説明

タイヤ

【課題】 ゴム組成物へのシリカの分散がよく、耐摩耗性と低発熱性を共に改善し、加工性も向上したトレッドゴム部材として好適なゴム組成物を用いたタイヤを提供する。
【解決手段】 非ゴム成分を分解処理した天然ゴムと含水ケイ酸とを配合してなるゴム組成物であって、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)とが式
ac≧−0.76×(CTAB)+274
を満たすゴム組成物をタイヤ部材に用いたタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関するものであり、さらに詳しくは補強用充填剤として特定構造の含水ケイ酸を用いた低発熱性、耐摩耗性が改良されたゴム組成物を用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム用補強充填剤としては、カーボンブラックが使用されている。これは、カーボンブラックがゴム組成物に高い耐摩耗性を付与し得るからである。近年、省資源、省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車の燃料消費節約を目的として、タイヤゴムの低発熱も同時に求められるようになってきた。カーボンブラックの単独使用で低発熱化を図ろうとする場合、カーボヘンブラックの充填量を減らす、あるいは、粒径の大きいものを使用することが考えられるが、いずれの場合も補強、耐摩耗性、湿潤路面でのグリップ性が低下するのを避けられないことが知られている。一方、低発熱性を向上させるために充填剤としてシリカが知られている(例えば、特許文献1〜4)。しかし、シリカはその表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向にあり、また、シラノール基は親水性を有する−OH基のためにゴム分子とのぬれ性が良くなく、ゴム中へのシリカの分散が悪い。これをよくするためには混練時間を長くする必要がある。また、ゴム中へのシリカの分散が不十分なためゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、押出しなどの加工性に劣るなどの欠点を有していた。さらに、シリカ粒子の表面が酸性であることから、ゴム組成物を加硫する際に、加硫促進剤として使用される塩基性物質を吸着し、加硫が十分行われず、弾性率が上がらないという欠点も有していた。
【0003】
これらの欠点を改良するために、シランカップリング剤が開発されたが、依然としてシリカの分散は十分なレベルには達しておらず、特に工業的に良好なシリカ粒子の分散を得ることは困難であった。そこで、疎水化剤で表面を処理したシリカを混練してシランカップリング剤の反応を促進することが行われている(特許文献1)。
【0004】
また、特許文献5には、疎水性沈降ケイ酸を用いることが開示されているが、完全疎水化処理した沈降ケイ酸を用いているので、シランカップリング剤が反応する表面シラノール基が存在しなくなるため、ゴムの補強が十分にとれないという欠点があった。さらに、低発熱性を高めるため、シリカを大粒径化することが行われているが、大粒径化することでシリカの比表面積が低下し、補強性が悪くなる。特許文献6には、特殊形状のシリカを用いることが開示されているが、ゴム組成物の低発熱性、耐摩耗性が十分ではない。
【0005】
また、天然ゴムは、機械的特性、低発熱性、耐摩耗性に優れたゴムとして知られているが加工性は合成ゴムと比較すると劣っている。これは、天然ゴムの分子末端に蛋白質とリン脂質が結合しているため、その末端の蛋白質同士、リン脂質同士が更に結合・会合して高次分岐構造を形成する。 特に蛋白質に含まれるポリペプチド結合を介してポリマー分子同士の絡み合いが増加し、見かけの分子量が非常に大きくなり、ゴムのムーニー粘度上昇をもたらすためである。
このような天然ゴムの加工性を改良するため、例えば特開平6−329838号公報には、総窒素含有量が0.1重量%以下となるように高度に脱蛋白した天然ゴムが記載されている。また、最近では、医療用天然ゴム製品など特殊用途として、天然ゴムの脱蛋白技術についての多くの提案がされ、蛋白質などの非ゴム成分を高度に除去した天然ゴムは知られている(特開平8−143606号公報,特開平11−71408号公報,特開2000−19801号公報など)。
更に、非ゴム成分には、特に、繊維及び糖類等がゴム成分に結合していると、タイヤ製造にかかせないフィラーなどの分散性を妨げる傾向が見られ、タイヤ物性の低下を引き起こす要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−248116号公報
【特許文献2】特開平7−70369号公報
【特許文献3】特開平8−245838号公報
【特許文献4】特開平3−252431号公報
【特許文献5】特開平6−157825号公報
【特許文献6】特開2006−37046号公報
【特許文献7】特開平8−143606号公報
【特許文献8】特開平11−71408号公報
【特許文献9】特開2000−19801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ゴム組成物への含水ケイ酸の分散を改良し、耐摩耗性と低発熱性を共に改善したトレッドゴム等のタイヤ部材として好適なゴム組成物を用いたタイヤを提供するものである。また、特に、含水ケイ酸等のフィラー成分などのマクロ的な分散を向上して加工性及びタイヤ物性を向上させたタイヤを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、含水ケイ酸含有ゴム組成物において、含水ケイ酸に特定構造を持たせることで、低発熱性が得られる一方、ゴム組成物の耐摩耗性、補強性が改善されること、それに使用する天然ゴム中の非ゴム成分を分解処理することで、加工性及びタイヤ特性が向上することを見出し本発明を完成した。
【0009】
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムに構造性の含水ケイ酸、特定構造のシランカップリング剤、カーボンブラックを配合混練してなるゴム組成物である。
【0010】
本発明で使用する含水ケイ酸は、次のような指標で表すことができる構造(一次凝集)を持つことが特徴である。
即ち、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径(nm)の最頻値Aacとが下記式(I)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満たし、さらに灼熱減量(750℃で3時間加熱した時の質量減少%)と加熱減量(105℃で2時間加熱した時の質量減少%)とが下記式(II)
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(II)
を満たすことが好ましく、このような含水ケイ酸を含有するゴム組成物は、低発熱性と耐摩耗性が両立できる。
【0011】
本発明で使用する含水ケイ酸は、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ塩水溶液を硫酸等の鉱酸で中和することにより含水ケイ酸を析出、沈殿させる方法、いわゆる沈殿法含水ケイ酸の製造方法に準じた方法により得られる。
【0012】
上記含水ケイ酸と共に、タイヤには天然ゴムが使用されるが、その天然ゴムから非ゴム成分を分解処理することを特徴とする。
即ち、非ゴム成分を分解処理した天然ゴムは天然ゴムラテックスの蛋白質分解処理又は脂質分解処理したものであり、ゴムのムーニー粘度(ML1+4)及び応力緩和時間(T80)が、下記の式(a)及び式(b)を満たすものである。
40≦ML1+4≦100 ・・・(a)
T80<0.0035exp(ML1+4/8.2)+20 ・・・(b)
〔ただし、ML1+4は100℃におけるムーニー粘度測定値、T80はML1+4測定直後にローター回転を停止し、ML1+4の値が80%低減するまでに要する時間(秒)である。〕
また、蛋白質を分解処理したものは、その固形成分中の総窒素含有量が0.12〜0.30重量%の範囲であるように部分分解処理を行なった後、得られた天然ゴムラテックスを、非ゴム成分を分離することなく凝固し、乾燥処理したことに特徴がある。
【0013】
更に、非ゴム成分を分解処理した天然ゴムは天然ゴムラテックスのグルカン類を分解処理したものでも良く、例えば、グルカン類の分解にα−グルカン分解酵素及び/又はβ−グルカン分解酵素による酵素処理がなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低発熱性に優れたゴム組成物が得られ、これをタイヤトレッド部材として用いるとき、従来二律背反事象であった低発熱性と耐摩耗性が共に優れ、低燃費で省エネルギーに大きく寄与することができる。また含水ケイ酸と共に、タイヤには天然ゴムが使用されるが、その天然ゴムから非ゴム成分を一部又は全部分解処理することにより、含水ケイ酸と相まってタイヤ物性及びその加工性の優れたタイヤとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は、実施例、比較例で使用した含水ケイ酸のCTABとAacの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のタイヤに用いられるゴム組成物のゴム成分は、天然ゴム、天然ゴム及びジエン系合成ゴムである。ジエン系合成ゴムの具体例は、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。これらのゴム成分は、単独でも2種以上混合して用いてもよい。特に、ゴム成分中、後述する非ゴム成分を分解処理した天然ゴムを5〜100質量%含むことが好ましく、特に50質量%以上含むことが好ましい。これらの範囲の添加によって、非ゴム成分分解処理天然ゴムのタイヤへの物性効果が十分得られる。
【0017】
本発明で用いる構造性の含水ケイ酸は、シリカやカーボンブラックなどで一般に測定されている方法で測定した特性値が、次のよう関係を満たすことで確認できる。
【0018】
即ち、セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の数の最頻値の直径Aac(nm)とが下記式(I)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満たし、好ましくは灼熱減量(750℃で3時間加熱した時の質量減少%)と加熱減量(105℃で2時間加熱した時の質量減少%)とが下記式(II)
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(II)
を満たす含水ケイ酸である。
【0019】
セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)は、含水ケイ酸表面に対するセチルトリメチルアンモニウムブロミドの吸着量から算出した含水ケイ酸の比表面積(m/g)である。
CTABの測定は、ASTM D3765−92記載の方法に準拠して行うことができる。ASTM D3765−92記載の方法は、カーボンブラックのCTABを測定する方法であるので、若干の修正を加える。即ち、カーボンブラックの標準品を使用せず、セチルトリメチルアンムニウムブロミド(以下、CE−TRABと略記する)標準液を調製し、これによって含水ケイ酸OT(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)溶液の標定を行い、含水ケイ酸表面に対するCE−TRAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nmとしてCE−TRABの吸着量から、比表面積を算出する。
【0020】
本発明で用いる含水ケイ酸は、CTABが50〜250m/g、好ましくは100〜200m/gであることが望ましい。CTABが50m/g未満であるとゴム組成物の貯蔵弾性率が著しく低下し、250m/gより大きいと未加硫時のゴム組成物の粘度が上昇するおそれがある。
【0021】
含水ケイ酸の粒子径として、音響式粒度分布測定装置によって測定した径(音響式粒度分布径)が構造性の発達の指標になる。含水ケイ酸の粒子は、微粒径の粒子が一次凝集したものと、僅かに二次凝集しているものも含んでいる。
音響式粒度分布測定装置による測定は、含水ケイ酸の0.01M KCl水溶液を超音波で5分間分散処理し、泡を除去して二次凝集体を破壊した後、測定する。含水ケイ酸の一次凝集体の粒径と粒子数の分布が得られ、このうち、最も頻度が多く現われた粒子の直径をAac(nm)とすると、
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満足するとき、ゴム組成物の低発熱性と耐摩耗性が共に改善される。Aacが、この条件を満たさない時、低発熱性と耐摩耗性のどちらか又は両方が低下する。さらに、Aacは、1μm以下であることが好ましい。1μmより大きいと含水ケイ酸が破壊核となり、ゴム組成物の力学的特性が損なわれる虞がある。
【0022】
さらに、本発明で用いる含水ケイ酸を加熱した時の質量の減少(%)と灼熱した時の質量減少(%)の差が、
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(II)
であることが好ましい。
加熱減量及び灼熱減量は、JIS K6220−1ゴム用配合剤の試験方法に準じて行い、加熱減量は通常105±2℃で2時間加熱した時の質量の減少%、灼熱減量は通常750±25℃で3時間強熱した時の質量の減少%である。
【0023】
本発明で用いる含水ケイ酸の使用量は、好ましくはゴム成分100質量部に対して、10〜150質量部である。
【0024】
本発明で使用する含水ケイ酸は、沈殿法含水ケイ酸の製造方法に準じて製造される。例えば、予め一定量の温水を張り込んだ反応容器中に、pH、温度を制御しながらケイ酸ナトリウムおよび硫酸を入れ、一定時間添加して含水ケイ酸スラリーを得る。
続いて、該含水ケイ酸スラリーをフィルタープレス等のケーキ洗浄が可能なろ過機により濾別、洗浄して副生電解質を除去した後、得られた含水ケイ酸ケーキをスラリー化し、噴霧乾燥機等の乾燥機を用いて乾燥し製造される。
【0025】
本発明では、シランカップリング剤を用いることが好ましい。シランカップリング剤は含水ケイ酸表面に残存するシラノール基とゴム成分ポリマーと反応して、含水ケイ酸とゴムとの結合橋として作用し補強相を形成する。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、好ましくは下記一般式で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種である。
【0026】
3−mSi−(CH−S−(CH−SiA3−m・・・(III)
[式中、AはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Bは炭素数1〜3のアルキル基であり、mは1〜3の整数、aは1〜9の整数、bは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのBは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい。]
【0027】
3−mSi−(CH−Y・・・(IV)
[式中、AはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Bは炭素数1〜3のアルキル基であり、Yはメルカプト基、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基又はエポキシ基であり、mは1〜3の整数、cは0〜9の整数である。但し、mが1の時、2つのBは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい。]
【0028】
3−mSi−(CH−S−Z・・・(V)
[式中、AはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Bは炭素数1〜3のアルキル基であり、Zはベンゾチアゾリル基、N,N−ジメチルチオカルバモイル基又はメタクリロイル基であり、mは1〜3の整数、aは1〜9の整数、bは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのBは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい。]
【0029】
具体的には、一般式(III)で表されるシランカップリング剤としては、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、
【0030】
一般式(IV)で表されるシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
【0031】
一般式(V)で表されるシランカップリング剤としては、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィドが挙げられる。
【0032】
シランカップリング剤の使用量は、含水ケイ酸の量に対して、1〜20質量%が好ましい。使用量が1質量%未満では、十分なカップリング効果が得られないことがあり、20質量%を超えると、ポリマーのゲル化を引き起こすことがある。
【0033】
次に、本発明のタイヤに適用されるゴム組成物には、非ゴム成分を分解処理した天然ゴムを含む。従って、ゴム組成物は、非ゴム成分を分解処理した天然ゴム、及びそれ以外の処理しない天然ゴム及び上述の合成ゴムを含んでいて良い。非ゴム成分を分解処理した天然ゴムは上述したように5質量%以上であることが好ましい。
分解処理される非ゴム成分としては、特にタイヤに適用する場合には、蛋白質、脂質、及びグルカン類が挙げられる。これらの少なくとも1以上の分解処理をした天然ゴムの使用が好ましい。分解処理としては、界面活性剤を使用した分離処理以外に、酵素などの使用が好ましい。酵素を使用した分解処理には、天然ゴムラッテクスの処理によって行われる。原料となる天然ゴムラテックスは特に限定されず、フィールドラテックスや市販のラテックスなどを用いることができる。非ゴム成分の分解処理の酵素としては、プロテアーゼ、ペプチターゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ等を単独又は組み合わせて用いることができる。これらの酵素の酵素活性は0.1〜50APU/gの範囲が適当である。中でも以下の蛋白質、脂質、及びグルカン類の分解処理が好ましい。
【0034】
本発明において、蛋白質分解処理する場合、プロテアーゼの酵素処理した天然ゴムラテックスを挙げることができる。天然ゴムラテックスの蛋白分解酵素(プロテアーゼ)の添加量は、天然ゴムラテックス中の固形成分100質量部に対して0.005〜0.5質量部、好ましくは0.01〜0.2質量部の範囲で用いるのが適当である。蛋白分解酵素の添加量が上記範囲を下回ると、蛋白質の分解反応が不十分になるおそれがあるために好ましくない。一方、蛋白分解酵素を上記範囲を超えて添加すると脱蛋白化が進みすぎ目的の加工性と物性のバランスがとれなくなってしまう。
【0035】
プロテアーゼは特に限定されず、細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のものいずれでも構わない。また、プロテアーゼの力価は、好ましくは100(U/g)以上であり、好ましくは1000(U/g)以上、より好ましくは10000(U/g)以上、更に好ましくは100000(U/g)以上であることが良い。このようなプロテアーゼとしては市販品のアルカラーゼ2.5L−タイプDX(ノボザイムズ社製)、プロレザーFG−F(天野エンザイム株式会社製)等を挙げることができる。
【0036】
本発明においては、蛋白分解処理は脱蛋白手法により、ラテックス固形分中の前記総窒素含有量が0.12〜0.30質量%になるように調整することが好ましい。
この窒素は、ポリペプチド結合の窒素に由来するものである。ポリペプチド結合の定量は赤外分光分析により蛋白質のポリペプチド結合による3280cm−1の吸光度を測定することにより行なうことができる。ここで、総窒素含有量0.12質量%はポリペプチド結合をほぼ80%分解することを意味している。また、総窒素含有量0.30質量%はポリペプチド結合をほぼ20%分解することを意味している。
本発明において、総窒素含有量が0.12質量量%未満であれば、機械的特性(特に引張り特性)や低発熱性の改良効果は得られず、また、耐老化特性が悪化するおそれがある。総窒素含有量が0.12質量%以上の特定の範囲の場合に限り、ゴム組成物の引張り特性や低発熱性の改良効果が得られる。これは、ペプチド結合の分解により、ゴム粘度が適度に低下して、微粒化カーボンブラックなどのゴムへの分散性が向上し、充填剤とゴムとの相互作用が増大するためと考えられる。
一方、0.30質量%を超えると加工性が劣る。このような観点から総窒素含有量は0.12〜0.30質量%、特に0.18〜0.25質量%が好ましい。また、ポリペプチド分解率としては20〜80%、特に30〜70%が好ましい。
【0037】
上記の如く蛋白分解処理された天然ゴムラテックスは、非ゴム成分を分離することなく、凝固することが好ましい。非ゴム成分を分離した場合には、耐老化特性が劣ることがある。即ち、本発明における処理天然ゴムは、前記天然ゴムラテックスの蛋白分解処理工程において、固形成分中の総窒素含有量が0.12〜0.30質量%の範囲であるように部分分解処理を行なった後、得られた天然ゴムラテックスを、非ゴム成分を分離することなく凝固し、乾燥処理して行うことが好ましい。
【0038】
本発明において、脂質分解処理する場合、リパーゼ及び/又はホスホリパーゼの酵素処理した天然ゴムラテックスを挙げることができる。天然ゴムラテックスの脂質解酵素(リパーゼ及び/又はホスホリパーゼ)の添加量は、天然ゴムラテックス中の固形成分100質量部に対して0.005〜0.5質量部、好ましくは0.01〜0.2質量部の範囲で用いるのが適当である。脂質分解酵素の添加量が上記範囲を下回ると、脂質の分解反応が不十分になるおそれがあるために好ましくない。一方、脂質解酵素を上記範囲を超えて添加すると天然ゴムに含まれる脂肪酸が殆ど分解して伸張結晶性が低下して引張強度や耐摩耗性が低下する。
【0039】
リパーゼ及びホスホリパーゼとしては、特に限定されず、細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のものいずれでも構わない。また、リパーゼ及びホスホリパーゼは、100(U/g)以上、好ましくは1000(U/g)以上、より好ましくは10000(U/g)以上、更に好ましくは100000(U/g)以上であることが良い。このようなリパーゼ及びホスホリパーゼとしては市販品のリパーゼM「アマノ」10(天野エンザイム株式会社製の商品)、リパーゼOF(名糖株式会社製の商品)、ホスホリパーゼA1(三共株式会社製の商品)等を挙げることができる。
【0040】
本発明において、グルカン類を分解処理する場合、α−及びβ−グルカン分解酵素の酵素処理した天然ゴムラテックスを挙げることができる。天然ゴムラテックスの脂質解酵素(α−及びβ−グルカン分解酵素)の添加量は、天然ゴムラテックス中の固形成分100質量部に対して0.005〜0.5質量部、好ましくは0.01〜0.2質量部の範囲で用いるのが適当である。範囲内の添加量であれば、天然ゴムラテックス中のグルカン類の分解が適宜行われ、目的とする低ロス性、耐摩耗性等の良好な物性が得られる。上記酵素の添加量が上記範囲を下回ると、グルカン類の分解反応が不十分となり好ましくない。一方、上記範囲を上回る添加量では酵素反応が十分に満たされているため、更なる添加は不経済となり、酵素活性を高めることもできない。
【0041】
通常、このような天然ゴムには非ゴム成分が存在しており、中でも低ロス性や耐摩耗性といったゴム物性に対して悪影響を与える糖質成分や植物繊維等のグルカン類が非ゴム成分として存在している。これらのグルカン類がラテックスに存在したままでは、その天然ゴムのゴム組成物及びそのゴム製品の低ロス性及び耐摩耗性といった物性に悪影響を与える。このため、天然ゴムのラテックスは、非ゴム成分中のグルカン類を中心に分解処理されてなることが望ましい。このような分解処理がなされていれば、その後の天然ゴムの製造過程でこれらのグルカン類(糖質、繊維質の分解物)を取り除くことができる。
そして、このような本発明に係るグルカン類が分解された天然ゴムラテックスとしてはα−及び/又はβ−グルカン分解酵素で酵素処理したラテックスを挙げることができる。グルカン類がラテックス中で選択的に分解される。
【0042】
α−及びβ−グルカン分解酵素としては、特に限定されず、細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のものいずれでも構わない。また、α−及びβ−グルカン分解酵素は、100(U/g)以上、好ましくは1000(U/g)以上、より好ましくは10000(U/g)以上、最も好ましくは40000(U/g)以上であることが良い。
α−グルカン分解酵素としては、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、デキストラナーゼなどを挙げることができ、特に、α−アミラーゼが好ましい。例えば、アミラーゼとしては市販品のビオザイムA(天野エンザイム株式会社製の商品)等を挙げることができる。
β−グルカン分解酵素としては、セルラーゼ、グルカナーゼなどを挙げることができ、特に、セルラーゼが好ましい。例えば、セルラーゼとしては、市販品のセルラーゼA「アマノ」(天野エンザイム株式会社製の商品)等を挙げることができる。
【0043】
天然ゴムラテックスは上記酵素処理と共に、界面活性剤を併用して処理することが良い。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が使用でき、特に、非イオン界面活性剤、陰イオン性界面活性剤等が使用することが好ましい。
また、このような酵素を添加するにあたり、他の添加剤、例えばpH調整剤としてリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸ナトリウム等の燐酸塩や酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、さらに硫酸、酢酸、塩酸、硝酸、クエン酸、コハク酸等の酸類またはその塩、あるいはアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を使用することができる。
本発明において、上記酵素処理は、温度70℃以下でなされること、好ましくは温度60℃以下でなされること、更に好ましくは50℃以下で処理される。
上記酵素処理温度が70℃を超えると、天然ゴムラテックスの安定性が低下し、酵素処理中にラテックスが凝固する。凝固後は酵素による分解効果が低下する。
【0044】
前記処理ラテックスを凝固して得られたゴム成分は洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の通常の乾燥機を用いて乾燥することにより、本発明における天然ゴムを得ることができる。また、ゴム加工性の観点からは、入力の緩和時間を短くすることが挙げられるが、本発明による天然ゴムは、蛋白分解処理及び/又は脂質処理を酵素を行うことにより分岐点が選択的に切断され、応力緩和時間が低減され優れた加工性(収縮性、形状安定性)が得られる。本発明において、天然ゴムの応力緩和時間は、ムーニー粘度測定時のML1+4値との関係で規定され、下記の式(a)及び式(b)の双方を満たすことが好ましい。
40≦ML1+4≦100 ・・・(a)
80<0.0035exp(ML1+4/8.2)+20 ・・・(b)
〔ただし、ML1+4は100℃におけるムーニー粘度測定値、T80はML1+4測定直後にローター回転を停止し、ML1+4の値が80%低減するまでに要する時間(秒)である。〕
さらに、本発明における天然ゴムには、ヒドラジド化合物を含有させることにより、恒粘度効果を向上させることができる。
【0045】
本発明の天然ゴムにおいては、タンパク質のペプチド結合の適度の分解や脂質の分解、更にはグルカン類の分解により、天然ゴム分子の絡み合いが少なくなってゴムは応力緩和をし易くなり、その結果、ゴム組成物は耐亀裂成長性に優れたものになる。また、接着の阻害要因となる蛋白質等が除かれるため接着性も向上する。さらに、ゴム粘度は適度に低下する結果、微粒状の充填剤のゴムへの分散性は向上し、機械的特性や低発熱性も向上することとなる。充填剤の分散性が著しく向上することにより、耐摩耗性などが改良される。
【0046】
本発明のタイヤにおけるゴム組成物では、処理天然ゴム及び含水ケイ酸と共にカーボンブラックを補強用充填剤として用いることができる。カーボンブラックを配合することによって、ゴム組成物の耐摩耗性を向上することができる。
カーボンブラックの使用量は、好ましくはゴム成分100質量部に対して80質量部以下で、カーボンブラックと含水ケイ酸を合わせた総配合量が120質量部以下であることが好ましい。総配合量をゴム成分100質量部に対して120質量部以下とすることで、低発熱性及び耐摩耗性を十分に向上させることができる。
【0047】
ゴム組成物には、必要に応じて、ゴム工業で通常使用される配合剤、例えば、他の補強性充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等を適宜配合することができる。
ゴム組成物は、ロール等の開放式混練機やバンバリーミキサー等の密閉式混練機等を用いて混練することにより得られ、成形加工後に加硫を行い、各種ゴム製品に適用可能である。
【0048】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をトレッド部材に適用することを特徴とする。該ゴム組成物をトレッド部材に用いたタイヤは、ゴム組成物が低発熱性であるため転がり抵抗が低く、耐摩耗性に優れている。本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスも使用できる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例、比較例において、含水ケイ酸の物性及びゴム組成物の低発熱性、耐摩耗性を下記の方法により測定、評価した。
【0050】
<含水ケイ酸の物性>
(1)音響式粒度分布径の測定
各含水ケイ酸の0.01M KCl水溶液を超音波で5分間分散処理し、泡を除去した後、超音波式粒度分布測定装置DT1200(Dispertion Technology社製)を用いて、含水ケイ酸の1次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)を測定した。
【0051】
(2)CTABの測定
ASTM D3765−92記載の方法に準拠して実施した。ASTM D3765−92記載の方法は、カーボンブラックのCTABを測定する方法であるので、若干の修正を加えた。すなわち、カーボンブラックの標準品であるIRB#3(83.0m/g)を使用せず、別途セチルトリメチルアンムニウムブロミド(以下、CE−TRABと略記する)標準液を調製し、これによって含水ケイ酸OT(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)溶液の標定を行い、含水ケイ酸表面に対するCE−TRAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nmとしてCE−TRABの吸着量から、比表面積(m/g)を算出した。これは、カーボンブラックと含水ケイ酸とでは表面が異なるので、同一表面積でもCE−TRABの吸着量に違いがあると考えられるからである。
【0052】
(3)加熱減量及び灼熱減量の測定
含水ケイ酸サンプルを秤量し、加熱減量の場合は105±2℃でサンプルを2時間加熱し、灼熱減量の場合は750±25℃でサンプルを3時間加熱した後、質量を測定し、加熱前のサンプル質量との差を加熱前の質量に対して%で表した。
【0053】
<分解処理天然ゴムの物性>
(4)天然ゴムのムーニー粘度及び応力緩和時間
JIS K6300−1994に準じ、100℃にてムーニー粘度[ML1+4/100℃]を測定した。また、応力緩和時間(T80)は、上記ML1+4測定直後にローター回転を停止し、ML1+4の値が80%低減するまでに必要な時間(秒)を測定した。
<ゴム組成物の物性>
(5)加工性(コンバウンド(ゴム組成物)のムーニー粘度)
JIS K6300−1994に準じ、130℃にてムーニー粘度[ML1+4/130℃]を測定した。比較例1を100として、各例を指数で示した。この値は小さいほど加工性に優れている。
【0054】
<ゴム組成物の物性>
(6)タイヤの転がり抵抗性
タイヤサイズ185/70R14の空気入りタイヤを170kPaの内圧に充填した後、395kgの荷重を負荷しながら、大型試験ドラム上を時速80km/hで所定時間走行させ、次に前記ドラムの駆動力を遮断して、タイヤを慣性走行させ、この時のタイヤの減速度から転がり抵抗を求め、比較例1を100として指数表示したものである。ここで、指数が大きいほど転がり抵抗の値が小さい。
【0055】
(7)耐摩耗性
タイヤサイズ185/70R14の空気入りタイヤを170kPaの内圧に充填した後、そのタイヤにて国内一般市街地10,000km走行させた時の残溝深さより求めた。比較例1を100として指数表示したものである。ここで、指数が大きいほど耐摩耗性が良好である。
【0056】
<非ゴム成分を分解処理した天然ゴムの製造>
(1).非ゴム成分の分解処理天然ゴムA(脱蛋白処理)
・非ゴム成分(蛋白質)分解処理天然ゴムA−1の製造例
・ペプチド結合分解工程
水136gにアニオン系界面活性剤[花王(株)製「デモール」、界面活性剤濃度は2.5重量%]24.7ml、プロテアーゼ(ノボザイムズ製「アルカラーゼ 2.5L、タイプDX」)0.06gを加えて混合し、溶液を調製した。
次に、固形分20重量%の天然ゴムラテックス1000gをウォーターバス中にて40℃の恒温とし、攪拌しながら、該溶液を滴下し、5時間同温度で攪拌を続け、天然ゴムラテックスを得た。
・凝固・乾燥工程
酸凝固して得られたゴム分を、130℃に設定されたドラムドライヤーを5回通過させ、その後真空乾燥機にて40℃で8時間乾燥して非ゴム成分分解処理天然ゴムA−1を製造した。尚、蛋白処理後の遠心分離処理をしなかった。非ゴム成分分解処理天然ゴムA−1の総窒素含有率は、0.16質量%、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が65、応力緩和時間(T80)が25.5である。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムA−2の製造例
A−1の製造例において、プロテアーゼの代わりに非ゴム成分分解処理天然ゴムA−2はペプチターゼ(萬邦通商製「デビトラーゼ」)を用いた。非ゴム成分分解処理天然ゴムA−2の総窒素含有率は、0.19質量%、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が66、応力緩和時間(T80)が29.0である。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムA−3の製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムA−1の製造例においてプロテアーゼの添加量を0.9g、天然ゴムラテックスとの攪拌時間を8時間に変え、天然ゴムラテックスを得た後、酸凝固・乾燥して非ゴム成分分解処理天然ゴムA−3を製造した。非ゴム成分分解天然ゴムA−3の総窒素含有率は、0.16質量%、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が52、応力緩和時間(T80)が16.0である。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムA−4の製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムA−1の製造例において、プロテアーゼを0.04gとしたこと以外は同様にして天然ゴムラテックスを得た。さらに続いて、ラテックスセパレーターSLP−3000(斉藤遠心機工業製)を用いて回転数7500rpmで遠心分離した後に、凝固・乾燥工程を経て非ゴム成分分解処理天然ゴムA−4を製造した。非ゴム成分分解天然ゴムA−4の総窒素含有率は、0.17質量%、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が67、応力緩和時間(T80)が31.0である。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムA−5の製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムA−1の製造例においてプロテアーゼの添加量を0.03、天然ゴムラテックスとの攪拌時間を2時間に変え、天然ゴムラテックスを得た後、酸凝固・乾燥して・非ゴム成分分解処理天然ゴムA−5を製造した。非ゴム成分分解処理天然ゴムA−5の総窒素含有率は、0.36質量%、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が71、応力緩和時間(T80)が46.0である。
・非ゴム成分未処理天然ゴムR
非ゴム成分分解処理天然ゴムA−1の製造例において、ペプチド結合分解工程を経ずに直接凝固・乾燥して非ゴム成分未処理天然ゴムRを得た。非ゴム成分未処理天然ゴムRの総窒素含有率は、0.47質量%、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が73、応力緩和時間(T80)が62.5である。
【0057】
(2).非ゴム成分の分解処理天然ゴムB(脂質分解処理)
・非ゴム成分(脂質成分)分解処理天然ゴムB−1の製造例
・クローン種GT−1、NH30.4wt%で処理した天然ゴムラテックスに、水を加えて固形分15wt%に調整したラテックス1000gに、界面活性剤としてレベノールWX(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム:花王(株)製)1.5gを加えて撹拌し分散させる。次に、リパーゼ(リパーゼM「アマノ」10:天野エンザイム(株)製)0.15gを添加して撹拌し、分散させた後、15時間静置した。
・凝固・乾燥工程
次にギ酸を加えてラテックスのpHを4.7に調整し凝固させた。この固形物をクレーパー5回、シュレッダーを通してクラム化した後、熱風乾燥機で110℃、210分間、乾燥することで非ゴム成分分解処理天然ゴムB−1を得た。非ゴム成分分解処理天然ゴムB−1は、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が71、応力緩和時間(T80)が21.4である。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムB−2製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムB−1製造例において、上記のリパーゼM「アマノ」10を加える代わりに、非ゴム成分分解処理天然ゴムB−2製造例はリパーゼOF(名糖(株)製)を0.15g加えて製造した。非ゴム成分分解処理天然ゴムB−2は、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が71、応力緩和時間(T80)が21.4である。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムB−3製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムB−3製造例は、リパーゼM「アマノ」10を加える代わりに、ホスホリパーゼA1(三共(株)製)を0.15g加えて製造した。得られた非ゴム成分分解処理天然ゴムB−3は、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が72、応力緩和時間(T80)が20.3である。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムB−4製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムB−4製造例は、B−1の製造例においてのリパーゼM「アマノ」10を0.03g加えて製造した。得られた天然ゴムを非ゴム成分分解処理天然ゴムB−4製造例とした。得られた非ゴム成分分解処理天然ゴムB−4は、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が69、応力緩和時間(T80)が18.5である。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムB−5製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムB−4はB−1製造例のリパーゼM「アマノ」10に更にプロテアーゼ酵素(ノボザイムズ製「アルカラーゼ 2.5L、タイプX」)を0.15g加えて製造した。得られた非ゴム成分分解処理天然ゴムB−5は、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が69、応力緩和時間(T80)が15.2である。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムB−6製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムB−6はB−1製造例のリパーゼM「アマノ」10に更にプロテアーゼ酵素(天野エンザイム(株)製「プロレザーFG−F」)を0.15g加えて製造した。得られた天然ゴムを非ゴム成分分解処理天然ゴムB−6は、ムーニー粘度[ML1+4/100℃]が68、応力緩和時間(T80)が16.1である。
【0058】
(3).非ゴム成分の分解処理天然ゴムC(グルカン分解処理)
・非ゴム成分(グルカン類)分解処理天然ゴムC−1製造例
クローン種GT−1、NH30.4wt%で処理した天然ゴムラテックスに、水を加えて固形分15wt%に調整したラテックス1000gに界面活性剤としてレベノールWX(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム:花王株式会社製)1.5g、アミラーゼ酵素(ビオザイムA:天野エンザイム(株)製)0.15gを添加して撹拌し、分散させた後、温度45℃で15時間静置した。
・凝固・乾燥工程
次にギ酸を加えてラテックスのpHを4.7に調整し凝固させた。この固形物をクレーパー5回、シュレッダーを通してクラム化した後、熱風乾燥機で110℃、210分間、乾燥する。得られた天然ゴムを非ゴム成分の分解処理天然ゴムC−1とする。
【0059】
・非ゴム成分分解処理天然ゴムC−2製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムC−2は、C−1製造例に対して、アミラーゼ酵素の添加量を0.03gとして製造した。それ以外は同等の条件で製造した。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムC−3製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムC−3は、C−1製造例のアミラーゼ酵素に代えて、セルラーゼ酵素(セルラーゼA「アマノ」3:天野エンザイム(株)製)を0.15g加えて製造した。それ以外は同等の条件で製造した。
・非ゴム成分分解処理天然ゴムC−4製造例
非ゴム成分分解処理天然ゴムC−4は、C−3製造例に対して、セルラーゼ酵素の添加量を0.03gとして製造した。それ以外は同等の条件で製造した。
【0060】
<含水ケイ酸の製造>
製造例A
攪拌機を備えた容量180Lのジャケット付ステンレス製反応槽に、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液(SiO 160g/L、SiO/NaOモル比3.3)0.6Lを入れ96℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は、0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を96℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、47分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を96℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。得られたケイ酸スラリーをフィルタープレスで濾過、水洗を行なって湿潤ケーキを得た。次いで、湿潤ケーキを乳化装置を用いてスラリーとして、噴霧式乾燥機で乾燥して湿式法含水ケイ酸Aを得た。
【0061】
製造例B
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、90℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を90℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、47分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を90℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Bを得た。
【0062】
製造例C
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、84℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を84℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、48分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を84℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Cを得た。
【0063】
製造例D
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、90℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を90℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、47分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を90℃に60分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Dを得た。
【0064】
製造例E
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、78℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を78℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から白濁をはじめ、49分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を78℃に60分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Eを得た。
【0065】
製造例F
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水93Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.6Lを入れ、65℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を65℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を540ml/分、硫酸(18mol/L)を24ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から反応溶液は白濁をはじめ、50分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を65℃に60分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は55g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Fを得た。
【0066】
製造例G
製造例Aと同じ容器および原料を使用し、水86Lとケイ酸ナトリウム水溶液0.5Lを入れ、96℃に加熱した。得られた溶液中のNaO濃度は0.005mol/Lであった。
この溶液の温度を96℃に維持しながら、上記と同じケイ酸ナトリウム水溶液を615ml/分、硫酸(18mol/L)を27ml/分の流量で同時に滴下した。流量を調整しながら、反応溶液中のNaO濃度を0.00〜0.01mol/Lの範囲に維持して中和反応を行なった。反応途中から反応溶液は白濁をはじめ、40分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに添加を続けて90分で反応を停止した。反応停止後、反応液温度を96℃に30分間維持した。生じた溶液中のシリカ濃度は62g/Lであった。引き続いて、上記濃度の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。以下製造例Aと同様な方法で湿式法含水ケイ酸Gを得た。
【0067】
実施例1〜7及び比較例1〜4
実施例1〜7においては、それぞれ製造例A〜Gで製造した含水ケイ酸A〜Gを、比較例1においては東ソー・シリカ社製Nipsil AQを、比較例2ではDegussa社製ULTRASIL VN2を使用し、実施例1〜7、比較例4では非ゴム成分分解処理天然ゴムA−1を使用し、比較例1−3では、天然ゴム汎用グレードであるRSS#3を使用し、表1に示す種類と量の配合剤をからなるゴム組成物を常法により調製した。
各実施例、比較例において、ゴム組成物の加工性を上記試験方法で評価し、また、各ゴム組成物をトレッドに適用したサイズ:185/70R14のタイヤを常法に従って試作し、上記試験方法でタイヤの転がり抵抗、耐摩耗性を評価した。その結果を使用した含水ケイ酸の物性と共に表2及び表3に示した。
【0068】
【表1】

【0069】

1)各種処理又は未処理天然ゴム
2)シーストKH(N339)〔東海カーボン社製〕
3)含水ケイ酸の製造例A〜Gに記載
4)シランカップリング剤Si75〔Degussa社製〕
5)N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
6)ジフェニルグアニジン
7)N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
図1に実施例1−7、比較例1−2で使用した含水ケイ酸のCTABと音響式粒度分布径Aacの関係をグラフで示す。実施例で用いた含水ケイ酸は、AacがY(Aac)=−0.76×(CTAB)+274の直線より上にあって、前記の式(I)を満たしているのに対して、比較例で使用した含水ケイ酸は、Aacが小さいことが分かる。また、表2から実施例の含水ケイ酸は、灼熱減量と加熱減量の差が前記式(II)をも満たしている。
これらの含水ケイ酸を使用することで低発熱性と耐摩耗性がバランスよく向上したゴム組成物が得られた。また、非ゴム成分の蛋白質分解をした天然ゴムを使用することにより、フィラーの分散性の向上により、更にタイヤの転がり抵抗性と耐摩耗性が向上し、加工性が向上した。
【0073】
実施例8〜14、比較例5
実施例8〜14においては、それぞれ製造例A〜Gで製造した含水ケイ酸A〜Gを使用し、比較例5においては東ソー・シリカ社製Nipsil AQを使用し、各例では非ゴム成分分解処理天然ゴムB−1を使用して、表1に示す種類と量の配合剤をからなるゴム組成物を常法により調製した。
各実施例、比較例において、ゴム組成物の加工性を上記試験方法で評価し、また、各ゴム組成物をトレッドに適用したサイズ:185/70R14のタイヤを常法に従って試作し、上記試験方法でタイヤの転がり抵抗、耐摩耗性を評価した。その結果を使用した含水ケイ酸の物性と共に表4に示した。
【0074】
【表4】

【0075】
実施例1〜7と同様に、上記含水ケイ酸を使用することで低発熱性と耐摩耗性がバランスよく向上したゴム組成物が得られ、非ゴム成分の脂質分解をした天然ゴムを使用したものは、フィラーの分散性の向上により、更に転がり抵抗性と耐摩耗性が向上し、加工性が向上した。
【0076】
実施例15〜21、比較例6
実施例15〜21においては、それぞれ製造例A〜Gで製造した含水ケイ酸A〜Gを使用し、比較例6においては東ソー・シリカ社製Nipsil AQを使用し、各例では非ゴム成分分解処理天然ゴムC−1を使用して、表1に示す種類と量の配合剤をからなるゴム組成物を常法により調製した。
各実施例、比較例において、ゴム組成物の加工性を上記試験方法で評価し、また、各ゴム組成物をトレッドに適用したサイズ:185/70R14のタイヤを常法に従って試作し、上記試験方法でタイヤの転がり抵抗、耐摩耗性を評価した。その結果を使用した含水ケイ酸の物性と共に表5に示した。
【0077】
【表5】

【0078】
実施例1〜7と同様に、上記含水ケイ酸を使用することで低発熱性と耐摩耗性がバランスよく向上したゴム組成物が得られ、非ゴム成分のα−グルカン分解をした天然ゴムを使用したものは、フィラーの分散性が向上したことによる転がり抵抗性及び耐摩耗性が更に向上した。
【0079】
実施例22〜28、比較例7
実施例22〜28においては、それぞれ製造例A〜Gで製造した含水ケイ酸A〜Gを使用し、比較例7においては東ソー・シリカ社製Nipsil AQを使用し、各例では非ゴム成分分解処理天然ゴムC−3を使用して、表1に示す種類と量の配合剤をからなるゴム組成物を常法により調製した。
各実施例、比較例において、ゴム組成物の加工性を上記試験方法で評価し、各ゴム組成物をトレッドに適用したサイズ:185/70R14のタイヤを常法に従って試作し、上記試験方法でタイヤの転がり抵抗、耐摩耗性を評価した。その結果を使用した含水ケイ酸の物性と共に表6に示した。
【0080】
【表6】

【0081】
実施例1〜7と同様に、上記含水ケイ酸を使用することで低発熱性と耐摩耗性がバランスよく向上したゴム組成物が得られ、非ゴム成分のα−グルカン分解をした天然ゴムを使用したものは、フィラーの分散性が向上したことによる転がり抵抗性及び耐摩耗性が更に向上した。また、加工性の向上も見られた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のタイヤは、非ゴム成分を分解処理した天然ゴムと含水ケイ酸とを配合してなるゴム組成物がトレッド部に適用されたもので、特定の含水ケイ酸のゴム組成物への分散がよく、タイヤの耐摩耗性と低発熱性を共に改善し、加工性も向上した産業上の利用性が高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ゴム成分を分解処理した天然ゴムと含水ケイ酸とを配合してなるゴム組成物であって、含水ケイ酸のセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)(m/g)と音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値Aac(nm)とが下記式(I)
ac≧−0.76×(CTAB)+274・・・(I)
を満たすゴム組成物をタイヤ部材に用いたタイヤ。
【請求項2】
含水ケイ酸が、その灼熱減量(750℃で3時間加熱した時の質量減少%)と加熱減量(105℃で2時間加熱した時の質量減少%)とが下記式(II)
(灼熱減量)−(加熱減量)≦3・・・(II)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
含水ケイ酸が、音響式粒度分布測定によって求められる一次凝集体の直径の最頻値が1μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
含水ケイ酸が、CTABが50〜250m/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のタイヤ。
【請求項5】
非ゴム成分を分解処理した天然ゴムは天然ゴムラテックスの蛋白質分解処理したものであり、その固形成分中の総窒素含有量が0.12〜0.30重量%の範囲であるように部分分解処理を行なった後、得られた天然ゴムラテックスを、非ゴム成分を分離することなく凝固し、乾燥処理したものである請求項1〜4のいずれかの項に記載のタイヤ。
【請求項6】
請求項5記載のタイヤに用いる天然ゴムが、ゴムのムーニー粘度(ML1+4)及び応力緩和時間(T80)が、下記の式(a)及び式(b)を満たすタイヤ。
40≦ML1+4≦100 ・・・(a)
80<0.0035exp(ML1+4/8.2)+20 ・・・(b)
〔ただし、ML1+4は100℃におけるムーニー粘度測定値、T80はML1+4測定直後にローター回転を停止し、ML1+4の値が80%低減するまでに要する時間(秒)である。〕
【請求項7】
非ゴム成分を分解処理した天然ゴムは天然ゴムラテックスの脂質分解処理したものであり、その処理した天然ゴムが、ゴムのムーニー粘度(ML1+4)及び応力緩和時間(T80)が、下記の式(a)及び式(b)を満たすことを特徴とする請求項1〜4の何れかの項に記載のタイヤ。
40≦ML1+4≦100 ・・・(a)
80<0.0035exp(ML1+4/8.2)+20 ・・・(b)
〔ただし、ML1+4は100℃におけるムーニー粘度測定値、T80はML1+4測定直後にローター回転を停止し、ML1+4の値が80%低減するまでに要する時間(秒)である。〕
【請求項8】
非ゴム成分を分解処理した天然ゴムは天然ゴムラテックスのグルカン類を分解処理したものである請求項1〜4の何れかの項に記載のタイヤ。
【請求項9】
グルカン類の分解にα−グルカン分解酵素及び/又はβ−グルカン分解酵素による酵素処理がなされる請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
ゴム組成物のゴム成分は非ゴム成分を分解処理した天然ゴム以外のジエン系合成ゴムを含んでおり、ゴム成分中に天然ゴムが5〜100質量%含む請求項1〜9のいずれかの項に記載のタイヤ。
【請求項11】
ゴム成分中に天然ゴムが50質量%以上含む請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して含水ケイ酸を10〜150質量部を配合してなる請求項1〜11のいずれかの項に記載のタイヤ。
【請求項13】
シランカップリング剤を含水ケイ酸の配合量の1〜20質量%配合したことを特徴とする請求項1〜12のいずれかの項に記載のタイヤ。
【請求項14】
シランカップリング剤が、下記一般式(III)で表される化合物:
3−mSi−(CH−S−(CH−SiA3−m・・・(III)
[式中、AはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Bは炭素数1〜3のアルキル基であり、mは1〜3の整数、aは1〜9の整数、bは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのBは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい。]、
下記一般式(IV)で表される化合物:
3−mSi−(CH−Y・・・(IV)
[式中、AはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Bは炭素数1〜3のアルキル基であり、Yはメルカプト基、ビニル基、アミノ基、グリシドキシ基又はエポキシ基であり、mは1〜3の整数、cは0〜9の整数である。但し、mが1の時、2つのBは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい。]
および下記一般式(V)で表される化合物:
3−mSi−(CH−S−Z・・・(V)
[式中、AはC2n+1O(nは1〜3の整数)又は塩素原子であり、Bは炭素数1〜3のアルキル基であり、Zはベンゾチアゾリル基、N,N−ジメチルチオカルバモイル基又はメタクリロイル基であり、mは1〜3の整数、aは1〜9の整数、bは1以上の整数で分布を有していてもよい。但し、mが1の時、2つのBは同一でも異なってもよく、mが2又は3の時、2つ又は3つのAは同一でも異なってもよい。]
からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項13に記載のタイヤ。
【請求項15】
補強用充填剤としてカーボンブラックをゴム成分100質量部に対して80質量部以下含有し、カーボンブラックと含水ケイ酸との総配合量が120質量部以下であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかの項にタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−26386(P2011−26386A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171113(P2009−171113)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】