説明

タウプロテインキナーゼ1阻害剤としてのピリミドン誘導体

神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)などのタウプロテインキナーゼ1の異常な活性によって引き起こされる疾患の予防的および/または治療的処置のために使用される、式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩
【化1】


[式中、Zは、窒素原子またはC-Xを表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表し、R1は、水素原子またはC1〜C3アルキル基であり、Lは、単結合または置換されていてもよいC1〜C6アルキレン基を表し、Yは、単結合、硫黄原子、酸素原子、NHなどを表し、R2は、水素原子または置換されていてもよい環式基を表す]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)などの、タウプロテインキナーゼ1(TPK1、GSK3β:グリコーゲン合成酵素キナーゼ3βとも呼ばれる)の異常な活性によって主に引き起こされる疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、神経細胞の変性および神経細胞数の減少に起因する著しい大脳皮質の委縮が観測される、進行性の老年性認知症である。病理学的には、多数の老人斑および神経原線維変化が脳内に観測される。患者数は、高齢集団の増加に伴って増加しており、疾患は深刻な社会問題を生じている。様々な理論が提案されているが、疾患の原因は未だ解明されていない。原因の早期解決が望まれている。
【0003】
アルツハイマー病の2つの特徴的な病理学的変化の出現の度合いは、知的機能障害の度合いに十分に相関することが知られている。したがって、1980年代初期から、2つの病理学的変化の構成要素の分子レベルでの調査を介して疾患の原因を明らかにするための研究が実施されている。老人斑は細胞外に蓄積し、βアミロイドタンパク質が、それらの主な構成要素として解明されている(本明細書では以下「Aβ」と略す:Biochem.Biophys.Res.Commun.、120、885頁(1984年);EMBO J.、4、2757頁(1985年);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、4245頁(1985年))。他の病理学的変化、すなわち神経原線維変化では、対らせん状細線維(本明細書では以下「PHF」と略す)と呼ばれる二重らせんの線維状物質が細胞内に蓄積し、その主な構成要素として、脳に特異的な微小管関連タンパク質の一種であるタウタンパク質が明らかにされている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、4506頁(1988年);Neuron、1、827頁(1988年))。
【0004】
さらに、遺伝的調査に基づいて、プレセニリン1および2が、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子として見出されており(Nature、375、754頁(1995年);Science、269、973頁(1995年);Nature.376、775頁(1995年))、プレセニリン1および2の変異体の存在が、Aβの分泌を促進することが明らかになっている(Neuron、17、1005頁(1996年);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94、2025頁(1997年))。これらの結果から、アルツハイマー病では、特定の理由に起因してAβが異常に蓄積し凝集し、それが神経細胞死を引き起こすPHFの形成に関与すると考えられる。また、グルタミン酸の細胞外への流出およびその流出に応答するグルタミン酸受容体の活性化は、虚血性脳血管障害によって引き起こされる神経細胞死の初期過程において、重要な因子となり得る可能性があると期待されている。
【0005】
グルタミン酸受容体の1つであるAMPA受容体を刺激するカイニン酸による治療が、Aβの前駆体としてのアミロイド前駆体タンパク質(本明細書では以下「APP」と略す)のmRNAを増大し(Society for Neuroscience Abstracts、17、1445頁(1991年))、またAPPの代謝を促進することが報告されている(The Journal of Neuroscience、10、2400頁(1990年))。したがって、Aβの蓄積は虚血性脳血管障害に起因する細胞死に関与していることが強く提案されている。Aβの異常な蓄積および凝集が観測される他の疾患には、例えば、ダウン症候群、孤立性脳アミロイド血管症に起因する脳出血、レビー小体病などが含まれる。さらに、PHFの蓄積に起因する神経原線維変化を示す疾患として、その例には、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎(panencephalitic)パーキンソニズム、脳炎後パーキンソニズム、ボクサー脳炎、グアム島パーキンソニズム-認知症複合、レビー小体病などが含まれる。
【0006】
タウタンパク質は、一般にSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において48〜65kDaの分子量のいくつかのバンドを形成する関連タンパク質の群から構成され、微小管の形成を促進する。アルツハイマー病に罹患している脳内のPHFに組み込まれたタウタンパク質は、通常のタウタンパク質と比較して異常にリン酸化されていることが立証されている(J.Biochem.、99、1807頁(1986年);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83、4913頁(1986年))。異常なリン酸化を触媒する酵素が単離されている。そのタンパク質は、タウプロテインキナーゼ1(本明細書では以下「TPK1」と略す)と名付けられ、その物理化学的特性が解明されている(J.Biol.Chem.、267、10897頁(1992年))。さらに、ラットTPK1のcDNAが、TPK1の部分アミノ酸配列に基づいてラット大脳皮質cDNAライブラリーからクローニングされ、そのヌクレオチド配列が決定され、アミノ酸配列が推定された。結果として、ラットTPK1の主な構造は、ラットGSK-3β(グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β、FEBS Lett.、325、167頁(1993年))として公知の酵素の構造に相当することが明らかになっている。
【0007】
老人斑の主な構成要素であるAβは、神経毒性があることが報告されている(Science、250、279頁(1990年))。しかし、Aβが細胞死を引き起こす理由についての様々な理論が提案されており、信頼のおける理論は未だ確立されていない。Takashimaらは、細胞死が、胎児ラットの海馬の初代培養系のAβによる処置によって引き起こされたことを観測し、その後TPK1活性がAβによる処置によって増大し、Aβによる細胞死がTPK1のアンチセンスによって阻害されたことを見出した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90、7789頁(1993年);EP616032)。
【0008】
前述のことを考慮すると、TPK1活性を阻害する化合物は、Aβの神経毒性およびPHFの形成を抑制し、アルツハイマー病における神経細胞死を阻害し、それによって疾患の進行を停止または遅延できる可能性がある。
【0009】
後述する式(I)によって表される本発明の化合物に構造的に類似の化合物として、国際公開番号WO01/70729、WO03/037888およびWO03/027080に開示の化合物が知られている。しかし先の刊行物では、2位において酸素原子によって置換されている、本発明の化合物のようなピリミドン誘導体化合物は研究されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
EP616032
WO01/70729
WO03/037888
WO03/027080
【非特許文献】
【0011】
Biochem.Biophys.Res.Commun.、120、885頁(1984年)
EMBO J.、4、2757頁(1985年)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、4245頁(1985年)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、4506頁(1988年)
Neuron、1、827頁(1988年)
Nature、375、754頁(1995年)
Science、269、973頁(1995年)
Nature.376、775頁(1995年)
Neuron、17、1005頁(1996年)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94、2025頁(1997年)
Society for Neuroscience Abstracts、17、1445頁(1991年)
The Journal of Neuroscience、10、2400頁(1990年)
J.Biochem.、99、1807頁(1986年)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83、4913頁(1986年)
J.Biol.Chem.、267、10897頁(1992年)
FEBS Lett.、325、167頁(1993年)
Science、250、279頁(1990年)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90、7789頁(1993年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、アルツハイマー病などの疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として有用な化合物を提供することである。
より具体的には、本目的は、TPK1活性を阻害してAβの神経毒性およびPHFの形成を抑制することによって、ならびに神経細胞死を阻害することによって、アルツハイマー病などの神経変性疾患の根本的な予防および/または治療を可能にする医薬の活性成分として有用な新規の化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を達成するために、本発明の本発明者らは、TPK1のリン酸化に対して阻害活性を有する様々な化合物のスクリーニングを実施した。その結果、本発明者らは、次式(I)によって表される化合物が所望の活性を有し、前述の疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として有用であることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて達成された。
【0014】
したがって本発明は、一般式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】

[式中、
Zは、窒素原子またはC-Xを表し;
Xは、水素原子またはフッ素原子を表し;
R1は、水素原子またはC1〜C3アルキル基であり;
Lは、単結合または置換されていてもよいC1〜C6アルキレン基を表し;
Yは、単結合、硫黄原子、酸素原子またはNR10を表し;
R10は、水素原子またはC1〜C3アルキル基を表し;
R2は、水素原子または置換されていてもよい環式基を表し;
ただしYが、硫黄原子、酸素原子またはNR10を表す場合、Lは単結合ではなく、LおよびYのそれぞれが単結合を表す場合、R2は水素原子ではない]
【0015】
さらに本発明は、一般式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩の製造方法に関する。
さらに本発明は、一般式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含有する医薬組成物に関する。
【0016】
さらに本発明は、有効量の一般式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、疾患または状態の治療方法または予防方法に関する。
【0017】
またさらに本発明は、医薬の製造のための、一般式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
またさらに本発明は、タウプロテインキナーゼ1活性の阻害のための、一般式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩は、TPK1に対して優れた阻害活性を示す。本発明の化合物を含有する医薬組成物は、TPK1の阻害によって改善されることが期待できる疾患または状態の治療または予防のための医薬における活性成分として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
別段指定されない限り、以下の定義は、本明細書において本発明を説明するために使用される様々な用語の意味および範囲を例示するために記載される。
用語「C1〜C3アルキル基」は、直鎖または分岐のいずれでもよい1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。C1〜C3アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピル基が含まれる。
用語「C1〜C6アルキル基」は、直鎖または分岐のいずれでもよい1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。C1〜C6アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシルおよびイソヘキシル基が含まれる。
【0020】
用語「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を意味する。
用語「C1〜C6アルキレン基」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキレンを意味する。C1〜C6アルキレン基の例には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレン基が含まれる。
用語「C6〜C10アリール基」は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、インデンまたはテトラヒドロナフタレンに由来する6〜10個の炭素原子を有する基を意味する。C6〜C10アリール基として、フェニル基が好ましい。
【0021】
用語「5員または6員の脂肪族の単環式複素環式基」は、環を構成する原子として1つ以上の炭素原子ならびに酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選択される1つまたは2つのヘテロ原子を有する、例えば5〜6員の単環式脂肪族ヘテロ環化合物に由来する基を意味する。
用語「5員または6員のヘテロアリール基」は、環を構成する原子として1つ以上の炭素原子ならびに酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選択される1つまたは2つのヘテロ原子を有する、例えば5〜6員の単環式芳香族ヘテロ環化合物に由来する基を意味する。
【0022】
用語「置換されていてもよい」は、1つ以上の置換基を有していてもよい基を意味する。置換基の数ならびにそれらの種類および置換位置は、特に限定されず、2つ以上の置換基が存在する場合、それらは同じであってよく、または異なっていてもよい。
前述の式(I)の記号「Z」は、好ましくは窒素原子、C-HまたはC-Fであり、より好ましくは窒素原子またはC-Fである。
【0023】
Lによって表される「置換されているC1〜C6アルキレン基」では、C1〜C6アルキレン基は、1つ以上の、好ましくは1〜4個の置換基(複数可)を有することができる。C1〜C6アルキレン基が2つ以上の置換基を有する場合、置換基は同じであってよく、または異なっていてもよく、その置換基の例には、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、C1〜C6アルキル基およびC1〜C6アルキル-O-基が含まれる。それらの中でも、オキソ基が好ましい。
Yが、硫黄原子、酸素原子またはNR10(R10は、水素原子またはC1〜C3アルキル基を表す)である場合、R2は、非置換であるか、または1つ以上の、好ましくは1〜3個のC1〜C6アルキル基で置換されているフェニル基であることが好ましい。
R1によって表されるC1〜C3アルキル基は、好ましくはメチル基である。
【0024】
R2によって表される「置換されていてもよい環式基」では、環式基は、環式炭化水素基または複素環式基のいずれかでもよい。環式基は、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよい。環式基は、単環式でも多環式基でもよく、好ましくは単環式または二環式基である。環式基は、架橋構造を有することもできる。環式基の環を構成する原子の数は、特に限定されず、一般に4〜10個であればよい。環式基は、好ましくは、以下の(1)および(2)から選択される環式基でもよい。
【0025】
(1)窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含有することができ、架橋構造を含有してもよい4〜10員の単環式または二環式脂肪族基、
(2)窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含有することができる5〜10員の単環式または二環式芳香族基。環式基の好ましい例には、ピペリジル基、ピロリジニル基、次式によって表されるペルヒドロアゼピニル基、
【化2】

シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタニル基、フェニル基、ジオキソラニル基、オキサニル基およびピリジル基が含まれる。
【0026】
R2は好ましくは、1〜3個の置換基を有していてもよい環式基である。置換基は、同じかまたは異なっており、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、置換されていてもよいC6〜C10アリール基、置換されていてもよい5〜10員の複素環式基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル-CO-基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル-O-基、置換されていてもよいC6〜C10アリール-CO-基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル-O-CO-基、置換されていてもよいC6〜C10アリール-O-CO-基、および置換されていてもよいC6〜C10アリール-SO2基からなる群から選択される。
【0027】
それらの中でも、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、置換されていてもよいC6〜C10アリール基、置換されていてもよい5〜10員の複素環式基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル-CO-基、置換されていてもよいC6〜C10アリール-CO-基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル-O-CO-基、置換されていてもよいC6〜C10アリール-O-CO-基、および置換されていてもよいC6〜C10アリール-SO2基が好ましい。
【0028】
R2によって表される「置換されていてもよい環式基」の例には、次式(II)によって表される基が含まれる。
【化3】

式(II)では、R3は、以下の(1)〜(11)からなる群から選択される基を表す。
(1)置換されていてもよいC6〜C10アリール基;
(2)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-SO2-基;
(3)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-C1〜C6アルキル基;
(4)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-CO-基;
(5)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-O-CO-基;
(6)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-C1〜C6アルキル-O-CO-基;
(7)水素原子;
(8)C1〜C6アルキル-O-CO-基;
(9)置換されていてもよい5〜10員の複素環式基;
(10)置換されていてもよい5員または6員の脂肪族単環式-複素環式基;
(11)複素環式部分上で置換されていてもよい5員または6員の脂肪族単環式-複素環式-C1〜C6アルキル基。
【0029】
R4は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、C1〜C6アルキル基およびC1〜C6アルキル-O-基からなる群から選択される基を表す。
記号「m」は、0〜2の整数を表す。
ただし、Lが単結合を表す場合、式(II)によって表される基とのYの結合位置は、窒素原子に隣接していない炭素原子である。
【0030】
先の(1)〜(6)のそれぞれにおけるC6〜C10アリール部分は、好ましくはフェニル基である。
先の(1)〜(6)のそれぞれにおけるアリール部分が置換されている場合、アリール部分は、以下の(i)〜(viii)からなる群から独立に選択される1つまたは2つの基によって置換されている。
(i)5員または6員の脂肪族単環式-複素環式-C1〜C6アルキル基(該複素環式部分は、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキル-CO-基、C1〜C6アルキル-O-CO-基またはオキソ基によって置換されていてもよい)。複素環式部分として好ましい例には、ピロリジニル基、モルホリニル基、ピペリジル基およびピペラジニル基が含まれる;
(ii)C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキル-CO-基またはC1〜C6アルキル-O-CO-基によって置換されていてもよい、5員または6員の脂肪族単環式-複素環式基。複素環式部分の好ましい例には、ピペラジニル基が含まれる;
(iii)ハロゲン原子;
(iv)シアノ基;
(v)5〜10員の複素環式基によって置換されていてもよいC1〜C6アルキル基。複素環式基として好ましい例には、イソインドリニル基が含まれる;
(vi)C1〜C6アルキル-O-基;
(vii)ジ(C1〜C6アルキル)アミノ-C1〜C6アルキル基;
(viii)5員または6員のヘテロアリール基。
【0031】
先の(9)の「置換されていてもよい5〜10員の複素環式基」における5〜10員の複素環式基の例には、環を構成する原子として1つ以上の炭素原子ならびに酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子を有する、5〜10員の単環式または二環式ヘテロ基が含まれる。5〜10員の複素環式基として好ましい例には、チオフェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピペリジル基、イソインドリニル基およびベンゾオキサジニル基が含まれ、より好ましい例には、チオフェニル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピペリジル基、イソインドリニル基およびベンゾオキサジニル基が含まれる。
【0032】
先の(9)の「置換されていてもよい5〜10員の複素環式基」における置換基の例には、以下の(i)〜(vi)が含まれる。
(i)C1〜C6アルキル基、
(ii)C1〜C6アルキル-CO-基、
(iii)フェニル-C1〜C6アルキル基、
(iv)ニトロ基、
(v)オキソ基、および
(vi)C1〜C6アルキル-O-基。
先の置換基(i)〜(vi)の中でも、(i)C1〜C6アルキル基、(ii)C1〜C6アルキル-CO-基、(iii)フェニル-C1〜C6アルキル基、(iv)ニトロ基、および(v)オキソ基が好ましい。
【0033】
先の(10)の「置換されていてもよい5員または6員の脂肪族の単環式複素環式基」では、例えば、4-ピペリジル基が、5員または6員の脂肪族単環式-複素環式基としては好ましく、例えば、C1〜C6アルキル基が置換基として好ましい。
先の(11)の「環式部分上で置換されていてもよい5員または6員の脂肪族単環式-複素環-C1〜C6アルキル基」では、例えば、4-ピペリジル基が、5員または6員の脂肪族単環式-複素環式部分として好ましく、例えば、C1〜C6アルキル基またはフェニル-C1〜C6アルキル基が置換基として好ましい。
R4は、好ましくは水素原子である。
【0034】
記号「m」は、好ましくは0〜1、より好ましくは1である。
R2が式(II)によって表される基である場合、Yは、好ましくは単結合である。
R2が式(II)によって表される基である場合、Lは、好ましくは単結合または非置換メチレン基である。
R2が式(II)によって表される基であり、LおよびYのそれぞれが単結合である場合、式(II)によって表される基とのYの結合位置(すなわち、式(I)のLに隣接している酸素原子の結合位置)は、好ましくは、窒素原子に隣接していない炭素原子である。
【0035】
R2によって表される「置換されていてもよい環式基」の例には、式(III)によって表される基が含まれる。
【化4】

【0036】
式(III)では、R5は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキル-O-基および置換されていてもよいC6〜C10アリール基からなる群から選択される基を表す。それらの中でも、水素原子、C1〜C6アルキル基および置換されていてもよいC6〜C10アリール基が好ましい。
記号「n」は、0または1の整数を表す。
【0037】
R5によって表される「置換されていてもよいC6〜C10アリール基」では、置換基の例には、ヒドロキシ基によって置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、および複素環式部分上でC1〜C6アルキル基によって置換されていてもよい5員または6員の脂肪族単環式-複素環式-C1〜C6アルキル基が含まれる。複素環式部分は、好ましくはピペラジニル基である。
R2が式(III)によって表される基である場合、Yは、好ましくは単結合である。
R2が式(III)によって表される基である場合、Lは、好ましくは単結合である。
【0038】
R2が、1〜3個の置換基を有していてもよいピリジル基またはフェニル基である場合、それらの置換基は、同じかまたは異なっており、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキル-O-基、ジ(C1〜C6アルキル)アミノ-C1〜C6アルキル基、および5員または6員の脂肪族単環式-複素環式-C1〜C6アルキル基からなる群から選択される。それらの中でも、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、ジ(C1〜C6アルキル)アミノ-C1〜C6アルキル基、および5員または6員の脂肪族単環式-複素環式-C1〜C6アルキル基が好ましい。
5員または6員の脂肪族単環式-複素環式-C1〜C6アルキル基では、複素環式部分は、好ましくはピペリジル基である。
【0039】
本発明の化合物の好ましい例には、以下が含まれる。
1-メチル-2-(1-フェニル-ピペリジン-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[1-(3-フルオロ-フェニル)ピペリジン-3-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[1-(3-メトキシ-フェニル)ピペリジン-3-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-(1-ピリジン-2-イル-ピペリジン-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[(2S)-1-(4-フルオロ-フェニル)ピロリジン-2-イルメトキシ]-6-(3-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-メチル-3H-ピリミジン-4-オン、
tert-ブチル4-[4-[4-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)ピペリジン-1-イル]ベンジル]ピペラジン-1-カルボキシレート、
1-メチル-2-[1-(4-ピペラジン-1-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
【0040】
1-メチル-2-[1-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)フェニル]ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-(4-ピペラジン-1-イル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)フェニル]ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-(4-ピロリジン-1-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
【0041】
2-[1-[4-(1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イルメチル)フェニル]ピペリジン-4-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-(3-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-[2-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)フェニル]ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
6-(3-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-メチル-2-[1-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルメトキシ]-3H-ピリミジン-4-オン、
6-(3-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-メチル-2-[1-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-3H-ピリミジン-4-オン、
1-メチル-2-[1-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)ピロリジン-3-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
【0042】
1-メチル-2-[cis-4-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)フェニル]シクロヘキシルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[trans-4-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)フェニル]シクロヘキシルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[1-(2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-5-イル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、および
2-[1-(2-ベンジル-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-5-イル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン。
【0043】
先の化合物のいずれかの薬学的に許容される塩も好ましい。
前述の式(I)によって表される化合物の薬学的に許容される塩としては、塩酸、臭化水素酸などの無機酸との塩、および酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸などの有機酸との塩が挙げられる。
前述の式(I)によって表される化合物に加えて、光学的に活性なその異性体、またはその薬学的に許容される塩、それらの溶媒和物および水和物も本発明の範囲に含まれる。式(I)によって表される化合物は、1つ以上の不斉炭素原子を有する場合がある。かかる不斉炭素原子の立体化学に関して、それらは独立に、(R)または(S)立体配置のいずれでもよく、ピリミドン誘導体は、光学異性体またはジアステレオ異性体などの立体異性体として存在する場合がある。純粋形態の任意の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などは、本発明の範囲に含まれる。
【0044】
本発明の好ましい化合物の例を、以下に記載の表に示す。しかし、本発明の範囲は以下の化合物によって制限されない。
【0045】
【表1】


















【0046】
前述の式(I)によって表される化合物は、例えばスキーム1に示した方法によって製造することができる。
(スキーム1)
【0047】
【化5】

(上記スキームでは、R1の定義は、既に記載した定義と同じである。Rは、R2-Y-L-であり、R2、YおよびLの定義は、それぞれ既に記載した定義と同じである。)
【0048】
上記式(IIa)によって表される2-クロロピリミドンは、WO2003/027080およびWO2003/037888の明細書に記載の方法によって容易に製造される。
塩化物誘導体(IIa)を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、n-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、および1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エンなどの塩基の存在下で、1〜100時間かけて0℃〜200℃の範囲の適切な温度で、窒素もしくはアルゴン雰囲気下または通常の大気下において化合物(IIIa)またはその塩と反応させて、所望の化合物(Ia)を得ることができる。
【0049】
反応のための溶媒の例としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール溶媒;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素溶媒;ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどの非プロトン性極性溶媒、水などが挙げられる。一般に、使用される塩基に適した単一の溶媒または2つ以上の溶媒の混合物を使用することができる。
【0050】
前述の式(I)によって表される化合物は、以下のスキーム2に示した方法によって製造することもできる。
(スキーム2)
【化6】

(上記スキームでは、R1の定義は、既に記載した定義と同じである。Rは、R2-Y-L-であり、R2、YおよびLの定義は、それぞれ既に記載した定義と同じである。)
【0051】
上記式(IIb)によって表されるヒドロキシ-ピリミドンは、以下に示す参考例1に示す通り、上記式(IIa)によって表される2-クロロピリミドンと水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物との反応を介して製造することができる。
式(Ib)によって表される化合物は、式(IIb)によって表されるヒドロキシ-ピリミドンと式(IIIb)によって表される化合物またはその塩とのMitsunobu反応を介して製造することができる。特に、式(IIb)によって表されるヒドロキシ-ピリミドンと式(IIIb)によって表される化合物またはその塩とを、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート、ジ-tert-ブチルアゾジカルボキシレート、1,1'-(アゾジカルボニル)ジピペリジンまたはN,N,N',N'-テトラメチルアゾジカルボキサミドなどのアゾジカルボキシレートまたはアゾジカルボキサミドの存在下で、トリフェニルホスフィン、ポリマー結合したトリフェニルホスフィン、ジフェニル(2-ピリジル)ホスフィンまたは(4-ジメチルアミノフェニル)ジフェニルホスフィンの存在下で、1〜100時間にわたって0℃〜100℃の範囲の適切な温度で、窒素もしくはアルゴン雰囲気下または通常の大気下において反応させて、所望の化合物(Ib)を得ることができる。
【0052】
反応のための溶媒の例としては、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。一般に、単一の溶媒または2つ以上の溶媒の混合物を使用することができる。
【0053】
TPK1阻害剤は、アルツハイマー病の治療に有効な薬物をもたらすことができ、インビトロでTPK1阻害活性を有する多くの構造的に多様な種類の化合物が、既に開示されている。しかし、TPK1阻害剤の新規の構造の設計は、インビトロおよびインビボ活性、キナーゼ選択性、ADME、PK/PDプロファイルならびに物理的特性におけるいくつかの改善により、臨床的により効率的な化合物をもたらすと期待される。
【0054】
本化合物は、Aβの細胞毒性を抑制することによって、虚血性脳血管障害(Biochem J.359、1頁(2001年))、外傷性頭部損傷(Trends in Molecular Medicine 8、126頁(2002年))、ダウン症候群、脳アミロイド血管症、レビー小体病に起因する脳出血などの治療的処置のための医薬として使用できる可能性もある。さらに本化合物は、進行性核上性麻痺(Acta Neuropathol.104、583頁(2002年))などの神経変性疾患(Current Opinion in Neurobiology 12、275頁(2002年))、亜急性硬化性全脳炎パーキンソニズム、脳炎後パーキンソニズム、ボクサーの脳炎、グアム島パーキンソニズム-認知症複合、レビー小体病、ピック病(Acta Neuropathol.104、583頁(2002年))、大脳皮質基底核変性症(Acta Neuropathol.104、583頁(2002年) 前頭側頭認知症(Acta Neuropathol.104、583頁(2002年))、血管性認知症、外傷性損傷、脳および脊髄外傷、末梢神経障害、網膜症および緑内障ならびに筋萎縮性側索硬化症(European Journal of Neuroscience、第22巻、301〜309頁、2005年)、ならびにインスリン非依存性糖尿病(Biochem J.359、1頁(2001年))、肥満、躁うつ病および統合失調症、脱毛症などの他の疾患の治療的処置のための医薬として使用できる可能性がある。
【0055】
さらにTPK1の阻害は、乳がん、非小細胞(non-small)肺癌、甲状腺がん、TまたはB細胞白血病およびある種のウイルス誘発性腫瘍などのがんの治療に有用となり得る。例えば、TPK1の活性な形態は、結腸直腸(colorectral)がん患者の腫瘍において増大することが示されており、結腸直腸がん細胞におけるTPK1の阻害は、p53依存性アポトーシスを活性化し、腫瘍成長に拮抗する。
ヒトTPK1の阻害剤は、熱帯熱マラリア原虫に見出されたこの酵素のオルソログであるpfGSK3を阻害することもでき、その結果、これらはマラリアの治療に使用することができる (Biochimica et Biophysica Acta 1697、181〜196頁、2004年)。
最近のデータによれば、TPK1阻害剤は、尋常性天疱瘡の治療または予防において使用してもよい。
【0056】
したがって本発明の化合物は、アルツハイマー病の予防的および/または治療的処置を根本的に可能にする医薬の活性成分として有用である。さらに本発明の化合物は、虚血性脳血管障害、ダウン症候群、孤立性脳アミロイド血管症に起因する脳出血、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎パーキンソニズム、脳炎後パーキンソニズム、ボクサーの脳症、グアム島パーキンソニズム-認知症複合、レビー小体病、ピック病、大脳皮質基底核変性症 前頭側頭認知症、血管性認知症、外傷性損傷、脳および脊髄外傷、末梢神経障害、網膜症および緑内障、インスリン非依存性糖尿病、肥満、躁うつ病、統合失調症、脱毛症、乳がん、非小細胞肺癌、甲状腺がん、TまたはB細胞白血病、いくつかのウイルス誘発性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症、マラリア、尋常性天疱瘡、ならびにがん化学療法によって誘発される好中球減少症の予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として有用でもある。
【0057】
先に例示した疾患の中でも、本発明の化合物は、インスリン非依存性糖尿病、アルツハイマー病、虚血性脳血管障害、進行性核上性麻痺、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、外傷性損傷ならびに脳および脊髄外傷、筋萎縮性側索硬化症、ならびにマラリアの予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として特に有用である。これらの疾患の中でも、アルツハイマー病がより好ましい。
【0058】
本発明の化合物は、良好な安全性および良好な薬物動態を有するので、該化合物は医薬として好ましい特徴を有する。
本発明の医薬の活性成分として、前述の式(I)によって表される化合物およびその薬理学的に許容される塩、ならびにその溶媒和物およびその水和物からなる群から選択される物質を使用することができる。物質はそれ自体を、本発明の医薬として投与することができるが、活性成分としての前述の物質および医薬用添加物の1つまたは複数を含む医薬組成物の形態で医薬を投与することが望ましい。本発明の医薬の活性成分として、前述の物質の2つ以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
医薬組成物の種類は、特に限定されず、組成物は、経口または非経口投与のための任意の製剤として提供することができる。例えば医薬組成物は、例えば顆粒、細粒、散剤、硬質カプセル、軟質カプセル、シロップ、エマルジョン、懸濁液、溶液などの経口投与のための医薬組成物の形態に、または静脈内、筋肉内もしくは皮下投与のための注射剤、点滴、経皮調製物、経粘膜調製物、経鼻ドロップ剤、吸入剤、坐剤などの非経口投与のための医薬組成物の形態に製剤化することができる。注射剤または点滴は、凍結乾燥させた調製物の形態などの粉末調製物として調製することができ、使用直前に生理食塩水などの適切な水性媒体に溶解させることによって使用することができる。ポリマーでコーティングした調製物などの徐放調製物は、脳内に直接投与することができる。
【0060】
医薬組成物の製造に使用される医薬用添加物の種類、活性成分に対する医薬用添加物の含量比、および医薬組成物の調製方法は、当業者によって適切に選択され得る。無機もしくは有機物質、または固体もしくは液体物質を、医薬用添加物として使用することができる。一般に、医薬用の添加物は、活性成分の重量に対して1重量%〜90重量%の範囲の比で組み込むことができる。
【0061】
固体医薬組成物の調製に使用される添加剤の例には、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、タルク、セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウムなどが含まれる。経口投与のための液体組成物の調製では、水または植物油などの従来の不活性な賦形剤を使用することができる。液体組成物は、不活性な賦形剤に加えて、湿潤剤、懸濁助剤、甘味剤、芳香剤、着色剤および保存剤などの助剤を含有することができる。液体組成物は、ゼラチンなどの吸収性材料から製造されたカプセルに充填することができる。非経口投与、例えば注射剤、坐剤のための組成物の調製に使用される溶媒または懸濁媒体の例には、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、オレイン酸エチル、レシチンなどが含まれる。坐剤に使用される基剤材料の例には、例えば、カカオ脂、乳化カカオ脂、ラウリン酸脂質、ウィテップゾールが含まれる。
【0062】
本発明の医薬の投与の用量および頻度は、特に限定されず、予防的および/または治療的処置の目的、疾患の種類、患者の体重または年齢、疾患の重症度などの条件に応じて適切に選択することができる。一般に、成人一人に経口投与するための1日用量は、0.01〜1,000mg(活性成分の重量)であってよく、その用量は、1日1回もしくは分割部分として1日数回、または数日に1回投与することができる。医薬が注射剤として使用される場合、投与は、成人一人に対して好ましくは0.001〜3000mg(活性成分の重量)の1日用量で連続的または間欠的に実施することができる。
【実施例】
【0063】
実施例を参照して、本発明をより具体的に説明する。しかし本発明の範囲は、以下の実施例に限定されない。実施例の化合物番号は、先の表の番号に対応する。
【0064】
参考例1
【化7】

2-クロロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(20g、90mmol)の1,4-ジオキサン(200ml)中混合物に、5N水酸化ナトリウム水溶液(100ml)を室温で添加した。得られた混合物を85℃に加熱し、18時間撹拌した。室温に冷却した後、1N塩酸水溶液を添加することによって反応混合物を中和した。得られた固体を濾過によって収集し、酢酸エチルで洗浄した。次いで、2-ヒドロキシ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを白色固体として単離した(14.5g、71mmol、79%)。
【0065】
参考例2
【化8】

(1)2-ヒドロキシアセトフェノン(10g、74.5mmol)およびイミダゾール(15g、220mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(50ml)溶液に、tert-ブチルジメチルクロロシラン(22g、146mmol)を6時間かけて室温で添加した。混合物を水(200ml)に注ぎ、酢酸エチル200mlで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=1/1)によって精製して、2-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-1-フェニルエタノン(8.0g、31.9mmol、43%)を黄色油として得た。
【0066】
(2)2-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-1-フェニルエタノン(8.0g、32mmol)、エチレングリコール(1.99g、32mmol)およびp-トルエンスルホン酸(50mg)を、ベンゼン(50ml)に懸濁させた。混合物を還流状態で5時間撹拌した。溶媒を減圧濃縮した。残渣を水および酢酸エチルで処理した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=1/1)によって精製して、tert-ブチルジメチル-(2-フェニル-[1,3]ジオキソラン-2-イル-メトキシ)シラン(5.5g、18.7mmol、58%)を黄色油として得た。
(3)tert-ブチルジメチル-(2-フェニル-[1,3]ジオキソラン-2-イル-メトキシ)シラン(5.5g、18.7mmol)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(テトラヒドロフラン中1M、56ml)を室温で添加した。混合物を室温で12時間撹拌した。溶媒を減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)によって精製して、(2-フェニル-[1,3]ジオキソラン-2-イル)メタノール(1.54g、8.5mmol、45%)を黄色油として得た。
【0067】
参考例3
【化9】

(1)2-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-1-フェニルエタノン(2.5g、10mmol、実施例4)のメタノール(30ml)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(378mg、10mmol)を室温で添加した。混合物を室温で5.5時間撹拌し、溶媒を減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)によって精製して、2-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-1-フェニルエタノール(0.73g、2.9mmol、29%)を無色油として得た。
【0068】
(2)2-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-1-フェニルエタノール(0.73g、2.9mmol)および3,4-ジヒドロ-2Hピラン(486mg、5.78mmol)のジクロロメタン(30ml)溶液に、p-トルエンスルホン酸一水和物(50mg)を添加した。混合物を室温で12時間撹拌し、溶媒を減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)によって精製して、tert-ブチルジメチル[2-フェニル-2-(テトラヒドロピラン-2-イル-オキシ)エトキシ]シラン(0.86g、2.9mmol、>99%)を無色油として得た。
(3)2-フェニル-2-(テトラヒドロピラン-2-イル-オキシ)エタノールを、参考例2の工程(3)と同様にして、tert-ブチルジメチル[2-フェニル-2-(テトラヒドロピラン-2-イル-オキシ)エトキシ]シランおよびフッ化テトラブチルアンモニウムから無色油として得た。
【0069】
参考例4
【化10】

(R)-ピロリジン-2-イル-メタノール(Sigma-Aldrich Corporationから購入、5g、49mmol)および1N水酸化ナトリウム水溶液(100ml)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液に、0℃でジ-tert-ブチルジカーボネート(10.9g、50mmol)を添加した。得られた混合物を室温に温め、3時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=1/1〜1/2)によって精製して、(R)-tert-ブチル2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレートを白色固体として得た(5.7g、28mmol、57%)。
【0070】
参考例5
【化11】

(1)イタコン酸ジメチル(25g、158mmol)のメタノール(150ml)溶液に、(R)-1-フェニルエチルアミン(20ml、158mmol)を室温で添加した。得られた混合物を18時間撹拌し、濃縮した。残渣をトルエン(100ml)に溶解し、p-トルエンスルホン酸(3.0g、16mmol)を室温で添加した。混合物を16時間還流させ、濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=1/1〜1/3)によって精製して、メチル(3S)-5-オキソ-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン-3-カルボキシレートを白色固体として得(14.0g、56.5mmol、36%)、メチル(3R)-5-オキソ-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン-3-カルボキシレートを黄色油として得た(18.7g、75.5mmol、48%)。それぞれの立体化学を、文献(J.Med.Chem.1990年、33、71〜77頁)に基づくデータより決定した。
メチル(3S)-5-オキソ-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン-3-カルボキシレート
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:1.54(3H,d,J=7.2Hz)、2.65-2.77(2H,m)、3.14-3.23(2H,m)、3.50-3.57(1H,m)、3.65(3H,s)、5.50(1H,q,J=7.2Hz)、7.26-7.36(5H,m)
メチル(3R)-5-オキソ-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン-3-カルボキシレート
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:1.54(3H,d,J=7.1Hz)、2.65-2.79(2H,m)、3.06-3.14(1H,m)、3.19(1H,dd,J=8.6,9.8Hz)、3.54(1H,dd,J=6.4,9.7Hz)、3.72(3H,s)、5.50(1H,q,J=7.1Hz)、7.27-7.37(5H,m)
【0071】
(2)水素化リチウムアルミニウム(4.55g、120mmol)のシクロペンチルメチルエーテル(100ml)中スラリーに、メチル(3S)-5-オキソ-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン-3-カルボキシレート(14.0g、56.5mmol)を、0℃において窒素雰囲気下で滴下した。得られた混合物を15分間撹拌し、徐々に室温に温めた。1時間後、飽和硫酸ナトリウム水溶液を0℃で添加することによって反応を停止し、生じた固体材料を濾過によって除去した。濾液を濃縮して、[(3S)-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン-3-イル]メタノールを得た(6.62g、32mmol、57%)。この化合物を、さらなる精製なしに次の反応で使用した。
(3)[(3S)-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン-3-イル]メタノール(6.62g、32mmol)およびイミダゾール(4.77g、70mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(90ml)溶液に、tert-ブチルジメチルクロロシラン(5.28g、35mmol)を0℃で添加し、得られた混合物を室温に温めた。反応混合物を終夜撹拌し、水に注いだ。酢酸エチルによる抽出を実施した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=90/10〜75/25)によって精製して、(3S)-3-([[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ]メチル)-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン(8.81g、27.6mmol、86%)を無色油として得た。
【0072】
(4)(3S)-3-([[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ]メチル)-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン(8.81g、27.6mmol)の1,2-ジクロロエタン(75ml)溶液に、クロロギ酸1-クロロエチル(8.1ml、75mmol)を室温で添加した。得られた混合物を5時間還流させ、室温に冷却した。褐色溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(2.3ml、13mmol)を添加した。混合物をさらに3時間還流させ、濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、1N塩酸水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣をメタノール(75ml)に溶解し、1時間還流させた。減圧下で濃縮した後、1N塩酸水溶液を添加した。水溶液を酢酸エチルで洗浄し、固体炭酸カリウムによって塩基性にした。塩基性溶液を0℃に冷却し、ジ-tert-ブチルジカーボネート(6.3g、29mmol)のテトラヒドロフラン(75ml)溶液を添加した。得られた混合物を3時間撹拌した。有機材料を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=3/1〜1/2)によって精製して、(S)-tert-ブチル3-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(2.96g、14.7mmol、53%)を無色油として得た。
(5)(S)-tert-ブチル3-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(2.96g、14.7mmol)を、丸底フラスコ中、4N塩化水素-酢酸エチル溶液(30ml)と室温で混合した。混合物を2時間撹拌し、減圧濃縮した。残渣をエタノール(10ml)で希釈し、固体炭酸カリウムを添加した。気泡が発生するまで、得られたスラリーに少量の水を添加した。2時間後、濾過を実施して固体材料を除去し、濾液を濃縮して、(S)-ピロリジン-3-イル-メタノール(1.49g、14.7mmol、>99%)をオレンジ色の油として得た。
【0073】
(6)乾燥させた丸底フラスコに、ヨウ化銅(I)(0.10g、0.53mmol)、炭酸セシウム(3.58g、11mmol)を入れた。フラスコ内を真空状態にし、窒素を再充填した。窒素流の下で、(S)-ピロリジン-3-イル-メタノール(0.80g、7.9mmol)、3-ヨードチオフェン(0.54ml、5.3mmol)、2-(2-メチル-1-オキソプロピル)シクロヘキサノン(0.35ml、2.1mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(5ml)を添加した。混合物を、窒素下で周囲温度において12時間撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、ガラスフィルターを通過させて無機塩を除去し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=9/1〜1/1)によって精製して、(S)-[1-(チオフェン-3-イル)ピロリジン-3-イル]メタノール(0.41g、2.2mmol、42%)を褐色油として得た。上記(2)〜(6)と同様にして、メチル(3S)-5-オキソ-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン-3-カルボキシレートの代わりにメチル(3R)-5-オキソ-1-[(1R)-1-フェニルエチル]ピロリジン-3-カルボキシレートを使用して、(R)-[1-(チオフェン-3-イル)ピロリジン-3-イル]メタノールを得た(0.19g、1.0mmol)。
【0074】
参考例6
【化12】

(1)tert-ブチル4-ヒドロキシアゼパン-1-カルボキシレート(1.00g、4.65mmol)の酢酸エチル(23ml)溶液に、4N塩化水素-酢酸エチル溶液(23ml、92.0mmol)を添加した。混合物を室温で5時間撹拌した。混合物を減圧濃縮して、アゼパン-4-オール塩酸塩を薄黄色油として得た(710mg、4.65mmol、>99%)。この化合物を、さらなる精製なしに次の反応で使用した。
【0075】
(2)アゼパン-4-オール塩酸塩(300mg、1.98mmol)および4-フルオロベンゾニトリル(311mg、2.57mmol)のジメチルスルホキシド(3.00ml)中混合物に、炭酸カリウム(821mg、5.94mmol)を添加した。混合物を120℃で6時間撹拌した。混合物を水と酢酸エチルで分離した。有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=1/4)によって精製して、4-(4-ヒドロキシアゼパン-1-イル)ベンゾニトリルを黄色固体として得た(306mg、1.41mmol、71%)。
【0076】
参考例7
【化13】

(1)水素化リチウムアルミニウム(2.6g、69mmol)のジエチルエーテル(54ml)中混合物に、ジエチルエーテル(54ml)中5-ブロモアントラニル(bromoanthranillic)酸メチルエステル(6.3g、27mmol)を0℃で滴下した。混合物を0℃で3時間撹拌した。次いで、水(2.6ml)、15wt%水酸化ナトリウム水溶液(2.6ml)および水(7.8ml)を、0℃で逐次的に添加した。混合物を、セライトパッドを介して濾過し、減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(160ml)に溶解し、トリエチルアミン(15g、150mmol)を添加した。混合物を0℃に冷却し、クロロギ酸トリクロロメチル(2.9g、15mmol)を添加した。混合物を室温で4時間撹拌した。混合物を水と酢酸エチルで分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、粗生成物を得た。この粗生成物をジエチルエーテルで洗浄して、6-ブロモ-1,4-ジヒドロ-2H-3,1-ベンゾオキサジン-2-オンを無色固体として得た(4.7g、21mmol、77%)。
【0077】
(2)水素化ナトリウム(鉱油中55wt%、1.36g、31.2mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(37ml)溶液に、N,N-ジメチルホルムアミド(37ml)中6-ブロモ-1,4-ジヒドロ-2H-3,1-ベンゾオキサジン-2-オン(5.93g、26.0mmol)を0℃で添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで2-(クロロメトキシ)エチルトリメチルシラン(4.77g、28.6mmol)を0℃で添加した。混合物を終夜室温で撹拌した。混合物を水と酢酸エチルで分離した。有機層を水で洗浄し(4回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=90/10〜60/40)によって精製して、6-ブロモ-1-[[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル]-1,4-ジヒドロ-2H-3,1-ベンゾオキサジン-2-オンを薄黄色固体として得た(7.96g、22.2mmol、85%)。
【0078】
参考例8
【化14】

(1)1,4-ジオキサ-スピロ[4.5]デカン-8-オール(18.0g、114mmol)、イミダゾール(10.1g、148mmol)およびトリフェニルホスフィン(34.3g、131mmol)のテトラヒドロフラン(57ml)中混合物に、テトラヒドロフラン(57ml)中ヨウ素(33.2g、131mmol)を0℃で添加した。混合物を室温に温め、6時間撹拌した。混合物を10wt%亜硫酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、有機化合物をヘキサンで抽出した(3回)。有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣をヘキサンに再度溶解し、濾過してトリフェニルホスフィンオキシドを除去した。濾液を減圧濃縮して、8-ヨード-1,4-ジオキサ-スピロ[4.5]デカンを無色油として得た(18.1g、67.6mmol、59%)。
【0079】
(2)4-ブロモベンジルアルコール(18.0g、96.2mmol)およびイミダゾール(7.86g、115mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(200ml)中混合物に、tert-ブチルジメチルクロロシラン(17.4g、115mmol)を室温で添加した。混合物を5時間撹拌した。混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=95/5)によって精製して、(4-ブロモベンジルオキシ)(tert-ブチル)ジメチルシランを無色油として得た(27.7g、91.8mmol、92%)。
(3)亜鉛粉末(5.52g、84.5mmol)およびセライト(1.1g)のN,N-ジメチルアセトアミド(14ml)中混合物に、1,2-ジブロモエタン(0.665ml、7.54mmol)中クロロトリメチルシラン(0.930ml、7.33mmol)を、0℃において窒素雰囲気下で滴下した。混合物を室温に温め、20分間撹拌した。次いで、N,N-ジメチルアセトアミド(34ml)中8-ヨード-1,4-ジオキサ-スピロ[4.5]デカン(18.1g、67.6mmol)を0℃で滴下した。混合物を室温で30分間撹拌し、上清溶液を、(4-ブロモベンジルオキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(15.7g、52.0mmol)、ヨウ化銅(I)(792mg、4.16mmol)および[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(1.70g、2.08mmol)のN,N-ジメチルアセトアミド(74ml)中混合物に、室温において窒素雰囲気下で滴下した。混合物を80℃で5時間撹拌した。混合物を冷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=92/8)によって精製して、tert-ブチル-[4-(1,4-ジオキサ-スピロ[4.5]デカ-8-イル)ベンジルオキシ]ジメチルシランを薄黄色油として得た(14.0g、38.6mmol、74%)。
【0080】
(4)tert-ブチル-[4-(1,4-ジオキサ-スピロ[4.5]デカ-8-イル)ベンジルオキシ]ジメチルシラン(12.1g、33.3mmol)のアセトン(12ml)および水(1.2ml)溶液に、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(2.51g、9.99mmol)を室温で添加した。混合物を3時間還流させた。混合物を水と酢酸エチルに分離した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=60/40)によって精製して、4-(4-ヒドロキシメチルフェニル)シクロヘキサノンを無色固体として得た(4.21g、20.6mmol、62%)。
【0081】
(5)4-(4-ヒドロキシメチルフェニル)シクロヘキサノン(4.55g、22.3mmol)およびイミダゾール(3.04g、44.6mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(74ml)中混合物に、tert-ブチルジメチルクロロシラン(3.70g、24.5mmol)を室温で添加した。混合物を終夜撹拌した。混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣をメタノール(111ml)に溶解し、0℃に冷却し、次いで水素化ホウ素ナトリウム(2.53g、66.9mmol)を添加した。混合物を0℃で1時間撹拌した。混合物を水と酢酸エチルで分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=80/20)によって精製して、cis-4-[4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシメチル)フェニル]シクロヘキサノールを無色固体として得(1.23g、3.84mmol、17%);Rf値=0.50(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=75/25)、trans-4-[4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシメチル)フェニル]シクロヘキサノールを無色固体として得た(5.33g、16.6mmol、75%);Rf値=0.32(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=75/25)。
4-[4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシメチル)-フェニル]-シクロヘキサノール。それぞれの立体異性体の立体配置を、1H-NMRスペクトルおよびNOE実験によって決定した。
cis-4-[4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシメチル)フェニル]シクロヘキサノール
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.10(6H,s)、0.94(9H,s)、1.35-1.40(1H,brs)、1.65-1.72(4H,m)、1.84-1.93(4H,m)、2.49-2.57(1H,m)、4.11-4.14(1H,m)、4.71(2H,s)、7.20(2H,d,J=8.2Hz)、7.24-7.27(2H,m)
trans-4-[4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシメチル)フェニル]シクロヘキサノール
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.09(6H,s)、0.94(9H,s)、1.37-1.58(5H,m)、1.89-1.93(2H,m)、2.07-2.10(2H,m)、2.49(1H,tt,J=3.9,11.8Hz)、3.65-3.72(1H,m)、4.71(2H,s)、7.16(2H,d,J=7.8Hz)、7.23-7.26(2H,m)
【0082】
参考例9
【化15】

(1)(4-ブロモメチル-フェニル)酢酸メチル(6.00g、24.7mmol)のメタノール(60ml)溶液に、ピペリジン(6.30g、74.0mmol)を0℃で添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧濃縮した。残渣を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、(4-ピペリジン-1-イル-メチル-フェニル)酢酸メチルを薄赤色油として得た(5.98g、24.2mmol、98%)。
【0083】
(2)水素化リチウムアルミニウム(2.53g、66.7mmol)のテトラヒドロフラン(100ml)中混合物に、(4-ピペリジン-1-イル-メチル-フェニル)酢酸メチル(5.50g、22.2mmol)を、0℃において窒素雰囲気下で滴下した。混合物を0℃で2時間撹拌した。水(2.5ml)、15wt%水酸化ナトリウム水溶液(2.5ml)および水(7.5ml)を、混合物に0℃で逐次的に添加した。混合物を、セライトパッドを介して濾過し、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル/メタノール=90/10〜80/20)によって精製して、2-(4-ピペリジン-1-イル-メチル-フェニル)エタノールを無色油として得た(4.27g、19.5mmol、88%)。
【0084】
実施例1:化合物番号1.101の製造
【化16】

(1)水素化ナトリウム(鉱油中60wt%、0.24g、6.0mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(15ml)中混合物に、tert-ブチル3-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシレート(1.0g、5.0mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(5ml)溶液を、室温において窒素雰囲気下で滴下した。混合物を1時間撹拌した後、2-クロロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(1.1g、5.0mmol)を混合物に添加した。得られた混合物を終夜撹拌し、水に注いだ。抽出による後処理を、酢酸エチルで実施した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣に、4N塩化水素-酢酸エチル溶液(10ml)を添加し、得られたスラリーを室温で2時間撹拌した。減圧下で濃縮した後、残渣を水に溶解した。水溶液を酢酸エチルで洗浄し、炭酸カリウムで塩基性にした。クロロホルムによる抽出を3回実施し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮した後、分析的に純粋な1-メチル-2-(ピペリジン-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを白色固体として単離した(0.66g、2.3mmol、46%)。この化合物を、さらなる精製なしに次の反応で使用した。
【0085】
(2)丸底フラスコに、1-メチル-2-(ピペリジン-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(0.2g、0.70mmol)、ブロモベンゼン(105μl、1.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(46mg、0.05mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシビフェニル(82mg、0.2mmol)およびリン酸三カリウム(0.43g、2.0mmol)のジメトキシエタン(3ml)中混合物を、室温において窒素雰囲気下で添加し、100℃に加熱した。5時間撹拌した後、得られた混合物を室温に冷却した。得られた混合物を水に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=50/50)によって精製して、1-メチル-2-(1-フェニル-ピペリジン-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを黄色固体として得た(67mg、0.18mmol、26%)。
【0086】
実施例2:化合物番号1.102の製造
【化17】

1-メチル-2-(ピペリジン-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(0.10g、0.35mmol)およびトリエチルアミン(70μl、0.5mmol)のジクロロメタン(5ml)溶液に、クロロギ酸メチル(40μl、0.5mmol)を0℃で添加した。得られた混合物を2時間撹拌し、1N塩酸水溶液に注いだ。分離した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/メタノール=100/0〜90/10)によって精製して、メチル3-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)ピペリジン-1-カルボキシレートを白色固体として得た(52mg、0.15mmol、43%)。
【0087】
実施例3〜12:化合物番号1.103〜1.112の製造
上記実施例1または2と同様にして、表1に列挙した化合物番号1.103〜1.112を得た。
【0088】
実施例13:化合物番号1.201の製造
【化18】

(1)水素化ナトリウム(鉱油中60wt%、0.772g、19.3mmol)のテトラヒドロフラン(92ml)溶液に、tert-ブチル4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-カルボキシレート(3.70g、18.4mmol)を0℃で添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで2-クロロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(4.09g、18.4mmol)を添加した。混合物を終夜撹拌した。混合物を水と酢酸エチルで分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣をジクロロメタン(37ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(41.9g、368mmol)を溶液に添加した。混合物を室温で5時間撹拌した。減圧下で濃縮した後、残渣を水に溶解した。水溶液を酢酸エチルで洗浄し、炭酸カリウムで塩基性にした。クロロホルムによる抽出を3回実施した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、1-メチル-2-(ピペリジン-4-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを薄黄色固体として得た(2.48g、8.63mmol、47%)。この化合物を、さらなる精製なしに次の反応で使用した。
【0089】
(2)tert-ブチル4-(4-ブロモ-ベンジル)ピペラジン-1-カルボキシレート(371mg、1.04mmol)、1-メチル-2-(ピペリジン-4-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(300mg、1.04mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加物(43.2mg、41.8μmol)および2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリイソプロピルビフェニル(79.6mg、0.167mmol)のトルエン(2.09ml)中混合物に、ナトリウムtert-ブトキシド(151mg、1.57mmol)を窒素雰囲気下で添加した。混合物を、Biotageマイクロ波反応器中、150℃で30分間撹拌した。混合物を、セライトパッドを介して濾過し、減圧濃縮した。残渣を、NH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=1/1)によって精製して、tert-ブチル4-[4-[4-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)ピペリジン-1-イル]ベンジル]ピペラジン-1-カルボキシレートを薄黄色固体として得た(236mg、0.420mmol、40%)。
【0090】
実施例14:化合物番号1.202の製造
【化19】

tert-ブチル4-[4-[4-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)ピペリジン-1-イル]ベンジル]ピペラジン-1-カルボキシレート(470mg、0.83mmol)のジクロロメタン(4.2ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(3.9g、34mmol)を室温で添加した。混合物を終夜撹拌した。減圧下で濃縮した後、残渣を水に溶解した。水溶液を酢酸エチルで洗浄し、炭酸カリウムで塩基性にした。クロロホルムによる抽出を3回実施し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、1-メチル-2-[1-(4-ピペラジン-1-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを薄黄色固体として得た(260mg、0.56mmol、67%)。
【0091】
実施例15:化合物番号1.203の製造
【化20】

1-メチル-2-[1-(4-ピペラジン-1-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(80mg、0.17mmol)、ホルムアルデヒド溶液(水中37%、55mg、0.68mmol)および酢酸(一滴)の1,2-ジクロロエタン(0.85ml)中混合物に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(130mg、0.61mmol)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を水とクロロホルムで分離した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/メタノール=95/5)によって精製して、1-メチル-2-[1-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)フェニル]ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを無色固体として得た(49mg、0.10mmol、59%)。
【0092】
実施例16〜46:化合物番号1.204〜1.234の製造
上記実施例13、14または15と同様にして、表1に列挙した化合物番号1.204〜1.234を得た。
【0093】
実施例47:化合物番号1.301の製造
【化21】

(1)1-メチル-2-(ピペリジン-4-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(1.00g、3.48mmol)および2-フルオロベンズアルデヒド(475mg、3.83mmol)のジメチルスルホキシド(3.50ml)中混合物に、炭酸カリウム(1.44g、10.4mmol)を添加した。混合物を120℃で4時間撹拌した。混合物を水とクロロホルムで分離した。有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル)によって精製して、2-[4-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)ピペリジン-1-イル]ベンズアルデヒドを黄色固体として得た(711mg、1.82mmol、52%)。
【0094】
(2)2-[4-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)ピペリジン-1-イル]ベンズアルデヒド(80mg、0.20mmol)、モルホリン(27mg、0.31mmol)および酢酸(一滴)の1,2-ジクロロエタン(1.0ml)中混合物に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(110mg、0.52mmol)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を水とクロロホルムで分離した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/メタノール=95/5)によって精製して、1-メチル-2-[1-(2-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを無色固体として得た(63mg、0.14mmol、67%)。
【0095】
実施例48〜51:化合物番号1.302〜1.305の製造
実施例47と同様にして、表1に列挙した化合物番号1.302〜1.305を得た。
【0096】
実施例52:化合物番号1.401の製造
【化22】

(1)6-ブロモ-1-[[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル]-1,4-ジヒドロ-2H-3,1-ベンゾオキサジン-2-オン(620mg、1.7mmol)、1-メチル-2-(ピペリジン-4-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(500mg、1.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加物(72mg、70μmol)および2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリイソプロピルビフェニル(130mg、0.28mmol)のトルエン(3.5ml)中混合物に、ナトリウムtert-ブトキシド(250mg、2.6mmol)を窒素雰囲気下で添加した。混合物を、Biotageマイクロ波反応器を利用して150℃で30分間撹拌した。混合物を、セライトパッドを介して濾過し、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル)によって精製して、1-メチル-2-[[1-(2-オキソ-1[[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル]-1,4-ジヒドロ-2H-3,1-ベンゾオキサジン-6-イル)ピペリジン-4-イル]オキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを薄黄色固体として得た(110mg、0.19mmol、11%)。
【0097】
(2)1-メチル-2-[[1-(2-オキソ-1[[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル]-1,4-ジヒドロ-2H-3,1-ベンゾオキサジン-6-イル)ピペリジン-4-イル]オキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(78mg、0.14mmol)のテトラヒドロフラン(1.4ml)溶液に、6N塩酸水溶液(1.4ml、8.4mmol)を添加した。混合物を70℃で3時間撹拌した。混合物を水に注いだ。水溶液を炭酸水素ナトリウムで中和した。ジクロロメタンによる抽出を3回実施した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/メタノール=98/2)によって精製して、1-メチル-2-[[1-(2-オキソ-1,4-ジヒドロ-2H-3,1-ベンゾオキサジン-6-イル)ピペリジン-4-イル]オキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを薄黄色固体として得た(22mg、0.051mmol、38%)。
【0098】
実施例53:化合物番号1.501の製造
【化23】

(1)1-メチル-2-(ピペリジン-4-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(290mg、1.0mmol)、tert-ブチル4-(2-オキソ-エチル)ピペリジン-1-カルボキシレート(300mg、1.3mmol)および酢酸(一滴)の1,2-ジクロロエタン(5.0ml)中混合物に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(530mg、2.5mmol)を添加した。混合物を終夜室温で撹拌した。混合物を水とジクロロメタンで分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、NH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=30/70)によって精製して、tert-ブチル4-[2-[4-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)ピペリジン-1-イル]エチル]ピペリジン-1-カルボキシレートを無色固体として得た(340mg、0.67mmol、67%)。
【0099】
(2)tert-ブチル4-[2-[4-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)ピペリジン-1-イル]エチル]ピペリジン-1-カルボキシレート(326mg、0.654mmol)のエタノール(6.54ml)溶液に、2N塩化水素-エタノール溶液(9.81ml、19.6mmol)を室温で添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。減圧下で濃縮した後、残渣を水に溶解した。水溶液を酢酸エチルで洗浄し、炭酸カリウムで塩基性にした。クロロホルムによる抽出を3回実施した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、1-メチル-2-[1-(2-ピペリジン-4-イル-エチル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを薄黄色固体として得た(207mg、0.519mmol、79%)。
【0100】
実施例54:化合物番号1.502の製造
【化24】

1-メチル-2-[1-(2-ピペリジン-4-イル-エチル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(40mg、0.10mmol)、ベンズアルデヒド(16mg、0.15mmol)および酢酸(一滴)の1,2-ジクロロエタン(0.5ml)中混合物に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(53mg、0.25mmol)を添加した。混合物を終夜室温で撹拌した。混合物を水とジクロロメタンで分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、NH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=20/80)によって精製して、2-[1-[2-(1-ベンジル-ピペリジン-4-イル)エチル]ピペリジン-4-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを無色固体として得た(35mg、0.71mmol、71%)。
【0101】
実施例55〜57:化合物番号1.503〜1.505の製造
上記実施例53または54と同様にして、表1に列挙した化合物番号1.503〜1.505を得た。
【0102】
実施例58:化合物番号1.601の製造
【化25】

1-メチル-2-(ピペリジン-4-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(290mg、1.0mmol)、4-ジメチルアミノメチル安息香酸(180mg、1.0mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(380mg、2.0mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(310mg、2.0mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(10ml)中混合物に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(130mg、1.0mmol)を室温で添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を水とジクロロメタンで分離した。有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、NH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=15/85)によって精製して、2-[1-(4-ジメチルアミノメチル-ベンゾイル)ピペリジン-4-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを無色固体として得た(66mg、0.15mmol、15%)。
【0103】
実施例59:化合物番号1.701の製造
【化26】

4-(4-ヒドロキシ-アゼパン-1-イル)ベンゾニトリル(300mg、1.39mmol)、2-ヒドロキシ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(312mg、1.53mmol)、トリフェニルホスフィン(400mg、1.53mmol)のテトラヒドロフラン(4.6ml)中混合物に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(トルエン中40wt%、771mg、1.53mmol)を窒素雰囲気下で添加した。混合物を終夜室温で撹拌した。次いで沈殿物を収集し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル)によって精製して、4-[4-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)アゼパン-1-イル]ベンゾニトリルを無色固体として得た(360mg、0.89mmol、64%)。
【0104】
実施例60:化合物番号1.801の調製
【化27】

水素化ナトリウム(鉱油中60wt%、326mg、8.15mmol)のテトラヒドロフラン(14.0ml)溶液に、1-メチルシクロヘキサノール(ラセミ体;シス/トランス混合物、930mg、8.15mmol)を室温で添加した。混合物を40℃で1時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、2-クロロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(1.51g、6.78mmol)を混合物に添加した。混合物を60℃で8時間撹拌した。混合物を水と酢酸エチルで分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル)によって精製して、1-メチル-2-(2-メチル-シクロヘキシルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(シス/トランス混合物)を無色固体として得た(752mg、2.50mmol、37%)。
【0105】
実施例61〜69:化合物番号1.802〜1.810の製造
上記実施例60と同様にして、表1に列挙した化合物番号1.802〜1.810を得た。
【0106】
実施例70:化合物番号1.901の製造
【化28】

cis-4-[4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシメチル)フェニル]シクロヘキサノール(600mg、1.87mmol)、2-ヒドロキシ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(382mg、1.87mmol)、トリフェニルホスフィン(540mg、2.06mmol)のテトラヒドロフラン(6.2ml)中混合物に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(トルエン中40wt%、1.04g、2.06mmol)を窒素雰囲気下で添加した。混合物を終夜室温で撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=60/40〜50/50)によって精製して、無色固体を得た。この化合物をテトラヒドロフラン(7.5ml)に溶解し、0℃に冷却した。フッ化テトラブチルアンモニウム(テトラヒドロフラン中1.0M、3.0ml、3.0mmol)を溶液に添加した。混合物を室温に温め、1時間撹拌した。混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル)によって精製して、2-[trans-4-(4-ヒドロキシメチル-フェニル)シクロヘキシルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを無色固体として得た(243mg、0.619mmol、33%)。
【0107】
実施例71:化合物番号1.902の製造
上記実施例70と同様にして、cis-4-[4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシメチル)フェニル]シクロヘキサノールの代わりにtrans-4-[4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシメチル)フェニル]シクロヘキサノール(600mg、1.87mmol)を使用して、表1に列挙した化合物番号1.902を得た(377mg、0.961mmol、51%)。
【0108】
実施例72:化合物番号1.903の製造
【化29】

2-[trans-4-(4-ヒドロキシメチル-フェニル)シクロヘキシルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(100mg、0.255mmol)およびトリエチルアミン(51.6mg、0.510mmol)のジクロロメタン(1.3ml)中混合物に、メタンスルホニルクロリド(32.1mg、0.28mmol)を0℃で添加した。混合物を室温に温め、終夜撹拌した。混合物を水とジクロロメタンで分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、テトラヒドロフラン(1.3ml)およびN,N-ジメチルホルムアミド(0.3ml)に溶解した。1-メチルピペラジン(30.6mg、0.306mmol)および炭酸カリウム(52.8mg、0.382mmol)を溶液に添加した。混合物を60℃で3時間撹拌した。混合物を水に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、NH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル)によって精製して、1-メチル-2-[trans-4-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)フェニル]シクロヘキシルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを無色固体として得た(51.1mg、0.108mmol、42%)。
【0109】
実施例73:化合物番号1.904の製造
上記実施例71および72と同様にして、表1に列挙した化合物番号1.904を得た。
【0110】
実施例74:化合物番号2.001の製造
【化30】

水素化ナトリウム(鉱油中60wt%、202mg、5.05mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(1.0ml)溶液に、4-ヘキシルフェノール(899mg、5.04mmol)を室温で添加し、1時間撹拌した。2-クロロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(935mg、4.20mmol)を溶液に添加した。混合物を終夜室温で撹拌した。混合物を水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=50/50)によって精製して、2-(4-ヘキシルフェノキシ)-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを無色固体として得た(1.14g、3.13mmol、75%)。
【0111】
実施例75〜76:化合物番号2.002および2.003の製造
上記実施例74と同様にして、表1に列挙した化合物番号2.002および2.003を得た。
【0112】
実施例77:化合物番号2.101の製造
【化31】

(1)水素化ナトリウム(鉱油中60wt%、156mg、3.89mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(7.0ml)溶液に、トロピン(東京化成工業株式会社から購入、500mg、3.54mmol)を室温で添加した。混合物を50℃で1時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、2-クロロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(867mg、3.89mmol)を混合物に添加した。混合物を90℃で10時間撹拌した。混合物を水と酢酸エチルで分離した。有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、NH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル)によって精製して、エンド-1-メチル-2-(8-メチル-8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを無色固体として得た(97.2mg、0.297mmol、8%)。
【0113】
(2)エンド-1-メチル-2-(8-メチル-8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(90mg、0.28mmol)の1,2-ジクロロエタン(0.92ml)溶液に、クロロギ酸1-クロロエチル(98mg、0.69mmol)を室温で添加した。混合物を4時間還流させた。混合物を室温に冷却し、次いでメタノール(2.0ml)を混合物に添加した。混合物を3時間還流させた。減圧下で濃縮した後、残渣を水に溶解した。水溶液を炭酸カリウムで塩基性にした。クロロホルムによる抽出を3回実施し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、NH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチルからクロロホルム)によって精製して、エンド-2-(8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イルオキシ)-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを薄黄色固体として得た(37mg、0.12mmol、43%)。
【0114】
実施例78:化合物番号2.102の製造
【化32】

エンド-2-(8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イルオキシ)-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(30mg、96μmol)、1-ブロモ-4-フルオロベンゼン(18mg、110μmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)-クロロホルム付加物(4.0mg、3.9μmol)および2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリイソプロピルビフェニル(7.3mg、15μmol)のトルエン(0.45ml)中混合物に、ナトリウムtert-ブトキシド(14mg、140μmol)を窒素雰囲気下で添加した。混合物を8時間還流させた。混合物を、Celiteパッドを介して濾過し、減圧濃縮した。残渣を、NH-シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=20/80)によって精製して、エンド-2-[8-(4-フルオロ-フェニル)-8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを薄黄色固体として得た(15mg、37μmol、38%)。
【0115】
実施例79:化合物番号2.201の製造
【化33】

(1)(R)-tert-ブチル2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(5.0g、24.8mmol)のテトラヒドロフラン(150ml)溶液に、窒素雰囲気下でトリフェニルホスフィン(6.8g、25.9mmol)、アゾジカルボン酸ジエチルの40wt%トルエン溶液(11.8ml)および2-ヒドロキシ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(5.0g、24.5mmol)を添加した。褐色混合物を終夜撹拌し、減圧濃縮した。残渣を、ショートカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/メタノール=90/10)を通過させて、ホスフィン化合物を除去した。クロロホルム(100ml)中得られた材料に、室温でトリフルオロ酢酸(40ml)を添加した。得られた溶液を終夜撹拌し、減圧濃縮した。残渣を水に溶解し、炭酸カリウムで塩基性にし、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/メタノール=90/10)によって精製して、(R)-1-メチル-2-(ピロリジン-2-イルメトキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを白色固体として得た(4.0g、13.9mmol、57%)。
【0116】
(2)1-メチル-2-(ピペリジン-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンの代わりに(R)-1-メチル-2-(ピロリジン-2-イルメトキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(0.20g、0.70mmol)を用い、クロロギ酸メチルの代わりにクロロギ酸フェニル(125μl、1.0mmol)を用いたことを除いては、メチル3-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)ピペリジン-1-カルボキシレートの場合と同様にして、フェニル(2R)-2-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレートを製造した。フェニル(2R)-2-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレートを白色固体として単離した(29mg、0.07mmol、10%)。
【0117】
実施例80〜81:化合物番号2.202〜2.203の製造
上記実施例1または79と同様にして、表1に列挙した化合物番号2.202〜2.203を得た。
実施例82〜83:化合物番号2.204〜2.205の製造
上記実施例1または79と同様にして、(R)-tert-ブチル2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレートの代わりに(S)-tert-ブチル2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(Sigma-Aldrich Corporationから購入)を使用して、表1に列挙した化合物番号2.204(79mg、0.21mmol)および2.205(106mg、0.27mmol)をそれぞれ得た。
【0118】
実施例84:化合物番号2.206の製造
【化34】

水素化ナトリウム(鉱油中60wt%、0.04g、1.0mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(2ml)中スラリーに、N,N-ジメチルホルムアミド(1ml)中(S)-[1-(チオフェン-3-イル)ピロリジン-3-イル]メタノール(0.13g、0.70mmol)を、室温において窒素雰囲気下で添加した。得られた混合物を15分間撹拌した。混合物に、2-クロロ-6-(3-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-メチル-3H-ピリミジン-4-オン(0.14g、0.60mmol)を室温で添加した。混合物を3時間撹拌した後、反応を水で停止し、水と酢酸エチルで分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=90/10〜0/100)によって精製して、6-(3-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-メチル-2-[(3S)-1-チオフェン-3-イル-ピロリジン-3-イルメトキシ]-3H-ピリミジン-4-オン(0.045g、0.12mmol、19%)を黄色固体として得た。
【0119】
実施例85:化合物番号2.207の製造
上記実施例84と同様にして、表1に列挙した化合物番号2.207を得た。
【0120】
実施例86:化合物番号2.208の製造
上記実施例84と同様にして、(S)-[1-(チオフェン-3-イル)ピロリジン-3-イル]メタノールの代わりに(R)-[1-(チオフェン-3-イル)ピロリジン-3-イル]メタノール(60mg、0.33mmol)を使用して、表1に列挙した化合物番号2.208を得た(34mg、0.088mmol、27%)。
【0121】
実施例87〜88:化合物番号2.209〜2.210の製造
上記実施例84と同様にして、表1に列挙した化合物番号2.209〜2.210を得た。
【0122】
実施例89:化合物番号2.211の製造
上記実施例86と同様にして、表1に列挙した化合物番号2.211を得た。
【0123】
実施例90:化合物番号2.301の製造
【化35】

水素化ナトリウム(油中60wt%、0.23g、6.3mmol)のテトラヒドロフラン(5ml)懸濁液に、テトラヒドロフラン(5ml)中2-ヒドロキシアセトフェノン(0.92g、6.75mmol)を添加し、混合物を室温で撹拌した。30分後、2-クロロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(1.0g、4.5mmol)を添加した。混合物を還流状態で8時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル)によって精製して、1-メチル-2-(2-オキソ-2-フェニル-エトキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(75mg、0.23mmol、5%)を無色固体として得た。
【0124】
実施例91〜94:化合物番号2.302〜2.305の製造
上記実施例90と同様にして、表1に列挙した化合物番号2.302〜2305を得た。
【0125】
実施例95:化合物番号2.401の製造
【化36】

2-クロロ-3-メチル-6-ピリジン-4-イル-3H-ピリミジン-4-オン(500mg、2.26mmol)および2-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)エタノール(990mg、4.51mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(15ml)中混合物に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(347mg、2.26mmol)を室温で添加した。混合物を100℃で4時間撹拌した。混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル/メタノール=90/10〜67/33)によって精製して、薄青色の粉末を得た。この化合物を酢酸エチル(1.2ml)に溶解し、4N塩化水素-酢酸エチル溶液(1.2ml、4.8mmol)を室温で添加した。混合物を30分間撹拌し、次いで溶媒を減圧下で除去して、3-メチル-2-[2-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)エトキシ]-6-ピリジン-4-イル-3H-ピリミジン-4-オン二塩酸塩を薄紫色固体として得た(455mg、0.952mmol、42%)。
【0126】
実施例96:化合物番号2.402の製造
上記実施例95と同様にして、表1に列挙した化合物番号2.402を得た。
【0127】
実施例97:化合物番号2.501の製造
【化37】

実施例90と同様にして、(2-フェニル-[1,3]ジオキソラン-2-イル)メタノールおよび2-クロロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンから実施例2.501の化合物を無色固体として得た。
【0128】
実施例98:化合物番号2.502の製造
【化38】

実施例90と同様にして、2-フェニル-2-(テトラヒドロピラン-2-イル-オキシ)エタノールおよび2-クロロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンから本化合物を無色固体として得た。
前述の方法と同様にして、以下の表の化合物を製造した。以下の表の化合物番号は、好ましい化合物について上記のに示した番号に対応する。
【0129】
【表2】










【0130】
実験1:ウシ大脳TPK1によるP-GS1のリン酸化に対する本発明の医薬の阻害活性
100mMのMES-水酸化ナトリウム(pH6.5)、1mM酢酸マグネシウム、0.5mMのEGTA、5mMのβ-メルカプトエタノール、0.02%Tween 20、10%グリセロール、12μg/mlのP-GS1、41.7μMの[γ-32P]ATP(68kBq/ml)、ウシ大脳TPK1および表に示した化合物を含有する混合物(最終混合物は、10%DMSOの存在下で調製した試験化合物の溶液に由来する1.7%DMSOを含有していた)を、反応系として使用した。ATPの添加によってリン酸化を開始し、反応を25℃で2時間実施し、次いで氷上で冷却して21%過塩素酸を添加することによって停止させた。反応混合物を12,000rpmで5分間遠心分離し、P81濾紙(ワットマン)に吸着させ、その濾紙を75mMリン酸で4回、水で3回、アセトンで1回洗浄した。濾紙を乾燥させ、液体シンチレーションカウンターを使用して残留放射活性を測定した。結果を以下の表に示す。試験化合物は、TPK1によるP-GS1のリン酸化を著しく阻害した。この結果は、本発明の医薬がTPK1活性を阻害し、それによってAβの神経毒性およびPHFの形成を抑制すること、ならびに本発明の医薬が、アルツハイマー病および前述の疾患の予防的および/または治療的処置に有効であることを強く示唆している。
【0131】
【表3】




【0132】
実験2:タウリン酸化に対するインビボ阻害活性
試験化合物を、5〜6週齢の体重25〜35gの雄性CD-1マウス(日本チャールス・リバー株式会社)に1、3、10、30mg/kgで経口投与し(0.5%Tween/H2O懸濁液)、1時間後にマウスを断頭し、皮質を迅速に除去した後、液体N2で凍結させた。皮質を、2.3%SDSホモジナイズ緩衝液(62.5mMトリス-HCl、2.3%SDS、それぞれ1mMのEDTA、EGTAおよびDTT、0.2μMの4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフッ化物(AEBSF)、13μMベスタチン、1.4μMのE-64、0.1mMロイペプチン、30nMアプロチニンを含有するプロテアーゼ阻害剤カクテル(sigma P2714)、pH6.8)で直接ホモジナイズし、4℃において15000×gで15分間遠心分離した。タンパク質濃度を、DCタンパク質アッセイキット(BIO-RAD)を使用して測定した。上清を試料緩衝液(62.5mMトリス-HCl、25%グリセロール、2%SDS、0.01%ブロモフェノールブルー、pH6.8)で希釈して、タンパク質濃度を約0.5〜2mg/mgに調節し、次いで5分間煮沸した。試料10μgを10%SDS-PAGEミニスラブゲルに適用し、PVDF膜上に移した。膜を、5%脱脂乳を含有するPBSで室温において1時間インキュベートし、次いでpS396抗体(BIOSOURCE)を用いて4℃で終夜プローブした。抗ウサギIgG HRP結合抗体(Promega)を2次抗体として使用した。膜を、ECLキット(Amerasham Bioscience)によって視覚化し、LAS1000(富士フィルム)によって検出した。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の化合物はTPK1阻害活性を有しており、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)および前述の疾患などのTPK1の異常な進行によって引き起こされる疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化1】

[式中、
Zは、窒素原子またはC-Xを表し;
Xは、水素原子またはフッ素原子を表し;
R1は、水素原子またはC1〜C3アルキル基であり;
Lは、単結合または置換されていてもよいC1〜C6アルキレン基を表し;
Yは、単結合、硫黄原子、酸素原子またはNR10を表し;
R10は、水素原子またはC1〜C3アルキル基を表し;
R2は、水素原子または置換されていてもよい環式基を表し;
ただしYが、硫黄原子、酸素原子またはNR10を表す場合、Lは単結合ではなく、LおよびYのそれぞれが単結合を表す場合、R2は水素原子ではない]
【請求項2】
R2が、水素原子、または1〜3個の置換基を有していてもよい環式基であり、前記置換基が、同じかまたは異なっており、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、置換されていてもよいC6〜C10アリール基、置換されていてもよい5〜10員の複素環式基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル-CO-基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル-O-基、置換されていてもよいC6〜C10アリール-CO-基、置換されていてもよいC1〜C6アルキル-O-CO-基、置換されていてもよいC6〜C10アリール基、および置換されていてもよいC6〜C10アリール-SO2-基からなる群から選択される、
Lが、単結合、または1〜4個の置換基を有していてもよいC1〜C6アルキレン基であり、前記置換基が、同じかまたは異なっており、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基およびC1〜C6アルキル基からなる群から選択される、
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R2が、以下の(1)および(2)から選択される環式基である、
[(1)窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含有することができ、架橋構造を含有することができる4〜10員の単環式または二環式脂肪族基;
(2)窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含有することができる5〜10員の単環式または二環式芳香族基]、
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R2が、ピペリジル基、ピロリジニル基、ペルヒドロアゼピニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタニル基、フェニル基およびピリジル基からなる群から選択される環式基である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Yが単結合であり;
R2が、次式(II)によって表される置換されていてもよい環式基であり、
【化2】

{式中、R3は、(1)〜(11)からなる群から選択される基を表し
[(1)置換されていてもよいC6〜C10アリール基、
(2)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-SO2-基、
(3)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-C1〜C6アルキル基、
(4)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-CO-基、
(5)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-O-CO-基、
(6)アリール部分上で置換されていてもよいC6〜C10アリール-C1〜C6アルキル-O-CO-基、
(7)水素原子、
(8)C1〜C6アルキル-O-CO-基、
(9)置換されていてもよい5〜10員の複素環式基、
(10)置換されていてもよい5員または6員の脂肪族の単環式複素環式基、
(11)複素環式部分上で置換されていてもよい5員または6員の脂肪族単環式-複素環式-C1〜C6アルキル基];
R4は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、C1〜C6アルキル基およびC1〜C6アルキル-O-基からなる群から選択される基を表し;
mは、0〜2の整数を表す};
ただしLが単結合を表す場合、式(II)によって表される基とのYの結合位置が、窒素原子に隣接していない炭素原子である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R3が、(1)〜(11)からなる群から選択され、
[(1)置換されていてもよいフェニル基;
(2)フェニル部分上で置換されていてもよいフェニル-SO2-;
(3)フェニル部分上で置換されていてもよいフェニル-C1〜C6アルキル基;
(4)フェニル部分上で置換されていてもよいフェニル-CO-基;
(5)フェニル部分上で置換されていてもよいフェニル-O-CO-基;
(6)フェニル部分上で置換されていてもよいフェニル-C1〜C6アルキル-O-CO-基;
(ただし先の(1)〜(6)のそれぞれにおけるフェニル部分が置換されている場合、そのフェニル部分は、以下の(i)〜(viii)からなる群から独立に選択される1つまたは2つの基によって置換されている:
(i)5員または6員の脂肪族単環式-複素環式-C1〜C6アルキル基(前記複素環式部分は、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキル-CO-基、C1〜C6アルキル-O-CO-基またはオキソ基によって置換されていてもよい)、
(ii)5員または6員の脂肪族単環式-複素環式基(前記複素環式部分は、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキル-CO-基またはC1〜C6アルキル-O-CO-基によって置換されていてもよい)、
(iii)ハロゲン原子、
(iv)シアノ基、
(v)5〜10員の複素環式基によって置換されていてもよいC1〜C6アルキル基、
(vi)C1〜C6アルキル-O-基、
(vii)ジ(C1〜C6アルキル)アミノ-C1〜C6アルキル基、
(viii)5員または6員のヘテロアリール基);
(7)水素原子;
(8)C1〜C6アルキル-O-CO-基;
(9)以下の(i)〜(vi)によって置換されていてもよい5〜10員の複素環式基:
(i)C1〜C6アルキル基、
(ii)C1〜C6アルキル-CO-基、
(iii)フェニル-C1〜C6アルキル基、
(iv)ニトロ基、
(v)オキソ基、および
(vi)C1〜C6アルキル-O-基;
(10)複素環式部分上でC1〜C6アルキル基によって置換されていてもよい5員または6員の脂肪族単環式-複素環式基;
(11)複素環式部分上でC1〜C6アルキル基またはフェニル-C1〜C6アルキル基によって置換されていてもよい5員または6員の脂肪族単環式-複素環式基-C1〜C6アルキル基];
R4が水素原子である、
請求項5に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
Lが、単結合または置換されていてもよいメチレンである、請求項5に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
Yが単結合であり;
R2が、次式(IV)によって表される、置換されていてもよい環式基である、
【化3】

[式中、
R5は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキル-O-基および置換されていてもよいC6〜C10アリール基からなる群から選択される基を表し;
nは、0または1の整数を表す]、
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
Lが単結合である、請求項8に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
R2が、1〜3個の置換基を有していてもよいピリジル基またはフェニル基であり、前記置換基が、同じかまたは異なっており、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルキル-O-基、置換されていてもよいジ(C1〜C6アルキル)アミノ-C1〜C6アルキル基、および複素環式部分上で置換されていてもよい5員または6員の脂肪族単環式-複素環式-C1〜C6アルキル基からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
1-メチル-2-(1-フェニル-ピペリジン-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[1-(3-フルオロ-フェニル)-ピペリジン-3-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[1-(3-メトキシ-フェニル)-ピペリジン-3-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-(3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-[1,2']ビピリジニル-3-イルオキシ)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
(S)-2-[1-(4-フルオロ-フェニル)-ピロリジン-2-イルメトキシ]-6-(3-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-メチル-3H-ピリミジン-4-オン、
tert-ブチル4-[4-[4-(1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イルオキシ)-ピペリジン-1-イル]-ベンジル]-ピペラジン-1-カルボキシレート、
1-メチル-2-[1-(4-ピペラジン-1-イルメチル-フェニル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-(4-ピペラジン-1-イル-フェニル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)-フェニル]-ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-(4-ピロリジン-1-イルメチル-フェニル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[1-[4-(1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イルメチル)-フェニル]-ピペリジン-4-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-(3-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
1-メチル-2-[1-[2-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-フェニル]-ピペリジン-4-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
6-(3-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-メチル-2-[1-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)-ピペリジン-4-イルメトキシ]-3H-ピリミジン-4-オン、
6-(3-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-メチル-2-[1-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-3H-ピリミジン-4-オン、
1-メチル-2-[1-(4-ピペリジン-1-イルメチル-フェニル)-ピロリジン-3-イルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
cis-1-メチル-2-[4-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-フェニル]-シクロヘキシルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
trans-1-メチル-2-[4-[4-(4-メチル-ピペラジン-1-イルメチル)-フェニル]-シクロヘキシルオキシ]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[1-(2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-5-イル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、および
2-[1-(2-ベンジル-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-5-イル)-ピペリジン-4-イルオキシ]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
患者のタウプロテインキナーゼ1活性を阻害する方法であって、それを必要としている患者に、有効量の請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項13】
タウプロテインキナーゼ1活性の阻害によって緩和されると期待される疾患または状態を治療または予防するための、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
タウプロテインキナーゼ1活性の阻害によって緩和されると期待される疾患または状態が、アルツハイマー病、虚血性脳血管障害、ダウン症候群、孤立性脳アミロイド血管症に起因する脳出血、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎パーキンソニズム、脳炎後パーキンソニズム、ボクサーの脳症、グアム島パーキンソニズム-認知症複合、レビー小体病、ピック病、大脳皮質基底核変性症 前頭側頭認知症、血管性認知症、外傷性損傷、脳および脊髄外傷、末梢神経障害、網膜症および緑内障、インスリン非依存性糖尿病、肥満、躁うつ病、統合失調症、脱毛症、乳がん、非小細胞肺癌、甲状腺がん、TまたはB細胞白血病、ある種のウイルス誘発性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症、マラリア、尋常性天疱瘡、ならびにがん化学療法によって誘発される好中球減少症からなる群から選択される疾患または状態である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
タウプロテインキナーゼ1活性の阻害によって緩和されると期待される疾患または状態が、インスリン非依存性糖尿病、アルツハイマー病、虚血性脳血管障害、進行性核上性麻痺、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、外傷性損傷、脳および脊髄外傷、筋萎縮性側索硬化症、ならびにマラリアからなる群から選択される疾患または状態である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
タウプロテインキナーゼ1活性の阻害によって緩和されると期待される疾患または状態が、アルツハイマー病である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
タウプロテインキナーゼ1活性を阻害するための医薬の製造のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項18】
請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む、タウプロテインキナーゼ1活性を阻害するための医薬組成物。

【公表番号】特表2013−501708(P2013−501708A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507488(P2012−507488)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/JP2010/063891
【国際公開番号】WO2011/019090
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】