説明

タイル、ユニットタイル、タイル製造装置、タイルの製造方法、タイルの施工方法、ユニットタイルの施工方法及びタイルの施工構造

【課題】 溝部が形成されたタイルで、該溝部に目地材料を充填する塗り目地法によって小型のタイルが配設されているように見せることができるタイルにおいて、溝部に充填された目地材料の脱落を防止することができるタイルや該タイルを用いたユニットタイルを提供する。
【解決手段】 タイルAの表側の面には、溝部20、22が設けられ、溝部20、22はアリ溝状に形成されている。タイルAの裏側の面にもアリ溝状の溝部60、62、64が設けられている。タイルAにおいて突状部は三列に形成され、各列においては、凹部40、42、44によって複数の突状部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルとユニットタイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、1つの辺に平行な凹条の溝部を有するタイルを下地に張り付けて塗り目地する方法がある(特許文献1)。このような方法を用いることにより、目地材料がタイル同士の目地間隔だけでなく凹条にも充填されるので、タイルを小型化することなく目地の条数を増やすことができ、また、タイル張り付けの手間が増えないようにすることができる。
【特許文献1】特開2001−123630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に開示されているタイルにおいては、タイルの端部に形成された切欠形状部の形状に合わせるために、タイルに設けられている凹条が逆台形断面形状を呈しているので、塗り目地を行うことにより凹条に充填された目地材料が凹条から脱落しやすいという問題がある。特許文献1に示すような塗り目地法は、タイルを小型化することなく、小さなタイルが細かく配設されているように見せるものであることから、凹条に充填されていた目地材料が脱落すると、施工面の見栄えが悪くなり、また、観者にとっては、小さなタイルが配設されているのではなく、凹条が形成されたタイルが設けられていることが分かってしまい、観者に興ざめ感を与えてしまう。
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする問題点は、溝部が形成されたタイルで、該溝部に目地材料を充填する塗り目地法によって小型のタイルが配設されているように見せることができるタイルにおいて、溝部に充填された目地材料の脱落を防止することができるタイルや該タイルを用いたユニットタイルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、タイルであって、タイルの表側の面に、アリ溝状の溝部が設けられていることを特徴とする。
【0006】
この第1の構成のタイルにおいては、タイルの裏面側を下地面に向けて施工し、タイルの表側の面の溝部に目地材料を充填する。本発明のタイルにおいては、タイルの表側の面に溝部が設けられているので、この溝部に目地材料を充填することにより、タイルを小型化することなく、複数のタイルが配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えない。また、溝部がアリ溝状に形成されているので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【0007】
また、第2には、タイルであって、タイルの表側の面に、突状部が複数に設けられ、突状部間の溝部がアリ溝状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
この第2の構成のタイルにおいては、タイルの裏面側を下地面に向けて施工し、タイルの表側の面の溝部に目地材料を充填する。本発明のタイルにおいては、タイルの表側の面に溝部が設けられているので、この溝部に目地材料を充填することにより、タイルを小型化することなく、複数のタイルが配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えない。また、溝部がアリ溝状に形成されているので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【0009】
また、第3には、タイルであって、タイルの表側の面に、突状部が複数列に設けられ、突状部間の溝部がアリ溝状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この第3の構成のタイルにおいては、タイルの裏面側を下地面に向けて施工し、タイルの表側の面の溝部に目地材料を充填する。本発明のタイルにおいては、タイルの表側の面に溝部が設けられているので、この溝部に目地材料を充填することにより、タイルを小型化することなく、タイルが複数列に配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えない。また、溝部がアリ溝状に形成されているので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【0011】
また、第4には、上記第3の構成において、突状部は平面視において帯状を呈し、各列における突状部は互いに平行に形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、第5には、上記第3又は第4の構成において、上記タイルは、方形状のタイルであり、上記突状部と上記溝部とは、タイルの一辺と平行に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、第6には、上記第3から第5までのいずれかの構成において、複数の突状部におけるある列の突状部は、凹部を介して複数の突状部により構成されていることを特徴とする。このように、ある列の突状部を凹部を介して複数の突状部により構成することにより、タイルの表面に細かな表現を行なうことが可能となる。なお、この第6の構成において、凹部の底面部は、アリ溝状の溝部の底面部と同一平面上にあるようにするのが好ましい。
【0014】
また、第7には、上記第2から第6までのいずれかの構成において、突状部の側面部で、タイルの周縁部に沿って設けられた側面部は、突状部側とは反対側に傾斜して形成されていることを特徴とする。よって、2つのタイルを並べて施工した後に、両タイル間の隙間に目地材料を充填した場合でも、突状部の側面部が傾斜していることにより2つのタイルの間の対向した隙間はアリ溝状に形成されるために、目地材料の脱落を防止することができる。
【0015】
なお、この第7の構成を「タイルの表側の相対する辺部に沿った角部には、切欠部で、複数列の突状部において端部に位置する突状部における側面部と該側面部の下端から連設された底面部により形成された切欠部が設けられ、該切欠部を構成する側面部は、該切欠部を構成する底面部側に傾斜して形成されていることを特徴とする」としてもよい。
【0016】
また、第8には、上記第1から第7までのいずれかの構成において、タイルが乾式加圧成形により形成されたものであることを特徴とする。これにより、タイルの表面の凹凸形状を細かく表現することが可能となり、湿式工法に比べて細かな表現が可能となる。
【0017】
また、第9には、上記第1から第8までのいずれかの構成において、タイルの裏側の面には、アリ溝状の溝部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、第10には、ユニットタイルであって、台紙と、該台紙に貼付された複数のタイルであって、第1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9の構成のタイルと、を有することを特徴とする。
【0019】
この第10の構成のユニットタイルにおいては、台紙の側を下地面に向けて施工し、タイルの表側の面の溝部に目地材料を充填する。本発明のユニットタイルにおいては、タイルの表側の面に、アリ溝状の溝部が設けられているので、この溝部に目地材料を充填することにより、タイルを小型化することなく、タイルが複数列に配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えない。また、溝部がアリ溝状に形成されているので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【0020】
また、第11には、タイルを乾式加圧成形により製造するためのタイル製造装置であって、上型と下型とを有し、上型がアリ溝を形成するためのアリ溝形成手段を有するとともに、下型がアリ溝を形成するためのアリ溝形成手段を有することを特徴とする。
【0021】
この第11の構成のタイル製造装置においては、上型と下型の両方にアリ溝形成手段が設けられているので、製造されるタイルの表側の面と裏側の面の両方にアリ溝が形成される。製造されたタイルは、タイルの裏面側を下地面に向けて施工し、タイルの表側の面の溝部に目地材料を充填する。タイルの表側の面にアリ溝が設けられているので、このアリ溝に目地材料を充填することにより、タイルを小型化することなく、複数のタイルが配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えない。また、アリ溝であるので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【0022】
また、第12には、タイルの製造方法であって、第1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9の構成のタイルを乾式加圧成形により製造することを特徴とする。このようにタイルを乾式加圧成形により製造することにより、タイルの表面の凹凸形状を細かく表現することが可能となり、湿式工法に比べて細かな表現が可能となる。
【0023】
また、第13には、タイルの施工方法であって、上記第1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9の構成のタイルを複数並べて下地面に施工する貼付け工程で、タイルの裏側の面を下地面側に向けて貼り付けて施工する貼付け工程と、該貼付け工程により施工されたタイルの表側の面に設けられた溝部に目地材料を充填する充填工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
この第13の構成のタイルの施工方法によれば、タイルの表側の面に、溝部が設けられているので、この溝部に目地材料を充填することにより、タイルを小型化することなく、複数のタイルが配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えない。また、溝部がアリ溝状に形成されているので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【0025】
また、第14には、タイルの施工方法であって、上記第10の構成のユニットタイルを下地面に施工する貼付け工程で、ユニットタイルの台紙が設けられている側の面を下地面側に向けて貼り付けて施工する貼付け工程と、該貼付け工程により施工されたユニットタイルにおけるタイルの表側の面に設けられた溝部に目地材料を充填する充填工程と、を有することを特徴とする。
【0026】
この第14の構成のタイルの施工方法によれば、タイルの表側の面に溝部が設けられているので、この溝部に目地材料を充填することにより、タイルを小型化することなく、複数のタイルが配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えない。また、溝部がアリ溝状に形成されているので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【0027】
また、第15には、タイルの施工構造であって、上記第1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9の構成のタイル及び/又は上記第10の構成のユニットタイルがタイルの裏側の面を下地面側に向けて貼り付けて施工されていて、タイルの表側の面に設けられた溝部には、目地材料が充填されていることを特徴とする。
【0028】
この第15の構成のタイルの施工構造においては、タイルの表側の面に溝部が設けられ、この溝部に目地材料を充填されているので、タイルを小型化することなく、複数のタイルが配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えない。また、溝部がアリ溝状に形成されているので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に基づくタイル、ユニットタイル、タイルの施工方法、ユニットタイルの施工方法及びタイルの施工構造によれば、タイルの表側の面に溝部が設けられているので、この溝部に目地材料を充填することにより、タイルを小型化することなく、複数のタイルが配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えない。また、溝部がアリ溝状に形成されているので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明においては、凹条が形成されたタイルで、該凹条に目地材料を充填する塗り目地法によって目地の条数を増やすことができるタイルにおいて、凹状に充填された目地材料の脱落を防止することができるタイルや該タイルを用いたユニットタイルを提供するという目的を以下のようにして実現した。
【0031】
本発明に基づくタイルAは、図1〜図3に示すように形成され、平板状の本体部10に溝部や凹部を形成したものであり、具体的には、平板状の直方体形状の本体部10に、溝部20と、溝部22と、切欠部30と、切欠部32と、凹部40と、凹部42と、凹部44と、溝部60と、溝部62と、溝部64とを形成したものである。つまり、タイルAの表側の面に、溝部20と、溝部22と、切欠部30と、切欠部32と、凹部40と、凹部42と、凹部44とが形成され、また、タイルAの裏側の面に、溝部60と、溝部62と、溝部64とが形成されている。
【0032】
ここで、溝部20は、タイルAの長辺に平行に(つまり、X1−X2方向に)形成された凹条であり、タイルAの一方の短辺側の端部から他方の短辺側の端部にまで形成されている。
【0033】
また、溝部22は、タイルAの長辺に平行に(つまり、X1−X2方向に)形成された凹条であり、タイルAの一方の短辺側の端部から他方の短辺側の端部にまで形成されている。この溝部22は、溝部20とは所定の間隔を介して形成されている。
【0034】
これらの溝部20や溝部22は、アリ溝状に形成されていて、溝部の手前側から奥側(つまり、溝部の底面側)に行くに従い、溝部の幅が大きくなるように形成されている。例えば、溝部20は、図3に示すように、側面部20aと、側面部20bと、底面部20cとから形成され、側面部20aと側面部20bと底面部20cとはともに平面状を呈している。そして、側面部20aと側面部20bは、底面部20c側に傾斜していて、底面部20cと側面部20aのなす角度α1と底面部20cと側面部20bのなす角度α2は、ともに鋭角となっている。なお、角度α1と角度α2とは略同一(同一としてもよい)となっている。溝部22も溝部20と同じ構成となっている。つまり、溝部22の側面部22aと側面部22bは、底面部22c側に傾斜している。また、溝部20の底面部20cと溝部22の底面部22cとは同一平面上に存在する(つまり、底面部20cと底面部22cとはZ1−Z2方向に同じ高さに形成されている)。溝部20、22の横断面形状は、左右対称の台形形状を呈しているといえる。
【0035】
また、切欠部30は、タイルAの長辺側で上面側の一方の角部に形成されている。すなわち、この切欠部30は、図3に示すように、突状部50aの側面部30aと底面部30bとから形成され、側面部30aと底面部30bとはともに平面状を呈している。そして、側面部30aは、底面部30b側に傾斜していて、側面部30aと底面部30bとがなす角度α3は、鋭角となっている。つまり、側面部30aは、突状部50a側とは反対側に傾斜している。この角度α3は、角度α1や角度α2と略同一(同一としてもよい)となっている。なお、底面部30bは、底面部20c、22cと同一平面上に存在する(つまり、底面部30bと底面部20c、22cとはZ1−Z2方向に同じ高さに形成されている)。
【0036】
なお、切欠部30は、突状部50bにおける側面部(つまり、Y2側の側面部)と該側面部の下端から連設された底面部によっても形成されているが、この突状部50bにおける切欠部30も上記の突状部50aにおける切欠部30と同じ構成である。
【0037】
また、切欠部32は、タイルAの長辺側で上面側の他方の角部に形成されている。すなわち、この切欠部32は、図3に示すように、突状部54aの側面部32aと底面部32bとから形成され、側面部32aと底面部32bとはともに平面状を呈している。そして、側面部32aは、底面部32b側に傾斜していて、側面部32aと底面部32bとがなす角度α4は、鋭角となっている。この角度α4は、角度α1や角度α2や角度α3と略同一(同一としてもよい)となっている。なお、底面部32bは、底面部20c、22c、30bと同一平面上に存在する(つまり、底面部32bと底面部20c、22c、30bとはZ1−Z2方向に同じ高さに形成されている)。
【0038】
なお、切欠部32は、突状部54bにおける側面部(つまり、Y1側の側面部)と該側面部の下端から連設された底面部によっても形成されているが、この突状部54bにおける切欠部32も上記の突状部54aにおける切欠部32と同じ構成である。
【0039】
また、凹部40は、切欠部30と溝部20の間の突状部に形成されていて、これにより、切欠部30と溝部20の間の突状部の一部が欠切された形状となっている。この凹部40の底面は少なくともその一部が平面状となっていて、溝部20の底面部20cや切欠部30の底面部30bと同一平面を形成している。
【0040】
この凹部40によって、切欠部30と溝部20の間には、突状部50aと突状部50bとが設けられている。つまり、底面部20cや底面部30bの位置から突状部50aや突状部50bが突出して形成されている。なお、突状部50aと突状部50bの上面は、平面状を呈している。
【0041】
また、凹部42は、溝部20と溝部22の間の突状部に形成されていて、これにより、溝部20と溝部22の間の突状部の一部が欠切された形状となっている。この凹部42の底面は少なくともその一部が平面状となっていて、溝部20の底面部20cや溝部22の底面部22cと同一平面を形成している。
【0042】
この凹部42によって、溝部20と溝部22の間には、突状部52aと突状部52bとが設けられている。つまり、底面部20cや底面部22cの位置から突状部52aや突状部52bが突出して形成されている。なお、突状部52aと突状部52bの上面は、平面状を呈している。
【0043】
また、凹部44は、切欠部32と溝部22の間の突状部に形成されていて、これにより、切欠部32と溝部22の間の突状部の一部が欠切された形状となっている。この凹部44の底面は少なくともその一部が平面状となっていて、溝部22の底面部22cや切欠部32の底面部32bと同一平面を形成している。
【0044】
この凹部44によって、切欠部32と溝部22の間には、突状部54aと突状部54bとが設けられている。つまり、底面部22cや底面部32bの位置から突状部54aや突状部54bが突出して形成されている。なお、突状部54aと突状部54bの上面は、平面状を呈している。
【0045】
なお、上記のように、タイルAには、突状部50a、50b、52a、52b、54a、54bが形成されているが、各突状部の幅(つまり、Y1−Y2方向の幅)は、略同一(同一としてもよい)に形成されている。
【0046】
また、溝部60は、タイルAの長辺に平行に(つまり、X1−X2方向に)形成された凹条であり、タイルAの一方の短辺側の端部から他方の短辺側の端部にまで形成されている。
【0047】
また、溝部62は、タイルAの長辺に平行に(つまり、X1−X2方向に)形成された凹条であり、タイルAの一方の短辺側の端部から他方の短辺側の端部にまで形成されている。この溝部62は、溝部60とは所定の間隔を介して形成されている。
【0048】
また、溝部64は、タイルAの長辺に平行に(つまり、X1−X2方向に)形成された凹条であり、タイルAの一方の短辺側の端部から他方の短辺側の端部にまで形成されている。この溝部64は、溝部62とは所定の間隔を介して形成されている。
【0049】
これらの溝部60や溝部62や溝部64は、アリ溝状に形成されていて、溝部の手前側から奥側(つまり、溝部の底面側)に行くに従い、溝部の幅が大きくなるように形成されている。例えば、溝部60は、図3に示すように、側面部60aと、側面部60bと、底面部60cとから形成され、側面部60aと側面部60bと底面部60cとはともに平面状を呈している。そして、側面部60aと側面部60bは、底面部60c側に傾斜していて、底面部60cと側面部60aのなす角度β1と底面部60cと側面部60bのなす角度β2は、ともに鋭角となっている。なお、角度β1と角度β2とは略同一(同一としてもよい)となっている。溝部62や溝部64も溝部60と同じ構成となっている。つまり、溝部62の側面部62aと側面部62bは、底面部62c側に傾斜しており、また、溝部64の側面部64aと側面部64bは、底面部64c側に傾斜している。また、溝部60の底面部60cと溝部62の底面部62cと溝部64の底面部64cとは同一平面上に存在する(つまり、底面部60cと底面部62cと底面部64cとはZ1−Z2方向に同じ高さに形成されている)。溝部60、62、64の横断面形状は、左右対称の台形形状を呈しているといえる。なお、溝部60、62、64は等間隔に配設され、溝部60と溝部62間の距離と、溝部62と溝部64間の距離とは略同一(同一としてもよい)に形成されている。
【0050】
また、タイルAの側面は平面状に形成されている。つまり、タイルAにおけるY1側の端面と、Y2側の端面と、X1側の端面と、X2側の端面とは平面状に形成されている。
【0051】
以上のように、本実施例のタイルAにおいては、タイルAの表側と裏側には、アリ溝が形成され、特に、表側と裏側に複数のアリ溝が形成されているといえる。
【0052】
また、タイルAは、図1において、溝部20、22の底面部の位置から下側を本体部とした場合には、本体部の上面に突状部50a、50b、52a、52b、54a、54bが設けられ、また、本体部の下面に溝部60、62、64が設けられた構成であるといえる。
【0053】
次に、上記構成のタイルAを用いたユニットタイルについて説明する。ユニットタイルPは、図4に示すように、複数のタイルAの裏側面(溝部60、62、64が形成された側の面)に台紙を貼付したものである。すなわち、図4に示す例においては、一列に6つのタイルAが二列に配された状態で、各タイルAの裏面側に台紙100が貼付されている。
【0054】
上記構成のタイルAの製造方法について簡単に説明すると、上記構成のタイルAは、上記のように、凹部40〜44を有する構成であるので、湿式成形(押出成形法)で形成することはできず、乾式加圧成形(乾式プレス成形としてもよい)により形成することになる。なお、アリ溝状の溝部20、22、60、62、64については、ゴム等の弾性体を用いてプレス成形することにより、プレス成形の際に弾性体がつぶれて両側が突出することにより形成することができる。つまり、タイルAを製造するための製造装置は、下型と枠型とで囲まれた成形空間内にタイルの原料粉末を充填して上型の下降によってタイル形状に成形するものであるが、この上型と下型とにアリ溝形成手段としての該弾性体が設けられていることになる。
【0055】
次に、上記構成のタイルAやユニットタイルPの施工方法について説明する。タイルAを施工する面を有する下地200(この下地200は、具体的には、壁面や床面や天井面となる。)にモルタル等の接着剤210を塗布し、その後、接着剤210を塗布した面にユニットタイルPを台紙ごと貼り付ける。なお、ユニットタイルPにおける台紙100を下地面に向けて施工する。このようにして、ユニットタイルPを下地200に固着させる。なお、ユニットタイルPを貼り付けるものとして説明したが、タイルAを縦及び横方向に並べて貼り付けるようにしてもよい。
【0056】
その後、タイルAの表面に目地材料を塗布する。つまり、スラリー状の目地材料をタイルAの表面の全面に塗布して塗り伸ばし、目地材料をタイルAの溝部20、22や、凹部40、42、44や、各タイルA間の隙間に充填する。
【0057】
上記のように、目地材料の充填が完了したら、タイルAの表面に残った目地材料を拭き取る。つまり、タイルAにおける突状部50a、50b、52a、52b、54a、54bの表面に残った目地材料を拭き取る。このようにして、突状部50a、50b、52a、52b、54a、54bの表面を露出させる。
【0058】
以上のように施工することにより、目地材料によって目地部250が形成され、細長状のタイルが細かく施工されているように演出することができ、タイルを小型化することなく目地の条数を増やすことができ、また、細かいタイルを一々施工する手間を省くことができる。
【0059】
また、特に、本実施例のタイルAにおいては、タイルAの表側に設けられた溝部20、22がアリ溝状に形成され、さらに、2つのタイルAが並設された際にも、切欠部30と切欠部32とが向き合って形成された隙間がアリ溝状に形成される(つまり、切欠部30、32の側面部が底面部側に傾斜しているので、アリ溝状になる)ので、目地材料の脱落のおそれを小さくすることができ、施工面の見栄えが悪くなるのを防止でき、また、観者に対して、小さなタイルが配設されているのではなく、凹条が形成されたタイルが設けられていることが分かってしまうことによる興ざめ感を与えるのを防止することができる。
【0060】
また、本実施例のタイルAにおいては、溝部間に形成された突出部や溝部と切欠部間に形成された突出部に凹部40、42、44が形成されているので、タイルAの表面を細かく演出することができる。つまり、タイルAを湿式工法ではなく乾式加圧成形により形成することにより、湿式工法により製造する場合に比べて、タイルAの表面を細かく演出することができる。つまり、湿式工法の場合には、単に溝部や切欠部を形成した形状のものしか製造できないが、乾式加圧成形を採用することにより、タイルAの表面に細かい演出を施すことができる。なお、タイルAを凹部40、42、44が形成されていない形状とする場合には、湿式工法により形成することが可能である。
【0061】
なお、上記の説明においては、タイルAの表側の面には、突状部が三列に形成されているものを例に説明したが、これには限られず、突状部が複数列に形成されているものであればよい。なお、図1に示す例において、突状部を二列とした場合には、表側の面に形成された溝部は一列となる。
【0062】
また、上記の説明においては、タイルAの表側の面に突状部が複数列形成されているものとして説明したが、突状部が複数形成されたものであればよく、その場合には、突状部間の溝部はアリ溝状に形成され、突状部における側面部で、タイルの周縁部側の側面部は、突状部側とは反対側に傾斜していることになる。
【0063】
つまり、図7に示すタイルBにおいては、突状部300、302、304が形成されているが、突状部300と突状部302、304間の溝部310や、突状部302と突状部304間の溝部312はアリ溝状に形成されている。また、突状部300、302、304における側面部で、タイルBの周縁部側の側面部300a、300b、302a、302b、304aは、各突状部側とは反対側(つまり、周縁部側)に傾斜した構成となる。
【0064】
このタイルBにおいても、溝部310、312や、タイルBを並設した場合のタイル間の隙間に目地材料を充填することにより、タイルを小型化することなく、複数のタイルが配設されているように見せることができ、タイル張り付けの手間も増えないようにすることができる。また、溝部がアリ溝状に形成されているので、充填された目地材料が脱落するおそれを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例に基づくタイルの斜視図で、表側の面から見た構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に基づくタイルの斜視図で、裏側の面から見た構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例に基づくタイルの端面図である。
【図4】本発明の実施例に基づくユニットタイルの平面図で、台紙側から見た構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例に基づくユニットタイルの施工方法を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例に基づくユニットタイルの施工方法を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施例に基づくタイルを示す平面図である。
【符号の説明】
【0066】
A、B タイル
P ユニットタイル
10 本体部
20、22、60、62、64、310、312 溝部
30、32 切欠部
40、42、44 凹部
50a、50b、52a、52b、54a、54b、300、302、304 突状部
100 台紙
200 下地
250 目地部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイルであって、
タイルの表側の面に、アリ溝状の溝部が設けられていることを特徴とするタイル。
【請求項2】
タイルであって、
タイルの表側の面に、突状部が複数に設けられ、突状部間の溝部がアリ溝状に形成されていることを特徴とするタイル。
【請求項3】
タイルであって、
タイルの表側の面に、突状部が複数列に設けられ、突状部間の溝部がアリ溝状に形成されていることを特徴とするタイル。
【請求項4】
突状部は平面視において帯状を呈し、各列における突状部は互いに平行に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のタイル。
【請求項5】
上記タイルは、方形状のタイルであり、上記突状部と上記溝部とは、タイルの一辺と平行に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載のタイル。
【請求項6】
複数の突状部におけるある列の突状部は、凹部を介して複数の突状部により構成されていることを特徴とする請求項3又は4又は5に記載のタイル。
【請求項7】
突状部の側面部で、タイルの周縁部に沿って設けられた側面部は、突状部側とは反対側に傾斜して形成されていることを特徴とする請求項2又は3又は4又は5又は6に記載のタイル。
【請求項8】
タイルが乾式加圧成形により形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7に記載のタイル。
【請求項9】
タイルの裏側の面には、アリ溝状の溝部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8に記載のタイル。
【請求項10】
ユニットタイルであって、
台紙と、
該台紙に貼付された複数のタイルであって、請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9に記載のタイルと、
を有することを特徴とするユニットタイル。
【請求項11】
タイルを乾式加圧成形により製造するためのタイル製造装置であって、
上型と下型とを有し、上型がアリ溝を形成するためのアリ溝形成手段を有するとともに、下型がアリ溝を形成するためのアリ溝形成手段を有することを特徴とするタイル製造装置。
【請求項12】
タイルの製造方法であって、
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9に記載のタイルを乾式加圧成形により製造することを特徴とするタイルの製造方法。
【請求項13】
タイルの施工方法であって、
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9に記載のタイルを複数並べて下地面に施工する貼付け工程で、タイルの裏側の面を下地面側に向けて貼り付けて施工する貼付け工程と、
該貼付け工程により施工されたタイルの表側の面に設けられた溝部に目地材料を充填する充填工程と、
を有することを特徴とするタイルの施工方法。
【請求項14】
タイルの施工方法であって、
請求項10に記載のユニットタイルを下地面に施工する貼付け工程で、ユニットタイルの台紙が設けられている側の面を下地面側に向けて貼り付けて施工する貼付け工程と、
該貼付け工程により施工されたユニットタイルにおけるタイルの表側の面に設けられた溝部に目地材料を充填する充填工程と、
を有することを特徴とするユニットタイルの施工方法。
【請求項15】
タイルの施工構造であって、
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9に記載のタイル及び/又は請求項10に記載のユニットタイルがタイルの裏側の面を下地面側に向けて貼り付けて施工されていて、タイルの表側の面に設けられた溝部には、目地材料が充填されていることを特徴とするタイルの施工構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−274741(P2006−274741A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98486(P2005−98486)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(593100503)杉江製陶株式会社 (4)
【Fターム(参考)】