説明

タイル目地構造体及び湿気硬化型タイル用接着剤組成物

【課題】接着剤に起因する目地材の変色が生じないようにしたタイル目地構造体及びその施工方法並びに湿気硬化型タイル用接着剤組成物を提供する。
【解決手段】下地材18の表面に形成された接着剤層16と、接着剤層の上面に接着された複数のタイル12と、複数のタイルの目地間隙15に目地詰めされてなる無機系目地材14と、を含み、接着剤層を形成する接着剤が、(A)湿気硬化型有機重合体、(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び(C)ジアルキル錫アルコキシド類、及びジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物から選ばれる1種以上の非キレート錫化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイル目地構造体及びその施工方法並びに湿気硬化型タイル用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面や壁面にタイルを接着剤を用いて接着することは、広く知られており、タイル用接着剤としては、例えば特許文献1及び2に挙げられている。
【0003】
特許文献1では、エフロレッセンス現象の程度の違いに基づく目地詰め工程後の色むらに対処すべく、目地部に粉粒物を貼着するようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2では、タイル間の目地を詰めない空目地工法に対応すべく、耐候性に優れると共に接着したタイルを汚染し難いタイル用接着剤として、高耐候性可塑剤と低耐候性可塑剤とを含む接着剤としている。
【0005】
一方、タイル用接着剤には、経年劣化を防ぐ目的で、酸化防止剤又は老化防止剤といった成分が添加されることが多い。
【0006】
しかしながら、酸化防止剤又は老化防止剤といった成分を添加した接着剤を用いてタイルの接着を行い、前記タイル間に目地詰めを行うと、目地材が乾燥する際に、前記目地材に前記接着剤の老化防止剤等の成分が移動し、例えば図3に示すように、目地材の表面が変色(黄変等)するという問題があった。
【0007】
従来のタイル目地構造体において目地材の表面に変色箇所が発生した様子を図3に示す。図3において、符号110は従来のタイル目地構造体を示す。タイル目地構造体110は、下地材118の表面に形成された接着剤層116と、前記接着剤層116の上面に接着された複数のタイル112と、前記複数のタイル112の目地間隙115に目地詰めされてなる目地材114と、から構成されている。そして、目地材114が乾燥する際に、目地材114に接着剤の老化防止剤等の成分が移動し、目地材114の表面に変色箇所120が発生している。
【0008】
タイル間の目地部分は、非常に人の目につきやすい箇所であり、せっかくきれいに目詰め施工を行っても、後に目地材の表面が変色してしまうと、台無しになってしまう。そこで、接着剤に起因する目地材の変色が生じないようなタイル用接着剤の出現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−144471号公報
【特許文献2】2009−221422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、接着剤に起因する目地材の変色が生じないようにしたタイル目地構造体及びその施工方法並びに湿気硬化型タイル用接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のタイル目地構造体は、下地材の表面に形成された接着剤層と、前記接着剤層の上面に接着された複数のタイルと、前記複数のタイルの目地間隙に目地詰めされてなる無機系目地材と、を含み、前記接着剤層を形成する接着剤が、(A)湿気硬化型有機重合体、(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び(C)ジアルキル錫アルコキシド類、及びジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物から選ばれる1種以上の非キレート錫化合物を含有することを特徴とする。
【0012】
【化1】

【0013】
(前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。)
【0014】
前記接着剤として適したタックフリー時間(23℃50%RH)は15分〜120分、より好ましくは30分〜60分である。
【0015】
前記(A)湿気硬化型有機重合体が、架橋性シリル基含有有機重合体であることが好適である。
【0016】
本発明の施工方法は、本発明のタイル目地構造体を施工するための施工方法であり、下地材の表面に接着剤層を形成する工程と、前記接着剤層の表面がタックフリーになる前に、前記下地材に目地間隙を設けて複数のタイルを接着する工程と、前記目地間隙の前記接着剤層の表面がタックフリーになった後、前記目地間隙に目地材を目地詰めする工程と、を含み、前記接着剤層を形成する接着剤が、(A)湿気硬化型有機重合体、(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び(C)ジアルキル錫アルコキシド類、及びジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物から選ばれる1種以上の非キレート錫化合物を含有することを特徴とする。
【化2】

(前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。)
【0017】
上記のように施工することで、目地材が乾燥する際に、目地材に接着剤からの老化防止剤等の成分が移動し、目地材の表面が変色することを、より効果的に防止することができる。
【0018】
本発明の施工方法に用いられる接着剤として適したタックフリー時間(23℃50%RH)は15分〜120分、より好ましくは30分〜60分である。
【0019】
本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物は、(A)湿気硬化型有機重合体、(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び(C)ジアルキル錫アルコキシド類、及びジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物から選ばれる1種以上の非キレート錫化合物を含有することを特徴とする。
【0020】
【化3】

【0021】
(前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。)
【0022】
前記接着剤は、目地材が乾燥する際に、目地材に接着剤からの老化防止剤等の成分が移動しづらく、目地材の表面が変色することを、効果的に防止することができる。
【0023】
前記(A)湿気硬化型有機重合体が、架橋性シリル基含有有機重合体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、接着剤に起因する目地材の変色が生じないようにしたタイル目地構造体及びその施工方法並びに湿気硬化型タイル用接着剤組成物を提供することができるという著大な効果を奏する。
【0025】
また、本発明に係る施工方法では、接着剤の表面硬化速度が速くタックフリー時間が短くて済むため、従来よりも工期を短縮することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のタイル目地構造体の一つの実施の形態を示し、(a)が平面概略図、(b)が断面概略図である。
【図2】本発明のタイル目地構造体の施工方法の流れを示すフローチャートである。
【図3】従来のタイル目地構造体を示し、(a)が平面概略図、(b)が断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0028】
本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物は、(A)湿気硬化型有機重合体、(B)6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び(C)ジアルキル錫アルコキシド類、及びジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物から選ばれる1種以上の非キレート錫化合物を必須成分として含有するものである。
【0029】
前記(A)湿気硬化型有機重合体としては、湿気により硬化する公知の有機重合体を使用することができるが、架橋性シリル基含有有機重合体や、湿気硬化型ウレタン系有機重合体が好ましく、架橋性シリル基含有有機重合体がより好ましい。前記(A)湿気硬化型有機重合体は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。前記(A)湿気硬化型有機重合体の数平均分子量は1,000〜50,000が好ましく、2,000〜30,000が更に好ましい。
【0030】
前記架橋性シリル基含有有機重合体は、珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる珪素含有基、すなわち架橋性シリル基を有する有機重合体である。
【0031】
架橋性シリル基の数は特に限定されないが、分子内に0.1〜5個含まれることが好ましく、0.5〜4個含まれることがより好ましい。また、架橋性シリル基の位置は特に限定されず、有機重合体分子鎖の末端あるいは内部にあってもよく、両方にあってもよいが、分子鎖末端にあることが好ましい。更に、架橋性シリル基は、架橋しやすく製造しやすい下記一般式(2)で示されるものが好ましい。
【0032】
【化4】

【0033】
前記式(2)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。Xは水酸基又は加水分解性基であり、ハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシル基、アシルオキシル基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシル基及びアミノオキシル基から選択される基が好ましく、アルコキシル基がより好ましく、メトキシル基が最も好ましい。Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。nは1、2又は3である。
【0034】
前記架橋性シリル基含有有機重合体において、架橋性シリル基が複数存在する場合、これらは同じであっても異なっていてもよく、さらに、前記式(2)中のnの数も同じであっても異なっていてもよい。また、含有される架橋性シリル基の異なる有機系重合体を2種類以上用いてもよい。
【0035】
前記架橋性シリル基含有有機重合体における重合単位は、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレン系重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル重合体、ポリイソブチレン系重合体及びこれらの共重合体(例えば、特開2003−238795号公報、特開2000−169544号公報、特開2004−059782号公報、特開2004−51830号公報、特開2003−138151号公報、特開2001−40037号公報及び特開平10−182991号公報等参照。)が好適な例として挙げることができる。これらの重合体は1種のみで用いてもよく、2種以上併用してもよい。なお、本発明において、アクリルとメタクリルを併せて(メタ)アクリルと称する。
【0036】
前記架橋性シリル基含有有機重合体としては、具体的には、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体、架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基を有するポリイソブチレン系重合体、並びにこれらの混合物が好ましい。
【0037】
前記架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体としては、架橋性シリル基を分子鎖末端に有し、アクリル酸エステルを単量体単位として含む重合体又は共重合体、または架橋性シリル基を分子鎖末端に有し、アクリル酸エステルと他の単量体単位を含む共重合体が好適である。前記重合体は、常温において固形であり、ガラス転移点温度が10℃以上のものが好ましい。
【0038】
前記架橋性シリル基を末端に有する(メタ)アクリル系重合体の製造法は、特に限定されず、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等の各種重合法等の公知の重合法が挙げられるが、制御ラジカル重合法が好ましく、リビングラジカル重合法がより好ましい。
【0039】
前記架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体としては、架橋性シリル基を分子鎖末端に有し、ポリオキシプロピレンを主鎖とする重合体を例示できる。このような重合体の製造法は、特に限定されないが、例えば、末端に水酸基を有するポリオキシプロピレンの末端水酸基をアリルオキシ基等の不飽和基に変換したのち、メチルジメトキシシラン等のヒドロシランを用いてヒドロシリル化反応によりポリオキシプロピレンに架橋性シリル基を導入して得ることができる。
【0040】
前記湿気硬化型ウレタン系有機重合体としては、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる公知のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを広く用いることができる。
【0041】
上記ポリオールとしては、活性水素基を2個以上有する活性水素含有化合物であればよく特に限定されるものではないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アミンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール及びアクリルポリオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はアミンポリオールが好ましく用いられ、特にポリエーテルポリオールが好適である。上記ポリオールとしては、分子量が100〜12000、1分子中のOH基が2〜4個のものが好ましく使用できる。これらポリオールは単独で用いても良く、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0042】
より具体的には、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、アンモニア、エチレンジアミン等のアミン類の1種または2種以上の存在下にプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを開環重合させて得られるランダムまたはブロック共重合体等のポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0043】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の存在下にアジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸等を重縮合させて得られる共重合体等のポリエステルポリオール等があり、その他ビスフェノールA、ヒマシ油のラムエステル等の活性水素基2個以上を有する低分子活性水素化合物が挙げられる。
【0044】
前記アミンポリオールとしては、例えば、アミン化合物にアルキレンオキサイドを付加反応させて得ることができ、平均的に3官能以上のポリアミンポリオールが好ましい。アミン化合物としては、例えば、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、プロピレンジアミン、メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、メチルアミノプロピルアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(3−アミノプロピル)エタン、1,4−ジアミノブタン、ラウリルアミノプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の脂肪族ポリアミンおよびメタキシレンジアミン等の芳香族ポリアミンが挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
上記ポリイソシアネートとしては、具体的には、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類のほか、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類が挙げられるが、これらの中では毒性や価格面等の点からMDIの使用が好ましい。
【0046】
前記ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。2種以上組み合わせて使用する場合、その組み合わせも特に限定されず、使用したポリオールやポリイソシアネートの異なるプレポリマー同士、例えば、ポリプロピレングリコールを使用したプレポリマーとアミンポリオールを使用したプレポリマー等を併用しても良い。
【0047】
前記(B)6−ヒドロキシクロマン誘導体は、下記式(1)で示される酸化防止作用のある化合物である。
【0048】
【化5】

【0049】
前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。R、R、R、R、R、R、R及びRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
前記一般式(1)において、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表し、Rが結合した炭素が不斉炭素原子となる場合の立体配置は、R,S表示法でのR構造及び/又はS構造を表す。Rが下記式(3)又は下記式(4)であることが好適である。
【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
前記(B)6−ヒドロキシクロマン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。(B)6−ヒドロキシクロマン誘導体の配合割合は特に限定されないが、本発明の効果を得るためには、(A)湿気硬化型有機重合体100質量部に対して0.1質量部以上配合することが好ましく、1〜10質量部がより好ましく、3〜8質量部がさらに好ましい。
【0054】
前記(C)ジアルキル錫アルコキシド類、及びジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物から選ばれる1種以上の非キレート錫化合物としては、例えば、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド等のジアルキル錫アルコキシド類;ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジオクチル錫ビストリエトキシシリケート等のジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物等が使用できる。このうち、接着剤組成物のタックフリー時間を短くする観点からジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物がより好ましく、その中でもジブチル錫オキシドと正珪酸エチルとの反応生成物が特に好適に使用できる。また、接着剤組成物の安全性の観点からジオクチル錫オキシドと正珪酸エチルとの反応生成物が好適に使用できる。
【0055】
本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物は、前記成分(A)〜(C)に加えて、必要に応じて、他の硬化触媒、接着付与剤、充填剤、脱水剤(保存安定性改良剤)、希釈剤、物性調整剤、可塑剤、揺変剤、粘着付与剤、垂れ防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、着色剤、蓄熱粒子、香料、ラジカル重合開始剤などの添加剤を配合してもよく、また相溶する他の重合体をブレンドしてもよい。
【0056】
前記充填剤としては、公知の充填剤を広く用いることができ、特に制限はないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土含水ケイ酸、含水けい酸、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、シリカ、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、スレート粉、マイカ、カオリン、ゼオライト等が挙げられ、このうち炭酸カルシウムが好ましく、表面処理炭酸カルシウムがより好ましい。また、ガラスビーズ、シリカビーズ、アルミナビーズ、カーボンビーズ、スチレンビーズ、フェノールビーズ、アクリルビーズ、多孔質シリカ、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、サランバルーン、アクリルバルーン等を用いることもできる。
【0057】
前記炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイダル炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム等、いずれも使用可能であるが、コロイダル炭酸カルシウムがより好適である。これら炭酸カルシウムは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0058】
前記炭酸カルシウムの一次粒径が0.5μm以下であることが好ましく、0.01〜0.1μmであることがより好ましい。このような粒径の小さい微粉炭酸カルシウムを使用することにより、硬化性組成物にチキソ性を付与することができる。
【0059】
また、炭酸カルシウムの中でも、チキソ性の付与、硬化物(硬化皮膜)に対する補強効果の観点から、表面処理炭酸カルシウムが好ましく、表面処理した微粉炭酸カルシウムがより好ましい。さらに、表面処理した微粉炭酸カルシウムに、他の炭酸カルシウム、例えば、表面処理されていない、粒径の大きな炭酸カルシウムである重質炭酸カルシウムや、表面処理した粒径の大きい炭酸カルシウム等を併用してもよい。表面処理した微粉炭酸カルシウムと他の炭酸カルシウムを併用するときは、表面処理した微粉炭酸カルシウムと、その他の炭酸カルシウムの比率(質量比)は、1:9〜9:1が好ましく、3:7〜7:3がより好ましい。
【0060】
前記表面処理炭酸カルシウムにおいて、用いられる表面処理剤に特に制限はなく、公知の表面処理剤を広く使用可能である。前記表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸系化合物、樹脂酸系化合物、芳香族カルボン酸エステル、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、パラフィン、チタネートカップリング剤及びシランカップリング剤等が挙げられ、高級脂肪酸系化合物及びパラフィンがより好ましい。これら表面処理剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0061】
前記表面処理炭酸カルシウムとしては、公知の表面処理された炭酸カルシウムを広く使用することができ、特に制限はないが、例えば、Vigot 15(白石カルシウム(株)製、脂肪酸で表面処理された軽質炭酸カルシウム、一次粒子径0.15μm)等の表面処理軽質炭酸カルシウム;Vigot 10(白石カルシウム(株)製、脂肪酸で表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム、一次粒子径0.10μm)、白艶華CCR−B(白石カルシウム(株)製、脂肪酸で表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム、一次粒子径0.08μm)、白艶華DD(白石カルシウム(株)製、樹脂酸で表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム、一次粒子径0.05μm)、カーレックス300(丸尾カルシウム(株)製、脂肪酸で表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム、一次粒子径0.05μm)、ネオライトSS(竹原化学工業(株)製、脂肪酸で表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム、平均粒子径0.04μm)、ネオライトGP−20(竹原化学工業(株)製、樹脂酸で表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム、平均粒子径0.03μm)、カルシーズP(神島化学工業(株)製、脂肪酸で表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム、平均粒子径0.15μm)等の表面処理コロイダル炭酸カルシウム;MCコートP1(丸尾カルシウム(株)製、パラフィンで表面処理された重質炭酸カルシウム、一次粒子径3.3μm)、AFF−95((株)ファイマテック製、カチオンポリマーで表面された重質炭酸カルシウム、一次粒子径0.9μm)、AFF−Z((株)ファイマテック製、カチオンポリマー及び帯電防止剤で表面された重質炭酸カルシウム、一次粒子径1.0μm)等の表面処理重質炭酸カルシウムが挙げられる。
【0062】
前記難燃剤としては、公知の難燃剤を使用可能であり、特に制限はないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;赤リン、ポリリン酸アンモニウム等のリン系難燃剤;三酸化アンチモン等の金属酸化物系難燃剤;臭素系難燃剤;塩素系難燃剤等が挙げられ、毒性の点から金属水酸化物が好適である。前記金属水酸化物は表面処理剤で表面処理された金属水酸化物を使用してもよい。前記難燃剤は単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0063】
前記他の硬化触媒としては、接着剤の性能に影響を与えない範囲で、公知の硬化触媒を広く用いることができ、特に制限はないが、例えば、有機金属化合物やアミン類等が挙げられ、特にシラノール縮合触媒を用いることが好ましい。前記シラノール縮合触媒としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジエチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレート等のジアルキル錫ジカルボキシレート類;ジブチル錫オキシドやジオクチル錫オキシド等のジアルキル錫オキシドと、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、メチルマレエート等のエステル化合物との反応生成物;およびこれらジアルキル錫化合物のオキシ誘導体(スタノキサン化合物)等の4価のスズ化合物類;オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、フェルザチック酸スズ等の2価のスズ化合物類;あるいはこれらとラウリルアミン等のアミン系化合物との反応生成物および混合物;モノブチル錫トリスオクトエートやモノブチル錫トリイソプロポキシド等のモノブチル錫化合物やモノオクチル錫化合物等のモノアルキル錫類;オクチル酸鉛及びナフテン酸鉛等の有機酸鉛;オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス及びロジン酸ビスマス等の有機酸ビスマス;シラノール縮合触媒として公知のその他の酸性触媒及び塩基性触媒等が挙げられる。
【0064】
前記酸化防止剤は、接着剤組成物の酸化を防止して、耐候性、耐熱性を改善するために使用されるものであり、接着剤の性能に影響を与えない範囲で添加することができ、例えば、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の酸化防止剤等が挙げられる。
【0065】
前記紫外線吸収剤は、接着剤組成物の光劣化を防止して、耐候性を改善するために使用されるものであり、接着剤の性能に影響を与えない範囲で添加することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0066】
老化防止剤は、接着剤組成物の熱劣化を防止して、耐熱性を改善するために使用されるものであり、接着剤の性能に影響を与えない範囲で添加することができ、例えば、アミン−ケトン系等の老化防止剤、芳香族第二級アミン系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤、亜リン酸系老化防止剤等が挙げられる。
【0067】
前記可塑剤は硬化後の伸び物性を高めたり、硬さを調整して低モジュラス化を可能とする目的で添加される。前記可塑剤としては、その種類は特に限定されないが、例えば、ジイソウンデシルフタレートなどの如きフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチルなどの如き脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエートなどの如きグリコールエステル類;オレイン酸ブチルなどの如き脂肪族エステル類;リン酸トリクレジルなどの如きリン酸エステル類;エポキシ化大豆油などの如きエポキシ可塑剤類;ポリエステル系可塑剤;ポリプロピレングリコールの誘導体などのポリエーテル類;テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリ−α−メチルスチレンなどのポリスチレン系オリゴマー類;ポリブタジエンなどの炭化水素系オリゴマー類;塩素化パラフィン類;UP−1000(東亞合成(株)製)、UP−1080(東亞合成(株)製)、UP−1110(東亞合成(株)製)やUP−1061(東亞合成(株)製)などの如きアクリル系可塑剤類;UP−2000(東亞合成(株)製)、UHE−2012(東亞合成(株)製)などの如き水酸基含有アクリル系可塑剤類;UC−3510(東亞合成(株)製)などの如きカルボキシル基含有アクリルポリマー類;UG−4000(東亞合成(株)製)などの如きエポキシ基含有アクリルポリマー類;US−6110(東亞合成(株)製)、US−6120(東亞合成(株)製)などの如き0.5個未満のシリル基を含有するアクリルポリマー類、0.5個未満のシリル基を含有するオキシアルキレン樹脂などが例示される。
【0068】
前記揺変剤としては、例えば、コロイダルシリカ、石綿粉等の無機揺変剤、有機ベントナイト、変性ポリエステルポリオール、脂肪酸アマイド等の有機揺変剤、水添ヒマシ油誘導体、脂肪酸アマイドワックス、ステアリル酸アルミニウム、ステアリル酸バリウム等が挙げられる。
【0069】
前記脱水剤は保存中における水分を除去する目的で添加される。前記脱水剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメトルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、等のシラン化合物や、ゼオライト、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0070】
前記希釈剤は、粘度等の物性を調整するする目的で添加される。前記希釈剤としては、公知の希釈剤を広く用いることができ、特に制限はないが、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和炭化水素系溶剤,リニアレンダイマー(出光興産株式会社商品名)等のα−オレフィン誘導体,トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤,エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ダイアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤,クエン酸アセチルトリエチル等のクエン酸エステル系溶剤,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等の各種溶剤が挙げられる。
【0071】
前記希釈剤の引火点には特に制限はないが、得られる接着剤組成物の安全性を考慮すると接着剤組成物の引火点は高い方が望ましく、接着剤組成物からの揮発物質は少ない方が好ましい。そのため、前記希釈剤の引火点は65℃以上であることが好ましい。2以上の希釈剤を混合して使用するときは、混合した希釈剤の引火点が65℃以上であることが好ましい。しかし、一般的に引火点が高い希釈剤は接着剤組成物に対する希釈効果が低くなる傾向が見られるため、引火点は250℃以下であることが好適である。
【0072】
本発明の接着剤組成物の安全性、希釈効果の双方を考慮すると、希釈剤としては飽和炭化水素系溶剤が好適であり、ノルマルパラフィン、イソパラフィンがより好適である。ノルマルパラフィン、イソパラフィンの炭素数は10〜16であることが好ましい。具体的にはN−11(ノルマルパラフィン、JX日鉱日石エネルギー(株)製、炭素数11、引火点68℃)、N−12(ノルマルパラフィン、JX日鉱日石エネルギー(株)製、炭素数12、引火点85℃)、IPソルベント2028(イソパラフィン、出光興産(株)製、炭素数10から16、引火点86℃)等が挙げられる。
【0073】
前記接着性付与剤としては、公知のシランカップリング剤、例えば、アミノ基含有シラン類、エポキシ基含有シラン類、メルカプト基含有シラン類、ビニル型不飽和基含有シラン類、イソシアネート含有シラン類、及びハイドロシラン類等が例示される。
【0074】
本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物を製造する方法は特に制限はなく、例えば、配合物質を所定量配合し、脱気攪拌することにより製造することができる。
【0075】
本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物は、必要に応じて1液型とすることもできるし、2液型とすることもできるが、特に1液型として好適に用いることができる。本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物は大気中の湿気により常温で硬化することが可能であり、常温湿気硬化型タイル用接着剤組成物として好適に用いられるが、必要に応じて、適宜、加熱により硬化を促進させてもよい。
【0076】
本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物は、建築物用、自動車用、土木用、電気・電子分野用等の各種用途に用いることができるが、タイル用接着剤として特に好適に用いられる。本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物は、下地材の表面に形成された接着剤層と、前記接着剤層の上面に接着された複数のタイルと、前記複数のタイルの目地間隙に目地詰めされてなる無機系目地材と、を含むタイル目地構造体における接着剤層を形成する接着剤として特に好適である。
【0077】
図1において、符号10は本発明のタイル目地構造体を示す。タイル目地構造体10は、下地材18の表面に形成された接着剤層16と、前記接着剤層16の上面に接着された複数のタイル12と、前記複数のタイル12の目地間隙15に目地詰めされてなる無機系目地材14と、を含む構成とされている。前記接着剤層16を形成する接着剤としては、本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物が用いられる。
【0078】
本発明のタイル目地構造体を施工するための施工方法は特に制限はないが、図2に示すように、下地材18の表面に接着剤層16を形成する工程(S20)と、前記接着剤層の表面がタックフリーになる前に、前記下地材18に目地間隙15を設けて複数のタイル12を接着する工程(S22)と、前記目地間隙15の前記接着剤層16の表面がタックフリーになった後、前記目地間隙15に目地材14を目地詰めする工程(S24)と、を含む施工方法が好適に用いられる。前記接着剤層16を形成する接着剤としては、本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物が用いられる。
【0079】
前記タイル12としては、タイルであればよいもので特に制限はないが、例えば、陶磁器タイル、石材タイル、アスファルトタイル、プラスチックタイル、ゴムタイルなどが好適に用いられる。
【0080】
前記無機系目地材14としては、無機系の目地材であれば特に制限はないが、例えば、セメントを主成分とするセメント系目地材等が挙げられる。
【0081】
前記下地材18としては、特に制限はないが、例えば、モルタル、コンクリート、木、石、等が挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0083】
(実施例1〜6)
表1に示す組成にて各配合物質を混合攪拌し、本発明の湿気硬化型タイル用接着剤組成物を調製した。
【0084】
【表1】

【0085】
表1において、各配合物質の配合量は質量部で示され、各配合物質の詳細は下記の通りである。
*1)湿気硬化型有機重合体A1:商品名サイリルSAT200((株)カネカ製、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシシリル基を有するポリマー)
*2)湿気硬化型有機重合体A2:商品名MA440((株)カネカ製、主鎖がポリオキシプロピレンで分子末端にジメトキシシリル基を有するポリマー(MS)と、主鎖がポリメタクリル酸エステルの共重合体で分子中にジメトキシシリル基を有するポリマー(MA)との混合物(混合比:MS:MA=60:40))。
*3)6−ヒドロキシクロマン誘導体:商品名イルガノックス(チバ ホールディング インコーポレーテッドの登録商標)E201、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−ベンゾピラン−6−オール[下記式(5)]。
【0086】
【化8】

【0087】
*4)可塑剤:商品名アクトコールD-3000(三井化学(株)製、ポリオキシプロピレン重合体、数平均分子量3000)
*5)充填剤:商品名ホワイトンSB(白石カルシウム(株)製、炭酸カルシウム)
*6)接着付与剤:商品名KBM−603(信越化学工業(株)製、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン)
*7)水分吸収剤:商品名エチルシリケート28(コルコート(株)製、テトラエトキシシラン)
*8)非キレート錫化合物:商品名ネオスタンU−700ES(日東化成(株)製、ジブチル錫オキシドと正珪酸エチルとの反応生成物)
*12)非キレート錫化合物:商品名ネオスタンS−1(日東化成(株)製、ジオクチル錫オキシドと正珪酸エチルとの反応生成物)
【0088】
前記得られた湿気硬化型タイル用接着剤組成物に対し、下記試験を行った。結果を表1に示した。
(1)タイル目地変色確認試験
ISOモルタル下地材(70cm×70cm×20cm)上にJIS A 5548の標準くし目ごてを用いて接着剤組成物を500g/m2塗布し、タイル(45mm×45mm)を図1のように直ちに貼り付ける。手圧にて圧締し23℃50%RH条件下にて養生後タックフリー後直ちにタイル目地部に無機系目地材(セメント系目地材)を充填した。前記タイル目地部の無機系目地材の厚さは2mmであった。23℃50%RH下で3日間養生後50℃温水に7日間浸せきし、温水浸せき前後の試験体目地部の変色を目視で確認した。変色が確認されなかったものを○、変色したものを×として評価した。
【0089】
(2)タックフリー時間
JIS A 1439 5.19に従いタックフリー試験を行った。フレキシブルボードに接着剤組成物を3mm厚で塗布し、23℃50%RH下で5分おきに指触にて硬化状態を確認し、30〜60分後接着剤組成物が指に付着しなければ○、15〜30分未満又は60分超過〜120分後接着剤組成物が指に付着しなければ△、15分未満で接着剤組成物が指に付着しなければ×又は120分超過後接着剤組成物が付着した場合を×とする。
【0090】
(比較例1〜3)
表2に示した如く、配合物質を変更した以外は実施例1と同様の方法により接着剤組成物を調製し、試験を行った。結果を表2に示した。
【0091】
【表2】

【0092】
表2において、各配合物質の配合量は質量部で示され、*1、*3〜*8は表1と同じであり、他の配合物質の詳細は下記の通りである。
*9)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:商品名アデカスタブAO-60((株)アデカ製)
*10)商品名ネオスタンU−220H(日東化成(株)製、ジブチル錫ジアセチルアセトナート)
*11)非キレート錫化合物:商品名ネオスタンU−100(日東化成(株)製、ジブチル錫ジラウレート)
【0093】
表1に示した如く、実施例1〜6に示したタイル目地構造体では、目地材の変色は見られなかった。また、硬化速度も良好であった。
【0094】
表2に示した如く、比較例1〜3に示したタイル目地構造体では、硬化速度は良好であったが、目地材の変色が見られた。比較例4に示したタイル目地構造体では、目地材の変色は見られなかったが、硬化速度が60分を超えてしまい、硬化速度がやや不良であった。
【符号の説明】
【0095】
10:本発明のタイル目地構造体、12,112:タイル、14,114:目地材、15,115:目地間隙、16,116:接着剤層、18,118:下地材、110:従来のタイル目地構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材の表面に形成された接着剤層と、前記接着剤層の上面に接着された複数のタイルと、前記複数のタイルの目地間隙に目地詰めされてなる無機系目地材と、を含み、
前記接着剤層を形成する接着剤が、
(A)湿気硬化型有機重合体、
(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び
(C)ジアルキル錫アルコキシド類、及びジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物から選ばれる1種以上の非キレート錫化合物
を含有することを特徴とするタイル目地構造体。
【化1】


(前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。)
【請求項2】
前記(A)湿気硬化型有機重合体が、架橋性シリル基含有有機重合体であることを特徴とする請求項1記載のタイル目地構造体。
【請求項3】
請求項1又は2記載のタイル目地構造体を施工するための施工方法であり、
下地材の表面に接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層の表面がタックフリーになる前に、前記下地材に目地間隙を設けて複数のタイルを接着する工程と、
前記目地間隙の前記接着剤層の表面がタックフリーになった後、前記目地間隙に目地材を目地詰めする工程と、を含み、
前記接着剤層を形成する接着剤が、
(A)湿気硬化型有機重合体、
(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び
(C)ジアルキル錫アルコキシド類、及びジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物から選ばれる1種以上の非キレート錫化合物
を含有することを特徴とするタイル目地構造体の施工方法。
【化2】

(前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。)
【請求項4】
(A)湿気硬化型有機重合体、
(B)下記一般式(1)で示される6−ヒドロキシクロマン誘導体、及び
(C)ジアルキル錫アルコキシド類、及びジアルキル錫オキシドとシリケート化合物との反応生成物から選ばれる1種以上の非キレート錫化合物
を含有することを特徴とする湿気硬化型タイル用接着剤組成物。
【化3】


(前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を表す。)
【請求項5】
前記(A)湿気硬化型有機重合体が、架橋性シリル基含有有機重合体であることを特徴とする請求項4記載の湿気硬化型タイル用接着剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108306(P2013−108306A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255230(P2011−255230)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】