説明

タキサンを形成するための新規化合物および方法ならびにその使用

本発明は、生物活性化合物の合成に有用な新規化合物を広範に対象とする。より具体的には、本明細書に開示の本実施形態は、タキサンとカップリングする際に、医薬として有用なタキサンの合成に有用となる新規側鎖に関する。新規側鎖を形成し、それらをヒンダードアルコール、すなわち有用なエステルを生成するタキサンと結合させる方法も開示される。様々なタキサン化合物は、抗癌活性を示すことが知られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年9月27日出願の米国特許出願WO10/951,555および2004年9月27日出願のPCT出願PCT/US04/31816の部分継続出願であり、現在共に係属中である。
【0002】
本発明は、生物活性化合物の合成に有用な新規化合物を広範に対象とする。より具体的には、本明細書に開示の本実施形態は、タキサンと結合する際に、医薬として有用なタキサンの合成に有用となる新規側鎖に関する。新規側鎖を形成し、それらをヒンダードアルコールと、すなわち有用なエステルを生成するタキサンとカップリングさせる方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
様々なタキサン化合物は、抗癌活性を示すことが知られている。この活性の結果、タキサンは科学界および医学界において益々注目を集めており、癌の化学療法剤の格別に有望なファミリーであるとみなされている。例えば、幾つか異なる種類の癌の化学療法治療のための、パクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサンが認可されている。知られているように、パクリタキセルは、以下のタキサン骨格の式およびナンバリングシステムを有する、天然に存在するタキサンジテルペノイドである。
【0004】
【化1】

【0005】
パクリタキセル化合物は、化学療法剤として非常に有用であると思われることから、有機化学者らは、パクリタキセル分子および他の強力なタキサン類似体を合成する試みに多大な時間と資源を費やしてきた。パクリタキセルまたは他のタキサンの部分的合成の直接的な実施には、キラル非ラセミ側鎖および誘導体、バッカチンIIIまたは密接に関係するジテルペノイド物質の豊富な天然源、ならびにそれら2つを結合する効果的手段への便利な接近手段が必要とされる。おそらくパクリタキセルの最も直接的な合成は、次式のバッカチンIIIおよび10−脱アセチルバッカチンIIIを、
【0006】
【化2】

【0007】
側鎖
【0008】
【化3】

【0009】
と縮合させることである。
しかし、バッカチンIIIおよび10−脱アセチルバッカチンIII両方のC−13ヒドロキシルが、半球形のタキサン骨格の立体的に妨害された凹領域内に位置することから、これら2つの単位のエステル化は困難となっている。
【0010】
最終的にパクリタキセルを生成する側鎖とタキサン骨格とのカップリングの代替方法は、様々な特許文書に開示されている。例えば、Denisら「Process for Preparing Taxol」という名称の1990年5月8日発行の米国特許第4,929,011号には、次の一般式の(2R,3S)側鎖酸。
【0011】
【化4】

【0012】
式中、Pはヒドロキシル保護基、と次の一般式のタキサン誘導体
【0013】
【化5】

【0014】
[式中、Pはヒドロキシル保護基である]
、との縮合からのパクリタキセルの半合成が記載されている。その後縮合生成物を処理して、PおよびP保護基を除去する。Denisらにおいて、パクリタキセルC−13側鎖、(2R,3S)3−フェニルイソセリン誘導体は、保護されたバッカチンIIIとカップリングするためにPで保護される。バッカチンIII骨格上のP保護基は、例えばトリメチルシリルまたはトリアルキルシリル基である。
【0015】
パクリタキセルの別の代替の半合成は、Swindellらの米国特許第5,770,745号に記載されている。Swindellらは、次の一般式を有する側鎖を用いた縮合によるバッカチンIII骨格からのパクリタキセルの半合成を開示している
【0016】
【化6】

【0017】
[式中、Rは、アルキル、オレフィン系または芳香族またはPhCHであり、Pはヒドロキシル保護基である]。
パクリタキセルの半合成の別の技術は、Sistiらの米国特許第5,750,737号に見られる。該特許文書では、式
【0018】
【化7】

【0019】
のC7−CBZバッカチンIIIを、式
【0020】
【化8】

【0021】
のC3−N−CBZ−C2−O−保護された(2R,3S)−3−フェニルイソセリン側鎖でエステル化し、次いで脱保護し、3Nベンゾイル化してパクリタキセルを生成する。
抗癌活性を示すことが見出された別のタキサン化合物は、「ドセタキセル」として知られる化合物である。この化合物は商標TAXOTERE(登録商標)でも販売されており、その登録はSanofi Aventisによって所有されている。ドセタキセルは次式の構造を有する。
【0022】
【化9】

【0023】
この式から分かるように、ドセタキセルは、フェニルイソセリン側鎖のC3’窒素位置にt−ブトキシカルボニル(Boc)基およびC10位に遊離ヒドロキシル基を含むことを除き、パクリタキセルに類似している。パクリタキセルと同様、半球形のタキサン骨格の凹領域内に位置するバッカチンIII骨格内のヒンダードC13ヒドロキシルに起因して、ドセタキセルの合成は困難である。ドセタキセルおよび関連化合物の幾つかの合成は、Journal of Organic Chemistry:1986,51,46;1990,55,1957;1991,56,1681;1991,56,6939;1992,57,4320;1992,57,6387;および993,58,255に報告されており、Holtonの1991年5月14日発行の米国特許第5,015,744号にも、このような合成が報告されている。ドセタキセルの合成のさらなる技術は、例えばSistiらの米国特許第5,688,977号、Sistiらの米国特許第6,107,497号に論じられている。
【0024】
パクリタキセルおよびドセタキセル両方によって示される有望な抗癌活性に起因して、タキサンファミリー内の類似体および誘導体は、生物活性の増大、多剤耐性(MDR)を増大してきた癌細胞に対する有効性、重篤な副作用のさらなる低減、溶解度特性の改善、良好な治療プロファイルなどの改善された特徴を有する、より新規でより良い薬物をもたらし得ることが、さらなる研究によって示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
パクリタキセルおよびドセタキセル合成のための既存の技術は、確実に利点を有するが、この抗癌化合物を生成できる改善された化学的プロセスが依然必要とされている。さらに、癌の治療に使用するために改善された生物活性を有する新規タキサン化合物、およびこれらの化合物を形成するための効率的なプロトコールを提供することが必要とされている。特に、重要な医薬化合物および中間体の合成のためにタキサン骨格と容易かつ効率的にカップリングする新規側鎖が必要とされている。本発明は、これらの必要性を満たすことを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
ここで本発明によれば、タキサン、タキサン類似体、およびその誘導体の生成に使用するための方法が記載される。概して本方法は、一般式
【0027】
【化10】

【0028】
の第1化合物を、一般式
【0029】
【化11】

【0030】
の第2化合物と反応させて、一般式
【0031】
【化12】

【0032】
の第3化合物を得ることを含み、
式中、
Xは、ハロゲンまたはORであり、
は、R、R、R、またはPのいずれかであり、
は、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、
は、R、R、またはPのいずれかであり、
およびRは、独立に、Hあるいは置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、
は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アシル、アルコキシカルボニル、もしくはアリールオキシカルボニルであり、
はアミン保護基であり、
はヒドロキシル保護基であり、
、E、およびそれらが結合する炭素は、四環性タキサン核を定義する。
【0033】
この第3化合物は、より具体的な式
【0034】
【化13】

【0035】
をとることができる。
次いで、この第3化合物をパクリタキセルに変換することができる。
第2化合物は、構造
【0036】
【化14】

【0037】
を有することができ、
は、R、P、またはZであり、
は、H、ヒドロキシル、ケトン、OR、P、またはZであり、
10は、R10、P、またはZ10であり、
は、YがPである場合にはPであり、かつYと一緒になって環状構造を形成し、
は、
がPである場合にはPであり、かつYと一緒になって環状構造を形成するか、またはY10がPである場合にはPであり、かつY10と一緒になって環状構造を形成するかのいずれかであり、
10は、YがPである場合にはPであり、かつYと一緒になって環状構造を形成し、
は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、
は、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、
10は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、
はヒドロキシル保護基であり、
はヒドロキシル保護基であり、および
はヒドロキシル保護基である。
【0038】
ここで所望により、Xはハロゲンであり、XはRであり、XはPhであり、XはPであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RはHであり、PはBocであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。代替では、Xはフッ素であり、XはRであり、XはPhであり、XはPであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RはHであり、PはCbzであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。別の代替では、XはORであり、XはRであり、Xはイソブチルであり、XはPであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RはHであり、RはHであり、PはBocであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。さらに別の別の代替では、Xはハロゲンであり、Xはイソブチルであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RおよびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、RはHであり、PはBocであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。
【0039】
第3化合物は、式
【0040】
【化15】

【0041】
の構造を有することができる。
ここで本方法は、第3化合物を、ドセタキセル、パクリタキセル、または7,9−アセタール結合類似体に変換するステップを含むことができる。この方法は、P、P、P、およびPを水素で置換することによって第3化合物を脱保護して、式
【0042】
【化16】

【0043】
を有する第4化合物を形成するステップを含むことができる。
およびPを水素で置換することによって第3化合物を脱保護して、式
【0044】
【化17】

【0045】
を有する第4化合物を形成することもできる。
この第4化合物をC−10位で選択的にアシル化して、式
【0046】
【化18】

【0047】
を有する第5化合物を形成することができる。
本方法は、第5化合物をパクリタキセルに変換することを企図する。
第3化合物を酸化して、式
【0048】
【化19】

【0049】
の第4化合物を形成することもできる。
次いでこの第4化合物を還元して、式
【0050】
【化20】

【0051】
の第5化合物を形成することができる。
この第5化合物をC−10位でアシル化して、式
【0052】
【化21】

【0053】
の第6化合物を形成することができる。
さらに、Pを水素で置換することによってこの第6化合物を脱保護し、それによって式
【0054】
【化22】

【0055】
の第7化合物を形成することができる。
この第7化合物は、式
【0056】
【化23】

【0057】
の第8化合物に変換することができ、
式中、R12およびR13は、独立に、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルである。ここでR12およびR13はそれぞれ独立に、
【0058】
【化24】

【0059】
からなる群から選択することができる。
本発明の幾つかの実施形態によれば、第1化合物は環状構造であり(ここで、C−3窒素およびC−2酸素はRおよびRを含む共通の保護基で連結し、式
【0060】
【化25】

【0061】
の構造を有する。したがって第3化合物が、式
【0062】
【化26】

【0063】
の環状構造となる。ここで、式中、RはHまたはPのいずれかである。
また第2化合物は、構造
【0064】
【化27】

【0065】
を有することができ、
は、R、P、またはZであり、
は、H、ヒドロキシル、ケトン、OR、P、またはZであり、
10は、R10、P、またはZ10であり、
はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し、
は、
であり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成するか、またはPであり、Y10がPである場合にはY10と一緒になって環状構造を形成するかのいずれかであり、
10はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し、
は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、
は、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、
10は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、
はヒドロキシル保護基であり、
はヒドロキシル保護基であり、
はヒドロキシル保護基である。
ここで所望により、Xはハロゲンであり、XはRであり、XはPhであり、XはPであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RはHであり、PはBocであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。あるいは、Xはフッ素であり、XはRであり、XはPhであり、XはPであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RはHであり、PはCbzであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。別の代替では、XはORであり、XはRであり、Xはイソブチルであり、XはPであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RはHであり、RはHであり、PはBocであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。さらに別の別の代替では、Xはハロゲンであり、Xはイソブチルであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RおよびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、RはHであり、PはBocであり、PはBOMであり、PはCbzであり、およびPはCbzである。
【0066】
本発明はまた、前記方法で生成された新規化合物を開示する。そのような一化合物の一つは、式
【0067】
【化28】

【0068】
を有し、
式中、
Xは、ハロゲンまたはORであり、
は、R、R、R、またはPのいずれかであり、
は、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、
は、R、R、またはPのいずれかであり、
およびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、
はH、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アシル、アルコキシカルボニル、またはアリールオキシカルボニルであり、
はアミン保護基であり
はヒドロキシル保護基である。
より具体的には、Xは、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素からなる群から選択することができる。
【0069】
この化合物は環状構造であってよく、ここで、C−3窒素およびC−2酸素は、RおよびRを含む共通の保護基で結合し、式
【0070】
【化29】

【0071】
を有する。式中、RはHまたはPのいずれかである。またXは、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素からなる群から選択することができる。所望により、Xは塩素であり、Xはイソブチルであり、RおよびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、RはPであり、PはBocである。ここで本化合物は、構造式
【0072】
【化30】

【0073】
をとることができる。
代替として、XはRであり、Xはイソブチルであり、RおよびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、RはPであり、Rはトリメチルアセチルであり、PはBocである。したがってこの化合物の別の環状構造は、構造式
【0074】
【化31】

【0075】
の構造を有する。
本化合物が一般式
【0076】
【化32】

【0077】
を有する場合、XはOR11であってよく、XはRであってよく、Xはイソブチルであってよく、XはPであってよく、RはHであり、R11はHであってよく、PはBocであってよく、PはBOMであってよい。したがって本化合物は、構造式
【0078】
【化33】

【0079】
を有することができる。
一般式の化合物において、Xはフッ素であってよく、XはRであってよく、Xはイソブチルであってよく、XはPであってよく、RはHであり、PはBocであってよく、PはBOMであってよい。したがって本化合物は、構造式
【0080】
【化34】

【0081】
の構造を有することができる。
一般式の化合物において、XはOR11であってよく、XはRであってよく、XはPhであってよく、XはPであってよく、RはHであってよく、R11はHであってよく、PはCbzであってよく、PはBOMであってよい。したがって本化合物は、構造式
【0082】
【化35】

【0083】
の構造を有することができる。
一般式の化合物において、Xはフッ素であってよく、XはRであってよく、XはPhであってよく、XはPであってよく、RはHであってよく、PはCbzであってよく、PはBOMであってよい。したがって本化合物は、構造式
【0084】
【化36】

【0085】
の構造を有することができる。
本発明の例示的な実施形態のこれらおよび他の側面は、以下の添付の図と共に以下の詳細な説明を考慮することによって、より容易に認識され理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0086】
上記および本発明の説明の全てに使用される以下の用語は、別段の指定が無い限り以下の意味を有すると理解されるべきである。
アルキル
単独でまたは別の基の一部分として本明細書で使用される「アルキル」という用語は、通常の鎖中に好ましくは1〜12個の炭素を有する、任意に置換された直鎖および分岐鎖の飽和炭化水素基を指す。
【0087】
「置換アルキル」という用語は、例えばハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、オキソ、アルカノイル、アリールオキシ、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、2つのアミノ置換基がアルキル、アリール、またはアラルキルから選択される二置換アミン、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アラルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、スルホンアミド(例えばSONH)、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル(例えばCONH)、置換カルバミル(例えばCONHアルキル、CONHアリール、CONHアラルキル、または窒素上に、アルキル、アリール、もしくはアラルキルから選択される2つの置換基が存在する場合)、アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジノ、およびヘテロシクロ、例えばインドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジル等の、例えば1〜4個の置換基で置換されたアルキル基を指す。この置換基がさらに置換される上記の場合、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、またはアラルキルで置換されよう。
【0088】
置換されていない例示的なかかる基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が含まれる。例示的な置換基には、以下の1以上の基、ハロ、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヒドロキシもしくは保護ヒドロキシ、カルボキシル(−COOH)、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、カルバモイル(NH−CO−)、アミノ(−NH)、モノもしくはジアルキルアミノ、またはチオール(−SH)が含まれ得る。
アルケニル
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、アルキルについて記載したように置換されていてもよく、少なくとも1つの炭素対炭素の二重結合をさらに含有するような基を指す。例示的な置換基には、上記のような1以上のアルキル基、および/またはアルキル置換基として先に記載した1以上の基が含まれる。
アリール
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「アリール」という用語は、好ましくは1または2個の環および6〜12個の環炭素を含有する、置換されていてもよい単素環の芳香族基を指す。かかる例示的な非置換基には、フェニル、ビフェニル、およびナフチルが含まれる。例示的な置換基には、1つまたは複数の、好ましくは3つ以下のニトロ基、上記のアルキル基、および/またはアルキル置換基に関して先に記載した基が含まれる。
【0089】
「置換アリール」という用語は、例えば1〜4個の置換基、例えばアルキル、置換アルキル、ハロ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、ウレイド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルバミル、アルコキシカルボニル、アルキルチオノ、アリールチオノ、アルキルスルホニル、スルホンアミド、アリールオキシ等で置換されたアリール基を指す。この置換基は、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリール、置換アリール、置換アルキル、またはアラルキルでさらに置換されていてもよい。
アラルキル
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「アラルキル」という用語は、アリール置換基、例えばベンジルもしくはフェネチル、またはナフチルプロピル、または上記定義のアリールなどを有する上記のアルキル基を指す。
アシル
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「アシル」という用語は、有機カルボン酸の基−COOHからヒドロキシル基を除去することによって形成された部分を指す。アシル基は特に、例えばPhCOまたはBnCOであってよい。
ヒドロキシル保護基
本明細書で使用される「ヒドロキシ(またはヒドロキシル)保護基」という用語は、遊離ヒドロキシル基を保護することができる任意の基を指し、遊離ヒドロキシル基は、それが使用される反応の後、該分子の残りを破壊することなく除去され得る。かかる基およびその合成は、「Protective Groups in Organic Synthesis」by T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,New York(1999)、またはFieser&Fieserに見ることができる。例示的なヒドロキシル保護基には、メトキシメチル、1−エトキシエチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、ベンジルオキシメチル、(β−トリメチルシリル−エトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、ベンジルオキシカルボニル、2,2,2−トリ−クロロエトキシカルボニル、t−ブチル(ジフェニル)シリル、トリアルキルシリル、トリクロロメトキシカルボニル、および2,2,2−トリクロロエトキシメチルが含まれる。
アミン保護基
本明細書で使用される「アミン保護基」という用語は、合成手順中の望ましくない反応に対してアミノ基を保護し、選択的に除去可能であることが当技術分野で知られている、容易に除去可能な基を意味する。合成手順中の望ましくない反応に対する保護基としてのアミン保護基の使用は当技術分野で周知であり、かかる多くの保護基が知られており、例えば参照によって本明細書に組み込まれるT.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,New York(1999)を参照されたい。例示的なアミン保護基は、アシル、例えばホルミル、アセチル、クロロアセチル、トリクロロアセチル、o−ニトロフェニルアセチル、o−ニトロフェノキシアセチル、トリフルオロアセチル、アセトアセチル、4−クロロブチリル、イソブチリル、o−ニトロシンナモイル、ピコリノイル、アシルイソチオシアネート、アミノカプロイル、ベンゾイル等、およびアシルオキシ、例えばメトキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル、2−トリメチルシリルエトキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、1,1−ジメチルプロピニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル等である。
ハロゲン
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素を指す。
タキサン
本明細書で使用される「タキサン」という用語は、上記のタキサン部分を含有する化合物を指す。本明細書で使用される「C−13アシルオキシ側鎖を担持するタキサン」という用語は、上記のタキサン部分を含有し、アシルオキシ置換基のオキシ基の酸素を介して、前記部分とC−13で直接結合しているアシルオキシ側鎖をさらに含有する化合物を指す。
【0090】
本発明の例示的な実施形態は一般に、例えばドセタキセル、パクリタキセル、およびC−9およびC−10OH位置でα立体化学を有するタキサン類似体を含む抗癌化合物の合成に関する。本発明の一態様は、これらの抗癌化合物の合成のためにタキサン骨格と結合する新規かつ有用な側鎖である。本発明の別の側面には、タキサン骨格への新規側鎖の結合後の、所望の抗癌化合物の合成が含まれる。
【0091】
次いでまず図1(スキーム1a、b、およびc)を見ると、この新規側鎖は一般に化合物Aと表される。示されるように、側鎖Aはタキサン骨格BのC13位で結合し、それによってカップリング生成物Cを形成することができる。次いでカップリング生成物Cを、望むならば図2〜5(スキーム2〜5)に一般的に示すように、さらに合成して対象抗癌化合物を生成することができ、それを以下により詳細に論じる。
【0092】
概して側鎖Aは、式
【0093】
【化37】

【0094】
の構造を有することができ、式中、
Xは、ハロゲンまたはORであり、
は、R、R、R、またはPのいずれかであり、
は、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、
は、R、R、またはPのいずれかであり、
およびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、
は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アシル、アルコキシカルボニル、またはアリールオキシカルボニルであり、
はアミン保護基であり、
はヒドロキシル保護基である。
【0095】
2−Oおよび3−Nが、環状アセタールなどにおいて共通の保護基で結合している場合、側鎖Aは、以下の構造を有することもでき、
【0096】
【化38】

【0097】
式中、RはHまたはPのいずれかである。
側鎖Aの幾つかの例は、以下の例示的構造式を有する。
【0098】
【化39】

【0099】
概してタキサン骨格Bは、式
【0100】
【化40】

【0101】
を有することができ、式中、E1、E2、およびそれらが結合する炭素は、四環性タキサン核を定義する。
タキサン骨格Bは、以下の一般構造式を有することができ、
【0102】
【化41】

【0103】
式中、
は、R、P、またはZであり、
は、H、ヒドロキシル、ケトン、OR、P、またはZであり、
10は、R10、P、またはZ10であり、
はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し、
は、
であり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成するか、またはPであり、Y10がPである場合にはY10と一緒になって環状構造を形成するかのいずれかであり、
10はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し、
は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、
は、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、
10は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、
はヒドロキシル保護基であり、
はヒドロキシル保護基であり、および
はヒドロキシル保護基である。
側鎖Aがタキサン骨格Bとカップリングする場合、カップリング生成物Cは、以下の広範な構造
【0104】
【化42】

【0105】
[式中、X、X、X、E、およびEは上記の通りである]、
または
【0106】
【化43】

【0107】
2−Oおよび3−Nが共通の保護基で結合している場合、式中、RおよびRは上記の通りである。
【0108】
カップリング生成物の幾つかの例は、以下の例示的構造式を有する。
【0109】
【化44】

【0110】
以下、カップリング生成物C、ならびにそれによって形成されるその後の抗癌化合物および中間体の合成の両方の一般的実施例、次いで特定の実施例を記載する。しかしカップリング生成物Cは、他の有用な化合物の合成に有用となり得ることを理解すべきである。
【実施例】
【0111】
I.ドセタキセルの合成
ドセタキセルは本発明に従う多くの方法で形成でき、この一般例は図2(スキーム2)に示す。示すように、スキーム1cに一般的に示す通りに側鎖をタキサン骨格と結合することにより形成されるカップリング生成物Dは、多くの変換を行ってドセタキセルFを形成する。より詳しくは、カップリング生成物Dを最初にC7、C10、C3’NおよびC2’で脱保護化して最初の中間体Eを形成する。引き続き、Boc基をN−C3’部位に結合してドセタキセルFを形成する。
【0112】
このような工程を図6に例示する。示すように、式1の側鎖(式中、Xはフッ素であり、XはRであり、XはPhであり、XはPであり、RはHであり、PはCbzであり、およびPはBOMである)を、式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIII(式中、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、PおよびPはそれぞれCbzである)のタキサン骨格とカップリングして、式3のカップリング生成物を形成する。
【0113】
式1の酸フルオリドの塩化メチレン溶液を、注射器により、式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIII(5.6g)および4−PP(1.55g)の無水塩化メチレン(40mL)溶液に、室温で窒素雰囲気にて加えた。反応物を室温で4時間撹拌し、次いで塩化メチレン(75mL)で希釈し、水(2×50mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転ストリップ(rotostripped)した。イソプロピルアセテートおよびヘプタンを含む濃度勾配溶離液を用いて溶離するシリカプラグ上で、粗製の生成物を精製した。純粋なフラクションをプールし、回転ストリップし、発泡性固体として不純物の無いカップリングされたエステルを得た。固体をメタノール(200mL)に懸濁させ、室温で5時間激しく撹拌した。白色固体を濾過し、最少量のメタノールで洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、白色固体として式3のカップリングエステルを得た(7.3g、86%)。
【0114】
HCl(1.7mL)のテトラヒドロフラン(25mL)と水(1.7mL)との溶液およびPd/C(10重量%パラジウム、4.0g)を、式3の結合エステル(5.0g)のテトラヒドロフラン(75mL)溶液に加えた。反応物を水素雰囲気下終夜で激しく撹拌した。次いでセライトのベッド(15g)を通して反応混合物を濾過し、テトラヒドロフラン(2×75mL)で洗浄し、濾液を丸底フラスコに移し、そのまま次の反応に使用した。
【0115】
このテトラヒドロフラン溶液に、室温で窒素雰囲気下ジ−tert−ブチルジカーボネート(2.0g)およびトリエチルアミン(3.5mL)を加え、終夜撹拌した。次いでセライトのベッドを通して反応混合物を濾過し、イソプロピルアセテート(3×75mL)で洗浄した。次いで有機層を0.1NのHCl溶液(中性pHまで)、水(2×50mL)で洗浄し、乾燥させ、回転ストリップし、式5のドセタキセル(4.26g)を得、次いでこれをカラムクロマトグラフィーにより精製する。
II.パクリタキセルの合成
パクリタキセルの2つの一般的合成を、最初に図3(スキーム3)に、および代替として図4(スキーム4)に示す。最初に図3に転じると、上述のように、カップリング生成物Dは、スキーム1cに一般的に示す通りに側鎖をタキサン骨格とカップリングすることにより一般的に形成される。次いでC7およびC10ならびにC3’窒素側鎖部位で保護基を除去して、中間体化合物Hを得る。その後、中間体化合物HをC3’窒素でアシル化して中間体化合物Iを得、次いでC10部位で選択的にアシル化して中間体化合物Jを得る。次いで化合物JをC2’部位で脱保護化してパクリタキセルKを得る。
【0116】
スキーム3に示す一般的工程は、図7にさらに例示できる。ここで再度、式3の結合エステルは、図6に関して上記したように、式1の側鎖を式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIIIとカップリングすることにより形成される。式3のカップリングエステルを、式6、7、および8の中間体化合物を経由して、式9のパクリタキセルになるよう変換することは、米国特許第6,066,749号および米国特許第6,448,417号に記載されており、共に参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
パクリタキセルを製造する代替の一般的スキームを図4(スキーム4)に示し、これはカップリング生成物Lを出発として、スキーム1cに示した一般的な反応により形成できる。カップリング生成物Lを最初にC7およびN−C3’部位で脱保護化し、ベンゾイル基を窒素上に位置させ、中間体化合物Jを得る。次いでベンゾイル基を窒素上に位置し、C2’で脱保護化して、パクリタキセルKを得る。
【0118】
スキーム4における工程を図8に例示する。示すように、式1の側鎖(式中、Xはフッ素であり、XはRであり、XはPhであり、XはPであり、RはHであり、PはCbzであり、およびPはBOMである)を、式10のC7−CbzバッカチンIII(式中、YはRであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、R10はAcOであり、PはCbzである)のタキサン骨格とカップリングして、式11のカップリング生成物を形成する。
【0119】
式1の酸フルオリドの塩化メチレン溶液を、注射器により、式10のC7−CbzバッカチンIII(3.93g)および4−PP(1.62g)の無水塩化メチレン(40mL)溶液に、室温で加え、反応物を窒素雰囲気下4時間撹拌し、塩化メチレン(75mL)で希釈し、飽和塩化アンモニウム溶液(1×50mL)、水(2×50mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転ストリップして、発泡性固体を得た(〜8.9g)。固体をメタノール(30mL)に懸濁させ、室温で5時間激しく撹拌した。白色固体を濾過し、最少量のメタノールで洗浄し、真空オーブン中で乾燥させて、白色固体として式11のカップリングエステルを得た(4.9g、79%収率、面積94.5%)。式11のカップリングエステルを、結果として式9のパクリタキセルに変換することは、米国特許第5,750,737号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
III.7,9−アセタール連結類似体の合成
7,9−アセタール連結類似体の一般的合成を、図5(スキーム5)に示す。カップリング生成物Dは、スキーム1cに従う工程により一般的に形成され合成されて、7,9−アセタール連結類似体Rを得る。一般的に、結合生成物DをC10で脱保護化して中間体生成物Mを得、次いでこれを酸化して中間体化合物Nを得る。中間体化合物Nを還元して中間体化合物Oを得、その後C10で選択的にアシル化して中間体化合物Pを得る。次いで中間体化合物PをC7およびC2’部位の両方で脱保護化して中間体化合物Qを得、その後これを7,9−アセタール連結類似体Rに変換した。
【0120】
このような工程を図9に例示する。示すように、式31の側鎖(式中、XはORであり、XはRであり、Xはイソブチルであり、XはPであり、RはHであり、RはHであり、PはBocであり、およびPはBOMである)を式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIIIとカップリングさせて、式13のカップリングエステルを得る。ここで、式31の側鎖(38g、99.6mmol)をトルエン中既知濃度(0.09524g/mL)に溶解した。この溶液を式2(54.0g、66.4mmol)に加えた。溶液を温水浴中で加熱し、トルエン(540mL)中のDMAP(8.13g、66.4mmol)およびDCC(25.28g、119.6mmol)を加温反応混合物に加えた。温度を約51℃で維持しながら、反応物を継続的に撹拌し、HPLC用に定期的にサンプリングした。3時間後、さらにトルエン(140mL)中のDCC(13.0g)を加えた。
【0121】
およそ25時間後、MTBE(450mL)を加え、シリカゲルのパッドを通して反応混合物を濾過し、MTBE続いてEtOAcで洗浄し、濃縮して、油61.8gを得た。シリカをEtOAcで再度洗浄し、第2のプールを50mLに濃縮し、置いた。翌日第2のプールは結晶化し始めていた。濾過し、固体を1:1ヘプタン/IPAcで洗浄し、真空下に40℃で乾燥させて、式13の固体を得た。
【0122】
次に、式13をC7およびC10部位ならびにC2’側鎖部位の両方で脱保護化して、式14を得た。パール反応器に式13(68.0g、57.823mmol)のTHF(1.02L)溶液を仕込んだ。反応器を窒素でフラッシュし、HCl(24.75mL)のTHF(340mL)溶液を、続いてPd/C(10%、水50%を含む湿潤タイプ)(108.8g)を加えた。反応器を真空にし、繰り返し(3回)窒素で、続いて水素(2回)でフラッシュした。次いで反応器の内容物を水素圧(40psi)下室温で終夜激しく撹拌した。HPLC分析により反応は完結していると判断した。次いでセライトのパッド(セライト521、100g)を通して反応器の内容物を濾過し、THFで洗浄した。緑色の濾液をTEA(20mL)で中和してpH7.5とし、真空で蒸発させた。残渣をイソプロピルアセテートに溶解し、水で洗浄した。もし乳液が形成された場合、吸引下濾紙を通して濾過し、濾液を飽和塩化アンモニウム溶液およびブラインで洗浄した。次いで濾液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、イソプロピルアセテートで溶離するシリカパッドを通した。溶媒を回転ストリップし、残渣をヘプタン類で(2回)摩砕し、回転ストリップして、粗製の生成物を得、これをシリカカラム上で精製して、白色固体としてきれいな式14を得た(40.64g)。
【0123】
次いで式14を式15に変換した。式14(41.37g、52.5mmol)を室温でDCM(500mL)に溶解した。TEA(35mL)、続いてDMAP(1.284g)およびTES−Cl(〜30mL、3.5当量)を溶液に加え、撹拌した。さらにTES−Cl(15mL)およびTEA(20mL)を加え、6時間後、HPLC分析は反応が完結していることを示した。
【0124】
次いでEtOH(25mL)を加えることにより反応をクエンチした。溶媒を回転蒸発器上(rotavapor)でストリップして容量を半量とし、8:2ヘプタン/IPAcで溶離するシリカゲルフラッシュカラム上で残渣を精製した。生成物を含むフラクションをプールし、濃縮して、発泡体として式15を得た。
【0125】
次いで式15を酸化して式16を形成した。式15(24.45g、24.0mmol)および4−メチルモルホリンN−オキシド(10.1g、84mmol)のDCM(340mL)溶液をNaSOで1時間乾燥させ、次いで24cm溝付濾紙(fluted filter paper)を通して2Lの3-N丸底フラスコ中に濾過した。NaSO固体をフラスコ中DCM(100mL)で洗浄した。モレキュラーシーブス(6.1g、15重量/重量%)を撹拌溶液に加えた。TPAP(1.38g)を加え、反応物をN雰囲気下に撹拌した。HPLC用に定期的にサンプルを取得した。さらにTPAP(0.62g)を2時間後に、再度15時間後に(0.8g)加えた。反応混合物を、8:2ヘプタン/IPAcで濡らした、シリカゲルのパッド(86g)にアプライし、IPAcで溶離した。フラクションを集め、プールし、濃縮して、式16の発泡性固体生成物とし、次いでこれをメタノールから再結晶化した。
【0126】
次いで式16を還元して式17を形成した。NaBH(365mg、6当量)を、式16(1.6g)のEtOH(19mL)とMeOH(6.5mL)との撹拌溶液に0℃で加えた。1時間後、反応混合物を氷水浴から除去し、2時間で反応物をHPLC用にサンプリングし、これは反応が完結していたことを示した。反応混合物を氷水浴中で冷却し、NHOAcのMeOH溶液(15mL)でクエンチし、続いてIPAc(50mL)およびHO(20mL)を加えた。有機層を分離し、水(20mL)およびブライン(10mL)で洗浄した。NaSOで乾燥させ、回転蒸発器上で濃縮した。真空オーブン中に置いて、発泡体として式17の生成物を得た。
【0127】
次に式17をアシル化して式18を形成した。TEA(5.8mL、41.5mmol)、AcO(2.62mL、27.7mmol)およびDMAP(724mg、5.5mmol)を、式17(14.1g、13.84mmol)のDCM(50mL)溶液に加えた。反応物を撹拌し、HPLC用に定期的にサンプリングした。19時間で、HPLCは反応が完結していたことを示した。反応混合物をIPAc(300mL)で希釈し、5%NaHCO(100ml)に注ぎ入れた。次いで有機層を分離し、水(100mL)、飽和NHCl(2×100mL)、水(3×50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。溶液をNaSOで乾燥させ、濃縮して、式18の発泡体生成物を得た。
【0128】
次に、式18を式19の化合物に変換した。式18(3.0g、2.829mmol)のDCM(24mL)とMeOH(6mL)との溶液に、室温でCSA(0.0394g、0.17mmol)を加えた。LCMS分析により4時間で反応は完結したと判断した。5%NaHCO(15mL)を反応混合物に加え、分液漏斗中で激しく振盪し、層を分離した。有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。MTBE(3×25mL)を加え、それぞれ添加後に反応混合物を濃縮乾固して、最終的に発泡体3.7068gを得た。発泡体をMTBE(10mL)に溶解し、撹拌した。ヘプタン(50mL)を反応溶液にゆっくり加え、直ちに固体が形成し始めた。固体を真空濾過し、ヘプタン(70mL)で濯いだ。固体を集め、真空オーブン中40℃で乾燥させて、式19を得た。
【0129】
次いで式19を式20に変換した。式19(2.1g、2.52mmol)のDCM(10.5mL)溶液を室温で撹拌した。次に、3,3−ジメトキシ−1−プロペン(2.03g、17.7mmol)を、続いてCSA(0.035g、0.15mmol)を溶液に加えた。溶液を3.5時間撹拌した後、LCMSは反応が完結していたことを示した。反応物をDCM(25mL)で希釈し、分液漏斗に移し、5%NaHCO溶液55mLで洗浄した。層を分離し、水層をDCM(25mL)で洗浄した。2つの有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。50:50 MTBE/ヘプタンで溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより粗製の生成物を精製した。フラクションを集め、プールし、濃縮し、真空オーブン中50℃で乾燥させて、式20の生成物を得た。
IV.代替の側鎖カップリング反応
図1(スキーム1a、bおよびc)に一般的に示したカップリング反応のさらなる具体例を図9、10および11に示す。図10に関して、式21の側鎖(式中、Xは塩素であり、2−Oおよび3−Nは通常の保護基と連結しており、RはPであり、RおよびRはHおよび置換アリールであり、Xはイソブチルであり、PはBocである)を、式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIII(式中、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、PおよびPはそれぞれCbzである)とカップリングさせて、式22のカップリング生成物を形成する。
【0130】
無水硫酸ナトリウム40gを、式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIII 5.00g(6.15mmol、1.0当量)のジクロロメタン150mL溶液に加えた。3時間後、混合物を濾過し、濾液を減圧下に濃縮した。式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIIIを周囲温度で無水ジクロロメタン(50mL)に再度溶解し、続いて99%4−DMAP2.25g(18.4mmol、3.0当量)を加え、溶液を窒素の不活性気体下に置いた。式21の側鎖のジクロロメタン溶液を、得られた溶液に周囲温度で加えた。反応の進行はHPLCにより監視した(反応アリコートはメタノール中にクエンチした)。終夜撹拌後、溶液を濃縮乾固し、溶離液として2/1(容量/容量)EtOAc−ヘプタンを用いるシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにかけた。適切なフラクションをプールし、重量が一定になるまで真空で濃縮して、灰白色固体として式22の結合生成物7.31g(98.7%)を得た;84.5AP(230nm)。
【0131】
今図11に転じると、式23の側鎖(式中、XはORであり、2−Oおよび3−Nは通常の保護基と連結しており、RはPであり、RおよびRはHおよび置換アリールであり、Xはイソブチルであり、Rはt−ブチルカルボニルであり、ならびにPはBocである)を、式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIIIとカップリングさせて、(図10に関して上述した)式22のカップリング生成物も形成する。
【0132】
式23(5.5g、13.47mmol)のTHF(30mL)溶液を、氷水浴で0℃に冷却し、99%4−メチルモルホリン0.20mL(1.8mmol)および99%トリメチルアセチルクロリド(塩化ピバロイル)0.22mL(1.8mmol、0.2当量)を加えた。反応物を周囲温度で1時間撹拌した。次いでこの反応混合物に、99%4−DMAP 1.76g(14.4mmol、1.60当量)および式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIII 7.30g(8.98mmol、1.0当量)を含む溶液を加え、反応物を窒素の不活性雰囲気下約16時間穏やかに加熱還流させた。周囲温度に冷却後、反応物を濃縮乾固し、EtOAc(60mL)に溶解した。約10分間撹拌後、固体を濾別した。濾液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(60mL)、水(60mL)およびブライン(60mL)で洗浄した。有機相を濃縮乾固して、式22の粗製のカップリング生成物14.52g(>100%)を得た。粗製物を5倍量のMeOHに溶解し、よく撹拌しながら水(10容量)に(ゆっくり)滴下添加した。固体を濾過し、重量が一定になるまで約45℃で真空にて乾燥させ、白色固体として式22のカップリング生成物10.84g(100%)を得た;74.2AP(230nm)。
【0133】
図9に示すカップリングの他の具体例として、式12(式中、XはFであり、XはRであり、Xはイソブチルであり、XはPであり、RはHであり、PはBocであり、およびPはBOMである)を、式2のC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIIIとカップリングさせて、式13のカップリングエステルを得る。
【0134】
式12の側鎖酸と式2のアルコールとのカップリング:
酸フルオリド(式12)(28.30g、73.81mmol)のDCM(60ml)溶液を、アルコール(式2)(50.0g、61.51mmol)および4−ピロリジノピリジン(11.39g、76.89g)のDCM(250mL)撹拌溶液に、窒素下室温で滴下添加した。13時間後のTLCおよびLC−MS分析は、痕跡量の酸フルオリドが残っているがアルコール(式2)は完全に消費され、所望の結合エステル(式13)が生成していることを示した。反応混合物をDCM(100ml)で希釈し、分液漏斗に移した。DCM層を水(2×100ml)、ブライン(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム(80g)で乾燥させ、回転ストリップして、固体(81.80g)を得た。IPACで溶離するシリカプラグ上で粗製の生成物を精製した。純粋なフラクションをプールし、溶媒を蒸発させ、ヘプタン類で繰り返し洗浄後、灰白色固体として結合エステル(式13)(78.4g)を得た。
V.側鎖の形成
上記のように、本発明の1つの側面は、スキーム1aおよびb(図1)中の化合物Aのように一般的に示される新規な側鎖である。今までに、本発明により検討した多くの側鎖を含む種々の特異的なカップリング反応を、上記図6〜11に関して以上記載してきた。今、これらの特有で新規な側鎖の形成を、最初に図12に関して記載できる。
A.側鎖の合成−式1および式12
図12は、式1および式12の両方の側鎖を製造するための例示的な工程を示す。
【0135】
式26(J.Org.Chem.2001年、66巻、3330〜3337頁に記載されている通りに調製した)を式27に変換した。
式26(12.1g、49.79mmol)をトルエン120mlに溶解し、窒素下で還流冷却器を装着した250mlの3つ口フラスコに加え、撹拌した。浴を120℃に加熱しながらTEA(17.34mL、124.48mmol)を、続いてBOM−Cl(13.6g、87.13mmol)を加えた。2.5時間後、TLCは、全ての出発物がより速いスポットに変換したことを示した。反応物を冷却し、分液漏斗に注ぎ入れ、EtOAc(300ml)で希釈し、1NのHCl(200ml)で洗浄した。層を分離し、5%NaHCO(300ml)、ブライン200mlで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。式27の粗製生成物は、そのまま次のステップに使用した。
【0136】
式27(2.0g、5.5mmol)をTHF(100mL)に溶解し、5℃に冷却し、激しく撹拌した。撹拌しながらNaIO(2.35g、11.0mmol)およびNMO(1.29g、11.0mmol)を水100mLに溶解し、これを冷却THF溶液にゆっくり加えた。最後に、OsO(0.035g、0.025当量)を加えた。6時間後、TLCにより示された通り、反応は完結した。THFを真空下にストリップし、チオ硫酸ナトリウム溶液を加え、混合物を振盪した。得られた水性混合物をEtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出物をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、次いで濃縮して油とした。式28のアルデヒド生成物は、精製せずに次のステップに直接使用した。
【0137】
式28(3.44g、9.42mmol)をtBuOH(70ml)に溶解し、水20mLを加え、窒素下で撹拌を開始した。NaHPO(2.324g、16.96mmol)および2−メチル2−ブテン(18.75mL、169.6mmol)を加え、溶液を氷水浴上で冷却した。亜塩素酸ナトリウム(2.03g、22.62mmol)を2分間かけて加え、氷浴を除去し、溶液を撹拌し、室温に上げ、1時間撹拌した。TLCは、反応が完結していたことを示した。Na(15mL)を、続いてEtOAc(50mL)をゆっくり加えた。有機層を分離し、水層をEtOAc(50mL)で逆抽出し、NaSOで乾燥させ、濾過し、次いで濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、式12の酸2.8gを得た。
【0138】
所望であれば、次いで式31の側鎖を、示すように式12の側鎖に変換できる。1つの方法により、式31からの式12(酸から酸フルオリド)は以下の通りである:
ピリジン(10.7mL、131.2mmol)を、側鎖の酸(式31)(40.0g、104.99mmol)のジクロロメタン(200ml)溶液に、窒素雰囲気下室温で滴下添加した。次いで反応物を10℃に冷却し、反応温度が−5℃未満を維持する速度で、注射器によりDAST(ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド)(15.1mL、115.48mmol)を加えた。約2時間撹拌を続けると、TLCは反応が完結したことを示した。氷冷水(20mL)を加えることにより−10℃で反応をクエンチした。
【0139】
混合物を分液漏斗に移し、塩化メチレン層を分離し、冷水150mLおよびブライン溶液100mlで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム40gで乾燥させ、回転ストリップして、油として粗製の酸フルオリドを得た。ヘプタン中25%IPACで溶離するシリカプラグ上で粗製の生成物を精製し、溶媒を回転ストリップさせて、油としてきれいな式12の生成物(38.8g、96.5%)を得た。
【0140】
この変換のためおよび他の酸の酸フルオリドへの変換のため、Deoxoflour、フッ素化シアヌルおよびTFFHなどの試薬を、ここに示したDAST方法に加えて使用することもできる。上記したフッ素化方法に従って、式1も合成した。
B.側鎖の合成−式21および式23
今図13および14に転じると、式21および23の側鎖は、式29の側鎖から共に形成できる。式29の合成は、Bombardelliらの国際公開特許WO01/02407A2号に記載されており、参照により本明細書に組み入れられる。図13に示される通り、式29の側鎖は、式21の酸クロリド側鎖に変換できる。最初に、式29の側鎖7.96g(18.4mmol、3.0当量)および99%4−DMAP2.25g(18.4mmol)を含む無水ジクロロメタン(80mL)溶液を調製した。この溶液に、98%塩化オキサリル(無溶媒)1.70mL(19.1mmol、3.1当量)を、窒素の不活性雰囲気下周囲温度で加えた。得られた混合物を周囲温度で約30分間撹拌し、98%塩化オキサリル(0.5mL)を加え、混合物をさらに30分間撹拌した。HPLC分析は、式21の酸クロリド側鎖への変換が完結していることを示した(反応アリコートはメタノール中にクエンチし、メチルエステルとして分析した)。混合物を濾過し、固体を無水ジクロロメタン(30mL)で洗浄した。濾液を減圧下に濃縮し、油を高真空下の真空で25分間さらに濃縮した。得られた油を無水ジクロロメタン(30mL)に再度溶解し、これにより式21の酸クロリド側鎖を含む溶液を得た。
【0141】
図14に転じると、式23の側鎖は、式29の側鎖から合成できる。
式29の側鎖55.00g(127.5mmol)を含むジクロロメタン(550mL)溶液を、冷却した(0〜5℃)2NのHCl水溶液(2×460mL)で洗浄した。有機相を12.5重量%塩化ナトリウム溶液(2×460mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、重量が一定になるまで真空で濃縮して、式30の遊離酸50.35g(96.5%)を得た。
【0142】
式30の遊離酸5.51g(13.5mmol)の無水THF(50mL)0〜5℃溶液に、窒素の不活性雰囲気下、99%4−メチルモルホリン1.78mL(16.2mmol)および99%トリメチルアセチルクロリド1.99mL(16.2mmol)を加えた。反応の進行はHPLCにより監視した(反応アリコートはMeOH中にクエンチした)。1時間後、99%4−メチルモルホリン0.20mL(1.8mmol、0.2当量)および99%トリメチルアセチルクロリド0.22mL(1.8mmol、0.2当量)を加えた。0〜5℃でさらに30分後、式23の混合酸無水物側鎖への変換は完結した。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の一般化カップリング反応スキーム1a、1b、および1cの図である。
【図2】スキーム1cに一般的に示したカップリング反応によって形成されたカップリング生成物からの、ドセタキセルの合成の一般化スキーム2の図である。
【図3】スキーム1cに一般的に示したカップリング反応によって形成されたカップリング生成物からの、パクリタキセルの合成の一般化反応スキーム3の図である。
【図4】スキーム1cに一般的に示したカップリング反応によって形成されたカップリング生成物からの、パクリタキセルの合成の一般化代替反応スキーム4の図である。
【図5】スキーム1cに一般的に示したカップリング反応によって形成されたカップリング生成物からの、9,10−α,α−7,9アセタールタキサン類似体の合成の一般化反応スキーム5の図である。
【図6】図6は本発明のドセタキセルの例示的合成の図である。
【図6a】図6aは本発明のドセタキセルの別の例示的合成の図である。
【図7】本発明のパクリタキセルの例示的合成の図である。
【図8】本発明のパクリタキセルの別の例示的合成の図である。
【図9】本発明の9,10−α,α−7,9アセタールタキサン類似体の例示的合成の図である。
【図10】図1bに示した一般スキームによるカップリング反応の図である。
【図11】図1bに示した一般スキームによる代替カップリング反応の図である。
【図12】本発明の2つの側鎖化合物の例示的合成の図である。
【図13】本発明の代替側鎖化合物の例示的合成の図である。
【図14】本発明のさらに別の側鎖化合物の例示的合成の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タキサン、タキサン類似体、およびその誘導体の生成に使用するための方法であって、一般式:
【化1】

の第1化合物を、一般式:
【化2】

の第2化合物と反応させて、一般式:
【化3】

の第3化合物を得るステップを含む方法
[式中:
Xは、ハロゲンまたはORであり;
は、R;R;R;またはPのいずれかであり、
は、置換または非置換の:アルキル;アルケニル;アリール;アラルキル;またはアシルであり;
は、R;R;またはPのいずれかであり;
およびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり;
は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アシル、アルコキシカルボニル、またはアリールオキシカルボニルであり;
はアミン保護基であり;
はヒドロキシル保護基であり;および
、E、およびそれらが結合する炭素は、四環性タキサン核を定義する]。
【請求項2】
前記第2化合物が、構造
【化4】

を有する、請求項1に記載の方法
[Yは、R;P;またはZであり;
は、H;ヒドロキシル;ケトン;OR;P;またはZであり;
10は、R10;P;またはZ10であり;
はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;
は:
であり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成するか;またはPであり、Y10がPである場合にはY10と一緒になって環状構造を形成するかのいずれかであり;
10はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;
は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
は、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
10は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
はヒドロキシル保護基であり;
はヒドロキシル保護基であり;および
はヒドロキシル保護基である]。
【請求項3】
Xがハロゲンであり;XがRであり;XがPhであり;XがPであり;YがPであり;Yがケトンであり;Y10がPであり;RがHであり;PがBocであり;PがBOMであり;PがCbzであり;およびPがCbzである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Xがフッ素であり;XがRであり;XがPhであり;XがPであり;YがPであり;Yがケトンであり;Y10がPであり;RがHであり;PがCbzであり;PがBOMであり;PがCbzであり;およびPがCbzである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
XがORであり;XがRであり;Xがイソブチルであり;XがPであり;YがPであり;Yがケトンであり;Y10がPであり;RがHであり;RがHであり;PがBocであり;PがBOMであり;PがCbzであり;およびPがCbzである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
Xがハロゲンであり;Xがイソブチルであり;YがPであり;Yがケトンであり;Y10がPであり;RおよびRが、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり;RがHであり;PがBocであり;PがBOMであり;PがCbzであり;およびPがCbzである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第3化合物が、式:
【化5】

の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第3化合物が、ドセタキセル、パクリタキセル、または7,9−アセタール結合類似体に変換される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
、P、P、およびPを水素で置換することによって前記第3化合物を脱保護して、式:
【化6】

の構造を有する第4化合物を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
およびPを水素で置換することによって前記第3化合物を脱保護して、式:
【化7】

の構造を有する第4化合物を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第4化合物をC−10位で選択的にアシル化して、式:
【化8】

の構造を有する第5化合物を形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第5化合物をパクリタキセルに変換する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3化合物を酸化して、式:
【化9】

の第4化合物を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記第4化合物を還元して、式:
【化10】

の第5化合物を形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第5化合物をC−10位でアシル化して、式:
【化11】

の第6化合物を形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
を水素で置換することによって前記第6化合物を脱保護し、それによって式:
【化12】

の第7化合物を形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第7化合物を、式:
【化13】

の第8化合物に変換する、請求項16に記載の方法
[式中、R12およびR13は、独立に、H;置換または非置換の:アルキル;アルケニル;アリール;アラルキル;またはアシルである]。
【請求項18】
12およびR13が、それぞれ独立に:
【化14】

からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第3化合物が、式:
【化15】

の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第3化合物がパクリタキセルに変換される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1化合物が環状構造であり、ここで、C−3窒素およびC−2酸素はRおよびRを含む共通の保護基により連結し、および式:
【化16】

の構造を有し、したがって第3化合物が、式:
【化17】

[式中、RはHまたはPのいずれかである]
の環状構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第2化合物が、構造
【化18】

を有する、請求項21に記載の方法
[Yは、R;P;またはZであり;
は、H;ヒドロキシル;ケトン;OR;P;またはZであり;
10は、R10;P;またはZ10であり;
はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;
は:
であり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成するか;またはPであり、Y10がPである場合にはY10と一緒になって環状構造を形成するかのいずれかであり;
10は、PがPと環状構造を形成し、
は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
は、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
10は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
はヒドロキシル保護基であり;
はヒドロキシル保護基であり;および
はヒドロキシル保護基である]。
【請求項23】
Xがハロゲンであり;;XがPhであり;YがPであり;Yがケトンであり;Y10がPであり;RがHであり;PがBocであり;PがBOMであり;PがCbzであり;およびPがCbzである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
Xがフッ素であり;XがRであり;XがPhであり;XがPであり;YがPであり;Yがケトンであり;Y10がPであり;RがHであり;PがCbzであり;PがBOMであり;PがCbzであり;およびPがCbzである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
XがORであり;XがRであり;Xがイソブチルであり;XがPであり;YがPであり;Yがケトンであり;Y10がPであり;RがHであり;RがHであり;PがBocであり;PがBOMであり;PがCbzであり;およびPがCbzである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
Xがハロゲンであり;Xがイソブチルであり;YがPであり;Yがケトンであり;Y10がPであり;RおよびRが、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり;RがHであり;PがBocであり;PがBOMであり;PがCbzであり;およびPがCbzである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
式:
【化19】

の構造を有する化合物
[Xは、ハロゲンまたはORであり;
は、R;R;R;またはPのいずれかであり、
は、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;Xは、R;R;またはPのいずれかであり;
およびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり;
は、H、置換または非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アシル、アルコキシカルボニル、またはアリールオキシカルボニルであり;
はアミン保護基であり;
はヒドロキシル保護基である]。
【請求項28】
Xが、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素からなる群から選択される、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
環状構造であり、ここで、C−3窒素およびC−2酸素が、RおよびRを含む共通の保護基で連結し、そして式:
【化20】

[式中、RはHまたはPのいずれかである]
の構造を有する、請求項27に記載の化合物。
【請求項30】
Xが、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素からなる群から選択される、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
Xが塩素であり;Xがイソブチルであり;RおよびRが、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;RがPであり;およびPがBocである、請求項29に記載の化合物。
【請求項32】
構造式:
【化21】

の構造を有する、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
XがRであり;Xがイソブチルであり;RおよびRが、独立に、Hまたは置換もしくは非置換の:アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり;RがPであり、Rがトリメチルアセチルであり;およびPがBocである、請求項29に記載の化合物。
【請求項34】
構造式:
【化22】

の構造を有する、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
XがOR11であり;XがRであり;Xがイソブチルであり;XがPであり;RがHであり;R11がHであり;PがBocであり;およびPがBOMである、請求項27に記載の化合物。
【請求項36】
構造式:
【化23】

の構造を有する、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
Xがフッ素であり;XがRであり;Xがイソブチルであり;XがPであり;RがHであり;PがBocであり;およびPがBOMである、請求項27に記載の化合物。
【請求項38】
構造式:
【化24】

の構造を有する、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
XがOR11であり;XがRであり;XがPhであり;XがPであり;RがHであり;R11がHであり;PがCbzであり;およびPがBOMである、請求項27に記載の化合物。
【請求項40】
構造式:
【化25】

の構造を有する、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
Xがフッ素であり;XがRであり;XがPhであり;XがPであり;RがHであり;PがCbzであり;およびPがBOMである、請求項27に記載の化合物。
【請求項42】
構造式:
【化26】

の構造を有する、請求項41に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−521435(P2009−521435A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547200(P2008−547200)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046887
【国際公開番号】WO2007/073383
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(504191419)タペストリー ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】