説明

タイルユニット

【課題】連結シートとタイルとの接着強度が高く、しかもタイルの壁面への張付強度も高くなるタイルユニットと、その製造方法とを提供する。
【解決手段】タイルユニット20は、目地間隙を介して整列配置された複数枚のタイル21の裏面を連結シート25,26によって連結したものである。連結シート25の端縁は、溝23に所定長さtだけせり出している。接着剤27は、連結シート25のうち溝23にせり出した端部に付着すると共に、溝23の側面23fのうち入口側に付着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のタイルを連結シートで連結してなるタイルユニットに係り、特に、タイルの裏面に連結シートが付着されているタイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
タイルの裏面に、隣接するタイルに架け渡すように紙などの連結シートを接着剤で接着することにより、複数枚のタイルを連結してなるタイルユニットは、1回のタイル貼り操作で、複数枚のタイルを施工することができ、施工作業の軽減、工期の短縮に有効であることから、従来、内外装用タイルの施工に広く用いられている。
【0003】
実公昭35−29442には、第3図(a),(b)のように、環状凹所1、短凹溝部2及び長凹溝部3を有したタイル4を目地間隙5を残して縦横に配列し、各タイル4の隣接四隅の裏面に跨って薄生地布片6を接着糊で貼着したタイルユニット(連続壁タイル)が記載されている。
【0004】
実開昭58−134528には、第4図の如く、タイル14,14の裏面に、織布、不織布等の連結用部材12をモルタル等の接着剤13で貼着して、タイル14,14同士を連結したタイルユニットが記載されている。接着剤13の一部は、溝15にはみ出している。
【0005】
タイルは一般に成形用坏土を成形金型に充填して加圧成形する乾式成形により製造される。この乾式成形時に、成形金型の内周縁部においては、金型の間隙からの坏土のもれや金型の変形などにより、成形圧力が低くなるため、得られる成形体の外周縁部は、密度が低いものとなる。
【0006】
そこで、成形体の外周縁部にも十分な成形圧力が加わるように、予め、上下金型に「しめ勾配」と称される傾斜を設けている。このため、タイルの表裏両面には、側周縁部に向けて表面又は裏面から後退するような傾斜面よりなるしめ勾配が形成される。従来、タイル裏面のしめ勾配は3.8〜9.1°程度であり、しめ勾配部分の幅は1〜10mm程度である。
【0007】
裏面にしめ勾配が形成されたタイルを用いて製造したタイルユニットにあっては、タイルの連結に用いられる紙は伸縮性のないものであることから、しめ勾配の部分でタイル裏面に対して紙が浮き上がったような状態になり、タイル裏面と紙との接着面積が小さい。そこで、しめ勾配以外の平坦面において、紙よりなる連結シートとタイル裏面との接着性を向上させることが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭35−29442
【特許文献2】実開昭58−134528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記実公昭35−29442のタイルユニットにあっては、薄生地布片6が長凹溝部3の端部7に被さるように大きく張り出している。このように薄生地布片6が長凹溝部3に大きく張り出していると、タイルユニットを壁面にモルタルで張り付けるときに、モルタルが端部7に入り込みにくく、タイルの張付強度が低くなる。
【0010】
実開昭58−134528のタイルユニットにあっては、溝15にはみ出した接着剤が溝15の側面の全体を覆ってしまっている。そのため、このタイルユニットをモルタルで壁面に張り付ける場合、この溝側面に対してモルタルが殆ど付着せず、タイルの張付強度が低くなる。
【0011】
接着剤のはみ出しを無くすために、連結シートをタイル裏面の溝の角縁から離隔させた場合には、連結シートとタイル裏面との接着面積が小さくなり、連結シートとタイルとの接着強度が低くなる。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、連結シートとタイルとの接着強度が高く、しかもタイルの壁面への張付強度も高くなるタイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1のタイルユニットは、複数枚のタイルが並列され、タイルの裏面に接着剤によって接着された連結シートによって隣接するタイル同士が連結されたタイルユニットであって、各タイルの裏面に、凸部と、該凸部同士の間の溝とが設けられており、前記連結シートは、該凸部に接着されているタイルユニットにおいて、該連結シートの一部の辺縁が前記溝にせり出しており、該連結シートからはみ出た接着剤が、連結シートの辺縁の裏面と、該溝の入口側の側面とに付着していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2のタイルユニットは、請求項1において、前記連結シートの辺縁は、前記溝に対し、溝幅の1/100〜1/2だけ迫り出していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3のタイルユニットは、請求項1又は2において、前記接着剤は、前記溝の側面のうち入口側の角縁から30〜1000μm以内の範囲に付着していることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4のタイルユニットは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記溝は、タイルの一端縁から他端縁にまで延在しており、複数枚の該タイルが目地間隙を介して配列されており、前記連結シートは、該目地間隙に臨む凸部にのみ接着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタイルユニットにあっては、連結シートの一部の辺縁が溝にせり(迫り)出しており、連結シートからはみ出た接着剤が連結シートの辺縁の裏面と、溝の側面のうち溝入口側とに付着している。このように連結シートの一部の辺縁が溝にせり出し、接着剤が連結シートと溝側面との交差隅部に付着していると、連結シートのタイルへの接着強度がかなり増大することが認められた。
【0018】
このタイルユニットにあっては、連結シートの辺縁が溝にせり出す長さは、溝幅の好ましくは1/100〜1/2特に好ましくは1/100〜1/3の小さいものであり、前記実公昭35−29442のように長溝凹部の端部を塞ぐものではないので、タイルユニットを壁面に張付施工する場合に、モルタルや接着剤が溝全体に十分に充填され、タイルの壁面への張付強度が確保される。
【0019】
また、このタイルユニットにあっては、溝にはみ出た接着剤は溝側面のうち溝入口側にのみ付着しており、溝側面の奥底側は接着剤で覆われていない。そのため、このタイルユニットを壁面に張り付けた場合、モルタルが溝内に入り込み、溝側面の奥底に直に接触するようになるので、タイルの壁面への張付強度が確保される。
【0020】
なお、タイルユニットの張付施工時にタイル裏面の溝にモルタルが十分に充填されるようにするために、該溝がタイルの一端縁から他端縁にまで連続して延在していることが好ましい。即ち、前記実公昭35−29442のように、溝がタイルの端縁に達していないと、タイルユニットを壁面に張り付ける際に、溝内に空気が溜り、モルタル又は接着剤と溝内面との接触面積が小さくなり、タイル張付強度が低下するおそれがある。これに対し、溝がタイルの一端縁から他端縁にまで連続していると、モルタルや接着剤が溝内に入り込むときに、溝内の空気がタイルの端縁から追い出され、溝内の全体にモルタル又は接着剤が密実に充填され、タイルの張付強度が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係るタイルユニットの裏面図と断面図である。
【図2】別の実施の形態に係るタイルユニットの裏面図である。
【図3】従来例に係るタイルユニットの裏面図と断面図である。
【図4】別の従来例に係るタイルユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図(a)は実施の形態に係るタイルユニット20の裏面図、同(b)は同(a)のB−B線断面図である。
【0023】
このタイルユニット20は、目地間隙を介して整列配置された複数枚の陶磁器製タイル21を連結シート25,26によって連結したものである。タイル21は、方形であり、その裏面には一端縁から他端縁にまで延在する凸部22が設けられ、凸部22同士の間が溝23となっている。溝23は、奥側ほど幅が広くなるアリ溝である。
【0024】
タイル21の4辺のうち、凸部22及び溝23の延在方向と平行方向に延在する辺に沿う部分は凸部22となっている。なお、この辺に沿う凸部22においては、タイル21の端辺ほど高さが小さくなるように、「しめ勾配」と称される傾斜面22aが設けられている。
【0025】
この傾斜面22aを除いて、各凸部22の頂面は同一高さの平坦面となっている。各タイル21は、凸部22及び溝23を平行にして整列配置されている。
【0026】
目地間隙24を跨ぐようにして連結シート25,26が各タイル21の裏面に接着されている。連結シート25,26は、紙の裏面に熱可塑性接着剤層を設けたものである。紙としてはクラフト紙が好適であり、その厚さは100〜900μm特に200〜500μm程度が好適である。接着剤としては、EVA系、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系、塩ビ系、変成シリコン系、オレフィン系、ポリウレタン系、ポリスチレン系などの各種熱可塑性合成樹脂又はこれらを混合した樹脂系のものが好適である。この接着剤層の厚さは30〜1000μm特に80〜160μm程度が好適である。ただし、接着剤層は熱硬化性接着剤層であってもよい。
【0027】
この実施の形態では、連結シート25は略正方形であり、その中央部には直径2〜16mm程度の小孔25aが設けられている。この小孔25aは、タイルユニット20を壁面に張り付ける際にモルタルを通過させるためのものである。
【0028】
連結シート26は、連結シート25を半割した長方形状のものである。
【0029】
タイルユニット20を製造するには、例えば、所定枚数のタイル21を、各々の裏面が上になるように目地枠上に配列しておき、各連結シート25,26を接着剤層が下向きになるように、タイル21の裏面に配列し、重量のある金属平板又は目地枠裏面で連結シート25,26を押さえ、硬化炉で加熱することにより接着させる。
【0030】
このタイルユニットにあっては、4枚のタイル21のコーナー部が臨む目地間隙交点部に連結シート25が配置されている。この連結シート25は、第1図(b)の通り凸部22に接着されている。連結シート25の端縁は、溝23に所定長さtだけせり出している。
【0031】
凸部22の長辺が臨むタイル21の辺同士をつなぐように連結シート25がタイル21,21の裏面に接着されている。この連結シート25の辺縁は、この凸部22に臨接した溝23に長さtだけせり出している。
【0032】
各凸部22及び溝23の端部が臨むタイル21の辺同士をつなぐように連結シート26がタイル21,21の裏面に接着されている。この連結シート26は、凸部22に接着されると共に、この凸部22の両側の溝23,23に長さtだけせり出している。シート25,26の溝23へのせり出し長さtは、溝23の幅の1/100〜1/2特に1/100〜1/3程度が好適である。
【0033】
上記のようにタイル21に連結シート25,26を押し付けて連結シート25,26をタイル21に接着したときに、連結シート25,26の接着剤の一部が溝23内にはみ出す。このはみ出した接着剤27は、連結シート25のうち溝23にせり出した端部に付着すると共に、溝23の側面23fのうち入口側(第1図(b)の上側)に付着する。接着剤27の溝側面23fへの付着領域の高さhは30〜1000μm特に80〜160μm程度が好適である。
【0034】
このように接着剤27が連結シート25,26のせり出した部分と、溝側面23fの入口側との双方に付着したことにより、連結シート25,26のタイル21への装着強度が高いものとなる。
【0035】
この実施の形態では、連結シート25,26の溝23へのせり出し幅tは僅かである。また、溝23がタイル21の両端縁に到達している。さらに、タイルユニット製造時に溝23へはみ出した接着剤27が溝側面23fの入口側にのみ付着し、溝側面23fの奥側には付着しておらず、溝側面23fの奥側はタイル素地面が露呈している。従って、タイルユニット20をモルタルで壁面に張り付けるに際し、モルタルが溝23内に容易にかつ十分に充填され、しかも充填されたモルタルが溝側面23fの露呈生地面に強固に接着する。このようなことから、各タイル21の辺縁への張付強度も高いものとなる。本発明は、特に、タイルユニットをモルタルで壁面に張る場合に適用するのに好適である。
【0036】
<別の実施の形態>
第1図のタイルユニット20では、連結シート26をタイル21の幅方向(凸部22と直交方向)の中央付近に配置しているが、第2図(a)のタイルユニット20Aのように、この幅方向の端部すなわちタイルユニット20Aの外縁に沿って配置してもよい。
【0037】
また、上記のタイルユニット20,20Aでは各タイル21を凸部22及び溝23が平行となるように配列しているが、第2図(b)、(c)のタイルユニット20B,20Cのように、一部のタイル21の向きをその他のタイル21と直交方向としてもよい。
【0038】
第2図のその他の符号は第1図と同一部分を示している。
【0039】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、タイルは長方形であってもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0041】
実施例1
第1図において、1辺の長さ45mm、厚み7mm、凸部22の幅6mm、傾斜面22aの幅0.5mm、溝23の幅7mm、溝23の深さ1.5mmの陶器質タイルを用いた。目地間隙24の幅は5mmである。
【0042】
連結シート25としては、1辺の長さ20mmの正方形のクラフト紙(厚さ200μm)に接着剤としてEVA系接着剤を厚さ150μmに設けたものを用いた。中央の小孔の直径は4mmである。連結シート26としては、連結シート25を半分に切ったものを用いた。
【0043】
所定枚数のタイル21を、各々の裏面が上になるように目地枠上に配列しておき、各連結シート25,26を接着剤層が下向きになるように、タイル21の裏面に配列し、重量のある金属平板で連結シート25,26を押さえ、硬化炉で加熱することにより接着させた。このタイルユニット20にあっては、t=1.5mm、h=150μmであった。
【0044】
この連結シート25の引張強度について、ユニット両端をチャックして上下に3mm/分の速度で引っ張る条件で測定したところ、平均1.52N/mmであった。
【0045】
実施例2
実施例1において、連結シート25の1辺の長さを18mmとしたこと以外は同様にしてタイルユニット20を製造した。このタイルユニットではt=0.5mm、h=150μmであり、連結シート25の引張強度は平均1.47N/mmであった。
【0046】
比較例1
実施例1において、連結シート25の1辺の長さを16mmとしたこと以外は同様にしてタイルユニット20を製造した。このタイルユニットではt=−0.5mm(溝23の角縁に到達していない。)、h=0μmであり、連結シート25の引張強度は平均0.73N/mmであった。
【0047】
以上の実施例及び比較例より、本発明によると連結シートのタイルへの接着強度が高くなることが認められた。
【符号の説明】
【0048】
20 タイルユニット
21 タイル
22 凸部
23 溝
24 目地間隙
25,26 連結シート
27 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のタイルが並列され、タイルの裏面に接着剤によって接着された連結シートによって隣接するタイル同士が連結されたタイルユニットであって、
各タイルの裏面に、凸部と、該凸部同士の間の溝とが設けられており、
前記連結シートは、該凸部に接着されているタイルユニットにおいて、
該連結シートの一部の辺縁が前記溝にせり出しており、
該連結シートからはみ出た接着剤が、連結シートの辺縁の裏面と、該溝の入口側の側面とに付着していることを特徴とするタイルユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記連結シートの辺縁は、前記溝に対し、溝幅の1/100〜1/2だけ迫り出していることを特徴とするタイルユニット。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記接着剤は、前記溝の側面のうち入口側の角縁から30〜1000μm以内の範囲に付着していることを特徴とするタイルユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記溝は、タイルの一端縁から他端縁にまで延在しており、複数枚の該タイルが目地間隙を介して配列されており、前記連結シートは、該目地間隙に臨む凸部にのみ接着されていることを特徴とするタイルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−6853(P2011−6853A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148798(P2009−148798)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【特許番号】特許第4535197号(P4535197)
【特許公報発行日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】