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タウ蛋白の吸着材および吸着除去システム
説明

タウ蛋白の吸着材および吸着除去システム

【課題】アルツハイマー病を始めとする種々のタウオパチーにおける神経変性の病因物質と考えられているタウ蛋白を、体液などを含む液体から選択的に吸着し取り除くことが可能なタウ蛋白吸着除去システムの提供。
【解決手段】タウ蛋白を含む液体を排除限界分子量が2万以上の多孔質水不溶性担体にタウ蛋白に親和性の高いリガンドを固定化してなる吸着材を用いて処理することで、体液などを含む液体からタウ蛋白を除去することが可能なタウ蛋白吸着除去システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウ蛋白の吸着材、および、タウ蛋白に親和性のある吸着材カラムを用いた吸着除去システム、および液体よりタウ蛋白を吸着除去する方法に関する。
【0002】
本発明を用いてタウ蛋白が含まれうる体液などの液体を処理することで、液体を清浄化することが可能であり、また、タウ蛋白の体内での蓄積が関連すると考えられる様々な疾患の治療もしくは予防法として本発明を用いることが期待できるタウ蛋白吸着除去システムに関する。
【背景技術】
【0003】
タウ蛋白は、1975年に同定されて以来、タウ蛋白の評価方法、異常リン酸化タウ蛋白の形態、変異タウを過剰発現するトランスジェニックマウスなどのモデル動物の作製などが研究されてきた(特許文献1)。しかし、依然として、タウ蛋白の詳細な形態、および、タウオパチーの病態・治療については未解明な部分も多く、今後の研究の動向が期待される分野であり、多くの研究者が注目している物質である。
【0004】
タウ蛋白は神経軸索内の分子量約5万の微小管結合蛋白であり、微小管の重合を促進したり安定化したりする。タウ蛋白にはエキソン2、エキソン3、エキソン10の選択的スプライシングにより6本のアイソフォームがある。このうちC端側に繰り返す微小管結合領域を3つ有するものを3リピートタウ、4つ有するものを4リピートタウと呼ぶが、この違いはエキソン10の挿入の有無により生じる。その遺伝子発現は種、年齢により異なり、ヒト胎児期の脳では3リピートタウのみが発現しているが、成人脳では6種類のアイソフォームが認められる(非特許文献1)。
【0005】
タウ蛋白が関係すると考えられている認知症を示す神経変性疾患の中で、Pick病様の臨床症状をもつ一群の疾患を前頭側頭葉型認知症(FTD)や前頭葉型認知症(FLD)と呼ぶことが提唱された。これらの疾患群は性格変化や人格変化に伴う行動異常が先行し、記銘力障害や空間認知障害が後に出現するのが特徴であり、病理学的には前・側頭葉を中心とする大脳萎縮と神経細胞脱落、タウ蛋白を含む細胞内封入体や神経原線維変化の出現があり、アミロイドβ蛋白の沈着や老人斑の形成がないことを特徴とする。他にも、進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底核変性症、パーキンソニズム、クロイツフェルト・ヤコブ病など多くの疾患がこの異常タウ蛋白の蓄積によって発症することが知られるようになり、これら異常タウ蛋白の蓄積する状態全体をタウオパチーと呼ぶ(非特許文献2)。
【0006】
中でも、アルツハイマー病は、初老期から老年期にかけて発症する進行性の認知症状を主とする神経変性疾患である。その病理的特長は、アミロイドβ蛋白からなる老人斑と異常リン酸化タウ蛋白を主要構成成分とするpaired helical filaments(PHF)の蓄積状態である神経原線維変化(neurofibrillary tangle:NFT)の出現である。神経原線維変化は認知症の程度とよく相関し、その本体である異常リン酸化タウ蛋白の蓄積は神経細胞の変性および神経細胞死と密接な関係があることが示されている(非特許文献3)。
【0007】
従来、タウ蛋白の蓄積は、疾患特異的な病理変化というより二次的変化、神経細胞の変性した後の結果として捉えられる傾向にあった。しかしながら、1998年に第17番染色体に連鎖するパーキンソニズムを伴う家族性前頭側頭葉型認知症(FTDP−17)の家系にタウ遺伝子の変異が発見され、タウ蛋白が神経変性の原因である可能性が考えられるようになった(非特許文献4)。一方で、現在においても、このようなタウ蛋白の蓄積が原因となるアルツハイマー病を含む多くのタウオパチーにおいて根本的な治療法は存在せず、神経細胞上に蓄積する前に体液中に遊離して存在するタウ蛋白を吸着除去により取り除く手段も存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−253774号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Neuron、1998;21:955−958
【非特許文献2】臨床検査、2006;50:1121−1129
【非特許文献3】CLINICIAN、2001;498(48):31−35
【非特許文献4】Nature、1998;393:702−705
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アルツハイマー病を始めとする種々のタウオパチーにおける神経変性の病因物質と考えられているタウ蛋白を、体液などタウ蛋白を含む液体から選択的に吸着し取り除くことが可能なタウ蛋白吸着除去システムを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、これらの課題を鑑み鋭意検討した結果、タウ蛋白を含む液体をタウ蛋白に親和性のある吸着材を用いて処理することで、体液などを含む液体からタウ蛋白を除去することが可能なタウ蛋白吸着除去システムを提供するに至った。
【0012】
本発明によると、タウ蛋白吸着除去システムは、タウ蛋白吸着材を、液の入口および出口を有する容器内に充填してなるタウ蛋白吸着除去カラムを含むものである。
【0013】
本発明におけるタウ蛋白吸着材は、排除限界分子量が2万以上の多孔質水不溶性担体にタウ蛋白に親和性の高いリガンドを固定化してなる。
【0014】
また本発明は、タウ蛋白に親和性の高いリガンドがデキストラン硫酸であるタウ蛋白吸着材に関する。
【0015】
また本発明は、タウ蛋白吸着材とタウ蛋白を含む体液などの液体とを接触させることを特徴とするタウ蛋白吸着除去方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、タウ蛋白を含む液体を処理することが可能なタウ蛋白吸着除去システムであり、アルツハイマー病を含む多くのタウオパチーの神経変性の病因と考えられるタウ蛋白を、体液などタウ蛋白を含む液体から除去することが可能となる。
【0017】
本発明を用いることにより、タウ蛋白の体内での蓄積が関連すると考えられる様々な疾患の治療もしくは予防が期待できる。
【0018】
また本発明によれば、タウ蛋白が含まれる可能性のある体液などの液体を本発明で処理することで、前記液体を清浄化することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
タウ蛋白とは、微小管結合蛋白質の一つであり、微小管に結合してチュブリンとチュブリンとの間のヒンジとしての役目をもつものであり、現在分かっているもので、6種のアイソフォームが存在する。また、何らかの機構で過剰にリン酸化を受け異常リン酸化タウ蛋白と呼ばれるものも存在する。タウ蛋白は、体内もしくは体外で、その検出や他分子との結合能力を高めるなどを目的としてある種の官能基の修飾を受けることもある。あるいは、遺伝子などの変異により異常なタウ蛋白も産生される可能性が考えられる。本発明によって吸着除去されるタウ蛋白は、上述のタウ蛋白のうちの少なくとも一種以上であるが、当業者の一般的な常識に照らしてタウ蛋白様物質と呼ぶことが可能なものであれば、前記記載の種々のタウ蛋白に限られるものではない。
【0020】
本発明における水不溶性担体とは、常温常圧で固体であり、水に対する溶解度が極めて小さい材料からなり、形状の例としては、例えば、粒状、板状、繊維状、および中空糸状、不織布状などが挙げられるが、これらのみに限定されず、その大きさも特に限定されるものではない。
【0021】
本発明における水不溶性担体として、ガラスビーズ、シリカゲルなどの無機担体、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンなどの合成高分子担体や二種以上からなる合成重合体担体や、結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストリンなどの多糖類からなる有機担体、さらには、これらの組み合わせによって得られる有機―有機、有機―無機などの複合担体などが代表として挙げられる。好ましくは、水不溶性担体が親水性であること、もしくは、非特異吸着が比較的少なくタウ蛋白の吸着選択性が良好であればなお良い。
【0022】
また、本発明における水不溶性担体は、適当な大きさの細孔を多数有する多孔構造を有する担体であることが好ましい。もしくは、高分子網目状のような三次元構造を有する担体、担体中に空いた孔のうち少なくとも一部が貫通しているようなモノリス担体なども挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0023】
さらに、本発明における水不溶性担体は、吸着対象物質がある程度大きな確率で細孔内に進入できる程度の排除限界分子量を有していることが好ましい。ここでいう排除限界分子量とは、一般的には成書(例えば、波多野博行、花井俊彦著、実験高速液体クロマトグラフ、化学同人など)で述べられているように、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて細孔内に進入できない分子のうち最小の分子量を持つものの分子量を指し、一般的に球状蛋白質などを用いて測定される。本発明においては、その排除限界分子量が2万以上であり、タウ蛋白もしくは修飾などを受けたタウ蛋白様物質以外のタンパク質の侵入を抑えるためには、4万以上が好ましく、より好ましくは、6万以上である。また、体液として脳脊髄液または血漿、血清などを用いる場合、排除限界分子量に上限はないものの、体液として血液などを用いた場合、排除限界分子量が500万を超えると血小板付着が増加する傾向がみられることから、排除限界分子量は500万以下であることが望ましい。排除限界分子量が500万以下であれば、本発明の吸着体を直接血液灌流(DHP)型の血液浄化システムに用いる場合にも、充分な性能を発揮することができる。
【0024】
本発明における多孔質水不溶性担体に固定化されるリガンドとしては、タウ蛋白質に親和性のあるものが好ましく、触媒や固定化反応剤を用いて化学的な反応機構により水不溶性担体に固定化することが可能であるものである。すなわち、固定化されるリガンドとしては、タウ蛋白質に親和性のある抗体やペプチド、低分子物質が挙げられる。特に、低分子物質としてはデキストラン硫酸を用いることが好ましい。
【0025】
本発明を用いて処理が可能な液体とは、脳脊髄液、血液、血漿、血清、腹水、リンパ液、関節内液、骨髄液、および、これらから得られた分画成分、ならびに、そのほか生体由来の液性成分などタウ蛋白を含む体液などの液体を指すが、これに限るものではない。すなわち、タウ蛋白を含む可能性のある液体であれば、水もしくは緩衝液などでもよく、生体由来の液性成分も対象となる。
【0026】
本発明のタウ蛋白吸着除去方法の好ましい形態としては、タウ蛋白吸着材とタウ蛋白を含む体液などの液体とを接触させることによる液体からタウ蛋白を吸着除去する方法が用いられる。その方法として、例えば、一つの容器内に、タウ蛋白吸着材と液体とを入れて一定時間静置もしくは振とうなどを実施し、その後タウ蛋白吸着材と液体とを分離する方法が挙げられる。
【0027】
あるいは、液の入口および出口を有する容器内に一種以上のタウ蛋白吸着材を充填してなる少なくとも一つのタウ蛋白吸着除去カラムからなるタウ蛋白吸着除去システムを構築し、その中に液体を流入させタウ蛋白吸着材と接触させた後システムから流出させる方法が挙げられる。
【0028】
また本発明のタウ蛋白吸着除去システムは、少なくとも一つのタウ蛋白吸着除去カラムの他に、より効果的にタウ蛋白を吸着除去させるための器具が組み込まれていても良い。例えば、液体を流動させるためのポンプなどを配置してもよいし、透析膜や2種のタウ蛋白吸着材からなる1本以上のタウ蛋白吸着除去カラムが並列もしくは直列に組み込まれていても良い。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の詳細を具体的な実施例にてさらに説明するが、本発明の使用形態は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
多孔質水不溶性担体(平均粒径150μm、球状タンパク質の排除限界分子量約5,000,000)1Lに対し水酸化ナトリウム水溶液中でエピクロルヒドリン0.15Lを反応させ、次いで、水溶液中でデキストラン硫酸500gを固定化反応させたものを、モノエタノールアミンを用いて処理することにより、タウ蛋白吸着材(排除限界分子量500万、デキストラン硫酸固定量:0.32μmol/g−湿重量)を得た。
【0031】
得られたタウ蛋白吸着材0.2mLに対し、タウ蛋白(リコンビナント Human Tau−441、rPeptide社製)の濃度が約400pg/mLとなるように調整した擬似血清(4%BSA/PBS緩衝液)1.6mLを添加し、37℃で2時間振盪し、上澄み液のタウ蛋白濃度を市販のELISA(フィノスカラー・hTAU、ニプロ社製)にて測定した。その結果、タウ蛋白濃度が、400pg/mLから80.6pg/mLに低下し、80%の吸着率であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のタウ蛋白吸着除去システムを用いれば、タウ蛋白の体内での蓄積が関連すると考えられる様々な疾患の治療もしくは予防法としての利用が期待できる。また、タウ蛋白が含まれうる体液などの液体を本発明のタウ蛋白吸着除去システムで処理することで、液体の清浄化が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排除限界分子量が2万以上の多孔質水不溶性担体にタウ蛋白に親和性の高いリガンドを固定化してなるタウ蛋白吸着材。
【請求項2】
タウ蛋白質に親和性の高い前記リガンドがデキストラン硫酸であることを特徴とする請求項1記載のタウ蛋白吸着材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタウ蛋白吸着材とタウ蛋白を含む体液などの液体とを接触させることを特徴とするタウ蛋白吸着除去方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のタウ蛋白吸着材を液の入口および出口を有する容器内に充填してなるタウ蛋白吸着除去カラムを含むタウ蛋白吸着除去システム。

【公開番号】特開2013−32295(P2013−32295A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276746(P2009−276746)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】