説明

タイヤ

【課題】サイドウォール部に装飾体が装着されるタイヤの装飾体が容易に外れることを防ぐ。
【解決手段】サイドウォール部4に装飾体9が装着されるタイヤ1にあって、接地面以外のタイヤ外周面にて装飾体9の一部を貫通させる装飾体取付部Wを有し、前記装飾体9は、装飾体取付部Wに貫通される芯部9aと、装飾体取付部Wからタイヤ外周面側に突出した芯部9aの両端部に取り付けられる装飾留部9b、9cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤサイド部に装飾体が装着されるタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載のタイヤ(硬化熱処理された飾り部材を側壁につけた車両の空気入りタイヤ)は、飾り部材を予め別々に作製し、タイヤの側壁より硬い材料で形成し、タイヤの側壁の母材により少なくとも部分的に貫通される足部が飾り部材にある。すなわち、特許文献1に記載のタイヤは、タイヤを成形するとき、飾り部材の足部の貫通に、タイヤを成形するときの粗母材が流れ込むことにより、硬化熱処理後に母材に飾り部材を確実に保持する強固な定着を生じさせようとしている。
【0003】
また、従来、特許文献2に記載のタイヤ(車輪用アクセサリーリング)は、タイヤとは異なる色彩の環状の帯体と、同帯体の内面側に設けられた取付脚部とからなり、取付脚部をタイヤの側面に取付けることにより車輪に取付けられて、帯体がタイヤの側面の一部を環状の帯状に被覆するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−329512号公報
【特許文献2】特開2003−211902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載のタイヤは、足部の貫通に加硫した母材が十分に入り込まないことがあり、装飾体が外れるおそれがある。また、上述した特許文献2に記載のタイヤは、取付脚部をタイヤの側面の凹部に挿入して嵌め込むもので、凹部から抜ける力に対して装飾体(帯体)が外れるおそれがある。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、装飾体が容易に外れることを防ぐことのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のタイヤは、接地面以外のタイヤ外周面にて装飾体の一部を貫通させる装飾体取付部を有し、前記装飾体は、前記装飾体取付部に貫通される芯部と、前記装飾体取付部からタイヤ外周面側に突出した前記芯部の両端部に取り付けられる装飾留部とを有することを特徴とする。
【0008】
このタイヤによれば、装飾体の一部を貫通させる装飾体取付部を有し、かつ装飾体が、装飾体取付部に貫通する芯部と、芯部の両端に取り付けられる装飾留部とを有することで、タイヤの外周面を装飾する装飾体がタイヤから容易に外れることを防ぐことができる。
【0009】
また、本発明のタイヤでは、前記装飾体は、前記装飾留部と前記芯部との取り付け部分に、相互の抜け止めをする抜止機構を有することを特徴とする。
【0010】
このタイヤによれば、抜止機構により装飾留部が芯部から抜け止めされるので、装飾体がタイヤから容易に外れることを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明のタイヤでは、前記装飾体取付部は、前記装飾留部を受け入れる凹部を有することを特徴とする。
【0012】
このタイヤによれば、凹部に装飾留部が嵌り込むため、装飾体が容易に外れることを防ぎ、かつ装飾体が故意に外されることを防ぐことができる。しかも、走行中のタイヤの撓みや振動により、装飾留部やタイヤ外周面(装飾体取付部を含む)が摩耗損傷することを低減することができる。
【0013】
また、本発明のタイヤでは、前記凹部は、前記装飾留部の外形に沿う形状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
このタイヤによれば、凹部により装飾留部が抱き込まれるように嵌り込むため、装飾体が容易に外れる(外される)ことを防ぐ効果、および装飾留部やタイヤ外周面(装飾体取付部を含む)が摩耗損傷することを低減する効果を顕著に得ることができる。
【0015】
また、本発明のタイヤでは、前記装飾体は、前記装飾留部が前記芯部を中心として非回転対称形状に形成されていることを特徴とする。
【0016】
このタイヤによれば、非回転対称形状とされた装飾留部の一部がタイヤ外周面に当接することになる。このため、芯部を中心とした装飾留部の回転や、その回転に伴う芯部の回転を防止できる。この結果、装飾体の回転に伴って、装飾体やタイヤ外周面(装飾体取付部を含む)が摩耗損傷することを低減することができる。
【0017】
また、本発明のタイヤでは、前記装飾体は、前記芯部の断面が非回転対称形状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
このタイヤによれば、非回転対称形状の断面とされた芯部により、自身を中心とした回転や、その回転に伴う装飾留部の回転を防止できる。この結果、装飾体の回転に伴って、装飾体やタイヤ外周面(装飾体取付部を含む)が摩耗損傷することを低減することができる。
【0019】
また、本発明のタイヤでは、前記装飾体は、前記芯部が複数設けられていることを特徴とする。
【0020】
このタイヤによれば、複数設けられた芯部により、芯部の回転や、その回転に伴う装飾留部の回転を防止できる。この結果、装飾体の回転に伴って、装飾体やタイヤ外周面(装飾体取付部を含む)が摩耗損傷することを低減することが可能になる。
【0021】
また、本発明のタイヤでは、前記装飾体は、前記装飾留部の少なくともタイヤ外周面に接触し得る部分の外面が滑らかに形成されていることを特徴とする。
【0022】
このタイヤによれば、装飾留部がタイヤ外周面(装飾体取付部を含む)に接触しても当該タイヤ外周面を傷つけることを防止することができる。
【0023】
また、本発明のタイヤは、タイヤ外周面がゴム材にて形成されており、前記装飾体取付部をなすゴム材が前記タイヤ外周面のゴム材よりも高い硬度を有し、そのJIS−A硬度が55〜95の範囲であることを特徴とする。
【0024】
このタイヤによれば、芯部が貫通するゴム硬度を他と比較して高くすることで、装飾体の動きを抑える。このため、装飾体やタイヤ外周面(装飾体取付部を含む)が摩耗損傷することを低減することができる。しかも、芯部が貫通するゴム硬度を他と比較して高くすることで、芯部の貫通箇所を基点として装飾体取付部をちぎれ難くすることができる。
【0025】
また、本発明のタイヤでは、前記装飾体取付部は、突起として形成されていることを特徴とする。
【0026】
このタイヤによれば、装飾体取付部を突起として形成することにより、装飾体を容易に取り付けることができる。
【0027】
また、本発明のタイヤでは、前記突起は、タイヤサイド部に形成されていることを特徴とする。
【0028】
このタイヤによれば、装飾体取付部の突起をタイヤサイド部に設けることにより、走行時に突起が邪魔にならず、装飾体が脱落することを防ぐことができる。
【0029】
また、本発明のタイヤでは、前記突起は、装着されるリムを保護するようにタイヤ周方向に沿って形成されたリムプロテクトバーであることを特徴とする。
【0030】
このタイヤによれば、撓みや変形の少ないリム近傍の箇所に装飾体を設け、装飾体やタイヤ外周面(装飾体取付部を含む)の摩耗損傷を低減したり、縁石などへ装飾体が衝突することを低減したりすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るタイヤは、装飾体が容易に外れることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るタイヤの子午断面図である。
【図2】図2は、図1の一部拡大図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る他のタイヤの子午断面一部拡大図である。
【図4】図4は、装飾体の側面図である。
【図5】図5は、装飾体の側面図である。
【図6】図6は、装飾体の側面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る他のタイヤの子午断面一部拡大図である。
【図8】図8は、装飾体の側面図である。
【図9】図9は、図8の装飾体を軸方向から視た図である。
【図10】図10は、装飾体の芯部の断面図である。
【図11】図11は、装飾体の芯部の断面図である。
【図12】図12は、装飾体の芯部の断面図である。
【図13】図13は、装飾体の芯部の断面図である。
【図14】図14は、装飾体の側面図である。
【図15】図15は、装飾体の側面図である。
【図16】図16は、タイヤの側面図である。
【図17】図17は、タイヤの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0034】
図1は、本実施の形態に係るタイヤの子午断面図である。以下の説明において、タイヤ径方向とは、タイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ1の回転軸に直交するとともに、タイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまりタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあってタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0035】
本実施の形態のタイヤ1は、空気入りタイヤとして構成され、図1に示すようにトレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7とを備えている。
【0036】
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、タイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なストレート主溝である複数(本実施の形態では3本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。また、図には明示しないが、トレッド面21は、各陸部23において、主溝22に交差するラグ溝が設けられている。陸部23は、ラグ溝によってタイヤ周方向で複数に分割される。なお、ラグ溝は、主溝22に連通している形態、または主溝22に連通していない形態の何れであってもよい。
【0037】
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
【0038】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
【0039】
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
【0040】
上述したタイヤ1は、リムに装着した場合の車両外側となるタイヤサイド部Sに、突起8が形成されている。この突起8は、タイヤ1がリムR(図2参照)に装着された状態にて、リムRのタイヤ径方向外側に沿って環状に設けられ、かつリムRよりもタイヤ幅方向外側に突出して設けられている。このため、リムRと縁石などとの接触が抑制されるので、リムRが保護される(リムプロテクト機能)。このような突起8をリムプロテクトバーという。なお、突起8のタイヤ外周面からの突出高さは、1mm以上とする。
【0041】
ここで、タイヤサイド部Sとは、後述する接地面以外のタイヤ外周面に含まれ、図1において、トレッド部2の接地端Tからタイヤ幅方向外側であってリムチェックラインLからタイヤ径方向外側の範囲で一様に連続する面をいう。また、接地端Tとは、タイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、このタイヤ1のトレッド部2のトレッド面21が路面と接地する領域(以下、接地面という)において、タイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。また、リムチェックラインLとは、タイヤ1のリム組みが正常に行われているか否かを確認するためのラインであり、一般には、ビード部5の表側面において、リムフランジよりもタイヤ径方向外側であってリムフランジ近傍となる部分に沿ってタイヤ周方向に連続する環状の凸線として示されている。
【0042】
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0043】
図2は、図1の一部拡大図である。図2に示すように、上述したタイヤ1におけるタイヤ外周面に装飾体取付部Wが設けられている。図2では、タイヤサイド部Sに設けられた突起8が装飾体取付部Wとして設けられている。装飾体取付部Wは、装飾体9の一部を貫通させる。装飾体取付部Wは、装飾体9の一部を貫通させる貫通穴が設けられていても、装飾体9の一部を刺し通すことで当該装飾体9の一部を貫通させるようにしてもよい。
【0044】
図2に示すように、装飾体9は、芯部9aと、装飾留部である装飾部9bおよび留部9cとを有する。芯部9aは、上述した装飾体9の一部を構成するもので、装飾体取付部Wに対して貫通される。芯部9aは、鋼材や合成樹脂材や繊維によって形成された棒状体、または針や糸であり、弾性や可撓性を有していてもよい。この芯部9aは、突起8である装飾体取付部Wを貫通して両端部がタイヤ外周面に突出するように直線状に形成されている。装飾留部である装飾部9bおよび留部9cは、芯部9aの端部にそれぞれ取り付けられる。装飾部9bは、例えば、貴金属、宝石類、樹脂、ガラスなどにより、その色彩(タイヤの外周面とは異なる色彩が好ましい)や形状(図2では球形状として示す)によってタイヤを装飾するものである。この装飾部9bは、装飾体取付部Wからタイヤ外周面に突出した芯部9aの少なくとも一方の端部に取り付けられる。なお、装飾部9bは、芯部9aの端部に取り付けられるように台座(図示せず)が設けられていてもよい。留部9cは、装飾部9bが芯部9aの一方の端部のみに取り付けられた場合に、芯部9aの他方の端部に取り付けられるものである。従って、留部9cは、装飾部9bが芯部9aの両端部に取り付けられた場合は必要ではない。
【0045】
図3は、本実施の形態に係る他のタイヤの子午断面一部拡大図である。図3に示すタイヤ1は、図2に示すタイヤ1に対して装飾体取付部Wの形態が異なる。この装飾体取付部Wは、タイヤ外周面から突出せず埋設されて、タイヤ外周面と同じ面を構成している。装飾体取付部Wは、装飾体9の一部を折返し状に貫通させる。装飾体取付部Wは、装飾体9の一部を折返し状に貫通させる貫通穴が設けられていても、装飾体9の一部を折返し状に刺し通すことで当該装飾体9の一部を貫通させるようにしてもよい。この装飾体取付部Wは、貫通された装飾体9の一部がタイヤ1の構成部(例えば、カーカス層6)に到達しないように、当該構成部に到達しない領域に配置される。
【0046】
図3に示すように、装飾体9は、芯部9aと、装飾留部である装飾部9bおよび留部9cとを有する。芯部9aは、上述した装飾体9の一部を構成するもので、装飾体取付部Wに対して貫通される。芯部9aは、鋼材や合成樹脂材によって形成された棒状体であり、弾性を有していてもよい。この芯部9aは、タイヤ外周面に沿う面をなすである装飾体取付部Wを貫通して両端部がタイヤ外周面に突出するように湾曲して形成されている。装飾留部である装飾部9bおよび留部9cは、芯部9aの端部にそれぞれ取り付けられる。装飾部9bは、例えば、貴金属、宝石類、樹脂、ガラスなどにより、その色彩(タイヤの外周面とは異なる色彩が好ましい)や形状(図3では球形状として示す)によってタイヤを装飾するものである。この装飾部9bは、装飾体取付部Wからタイヤ外周面に突出した芯部9aの少なくとも一方の端部に取り付けられる。なお、装飾部9bは、芯部9aの端部に取り付けられるように台座(図示せず)が設けられていてもよい。留部9cは、装飾部9bが芯部9aの一方の端部のみに取り付けられた場合に、芯部9aの他方の端部に取り付けられるものである。従って、留部9cは、装飾部9bが芯部9aの両端部に取り付けられた場合は必要ではない。
【0047】
このように、本実施の形態のタイヤ1は、接地面以外のタイヤ外周面にて装飾体9の一部を貫通させる装飾体取付部Wを有し、装飾体9は、装飾体取付部Wに貫通される芯部9aと、装飾体取付部Wからタイヤ外周面側に突出した芯部9aの両端部に取り付けられる装飾留部(装飾部9b、留部9c)とを有する。
【0048】
このタイヤ1によれば、装飾体9の一部を貫通させる装飾体取付部Wを有し、かつ装飾体9が、装飾体取付部Wに貫通する芯部9aと、芯部9aの両端に取り付けられる装飾留部(装飾部9b、留部9c)とを有することで、装飾体9がタイヤ1から容易に外れることを防ぎ、タイヤ1の外周面を装飾することが可能になる。
【0049】
なお、芯部9aを装飾体取付部Wに対して貫通させ、装飾留部(装飾部9b、留部9c)を装飾体取付部Wにて保持するため、芯部9aの貫通される長さを3mm以上30mm以下とすることが好ましい。
【0050】
図4〜図6は、装飾体の側面図である。図4〜図6に示す装飾体9は、芯部9aの一方の端部に装飾部(装飾留部)9bが取り付けられ、芯部9aの他方の端部に留部(装飾留部)9cが取り付けられている。装飾部9bは、芯部9aに対して固定されている。留部9cは、芯部9aに対して着脱可能に取り付けられる。そして、芯部9aに対して着脱可能に取り付けられる留部9cに係り抜止機構を有する。
【0051】
図4および図5に示すように、抜止機構9dは、芯部9aが留部9cを貫通するように構成され、留部9cから突出した芯部9aの端部において、芯部9aの径を大きくして設けられている。すなわち、留部9cを貫通する以前の状態で、芯部9aを装飾体取付部Wに貫通させ、装飾体取付部Wから突出した芯部9aの端部を留部9cに貫通させる。この結果、抜止機構9dにより芯部9aから留部9cが抜け止めされる。なお、装飾体取付部Wおよび留部9cへの抜止機構9dの貫通を良好に行うため、装飾体取付部Wおよび留部9c、または抜止機構9d自体を可撓性を有する部材で構成することが好ましい。また、図4に示す抜止機構9dのように、装飾体取付部Wおよび留部9cに貫通する先端側を細径とし、留部9c側を太径とすることで、装飾体取付部Wおよび留部9cへの抜止機構9dの貫通をし易くなり、かつ抜け止めを確実にすることが可能になる。
【0052】
図6に示すように、抜止機構9eは、芯部9aが留部9cを貫通するように構成され、その貫通部分に弾性部材(例えば、板バネ)として設けられている。この弾性部材からなる抜止機構9eは、図6では芯部9aが貫通する留部9cの貫通穴内に設けられている。また、抜止機構9eに加え、図6に示す、抜止機構9fは、芯部9aの端部の外周に溝として設けられている。すなわち、溝からなる係止機構9fに対して弾性部材からなる抜止機構9eが嵌合する。この結果、抜止機構9e,9fにより芯部9aから留部9cが抜け止めされる。しかも、抜止機構9fが芯部9aの外周に形成された溝であることから、装飾体取付部Wおよび留部9cへの芯部9aの貫通を良好に行うことが可能である。なお、図には明示しないが、弾性部材からなる抜止機構9eを芯部9a側に設け、溝からなる係止機構9fを留部9cの貫通穴の内周に設けてもよい。
【0053】
なお、図4および図5に示す抜止機構9dに、図6に示す弾性部材からなる抜止機構9eを加えることで、弾性部材の弾性変形を利用して留部9cへの抜止機構9dの貫通を良好に行うことが可能になる。
【0054】
なお、図4〜図6に示す装飾体9は、芯部9aの一方の端部に装飾部(装飾留部)9bが取り付けられ、芯部9aの他方の端部に留部(装飾留部)9cが取り付けられているがこの限りではない。図には明示しないが、芯部9aの両端部に装飾部(装飾留部)9bが取り付けられる場合、一方の装飾部9bは芯部9aに対して固定され、他方の装飾部9bは留部9cに換えて芯部9aに対して着脱可能に取り付けられる。そして、この他方の装飾部9bに係り抜止機構9d,9e,9fが適用される。また、図には明示しないが、芯部9aの両端部に装飾部(装飾留部)9bが取り付けられる場合、各装飾部9bが芯部9aに対して着脱可能に取り付けられ、各他方の装飾部9bに係り抜止機構9d,9e,9fが適用されてもよい。
【0055】
このように、本実施の形態のタイヤ1では、装飾体9は、装飾留部(装飾部9b、留部9c)と芯部9aとの取り付け部分に、相互の抜け止めをする抜止機構(9d,9e,9f)を有する。
【0056】
このタイヤ1によれば、抜止機構(9d,9e,9f)により装飾留部(装飾部9b、留部9c)が芯部9aから抜け止めされるので、装飾体9がタイヤ1から容易に外れることを防ぎ、タイヤ1の外周面を装飾することが可能になる。
【0057】
図7は、本実施の形態に係る他のタイヤの子午断面一部拡大図である。図7に示すタイヤ1は、図2に示すタイヤ1に対して装飾体取付部Wの形態が異なる。この装飾体取付部Wは、図7では突起8として設けられており、装飾留部(装飾部9b、留部9c)を受け入れる凹部8aを有する。なお、図には明示しないが、凹部は図3に示すタイヤ1に対して設けられていてもよい。
【0058】
このタイヤ1によれば、凹部8aに装飾留部(装飾部9b、留部9c)が嵌り込むため、装飾体9が容易に外れることを防ぐ。特に、凹部8aに装飾留部(装飾部9b、留部9c)が嵌り込むため、装飾体9が故意に外されることを防ぐことが可能である。しかも、タイヤ1を装着した車両が走行した場合、走行中のタイヤ1の撓みや振動により、装飾留部(装飾部9b、留部9c)やタイヤ外周面(装飾体取付部W(突起8)を含む)が摩耗損傷することを低減することが可能になる。
【0059】
また、凹部8aは、装飾留部(装飾部9b、留部9c)の外形に沿う形状に形成されていることが好ましい。
【0060】
このタイヤ1によれば、凹部8aにより装飾留部(装飾部9b、留部9c)が抱き込まれるように嵌り込むため、装飾体9が容易に外れる(外される)ことを防ぐ効果、および装飾留部(装飾部9b、留部9c)やタイヤ外周面(装飾体取付部W(突起8)を含む)が摩耗損傷することを低減する効果を顕著に得ることが可能になる。
【0061】
図8は、装飾体の側面図であり、図9は、図8の装飾体を軸方向から視た図である。図8および図9に示すタイヤ1では、装飾体9は、装飾留部(装飾部9b、留部9c)が芯部9aを中心として非回転対称形状に形成されている。図8および図9では、装飾留部としての留部9cが芯部9aを中心として非回転対称形状に形成されている。すなわち、留部9c(装飾部9b)は、芯部9aの中心線Cを中心とする円形状や球形状ではなく、芯部9aの中心線Cの放射方向に留部9c(装飾部9b)の一部が突出するように形成されている。
【0062】
このタイヤ1によれば、非回転対称形状とされた装飾留部(装飾部9b、留部9c)の一部がタイヤ外周面に当接することになる。このため、芯部9aを中心とした装飾留部(装飾部9b、留部9c)の回転や、その回転に伴う芯部9aの回転を防止できる。この結果、装飾体9の回転に伴って、装飾体9やタイヤ外周面(装飾体取付部W(突起8)を含む)が摩耗損傷することを低減することが可能になる。
【0063】
図10〜図13は、装飾体の芯部の断面図である。図10〜図13に示すタイヤ1では、装飾体9は、芯部9aの断面が非回転対称形状に形成されている。すなわち、芯部9aは、自身の中心線Cを中心とする円形状の断面ではなく、中心線Cの放射方向に一部が突出するように形成されている。例えば、芯部9aは、図10に示すように断面が矩形状(長方形状や正方形状)に形成されていたり、図11に示すように断面が菱形形状に形成されていたり、図12に示すように断面が長円形状(楕円形状)に形成されていたり、図13に示すように断面が十字形状(星形形状)に形成されている。なお、装飾体取付部Wに芯部9aを貫通させる貫通穴が形成されている場合、この貫通穴の断面形状は、芯部9aの断面形状に合わせて形成される。
【0064】
このタイヤ1によれば、非回転対称形状の断面とされた芯部9aにより、自身を中心とした芯部9aの回転や、その回転に伴う装飾留部(装飾部9b、留部9c)の回転を防止できる。この結果、装飾体9の回転に伴って、装飾体9やタイヤ外周面(装飾体取付部W(突起8)を含む)が摩耗損傷することを低減することが可能になる。
【0065】
図14および図15は、装飾体の側面図である。図14および図15に示すタイヤ1では、装飾体9は、芯部9aが複数設けられている。例えば、芯部9aは、図14に示すように、一方の端部近傍から二股に分岐して形成されていたり、図15に示すように分割した複数(本実施の形態では2つ)で形成されている。複数の芯部9aは、各端部に装飾留部(装飾部9b、留部9c)が取り付けられる。
【0066】
このタイヤ1によれば、複数設けられた芯部9aにより、芯部9aの回転や、その回転に伴う装飾留部(装飾部9b、留部9c)の回転を防止できる。この結果、装飾体9の回転に伴って、装飾体9やタイヤ外周面(装飾体取付部W(突起8)を含む)が摩耗損傷することを低減することが可能になる。
【0067】
また、本実施の形態のタイヤ1では、図2〜図9、図14、図15に示すように、装飾体9は、装飾留部(装飾部9b、留部9c)の少なくともタイヤ外周面に接触し得る部分の外面が滑らかに形成されている。すなわち、装飾留部(装飾部9b、留部9c)のタイヤ外周面に接触し得る部分の外面が鋭利に突出することなく、湾曲形状や平坦形状により滑らかに形成されている。
【0068】
このタイヤ1によれば、装飾留部(装飾部9b、留部9c)がタイヤ外周面(装飾体取付部W(突起8)を含む)に接触しても当該タイヤ外周面を傷つけることを防止することが可能になる。
【0069】
また、本実施の形態のタイヤ1は、タイヤ外周面がゴム材にて形成されており、装飾体取付部Wをなすゴム材がタイヤ外周面のゴム材よりも高い硬度を有し、かつ室温(20℃)におけるJIS−A硬度が55〜95の範囲であることがこのましい。
【0070】
このタイヤ1によれば、芯部9aが貫通するゴム硬度を他と比較して高くすることで、装飾体9の動きを抑えることになる。このため、装飾体9やタイヤ外周面(装飾体取付部W(突起8)を含む)が摩耗損傷することを低減することが可能になる。しかも、芯部9aが貫通するゴム硬度を他と比較して高くすることで、芯部9aの貫通箇所を基点として装飾体取付部W(突起8)をちぎれ難くすることが可能になる。
【0071】
また、本実施の形態のタイヤ1では、装飾体取付部Wは、突起として形成されていることが好ましい。突起は、図16のタイヤの側面図に示すように、タイヤサイド部Sにおいてタイヤ径方向に延在するとともに、タイヤ周方向に複数並設されたものや、図17のタイヤの側面図に示すように、タイヤサイド部Sにおいてタイヤ周方向に連続して環状に設けられたものや、図には明示しないが、タイヤサイド部Sにおいてタイヤ周方向に断続して設けられたものがある。また、突起は、図には明示しないが、図1で示す主溝22内に形成されたものもある。
【0072】
このように、装飾体取付部Wを突起として形成することにより、装飾体9を容易に取り付けることが可能になる。
【0073】
また、装飾体取付部Wの突起をタイヤサイド部Sに設けることにより、走行時に突起が邪魔にならず、装飾体9が脱落することを防ぐことが可能になる。
【0074】
また、上述した突起8のように装飾体取付部Wを、リムを保護するようにタイヤ周方向に沿って形成されたリムプロテクトバーを用いることで、撓みや変形の少ないリム近傍の箇所に装飾体9を設け、装飾体9やタイヤ外周面(装飾体取付部W(突起8)を含む)の摩耗損傷を低減したり、縁石などへ装飾体9が衝突することを低減したりすることが可能になる。
【0075】
ところで、上述した実施の形態では、タイヤ1を空気入りタイヤとして説明したが、その他、中実のタイヤや、ゴム製以外のタイヤなどのあらゆるタイヤに適用することが可能である。また、空気入りタイヤとしても、ラジアルタイヤに限らない。
【符号の説明】
【0076】
1 タイヤ
8 突起
8a 凹部
9 装飾体
9a 芯部
9b 装飾部(装飾留部)
9c 留部(装飾留部)
9d 抜止機構
9e 抜止機構
9f 抜止機構
S タイヤサイド部
W 装飾体取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面以外のタイヤ外周面にて装飾体の一部を貫通させる装飾体取付部を有し、前記装飾体は、前記装飾体取付部に貫通される芯部と、前記装飾体取付部からタイヤ外周面側に突出した前記芯部の両端部に取り付けられる装飾留部とを有することを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記装飾体は、前記装飾留部と前記芯部との取り付け部分に、相互の抜け止めをする抜止機構を有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記装飾体取付部は、前記装飾留部を受け入れる凹部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記凹部は、前記装飾留部の外形に沿う形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記装飾体は、前記装飾留部が前記芯部を中心として非回転対称形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記装飾体は、前記芯部の断面が非回転対称形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記装飾体は、前記芯部が複数設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれ一つに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記装飾体は、前記装飾留部の少なくともタイヤ外周面に接触し得る部分の外面が滑らかに形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項9】
タイヤ外周面がゴム材にて形成されており、前記装飾体取付部をなすゴム材が前記タイヤ外周面のゴム材よりも高い硬度を有し、そのJIS−A硬度が55〜95の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記装飾体取付部は、突起として形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記突起は、タイヤサイド部に形成されていることを特徴とする請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記突起は、装着されるリムを保護するようにタイヤ周方向に沿って形成されたリムプロテクトバーであることを特徴とする請求項10に記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−95376(P2013−95376A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242632(P2011−242632)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)