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タイヤ
説明

タイヤ

【課題】高速耐久性能の向上したタイヤを提供する。
【解決手段】ビード部間にトロイド状に延在するカーカスプライを骨格とするタイヤである。カーカスプライが、ポリエステルフィラメントを撚り合わせた後に接着剤組成物で接着剤処理されてなるポリエステルコードのゴム引き層からなる。ポリエステルフィラメントが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、固有粘度が0.85以上のポリエステルからなる繊維であって、繊維中の末端カルボキシ基量が20当量/ton以上、X線小角回折による長周期が9〜12nm、繊維表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着してなるポリエステル繊維よりなる。接着剤組成物として、レゾルシンと、ホルムアルデヒドと、ゴムラテックスと、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物と、アンモニアとを含み、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物の含有量が15〜45質量%であるものを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤに関し、詳しくは、カーカスプライの補強材として用いるポリエステルコードの改良に係るタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は重量当たりの強度が高く、また、廉価であるため、汎用コードとしてタイヤの補強材等に用いられている。PET等の有機繊維からなるコードをタイヤの補強材として用いる際には、一般に、コードに対し、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)系接着剤等の接着剤による浸漬処理を施した後に、ゴムを被覆して、ゴム−コード複合体としてタイヤに適用する。しかし、PET等のポリエステル繊維の表面には、その化学構造上、反応活性点が少ないため、コードとゴムとの複合工程において、フィラメントと接着剤との間の接着力を確保することが困難であった。
【0003】
PETとゴムとの接着性をより向上させる技術として、例えば、特許文献1には、PETをエポキシ系接着剤に一度浸漬した後、RFL系の接着剤に再度浸漬させる2浴処理が開示されている。また、エポキシ系接着剤の改良についても検討がなされており、例えば、特許文献2には、水溶性高分子と、芳香族類をメチレン結合した構造を含有する有機ポリイソシアネート類、複数の活性水素を有する化合物および熱解離性ブロック化剤を含む成分を反応させて得られる水性ウレタン化合物と、を含むエポキシ系接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−355875号公報
【特許文献2】特開2001−98245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ポリエステル繊維をカーカスプライに適用したタイヤ、特に乗用車用タイヤにおいては、キャンバー角をつけた状態で高速耐久性能試験を実施すると、タイヤサイド部でカーカスプライの剥離が発生して、タイヤが早期故障してしまう場合があった。この原因は、ポリエステル繊維とゴムとの間の接着力不足にあるものと考えられる。
【0006】
上記特許文献1において提案されている2浴処理、および特許文献2において提案されているエポキシ系接着剤組成物によれば、PETとゴムとの接着性を向上させることができるが、高速環境や高負荷環境でタイヤを用いる場合には十分なものではなく、ポリエステル繊維とゴムとの間において、動的歪の入力下でのより強固な接着性を実現して、高速耐久性能を向上したタイヤを実現することが求められていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、カーカスプライの補強材として用いるポリエステルコードを改良することで、高速耐久性能の向上したタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定のポリエステルフィラメントを撚糸してコードとした後、レゾルシンと、ホルムアルデヒドと、ゴムラテックスとを含む接着剤液(RFL接着剤液)に、さらに、所定の化合物を添加してなる接着剤組成物を用いて接着剤処理をすることで、従来は得られなかった動的接着性(耐熱接着性)の飛躍的な向上が実現でき、これをカーカスプライの補強材として用いることで、タイヤの高速耐久性能が向上できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のタイヤは、左右一対のビード部間にトロイド状に延在するカーカスプライを骨格とするタイヤにおいて、
前記カーカスプライが、ポリエステルフィラメントを撚り合わせた後に接着剤組成物で接着剤処理されてなるポリエステルコードのゴム引き層からなり、
前記ポリエステルフィラメントが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、固有粘度が0.85以上のポリエステルからなる繊維であって、繊維中の末端カルボキシ基量が20当量/ton以上であり、X線小角回折による長周期が9〜12nmであり、繊維表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着してなるポリエステル繊維よりなり、かつ、
前記接着剤組成物として、レゾルシンと、ホルムアルデヒドと、ゴムラテックスと、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物と、アンモニアと、を含み、該乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物の含有量が15〜45質量%であるものを用いたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記アンモニアが、前記接着剤組成物中に、前記レゾルシン1.0molに対し0.5〜5.0molの割合で含まれていることが好ましい。また、前記ゴムラテックスが、ビニルピリジン、スチレンおよびブタジエンの共重合ゴムラテックスであることが好ましく、より好ましくは、ビニルピリジン、スチレンおよびブタジエンの2段重合からなる2重構造を有する共重合ゴムラテックスである。
【0011】
さらに、本発明においては、前記ポリエステル繊維の繊維表面の末端カルボキシ基量が10当量/ton以下であることが好ましく、前記ポリエステル繊維の繊維横軸方向の結晶サイズが35〜80nmであることも好ましい。さらにまた、前記ポリエステル繊維の繊維中の末端メチル基量は、好適には2当量/ton以下であり、前記ポリエステル繊維の繊維中の酸化チタン含有量は、好適には0.05〜3.0質量%であり、前記ポリエステル繊維の繊維表面のエポキシ指数は、好適には1.0×10−3当量/kg以下である。
【0012】
さらにまた、本発明においては、前記ポリエステルコードの下記式、
Nt=tanθ=0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (1)
(式中、Nは撚り数(回/10cm)であり、ρはコードの比重(g/cm)であり、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である)で定義される撚り係数Ntが、0.40以上0.60以下であることが好ましく、前記ポリエステルコードの総繊度が2000dtex以上5100dtex以下であることが好ましく、前記ポリエステルコードの融点が220℃以上であることが好ましい。本発明は、特に、タイヤ速度記号がVレンジ以上である高速走行可能なタイヤにおいて有用である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、高速耐久性能の向上したタイヤを実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のタイヤの一例を示す幅方向断面図である。
【図2】実施例におけるタイヤ補強用コードの作製方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、詳細に説明する。
図1に、本発明のタイヤの一例を示す幅方向断面図を示す。図示するタイヤは、ビードコア1が埋設された左右一対のビード部11および一対のサイドウォール部12と、両サイドウォール部12に連なるトレッド部13とを有し、左右一対のビードコア1間にまたがってトロイド状に延在して、これら各部を補強する1枚のカーカスプライ2を備えている。また、カーカスプライ2のクラウン部のタイヤ径方向外側には、タイヤ周方向に対し傾斜して配列された補強コードのゴム引き層よりなる2層のベルト3a,3bと、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列された有機繊維コードのゴム引き層よりなるベルト補強層4,5と、が配置されている。
【0016】
本発明のタイヤは、カーカスプライ2が、特定のポリエステルフィラメントを撚り合わせた後に特定の接着剤組成物を用いて接着剤処理されてなるポリエステルコードのゴム引き層からなる点に特徴を有する。具体的には、本発明のタイヤにおいては、カーカスプライ2に用いるポリエステルフィラメントとして、繊維表面に特定のエポキシ系表面処理剤が付着した特定のポリエステルフィラメントを用いるとともに、接着剤組成物として、特定のRFL系接着剤液を用いる。このような構成としたことで、従来は確保しにくかったゴムとの間の接着性を向上したポリエステルコードを得ることができ、特に、高負荷の動的歪を繰り返し入力した際の高発熱時のゴム−ポリエステルコード間の接着性を、飛躍的に向上することが可能となったものである。よって、本発明においては、このポリエステルコードをカーカスプライに適用したことで、キャンバー角を付けた際の高速耐久性能試験時における剥離破壊の発生を抑制することができ、これにより、耐久性の向上したタイヤを実現することが可能となった。本発明においては、特定のポリエステルフィラメントと特定の接着剤組成物との組合わせを用いたことで、本発明の所期の効果が得られることを見出したものであり、本発明に係る特定のポリエステルフィラメントと従来一般的な接着剤との組合わせ、または、従来一般的なポリエステル繊維と本発明に係る特定の接着剤組成物との組合わせにおいては、上記高速耐久性能試験時におけるカーカスプライの剥離破壊の発生を抑制する効果は、十分には得られない。
【0017】
まず、本発明において用いるポリエステルフィラメントについて説明する。
本発明において用いるポリエステルフィラメントは、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、固有粘度が0.85以上のポリエステルからなる繊維であって、繊維中の末端カルボキシ基量が20当量/ton以上であり、X線小角回折による長周期が9〜12nmであり、繊維表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着してなるポリエステル繊維よりなるものである。
【0018】
上記ポリエステル繊維の固有粘度としては、0.85以上であることが必要であり、1.10以下であることが好ましい。より好適には、固有粘度が0.90〜1.00の範囲のポリエステル繊維を用いる。固有粘度が0.85未満であると、ポリエステル繊維の強度が十分ではなく、特に、タイヤ加硫工程における強力低下を十分に抑制することができない。
【0019】
また、上記ポリエステル繊維においては、そのポリマー全体の末端カルボキシ基量が20当量/ton以上であって、その繊維表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着していることが必要である。従来、タイヤ補強用に用いられるポリエステル繊維においては、その耐熱劣化性を向上させる目的等のために、ポリマーのカルボキシ基を15当量/ton以下に保つことが一般的な手法であった。しかし、タイヤ補強用のポリエステル繊維には、繊維の強力維持以外にゴムとの接着性維持の必要性が高いので、本発明に係るポリエステル繊維のようにX線小角回折による長周期が9〜12nmと小さく、かつ、表面にエポキシ処理が施されている場合には、20当量/ton以上のカルボキシ基量が、タイヤ補強用として最も適していることを本発明者らは見出したものである。ポリマー中のカルボキシ基量の上限は、好適には40当量/ton以下であり、より好適には、21〜25当量/tonの範囲のカルボキシ基量とする。
【0020】
ここで、上記ポリエステル繊維の表面に付着させるエポキシ基を有する表面処理剤としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物の1種または2種以上の混合物であるエポキシ化合物を含有するものが好適である。より具体的には、ハロゲン含有のエポキシ類が好ましく、例えば、エピクロルヒドリン多価アルコールまたは多価フェノールとの合成によって得られるものを挙げることができ、グリセロールポリグリシジルエーテルなどの化合物が好ましい。このようなエポキシ化合物を含む表面処理剤の繊維表面への付着量としては、0.05〜1.5質量%、好適には0.10〜1.0質量%の範囲である。表面処理剤には、平滑剤、乳化剤、帯電防止剤、その他の添加剤等を必要に応じて混合してもよい。
【0021】
さらに、上記ポリエステル繊維においては、X線小角回折による長周期が9〜12nmであることが必要である。ここでいうX線小角回折による長周期とは、繊維縦軸方向のポリエステルポリマーにおける結晶と結晶との間隔を意味する。本発明に係るポリエステル繊維におけるこの長周期は、短い点に特徴があり、結晶と結晶とを結ぶタイ分子の数が多くなり、結果として、タイヤ補強用繊維として用いた場合の協力維持率を高く保つことができるのである。また、長周期を上記範囲とすることにより、繊維の物性を、高モジュラスかつ低収縮率のタイヤ補強用繊維に適した物性とすることができる。一般的には、長周期の範囲としては、9nmが下限となる。好適には、上記ポリエステル繊維のX線小角回折による長周期は、10〜11nmの範囲とする。
【0022】
本発明において、上記ポリエステル繊維の繊維表面(原糸表面)の末端カルボキシ基量としては、10当量/ton以下が好ましい。本発明に係るポリエステル繊維におけるポリマー全体のカルボキシ基量は、前述のとおり20当量/ton以上とすることが必要であるが、繊維表面のカルボキシ基量については、繊維表面に付着しているエポキシ化合物との反応により、それより少ない10当量/ton以下となっていることが好ましい。このようにポリマー中のカルボキシ基が繊維表面においてエポキシ基と反応することにより、本発明に係るポリエステル樹脂は、極めて優れた接着性能を有するものとなる。このとき、繊維表面の末端カルボキシ基量が多く残存しすぎると、耐熱性や接着性が低下する傾向となる。
【0023】
また、上記ポリエステル繊維は、繊維横軸方向の結晶サイズが35〜80nmの範囲であることが好ましい。本発明に係るポリエステル繊維は、その繊維縦軸の結晶の間隔である長周期が12nm以下と短いが、高強力繊維とするためには結晶の大きさも必要であり、本発明においては、繊維の横軸方向の結晶サイズが35nm以上に成長することが好ましい。但し、結晶サイズが大きすぎても繊維が剛直となり疲労性が低下するので、好適には、結晶サイズは80nm以下とする。また、繊維横軸方向の結晶サイズは、より好適には、40〜70nmの範囲とする。このように、繊維の横軸方向に結晶が成長することにより、タイ分子が繊維横軸方向へも発達しやすくなるので、繊維の縦横方向に3次元的な構造が構築され、タイヤ補強用に特に適した繊維となる。さらに、このような3次元構造をとることにより、繊維の損失係数tanδが低くなる。その結果、繰返し応力下での発熱量を抑制でき、繰返し応力を与えた後の接着性能を高く保つことが可能となり、タイヤ補強用途に特に好ましい繊維となる。
【0024】
さらに、上記ポリエステル繊維においては、その繊維中の末端メチル基量が2当量/ton以下であることが好ましく、より好ましくは、末端メチル基が含まれていないものとする。ポリエステルポリマー中のメチル基は、反応性が低く、エポキシ基とまったく反応しないために、接着性の向上に有効なカルボキシ基とエポキシ基との反応を阻害する傾向にあるためである。繊維を構成するポリマー中に、末端メチル基がないか、または、少ない場合には、表面処理剤中のエポキシ基との高い反応性が確保され、高い接着性や表面保護性能を確保することが可能となる。
【0025】
さらにまた、上記ポリエステル繊維においては、繊維中の酸化チタン含有量が0.05〜3.0質量%であることが好ましい。酸化チタン含有量が0.05質量%より少ないと、延伸工程等でローラと繊維との間に働く応力を分散させるための平滑効果が不十分となる傾向にあり、最終的に得られる繊維の高強度化に不利となるおそれがある。一方、酸化チタンの含有量が3.0質量%より多い場合には、酸化チタンがポリマー内部において異物として作用して延伸性を阻害し、最終的に得られる繊維の強度も低下する傾向にある。
【0026】
さらにまた、上記ポリエステル繊維においては、その繊維表面におけるエポキシ指数が1.0×10−3当量/kg以下であることが好ましい。特には、ポリエステル繊維1kgあたりのエポキシ指数が0.01×10−3〜0.5×10−3当量/kgであることが好ましい。繊維表面のエポキシ指数が高い場合には、未反応のエポキシ化合物が多い傾向にあり、例えば、撚糸工程で粘性を帯びたスカムがガイド類に大量に発生するなど、繊維の工程通過性が低下するとともに、撚糸斑等の製品品質の低下を招く問題が発生する。
【0027】
上記ポリエステル繊維の強度としては、4.0〜10.0cN/dtexの範囲であることが好ましい。強度が低すぎる場合はもちろん、高すぎる場合も、結果的には、ゴム中中での耐久性に劣る傾向となる。例えば、ぎりぎりの高強度での生産を行うと、製糸工程での断糸が発生しやすい傾向となり、工業繊維としての品質安定性に問題が生ずる傾向となる。また、繊維の180℃における乾熱収縮率は、1〜15%の範囲であることが好ましい。乾熱収縮率が高すぎる場合、加工時の寸法変化が大きくなる傾向にあり、繊維を用いた成形品の寸法安定性に劣るものとなりやすい。
【0028】
本発明に用いるポリエステルコードは、撚糸後に、特定のRFL系接着剤組成物により接着剤処理されている。次に、本発明において用いる接着剤組成物について説明する。
本発明に用いる接着剤組成物は、レゾルシンと、ホルムアルデヒドと、ゴムラテックスとを含むRFL接着剤液に、さらに、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物と、アンモニアと、を含むものであって、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物の含有量が15〜45質量%であるものである。
【0029】
RFL接着剤液と、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物とを用いた配合において、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合反応の触媒として、水酸化ナトリウム等の金属触媒を用いずにアンモニアのみを用い、さらに、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物の含有量を上記範囲としたことで、1浴処理により接着疲労性およびゴム中耐熱接着性を有するタイヤ補強用ポリエステルコードが得られる接着剤組成物とすることができる。
【0030】
本発明において、反応触媒としてアンモニアを用いているのは、水酸化ナトリウムのような金属化合物触媒はRFL接着剤樹脂の硬化を促進するので、接着剤樹脂の柔軟性を確保するのに適さないためである。また、金属化合物触媒は強塩基性であるので、ゴムやコードの劣化を促進しやすいためである。これに対し、アンモニアは弱塩基性であるため、硬化反応が適切な速度で進行する。これにより、接着剤の柔軟性を保持することができる。また、アンモニアレゾール型樹脂から、アンモニアは気化させることにより系中から脱離させることができるため、物理的な軟化および塩基によるゴム劣化を抑制することができる。
【0031】
また、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物の含有量を15〜45質量%とするのは、乳化重合されたブロックドイソシアネートの含有量が45質量%を超えると、接着力は十分に得られるものの、接着剤組成物が硬くなって、タイヤ製造時の作業性を確保することが困難となり、また、コストの面でも好ましくないためである。一方、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物の含有量が15質量%未満の場合、ポリエステル等の不活性なコードへの親和性が不十分となり、接着力の確保が困難となるためである。上記含有量は、好適には20〜40質量%である。また、ブロックドイソシアネート化合物が乳化重合されていることで、接着剤処理中にブロックドイソシアネート化合物が沈殿することなく、作業安定性を確保することができるという効果も得ることができる。
【0032】
本発明においては、接着剤組成物中に、レゾルシン1.0molに対して、アンモニアが0.5〜5.0molの割合で添加されていることが好ましい。レゾルシン1.0molに対して、アンモニアの添加量が0.5mol未満では、レゾルシン樹脂触媒としての効果が十分でなく、熟成反応に時間を要してしまい、熟成反応が十分に進行せず、接着性を確保できない場合がある。また、アンモニアレゾールの量が少ないため、接着剤樹脂が硬化してしまうおそれがある。一方、アンモニアの添加量が5.0molを超えると、反応系を促進してしまうため、接着剤樹脂の柔軟性を損なうおそれがある。
【0033】
また、本発明においては、ゴムラテックスが、ビニルピリジン、スチレンおよびブタジエンの共重合ゴムラテックスであることが好ましく、より好ましくは、ビニルピリジン、スチレンおよびブタジエンの2段重合からなる2重構造を有する共重合ゴムラテックスである。
【0034】
ビニルピリジン、スチレンおよびブタジエンの2段重合からなる2重構造を有する共重合ゴムラテックスは、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンの共重合ゴムラテックスで、(i)スチレン含有率が10〜60質量%、ブタジエン含有率が60質量%未満およびビニルピリジン含有率0.5〜15質量%で構成される単量体混合物を重合させた後、次いで、(ii)スチレン含有率10〜40質量%、ブタジエン含有率45〜75質量%およびビニルピリジン含有率5〜20質量%で構成される単量体混合物を、(i)における重合で用いたスチレン含有量よりも低いスチレン含有量で重合させて得ることができる。
【0035】
本発明において、ゴムラテックスとしては、スチレンリッチのコアを持つシェルコア型のビニルピリジン、スチレン、ブタジエンの共重合体ゴムラテックスを用いることが、さらに好ましい。スチレンリッチのコアを持つシェルコア型のゴムラテックスを用いることにより、架橋性が高く、反応が進みやすいイソシアネートを含んだRFL配合の接着劣化速度を抑え、ゴム中耐熱接着性を良好に確保することができる。
【0036】
本発明において、ブロックドイソシアネート化合物のブロック剤乖離温度は、150℃〜210℃であることが好ましい。有機繊維コードの接着剤処理を行う場合、乾燥処理の工程は150℃以上で行われることが多い。そこで、本発明の接着剤液中のブロックドイソシアネート化合物のブロック剤乖離温度を150℃以上として、両者の温度を150℃以上とすることで、コード中心に接着剤組成物が残留することを抑制できる。その結果、接着剤組成物をタイヤコード外側に均一にコーティングすることが可能となり、ゴム中耐熱接着性をさらに向上させることができる。ブロックドイソシアネート化合物のブロック剤乖離温度が210℃を超える場合は、接着剤液表面が先に乾燥し、内部の接着剤組成物が遅れて乾燥するため、エッグプリスターと呼ばれる樹脂スケールが多く発生するおそれがある。したがって、ブロックドイソシアネート化合物のブロック剤の乖離温度は、好適には、210℃以下である。
【0037】
本発明において、RFL接着剤液としては、特に制限はなく、公知のRFL接着剤液を用いることができる。例えば、レゾルシン/ホルムアルデヒド総量のモル比をR/F、レゾルシンおよびホルムアルデヒドの総質量とゴムラテックス固形分の総質量の比をRF/L、としたとき、下記式(1)および(2)、
1/2.3≦R/F≦1/1.1 (1)
1/10≦RF/L≦1/4 (2)
で表わされる関係を満足するRFL接着剤液を好適に用いることができる。
【0038】
上記接着剤組成物を用いた接着剤処理は、常法に従い行うことができ、特に制限されるものではない。具体的には、少なくとも上記接着剤組成物をコードに含浸させる含浸工程と、得られたコードを乾燥させる乾燥工程と、を経ることにより、接着剤処理を行うことができる。例えば、巻き出し装置から送り出したコードを接着剤組成物中に浸漬し、接着剤組成物をコードに含浸させ、次いで、コードを乾燥ゾーンに送って、コードを乾燥させ、次いで、乾燥したコードをヒートセットゾーンおよびノルマライジングソーンに通して熱処理を施し、冷却した後に巻き取ることで、接着剤処理が施されたコードを得ることができる。
【0039】
コードに接着剤組成物を被覆する方法としては、特に制限されないが、接着剤組成物にコードを浸漬する手法の他、例えば、ハケ塗り、流延、噴霧、ロール塗布、ナイフ塗布等の手法を挙げることができる。特に、接着剤組成物にコードを浸漬する方法を用いる場合には、上記本発明の接着剤組成物を希釈してコードに含浸させた後、得られた有機繊維コードを乾燥させることが好ましい。これにより、1浴処理で、接着疲労性およびゴム中耐熱接着性を有するコードを得ることができる。
【0040】
接着剤組成物の被覆後のコードは、例えば、150〜210℃の温度で乾燥させることができる。上述のとおり、本発明に用いる接着剤組成物中のブロックドイソシアネート化合物のブロック剤乖離温度は、150〜210℃が好適である。よって、乾燥温度を150〜210℃とすることにより、コード中心に接着剤組成物が残留することを抑制して、接着剤組成物をコード外側に均一にコーティングすることができる。これにより、ゴム中耐熱接着性を良好に向上させることができる。
【0041】
また、接着剤処理時において、含浸時のコード張力Tは0.3g/d以下、好ましくは0.2g/d以下、より好ましくは0.1g/d以下とすることができる。さらに、ヒートセットおよびノルマライジングからなる熱処理においては、共に処理温度を210〜250℃、処理時間を30〜120秒、コード張力を0.05〜1.20g/dとすることができる。
【0042】
上述のようにして、上記コードに対し上記RFL系接着剤組成物による接着剤処理を施して得られるポリエステルコードを、未加硫ゴムに埋設して加硫する等の方法により、コードとゴムとが強固に接着したトリートを得ることができ、これをカーカスプライに適用することで、本発明のタイヤを得ることができる。
【0043】
本発明においては、カーカスプライ2に適用する上記ポリエステルコードの下記式、
Nt=tanθ=0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (1)
(式中、Nは撚り数(回/10cm)であり、ρはコードの比重(g/cm)であり、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である)で定義される撚り係数Ntが、0.40以上0.60以下であることが好ましい。撚り係数Ntが0.40未満であると、コード疲労性が悪化し、0.60を超えるとコード強力が低下して、カット性が悪化してしまうため、いずれにおいても好ましくない。
【0044】
また、本発明において、上記ポリエステルコードの総繊度は、2000dtex以上5100dtex以下であることが好ましい。総繊度が2000dtex未満であるとコード強力が不足し、5100dtexを超えると、タイヤサイド部に凹凸が生ずるため、いずれにおいても好ましくない。
【0045】
さらに、本発明において、上記ポリエステルコードの融点は、好適には220℃以上、 より好適には、240〜270℃の範囲である。上記ポリエステルコードの融点が220℃未満であると、高速耐久性能試験における破壊形態が悪化するため、好ましくない。
【0046】
カーカスプライ2は、図示する例では1枚であるが、本発明において、カーカスプライ2の枚数はこれに限られるものではなく、2枚以上であってもよい。また、その構造も特に限定されるものではない。いずれの場合も、本発明においては、すべてのカーカスプライについて上記ポリエステルコードを適用することが必要である。ビード部におけるカーカスプライ2の係止構造についても、図示するようにビードコア1の周りに巻き上げて係止した構造に限られず、カーカスプライの端部を2層のビードコアで挟み込んだ構造でもよい(図示せず)。本発明において、カーカスプライ2における上記ポリエステルコードの打込み数は、35〜65本/50mmとすることができる。
【0047】
ベルト3a,3bは、タイヤ周方向に対し、例えば、±15〜40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなる。図示する例では、2層のベルト3a,3bが、各ベルトを構成するコード同士がタイヤ赤道面を挟んで互いに交差するように積層されて交錯層を構成しているが、本発明においては、少なくとも1層のベルトが配置されているものであればよく、図示する例に限られるものではない。
【0048】
ベルト補強層は、図示する例では、ベルト3の全幅以上にわたり配置される1層のキャップ層4と、ベルト3の両端部を覆う領域に配置される一対のレイヤー層5とからなるが、これには限られず、キャップ層4若しくはレイヤー層5のみ、または、2層以上のキャップ層4および/または2層以上のレイヤー層5の組み合わせであってもよい。かかるベルト補強層は、例えば、複数本の有機繊維コードを引き揃えてゴム被覆してなる一定幅のストリップを、タイヤ周方向に螺旋巻きすることで形成することができる。
【0049】
さらに、図示はしないが、本発明において、タイヤの最内層には通常インナーライナーが配置され、トレッド表面には、適宜トレッドパターンが形成される。さらにまた、本発明のタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常のあるいは酸素分圧を変えた空気、または、窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【0050】
本発明は、特に、タイヤ速度記号がVレンジ以上である高速走行可能なタイヤにおいて有用である。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。
<実施例1>
(ポリエステル繊維の製造)
固有粘度1.03の高カルボキシ基末端を有するポリエチレンテレフタレートチップを用い、溶融紡糸法により高速紡糸、多段延伸を行って、表面にエポキシ処理を施すことにより、下記のようなポリエステル繊維を準備した。なお、エポキシ処理に用いた油剤は、繊維100質量部に対して0.2質量部付着しており、エポキシ化合物成分であるポリグリセロールポリグリシジルエーテルの繊維表面付着量は0.12質量%であった。
【0052】
このポリエステル繊維は、固有粘度が0.91、繊度が1130dtex、384フィラメント、強度が6.9cN/dtex、伸度が12%、乾熱収縮率が10.5%の力学特性を有し、末端カルボキシ基量が22当量/tonであり、X線小角回折による長周期が10nm、繊維表面の末端カルボキシ基量が7当量/ton、繊維横軸方向の結晶サイズが45nm、末端メチル基量が0当量/ton、酸化チタン含有量が0.05質量%、表面エポキシ基量(エポキシ指数)が0.1×10−3当量/kgであった。
【0053】
ここで、上記ポリエステル繊維の固有粘度、強度および伸度、乾熱収縮率、末端カルボキシ基量、X線小角回折による長周期および繊維横軸方向の結晶サイズ、繊維表面の末端カルボキシ基量、末端メチル基量、酸化チタン含有量、表面エポキシ基量は、それぞれ、下記に従い測定した。以下において同様である。
【0054】
(固有粘度)
ポリエステルチップ、ポリエステル繊維を、100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
【0055】
(末端カルボキシ基量)
粉砕機を用いて粉末状にしたポリエステルサンプル40.00gおよびベンジルアルコール100mlをフラスコに加え、窒素気流下で215±1℃の条件下、4分間にてポリエステルサンプルをベンジルアルコールに溶解させた。溶解後、室温までサンプル溶液を冷却させた後、フェノールレッドのベンジルアルコール0.1質量%溶液を適量添加し、N規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液によって、速やかに滴定し、変色が起こるまでの滴下量をAmlとした。ブランクとして、100mlのベンジルアルコールにフェノールレッドのベンジルアルコール0.1質量%溶液を同量添加し、N規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液によって、速やかに滴定し、変色が起こるまでの滴下量をBmlとした。それらの値から、下記式によって、ポリエステルサンプル中の末端COOH基含有量を計算した。
末端COOH基含有量(eq/10g)=(A−B)×10×N×10/40
なお、ここで使用したベンジルアルコールは、試薬特級グレードのものを蒸留し、遮光瓶内で保管したものである。N規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液としては、定法により事前に濃度既知の硫酸溶液によって滴定し、規定度Nを正確に求めたものを使用した。
【0056】
(末端メチル基量)
ポリエステルを加水分解して酸成分、グリコール成分にした後、ガスクロマトグラフィーにてメチルエステル成分を定量し、この値から算出した。
【0057】
(酸化チタン含有量)
各元素の含有量は、蛍光X線装置((株)リガク製,3270E型)を用いて測定し、定量分析を行った。この蛍光X線分析の際には、圧縮プレス機にて、ポリエステル繊維樹脂ポリマーサンプルを2分間260℃にて加熱しながら、7MPaの加圧条件下で平坦面を有する試験成形体を作製し、測定を実施した。
【0058】
(X線回折)
ポリエステル組成物・繊維のX線回折については、X線回折装置((株)リガク製,RINT−TTR3,Cu−Kα線,管電圧50kV,電流300mA,平行ビーム法)を用いて行った。長周期間隔はX線小角散乱測定装置を用いて、従来公知の方法、すなわち、波長1.54ÅのCu−Kα線を線源とし、繊維軸に直角に照射して得られる子午線干渉の回折線より、ブラッグの式を用いて算出した。結晶サイズはX線広角回折から赤道線走査の(010)(100)強度分布曲線の半価幅より、シエラーの式を用いて求めた。
【0059】
(繊維表面の末端カルボキシ基量)
JIS K0070−3.1項 中和滴定法に準じて、繊維表面のカルボキシ基量(酸価)を求めた。すなわち、繊維試料約5gにジエチルエーテル/エタノール=1/1溶液50mlを加え、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴添加し、室温で15分間超音波振とうした。この溶液に、0.1ml水酸化カリウムエタノール溶液(ファクター値f=1.030)で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点として指示薬滴下量を測定し、以下の式から酸価を算出した。
酸価A(eq/ton)=(B×1.030×100)/S
(ここで、Bは0.1ml水酸化カリウムエタノール溶液滴定量(ml)、Sは試料量(g)を表す)
【0060】
(繊維の強度および伸度)
引張荷重測定器((株)島津製作所製オートグラフ)を用いて、JIS L−1013に従って測定した。
【0061】
(乾熱収縮率)
JIS−L1013に従い、20℃、65%RHの温湿度管理された部屋で、24時間放置後、無荷重状態で、乾燥機内で180℃×30分間熱処理し、熱処理前後の試長差より算出した。
【0062】
(エポキシ指数(EI))
加温処理後のポリエステル繊維について、JIS K−7236に従ってエポキシ指数(EI:繊維1kgあたりのエポキシ当量数)を測定した。
【0063】
(接着剤組成物の調製)
下記表中に示す配合で接着剤液(1)を調製し、この接着剤液を希釈して、上記比率で20質量%の接着剤水溶液となるように調整した。なお、ブロックドイソシアネート化合物は、RFL接着剤液を配合し、20℃で24時間熟成させた後、使用直前に添加した。使用したブロックドイソシアネート化合物は、第一工業製薬(株)製:エラストロンBN69(ブロック剤乖離温度120℃)およびBN27(ブロック剤乖離温度180℃)である。ラテックスは乳化重合により試作した。
【0064】
【表1】

【0065】
上記で得られたポリエステル繊維からなるポリエステルフィラメントを、下記表中に示す条件に従い撚り合わせてコードとした後、このコードに、図2に示す工程にて、接着剤液(1)を用いて接着剤処理を施して、タイヤ補強用ポリエステルコードを得た。具体的には、巻き出し装置101から送り出されたコード102を接着剤液103に通し、接着剤液103をコード102に含浸させ(含浸工程)、含浸後のコード102を乾燥ゾーン104に送ってコード102を乾燥させ(乾燥工程)、乾燥したコード102をヒートセットゾーン105およびノルマライジングソーン106に通した後(熱処理工程)、コード102を冷却して、巻き取り装置107にて巻き取った。乾燥工程における乾燥ゾーン104の乾燥温度は下記表中に示す温度であり、乾燥時間は2分間とした。その後の、ヒートセットゾーン105およびノルマライジングゾーン106からなる熱処理工程は、処理温度を250℃、処理時間を1分間とした。この際、コード張力は1kg/本とした。
【0066】
得られたタイヤ補強用ポリエステルコードをゴム被覆して、打込み数50本/50mmのトリートを作製し、これをタイヤサイズ225/55R16のタイヤのカーカスプライに適用して、実施例1の供試タイヤを作製した。この供試タイヤは、左右一対のビードコア間にトロイド状に延在する1層のカーカスプライからなるカーカスを骨格とし、カーカスのタイヤ半径方向外側には、タイヤ周方向に対し±40°の角度で互いに交錯配置される2層のベルト(材質:スチール)を有していた。
【0067】
<実施例2>
接着剤組成物として、上記接着剤液(1)と同様にして調製された接着剤液(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の供試タイヤを作製した。
【0068】
<実施例3>
接着剤組成物として、上記接着剤液(1)と同様にして調製された接着剤液(3)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の供試タイヤを作製した。
【0069】
<比較例1>
低カルボキシ基末端を有する汎用のタイヤコード用のポリエチレンテレフタレートチップを用い、繊維表面に対するエポキシ処理を行わず、物性値を揃えるために延伸条件を微調整した以外は実施例1と同様のポリエステル繊維を準備した。
【0070】
このポリエステル繊維は、固有粘度が0.91、繊度が1130dtex、384フィラメント、強度が6.9cN/dtex、伸度が12%、乾熱収縮率が10.5%、X線小角回折による長周期が10nm、繊維横軸方向の結晶サイズが45nmと、実施例1で用いたポリエステル繊維と同様の力学特性を有していた。但し、末端カルボキシ基量は18当量/ton、繊維表面の末端カルボキシ基量は11当量/ton、表面エポキシ基量(エポキシ指数)は0.0×10−3当量/kgであり、使用ポリマーの違いから、末端メチル基量は5当量/ton、酸化チタン含有量は0.00質量%であった。
【0071】
得られたポリエステル繊維からなるポリエステルフィラメントを、下記表中に示す条件に従い撚り合わせてコードとした後、このコードに、上記接着剤液(1)と同様にして調製された接着剤液(4)を用いて接着剤処理を施して、比較例1のタイヤ補強用ポリエステルコードを得た。
【0072】
<比較例2>
実施例1で用いたのと同様のポリエステルフィラメントを撚り合わせてコードとした後、このコードに、比較例1で用いたのと同様の接着剤組成物を用いて接着剤処理を施した以外は実施例1と同様にして、比較例2の供試タイヤを作製した。
【0073】
<比較例3>
比較例1で用いたのと同様のポリエステルフィラメントを撚り合わせてコードとした後、このコードに、実施例1で用いたのと同様の接着剤組成物を用いて接着剤処理を施した以外は比較例1と同様にして、比較例3の供試タイヤを作製した。
【0074】
<比較例4>
低カルボキシ基末端を有する汎用のタイヤコード用のポリエチレンテレフタレートチップを用い、物性値を揃えるために延伸条件を微調整した以外は実施例1と同様のポリエステル繊維を準備した。
【0075】
このポリエステル繊維は、固有粘度が0.91、繊度が1130dtex、384フィラメント、強度が6.9cN/dtex、伸度が12%、乾熱収縮率が10.5%、X線小角回折による長周期が10nm、繊維横軸方向の結晶サイズが45nmと、実施例1で用いたポリエステル繊維と同様の力学特性を有していた。また、表面エポキシ基量(エポキシ指数)も0.1×10−3当量/kgと同一であった。但し、末端カルボキシ基量は18当量/ton、繊維表面の末端カルボキシ基量は9当量/tonであり、使用ポリマーの違いから、末端メチル基量は5当量/ton、酸化チタン含有量は0.00質量%であった。このポリエステル繊維からなるポリエステルフィラメントを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4の供試タイヤを作製した。
【0076】
<実施例4〜10>
ポリエステルコードの条件を下記表中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、実施例4〜10の供試タイヤを作製した。
【0077】
得られた各供試タイヤについて、下記に従い、キャンバー角をつけた際の高速ドラム耐久性、サイド部の凹凸、ビード部ドラム耐久性およびカット性を評価した。得られた結果を下記表中に併せて示す。
【0078】
<高速ドラム耐久性(キャンバー角付与時)>
各供試タイヤに、JATMAの最大荷重条件の200%荷重を負荷して、キャンバー角4.0°をつけた状態でドラム上を走行させ、故障に至るまでの距離を、比較例4の距離を100として指数表示した。数値が大なるほど、結果が良好である。また、併せて、故障の際の破壊の形態を観察した。
【0079】
<サイド部の凹凸>
各供試タイヤについて、内圧180kPa時に、レーザーでタイヤサイド部の凹凸を測定して、ピーク値を数値化することにより、凹みを評価した。結果は、比較例4を100として指数表示した。数値が大きいほど、凹みが大きく悪い結果といえる。
【0080】
<ビード部耐久ドラム試験>
各供試タイヤを、内圧400kPa、荷重5.0kNの高内圧高荷重条件にてドラム走行させて、ビード部故障が生ずるまでの走行距離により、耐久性を評価した。結果は、比較例4の距離を100として指数表示した。数値が大なるほど、結果が良好である。
【0081】
<カット性>
各供試タイヤを規定リムにリム組みし、規定内圧を充填して、そのサイド部に、先端の曲率半径R=10である凸状突起を押し当て、サイド部がカットするまでに必要な仕事量を測定した。結果は、比較例4のタイヤのサイドカットに至るまでに必要な仕事量を100とする指数にて示した。数値が大きいほど、サイドカット性能が良好である。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
上記表中に示すように、各実施例の供試タイヤにおいては、他性能を損なうことなく、キャンバー角付与時における高速耐久性能試験において、カーカスプライの剥離破壊の発生が防止されており、これにより、高速耐久性能が向上していることが確かめられた。
【符号の説明】
【0086】
1 ビードコア
2 カーカスプライ
3a,3b ベルト
4,5 ベルト補強層
11 ビード部
12 サイドウォール部
13 トレッド部
101 巻き出し装置
102 コード
103 接着剤液
104 乾燥ゾーン
105 ヒートセットゾーン
106 ノルマライジングソーン
107 巻き取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のビード部間にトロイド状に延在するカーカスプライを骨格とするタイヤにおいて、
前記カーカスプライが、ポリエステルフィラメントを撚り合わせた後に接着剤組成物で接着剤処理されてなるポリエステルコードのゴム引き層からなり、
前記ポリエステルフィラメントが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、固有粘度が0.85以上のポリエステルからなる繊維であって、繊維中の末端カルボキシ基量が20当量/ton以上であり、X線小角回折による長周期が9〜12nmであり、繊維表面にエポキシ基を有する表面処理剤が付着してなるポリエステル繊維よりなり、かつ、
前記接着剤組成物として、レゾルシンと、ホルムアルデヒドと、ゴムラテックスと、乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物と、アンモニアと、を含み、該乳化重合されたブロックドイソシアネート化合物の含有量が15〜45質量%であるものを用いたことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記アンモニアが、前記接着剤組成物中に、前記レゾルシン1.0molに対し0.5〜5.0molの割合で含まれている請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴムラテックスが、ビニルピリジン、スチレンおよびブタジエンの共重合ゴムラテックスである請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ゴムラテックスが、ビニルピリジン、スチレンおよびブタジエンの2段重合からなる2重構造を有する共重合ゴムラテックスである請求項3記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ポリエステル繊維の繊維表面の末端カルボキシ基量が10当量/ton以下である請求項1〜4のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ポリエステル繊維の繊維横軸方向の結晶サイズが35〜80nmである請求項1〜5のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ポリエステル繊維の繊維中の末端メチル基量が2当量/ton以下である請求項1〜6のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ポリエステル繊維の繊維中の酸化チタン含有量が0.05〜3.0質量%である請求項1〜7のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ポリエステル繊維の繊維表面のエポキシ指数が1.0×10−3当量/kg以下である請求項1〜8のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ポリエステルコードの下記式、
Nt=tanθ=0.001×N×(0.125×D/ρ)1/2 ・・・ (1)
(式中、Nは撚り数(回/10cm)であり、ρはコードの比重(g/cm)であり、Dはコードの総デシテックス数(dtex)である)で定義される撚り係数Ntが、0.40以上0.60以下である請求項1〜9のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項11】
前記ポリエステルコードの総繊度が2000dtex以上5100dtex以下である請求項1〜10のうちいずれか一項記載のタイヤ。
【請求項12】
前記ポリエステルコードの融点が220℃以上である請求項1〜11のうちいずれか一項記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−214140(P2012−214140A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81089(P2011−81089)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】