説明

タイルユニット

【課題】 複数枚のタイルが、所定の間隔で配列され、該タイルのおもて面に紙を糊貼りして連結されてなるタイルユニットにおいて、紙とタイルの接着力を上げると共に、タイル貼り施工で紙を剥した後の糊の洗いで糊落ちを改善したタイルユニット及びその技術を提供することを目的とする。
【解決手段】 タイルのおもて面に紙を糊貼りして、複数枚のタイルを連結したタイルユニットにおいて、前記紙貼り接着用のデンプン糊にデキストリンを混合する。デンプン糊に対するデキストリンの添加率は、0.5重量%〜10重量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のタイルのおもて面に紙貼りして連結したタイルユニットにおいて、紙とタイルの接着力を上げると共に、タイル貼り施工で紙を剥した後の糊の洗いで糊落ちを改善したタイルユニット及びその技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種建造物の壁面等のタイル貼り施工では、施工作業を容易且つ短納期化するため、複数枚のタイルを連結したタイルユニットが使用されることが多い。このうち、特に外装壁に使用するタイルユニットは、タイルのおもて面にデンプン糊を用いて紙貼りしたものが一般的である。
ここで、前記紙貼りタイルユニットは、タイル貼り施工し紙を剥した後に、タイルおもて面に残った糊を、ブラシ等でこすり水をかけて洗い流す作業を入れている。
ところで、近年のタイル施工では、工期の短縮や周辺への環境の配慮などから、糊を洗い流す作業の簡略化や洗いに使用する水の節約が求められている。
【0003】
しかしながら、糊を洗い流す作業を簡略したり、洗いに使用する水を節約すると、洗いが不足して糊が残る場合があり、このような場合、糊が乾燥後に白い汚れとして目立ち、タイル施工面の外観を著しく損なうことになる。
【0004】
そこで、特許文献1では、建築仕上げ材ユニットに用いる水溶性糊に二糖類の糖、特にトレハロースを含有させ、水溶性糊の水による溶解度を高め、建築仕上げ材から連結材を剥がし易く、また、建築仕上げ材の表面に水溶性糊を大量に残存させないようにすることを示している。
【特許文献1】特開2001−240827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トレハロースを含有させる方法は、確かに、水溶性糊の水による溶解度を高める効果はあるものの、タイルと紙との接着力を弱めるという問題があった。
【0006】
特に、図2のようなスクラッチ面状等、凹凸面状のあるタイルにおもて紙貼りする場合で、タイルの凸部近辺の紙が接する実接着面積が少ない場合には、凸部近辺のみで紙との接着を持たせるためには、接着力が弱すぎ、ユニットの一端を持ち上げた際にタイルが落ち易くなる。
これを改善するためには、凹部にも糊を埋め接着面積を増やし紙貼りする必要があるが、前記方法では、糊量が多く必要となる。糊量が多いことは、コストアップになるだけでなく、洗い時に多量の水が必要となり、反って、糊落としに時間がかかることになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明は、複数枚のタイルが、所定の間隔で配列され、該タイルのおもて面に紙を糊貼りして連結されてなるタイルユニットにおいて、前記紙貼り接着用のデンプン糊にデキストリンを混合することを特徴とする。
【0008】
紙を糊貼りするために使用されるデンプン糊にデキストリンを混合することにより、乾燥時のユニット接着性が向上すると共に、タイル施工後の洗いで糊が落ち易くなる。
【0009】
また、乾燥時のユニット接着性が向上することより、糊の使用量を減らすことができるため、比較的少ない水量でも糊を洗い流すことができるようになる。よって、洗いが容易になる。
【0010】
本発明に利用可能なデキストリンは、デンプンよりも分子量の小さい多糖であり、分子量800〜10万の糖類、または分子量800〜10万の糖類の混合物である。すなわち、前記範囲内の、特定の分子量の糖類単体でも良く、複数の種類の糖類を混合したものでも良い。また、天然物由来の、分子量分布を有するものも、上記「混合物」に含まれるものとする。接着力を確保するために、デキストリンに含まれる四糖類以下の低分子量の糖類は2重量%以下であることが好ましく、また、二糖類、単糖類は1重量%未満であることが好ましい。
【0011】
前記デキストリンは、デンプンを薬品処理、酵素処理、加熱等で部分的に加水分解したもの、エーテル化やエステル化などの変性処理を施したもの、シクロデキストリンなどが利用可能である。
【0012】
ここで、前記デンプン糊に対する前記デキストリンの添加率は、0.5重量%〜10重量%が良い。さらに好ましくは、前記デンプン糊に対する前記デキストリンの添加率を、1〜7重量%とする。添加率が10重量%を越す場合には、水湿し後の紙剥がし時にも紙の付着力が強く、紙が剥がし難くなり、また、0.5重量%より少ない場合は効果が少ない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば複数枚のタイルのおもて面に紙貼りして連結したタイルユニットにおいて、紙とタイルの接着力を上げると共に、タイル貼り施工で紙を剥した後の糊の洗いで糊落ちを改善したタイルユニットを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は実施例におけるタイルユニットの平面図で、図2は紙貼り部の断面図を示す。図中において、1はタイル、2は紙、3は糊を示す。実施例のタイルは、スクラッチ(引っかき傷を付けた)面状の45三丁(45mm×145mm)を使用し、1/2ずらしの馬貼りでタイル1同士が一定の目地間隔になるよう空けて整列させ、糊3を介して200mm×280mmの紙2により連結したものである。
【0015】
実施例の糊は、デンプン糊10kgに対して、デキストリンを300g(3%)及び、水を約7kg混合している。混合の順序は、まず、あらかじめ約1kgのお湯で溶かしたデキストリン300gをデンプン糊に加え、これに水をさらに約6kg加えて撹拌混合した。ここで、デキストリンは、日澱化学社製の「赤玉デキストリン」を使用した。このデキストリンに含まれる二糖類は0.5重量%未満である。
【0016】
実施例の紙2(200mm×280mm)の上に、糊3を約7g均一に塗布した後、整列した12枚のタイルの上に糊がタイル側にして紙を載せ、ゴムローラーで押しならし接着した。その後、約70℃の乾燥機で約5分間乾燥した。乾燥後、タイルユニットの一端を持ち上げ、タイルが落ちないかどうかを確認した。
【0017】
比較例1として、デンプン糊と水のみからなるもの、及び、比較例2として、デキストリンの代わりにトレハロース3%を加えたものを用意した。
また、トレハロース3%では、前記の糊を紙側のみに塗布する方法では、タイルユニットの一端を持ち上げた時にタイルが落ち易いため、比較例3として、トレハロース3%を添加した糊を紙側のみでなく、タイル側にも約7g塗布し、タイル側と紙側の糊と合わせて、1タイルユニット当たり約14g塗布したものを用意した。これは、トレハロース3%添加した高濃度の糊(デンプン糊に対し、トレハロース:3%、水:約20%)をあらかじめタイル凹部にローラーで埋め込んだ後、前記同様、糊を塗布した紙をタイルに貼り付けたものであり、図3のようにタイル全面に糊が付着している。
【0018】
実施例及び比較例1〜3のタイルユニットを、シリカゲルを入れた乾燥槽の中に約10日間入れ、糊を十分固化させた。
【0019】
約10日間、糊を乾燥固化した後、以下を確認した。結果を表1に示す。
(1)接着性:タイルユニットの一端をつまんで垂れ下げたときに、タイル落下の有無を目視評価した。
次に、約10日間乾燥固化後のタイルユニットをボードに貼り付け、以下を確認した。
(2)剥離性:紙に水を均一に噴霧して十分濡らした後の紙剥がし性。
(3)紙剥がし糊残存量:紙を剥した後、タイル表面にヨードチンキの20倍希釈溶液を噴霧してヨード反応呈色の観察。
(4)糊の洗浄性:タイル表面をデッキブラシで軽くこすって水を流した後に、ヨードチンキの20倍希釈溶液を噴霧してヨード反応呈色の観察。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示した通り、デキストリン3%添加は接着性、剥離性、糊残存量、洗浄性、全てに優れることが分かる。
比較例1のデンプン糊のみでは、洗浄性が悪く、ブラシで強くこすらないと糊が落とせなかった。
比較例2のトレハロース3%添加の糊で、紙側のみに糊を塗布した場合は、接着力が弱く、タイルユニットの一端をつまんで垂れ下げたときに、タイルが落ちるものが多く、また、前記トレハロース3%添加の糊で、タイル側にも糊を塗布した場合には、糊の残存量が多いため、洗浄に時間及び水量が多くかかった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例におけるタイルユニットの平面図である。
【図2】実施例及び比較例1,比較例2における紙貼り部の断面図である。
【図3】比較例3における紙貼り部の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1…タイル
2…紙
3…糊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のタイルが、所定の間隔で配列され、該タイルのおもて面に紙を糊貼りして連結されてなるタイルユニットにおいて、前記紙貼り接着用のデンプン糊にデキストリンを混合したことを特徴としたタイルユニット。
【請求項2】
前記デンプン糊に対する前記デキストリンの添加率を、0.5重量%〜10重量%にすることを特徴とする、請求項1に記載のタイルユニット。
【請求項3】
前記デキストリンは、分子量800〜10万の糖類、または分子量800〜10万の糖類の混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のタイルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−29009(P2006−29009A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213182(P2004−213182)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】