説明

タイヤ製造において利用される冷却液体を処理する装置及び方法

【課題】タイヤ製造工程において利用される冷却流体を処理する有効で新しい装置及び方法を提供する。
【解決手段】高振動数で低エネルギーの超音波を用いて、タイヤ製造において使用される冷却流体中の微生物の成長を中和、処理、又は抑制するための装置及び方法である。一実施の形態において、方法は、ガスのマイクロバブル及び高振動数の超音波に前記冷却流体を同時に晒すことを含む。他の実施の形態において、装置は、タイヤ製造冷却流体の容器を保持するための区画室、高振動数の超音波信号を前記区画室に放射するように構成された超音波エミッタ、前記冷却流体を含む前記区画室中の前記超音波領域中にガスのマイクロバブルを放出するように構成されたガスマイクロバブルエミッタ、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、産業用流体の除染作業を、そして、タイヤ生産工程において利用される冷却液体の除染作業を特に対象としている。
【背景技術】
【0002】
タイヤ生産工程は多数の工程を含み、これらは、ゴム成分の混合、調整、押出、組立て、加硫、検査、そして、必要であれば修理、といったものを典型的に含む。このタイヤ生産工程における所定のステップは、加熱されたゴム成分を冷却するための流体の使用を含む。例えば、直接接触型の冷却システムは、タイヤトレッド及びタイヤラインの冷却率を制御するために典型的に使用される。これらの冷却システムは、このタイヤ製造工程における重要な部分である。
【0003】
これらの冷却液体のための液体溶媒は、しばしば、脱塩水及び脱イオン水(DI)を含む、水である。残念なことに、タイヤ製造工程において利用される冷却流体は、特に水性流体では、バクテリア、藻、菌類、酵母菌群、カビ、及び他の微生物の繁殖の影響を受け易い。生物学的汚染は、バイオフィルムの形成に通常関連する。詳細を後述するように、これらの流体の生物学的汚染は、高コストで危険であるため、これらの流体に対するいくつかの生物学的制御が所望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題に対決するために、タイヤ製造産業は、直接接触型の冷却水システムにおけるバクテリア及び藻の水準を制御するために、イソチアゾリン及びグルタルアルデヒドといった殺生物剤の使用に典型的に依存している。しかしながら、殺生物剤の使用は、更なる問題を発生しうる。
【0005】
例えば、殺生物剤の取り扱いは作業者にとって危険でありうる。加えて、処理対象の水は比較的少量であるため、冷却システムへの殺虫剤を手動又は自動で注入することは困難である。さらに、殺生物剤は、約1週間に一度から約1週間に数回までといった、典型的に断続的に投与される。それ故、投与量は、一定で予測可能な根拠に基づいて常に適用される訳ではない。
【0006】
加えて、殺生物剤化学物質の過度な使用は、pHを含む水化学に影響しうるため、望ましくない。水化学の変化は、製造されたタイヤ及び/又は製造設備の品質に順次影響しうる。例えば、塩素又はボロンといった酸化性殺生物物質が使用されると、これらの合成物の過剰供給は、製造システム精錬を腐食させてしまう。
【0007】
化学的な方法は、循環する水のバクテリアをある程度制御することが可能でありうるが、最終的に、微生物は殺生物剤を克服して、流体の微生物分解及び汚染は、作業環境に悪臭をもたらす。さらに、微生物の制御を伴ってさえも、殺生物剤の使用は、システムに亘って典型的に発展する生物の堆積物の著しい堆積及び塊を依然としてもたらす。従って、システムは、少なくとも1年に一度及び通常は1年に二度、手動で掃除しなければならない。これには、汚水槽(サンプ)から堆積した汚泥を吸引して適正に廃棄することが、典型的に含まれる。
【0008】
微生物の繁殖に加えて、タイヤ製造で使用される冷却流体は、沈泥、堆積物、及びサンプ中に規則的に収集される他の材料(例えばゴム)をも集積させがちである。殺生物剤が微生物の繁殖を処理するために使用しうるとしても、これらの殺生物剤は、冷却流体中に集積されるゴムといった追加的な材料を抑制することには有効ではない。
【0009】
タイヤ製造冷却流体の長期使用を得るためには、所望の成分又は特性を変性させずに流体の処理を進展させることが望ましい。このことは、冷却流体の変化が製造設備や完成タイヤに悪影響を及ぼすときに特に当てはまる。従って、多量の殺生物剤を用いずに、時間とともに一様な保護又は実質的に一様な保護を提供しうる、タイヤ製造工程で使用される冷却流体を処理する有効で新しい方法に対する技術の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの問題を解決するために、好適な実施の形態は、冷却流体をガスのマイクロバブル及び100kHz以上の振動数の超音波に同時に晒すことを含む、タイヤ製造冷却流体を処理する方法を含む。より具体的な態様において、前記ガスのマイクロバブルは、主として外気からなる。他の態様では、前記マイクロバブルの直径は、約30又は50マイクロメートル未満である。
【0011】
本願明細書におけるさらなる態様は、タイヤ製造冷却流体の容器を保持するための区画室、前記区画室中に100kHzよりも高い振動数で超音波信号を放出するように構成された超音波放出器、前記冷却流体を含む前記区画室中の超音波領域中に平均直径1mm未満のガスのマイクロバブルを放出するように構成されたガスマイクロバブルエミッタ、を含む、タイヤ製造冷却流体中で生きている微生物の存在を抑制するための装置を対象にしている。いくつかの有利な実施の形態において、前記ガスのマイクロバブルは、オゾンのマイクロバブルではない。より具体的な態様において、前記ガスのマイクロバブルは、空気及び酸素のマイクロバブルからなる群から選択される。さらに具体的な態様において、前記マイクロバブルの直径は、約30又は50マイクロメートル未満である。
【0012】
この処理装置は、超音波が前記区画室中に放射されるときに定常場現象を発生しないように構成されてもよく、そして、可視範囲の電磁波を超音波領域放射するように構成される電磁放射エミッタを追加的に含んでもよい。
【0013】
加えて、タイヤ製造冷却流体を処理する方法は、経路(ルーティング)回路からのタイヤ製造冷却流体の収集、前記冷却流体の区画室中への経路指定、ガスのマイクロバブル及び100kHz以上の振動数の超音波に前記区画室中の前記冷却流体を同時に晒すこと、を含みうる。
【0014】
さらなる実施の形態は、タイヤ製造システム、前記タイヤ製造システムに連結された冷却流体回路、前記冷却流体が経由する冷却流体の容器を保持するための区画室、前記区画室中に100kHzより高い振動数で超音波信号を放射するように構成された超音波エミッタ、前記冷却流体を含む前記区画室を前記超音波領域中に平均直径1mm未満のガスマイクロバブルを放出するように構成されたガスマイクロバブルエミッタ、を含む装置を含む。
【0015】
本願明細書において記載された方法及び装置は、サイクロン分離機(時々遠心分離機と呼ばれる)を備えうる。好適な実施の形態において、前記サイクロン分離機は、ゴム又は他の堆積物といった固体を前記冷却流体から分離するために遠心力を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本願明細書において記載されている超音波/マイクロバブル装置の一実施の形態を示している図面である。
【図2】図2は、冷却液体の処理のために超音波処理デバイスを利用するように構成されるタイヤ製造システムを示している図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態は、タイヤ製造冷却流体を処理するための方法及び装置を含む。一実施の形態において、方法は、ガスのマイクロバブル及び高振動数の超音波に前記冷却流体を同時に晒すことを含む。他の実施の形態において、装置は、タイヤ製造冷却流体の容器を保持するための区画室、高振動数の超音波信号を前記区画室に放射するように構成された超音波エミッタ、前記冷却流体を含む前記区画室中の前記超音波領域中にガスのマイクロバブルを放出するように構成されたガスマイクロバブルエミッタ、を含む。
【0018】
本願明細書中に記載の方法及び装置は、多くのタイヤ製造システムにおいて驚くべき効果と微生物の広範な制御を提供する。これは、濁度及び他の分析技術によって測定される水の清浄度の向上をもたらす。「除染」及び「処理」の用語がいずれも本願明細書において使用されるが、これらの用語は、開示された方法及び装置をタイヤ製造冷却流体中の汚染を抑制するために使用することを含む。
【0019】
加えて、本願明細書において提供した方法及び装置は、産業タイヤ製造回路中に存在するバイオフィルムを除去する際に非常に有効であり、これらの工程で利用される冷却流体の耐用年数を延長して、タイヤ製造工程中に利用される重度に汚染された又は殺生物剤処理された冷却流体によって作業者にもたらされる危険を抑制又は除去することが見出された。より具体的には、本願明細書における実施の形態は、固体の表面上にバイオフィルムが顕著に形成されることを抑制し、又は、本願の技術の高振動数/低出力の超音波放射を開始する前に既に存在していた場合には、バイオフィルムが著しく抑制される。さらなる実施の形態において、本願明細書の教示は、超音波区画室を通過しない粒子の除染することもできる。例えば、産業用回路において、回路のリモート部分は、開示の方法における遅延された生化学機構の効果を介して、バイオフィルムから解放される。
【0020】
微生物殺菌性処理薬品の使用を除去することによって、本発明は、タイヤメーカーに化学薬品コストの抑制を提供して、微生物殺菌化学薬品の取扱い及び貯蔵に関連する潜在的な安全性及び環境的な懸念を除去する。追加的な有利な態様において、タイヤ製造処理において使用されて汚染された冷却流体の廃棄及び置換のためのコストが実質的に抑制される。
【0021】
本願明細書における方法及び装置は、沈泥、堆積物、及び、汚水槽から典型的に定期的かつ頻繁に掃除を必要とする、例えばゴムといった他の材料を含む水性流体を処理できる。特定の実施の形態において、本願明細書における方法及び装置は、従来のタイヤ製造システムにおいて集積されたスラッジを略80−100%で抑制できる。
【0022】
本願明細書において提供される装置及び方法は、他の従来技術と比較して、トレッドライン及び他のゴム成分から製造される品質拒否の数を抑制することにおいても有用である。本願明細書における教示は、トレッドライン水を濾過するために適所に配置されるフィルター袋の置換コストをも著しく抑制しうる。この節約は、この袋を置換するための作業及び使い捨て袋のコストの両方である。
【0023】
本願明細書において記述される方法及び装置は、厳しい環境上及び健康上の規制に対処するために環境に優しい解決策をも提供する。特定の実施の形態は、さらに後述される。
【0024】
タイヤ製造環境において使用されうる超音波装置の例は、Cordeman等による米国特許第6,736,979号明細書及び米国特許第6,540,922号明細書中に見られる。タイヤ製造冷却流体を処理するために使用されうる装置の一つの特定の実施の形態は、図1において示される。処理されるタイヤ製造冷却流体は、微生物を含みうるし、例えばゴムといった他の固体物をも含みうる。
【0025】
本願明細書において使用されうる方法及び装置は、ゴム製造、又は、タイヤ製造工程を含む、冷却流体を用いた操作工程に使用されうる。例えば、本願明細書において記述された方法及び装置は、Bohn等の米国特許第4285654号明細書において開示されるタイヤ製造工程と連動して使用されうる。本願明細書で提供される装置及び方法は特定の種類のタイヤ製造工程に限定されるものではないが、スチールベルト入りラジアルタイヤの製造において典型的に使用される6つの基本的な工程が、より詳細に後述される。
【0026】
第一段階は、ゴム合成物を形成するために、カーボンブラック、エラストマ、及び化学薬品を混合することを含む。第二段階は、繊維及びスチールコードをカレンダー加工すること、これらをゴムでコーティングすることを含む。第三段階のために、トレッド及びサイドウォール部材は押し出される。第四段階の間、「グリーンタイヤ」部材が、タイヤ構築機械で製造される。第五段階は、熱及び圧力でタイヤを硬化又は加硫することを含む。その後、検査、貯蔵、及び配送を含む最終的な完成段階が、なされる。
【0027】
これらの全体的なタイヤ製造段階は、図2に示されたシステムを用いて実行されうる。より詳細に後述されるように、好適なタイヤ製造システム20は、ゴムミキサー22、カレンダー加工機24、押出機26、ヒータ及び/又はクーラー28、高振動数超音波装置30、1又は2以上のタイヤ構築機32、加硫機34、そして、最終検査装置36を含みうる。
[混合]
【0028】
タイヤは、ゴム合成物を有する多くの異なる成分を組み込みうる。これらの合成物は、抗酸化物質、オゾン劣化防止剤、硬化剤、エラストマ、硫黄強化剤、コバルト、酸化マグネシウム、ゴムポリマー、カルシウムカーボネート、酸化亜鉛、カーボンブラック、処理材料を非限定的に含みうる。これらの合成物は、一様で均質な塊又は比較的一様で均質な塊を得ようとする目的でゴムを機械的に破砕するために、ミキサー22中で機械的に混合されることで用意されうる。生成された塊は、タイヤ構築に使用するために押出又はカレンダー加工される用意のされたゴムの厚板に形成されうる。好適な実施の形態において、本願明細書における教示によって処理された冷却流体は、これらのゴム合成物を有害に変性させない。
[カレンダー加工]
【0029】
概して、カレンダー加工工程は、繊維製のコード及びスチール製のコードをゴムストックで覆うことを含む。本体層及び強化ストリップは、接着液で覆ったポリエステルコードを組み込んでもよい。このコードは、典型的にはカレンダー加工機24の大型の加熱されたロール間を通過する。織物は、耐摩擦ストリップと同様に用意されてカレンダー加工されうる。ゴムは裸仕様のスチールに典型的に接着しないため、スチールベルト用のスチール製のコードワイヤは、真ちゅうの薄層で覆われうる。これらの真ちゅうで覆われた、ゴムを囲むスチール製コード(マルチストランドケーブル)は、スチールベルトになる。
【0030】
これらのワイヤは、温度及び湿度が制御及び監視されるびく(クリール)部屋中のローラー装置に典型的に配置される。ワイヤは、典型的にびく部屋からカレンダー加工部への開放式工場を通る。ゴム及びベルトワイヤの間の強力な接着剤は、スチールベルト入りラジアルタイヤの製造に有利である。スチール製のワイヤは、スキムストックゴムの薄層でワイヤが覆われるカレンダー加工部へと典型的にローラー上のびく部屋から調心用くし状部を介して通る。ゴムは、最大の接着力のために、スチール製のコードをも貫通することが好ましい。ポリエステル製のコード及びスチール製のコードのいずれも、タイヤ構築の使用のために、典型的に特定の角度及び幅で切断される。
[押出]
【0031】
いくつかのタイヤ部材は、未硬化のゴムの押出によって形成される。概して、トレッド及びサイドウォールといったタイヤ部材は、押出機を介して未硬化のゴム合成物をタイヤトレッド又はサイドウォール形状にさせることによって用意される。タイヤ製造工程における押出機26は、主として押出機バレル及び押出機ヘッドからなる通常スクリュー型のシステムである。典型的には、ゴム合成物は、加熱、混合、及び、加圧工程を経るときに、押出機バレルに供給される。そして、ゴム合成物は、加圧下で成形される押出機ヘッドに流入する。押出機は、混合操作で製造される大部分のゴム合成物を処理してそして最終的なタイヤ構築操作のための様々な化合物を準備するために、タイヤ製造工程中に最も重要な操作の一つである。
【0032】
道路に接触するタイヤトレッド、又は、タイヤの部分は、トレッド自体、トレッドショルダー、及び、トレッドベースからなる。この複合トレッド形態の形成に使用される3つの異なるゴム合成物が存在しうるため、押出機システムは、押出機ヘッドを共有する3つの異なる押出機をしばしば含む。多くの場合、3つのゴム合成物は、異なる押出機から同時に押し出されて、共有された押出ヘッドに統合される。典型的に次の段階は、形状及び寸法が形成されるダイプレートにゴム合成物を移動させて、そして、長い加熱及び/又は冷却ライン28を介して寸法をさらに制御及び安定化することである。冷却ラインは、水といった冷却流体を通常含み、しばしば100から200フィート長である。ラインの終端で、トレッドは、構築されるタイヤに対する特定の長さ及び重量で切断される。
【0033】
加熱及び冷却ゴム部材のいずれも、ストリーム、熱空気、スプレー又は水浴といった、この目的のための既知の任意の好適な手段によってそれぞれ得られうる。本願明細書における方法は、これらの型の任意のヒータ及び/又はクーラーで流体を処理するために使用されうる。
【0034】
図1は、タイヤ製造システムにおいて冷却流体を処理するために使用されうる高振動数超音波装置30の一実施例を示す。この図を参照すると、本願明細書に記述されている装置は、好ましくは円筒形又は長方形断面の区画室2を含みうる。さらなる実施の形態において、区画室2は、処理される冷却流体を保持する貯蔵部(図示せず)に連通しうる。「貯蔵部」の用語は、幅広く解釈され、冷却流体を含む装置に全体的に関する。特定の実施の形態において、本願明細書において提供される装置は、冷却流体を再循環させるために汚水槽を介して(副流煙を経て)連結される。さらなる実施の形態において、本願明細書において提供される装置は、貯蔵部に連通しておらず、処理される冷却流体に直接連結される。
【0035】
さらなる実施の形態において、区画室2は、区画室2中に(好ましくはこの区画室2の中央に)超音波4を放射する(例えばその壁に沿って)1つ以上の高振動数超音波エミッタ1を含む。他の実施の形態において、容器は、区画室2中に放射された超音波4領域中にガスのマイクロバブル5を放出するために配置された、ガスのマイクロバブル5を放出するための1又は2以上のマイクロバブルエミッタ3をも有している。
【0036】
本明細書において使用される用語の「マイクロバブル」の用語は、平均直径1mm未満のガスバブルを言うことを意図している。いくつかの実施の形態において、直径は50μmであるかそれ未満である。さらに他の実施の形態において、マイクロバブルは、約30μm未満の直径を有する。特定の実施の形態において、マイクロバブルは、空気のマイクロバブルといった、空気、酸素、及びオゾンのマイクロバブルから選択される。作動コストを低下させるために、空気のマイクロバブルといった、オゾンマイクロバブル以外のマイクロバブルを使用することが有利でありうる。
【0037】
「微生物」の用語は、細菌と同義であり、タイヤ製造設備(例えば、機械類、工具等)、人間、ほ乳類又は任意の他の動物に対して悪影響を及ぼしうる病原性又は非病原性の微生物に全体的に関する。このような微生物は、例えば、好気性細菌及び嫌気性細菌、ウイルス、原生生物(例えば、かび、藻)等を含みうる。
【0038】
特定の実施の形態において、本願明細書における方法及び装置は、冷却流体を処理するための低エネルギーで、高振動数の超音波を含む。「高振動数」の用語は、100kHzより高く最大数MHzまでの振動数を呼ぶことを意図している。特定の実施の形態において、使用される高振動数は、200kHz及び10MHzの間である。様々な実施の形態において、超音波振動数は、200kHz及び3MHzの間から選択されうる。他の実施の形態において、使用される振動数は、200kHz及び1.8MHzの間である。
【0039】
本願明細書における方法及び装置の様々な実施の形態において、ガスのマイクロバブル5を放出するためのマイクロバブルエミッタ3は、マイクロバブルが自然に上昇することによって又は冷却ガスの流れの中のガスの同伴によって移動するように、区画室2のベース11に(すなわち、区画室2の底部に)配置される。
【0040】
さらに他の実施の形態において、本願明細書において提供される装置及び方法は、冷却流体中の微生物の成長を中和、処理、又は抑制する。本願明細書の教示は、作用の正確な機構によって限定されるものではないが、より具体的な実施の形態において本願明細書において提供される装置は、ROO、HOH及びHOOラジカルを生成しうる。これらのラジカルは、これらのラジカルと同調して、微生物に対して有毒でこれらに不活性化及び/又は破壊をもたらすHをも形成しうる。
【0041】
有利には、これらの有毒種を生成するために必要なエネルギーは、本願明細書において記述するように、この工程をマイクロバブルの存在下で行う場合に、低減される。
【0042】
超音波によって誘起されたキャビテーションバブルにマイクロバブルを重ね合わせることによって、超音波領域中へのマイクロバブルの注入が音ルミネセンス現象の増大をもたらして、活性化された有毒種の数は増大しうるということが近年理解されている。この現象は、超音波処理が好適な寸法のマイクロバブルの存在と相乗的に組み合わされたときに、巨視的なレベルで観察される。
【0043】
特定の分子(例えば古典的な光感作物質及び音響感作物質)上への(例えば、超音波、レーザ、光)直接放射の効果によって、処理される冷却媒体の殺菌特性における酸化ストレスからもたらされる生化学工程において特に重要な役割を果たしうる一重項酸素、超酸化物ラジカル、又は、脂肪酸ラジカルといった、高活性の酸素種が生成される。特に、一重項酸素は、例えばタンパク質、脂質、アミノ酸、ヌクレオチドといった様々な細胞成分を酸化しうる。
【0044】
超酸化物ラジカル又は一重項酸素といった極度に活性な含酸素種の生成によって、バクテリアの、菌類の、藻類の、そしてかびの細胞に対して極度に有害な一連の生化学反応がもたらされうる。
【0045】
特定の実施の形態において、タイヤ製造工程で使用される水は、脱イオン化又は脱塩されている。
【0046】
様々な実施の形態は、冷却流媒体から細胞を中和、成長の抑制、及び/又は除去するために、殺生物剤、光感作物質及び/又は音響感作物質といった追加的な化学薬品を必要としない装置及び方法を対象としている。本願明細書において提供される装置及び方法は、光感作物質、音響感作物質といった他の薬とともに使用されうるが、生きている細胞を処理する際に提供されるこの方法及び装置の有効性は、他の化学薬品、試薬、薬の使用に依存しないことに留意することは重要である。従って、本願明細書において記述されている方法及び装置は、殺生物剤又は他の抗菌剤といった追加的な化学薬品、又は、試薬無しで使用されうる。しかしながら、他の実施の形態において、本願明細書の方法及び装置は、追加的な化学薬品と組み合わせて使用されうる。
【0047】
追加的な実施の形態において、本願明細書において提供される装置及び方法は、超音波を特定の領域に提供する必要がないという利点を有している。何故なら、インサイチュで形成された生成物(例えば、処理される冷却流体の貯蔵部6に対して形成された分子メッセンジャ、ROS(活性酸素種)、ラジカル及びH)を拡散することによって、処理システムが機能することが観察されるからである。
【0048】
更なる実施例において、本願明細書において記述される装置の一つ以上の超音波4のエミッタ1は、定常波現象を制限するように配向されている。例えば、特定の実施の形態において、一つ以上の超音波エミッタは、区画室2の軸9に対して、そして、冷却流体の流れ及びマイクロバブル5の流れに対して、斜めに(この軸9と直角をなさない鋭角で)配向されうる。この特徴によって、区画室2中に定常領域を形成することなく、区画室2中の全てのマイクロバブル5を同質の方法で処理することが可能になる。従って、本願明細書における所定の実施の形態は、均一な処理、又は実質的に均一な処理、及び長期に渡る保護を提供する装置及び方法を対象としている。
【0049】
他の実施の形態によれば、本願明細書に記述された装置及び方法は、大部分が可視光の範囲の振動数で超音波4領域の区画室2中に放射する光エミッタ12(すなわち、電磁放射エミッタ)を含みうる。しかしながら、特定の用途において、ある特定の微生物を除去するために、(例えば、UVA、UVB、又はUVC型)紫外線放射、赤外線、レーザ、マイクロ波等といった大部分が非可視光の振動数を有する電磁波を放射することが有利でありうる。
【0050】
領域中に超音波及び光放射と組み合わせてマイクロバブルの放射を含む処理は、冷却流体中に存在する微生物を不活性化及び除去して、これらの成長を抑制する際に特に有効である。音ルミネセンスの現象は、特定の微生物に対して極度に有毒な一連の生化学反応をもたらしうる、超酸化物ラジカル、OH、又は一重項酸素といった、極度に活性な含酸素種(しばしばROS:活性酸素種として参照される)の生成を促進しうる。
【0051】
他の実施の形態において、本願明細書において記述されている装置及び方法は、冷却流体中に存在する微生物を回収するための装置と同様に、ポンプ又は他の冷却流体を再循環するための装置を含みうる。微生物を回収するための装置の例は、(例えばサイクロン等といった)ろ過、遠心分離、及び、沈殿のための装置を非限定的に含む。特定の実施の形態において、ポンプ及び/又は回収のための装置は、処理される冷却流体を含む貯蔵部と区画室2間に配置される。
【0052】
さらなる実施の形態において、冷却流体は、重力流、速度流、又は溝(例えば、コンベヤーを設置した溝)を介して収集されうる。特定の実施の形態において、冷却流体を収集した後、本願明細書で提供された方法によって処理されうるし、冷却システムを介して再循環されうる。
【0053】
本願明細書の方法及び装置は、例えばタイヤ製造といったゴム製造可能な任意に好適な設備(例えば機械)又は製品で用いられる実際的に任意の種類の冷却流体を処理するために使用されうるし、そして、タイヤ製造において現状で使用されるか又は将来において利用可能である任意の好適な型の冷却流体を処理するために使用されうる。タイヤ製造工程中に利用される流体の下記の一般的なカテゴリの任意のもの(水性媒体、乳剤、分散液、又は溶液)を含む、実用上の任意の冷却流体は、本願明細書に記述される装置及び方法に使用されうる。「冷却流体」の用語は、幅広く解釈されるべきであり、そして、冷却工程における任意の段階で使用される流体に全体的に関するものである。本願明細書に記述される全ての方法及び装置において、「冷却流体」の用語は、タイヤ製造工程におけるゴム部材を加熱するために使用される流体を包含する「加熱流体」の用語に代用されうる。
【0054】
上述の機能に基づいて、タイヤ製造工程において利用される適正に処理された冷却流体によって、設備寿命の長期化及び完成品の向上がもたらされる。
【0055】
さらなる実施の形態において、本願明細書の方法及び装置は、例えば、汚水槽の遠心分離、ろ過、通気、掃除、固形物の除去、殺生物剤の添加、を含む微生物の繁殖を抑制する1又は2以上の他の方法とともに用いられうる。従って、特定の実施の形態において、本願明細書における装置及び方法は、一又は二以上の上述した処理方法、又は他の抗菌性処理の前、後、又は間のいずれかにおける高振動数の超音波の印加に関する。
[タイヤ構築]
【0056】
スチール製ベルト入りラジアルタイヤの大部分は、タイヤ構築機32を用いて手動で組み立てられる。第一段階の構築機は、円筒形の回転ドラムでタイヤを典型的に構築する。通常、タイヤ構築工程の第一段階の間、内側ライナー、本体層、ビーズ、ビーズ強化ストリップ及びサイドウォールが、第一段階の構築機によって組み立てられる。第二段階のタイヤ構築の間、スチール製のベルト及びトレッドが適用される。「グリーンタイヤ」として知られるタイヤ部材は、これらの鋲又は粘性とともに機械的に一体で保持される。組立前に、本体層及びスチール製の部材は、大型ロール中に格納される。これらの部材を構築機に移送する前に、これらはしばしば圧延構成中に格納される。織物ライナーは、部材同士が互いにくっつくことを防止するために圧延材料の層間に配置される。
[加硫(調理/硬化)]
【0057】
加硫工程の間、「グリーンタイヤ」は、型の中に配置されて、拡張可能な袋上に配置される。典型的に、加硫機34は、2つの部分の金属製の型である。この袋は、タイヤを型に対向させて、サイドウォールパターン及びトレッドパターンを形成することによって作動する。この成形は、袋内側の蒸気圧又は温水を介して典型的になされる。
【0058】
タイヤのゴム部材は、高温及び高圧で型及び袋の中の熱で生じた蒸気によって通常加硫されている。この熱によって、ゴム部材に化学的及び物理的な変化がもたらされる。分子レベルにおいて、重要な化学的変化が加硫の間に生じうる。概して、「グリーンタイヤ」のゴム部材は、完成品のタイヤで見出される堅さと一致するプラスチックから変性される。加硫工程は、ほぼ分離できない接着を形成する様々な成分と化学的及び物理的に連結している。より短いゴム分子は、分子を連結する長いポリマー鎖に連結される。
【0059】
様々な成分中の分子が適正に接着されるときに、界面は、完成品のグリーンタイヤを形成して消失する。加硫の結果として、ゴムは、本質的に不溶性になり、そして、組立工程の間「グリーンタイヤ」を操作するために使用される任意の手段によって加工されない。
[最終検査及び修理]
【0060】
加硫の後、タイヤは、倉庫に送られる前に、典型的に視覚的に検査されてタイヤ一様性測定機(TUG)に配置される。異常が発見されたとき、タイヤは、典型的に分類者に送られる。この分類者は、タイヤを修理するか、廃棄処分するか、又はタイヤをさらに他の検査に回すかの設定を行う。これらの修理には、バフ研磨及び研削が含まれる。タイヤは、修理がわからないように修理工によって局所的に(スポットで)加硫されるか又は修理されうる。最終検査/修理の後、タイヤは倉庫に送られて、そこで、トレッドラベルが配置されて、そして、小売店に送られる。
【0061】
様々な設備及び機械が、製造されたタイヤを検査するために用いられうる。非排他的な例には、視覚検査装置、バランス検査機器、力及びモーメント検査機器、X線機器が含まれる。好適な実施の形態において、本願明細書における装置は、これらの設備及び機械を含んでいる。追加的な実施の形態において、本願明細書において開示された冷却流体を処理する方法は、検査機械及び/又は設備を含む装置で使用されうる。最終的な検査機器36は、図2に現されたタイヤ製造システムに示される。
【0062】
前述の説明は本願明細書の教示の特定の実施の形態を詳述しているが、しかしながら、上述の装置がテキストでどれだけ詳述されていても、本願明細書の装置及び方法は、多くの方法で実施されうることが理解されるであろう。記述されているように、本願明細書の教示における特定の特徴又は態様を記述するとき、特に技術用語の使用は、限定するために本願明細書において再定義していると受け取るべきではないことに留意すべきである。技術用語が関連する本願明細書における教示の任意の特定な特徴又は態様を含むからである。それ故、本願明細書の教示の範囲は、添付の請求項及びその均等物に従って解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0063】
1 超音波エミッタ
2 区画室
3 マイクロバブルエミッタ
4 超音波
5 ガスのマイクロバブル
9 軸
11 ベース
12 光エミッタ
20 タイヤ製造システム
22 ゴムミキサー
24 カレンダー加工機
26 押出機
28 ヒータ及び/又はクーラー(加熱及び/又は冷却ライン)
30 高振動数超音波装置
32 タイヤ構築機
34 加硫機
36 最終検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ製造において使用される冷却流体を処理する方法であって、
ガスのマイクロバブル及び振動数100kHz以上の振動数の超音波に前記冷却流体を同時に晒すことを含む、方法。
【請求項2】
前記ガスのマイクロバブルは、本質的に外気からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロバブルの直径は、約50マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
タイヤ製造冷却流体中の生きている微生物の存在を抑制するための装置であって、
前記冷却流体の容器を保持するための区画室と、
100kHzより高い振動数で超音波信号を前記区画室に放射するように構成された超音波エミッタと、
前記冷却流体を含む前記区画室中の前記超音波領域中に、平均直径1mm未満のガスのマイクロバブルを放出するように構成されたガスマイクロバブルエミッタ、を含む、装置。
【請求項5】
前記ガスのマイクロバブルはオゾンのマイクロバブルではない、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ガスのマイクロバブルは、空気及び酸素のマイクロバブルからなる群から選択される、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記ガスのマイクロバブルの平均直径は、50μm未満である、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記ガスのマイクロバブルの平均直径は、30μm未満である、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記区画室中に放射される超音波が定常場現象を生成しないように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
可視範囲の電磁波を前記超音波領域中に放射するように構成された電磁放射エミッタを更に備える、請求項4に記載の装置。
【請求項11】
前記微生物はバクテリアである、請求項4に記載の装置。
【請求項12】
タイヤ製造において使用される冷却流体の処理方法であって、
流体経路回路からのタイヤ製造冷却流体を収集する段階と、
前記冷却流体の区画室中への経路を指定する段階と、
ガスのマイクロバブル及び100kHz以上の振動数の超音波に前記区画室中の前記冷却流体を同時に晒す段階と、を含む、方法。
【請求項13】
前記ガスのマイクロバブルは、本質的に外気からなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロバブルの直径は、約50マイクロメートル未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
タイヤ製造システムと、
前記タイヤ製造システムに連結される冷却流体回路と、
前記冷却流体が経路指定される前記冷却流体の容器を保持するための区画室と、
100kHzより高い振動数で超音波信号を前記区画室に放射するように構成された超音波エミッタと、
前記冷却流体を含む前記区画室中の前記超音波領域中に、平均直径1mm未満のガスのマイクロバブルを放出するように構成されたガスマイクロバブルエミッタ、を含む、装置。
【請求項16】
前記ガスのマイクロバブルは、オゾンのマイクロバブルではない、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記ガスのマイクロバブルは、空気及び酸素のマイクロバブルからなる群から選択される、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記ガスのマイクロバブルの平均直径は50μm未満である、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記ガスのマイクロバブルの平均直径は30μm未満である、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、前記区画室中に放射される超音波が定常場現象を生成しないように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
前記冷却流体から固体粒子を遠心分離させるように構成されるサイクロン分離機を更に備える、請求項15に記載の装置。
【請求項22】
可視範囲の電磁波を前記超音波領域中に放射するように構成された電磁放射エミッタを更に備える、請求項15に記載の装置。
【請求項23】
ゴムミキサーと、
押出機と、
冷却浴槽と、
前記冷却浴槽に流体接続された超音波及びマイクロバブル処理装置と、
タイヤ構築機と、を備える、タイヤ製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−10104(P2013−10104A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−177929(P2012−177929)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2007−543181(P2007−543181)の分割
【原出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】