作業を必要となることなしに、タイヤ表面に文字や絵柄等を鮮明に印刷する。
【解決手段】タイヤ用印刷装置1は、タイヤ表面に対して塗料を吐出し、塗布するプリンタヘッド3、4と、プリンタヘッド3、4をタイヤTの幅方向Xに沿って移動させる幅方向移動部6、7と、プリンタヘッド3、4をタイヤTの径方向Yに沿って移動させる径方向移動部9、10と、プリンタヘッド3、4を、タイヤTの周方向Zに沿う軸線Z1周りに揺動させる揺動部12、13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの表面に文字や絵柄等を印刷するタイヤ用印刷装置およびタイヤ表面印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの表面に文字や絵柄等を印刷する装置としては、特許文献1に開示された旋回式タイヤ用プリンタが知られており、このものは、基台に固定されたタイヤの大きさに合わせて、中心位置、高さ、旋回半径を調節する機能を有し、タイヤの中心に直立する支柱を軸にタイヤの側面上を旋回しながら文字や絵柄を印刷するものである。
【0003】
しかしながら、タイヤの側面は平面でなく曲面であるから、特許文献1記載のプリンタでは、タイヤ側面の位置によって、プリンタヘッドの、タイヤ表面に対する位置、姿勢が異なり、すなわち、図4に示すように、タイヤ側面の最大幅位置では、タイヤTの側面とプリンタヘッド103の距離が最小となり、そこから離れるに連れてタイヤTの側面とプリンタヘッド103の距離は大きくなっていく。そのため、タイヤTの側面とプリンタヘッド103の距離が過大となった位置ではプリンタヘッド103から吐出されたインクが拡散し、文字や絵柄等がぼけるという問題が生じる。また、特許文献1のプリンタでは、プリンタヘッドをタイヤの側面に沿って旋回させるものであるから、タイヤの大きさが変更されるたびに、旋回半径や高さを調節する必要が生じて作業が煩雑となる。
【0004】
なお、これらの問題については、特許文献2に記載のように、タイヤの側面を押えローラにより圧接して印刷面を平坦にしつつ、タイヤを回転してインクジェットヘッドにより印刷を行うことで解消することも不可能ではないが、このように、タイヤの側面を押えローラにより圧接し印刷面を平坦にした状態で印刷した場合には、タイヤに内圧を付加しタイヤ側面が曲面となった際(例えばタイヤ使用時)に文字や絵柄等が引き伸ばされる結果、文字や絵柄がいびつになり外観を損ねるという問題がある。また、特許文献2記載の技術では、押えローラによりタイヤの側面を均等に圧接しなければならないことから作業が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−111242号公報
【特許文献2】特開2010−125440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、本発明は、上述した問題点を解決し、煩雑な作業を必要とすることなしに、タイヤ表面に文字や絵柄等を鮮明に印刷することができるタイヤ用印刷装置およびタイヤ表面印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のタイヤ用印刷装置は、タイヤ表面に対して塗料を吐出し、塗布するプリンタヘッドを備えるタイヤ用印刷装置であって、前記プリンタヘッドを前記タイヤの幅方向に沿って移動させる幅方向移動部と、前記プリンタヘッドを前記タイヤの径方向に沿って移動させる径方向移動部と、前記プリンタヘッドを、前記タイヤの周方向に沿う軸線周りに揺動させる揺動部と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
なお、本発明のタイヤ用印刷装置は、前記プリンタヘッドを複数備えることが好ましい。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明のタイヤ表面印刷方法は、回転するタイヤの表面にプリンタヘッドから塗料を吐出し、塗布して印刷を行うタイヤ表面印刷方法であって、印刷を行うにあたり、前記プリンタヘッドを、前記タイヤの幅方向および径方向に沿って移動させるとともに前記タイヤの周方向に沿う軸線周りに揺動させて、該プリンタヘッドの、タイヤ表面に対する距離および姿勢を一定に保つことを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明のタイヤ表面印刷方法にあっては、前記プリンタヘッドの、タイヤ表面に対する距離および姿勢をプログラムで制御することが好ましい。
【0011】
また、本発明のタイヤ表面印刷方法にあっては、前記タイヤをリム組みし、リム組みした該タイヤに内圧を充填した状態で、前記プリンタヘッドによるタイヤ表面への印刷を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタイヤ用印刷装置および印刷方法によれば、印刷を行うにあたり、プリンタヘッドを、タイヤの幅方向および径方向に沿って移動させるとともにタイヤの周方向に沿う軸線周りに揺動させることで、該プリンタヘッドの、タイヤの側面に対する距離および姿勢を適正に保つことができ、プリントヘッドから吐出された塗料を拡散させることなくタイヤの表面に塗布することができるので、文字や絵柄等をぼけることなく鮮明に印刷することが可能となる。また、タイヤの側面を押えローラにより圧接して印刷面を平坦にするというような従来技術における煩雑な作業も不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にしたがう実施の形態に係るタイヤ表面印刷方法を実施するタイヤ用印刷装置の概略構成図である。
【図2】(a)は図1のタイヤ用印刷装置の一部拡大図、(b)は図2(a)中のA−A矢視図である。
【図3】図1のタイヤ用印刷装置を用いてタイヤの側面に印刷を行う際の、プリンタヘッドのタイヤ側面に対する位置、姿勢を示す模式図である。
【図4】従来の印刷装置を用いてタイヤの側面に印刷を行う際の、プリンタヘッドのタイヤ側面に対する位置、姿勢を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係るタイヤ表面印刷方法を実施するタイヤ用印刷装置の概略構成図であり、図2(a)は図1のタイヤ用印刷装置の一部拡大図、図2(b)は図2(a)中のA−A矢視図である。なお、図中、符号Xは、印刷対象であるタイヤの幅方向を指し、符号Yは、該タイヤの径方向を指し、符号Zは、該タイヤの周方向を指し、符号Z1は周方向Zに沿う軸線である。
【0015】
図1に示すタイヤ用印刷装置1は、タイヤ表面(側面)に対して塗料を吐出し、塗布する少なくとも1つ、ここでは2つのプリンタヘッド3、4と、プリンタヘッド3、4をタイヤTの軸方向Xに沿って移動させる幅方向移動部6、7と、プリンタヘッド3、4をタイヤTの径方向Yに沿って、幅方向移動部6、7とともに移動させる径方向移動部9、10と、プリンタヘッド3、4を、タイヤTの周方向に沿う軸線Z周りに揺動させる揺動部12、13と、を備える。
【0016】
なお、プリンタヘッド3、4は、インクジェット方式のほかに、エアスプレー方式、エアレススプレー方式等を採用することが可能である。また、同時回転で多色刷りを行うときは、塗色数に応じて、本実施形態のように複数のプリンタヘッド3、4を配置する。
【0017】
幅方向移動部6、7および径方向移動部9、10には、ここでは、送りネジ機構を採用し、具体的には、ボールネジ(図示省略)と、該ボールネジを回転させるサーボモータ6a、7a、9a、10aと、ボールネジと螺合してプリンタヘッド3、4を移動させるスライダ(図示省略)と、位置検出器(図示省略)とを有するものである。サーボモータ6a、7a、9a、10aの動作は、位置検出器により検出され、検出した位置は制御装置であるPC(パーソナルコンピュータ)15に伝達される。なお、幅方向移動部6、7および径方向移動部9、10は、プリンタヘッド3、4を幅方向Xおよび径方向Yに移動させることができれば、その移動機構に限定はなく、送りネジ機構に代えて油圧シリンダを用いてプリンタヘッド3、4を移動させるようにしてもよい。径方向移動部9、10は、柱部17aとビーム部17bからなる門型のフレーム17のビーム部17bに支持される。幅方向移動部6、7は、径方向移動部9、10のスライダに支持されて径方向Yに移動可能である。
【0018】
揺動部12、13は、図2(a)、(b)に一方の揺動部12を代表して示すように、プリンタヘッド3に連結された揺動軸12aと、この揺動軸12aをプリンタヘッド3とともに軸線Z1周りに揺動させるサーボモータと、揺動軸12aの揺動角を検出する揺動角検出器(図示省略)とを有し、揺動角検出器で検出された揺動角は、PC15に伝達される。なお、サーボモータに代えて油圧シリンダや圧電素子等を用いてプリンタヘッド3、4を軸線Z1周りに揺動させるようにしてもよい。
【0019】
また、このタイヤ用印刷装置1は、タイヤTのビード部Bに嵌め込まれてタイヤTを保持する上側リム19および下側リム20と、上側リム19に連結されたタイヤ回転主軸22と、下側リム20に連結された従動軸24と、タイヤ回転主軸22を回転させる回転主軸駆動装置26とを備え、タイヤTは、タイヤ回転主軸22の回転にともなって回転する。また、従動軸24の内部には、従動軸24の下端に設けられた圧縮空気の導入口28とタイヤの内部とを連通する連通路24aが形成されており、該連通路24aを介してタイヤの内部に空気を出し入れ可能に構成されている。なお、図中、符号29は、従動軸24を支持する軸受、符号30は、フレーム17の柱部17aに設けられたレール31に沿って走行し、軸受29を従動軸24とともに昇降させる昇降部である。
【0020】
PC15は、回転制御手段33と、移動部制御手段34と、揺動部制御手段35と、印刷制御手段36とを備える。回転制御手段33は、回転主軸駆動装置26に接続され、タイヤTが一定速度で回転するように回転主軸駆動装置26を制御する。移動部制御手段34は、幅方向移動部6、7および径方向移動部9、10に接続され、プリンタヘッド3、4がタイヤ側面上の所定位置に位置するように幅方向移動部6、7および径方向移動部9、10をそれぞれ制御する。揺動部制御手段35は、揺動部12、13に接続され、プリンタヘッド3、4がタイヤ側面の曲面に対して所定の角度(略平行)となるよう揺動部12、3を制御する。印刷制御手段36は、プリンタヘッド3、4に接続され、プリンタヘッド3、4に印刷制御信号と印刷データ信号を出力する。
【0021】
なお、回転制御手段33、移動部制御手段34、揺動部制御手段35、印刷制御手段36のそれぞれの機能は、PC15が保持するソフトウエア(プログラム)を実行することによって実現される。タイヤTの形状に関する情報は、あらかじめPC15に入力しておいてもよいし、タイヤ側面の輪郭形状(曲面)を読み取るスキャナーを設けて、該スキャナーで読み取ったデータをPC15に入力するようにしてもよい。
【0022】
次に、本実施形態のタイヤ用印刷装置1を用いてタイヤTの表面(側面)に文字や絵柄等を印刷する方法を説明する。先ず、加硫後のタイヤTを上側リム19および下側リム20に組み付け(リム組み工程)、リム組みしたタイヤTをタイヤ用印刷装置1に設置し(タイヤ設置工程)、空気導入口28を介してタイヤTに内圧を充填してインフレートする(インフレート工程)。このとき、タイヤTに適用する内圧にはとくに制限はないが、印刷時のタイヤ側面の曲率とタイヤ使用時のタイヤ側面の曲率とを同等とする観点からは正規内圧とすることが好ましい。「正規内圧」とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」を指す。
【0023】
次いで、回転主軸駆動装置26によりタイヤ回転主軸22を駆動してタイヤTを回転させる(タイヤ回転工程)。次に、幅方向移動部6、7および径方向移動部9、10を駆動してプリンタヘッド3、4をタイヤ幅方向Xおよび径方向Yに沿って移動させ、プリンタヘッド3、4をタイヤTの側面上の所定位置に位置させるとともに、揺動部12、13を駆動してプリンタヘッド3、4の、タイヤTの側面に対する距離および姿勢が一定となるよう調整する(プリンタヘッドの位置および姿勢調整工程)。そして、プリンタヘッド3、4とタイヤTの側面との距離および姿勢を一定に保ちながら、回転するタイヤTの側面に、プリンタヘッド3、4から塗料を吐出し、塗布して、所望の文字、絵柄、記号、模様等(所定のパターン)を描画(印刷)する(印刷工程)。タイヤTの側面に塗布された塗料は、プリンタヘッド3、4に隣接して設置されたUV照射ランプ(図示省略)により、乾燥、硬化される(乾燥工程)。なお、上記タイヤ回転工程と上記プリンタヘッドの位置および姿勢調整工程との順序は逆にしてもよい。
【0024】
したがって、このタイヤ用印刷装置1および印刷方法によれば、印刷を行うにあたり、回転するタイヤTに近接して配置されたプリンタヘッド3、4を、タイヤTの幅方向Xおよび径方向Yに沿って移動させるとともにタイヤTの周方向Zに沿う軸線Z1周りに揺動させることで、図3に示すように、該プリンタヘッド3、4の、タイヤTの側面に対する距離および姿勢を一定(適正)に保つことができ、プリントヘッド3、4から吐出された塗料を拡散させることなくタイヤTの表面に塗布することができるので、文字や絵柄等をぼけることなく鮮明に印刷することができる。また、タイヤの側面を押えローラにより圧接して印刷面を平坦にするというような従来技術における煩雑な作業も不要とすることができる。
【0025】
また、この実施形態のタイヤ用印刷装置1および印刷方法によれば、プリンタヘッド3、4を複数設けたことから、同時回転で多色刷りを行うことができる。
【0026】
また、この実施形態のタイヤ用印刷装置1および印刷方法によれば、プリンタヘッド3、4の、タイヤTの側面に対する距離および姿勢をプログラムで制御するよう構成したことから、タイヤTをタイヤ用印刷装置1に設置した後には、タイヤTの側面の特定の位置に文字や絵柄等を自動で印刷することが可能である。
【0027】
さらに、この実施形態のタイヤ用印刷装置1および印刷方法によれば、タイヤTをリム組みし、リム組みした該タイヤTに内圧を充填した状態で、プリンタヘッド3、4によるタイヤTの側面への印刷を行うよう構成したことから、印刷時のタイヤTの形状を一定に保つことができ、タイヤTの側面の曲面に、文字や絵柄等を、ブレやしわが発生すること無く印刷することができる。また、タイヤTに内圧を充填した状態で印刷を行うことで、印刷時のタイヤTの側面の曲率を使用時(タイヤTを正規リムに組み付けて正規内圧を付加した時)のタイヤTの側面の曲率に近づけることができるので、タイヤ使用時に視認される文字や絵柄等の外観を向上させることができる。この観点からは、タイヤTの内部に正規内圧を適用した状態で印刷を行うことが好ましい。
【0028】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものである。例えば、上記実施形態では、印刷対象のタイヤとして空気入りタイヤを用いて説明したが、本発明はソリッドタイヤに適用することもできる。また、上記実施形態では、プリンタヘッドが2つの例を示したが、プリンタヘッドは1つでも3つ以上設けてもよい。さらに、タイヤの内部に内圧を適用して印刷する場合には、その内圧は正規内圧よりも低くてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
かくして、本発明により、煩雑な作業を必要となることなしに、タイヤ表面に文字や絵柄を鮮明に印刷することができるタイヤ用印刷装置およびタイヤ表面印刷方法を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0030】
1 タイヤ用印刷装置
3、4 プリンタヘッド
6、7 幅方向移動部
9、10 径方向移動部
12、13 揺動部
12a 揺動軸
15 PC
17 フレーム
19 上側リム
20 下側リム
26 回転主軸駆動装置
28 空気導入口
T 印刷対象となるタイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ表面に対して塗料を吐出し、塗布するプリンタヘッドを備えるタイヤ用印刷装置であって、
前記プリンタヘッドを前記タイヤの幅方向に沿って移動させる幅方向移動部と、
前記プリンタヘッドを前記タイヤの径方向に沿って移動させる径方向移動部と、
前記プリンタヘッドを、前記タイヤの周方向に沿う軸線周りに揺動させる揺動部と、を備えることを特徴とするタイヤ用印刷装置。
【請求項2】
前記プリンタヘッドを複数備える、請求項1に記載のタイヤ用印刷装置。
【請求項3】
回転するタイヤの表面にプリンタヘッドから塗料を吐出し、塗布して印刷を行うタイヤ表面印刷方法であって、
印刷を行うにあたり、前記プリンタヘッドを、前記タイヤの幅方向および径方向に沿って移動させるとともに前記タイヤの周方向に沿う軸線周りに揺動させて、該プリンタヘッドの、タイヤ表面に対する距離および姿勢を一定に保つことを特徴とするタイヤ表面印刷方法。
【請求項4】
前記プリンタヘッドの、タイヤ表面に対する距離および姿勢をプログラムで制御する、請求項3に記載のタイヤ表面印刷方法。
【請求項5】
前記タイヤをリム組みし、リム組みした該タイヤに内圧を充填した状態で、前記プリンタヘッドによるタイヤ表面への印刷を行う、請求項3または4に記載のタイヤ表面印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−187816(P2012−187816A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53279(P2011−53279)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】