説明

タウリナミド誘導体ならびに生物学的に許容可能な塩および酸を含み、低濃度のヘパリンが添加された抗菌性ロッキング溶液

【課題】血液カテーテルが患者に挿入された後において、感染を阻害または予防し、および開存性合併症を防止するために、予めカテーテル内腔に充填されるロッキング溶液組成物の提供。
【解決手段】以下の溶液を含む、ロッキング溶液組成物:(A)少なくとも1つのタウリナミド誘導体;(B)生物学的に許容可能な酸および生物学的に許容可能なその塩から成る群から選択される少なくとも1つの化合物;および(C)低濃度のヘパリン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析カテーテルにおける感染および凝固を予防するための改善用組成物に関する。本発明はさらに、中枢血管へのアクセス(central blood access)に関わる留置カテーテルの開存性(patency)を維持するための改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2004年11月2日に出願された米国特許出願第10/979,547号に関連し、該出願の優先権を主張する。
【0003】
血管系と外部処理装置との間における血液交換のために患者の血管系へアクセスする、血液透析アクセスシステムは、当該分野において周知である。そのようなシステムの最も単純な形態は、カテーテルだけのものであり、それは、患者の右頸静脈に直接設置され、その遠位端(distal end)が中枢静脈系まで、典型的には上大静脈まで伸ばされる。例えばポート(ports)といった、その他のより複雑なシステムは、通常、さらに留置カテーテルを含む。血液透析治療のための血液の交換は、典型的に、赤血球の損傷または血小板の活性化を生じさせないために、一定のレベルを超えるずり応力を引き起こさないよう設計された条件で、高い血流速度を必要とする。
【0004】
他の移植装置でもそうであるように、長期間患者の中に残存させなければならない物体の設置には、留置する装置によって促進される、血流の感染の可能性が生じる。そのような装置が、医療従事者によって頻繁に取り扱われおよび操作され、その結果カテーテルの内部表面に微生物のコロニー形成が生じた事実、つまり、内腔にバイオフィルム(biofilm)が形成されたという事実によって、感染のリスクは大きく悪化する。バイオフィルム蓄積による感染は、単純な感染よりもずっと深刻である。というのは、通常の手段でそれを根絶することは、しばしば不可能であるためである。手に負えない場合は、患者を効率的に治療するために、装置を外植しなければならない。結果として、科学および特許における両文献において、カテーテルに関わる感染を破る、または少なくとも追い詰める方法については、期待に満ちているものの、決定的な提案はなされていない。
【0005】
カテーテル感染を予防または治療する方法を記載する上で、著者および医師は、一般に、カテーテルを「ロッキングする(locking)」という用語を用い、また時折、カテーテルを「フラッシングする(flushing)」という用語を用いる。「フラッシングする」という用語の使用は、多義的であるため、多少の用語法の説明が必要となる。移植カテーテルに関して、著者および医師は、典型的に、使用の際カテーテルを「ロッキングする」と言う。この状況において、「ロッキングする」とは、カテーテル内腔に、殺菌性または抗凝固性の物質、好ましくはそれら両方の性質を有する物質を充填し、カテーテルを再び使用するまで、そのままにしておくことを意味する。(典型的に、所定の溶液でカテーテルを「ロッキングする」ことには、想定上の方法において、カテーテルを再び使用する際には必ず、例えば注射器を用いて溶液を吸い出すといったように、カテーテルから溶液を排除するという引き続く操作が含まれる。)例えば、従来、著者または医師は、カテーテルのロック(lock)としてヘパリンのことを言ってきた。この語句の使用は、相対的に明瞭である。
【0006】
著者および医師は、しかしながら、明白に「フラッシュ(flush)」および「フラッシング」という用語を使用してこなかった。多くの場合、「フラッシング」は、非専門家に馴染みのある意味を有している。すなわち、カテーテルを通してまたはカテーテルへ液体を送ること、および一種の洗浄のようにすばやく出し戻すことである。しかしながら、実質的にはわずかな著者および医師がまた、「フラッシュ」および「フラッシング」という用語を、上に定義したような「ロック」および「ロッキング」と同義語として使用している。つまり、カテーテル内に溶液を入れ、それを長期間放置し、次にそれを、患者への注入のためにまたは患者から液体を除去するために、医師が使用したいときに、取り出す、という意味で使用している。この適用では、「フラッシュ」および「フラッシング」の前者の意味が、一般的に意図されている。しかしながら、文献を論評するにあたっては、その他の使用を想定しなければならない。
【0007】
抗生物質は、感染の予防のため、カテーテルといった装置の処理に使用されてきたが、予防法としての抗生物質の慢性的な使用は、抗生物質耐性細菌株の発生を促進する。科学文献およびその他の特許文献に記載されるカテーテルロックの進歩は、特にカテーテルの抗菌に日常的に使用される、タウロリジン(taurolidine)および/またはタウリナミド(taurinamide)およびタウリナミド誘導体と一般に呼ばれる物質に関係してきた。タウロリジンおよび関連化合物は、殺菌性があるものの、耐性細菌種の発生を引き起こさないことが知られている。中でも、例えば2000年12月26日に特許されたSodemannの米国特許第6,166,007号、および、2002年7月23日に特許されたSodemannの米国特許第6,423,706号では、カテーテルロック溶液の一部として、タウロリジンおよびその他のタウリナミド関連化合物の使用が開示されている。
【0008】
血管系内のまたは血管系につながったカテーテルの内部における血液の凝固もまた、厄介な問題であることが判明してきており、多くの方法が、その予防、特に、カテーテルの有用性を減少させまたは壊しうるカテーテルの目詰まりの阻害に挑んできた。標準的な方法は、カテーテルから血液を流し(flush)、次に、強力な抗凝固剤であり、標準的となっているヘパリンロッキング溶液でそれをロックするという方法である。残念ながら、ヘパリン単独では、殺菌能力を欠くものの、この欠陥は、しばしば無視される。
【0009】
特に血液透析カテーテルに関する、現在の留置血液カテーテルのメンテナンスの実施は、現行の事実上の実施が、使用の際に、ロックとして注入するために非常の高濃度のヘパリンを必要とするという点で展開してきた。標準的に、ヘパリンロック濃度は、5,000ユニット/mlである。それに対して、血液が血塊を形成する傾向を示す障害を患う患者において、凝固を予防するための治療的血中レベルは、一般に0.2から0.4ユニット/mlの範囲である。研究室の実験では、使用される血液は、5ユニット程度の濃度範囲のヘパリンを使用すれば、液体状態(すなわち、凝固していない状態)が維持されることが知られている。
【0010】
残念なことに、そしてカテーテルロッキングの良好な実施に反して、医療従事者はしばしば、例えば注射器を用いて引き出す代わりに、カテーテルからヘパリンを(流水(flow-through)する感覚で)患者に直接フラッシュする。医師が凝固したカテーテルを取り除こうと試みる場合、そのような事象は、偶発的またはある場合には計画的に行われさえする。ヘパリンの使用における重要な考察を要する点は、あまりに大量のヘパリンが患者の血管系に押し入れられた場合、その患者は全身的に抗凝固性となる可能性があり、患者が出血するという重大な危険性が生じ、つまり、出血が制御できずに死亡する可能性があるということである。さらに、一部の患者は、ヘパリンにアレルギーがある。これらの理由のため、ヘパリンの全身投与を最小化することは、重要である。
【0011】
上で引用した米国特許第6,166,007号および第6,423,706号では、カテーテルロッキング溶液ならびに抗菌性および抗凝固性の両性質を有した移植片を維持するための溶液として、生物学的に穏和な塩およびそれに対応する酸、最も好ましくはクエン酸を併用したクエン酸塩との組み合わせによる、タウリナミド誘導体、好ましくはタウロリジンに基づく溶液が開示されている。溶液のpHを一般にやや酸性側に調節しつつ、これらの物質の最適濃度を選択することは、溶液中のタウロリジンの抗菌効果を増大させる。
【0012】
その他の物質を抗凝固剤として使用することができ、例えば、EDTA、エノキサパリン(enoxaparin)ナトリウム、クマリン、インダンジオン誘導体、アニシンジオン、ワルファリン、硫酸プロタミン、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ等が使用できる。しかしながら、適切なpHバランスにおけるクエン酸塩およびクエン酸の性質は、言及される製剤のカテーテルロックに特別な有効性を与える。
【0013】
しかしながら、上記の引用される特許発明の実施にともない、時としてタウロリジンがカテーテル内部で患者の赤血球と反応を起こし、通常カテーテルの遠位端で形成される血液血塊の特性を変化させることが、経験的にわかってきた。この変化は時々、カテーテルを使用する準備のためにロック溶液を取り除いた後において、カテーテルの内部の内腔表面に血塊断片または核が付着して残る現象を生じさせる。たとえ小さな血塊断片がカテーテル内部に付着したとしても、その結果、カテーテルの流動の、少なくとも部分的な障害となる。血液透析カテーテルの場合、このことは、カテーテル中の血流に対する抵抗性を大きく増加させる。抵抗性があまりに高くなると、血液のダメージを引き起こす可能性があり、また、上限に達し、その場合血流速度の減少が必要となる。そのような流動に対する抵抗性は、透析の効率を阻害し、治療における透析時間を延ばす。
【0014】
上で引用した米国特許第6,166,007号および第6,423,706号に記載される、クエン酸塩およびクエン酸との併用によるタウロリジンの製剤は、血液透析の患者において、カテーテルが原因の感染を最小化するのに十分機能してきた。Sodemann医師は、これらの組成物の抗菌性を最大化するためにpH値を評価することを含む、組成物の試験を初めて行った。
【0015】
Sodemann医師およびその他の人々はまた、ヨーロッパでの商業化の認可を得るために、そこで最終的な組成物の臨床試験を行った。ヨーロッパでのデータは、ヘパリンロックで観察される割合と比較してカテーテルに関係する血流感染がほぼ完璧に消失したこと、ならびに、ヘパリンロック溶液に匹敵するほどのカテーテル開存性の割合(血液透析における血流の抵抗性が原因となる合併症の割合の逆数)を同時に達成できることを実証した。
【0016】
その後、2001年および2002年において、しかしながら、アラバマ大学メディカルセンター(the University of Alabama Medical Center)は、Sodemannのタウロリジンロック製剤を使用した血液透析臨床試験を行った。臨床結果から、タウロリジンに基づくロック溶液が低い感染率を示すことが確認された。しかしながら、この試験において、ヘパリンロック対照群と比較して、高い割合のカテーテル開存性の合併症が生じた。(Allon, M., 「新たな抗菌性ロック溶液による、透析カテーテル関連菌血症に対する予防法(Prophylaxis against dialysis catheter-related bacteremia with a novel antimicrobial lock solution)」 Clinical Infec. Dis. 2003(June) 15; 36 (12): 1539-44)。
【0017】
観察される、血液透析カテーテルにおける流動の高い抵抗性を正すための通常の処置は、カテーテルを清浄にする血塊溶解法(clot-lysing procedure)である。アラバマ大学の医師は開存性合併症を経験したときは常に、迅速であり成功率100%である血塊溶解法を行う。この結果は、流動の抵抗性の原因が、血塊断片のカテーテル内部への付着であることを示唆している。アラバマ大学の研究における、カテーテル開存性合併症処置に関する計算が、研究期間中に行われた溶解法の回数を数え、試験における患者入院日数(patient days)の和で割ることから決定された。タウロリジンに基づくロッキング溶液を受けた群の開存性合併症の割合は、ヘパリンロック群の約4倍高かった。
【0018】
血液透析において、血液は、主要な血液供給部位(major blood supply)にその先端を設置したカテーテル内腔を通して、患者から取り出される。血液は装置に入り、毒素および水が除去される。アメリカでの血液透析の慣習では、ヨーロッパでの慣習と異なり、血流速度は高く、典型的に約400 ml/minで行われる。この流速で血液細胞を損傷しないように、医師は、カテーテル中の流動の抵抗性をモニターする。抵抗性が警告設定よりも高く上昇した場合、技師はカテーテルを浄化するか、または流速を落とさねばならない。(そのような場合、低い流速が必要である。というのは、高い流速と障害の組み合わせは、渦およびその他の非層状の流れの条件を作り出し、それらが、血球を損傷するずり応力を作り出すためである。)しかしながら、流速を下げると、同レベルの毒素の除去を達成するためには、透析の時間をかなり増大させる必要があり、効率的な血液透析のセッションに必要な時間が延びる。セッションが延びるほど、患者の認容性および臨床的生産性は低くなる。
【0019】
ヨーロッパの試験とアメリカの試験との間の医学的慣習の様々な違いが、おそらく結果の違いに寄与した。アメリカでは高い血流速度が設定されており、アメリカの臨床試験において異なるカテーテルが使用されたことは、特に重要であった。
【0020】
さらに、注意深く観察すると、ロック溶液をカテーテルに注入した後、少量のロック溶液がカテーテルから患者の血管系に流れ出すことがわかった。失ったカテーテルロックは、カテーテルの遠位端領域において、血液に置換される。この減少は、Polascheggにより公開された米国特許出願第2004/0156908 A1号の段落[0022]、[0026]に記載されている。Polascheggはさらに、段落[0026]から[0027]で、ヘパリンロッキング溶液の移行が原因となる、患者における全身性抗凝固性についての関連した知見を記載している。この知見は、例えばPolascheggにより段落[0026]で引用される、医学文献中でも報告されている。
【0021】
ロッキング溶液との交換によって遠位端部分に入った血液は、カテーテル中に高濃度のヘパリンが存在するにもかかわらず、すぐに停滞してしまい、そのため、典型的に、カテーテル内の遠位端付近で血塊が形成される。血管系での血液透析カテーテルおよびその他のカテーテルにおいて、遠位端部分で形成される血塊は、例えば血液透析セッションの開始に先立って、通常の準備段階の間に取り除かれる。この準備段階は、ロック溶液の除去し、その後、少量の生理食塩水を用いてカテーテル中の何れかの残存する血液またはロックを逆流(back flush)させる工程である。除去された物質(ロック溶液、血塊および多少の血液)は、注射器で吸い取られ、処分される。
【0022】
しかしながら、内腔内の血塊を除去しようとする試みは、常に効果的であるわけではない。現在の慣習においてでさえ、高濃度のヘパリンを用いたとしても、開存性合併症はなお相対的に高い割合で発生する。カテーテルの内腔表面に付着した何れかの血液血塊または血塊断片は、特にアメリカの血液透析に典型的な高い血流において、治療の間の血流の抵抗性を増加させる。血液透析治療における確立された慣習では、血流路における流れの抵抗性の許容可能な最大値が設定されており、それは圧力の増大および流速の減少から推測され、赤血球に損傷を与え、血小板を活性化し、凝固反応を引き起こす可能性のある程度を超えてはならないとされている。従って、警告装置が血液透析器に組み込まれており、例えば圧力レベルが上回ったときに、看護士に警告するようになっている。訂正動作の選択肢は制限されており、主に、血流速度を遅くすることまたはセッションを停止することおよびカテーテルの血塊溶解法を実行しカテーテルを開放して開存性を回復することから成る。どちらの場合も、その処置は、患者にとって非常に不便であり、血液透析治療の操作上の有効性を減少させる。
【0023】
Allon医師による試験結果は、海軍血液研究所(the Naval Blood Laboratory)およびボストン大学メディカルスクール(Boston University Medical School)の実験グループの研究者達によって検討された。これらの実験から、高濃度のタウロリジン溶液に接触している(カテーテル中で、血液とタウロリジンロッキング溶液との間の界面で生じるような接触)血液は、適当なヘパリンにさらされた場合に起こらないような、赤血球の形態学的変化を含む変化を起こすことがわかった。しかしながら、研究者らは、それらの結果が、アラバマ大学の臨床試験とどう関連するのかということを、正確に決定することができなかった。
【0024】
異なる結果が生じた理由を科学的に解明するために、追加実験が試みられた。この研究は、タウロリジンを基礎とするロック製剤に修正を行ったin vitro実験を含む。試験は、新鮮なヒトの血液で、アメリカの血液透析の実施において通常使用されるシリコンゴム製カテーテルを用いて行われた。幾つかのカテーテルロック製剤および後者の血液試験製品(blood test article)を、可能な限りin vivoの血液透析で生じる環境を模した条件に供した。幾つかのカテーテルを同時に試験した。
【0025】
試験カテーテルを垂直方向に設置し、様々なロック溶液製剤を充填した。遠位端を新鮮な血液を含むビーカーにいれ、血液をカテーテル中に約3センチメーターの長さで吸引させた。それぞれのカテーテルの遠位端および近位端をクランプで固定して塞いだ。カテーテルの遠位部分を、〜99 °Fで3日間、生理食塩水中に液浸させた。この期間は、生体の液体透析セッションにおける、最長の静止状態期間に相当する。試験試料は、通常のヘパリンロック、様々なpH条件におけるタウロリジンをベースとしたロック、および、タウロリジンロックでPVP添加を行ったものおよびPVP添加を行わないものを含んでいた。
【0026】
カテーテルの内容物を、3日間の期間、視覚的に観察した。カテーテル自体は半透明であり、生理食塩水を保持した物質およびカテーテルは、容易な視覚的観察を可能とした。
【0027】
最初の試験系列は、ヨーロッパで市販されているタウロリジンロックおよび通常のヘパリンロックを1 ml当り5,000ユニットで使用した。高濃度のヘパリンロックは、タウロリジン製剤と比較して、凝固に関して非常に異なる作用をすることが観察された。ヘパリンロックでは、カテーテル中での血液の凝固は、血液とカテーテルロックの界面から離れて、血液区域の末端から始まった。タウロリジンをベースとしたロックでは、血液は、ちょうど血液とカテーテルロックの界面にて凝固が始まった。そのうえ、遠位端の血塊は色が異なっていた。ヘパリンロックで形成される血塊は赤褐色であったが、タウロリジンベースロック溶液で形成された血塊は黒色であり、メトヘモグロビンの形成が示唆された。メトヘモグロビンの形成は、ある薬剤により赤血球にダメージが加わったことを示唆する。
【0028】
試験はまた、血液透析セッションの準備中に生じる処置を模するように行われた。血液透析療法において、看護士は、注射器を用いてカテーテルからロック溶液を取り除き、カテーテルを、血液透析器にホックで留める前に、10 mlの生理食塩水で流す。上で引用したin vitro実験では、3日間の静止状態の期間の終わりに、注射器をカテーテルの近位端に取り付け、遠位端のクランプを取り除いた。次に遠位端を、生理食塩水中に液浸した。注射器をカテーテルの内容物を取り除くために使用した。
【0029】
ヘパリンベースのロッキング溶液における血塊は、そのままの状態でカテーテルから容易に除去でき、一方タウロリジンベースの実験における血塊は、容易に断片化し、くずれたことが注目された。(タウロリジンベースロッキング溶液のpHが6にまで昇った試験では、遠位端の血塊におけるメトヘモグロビンがより少なくなるという結果となったが、完全に問題を解消したわけではなかった。)血塊の固体性および機械的強度は、それらを小さな棒(rod)で加圧することで、定性的に比較した。ヘパリンの血塊は、弾力があり、軟質ゴムの挙動と同様であり、一方、タウロリジンベースのロッキング溶液で形成される血塊は、全く弾性がなく、容易に崩れた。
【0030】
また、タウロリジンベースのロッキング溶液を含むカテーテルにて、方法は、しばしば、遠位端の血塊を完全に取り除くことはできなかった。血塊がくずれた場合、断片は、カテーテルの内腔表面に付着したまま残った。続いて、実際の臨床状況と同様の様式で、カテーテルに、10 mlの生理食塩水を強く流して、血塊断片の付着が剥離したかどうかを判定した。この流す処置は、通常付着した断片を除去しなかった。要約すると、ヘパリンロッキング溶液を含むカテーテルにおける血塊は、容易におよび完全に分離され、一方で、タウロリジンベースのロッキング溶液を含むカテーテルにおける血塊は、流す処置を行った後でさえカテーテル内腔に固着して残る部分に断片化された。
【0031】
ヘパリンロッキング溶液とタウロリジンベースロッキング溶液とを比較するこれらの試験から、アメリカのアラバマ大学での臨床試験で生じた開存性の問題は、異なるロッキング溶液によるカテーテルの遠位端で形成される血塊の性質の違いで説明される、ということが示唆された。上で引用された、海軍血液研究所/ボストン大学メディカルスクールの実験において、タウロリジン製剤の修飾は、遠位端の血塊のカテーテルに影響を与えないということが、1つの例外を除いて、わかった。タウロリジン製剤に、非常に低い濃度(終濃度が1 ml当り約100ユニット)のヘパリンを添加すると、明白にタウロリジンに誘導される血塊の特性の変化が、最小化されまたは消失することがわかった。
【0032】
この結果に基づいて、低濃度のヘパリンを標準タウロリジン製剤の試験試料に添加したin vitro実験も行われた。この溶液製剤を、また、模擬の静止状態期間において、模擬の条件に供した。高濃度のヘパリンを使用した場合、遠位端の血塊は、そのままの状態で完全に除去することができ、その機械的性質および外見は、高ヘパリンサンプルと同様であったという観察結果が得られた。
【0033】
しかしながら、ヘパリンは、注意を要する危険な物質である。それは、普通、急性血栓塞栓症、不安定狭心症、および活性血栓症(active thombosis)などの、生命を脅かしまたは重い危害を引き起こす、凝固に関する危険な障害を患う患者に全身的に投与される。ヘパリン投与の共通の副作用は、内出血およびヘパリンアレルギーであり、重い全身的凝固として表れる。何れかの患者において、高すぎるヘパリンレベルは、出血を引き起こす。血液透析を行う患者にとって、しかしながら、出血は特別な問題であるが、それは多くのそのような患者が、凝固する傾向が低下しているためである。本発明の目的は、タウロリジンベースのカテーテルロック溶液に添加されたヘパリンのレベルであって、患者に注入されたヘパリンによって制御不能の出血が促進される危険性を無くすまたは最小化する、前記レベルを提供することである。
【発明の概要】
【0034】
本発明は、タウロリジンと赤血球の反応により起こるカテーテルの開存性の合併症およびカテーテルの遠位部位で形成される血塊の特性を低減させることによる、タウロリジンベースの抗菌性および抗凝固性ロック溶液への改善を提供する。タウロリジンの存在下で形成される血塊は、血液透析カテーテル内腔の内部表面に付着する傾向があり、それゆえ、ある状況において血液透析治療を妨げる、流動に対する高い抵抗性をもたらす。これらのロック溶液は、薬剤的に有効な量の、または濃度の:少なくとも1つのタウリナミド誘導体、少なくとも1つの、生物学的に許容可能な酸および生物学的に許容可能なその塩から成る群から選択される化合物、および、開存性の消失に対する血液透析カテーテルの保護を提供するのには不十分であるが、血液透析カテーテルの内腔表面に付着し除去に耐える血塊断片の形成を予防するのに十分な、少量および濃度のヘパリンを含む。
【0035】
要約すると、研究者らは、カテーテルの感染症を防ぐ新たな強力な予防薬の製品化において最初に生じた問題を解決した。特定の状況の下、タウロリジンおよびその他のタウリナミド誘導体は、血液と反応することができ、究極的に、血液透析カテーテル内で開存性合併症を引き起こす。問題の本質を解明するために、基礎研究(on the bench)および臨床試験の療法で実験が行われ、予期しない解決策が明らかになった。すなわち、低濃度のヘパリンをタウロリジン製剤に加えるということである。ヘパリンは、実際に血液透析カテーテルを大量の凝固形成から守るには少なすぎる量であるが、正常な凝固工程によってカテーテルの壁に固着するような開存性を有した血塊ができないように、血液を保護することができる少ない量で添加される。
【発明の詳細な説明】
【0036】
本発明の最も好ましい実施態様は、溶液中において抗凝固剤および/またはクエン酸塩といったカルシウムキレート物質との併用による、タウロリジンまたはタウルルタム(taurultam)ベースの抗菌性溶液の組み合わせであって、タウロリジンの抗菌活性を増強するpH値であり、患者の全身性抗凝固の脅威を最小化または消失させるほどの低濃度でヘパリンを含む溶液である。
【0037】
重篤な凝固傾向を示す患者においてでさえ、体循環における治療上のヘパリン濃度は、血流全体を通して、めったに1ユニット/mlを超えない。より典型的には、濃度は、血液1 ml当り、0.2ユニットから0.4ユニットの範囲に維持される。
【0038】
血液透析を行う患者は、一方で、より典型的に低い血小板数を示し、凝固が促進されるよりも凝固が阻害されるその他の血液障害を有している。従って、血液濃度の上限は、保存的であるべきである。本発明において、全血液供給における血液1 ml当り0.5ユニットというヘパリンの濃度が、患者の血流にヘパリンが注入されることで危険な結果が起こることを予防するための、安全な上限であると想定される。しかしながら、好ましい上限は、典型的に抗血栓効果に引用される最小値に基づき、つまり、上に引用される血液1 ml当り0.2ユニットである。
【0039】
様々な手段が、患者の全血液量を推定するために存在する。発明者は、本出願で、以下の式を使用した:
男性に対して:
VB = 0.3669 x (H)3 + 0.03219xW + 0.604
女性に対して:
VB = 0.3561 x (H)3 + 0.03308xW + 0.1833、
ここにおいて、Hは、患者の身長(メーター)であり、Wは患者の全体重(キログラム)である。得られる血液体積はリッターで表される(1000をかけて、mlの体積を得る)。典型的な患者の試験値を用いると、男性に対しては5000から6000 ml、女性に対しては4000から5000 mlの血液体積の範囲が得られる。中点値(mid-range value)である5000 mlを、以下の計算に使用したが、性別ごとおよび患者ごとの広い多様性を、常に考慮しなければならない。
【0040】
典型的な血液透析カテーテル体積は、約3 mlである。カテーテルロック溶液から患者への典型的に不可避な流出は、その体積の約1/3、または1 mlである。カテーテルロック溶液のヘパリン濃度をL濃度とした場合、患者体内へのヘパリンの損失から、以下の式により血管濃度が得られる:
(L濃度)(流出したカテーテル体積) = (血液濃度) x (血液体積)
(ここにおいて、ほとんどの日常的な場合において、流出したカテーテル体積 = 1 mlおよび血液体積 = 5000 mlである。)
上記にて設定した安全な上限(すなわち、0.5ユニット/ml)および典型的な血液体積5000 mlを用いて、カテーテルロック溶液中1 ml当りヘパリン2500ユニットという基準上限(nominal upper limit)が得られる。
【0041】
しかしながら、4つの要素が、下限に対して優先して影響する。第一に、患者の血液体積は、3500 mlと同程度の低さに及ぶ。第二に、時折医師は、不注意に、カテーテルロック溶液の全てのカテーテル中の体積を患者に押し込んでしまう。第三に、血液透析の患者は、前述した通り、不十分な凝固を起こす傾向がある。第四に、治療的な抗血栓効果のための最小ヘパリン濃度は、凝固形成の傾向のある患者において、1 ml当り0.2ユニットである。従って、本発明の好ましい一実施態様は、ヘパリン濃度の上限が1 ml当り1750ユニットである。別の好ましい実施態様は、ヘパリン濃度の上限が1 ml当り1000ユニットである。第三の好ましい実施態様において、ヘパリン濃度の上限が1 ml当り833ユニットである。第四の好ましい実施態様において、ヘパリン濃度の上限が1 ml当り583ユニットである。上限に対する高度に好ましい実施態様は、1 ml当り500ユニットである。当業者に理解されるとおり、1 ml当り2500ユニットまでの様々な濃度のヘパリンが、特定の患者にとって安全である。
【0042】
上で引用した試験が完了した後、しばらくの間、低濃度のヘパリン(終濃度が1 ml当り約125ユニットヘパリン)とともにタウロリジン製剤を含む付加的な試験試料が、ドイツにて臨床的に評価された。タウロリジン製剤の改変が流動の抵抗性に影響するかどうかを決定するために、それらについて評価する研究が、Sodemann医師の病院にて行われた。タウロリジンロッキング溶液への改変とは、pHの増大、タウロリジンへのPVPの添加、およびタウロリジンベースのカテーテルロック溶液への最小量のヘパリン(例えば、1 ml当り125ユニット)の取り込みを含む。
【0043】
Sodemann医師は、流動の抵抗性に関して何れかの違いまたは何れかのその他の臨床的パラメーターを観察することができなかった。しかしながら、この観察は、Sodemann医師が、そもそも、高濃度のヘパリンベースのロックと比較して、タウロリジンベースのロックを使用した場合に、カテーテル開存性の減少を全く確認できなかったという文脈によるものである。
【0044】
臨床試験は次に、フランスの病院で、以前に流動の抵抗性の問題が生じた経験のある患者において行われた。この患者のグループにおいて、低濃度のヘパリンを添加することで、流動の抵抗性に対する処置すなわち溶解の必要性を、高濃度のヘパリンロック溶液の場合に匹敵するほど、低い割合まで低下できることがわかった。
【0045】
その後、フィンランドおよびオーストリアにて、開存性の合併症を有したその他の患者が、低濃度のヘパリンを加えたタウロリジンとクエン酸塩のロッキング溶液を用いて試験された。これらの場合でも、本来のタウロリジン製剤を超える改善が記録され、高濃度のヘパリンのみでロッキングされたカテーテルを有す患者の開存性の割合と同様な開存性の割合が達成された。様々な実験条件において、カテーテル溶液中、1 mlあたりヘパリン50ユニット程度に低いヘパリン濃度が、本発明の有益な効果を有することがわかった。
【0046】
言及されるタウリナミド誘導体は、本出願に援用される上で参照した初期の適用例において、化学的に記載された抗菌性化合物である。このファミリーの中で最も好ましい物質は、タウリジンである。タウリナミドおよびホルムアルデヒドの縮合生成物である、これらの化合物は、グラム陽性およびグラム陰性細菌に対してのみでなく、外毒素および内毒素に対しても活性をもつ。この適用の目的のために、これらの化合物は、総称しておよび一括して、タウリジンと呼ばれる。
【0047】
そのような溶液におけるタウリジンの濃度は、好ましくは、化合物の可溶性に依存して、重量で約0.4から約5%の範囲である。最近の実験から、クエン酸塩およびクエン酸の組み合わせによる添加、または、その代わりにクエン酸を添加し最終的な溶液が5.2から6.5付近となるように水酸化ナトリウムでpHを調節することで、実質的にタウリジン溶液の殺菌効果が増大することがわかった。クエン酸/クエン酸ナトリウムを、水酸化ナトリウムを用いてpHを調整することで緩衝系を作るという方法がとられる。この緩衝系はまた、ホルムアルデヒドのギ酸への酸化を原因とするpHの変化に対抗する。
【0048】
加えて、クエン酸は既知の酸化防止剤である。従って、この組み合わせによるクエン酸およびクエン酸ナトリウムの使用は、溶液中のタウロリジンの安定性および可溶性を増大させ、PVPを用いて作製されたタウロリジン溶液にて頻繁にみられる、固体タウロリジンおよび反応生成物の沈殿を防ぎ、またはその速度を大きく落とす。長期安定性試験により、この結果が確認された。本発明の実施にて使用される組成物は、好ましくは、水、リンガー溶液、または生理食塩水といった薬理学的に許容可能な担体を含む。
【0049】
その他の生物学的に許容可能な酸および生物学的に許容可能なその塩を、タウロリジンと組み合わせることが可能である。そのような、その他の考えられる酸は、酢酸、ジヒドロ酢酸(dihydroacetic acid)、安息香酸、クエン酸、ソルビン酸、プロピオン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、塩酸、リンゴ酸、リン酸、亜硫酸、バニリン酸、酒石酸、アスコルビン酸、ホウ酸、乳酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス-{β-アミノエチルエーテル}-N,N,N’,N’-四酢酸、およびジエチレントリアミンペンタ酢酸、p-ヒドロキシ安息香酸のエステル(パラベン(Parabens))等、および前述の生物学的に許容可能な塩、例えばリン酸アンモニウム、クエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等である。クエン酸、リン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス-{β-アミノエチルエーテル}-N,N,N’,N’-四酢酸、およびジエチレントリアミンペンタ酢酸ならびに生物学的に許容可能なその塩から成る群から選択される、血液の抗凝固性を示す量の酸が好ましい。本発明の実施において使用される酸は、有機酸、特に少なくとも1つのカルボキシル基を有したもの、特にクエン酸またはEDTAであることが好ましい。酸はクエン酸であることがより好ましく、および、それが、例えばクエン酸ナトリウムといったクエン酸塩との組み合わせで使用されることが最も好ましい。というのは、pH低下および抗凝固能力の付加により、それが、3%のレベルの防腐剤(antiseptic)であることも知れているからである。
【0050】
カルシウムは、血液の凝固において役割を持つことで知られる1つの要素であるため、抗凝固活性におけるEDTAの有効性の少なくとも一部は、このことによってもたらされるという可能性が信じられている。クエン酸ナトリウムもまた、不溶性のクエン酸カルシウムを作り出す能力により、抗凝固の性質を持つと信じられている。
【0051】
酸および/または塩は、所望の量の抗凝固性効果をもたらし、同時に、殺菌効果のための適したpHをもたらし、またはそれをもたらすのを助けるのに効果的な量で使用されるだろう。ヘパリンは、低濃度で添加され、好ましくは、1 ml当り50ユニットから1 ml当り150ユニットで添加される。典型的に、本発明の混合性の抗菌剤、ヘパリンおよび抗凝固剤の組成物は、約3.0から約7の範囲のpH、好ましくは約3.5から約6.5、最も好ましくは約4.5から約6.5の範囲のpHを有する。当業者が精通したpHの調整方法を使用することができる。クエン酸三ナトリウムおよびクエン酸が、本発明の実施に使用される(このことは、好ましい)場合、クエン酸三ナトリウムは典型的に、1リッター当り、約5から約50グラムの濃度範囲で使用されるだろう。次にクエン酸が、pHが所望のレベルになるのに十分な量で添加されるだろう。好ましい実施態様である製剤は、約1.35%のタウロリジン、4%のクエン酸塩を含み、一般に5から6の範囲の酸性pHである。
【0052】
本発明の方法は、主におよび好ましくは、移植された血液透析カテーテルの開存性および無菌状態の維持に向けられているものの、その方法を、その他の同様な装置、例えば、中心静脈カテーテル、末梢静脈内カテーテル、動脈カテーテル、スワン-ガンツ(Swan-Ganz)カテーテル、臍カテーテル、経皮非トンネル状シリコンカテーテル(percutaneous non-tunneled silicone catheters)、カフトンネル状中心静脈カテーテル(cuffed tunneled central venous catheters)にも適用することでも、ならびに皮下中枢静脈ポートと適用することでも、有益な効果を得てよい。
【0053】
本発明の様々な特徴および側面は、以下の実施例にてさらに例示される。これらの実施例が、当業者に対し、本発明の範囲内でどのように実施するかを示すために存在する一方で、これらは、決して本発明の範囲の限定を示すことは意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液カテーテルにおける感染および流動性の低下を治療しおよび予防するための、以下の溶液を含む、ロッキング溶液組成物:
a. 少なくとも1つのタウリナミド誘導体;
b. 組み合わせによる、生物学的に許容可能な酸および該酸の生物学的に許容可能な塩であって、前記組み合わせのpHが、タウリナミド誘導体の抗菌活性を増強させる範囲に収まるようにするもの;および
c. 低濃度のヘパリン、ここにおいて、該ヘパリンの濃度は、タウリナミド誘導体と停滞した血液との反応を防ぐのに十分であり、しかし、前記溶液が患者の血流中に排除および/または流出された場合に患者が出血する危険性は低いものとなるよう、十分に低い。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記生物学的に許容可能な酸が、クエン酸および乳酸の群から選択され、ならびに、前記生物学的に許容可能な塩が、クエン酸塩および乳酸塩の群から選択される組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物であって、前記タウリナミド誘導体がタウロリジンであり、前記生物学的に許容可能な酸がクエン酸であり、前記生物学的に許容可能な塩がクエン酸塩であり、およびpHの範囲が5.2から6.5である組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から2500ユニットの範囲である組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から1750ユニットの範囲である組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から500ユニットの範囲である組成物。
【請求項7】
請求項4に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から150ユニットの範囲である組成物。
【請求項8】
クエン酸塩およびクエン酸との組み合わせでタウロリジンを含むカテーテルロッキング溶液により生じる抗菌活性および流動性の低下に対する抵抗性を、pHを5.2から6.5の範囲に維持することで増強し、ならびに、低濃度のヘパリンを添加することで、カテーテルでのタウロリジンと血液との反応からカテーテルを保護する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から2500ユニットの範囲である方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から1750ユニットの範囲である方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から500ユニットの範囲である方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から150ユニットの範囲である方法。
【請求項13】
血液透析カテーテルにおける感染および開存性の減少を治療しおよび予防するための、以下を含むロッキング溶液を含む組成物:
a. 少なくとも1つのタウリナミド誘導体;および
b. 低濃度のヘパリン、ここにおいて、該ヘパリンの濃度は、タウリナミド誘導体と停滞した血液との反応を防ぐのに十分であり、しかし、前記溶液が患者の血流中に排除および/または流出された場合に患者が出血する危険性は低いものとなるよう、十分に低い。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物であって、前記タウリナミド誘導体がタウロリジンである組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の組成物であって、ヘパリンが、1 ml当り、50から2500ユニットの範囲の濃度で添加される組成物。
【請求項16】
請求項13に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から1750ユニットの範囲である方法。
【請求項17】
請求項13に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から500ユニットの範囲である方法。
【請求項18】
請求項13に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から150ユニットの範囲である方法。
【請求項19】
カテーテルにおける感染および流動性の低下を治療しおよび予防するための、以下の溶液を含む、ロッキング溶液組成物:
a. 少なくとも1つのタウリナミド誘導体;
b. 前記組成物のpHを、タウリナミド誘導体の抗菌活性を増強する範囲に収めるのに十分な濃度の、生物学的に許容可能な酸;および
c. 低濃度のヘパリン、ここにおいて、該ヘパリンの濃度は、タウリナミド誘導体の反応を防ぐのに十分であり、しかし、前記溶液が患者の血流中に排除および/または流出された場合に患者が出血する危険性は低いものとなるよう、十分に低い。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物であって、前記タウリナミド誘導体がタウロリジンである組成物。
【請求項21】
請求項19に記載の組成物であって、ヘパリンが、1 ml当り、50から2500ユニットの範囲の濃度で添加される組成物。
【請求項22】
請求項19に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から1750ユニットの範囲である組成物。
【請求項23】
請求項19に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から500ユニットの範囲である組成物。
【請求項24】
請求項19に記載の組成物であって、低濃度のヘパリンが、1 ml当り、50から150ユニットの範囲である組成物。

【公開番号】特開2013−90933(P2013−90933A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−279870(P2012−279870)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2007−540313(P2007−540313)の分割
【原出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(504438794)エヌディー・パートナーズ、エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】