説明

タイヤ空気圧測定装置

【課題】エアバルブと別体とすることで装着時の干渉を防止し取付け作業を簡略化すると共に、走行中の遠心力によりエアバルブへ掛かるモーメントを抑制したタイヤ空気圧測定装置を提供する。
【解決手段】空気入りタイヤを組み付けたホイールリム100の外周面に接し、エアバルブ30が挿通されるエアバルブ挿通孔を有する座面部14と、リムの外周面のうち、ドロップ部100gに接する取付け面と、座面部の両側にそれぞれ配置され、座面部より突出する第1の収容部11及び第2の収容部12と、空気入りタイヤの空気圧を測定し、その空気圧情報を送信する電子デバイスと、電子デバイスを駆動する扁平形電池であって電解液を有する電池と、を備え、電子デバイス及び電池が第1の収容部及び第2の収容部に収容され、電池の板面が取付け面に平行になっているタイヤ空気圧測定装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイールに組み付けた空気入りタイヤ内に配置され、空気入りタイヤ内の空気圧を測定し、測定した空気圧情報を車両に設置した受信装置に送信するタイヤ空気圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TPMS(タイヤ空気圧モニタリングシステム)は、車両用ホイールに組み付けた空気入りタイヤ内の空気圧の状態をリアルタイムに把握し、異常時に運転者へ警告を発するシステムである。米国では既にTPMSの装着が義務化され、欧州でも新車への装着が義務付けられることが決定している。また、日本でも法規制化が検討されている。
【0003】
このTPMSの1つの方式として、タイヤ内に設置されるセンサー(送信機)と、センサーからのタイヤ空気圧情報を受信する車両側受信機とを備えた直接式TPMSがある。そして、前記直接式TPMS用のセンサーとして、タイヤ空気圧を測定して空気圧情報を送信する電子デバイスをモジュール化し、エアバルブの後側に一体に取り付けた構造の直接式TPMS用センサーが開発されている(特許文献1、2参照)。
又、モジュールとエアバルブを別体とし、モジュールに板状の固定具を挿抜可能に取付け、固定具に設けた挿通孔にエアバルブを挿通固定する構造の直接式TPMS用センサーが開発されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−253934号公報
【特許文献2】特開2009−154700号公報
【特許文献3】特開2006−15909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1、2記載のTPMS用センサーの場合、TPMS用センサーの全長がエアバルブの長さとモジュールの長さを合わせたものとなるため、ホイールリム(リム)の幅が狭い等のリムの形状によって、リムの壁面にTPMS用センサーが干渉し、リムへの取付けが困難になることがある。さらに特許文献1記載のTPMS用センサーの場合、エアバルブの後側に比較的重いモジュールが接続されているため、走行中の遠心力によってモジュールがホイールの半径方向外向きに浮き上がる。その結果、リムのバルブ穴を中心とするモーメントがエアバルブに働き、車両の走行、停止により、エアバルブのゴムシールが繰り返し圧迫されて亀裂が生じ、エアが漏れる可能性がある。
【0006】
一方、特許文献3記載のTPMS用センサーの場合、モジュールとエアバルブとが固定具を介してリムの幅方向に離間している。このため、走行中の遠心力によってモジュールがホイールの半径方向外向きに浮き上がり、リムのバルブ穴を中心とするモーメントが固定具に働き、固定具のバルブ穴周辺が変形し、固定具がエアバルブから引き抜けてしまう可能性がある。又、特許文献3記載の技術においては、上記した遠心力に抗するために、あらかじめリムのサイドウォールとドロップ部が成す角度より大きな角度に固定具を設計し、固定具をリムに取り付けた後にバネ力を作用させ、モジュールをリムに押し付けている。
このため、遠心力が掛かっていない状態(速度ゼロ)や、想定したより小さい遠心力が働く状態では、固定具はリムに沿った形状にならず、固定具のバネ力により、エアバルブを引抜く方向に力が作用し(固定具がサイドウォールから浮き上がった状態)、エアが漏れる可能性がある。
【0007】
さらに、TPMS用センサーはセンサー駆動用の電池を内蔵しているが、車両の走行によって電池に遠心力が働き、電池の設置角度によって電池内の電解液に偏りが生じて電池の出力が低下することがある。
【0008】
従って、本発明の目的は、エアバルブと別体とすることで装着時の干渉を防止し取付け作業を簡略化すると共に、走行中の遠心力によりエアバルブへ掛かるモーメントや駆動用電池の出力低下を抑制したタイヤ空気圧測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタイヤ空気圧測定装置は、空気入りタイヤを組み付けたホイールのリムの外周面に接し、エアバルブが挿通されるエアバルブ挿通孔を有する座面部と、前記リムの外周面のうち、ドロップ部に接する取付け面と、前記座面部の両側にそれぞれ配置され、前記座面部より突出する第1の収容部及び第2の収容部と、前記空気入りタイヤ内の空気圧を測定し、その空気圧情報を送信する電子デバイスと、前記電子デバイスを駆動する扁平形電池であって電解液を有する電池と、を備え、前記電子デバイス及び前記電池が前記第1の収容部及び前記第2の収容部に収容され、前記電池の板面が前記取付け面に平行になっている。
このようなタイヤ空気圧測定装置によれば、電子デバイス及び電池を収容して比較的大重量となる部分を、第1の収容部及び第2の収容部の2つの構成部分に分割し、これら第1の収容部及び第2の収容部の間にエアバルブ挿通孔を有する座面部を配置している。従って、第1の収容部及び第2の収容部の重心位置と、エアバルブ挿通孔との位置がホイールの中心軸方向にて近接し、車両走行時にエアバルブのエアバルブ挿通孔の位置に働くモーメントを低減することができる。その結果として、走行中の遠心力によりエアバルブへ掛かるモーメントを抑制し、エア漏れ等を防止できる。
さらに、電池の板面が取付け面(すなわちドロップ部)に平行になっているため、走行中の遠心力がドロップ部に垂直な方向に作用した際、電池内の電解液は板面より長さの短い厚み方向には偏るものの、板面方向には偏らずに均等に分布し、全体として電池内での電解液の偏りが低減され、電池の出力が低下することを抑制する。
【0010】
前記第1の収容部及び前記第2の収容部に接続され、かつ前記座面部を囲むように連結リブ又は取付リブが形成されていると好ましい。
連結リブは前記第1の収容部と前記第2の収容部を連結し、ホイールの中心軸方向に開口した略コ字状の断面に成形されている。
このように、少なくとも連結リブまたは取付リブの1つを設けると、エアバルブ挿通孔周囲の座面部の剛性が高くなり、遠心力による負荷が作用した場合でも座面部が変形し難く、エアバルブがエアバルブ挿通孔から抜け落ちる等の不具合が抑制される。
【0011】
前記電子デバイス及び前記電池が前記第1の収容部及び前記第2の収容部に別個に収容され、前記電子デバイスと前記電池とを電気的に接続する導電部材が前記連結リブの内部空間に配置されていると好ましい。
このように、連結リブの内部空間を利用して導電部材を配置することで、省スペース化が図られると共に、強度の高い連結リブ内に導電部材が確実に保持され、信頼性も高まる。
【0012】
前記座面部は金属からなり、前記第1の収容部及び前記第2の収容部は、前記座面部にインサート成形された被覆樹脂からなると好ましい。
このようにすると、走行中の遠心力により負荷が掛かりやすいエアバルブ挿通孔近傍を、強度の高い金属で形成できると共に、第1の収容部及び第2の収容部を被覆樹脂で形成して軽量化が図られると共に、第1の収容部や第2の収容部を金属で形成しないことで電子デバイスの無線アンテナ等からの送信信号が遮蔽されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エアバルブと別体とすることで装着時の車両用ホイールへの干渉を防止し取付け作業を簡略化すると共に、走行中の遠心力によりエアバルブへ掛かるモーメントや駆動用電池の出力低下を抑制したタイヤ空気圧測定装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るタイヤ空気圧測定装置をホイールのリムの外周面に取り付けた状態を示す外観図である。
【図2】図1のA−A線に沿う径方向断面図である。
【図3】タイヤ空気圧測定装置の外観斜視図である。
【図4】図3のX−X線に沿う断面図である。
【図5】図3のY−Y線に沿う断面図である。
【図6】タイヤ空気圧測定装置に収容された電子デバイス及び電池を示す透視斜視図である。
【図7】電子デバイス及び電池の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明による作用を示す図である。
【図9】タイヤ空気圧測定装置をインサート成形して製造する一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るタイヤ空気圧測定装置10を、自動車用ホイールのホイールリム100の外周面に取り付けた状態を示す外観図である。
ホイールリム100は略円筒状をなし、その両端に形成された外側フランジ100a及び内側フランジ100bの間にタイヤ(図示せず)を収容するようになっている。外側フランジ100aの内側にはタイヤのビードを受ける外側ビードシート100cが形成されている。外側ビードシート100cより内側には最も小径のドロップ部100gが形成され、外側ビードシート100cとドロップ部(外側)100gは外側サイドウォール部100eを介して滑らかに接続されている。ドロップ部100gより内側には内側サイドウォール部100fを介して内側ビードシート100dが形成され、内側ビードシート100dは内側フランジ100bに接続されている。
なお、各部の名称における「外側」、「内側」は、ホイールを車両に取り付けたときの位置に対応している。
【0016】
又、外側サイドウォール部100eには、エアバルブ30が挿通されるリム側エアバルブ挿通孔100h(図2参照)が開口している。そして、タイヤ空気圧測定装置10は、ホイールリム100のサイドウォール部100e及びドロップ部100gに自身の座面部14(図3参照)の裏面を接しつつホイールリム100の外周面に取り付けられている。ここで、座面部14の裏面がリムの外周面に接する。詳しくは、座面部14の裏面のうち側面14tが、外側サイドウォール部100e、及び外側サイドウォール部100eとドロップ部100gとの接続局面に接する。又、座面部14の裏面のうち底面部分となる取付け面14sが、ドロップ部に接する。また、取付け面14sとドロップ部の間に空間を設けて接していなくてもよい。
通常、タイヤ空気圧測定装置10は、エアバルブ30の装着力によってホイールリム100へ固定することができるが、両面テープ等でタイヤ空気圧測定装置10をホイールリム100に接着してもよい。又、座面部14にはエアバルブ挿通孔14h(図3参照)が形成され、エアバルブ挿通孔14h(図3参照)がリム側エアバルブ挿通孔100h(図2参照)と同心になるようにして、タイヤ空気圧測定装置10が配置されている。そして、エアバルブ30がエアバルブ挿通孔14h及びリム側エアバルブ挿通孔100hを挿通して固定されている。
なお、タイヤ空気圧測定装置10において、座面部14を挟んだ両側に、それぞれ円筒状の第1の収容部11及び第2の収容部12が突出して形成され、第1の収容部11及び第2の収容部12の中心同士を結ぶ線(第1の収容部11及び第2の収容部12の並ぶ方向)を長手方向Lとすると、L方向がホイールリム100の周方向に平行になっている。
【0017】
ホイールリム100は、例えば所定形状の鋼板を円筒形に丸め、ロール成形することで製造することができるが、これに限られない。又、ホイールリム100に略円盤状のディスク101が溶接接合された、いわゆる2ピース自動車用ホイールを構成しているが、本発明は2ピース自動車用ホイールに限定されず、あらゆるホイールに適用することができる。
【0018】
図2は、図1のA−A線に沿う径方向断面図であり、ホイールリム100に空気入りタイヤ150が組み付けられた状態を示す。
図2において、エアバルブ30は、いわゆるスナップインバルブであり、バルブステムをゴムで被覆した構造になっている。エアバルブ30は、ホイールリム100の軸方向外側に露出しつつバルブステム等を含むゴム製の胴部31と、ホイールリム100の外周面で外側サイドウォールに位置するゴム製の基部32とを備え、基部32側には環状凹部32aが形成されている。なお、環状凹部32aの溝幅は3.8mm、直径は15mmに規格されている。又、リム側エアバルブ挿通孔100hの径は15mmより小さく(通常、11.3+0.4(mm)または11.5±0.2(mm)に規格されている)、環状凹部32aがリム側エアバルブ挿通孔100hに喰い込むことで、エアシール性が確保される。又、タイヤ空気圧測定装置10のエアバルブ挿通孔14hの直径は環状凹部32aの直径より小さく、リム側エアバルブ挿通孔100hの直径より大きい(例えば、直径12〜14mm)。
【0019】
そして、タイヤ空気圧測定装置10のエアバルブ挿通孔14hと、リム側エアバルブ挿通孔100hとの位置を合わせた状態で、タイヤ空気圧測定装置10側からエアバルブ30を挿入すると、環状凹部32aは直径の小さいリム側エアバルブ挿通孔100hで圧縮されるため、エアバルブ挿通孔14hに過大な圧力が掛からない。このようにして、エアバルブ30はエアバルブ挿通孔14h及びリム側エアバルブ挿通孔100hに挿通しつつ、基部32のへりが座面部14の表面に当接するようになっている。
エアバルブ挿通孔14hとリム側エアバルブ挿通孔100hとを同径にしても良いが、ドロップ部100gとリム側エアバルブ挿通孔100hの位置関係はホイールによって異なるので、公差や汎用性を考えると、エアバルブ挿通孔14hをリム側エアバルブ挿通孔100hより大径とすることが好ましい。
【0020】
なお、本発明に用いられるエアバルブはスナップインバルブに限定されず、例えば、バルブ本体をナットでホイールリムに締結するクランプインバルブを適用することもできる。これらエアバルブは、例えばJIS−D4207や、JATMA(社団法人 日本自動車タイヤ協会)に規定されている。
【0021】
一方、図2において、タイヤ空気圧測定装置10は、外側サイドウォール部100e及びドロップ部100gに接するよう、座面部14が外側サイドウォール部100eからドロップ部100gのなす形状に追随する「く」の字状に屈曲した断面形状を有し、さらに第1の収容部11及び第2の収容部12の天面がドロップ部100gに対してほぼ平行に向いている。従って、タイヤ空気圧測定装置10は、第1の収容部11及び第2の収容部12の位置から見て、略矩形の断面形状をなしている。
このように、外側サイドウォール部100eやドロップ部100gの形状や寸法に合わせてタイヤ空気圧測定装置10の形状や寸法を設計することで、タイヤ空気圧測定装置10を、ホイールリム100の外側ハンプ100xと内側ハンプ100yの頂点を結んだラインB(図1参照)より径方向内側に位置させることができる。このようにすると、タイヤ空気圧測定装置10がラインBよりも外側に突出しないため、タイヤ150の交換時等にタイヤビードがタイヤ空気圧測定装置10に干渉して破損することを防止する。
【0022】
次に、図3〜図7を参照し、第1の実施形態に係るタイヤ空気圧測定装置10の詳細な構成について説明する。図3はタイヤ空気圧測定装置10の外観斜視図であり、図4は図3のX−X線に沿う断面図であり、図5は図3のY−Y線に沿う断面図であり、図6はタイヤ空気圧測定装置10に収容された電子デバイス及び電池を示す透視斜視図であり、図7は電子デバイス及び電池の構成を示す斜視図である。
【0023】
図3において、タイヤ空気圧測定装置10は長手方向Lに長く、L方向に見て座面部14を挟んだ両側に第1の収容部11及び第2の収容部12が配置されている。さらに、取付け面14sに垂直な方向に見て、第1の収容部11及び第2の収容部12は、座面部14の表面(取付け面14sと反対の面)よりも突出している。座面部14は、図2に示したように「く」の字状に屈曲した断面形状を有する略板状をなし、座面部14のうちサイドウォール部100eに接する側面14tほぼ中央位置にエアバルブ挿通孔14hが形成されている。なお、座面部14は、ドロップ部100g側で第1の収容部11と第2の収容部12とをつないでいる。一方、取付け面14sに垂直な方向に見て、座面部14は、第1の収容部11及び第2の収容部12の上面よりもサイドウォール部100e側に延びる弧状をなしている。
【0024】
又、座面部14のW方向(L方向に垂直な幅方向)の両端縁には、それぞれ連結リブ15、取付リブ17が形成されている。連結リブ15、取付リブ17は、それぞれ第1の収容部11及び第2の収容部12に接続され、かつ座面部14(つまり、エアバルブ挿通孔14h)を囲むように形成されている。なお、取付リブ17が外側サイドウォール部100e側に位置し、連結リブ15がドロップ部100g側に位置している。そして、断面図5に示すように、取付リブ17に比べて連結リブ15の方がより高く隆起している。なお、座面部14の両側に連結リブ、取付リブの両方を設けることは必須ではない。
このように、少なくとも連結リブまたは取付リブのいずれか1つを設けると、エアバルブ挿通孔14h周囲の座面部14の剛性が高くなり、遠心力による負荷が作用した場合でも座面部14が変形し難く、エアバルブ30がエアバルブ挿通孔14hから抜け落ちる等の不具合が抑制される。
【0025】
座面部14は、鋼板等の金属板をプレス成形することにより連結リブベース15x(図5、図9参照)、取付リブ17と一体に形成され、第1の収容部11及び第2の収容部12は、座面部14にインサート成形された被覆樹脂からなる。
このようにすると、走行中の遠心力により負荷が掛かりやすいエアバルブ挿通孔14h近傍を、強度の高い金属で形成できると共に、第1の収容部11及び第2の収容部12を被覆樹脂で形成して軽量化が図られる。さらに、第1の収容部11や第2の収容部12を金属で形成しないことで、以下の電子デバイス20の無線アンテナ25等からの送信信号が遮蔽されるのを防止することができる。
なお、図5に示すように、連結リブベース15xの表面に第1の収容部11及び第2の収容部12を形成するための被覆樹脂60が被覆されて連結リブ15を構成している。
【0026】
ここで、図6、図7に示すように、第1の収容部11の内部空間に電池(この例ではボタン電池)40が収容され、第2の収容部12の内部空間に電子デバイス20が収容されている。又、電池40と電子デバイス20とは、L方向に延びる導電部材(例えば、銅片)51、52によって電気的に接続され、電子デバイス20を駆動するようになっている。
又、図7に示すように、電子デバイス20は、空気入りタイヤの圧力を測定する圧力センサ(この例では、ダイヤフラム)22と、電子デバイス20全体を制御する処理装置(この例では半導体回路)23と、圧力センサ22で測定した圧力情報を無線送信する送信器(この例では無線送信チップ)24と、圧力情報の送信に用いる無線アンテナ25と、これらの構成部品を実装するプリント基板21とを備える。
【0027】
図4は図3のX−X線に沿う(つまり、L方向に沿う)断面図である。この例では、タイヤ空気圧測定装置10は、エアバルブ挿通孔14hを中心とする中心線CLに対して対称となっている。又、第1の収容部11及び第2の収容部12の内部空間にそれぞれ電池40及び電子デバイス20が配置されている。さらに、第1の収容部11及び第2の収容部12の裏面は、座面部14の裏面である側面14t及び取付け面14s(サイドウォール部100e及びドロップ部100gに接する面、図4では取付け面14sのみ図示)と面一になっていて、これらの面全体がホイールリム100の外周面に接するようになっている。
なお、第1の収容部11及び第2の収容部12の内部空間に充填樹脂等を充填して電池40及び電子デバイス20を固定してもよい。
【0028】
図5は図3のY−Y線(つまり、W方向に沿う)に沿う断面図である。連結リブ15、取付リブ17もプレス成形によって形成され、連結リブ15の内部には導電部材51、52が配置されている。ここで、既に述べたように、連結リブベース15xの表面に第1の収容部11及び第2の収容部12を形成するための被覆樹脂60が被覆されて連結リブ15を構成している。なお、連結リブ15の内部に充填樹脂を充填して導電部材51、52を固定してもよい。
このように、連結リブ15の内部空間を利用して導電部材51、52を配置することで、省スペース化が図られると共に、強度の高い連結リブ15内に導電部材51、52が確実に保持され、信頼性も高まる。
ここで、本発明は、電池40の板面40sが取付け面14sに平行になっていることを特徴としている。電池40の板面40sが取付け面14s(すなわちドロップ部100g)に平行であると、走行中の遠心力がドロップ部100gに垂直な方向に作用した際、電池40内の電解液は板面40sより長さの短い厚みt方向には偏るものの、板面40s方向には偏らずに均等に分布し、全体として電池40内での電解液の偏りが低減され、電池の出力が低下することを抑制する。
なお、本発明において、電池40は扁平形電池であって電解液を収容したものとする。ここで、「扁平形」とは、略円柱形状を成し底面の板面方向の最大径Dが厚みtよりも大きいものをいい、円柱形状に限らず、一辺の長さDが厚みtよりも大きい四角柱形状等であってもよい。
扁平形電池の対向する底面には、それぞれ正極、負極が配置される。
【0029】
次に、図8を参照して、本発明による他の作用について説明する。本発明においては、電子デバイス20及び電池40を収容して比較的大重量となる部分を、第1の収容部11及び第2の収容部12の2つの構成部分に分割し、これら第1の収容部11及び第2の収容部12の間にエアバルブ挿通孔14hを有する座面部14を配置している。従って、車両走行時にタイヤ空気圧測定装置10に遠心力によって作用するモーメントの原点を14Ce(エアバルブ30が取付けられるエアバルブ挿通孔14hの中心)とすると、第1の収容部11及び第2の収容部12(タイヤ空気圧測定装置10)の重心10Ceと原点14Ceとのホイール軸方向Oの距離Laが短くなるため、上記モーメントを低減することができる(図8(a))。その結果として、走行中の遠心力によりエアバルブへ掛かるモーメントを抑制し、エア漏れ等を防止できる。なお、遠心力はタイヤの回転によって生じ、ホイール中心軸に垂直で外向きに遠心力のベクトルが生じる。そして、この遠心力により、距離Laを腕として原点14Ceにモーメントが働くこととなる。
【0030】
これに対し、特許文献3記載の技術の場合、エアバルブ30と筐体1000(電子デバイス等を収容した大重量の部分)とをホイール軸方向で離間し、両者を固定具200で結合している。そのため、筐体1000の重心1000Ceと原点14Ceとのホイール軸方向の距離LbがLaより長くなり(図8(b))、固定具200が遠心力に耐えられなくなると、原点14Ceを中心として筐体1000と一体となってホイールリムのドロップ部から浮き上がる。そして、やがて浮き上がり量が大きくなってエアバルブ30の保持力の限界を超えるか、又は固定具200が原点14Ce付近で変形し、固定具200からエアバルブ30が抜ける可能性がある。なお、特許文献1記載の技術のように、エアバルブ30の基部32の後側に筐体1000を取り付けた場合も、同様の不具合が生じるのはいうまでもない。
【0031】
以上のように、本発明のタイヤ空気圧測定装置によれば、走行中の遠心力によりエアバルブへ掛かるモーメントを抑制し、エア漏れ等を防止できる。又、タイヤ空気圧測定装置をエアバルブと別体とすることで、装着時のホイールリムとの干渉を防止し、取付け作業を簡略化することができる。さらに、汎用のエアバルブを適宜自由に選択して使用できるので、既に安全性が確立されたエアバルブを使用でき、タイヤやホイールに適したエアバルブ(例えば、低速用ホイールではスナップインバルブを使用し、210km/hを超える高速用ホイールではクランプインバルブを使用)を採用することもできる。
さらに、本発明のタイヤ空気圧測定装置は、座面部の両側に第1の収容部及び第2の収容部を配置した構造をとるので、第1の収容部及び第2の収容部が並ぶ方向が長く、その垂直方向(幅方向)が短くなる。そのため、軽自動車等のリム幅の狭いホイールにも干渉せずに装着が可能であり、サイズや形状の異なる種々のホイールへ適用することができる。
【0032】
さらに、図4に示すように、本発明においては、座面部14(のエアバルブ挿通孔14h)が第1の収容部11及び第2の収容部12の間に位置する。従って、第1の収容部11及び第2の収容部12とに重量が振り分けられるので、原点14Ceから第1の収容部11の重心までを腕とした収容部11の遠心力により原点14Ceに発生するモーメントと、原点14Ceから第2の収容部12の重心までを腕とした収容部12の遠心力により原点14Ceに発生するモーメントとが互いに打ち消しあうため、原点14Ceに働くモーメントが低減され、エアバルブに負荷が掛かり難く、エア漏れ等を抑制することができる。
特に、中心線CLに対してタイヤ空気圧測定装置10を対称とすると、L方向に働くモーメントがさらに低減する。好ましくは、中心線CLの左右のタイヤ空気圧測定装置10の構成部分の質量をほぼ均等に調整すると、L方向に働くモーメントがさらに小さくなる。この場合、例えば、電池40と電子デバイス20とのうち、軽量な方にバランサを取り付けてもよい。又、第1の収容部11と第2の収容部12との両者の重量のバランスをとってもよい。
又、図4に示すように、本実施形態では、座面部14の裏面である取付け面14sが、ドロップ部100g(図示せず)に沿って湾曲した形状になっているのが好ましい。このため、L方向に振れるモーメントが働いても、ドロップ部100gがタイヤ空気圧測定装置10を下支えするので、エアバルブに直接負荷が掛かり難くなる。
【0033】
図9は、タイヤ空気圧測定装置10をインサート成形して製造する一例を示す工程図である。まず、座面部14は、鋼板等の金属板をプレス成形することにより連結リブベース15x、取付リブ17と一体に形成される(図9(a)。なお、座面部14の左右に薄い縁部14eがそれぞれ形成される。
次に、図9(b)に示すように、第1の収容部11及び第2の収容部12となる被覆樹脂60を座面部14にインサート成形する。これにより、座面部14の縁部14eをそれぞれ第1の収容部11及び第2の収容部12が覆うと共に、連結リブベース15xを被覆樹脂60が覆って連結リブ15が形成される。なお、被覆樹脂60としては、例えばガラス繊維強化プラスチック等を用いることができる。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、座面部、第1の収容部及び第2の収容部、連結リブおよび取付リブ等の形状は限定されず、連結リブおよび取付リブの個数も制限はない。
又、電子デバイス20と電池40とを一体化したアセンブリとし、このアセンブリを第1の収容部11(又は第2の収容部12)にまとめて収容するとともに、アセンブリとほぼ同じ質量のバランサウェイト55を他方の収容部である第2の収容部12(又は第1の収容部11)に収容してもよい。
又、電池は扁平形電池であれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0035】
10 タイヤ空気圧測定装置
14s取付け面
11 第1の収容部
12 第2の収容部
14 座面部
14h エアバルブ挿通孔
15 連結リブ
17 取付リブ
20 電子デバイス
30 エアバルブ
40 電池
40s 電池の板面
51,52 導電部材
100 ホイールリム(リム)
100g ドロップ部
150 空気入りタイヤ
O ホイール軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤを組み付けたホイールのリムの外周面に接し、エアバルブが挿通されるエアバルブ挿通孔を有する座面部と、
前記リムの外周面のうち、ドロップ部に接する取付け面と、
前記座面部の両側にそれぞれ配置され、前記座面部より突出する第1の収容部及び第2の収容部と、
前記空気入りタイヤ内の空気圧を測定し、その空気圧情報を送信する電子デバイスと、
前記電子デバイスを駆動する扁平形電池であって電解液を有する電池と、を備え、
前記電子デバイス及び前記電池が前記第1の収容部及び前記第2の収容部に収容され、
前記電池の板面が前記取付け面に平行になっているタイヤ空気圧測定装置。
【請求項2】
前記第1の収容部及び前記第2の収容部に接続され、かつ前記座面部を囲むように連結リブまたは取付リブのうち少なくとも1つが形成されている請求項1記載のタイヤ空気圧測定装置。
【請求項3】
前記電子デバイス及び前記電池が前記第1の収容部及び前記第2の収容部に別個に収容され、
前記電子デバイスと前記電池とを電気的に接続する導電部材が前記連結リブの内部空間に配置されている請求項2記載のタイヤ空気圧測定装置。
【請求項4】
前記座面部は金属からなり、前記第1の収容部及び前記第2の収容部は、前記座面部にインサート成形された被覆樹脂からなる請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ空気圧測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95399(P2013−95399A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243258(P2011−243258)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)