説明

タイヤ

【課題】タイヤの氷上性能及び乾燥路面上での操縦安定性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なゴム組成物をトレッドに用いたタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤのトレッド部3に、シス-1,4結合量が90%以上及びビニル結合量が1.2%以下で且つ第一級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体(A)を10〜90質量%含むゴム成分100質量部に対し、重合反応終了時の重量平均分子量が2×103〜15×104である低分子量変性共役ジエン系重合体(B)1〜60質量部と、カーボンブラックを含む補強性充填剤(C)10〜100質量部とを配合してなるトレッド用ゴム組成物であって、加硫後のゴムマトリクス中に気泡を含有し、その気泡率が5〜50%であるゴム組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、特にタイヤの氷上性能及び乾燥路面上での操縦安定性を向上させ、さらに転がり抵抗を低減することが可能なゴム組成物をトレッド部に用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冬用タイヤのトレッド部に適用するゴム組成物は、一般に、低温での柔軟性を確保するため(なお、低温とは、氷雪路面上走行時の温度であり、-20〜0℃程度である)、ポリブタジエンゴム(BR)や天然ゴム(NR)等のガラス転移温度(Tg)が低いポリマーをゴム成分として用いたものが多い。しかしながら、ポリブタジエンゴムや天然ゴム等のガラス転移温度が低いポリマーを配合したゴム組成物は、低温領域での弾性率の低下と共に高温領域での弾性率も低下させる傾向があるため、乾燥路面上での操縦安定性が低い問題があった(なお、高温とは、通常走行時のハンドリングに影響を及ぼす温度である)。
【0003】
一方、特開2004−238619号公報(特許文献1)では、タイヤの氷上性能を向上させるため、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分と発泡剤とを組み合わせ且つ0℃及び60℃での動的弾性率を特定の範囲に調整したゴム組成物をトレッドゴムに用いたスタッドレスタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−238619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2004−238619号公報に開示のゴム組成物は、タイヤの氷上性能については改善できるものの、乾燥路面上での操縦安定性については一切検討されておらず、依然として改良の余地がある。また、一方で、車輌の低燃費化、低公害化が進む中、タイヤに対する低転がり抵抗性の要求も強く、転がり抵抗の低減を考慮しながら、氷上性能及び乾燥路面上での操縦安定性の向上を図る必要もある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、タイヤの氷上性能及び乾燥路面上での操縦安定性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なトレッド用ゴム組成物をトレッド部に用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のシス-1,4結合量及びビニル結合量と第一級アミノ基とを有する変性共役ジエン系重合体を特定量含むゴム成分に対して、特定の重量平均分子量を有する低分子量変性共役ジエン系重合体及びカーボンブラックを特定量配合した、加硫後のゴムマトリクス中に特定の気泡率を有するゴム組成物をタイヤのトレッド部に適用することで、氷上性能及び乾燥路面上での操縦安定性を向上させながら、転がり抵抗を低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明のタイヤは、
シス-1,4結合量が90%以上及びビニル結合量が1.2%以下で且つ第一級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体(A)を10〜90質量%含むゴム成分100質量部に対して、
重合反応終了時の重量平均分子量が2×103〜15×104である低分子量変性共役ジエン系重合体(B)1〜60質量部と、カーボンブラックを含む補強性充填剤(C)10〜100質量部とを配合してなるゴム組成物であって、加硫後のゴムマトリクス中に気泡を含有し、その気泡率が5〜50%であるゴム組成物をトレッド部に用いたことを特徴とする。
【0009】
なお、シス-1,4結合量とは、重合体中の共役ジエン化合物単位におけるシス-1,4結合の割合であり、ビニル結合量とは、重合体中の共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の割合である。また、重合反応終了時の重量平均分子量とは、重合反応を行った後であって停止反応又は変性反応(カップリング反応を含む)を行う直前の重量平均分子量であり、例えば、重合反応を行った後にアルコール等の重合停止剤によって重合体の活性末端を失活させることで得られる重合体の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質として求めた値である。更に、変性共役ジエン系重合体(A)は、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)の概念に含まれるものを除く。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が20〜180m2/gであることが好ましく、20〜100m2/gであることが更に好ましい。
【0011】
本発明のタイヤの好適例においては、前記低分子量変性共役ジエン系重合体(B)が、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基及び窒素含有官能基よりなる群から選択される少なくとも一種の官能基を含有する。この場合、補強性充填剤(C)に対する反応性が良好であり、ゴム組成物の補強効果が高い。
【0012】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記低分子量変性共役ジエン系重合体(B)が、低分子量変性ポリブタジエン及び/又は低分子量変性ポリイソプレンである。この場合、ゴム組成物のガラス転移点(Tg)が低下し、氷上性能を向上できる。
【0013】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、更に平均長径が5〜1000μmの微粒子(D)を3〜30質量部含む。
【0014】
また、本発明のタイヤの他の好適例においては、前記トレッド部の表層に、前記微粒子(D)が脱離して形成された穴部を有する。更に、本発明のタイヤは、冬用タイヤとして好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、変性共役ジエン系重合体(A)を10〜90質量%含むゴム成分100質量部に対して、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)1〜60質量部と、補強性充填剤(C)10〜100質量部とを配合した、加硫後のゴムマトリクス中に5〜50%の気泡率を有するゴム組成物をトレッド部に適用することで、氷上性能、乾燥路面上での操縦安定性及び低転がり抵抗性に優れたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のタイヤの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図を参照しながら本発明を詳細に説明する。図1は、本発明のタイヤの一例の断面図である。図1に示すタイヤは、一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とを有し、上記一対のビード部1間にトロイド状に延在してこれら各部1,2,3を補強するカーカス4と、該カーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側に位置するベルト5とを備える。
【0018】
図示例のタイヤにおいて、カーカス4は、一枚のカーカスプライからなり、また、上記ビード部1内に夫々配設した一対のビードコア6間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア6の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなる。なお、図示例のカーカス4は、一枚のカーカスプライよりなるが、本発明のタイヤにおいては、カーカスプライの枚数は複数であってもよい。
【0019】
また、図示例のタイヤにおいては、該カーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側に二枚のベルト層からなるベルト5が配置されており、該ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層からなり、二枚のベルト層は、該ベルト層を構成するコードが互いに赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト5を構成する。なお、図中のベルト5は、二枚のベルト層からなるが、本発明のタイヤにおいて、ベルトを構成するベルト層の枚数は二枚以上であればよく、これに限られるものではない。
【0020】
そして、本発明のタイヤは、シス-1,4結合量が90%以上及びビニル結合量が1.2%以下で且つ第一級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体(A)を10〜90質量%含むゴム成分100質量部に対して、重合反応終了時の重量平均分子量が2×103〜15×104である低分子量変性共役ジエン系重合体(B)1〜60質量部と、カーボンブラックを含む補強性充填剤(C)10〜100質量部とを配合してなるゴム組成物であって、加硫後のゴムマトリクス中に気泡を含有し、その気泡率が5〜50%であるゴム組成物をトレッド部に用いたことを特徴とする。
【0021】
上記トレッド用ゴム組成物のゴム成分は、上記変性共役ジエン系重合体(A)を10〜90質量%含むことを要し、30〜70質量%含むことが好ましい。ここで、変性共役ジエン系重合体(A)は、シス-1,4結合量が90%以上で且つビニル結合量が1.2%以下であるため、伸張結晶性を示し、また、第一アミノ基が導入されているため、カーボンブラックを含む補強性充填剤(C)に対する親和性が非常に高い。このため、変性共役ジエン系重合体(A)を用いたトレッド用ゴム組成物は、高温時のロス低減と低温時のロス向上により、低転がり抵抗性及び氷上性能を向上させることができる。また、変性共役ジエン系重合体(A)のシス-1,4結合量が90%以上であれば、タイヤの耐亀裂成長性を大幅に向上させることができる。なお、ゴム成分中に占める変性共役ジエン系重合体(A)の割合が10質量%未満では、氷上性能及び低転がり抵抗性が十分に得られず、一方、90質量%を超えると、乾燥路面上での操縦安定性が十分に得られない。また、上記トレッド用ゴム組成物においては、他のゴム成分として、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等を用いることができ、これらの中でも、天然ゴムが特に好ましい。これら他のゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0022】
上記トレッド用ゴム組成物において、上記変性共役ジエン系重合体(A)は、シス-1,4結合量が90%以上であることを要するが、該シス-1,4結合量が90%未満では、ゴム組成物中における低ロス効果を十分に得ることができない。また、変性共役ジエン系重合体(A)は、ビニル結合量が1.2%以下であることを要し、0.8%以下であることが好ましい。これは、該ビニル結合量が1.2%を超えると、重合体の結晶性が低下するためである。
【0023】
上記変性共役ジエン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、下記に説明する製造過程において低分子量化の問題が起きることもないものの、破壊特性の観点から、重合反応終了時の重量平均分子量が20万以上であることが好ましい。該重合反応終了時の重量平均分子量が20万未満であると、破壊強度が低下する。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、3.5以下が好ましく、3.0以下が更に好ましく、2.5以下が一層好ましい。ここで、平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0024】
上記変性共役ジエン系重合体(A)のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、10〜100が好ましく、20〜80が更に好ましい。ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]が10未満では、破壊特性が低下する傾向にあり、一方、100を超えると、作業性が低下することがある。
【0025】
上記変性共役ジエン系重合体(A)の製造方法は、(1)シス-1,4結合量が90%以上及びビニル結合量が1.2%以下で且つ活性末端を有する共役ジエン系重合体(A')に、該活性末端に対して反応性を示す官能基Aと、少なくとも一つの反応性官能基Bとを有する化合物X(但し、官能基Aと官能基Bは同一であってもよい)を反応させて一次変性共役ジエン系重合体を得る工程(一次変性反応)と、(2)前記一次変性共役ジエン系重合体に、前記反応性官能基Bに対して反応性を示す官能基Cと、少なくとも一つの第一級アミノ基又は保護された第一級アミノ基とを有する化合物Y(但し、官能基Cは第一級アミノ基又は保護された第一級アミノ基であってもよい)を反応させて二次変性共役ジエン系重合体を得る工程(二次変性反応)とを含むことを特徴とし、更に必要に応じて(3)前記二次変性共役ジエン系重合体を加水分解し、化合物Y由来の保護された第一級アミノ基を脱保護する工程(脱保護反応)を含むことができる。
【0026】
上記工程(1)及び工程(2)により得られる変性共役ジエン系重合体(A)又は上記工程(1)、工程(2)及び工程(3)により得られる変性共役ジエン系重合体(A)は、シス-1,4結合量が90%以上及びビニル結合量が1.2%以下で且つ第一級アミノ基を有している。なお、上記共役ジエン系重合体(A')の活性末端と反応性を有し且つ第一級アミノ基を有する化合物が現在市販されておらず、該共役ジエン系重合体(A')に第一級アミノ基を一段階で導入することが困難であるため、かかる製造方法においては、変性共役ジエン系重合体(A)を得るために2回の変性反応(一次変性反応及び二次変性反応)を行っている。
【0027】
まず、一次変性共役ジエン系重合体を得る工程(1)について詳細に説明する。上記工程(1)に用いる共役ジエン系重合体(A')は、シス-1,4結合量が90%以上及びビニル結合量が1.2%以下で、活性末端を有する。このような共役ジエン系重合体(A')の製造方法については特に制限はなく、従来公知の重合反応を用いた製造方法を用いることができるが、配位重合を用いた製造方法が好ましい。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、1-ブテン、2-ブテン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、クロロトルエン等が挙げられる。更に、重合反応の温度は、-30℃〜200℃の範囲が好ましく、0℃〜150℃の範囲が更に好ましい。また更に、共役ジエン系重合体(A')を製造し、該共役ジエン系重合体(A')の活性末端を失活させないためにも、重合系内に酸素、水又は炭酸ガス等の失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮を行うことが好ましい。なお、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。
【0028】
上記共役ジエン系重合体(A')は、共役ジエン化合物の単独重合体、又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体が好ましい。ここで、単量体としての共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン等が挙げられ、これらの中でも、1,3-ブタジエン及びイソプレンが好ましい。一方、単量体としての芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0029】
上記共役ジエン系重合体(A')は、希土類金属を触媒として合成されることが好ましく、例えば、下記(a)〜(c)成分を主成分として含む重合触媒組成物の存在下、上記単量体を重合して得られる。
(a)成分:ランタノイド元素(周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素)の少なくともいずれかを含有するランタノイド元素含有化合物、又は前記ランタノイド元素含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物
(b)成分:アルモキサン、及び/又は一般式(I):AlR123で表される有機アルミニウム化合物(但し、一般式(I)中、R1及びR2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、R3は、R1及びR2と同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基である)
(c)成分:その分子構造中に少なくとも一つのハロゲン元素を含有するハロゲン含有化合物
なお、このような触媒の主成分となる各成分((a)〜(c)成分)の配合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。
【0030】
上記重合触媒組成物に用いる(a)成分は、ランタノイド元素(周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素)の少なくともいずれかを含有するランタノイド元素含有化合物、又はこのランタノイド元素含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物である。ランタノイド元素の具体例としては、ネオジム、プラセオジウム、セリウム、ランタン、ガドリニウム、サマリウム等を挙げることができる。これらのうち、ネオジムが好ましい。なお、これらのランタノイド元素は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ランタノイド元素含有化合物の具体例としては、上記ランタノイド元素のカルボン酸塩、アルコキサイド、β-ジケトン錯体、リン酸塩、亜リン酸塩等を挙げることができる。上記ランタノイド元素のカルボン酸塩としては、2-ヘキシルへキサン、ナフテン酸、バーサチック酸[商品名,シェル化学社製,カルボキシル基が三級の炭素原子に結合しているカルボン酸]等の塩が好適に挙げられる。上記ランタノイド元素のアルコキサイドの具体例としては、一般式(II):(R4O)3Mで表される化合物を挙げることができる(但し、一般式(II)中、Mは、ランタノイド元素であり、R4は、炭素数1〜20の炭化水素基である)。式(II)において、「R4O」で表されるアルコキシ基としては、2-エチル-ヘキシルアルコキシ基、ベンジルアルコキシ基等が好適に挙げられる。上記ランタノイド元素のβ-ジケトン錯体としては、アセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体等が好適に挙げられる。上記ランタノイド元素のリン酸塩又は亜リン酸塩としては、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ビス(1-メチルヘプチル)、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸等の塩が好適に挙げられる。
【0031】
上記ランタノイド元素含有化合物を溶剤に可溶化させるため、又は長期間安定に貯蔵するために、ランタノイド元素含有化合物とルイス塩基を混合すること、又はランタノイド元素含有化合物とルイス塩基を反応させて反応生成物とすることも好ましい。ルイス塩基の量は、上記したランタノイド元素1molあたり、0〜30molとすることが好ましく、1〜10molとすることが更に好ましい。ルイス塩基の具体例としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、一価又は二価のアルコール等を挙げることができる。これまで述べてきた(a)成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
上記重合触媒組成物に用いる(b)成分は、アルモキサン、及び/又は上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物である。アルモキサンの具体例としては、メチルアルモキサン(MAO)、エチルアルモキサン、n-プロピルアルモキサン、n-ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t-ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、イソヘキシルアルモキサン等を挙げることができる。アルモキサンは、公知の方法によって製造することができる。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機溶媒中に、トリアルキルアルミニウム、又はジアルキルアルミニウムモノクロライドを加え、更に水、水蒸気、水蒸気含有窒素ガス、又は硫酸銅5水塩や硫酸アルミニウム16水塩等の、結晶水を有する塩を加えて反応させることにより製造することができる。なお、アルモキサンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。一方、上記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム等を挙げることができる。なお、有機アルミニウム化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記重合触媒組成物に用いる(c)成分は、その分子構造中に少なくとも一個のハロゲン原子を含有するハロゲン含有化合物であり、例えば、金属ハロゲン化物とルイス塩基との反応物や、ジエチルアルミニウムクロリド、四塩化ケイ素、トリメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、四塩化スズ、三塩化スズ、三塩化リン、ベンゾイルクロリド、t-ブチルクロリド、トリメチルシリルアイオダイド、トリエチルシリルアイオダイド、ジメチルシリルジヨード、ジエチルアルミニウムアイオダイド、メチルアイオダイド、ブチルアイオダイド、ヘキシルアイオダイド、オクチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン、ヨウ素、ベンジリデンアイオダイド等を好適に挙げることができる。
【0034】
上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との反応物に用いることができる金属ハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化マンガン、ヨウ化亜鉛、ヨウ化銅等が好適に挙げられる。一方、ルイス塩基としては、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2-エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2-エチルヘキシルアルコール、1-デカノール、ラウリルアルコール等が好適に挙げられる。上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1モル(mol)あたり、0.01mol〜30molの割合で反応させることが好ましく、0.5mol〜10molの割合で反応させることが更に好ましい。このルイス塩基との反応物を使用すると、重合体中に残存する金属を低減することができる。
【0035】
上記した触媒には、上記の(a)〜(c)成分以外に、必要に応じて、重合用単量体と同じ共役ジエン化合物及び/又は非共役ジエン化合物を用いて予備的に調製してもよい。上記触媒組成物は、例えば、溶媒に溶解した(a)〜(c)成分、更に必要に応じて添加される共役ジエン化合物及び/又は非共役ジエン化合物を反応させることにより、調製することができる。なお、各成分の添加順序は任意でよい。但し、各成分を予め混合及び反応させるとともに、熟成させておくことが、重合活性の向上、及び重合開始誘導期間の短縮の点から好ましい。熟成温度は0℃〜100℃とすることが好ましく、20℃〜80℃とすることが更に好ましい。なお、熟成時間には、特に制限はない。重合反応槽に添加する前に、各成分同士をライン中で接触させてもよい。熟成時間は、0.5分以上であれば十分である。また、調製した触媒組成物は、数日間は安定である。
【0036】
上記工程(1)においては、上記活性部位を有する共役ジエン系重合体(A')に、化合物Xを反応させることにより、共役ジエン系化合物の活性末端に化合物Xを導入した一次変性共役ジエン系重合体が得られる。
【0037】
上記工程(1)に用いる化合物Xは、共役ジエン系重合体(A')の活性末端に対して反応性を示す官能基Aと、少なくとも一つの反応性官能基Bとを有する化合物である。ここで、官能基A及び官能基Bは、同一でも異なっていてもよく、例えば、ケテン基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、カルボジイミド基等が挙げられる。
【0038】
上記化合物Xとしては、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニルジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマラート、2,4-トリレンジチオイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジチオイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジチオイソシアネート等が好適に挙げられる。本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、化合物Xとして、二つ以上のイソシアネート基を有するヘテロクムレン化合物を用いることが好ましく、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを用いることが特に好ましい。なお、化合物Xは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、化合物Xの使用量は、単量体100gに対して、0.02mmol〜20mmolであることが好ましく、0.1mmol〜10mmolであることが更に好ましく、0.2mmol〜5mmolであることが特に好ましい。
【0039】
この一次変性反応は、溶液反応で行うことが好ましい。この溶液反応は、例えば、共役ジエン系重合体を重合する際に使用した未反応モノマーを含んだ溶液でもよい。また、一次変性反応の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いて行ってもよく、多段連続式反応器やインラインミキサ等の装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この一次変性反応は、重合反応終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体単離に必要な諸操作などを行う前に実施することが肝要である。なお、一次変性反応の温度は、0℃〜120℃が好ましく、10℃〜100℃が更に好ましい。また、一次変性反応に要する時間は、5分〜5時間が好ましく、15分〜1時間が更に好ましい。
【0040】
一次変性反応は、共役ジエン系重合体(A')の活性末端と化合物Xの官能基Aを反応させて一次変性共役ジエン系重合体を得るものであるが、後述する二次変性反応(工程(2))において、化合物Yと更に反応させるため、化合物Xの官能基Bの少なくとも一つは、未反応の状態で残存させておく必要がある。
【0041】
次いで、上記変性共役ジエン系重合体(A)を製造するには、上記工程(2)により二次変性共役ジエン系重合体を得ることを要する。上記工程(2)においては、上記工程(1)によって得られる一次変性共役ジエン系重合体に、化合物Yを反応させて、化合物X由来の反応性官能基Bに化合物Yを導入した二次変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0042】
上記工程(2)に用いる化合物Yは、化合物X由来の反応性官能基Bに対して反応性を示す官能基Cと、少なくとも一つの第一級アミノ基又は保護された第一級アミノ基とを有する化合物である。ここで、官能基Cとしては、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、水酸基等が挙げられる。なお、官能基Cは、第一級アミノ基でもよいし、保護された第一級アミノ基であってもよい。
【0043】
上記化合物Yとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、1,8-ナフタレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が好適に挙げられる。また、上記化合物Yが保護された第一級アミノ基を有する場合において、上記化合物Yとしては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、N-クロロヘキサメチルジシラザン、N-ブロモヘキサメチルジシラザン、1-(3-ブロモプロピル)-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシアシクロペンタン、1-(3-クロロプロピル)-2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシアシクロペンタン等が好適に挙げられる。
【0044】
この二次変性反応は、上記した一次変性反応と連続して行うことができ、一次変性反応と同様に溶液反応で行うことが好ましい。この溶液反応は、例えば、共役ジエン系重合体を重合する際に使用した未反応モノマーを含んだ溶液でもよい。また、二次変性反応の形式についても特に制限はなく、一次変性反応と同様に、バッチ式反応器を用いて行ってもよく、多段連続式反応器やインラインミキサ等の装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この二次変性反応は、重合反応終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体単離に必要な諸操作などを行う前に実施することが肝要である。なお、化合物Yの使用量は、単量体100gに対して、0.02mmol〜20mmolであることが好ましく、0.1mmol〜10mmolであることが更に好ましく、0.2mmol〜5mmolであることが特に好ましい。二次変性反応の温度は、0℃〜120℃が好ましく、10℃〜100℃が更に好ましい。二次変性反応に要する時間は、5分〜5時間が好ましく、15分〜1時間が更に好ましい。
【0045】
また、上記工程(2)において、一次変性共役ジエン系重合体の化合物X由来の官能基Bと、化合物Yの官能基Cとの反応を促進させる触媒(付加反応触媒)を用いることが好ましい。具体的には、工程(1)における化合物Xを添加した後、又は工程(2)における化合物Yを添加した後に、一次変性共役ジエン系重合体の化合物X由来の官能基Bと化合物Yの官能基Cとの反応を促進させる触媒(付加反応触媒)を添加することが好ましい。このような付加反応触媒としては、三級アミノ基を含有する化合物、又は周期律表の4A族、2B族、3B族、4B族及び5B族の内のいずれかに属する元素を一つ以上含有する化合物を用いることができ、さらに好ましくは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、又はスズ(Sn)の内の元素を一つ以上含有する化合物であり、この触媒を構成する化合物が、アルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが特に好ましい。
【0046】
付加反応触媒として、具体的には、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラn-プロポキシチタニウム、テトラi-プロポキシチタニウム、テトラn-ブトキシチタニウム、テトラn-ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラsec-ブトキシチタニウム、テトラtert-ブトキシチタニウム、テトラ(2-エチルヘキシル)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2-エチルヘキシル)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2-エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2-エチルヘキサノエート)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、テトラキス(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウム等のチタニウムを含む化合物を挙げることができる。
【0047】
また、付加反応触媒としては、例えば、トリス(2-エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラn-プロポキシジルコニウム、テトラi-プロポキシジルコニウム、テトラn-ブトキシジルコニウム、テトラsec-ブトキシジルコニウム、テトラtert-ブトキシジルコニウム、テトラ(2-エチルヘキシル)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2-エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2-エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等を挙げることができる。
【0048】
更に、付加反応触媒としては、例えば、トリエトキシアルミニウム、トリn-プロポキシアルミニウム、トリi-プロポキシアルミニウム、トリn-ブトキシアルミニウム、トリsec-ブトキシアルミニウム、トリtert-ブトキシアルミニウム、トリ(2-エチルヘキシル)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2-エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等を挙げることができる。
【0049】
また更に、付加反応触媒としては、ビス(n-オクタノエート)スズ、ビス(2-エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ラウレート)スズ、ビス(ナフトエネート)スズ、ビス(ステアレート)スズ、ビス(オレエート)スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジn-オクタノエート、ジブチルスズジ2-エチルヘキサノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジブチルスズビス(2-エチルヘキシルマレート)、ジn-オクチルスズジアセテート、ジn-オクチルスズジn-オクタノエート、ジn-オクチルスズジ2-エチルヘキサノエート、ジn-オクチルスズジラウレート、ジn-オクチルスズマレート、ジn-オクチルスズビス(ベンジルマレート)、ジn-オクチルスズビス(2-エチルヘキシルマレート)等を挙げることができる。
【0050】
この付加反応触媒の使用量は、付加反応触媒として例示した化合物のモル数が、反応系内に存在する未反応の官能基A及び官能基Bの合計に対するモル比として、0.1〜10であることが好ましく、0.5〜5であることが更に好ましい。該モル比が0.1未満では、変性反応(具体的には、二次変性反応)が十分に進行せず、一方、10を超えると、付加反応触媒としての効果は飽和しており、経済上好ましくない。
【0051】
上記変性共役ジエン系重合体(A)は、上記工程(1)及び工程(2)が終了した後、必要に応じて、重合停止剤や重合安定剤を反応系に加え、変性共役ジエン系重合体の製造における従来公知の脱溶媒、乾燥操作を行うことによって回収することができる。また、上記化合物Yが保護された第一級アミノ基を有する場合においては、上記工程(1)及び工程(2)が終了した後、更に(3)二次変性共役ジエン系重合体を加水分解し、化合物Y由来の保護された第一級アミノ基を脱保護する工程を行うことが好ましい。これにより、第一級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体(A')が得られる。なお、加水分解には、通常の方法を用いることができる。
【0052】
また、上記トレッド用ゴム組成物に用いる低分子量変性共役ジエン系重合体(B)は、重合反応終了時の重量平均分子量が2×103〜15×104で且つ分子中に少なくとも一つの官能基を有するため、高温領域での貯蔵弾性率(G')を低減することなく、損失正接(tanδ)を低減できる。このため、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)を用いたトレッド用ゴム組成物は、タイヤの乾燥路面上での操縦安定性を改善することができる。なお、上記トレッド用ゴム組成物は、乾燥路面上での操縦安定性を改善する観点から、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)をゴム成分100質量部に対して1〜60質量部含有する。低分子量変性共役ジエン系重合体(B)の含有量がゴム成分100質量部に対して1質量部未満では、タイヤのドライ性能を低下させ、一方、60質量部を超えると、氷上性能及び低転がり抵抗性を低下させる。
【0053】
上記低分子量変性共役ジエン系重合体(B)は、重合反応終了時の重量平均分子量が2×103〜15×104の範囲であることを要し、5×103〜12×104の範囲であることが好ましい。該重合反応終了時の重量平均分子量が2×103未満では、高温領域での貯蔵弾性率(G')が低下すると共に損失正接(tanδ)が上昇し、一方、15×104を超えると、作業性が低下する。
【0054】
上記低分子量変性共役ジエン系重合体(B)は、芳香族ビニル化合物の結合量(X)(質量%)と共役ジエン化合物部分のビニル結合量(Y)(%)とが、下記式(III):
X + (Y/2) < 25 ・・・ (III)
の関係を満たすことが好ましい。上記式(III)の左辺が25未満であれば、氷上性能を向上させることができる。
【0055】
上記トレッド用ゴム組成物において、上記低分子量変性共役ジエン系重合体(B)は、分子中に少なくとも一つの官能基を有する。ここで、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)は、スズ含有化合物、ケイ素含有化合物又は窒素含有化合物等の変性剤で変性され、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基又は窒素含有官能基等を導入したものが好ましい。上記低分子量変性共役ジエン系重合体(B)に導入される官能基としては、カーボンブラック、シリカ等の充填剤と親和性を有する官能基が好ましい。低分子量変性共役ジエン系重合体(B)は、このような官能基を有することにより、官能基を有しない場合に比べて、充填剤に対する親和性が高くなる。このため、充填剤の分散性が向上して、氷上性能を向上できる上、高温での損失正接(tanδ)が低下し、ゴム組成物自体の発熱を抑制できる。
【0056】
上記スズ含有官能基としては、例えば、ハロゲン化スズ化合物残基が挙げられ、具体的には、トリフェニルスズクロリド、トリブチルスズクロリド、トリイソプロピルスズクロリド、トリヘキシルスズクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジフェニルスズジクロリド、ジブチルスズジクロリド、ジヘキシルスズジクロリド、ジオクチルスズジクロリド、フェニルスズトリクロリド、ブチルスズトリクロリド、オクチルスズトリクロリド及び四塩化スズからなる群から選択される塩化スズ化合物から塩素原子が一つ以上離脱して形成される残基が好ましい。
【0057】
上記ケイ素含有官能基としては、例えば、下記一般式(IV):
【化1】

[式中、Aは、イソシアネート基、チオイソシアネート基、イミン残基、アミド基、第一アミノ基、第一アミンのオニウム塩残基,環状第二アミノ基、環状第二アミンのオニウム塩残基、非環状第二アミノ基、非環状第二アミンのオニウム塩残基、イソシアヌル酸トリエステル残基、環状第三アミノ基、非環状第三アミノ基、ニトリル基、ピリジン残基、環状第三アミンのオニウム塩残基、非環状第三アミンのオニウム塩残基、エポキシ基,チオエポキシ基、ケトン基、チオケトン基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル残基、チオカルボン酸エステル残基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化物残基、炭酸ジヒドロカルビルエステル残基、スルフィド基、マルチスルフィド基、ヒドロキシ基、チオール基、アリル−Sn又はベンジル−Snの結合を有する基、スルフォニル基及びスルフィニル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基で;R5は単結合又は二価の不活性炭化水素基で;R6及びR7は、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基で;mは0〜2の整数であり;OR7が複数ある場合、複数のOR7は互いに同一でも異なっていてもよく;上記第一アミノ基は変性反応終了後までアルキルシリル基(例えば、メチルシリル基やエチルシリル基)等により保護されていることが好ましい]で表わされるヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分縮合物からOR7が一つ以上離脱して形成される残基が挙げられる。
【0058】
式(IV)において、R5のうちの二価の不活性炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。該直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
【0059】
また、R6及びR7としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基等が挙げられる。ここで、上記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。また、上記アリール基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。更に、上記アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0060】
また、式(IV)において、Aがイソシアネート基、チオイソシアネート基、イミン残基、アミド基、第一アミノ基、第一アミンのオニウム塩残基,環状第二アミノ基、環状第二アミンのオニウム塩残基、非環状第二アミノ基及び非環状第二アミンのオニウム塩残基、イソシアヌル酸トリエステル残基、環状第三アミノ基、非環状第三アミノ基、ニトリル基、ピリジン残基、環状第三アミンのオニウム塩残基又は非環状第三アミンのオニウム塩残基である場合には、上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、窒素含有官能基を有することになる。
【0061】
式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物のうち、窒素含有官能基を有するものとしては、例えば、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2-(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2-シアノエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
また、カーボンブラック及びシリカの双方による補強効果を大幅に向上させるには、上記一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分縮合物からOR7が一つ以上離脱して形成される残基のうち、下記式(V):
【化2】

[式中、R8及びR10は夫々独立にOR、OH又は炭素数1〜20のアルキル基であり、R9は炭素数1〜20のアルキレン基であり、Rは任意に硫黄原子、酸素原子、窒素原子及び/又はハロゲン原子を有する炭素数1〜20のヒドロカルビル基である]で表される一価の官能基又は下記式(VI):
【化3】

[式中、R11及びR13は夫々独立にOR、OH又は炭素数1〜20のアルキル基であり、R12及びR14は夫々独立に炭素数1〜20のアルキレン基であり、Rは任意に硫黄原子、酸素原子、窒素原子及び/又はハロゲン原子を有する炭素数1〜20のヒドロカルビル基であり、MはSi、Ti、Sn、Bi、Zr又はAlであり、R15はOH、重合体からなる一価の基、ハロゲン、炭素数1〜30のヒドロカルビル基、炭素数2〜30のヒドロカルビルカルボキシル基、炭素数5〜20の1,3-ジカルボニル含有基、炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基、並びに炭素数1〜20のヒドロカルビル基及び/又は炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基で三置換されたシロキシ基からなる群から選ばれる基であり、複数のR15は同一でも異なっていてもよく、kは{(Mの価数)−2}であり、nは0又は1の整数である]で表される二価の官能基が好ましい。
【0063】
式(V)及び式(VI)において、R8、R10、R11及びR13としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。なお、Rが硫黄原子、酸素原子、窒素原子及び/又はハロゲン原子を有する場合、例えば、硫黄原子は-SH、-SX-(Xは1〜5の整数である)又はエピチオ基として、酸素原子は-OH、-O-、エポキシ基、アシル基又はカルボキシル基として、窒素原子はアミノ基(第一アミノ基、第二アミノ基、非環状第三アミノ基又は環状第三アミノ基)、イミノ基、アミジン基、イソシアネート基、N-ヒドロキシ基、N-オキシド基、ニトリル基、イミン残基としてR中に含まれ、またハロゲン原子は、特に限定されないが、塩素又は臭素としてR中に含まれるのが好ましい。
【0064】
また、R9、R12及びR14としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等が挙げられる。
【0065】
なお、通常、上記式(V)で表される一価の官能基を有する重合体を縮合して上記式(VI)で表される二価の官能基を有する重合体を生成するため、R11とR13が同一で且つR12とR14が同一である。また、第一アミノ基は変性反応終了後までアルキルシリル基(例えば、メチルシリル基やエチルシリル基)等により保護されていることが好ましい。
【0066】
上記低分子量変性共役ジエン系重合体(B)は、特に制限されず、例えば、単量体である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを共重合、又は単量体である共役ジエン化合物を単独重合して製造される。詳細には、上記重合体(B)は、(1)該単量体を重合開始剤を用いて重合させ、重合活性部位を有する重合体を生成させた後、該重合活性部位を各種変性剤で変性する方法や、(2)該単量体を官能基を有する重合開始剤を用いて重合させる方法で製造することができる。更に、上記方法を組み合わせてもよい。ここで、重合活性部位を有する重合体は、アニオン重合により製造されたものであっても、配位重合により製造されたものであってもよい。なお、共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3-ブタジエン及びイソプレンが好ましい。一方、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。従って、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)としては、低分子量変性ポリブタジエン、低分子量変性ポリイソプレン及びそれらの混合物が好ましい。
【0067】
アニオン重合において、上記重合体(B)の合成に用いる重合開始剤としては、有機リチウム化合物が好ましく、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が更に好ましい。なお、重合開始剤としてヒドロカルビルリチウムを用いる場合、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位である重合体が得られる。一方、重合開始剤としてリチウムアミド化合物を用いる場合、重合開始末端に窒素含有官能基を有し、他方の末端が重合活性部位である重合体が得られ、該重合体は、変性剤で変性することなく、本発明における低分子量変性共役ジエン系重合体(B)として用いることができる。なお、重合開始剤の使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
【0068】
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム等が好ましく、n-ブチルリチウムが特に好ましい。一方、上記リチウムアミド化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状のリチウムアミド化合物が好ましく、リチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが特に好ましい。
【0069】
上記重合開始剤を用いて、共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、単量体を重合させることで該重合体(B)を製造することができる。ここで、重合反応に不活性な炭化水素溶媒としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
上記重合反応は、ランダマイザーの存在下で実施してもよい。該ランダマイザーは、重合体の共役ジエン化合物部分のミクロ構造を制御することができ、より具体的には、重合体の共役ジエン化合物部分のビニル結合量を制御したり、共重合体中の共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とをランダム化する等の作用を有する。上記ランダマイザーとしては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-アミレート等が挙げられる。これらランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当り0.01〜100モル当量の範囲が好ましい。
【0071】
上記アニオン重合は、溶液重合で実施することが好ましく、重合反応溶液中の上記単量体の濃度は、5〜50質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲が更に好ましい。なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を併用する場合、単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含有率は、目的とする共重合体の芳香族ビニル化合物量に応じて適宜選択することができる。また、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。
【0072】
上記アニオン重合の重合温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、20〜130℃の範囲が更に好ましい。また、該重合は、発生圧力下で実施できるが、通常は、使用する単量体を実質的に液相に保つのに十分な圧力下で行うことが好ましい。ここで、重合反応を発生圧力より高い圧力下で実施する場合、反応系を不活性ガスで加圧することが好ましい。また、重合に使用する単量体、重合開始剤、溶媒等の原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を予め除去したものを用いることが好ましい。
【0073】
一方、配位重合で重合活性部位を有する共役ジエン系重合体を製造する場合には、上述した共役ジエン系重合体(A')の製造方法と同様の手法を用いることができる。
【0074】
次に、上記重合活性部位を有する重合体の重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物及びスズ含有化合物が好ましい。この場合、変性反応により、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基又はスズ含有官能基を導入することができる。
【0075】
上記変性剤として用いることができる化合物としては、上述のハロゲン化スズ化合物、上記式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分縮合物の他、ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物,4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4-ジメチルアミノベンジリデンブチルアミン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の窒素含有化合物が挙げられる。
【0076】
上記変性剤による重合活性部位の変性反応は、溶液反応で行うことが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていてもよい。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でもよい。更に、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用してもよい。なお、変性剤の使用量は、重合体の製造に使用した重合開始剤1molに対し、0.25〜3.0molの範囲が好ましく、0.5〜1.5molの範囲が更に好ましい。
【0077】
また、上記変性剤として、上記式(VI)で表される二価の官能基を導入し得るヒドロカルビルオキシシラン化合物を用いる場合には、該化合物中の第一アミノ基が保護されたヒドロカルビルオキシシラン化合物が好適であり、この場合、かかる変性剤により第一段階の変性反応を行った後で、縮合促進剤と水との組み合わせによって第二段階の変性反応を行う必要がある。ここで、上記縮合促進剤としては、上述の付加反応触媒が好ましい。一方、上記縮合促進剤と組み合わせる水は、単独で用いてもよいし、アルコール等との混合溶液として用いてもよい。また、炭化水素溶媒中の分散ミセル等の形態で用いることが好適である他、必要に応じて固体表面の吸着水や水和物の水和水等の反応系中で水を放出し得る化合物が潜在的に含んだ水分をも有効に用いることができる。
【0078】
上記縮合促進剤の使用量は、適宜設定することができるが、反応系中に存在するヒドロカルビルオキシシリル結合総量に対する金属化合物の金属及びプロトン源のモル比が、共に0.1以上であることが好ましく、0.5〜3であることが更に好ましい。また、第二段階の変性反応の温度は、20℃以上が好ましく、30〜120℃の範囲が更に好ましい。更に、第二段階の変性反応の反応時間は、0.5分〜10時間の範囲が好ましい。なお、第二段階の変性反応における反応系の圧力は、0.01〜20MPaの範囲が好ましい。また、第一段階の変性反応を行った後に、必要に応じて、既知の老化防止剤や重合反応を停止する目的でショートストップ剤を添加することができる。更に、変性反応終了後の反応系に、多価アルコールの高級カルボン酸エステル等の縮合抑制剤を添加してもよい。また更に、変性反応終了後の共役ジエン系重合体は、従来公知の脱溶媒、乾燥操作を行うことによって回収することができる。そして、該重合体の窒素原子に結合した保護基を脱離させ、第一アミノ基を生成させるには、従来公知の方法による加水分解を行うことができる。
【0079】
更に、上記トレッド用ゴム組成物に用いる補強性充填剤(C)は、カーボンブラックを含むことを要し、10〜40質量%含むことが好ましい。補強性充填剤(C)はカーボンブラックを含むため、特に変性共役ジエン系重合体(A)との親和性が高く、該変性共役ジエン系重合体(A)による低転がり抵抗性及び氷上性能の向上効果を高めることができる。なお、上記トレッド用ゴム組成物は、低転がり抵抗性及び氷上性能の向上効果を高める観点から、補強性充填剤(C)をゴム成分100質量部に対して10〜100質量部含有する。補強性充填剤(C)の含有量がゴム成分100質量部に対して10質量部未満では、ゴム組成物の破壊特性が低下し、一方、100質量部を超えると、ゴム組成物の低発熱性が悪化するおそれがある。
【0080】
上記カーボンブラックは、特に制限されないが、窒素吸着比表面積が20〜180m2/gの範囲であることが好ましく、20〜100m2/gの範囲であることが更に好ましい。窒素吸着比表面積が20〜180m2/gの範囲にあるカーボンブラックは、粒子径が大きく、低発熱性の向上効果が非常に高い。特に、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が100m2/g以下であれば、転がり抵抗の低減効果が一層良好となる。また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が20m2/g未満では、補強効果を十分に確保できないことがあり、一方、180m2/gを超えると、低転がり抵抗性を十分に確保できない場合がある。かかるカーボンブラックとして、具体的には、HAF以下のグレードのものが好ましく、例えば、HAF,FF,FEF,GPF,SRF,FTグレードのものが挙げられるが、破壊特性の観点から、HAF,FEF,GPFグレードのものが特に好ましい。一方、補強性充填剤(C)がカーボンブラック以外の充填剤を含む場合には、無機充填剤を用いることができ、具体例としては、例えば、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0081】
上記トレッド用ゴム組成物は、平均長径が5〜1000μmの微粒子(D)を含むことが好ましい。該微粒子(D)は、(1)トレッド表面で氷上路面を引っ掻き、氷上グリップ性を向上させる効果や、(2)トレッド表面から脱離して、トレッド部の表層(トレッド表面及びその近傍)に穴部が形成され、氷上の氷から融解した水を排水する効果を奏する。ここで、微粒子(D)の平均長径が5μm未満では、上記排水効果が十分に得られず、一方、1000μmを超えると、ゴム組成物の十分な混練りを行うことが困難になる。また、微粒子の平均長径は、5〜500μmの範囲が更に好ましい。なお、微粒子の平均長径とは、平均最大径を意味し、電子顕微鏡で100個の微粒子を無作為に選び、夫々の長径を測定し、測定した100個の長径を相加平均したものである。また、微粒子(D)は、アスペクト比が1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることが更に好ましく、1.3以上であることが一層好ましい。更に、微粒子(D)の表面は、滑らかでないことが好ましい。また、微粒子(D)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して3〜30質量部の範囲が好ましく、3〜15質量部の範囲が更に好ましい。該微粒子(D)の含有量が3質量部未満では、氷上性能の向上効果が十分に得られず、一方、30質量部を超えると、ゴム組成物中での分散性が低下し、ゴム組成物の加工性が低下するおそれがある。
【0082】
上記微粒子(D)は、タイヤ製造の加硫工程において軟化又は溶融しないものである限り、特に制限されない。微粒子(D)としては、例えば、モース硬度が2以上である微粒子が好ましく、具体的には、石膏微粒子、方解石微粒子、蛍石微粒子、正長石微粒子、石英微粒子、金剛石微粒子、鉄微粒子、卵殻粉、酸化ジルコニウム微粒子、炭酸カルシウム系微粒子、シリカ微粒子、珪灰石微粒子、アルカリ長石微粒子、天然酸化珪素微粒子、多孔質天然ガラス(例えば、モース硬度5)微粒子等の無機微粒子、胡桃殻その他の種子の殻や果実の核等の植物性微粒子、(メタ)アクリル系硬化樹脂微粒子、エポキシ硬化樹脂微粒子等の有機硬化微粒子、酸化亜鉛ウィスカー[例えば、松下アムテック(株)製パナテトラ(テトラポット形状酸化亜鉛)]、沖縄県産の星の砂、グラスファイバー、アルミニウムウィスカー、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリビニルホルマール繊維、芳香族ポリアミド繊維等の短繊維、膨張黒鉛、熱膨張マイクロカプセル、シラスバルーン等が挙げられる。また、モース硬度5以上の微粒子が更に好ましく、例えば、シリカガラス(モース硬度6.5)、石英(モース硬度7.0)、溶融アルミナ(モース硬度9.0)等が挙げられる。特に、単結晶アルミナ、多結晶アルミナ等のアルミナ(酸化アルミニウム)やシリカガラス等が安価で容易に使用することができるので好ましい。
【0083】
上記トレッド用ゴム組成物は、加硫後のゴムマトリクス中に気泡を含有する。ゴムマトリクス中に気泡を含有するゴム組成物(加硫ゴム)は、例えば、通常のゴム配合物に予め発泡剤を加えて混練し、得られたゴム組成物を加硫することにより、発泡剤が発泡し、気泡が形成される。ここで、加硫後のゴム組成物中の気泡率(Vs)は、5〜50%の範囲であることを要し、5〜35%の範囲であるのが好ましい。該気泡率(Vs)が5%未満では、氷上性能が低下し、50%を超えると、破壊特性及び耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0084】
上記気泡率(Vs)(%)は、下記式(VII):
Vs = {(ρ0−ρg)/(ρ1−ρg)−1} × 100 ・・・ (VII)
[式中、ρ1はゴム組成物の密度(g/cm3)、ρ0はゴム組成物における固相部の密度(g/cm3)、ρgはゴム組成物における気泡部の密度(g/cm3)である]により算出できる。また、気泡部の密度ρgは無視できる程度に小さいので、上記気泡率(Vs)(%)を、下記式(VIII):
Vs =(ρ0/ρ1−1)× 100 ・・・ (VIII)
により算出してもよい。
【0085】
上記トレッド用ゴム組成物に用いることができる発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これら発泡剤の中でも、製造加工性の観点から、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)等が好ましい。また、これら発泡剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
上記発泡剤の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて粒子状、液状等の中から適宜選択することができる。なお、発泡剤の形態は、例えば顕微鏡を用いて観察することができる。また、粒子状の発泡剤の平均粒径は、例えば、コールターカウンター等を用いて測定することができる。なお、上記トレッド用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、上記発泡剤を1〜10質量部含むことが好ましい。
【0087】
また、上記発泡剤には、発泡助剤として尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、亜鉛華等を併用するのが好ましい。これら発砲助剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。発泡助剤を併用することにより、発泡反応を促進して反応の完結度を高め、経時的に不要な劣化を抑制することができる。
【0088】
上記トレッド用ゴム組成物には、例えば、変性共役ジエン系重合体(A)を含むゴム成分に、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)、補強性充填剤(C)、微粒子(D)、発泡剤及び発泡助剤の他、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。なお、上記トレッド用ゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体(A)を含むゴム成分に、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)及び補強性充填剤(C)と共に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0089】
本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をトレッド部に用いたことを特徴とし、氷上性能、乾燥路面上での操縦安定性及び低転がり抵抗性に優れる。また、本発明のタイヤのトレッド部用いたゴム組成物が、上記微粒子(D)を含む場合には、トレッド部の表層から該微粒子(D)が脱離して、穴部が形成され、タイヤの排水効果を向上させることができる。このように、本発明のタイヤは、冬用タイヤとして好適である。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をトレッド部に用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0091】
(重合体A)
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン2.4kg、1,3-ブタジエン300gを仕込んだ。該オートクレーブに、触媒成分としてのバーサチック酸ネオジム(0.09mmol)のシクロヘキサン溶液、メチルアルモキサン(MAO)(3.6mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)(5.5mmol)及びジエチルアルミニウムクロリド(0.18mmol)のトルエン溶液と、1,3-ブタジエン(4.5mmol)とを40℃で30分間反応熟成させて、予備調製した触媒組成物を仕込み、60℃で60分間重合を行った。1,3-ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。更に重合体溶液を温度60℃に保ち、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名「PAPI*135」,ダウ・ケミカル日本社製)(cMDI)(イソシアネート基(NCO)換算で4.16mmol)のトルエン溶液を添加し、15分間反応(一次変性反応)させた。続いて、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)(2.08mmol)のトルエン溶液を添加し、15分間反応(二次変性反応)させた。その後、2,4-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、重合体A(変性共役ジエン系重合体(A))を得た。このようにして得た重合体Aについて、下記の方法で測定したところ、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は35であり、重合反応終了時の重量平均分子量(Mw)は350×103(350K)であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であり、シス-1,4結合量は96.2%であり、1,2-ビニル結合量は0.59%であった。
【0092】
(1)ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]
JIS K6300に従い、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。
【0093】
(2)重合反応終了時の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
GPC[東ソー製、HLC−8220]により検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレン換算として算出した。なお、カラムはGMHXL[東ソー製]で、溶離液はテトラヒドロフランである。
【0094】
(3)ミクロ構造[シス-1,4結合量(%),1,2-ビニル結合量(%)]
フーリエ変換赤外分光光度計(商品名「FT/IR−4100」,日本分光社製)を使用し、赤外法(モレロ法)によって測定した。
【0095】
(重合体B)
乾燥し、窒素置換された内容積約900mlの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン283g、1,3-ブタジエン25g及び2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.015mmolをシクロヘキサン溶液として注入し、これに0.50mmolのn-ブチルリチウム(BuLi)を加え、攪拌装置を備えた50℃の温水浴中で4.5時間重合を行った。重合転化率は、ほぼ100%であった。この重合系に四塩化錫(SnCl4)0.50mmolをシクロヘキサン溶液として加え、50℃にて30分間攪拌した。その後、2,4-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールのイソプロパノール5%溶液0.5mlを加えて反応停止させた後、常法に従い乾燥することにより重合体B(低分子量変性共役ジエン系重合体(B))を得た。このようにして得た重合体Bについて、上記の方法で測定したところ、重合反応終了時の重量平均分子量(Mw)は80×103であり、1,2-ビニル結合量は20%であった。
【0096】
次に、表1に示す配合処方のゴム組成物を調製し、該ゴム組成物をトレッド部に用いて、サイズが195/65R15の空気入りタイヤを製造した。得られたタイヤから、加硫ゴムを取り出し、上記の方法で気泡率を測定した。また、下記に示す方法で氷上性能、乾燥路面上での操縦安定性(ドライ性能)及び転がり抵抗を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
(4)氷上性能
排気量2000ccの乗用車にタイヤ4本を装着し、氷温-1℃の氷上での制動性能を確認した。下記に示す式により、実施例及び比較例を指数表示した。指数値が大きい程、氷上性能に優れることを示す。
氷上性能 =(比較例1のタイヤの制動距離/試験タイヤの制動距離)× 100
【0098】
(5)ドライ性能
テストドライバーによるフィーリング試験に基づき、評価を行い、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きい程、ドライ性能に優れることを示す。
【0099】
(6)転がり抵抗
荷重4.41kN、80km/hの速度の条件下、供試タイヤを回転ドラム上で走行させ、転がり抵抗を測定し、比較例1の転がり抵抗の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、転がり抵抗が小さいことを示す。
【0100】
【表1】

【0101】
*1 宇部興産(株)製,UBEPOL 150L.
*2 第一級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体A.
*3 低分子量変性共役ジエン系重合体B.
*4 N134,窒素吸着比表面積(N2SA)=146m2/g.
*5 日本シリカ(株)製,Nipsil AQ.
*6 Degussa社製,Si69.
*7 N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*8 ジベンゾチアジルジスルフィド.
*9 N-シクロヘキシル-2-ベンゾジアゾールスルフェンアミド.
*10 ジニトロソペンタメチレンテトラミン.
*11 微粒子を15質量%含有する繊維(ポリエチレン、融点132℃,微粒子の平均粒径:20μm,微粒子のアスペクト比:1.3,繊維平均直径:32μm,繊維平均長さ:2mm,溶融紡糸法により紡糸して形成)を配合することにより,微粒子の含有量を表1に記載の割合に調整する.
【0102】
比較例1及び5並びに実施例1の結果から、変性共役ジエン系重合体(A)を用いることで、氷上性能及び低転がり抵抗性が大幅に向上できることが分かる。比較例1のゴム組成物と比べて、更に低分子量変性共役ジエン系重合体(B)が配合された比較例5のゴム組成物では(比較例5)、氷上性能、ドライ性能及び低転がり抵抗性が低下しており、変性共役ジエン系重合体(A)及び低分子量変性共役ジエン系重合体(B)の組み合わせが非常に優れていることが分かる。
【0103】
また、比較例2及び3の結果から、変性共役ジエン系重合体(A)の含有量が高過ぎると、ドライ性能を低下させる一方、変性共役ジエン系重合体(A)の含有量が低過ぎると、氷上性能及び低転がり抵抗性を低下させることが分かる。更に、比較例4及び6の結果から、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)を使用しないと、ドライ性能が得られず、一方、低分子量変性共役ジエン系重合体(B)の含有量が高過ぎると、氷上性能及び低転がり抵抗性を低下させることが分かる。
【符号の説明】
【0104】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 カーカス
5 ベルト
6 ビードコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シス-1,4結合量が90%以上及びビニル結合量が1.2%以下で且つ第一級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体(A)を10〜90質量%含むゴム成分100質量部に対して、
重合反応終了時の重量平均分子量が2×103〜15×104である低分子量変性共役ジエン系重合体(B)1〜60質量部と、
カーボンブラックを含む補強性充填剤(C)10〜100質量部と
を配合してなるゴム組成物であって、加硫後のゴムマトリクス中に気泡を含有し、その気泡率が5〜50%であるゴム組成物をトレッド部に用いたことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が20〜180m2/gであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が20〜100m2/gであることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記低分子量変性共役ジエン系重合体(B)が、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基及び窒素含有官能基よりなる群から選択される少なくとも一種の官能基を含有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記低分子量変性共役ジエン系重合体(B)が、低分子量変性ポリブタジエン及び/又は低分子量変性ポリイソプレンであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、更に平均長径が5〜1000μmの微粒子(D)を3〜30質量部含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部の表層に、前記微粒子(D)が脱離して形成された穴部を有することを特徴とする請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
冬用タイヤであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−174109(P2010−174109A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17233(P2009−17233)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】