説明

タキサン誘導体のための方法およびそれに有用な中間体

本願は、タキサン誘導体の調製方法およびかかる方法に有用な中間体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「Novel Compounds and Methods for Forming Taxanes and Using the Same」という名称の、2005年12月21日出願の国際特許出願PCT/US05/46887の米国法典第35編120条に基づく利益を請求し、2006年3月27日出願の米国仮特許出願第60/786,629号の利益を請求するものであり、現在共に係属中である。
【0002】
本願は一般に、患者の癌治療に有用なタキサン誘導体の調製方法およびかかる方法に有用な中間体に関する。より具体的には本願は、とりわけパクリタキセル、ドセタキセル、および7−OHと9−OH基の間に架橋を有する幾つかの9,10−α,α−OHタキサン類似体の調製に有用な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
パクリタキセルおよびドセタキセルは十分に確立された抗がん剤であり、そのための数々の合成方法が知られている。幾つかの9,10−α,αOHタキサン類似体の合成方法が、WO2005/030152に開示されている。他の合成方法は、EP1 228 759A(フロリダ州立大学)、EP1 285 920A(フロリダ州立大学)、EP1 148 055A(フロリダ州立大学)、WO01/56564A(フロリダ州立大学)、WO01/57027(フロリダ州立大学)、WO94/10996A(フロリダ州立大学)、FR2 715 846A(Rhone−Poulenc)、US5 352 806A、FR2 707 293A(Rhone−Poulenc)、WO94/08984A(Rhone−Poulenc)、WO92/09589A(Rhone−Poulenc)、WO94/20485A(フロリダ州立大学)、WO93/21173A(Abbott)、Klein L L:「Synthesis of 9−Dihydrotaxol:A Novel Bioactive Taxane」Tetrahedron Letters.,Elsevier,Amsterdam,NL,vol34,no13,1993,pp2047−2050、Datta Aら:「Synthesis of Novel C−9 and C−10 modified bioactive taxanes」Tetrahedron Letters,Elsevier,Amsterdam,NL,Vol36,no12,20 March 1995,pp1985−1988、Klein L Lら:Journal of Medicinal Chemistry,American Chemical Society.Washington,no38,1995,pp1482−1492、J.Dematteiら:「an efficient synthesis of the taxane−derived anticancer agent abt−271」,Journal of Organic Chemistry,vol66,no10,2001,pp3330−3337、Gunda I.Georgら:「the chemistry of the taxane diterpene:stereoselective reductions of taxanes」Journal of Organic Chemistry,vol63,no24,1998,pp8926−8934、米国特許第4,924,011号、米国特許第5,015,744号、米国特許第6,107,497号、米国特許第5,770,745号、および米国特許第5,750,737号に開示されている。
【0004】
パクリタキセルおよびドセタキセルおよび他のタキサン誘導体の多くの合成には、10−バッカチンIIIまたは10−脱アセチルバッカチンIII誘導体の13−ヒドロキシ基をアシル化するために、β−ラクタムの使用が伴う。他の方法、例えばDCCを用いる10−バッカチンIIIまたは10−脱アセチルバッカチンIIIへのカルボン酸の結合が記載されている。WO2005/03150号には、フッ化アシルを使用することによって幾つかの側鎖をタキサン異形の13−ヒドロキシ基と結合させるための改善方法が開示されている。
【0005】
パクリタキセルの式は、
【0006】
【化1】

【0007】
である。
ドセタキセルの式は、
【0008】
【化2】

【0009】
である。
TPI287の式は
【0010】
【化3】

【0011】
である。
タキサン骨格のナンバリング体系は、
【0012】
【化4】

【0013】
である。
パクリタキセルは、化学療法剤として有用であると思われることから、化学者らは、パクリタキセルおよび他の強力なタキサン類似体を合成する試みに多大な時間と資源を費やしてきた。パクリタキセルまたは他のタキサンの部分的合成の直接的な実施には、キラル非ラセミ側鎖および誘導体、バッカチンIIIまたは密接に関係するジテルペノイド物質の豊富な天然源、ならびにそれら2つの単位を結合する効果的手段への便利な入手手段が必要とされる。おそらくパクリタキセルの最も直接的な合成は、次式のバッカチンIIIおよび10−脱アセチルバッカチンIIIを、
【0014】
【化5】

【0015】
10−脱アセチルバッカチンIII
【0016】
【化6】

【0017】
バッカチンIII
側鎖
【0018】
【化7】

【0019】
で縮合することである。
しかし、バッカチンIIIおよび10−脱アセチルバッカチンIII両方のC−13ヒドロキシル基が、半球形のタキサン骨格の立体的に妨害された凹領域内に位置することから、これら2つの単位のエステル化または結合は困難となっている。
【0020】
最終的にパクリタキセルを生成する側鎖とタキサン骨格との結合の代替方法は、様々な特許文書に開示されている。例えば、Denisら「Process for Preparing Taxol」という名称の1990年5月8日発行の米国特許第4,929,011号には、次の一般式の(2R,3S)側鎖酸の縮合からのパクリタキセルの半合成が記載されている。
【0021】
【化8】

【0022】
式中、Pは一般式
【0023】
【化9】

【0024】
[式中、Pはヒドロキシル保護基である]のタキサン誘導体を有するヒドロキシル保護基である。その後縮合生成物を処理して、PおよびP保護基を除去する。Denis等において、パクリタキセルC−13側鎖、(2R,3S)3−フェニルイソセリン誘導体は、保護されたバッカチンIIIと結合するためにPで保護される。バッカチンIII骨格上のP保護基は、例えばトリメチルシリルまたはトリアルキルシリル基である。
【0025】
パクリタキセルの代替の半合成は、Swindellらの米国特許第5,770,745号に記載されている。Swindellらは、次の一般式を有する側鎖を用いた縮合によるバッカチンIII骨格からのパクリタキセルの半合成を開示している:
【0026】
【化10】

【0027】
[式中、Rは、アルキル、オレフィン系または芳香族またはPhCHであり、Pはヒドロキシル保護基である]。
パクリタキセルの半合成の別の方法は、Sistiらの米国特許第5,750,737号に見られる。該特許文書では、式
【0028】
【化11】

【0029】
のC7−CBZバッカチンIIIを、式
【0030】
【化12】

【0031】
のC3−N−CBZ−C2−O−保護された(2R,3S)−3−フェニルイソセリン側鎖でエステル化し、次いで脱保護し、C3’Nベンゾイル化してパクリタキセルを生成する。
【0032】
上記の通り、ドセタキセルは、フェニルイソセリン側鎖のC3’窒素位置にt−ブトキシカルボニル(t−Boc)基を含んでおり、C10位に遊離ヒドロキシル基を含むことを除きパクリタキセルに類似している。パクリタキセルと同様、半球形のタキサン骨格の凹領域内に位置するバッカチンIII骨格内のヒンダードC13ヒドロキシルに起因して、ドセタキセルの合成は困難となっている。ドセタキセルおよび関連化合物の幾つかの合成は、有機化学ジャーナル:1986,51,46;1990,55,1957;1991,56,1681;1991,56,6939;1992,57,4320;1992,57,6387;および993,58,255に報告されており、Holtonの1991年5月14日発行の米国特許第5,015,744号にも、このような合成が記載されている。ドセタキセルの合成のさらなる技術は、例えばSistiらの米国特許第5,688,977号およびSistiらの米国特許第6,107,497号に論じられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
パクリタキセル、ドセタキセル、およびTPI287の既存の合成手順は利点を有するが、これらの抗癌化合物およびそれらの誘導体を良好な収率で調製するための改善された化学的方法が依然必要とされている。本願は、これらの必要を満たすことを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本願は、循環的に保護された側鎖酸でタキサン誘導体の13−OH基をエステル化し、その後その保護基を除去することによってタキサン誘導体の効果的な合成を提供するものである。
【0035】
したがって本方法の最後の2ステップは、式(VIII)
【0036】
【化13】

【0037】
の化合物の調製方法として表すことができ、この方法は、式(IX)の化合物を、
【0038】
【化14】

【0039】
式(X)の化合物
【0040】
【化15】

【0041】
と反応させること
[式中、
およびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり;
は、HまたはPであり、ここでPはアミノ保護基であり;
Xは、ハロゲンまたはORであり、Rは、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アシル、アシルオキシカルボニル、またはアリールオキシカルボニルであり;
は、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
は、R、P、またはZであり;
は、H、OH、ケトン、OR、P、またはZであり;
10は、R10、P、またはZ10であり;
は、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;
はRであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;または
10はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;
10がPである場合にはPはY10と一緒になって環状構造を形成し;
は、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
10は、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
はヒドロキシル保護基であり;
はヒドロキシル保護基であり;
はヒドロキシル保護基である]、
および式(XVI)
【0042】
【化16】

【0043】
の化合物を提供するための、その後の側鎖保護基および任意選択で他の保護基の除去を含む。
有利には、タキサン核上に2つ以上の保護基が存在する場合、必要に応じてそれらの保護基を同時に除去することができる。
【0044】
ここで所望により、Xはハロゲンであり、XはPhであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RはHであり、PはBocであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。あるいは、Xはフッ素であり、XはPhであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RはHであり、PはCbzであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。一代替では、XはORであり、Xはイソブチルであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RはHであり、RはHであり、PはBocであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。さらに別の一代替では、Xはハロゲンであり、Xはイソブチルであり、YはPであり、Yはケトンであり、Y10はPであり、RおよびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり、RはHであり、PはBocであり、PはBOMであり、PはCbzであり、PはCbzである。ベンゾキシカルボニル基は、しばしば使用に好ましい保護基である。
【0045】
本願はまた、本方法における使用に特に適切な保護側鎖酸を提供する。これらは式(I)のものであり、
【0046】
【化17】

【0047】
式中、Aは、水素、ハロゲン、低級アルキル、または低級アルコキシであり;
は、水素、ハロゲン、低級アルキル、または低級アルコキシであり;
は、BOC、Cbz、またはPhCOであり;
は、低級アルキルまたはフェニルであり;
は、部分OCORが、アルコールまたはアルコキシドによって式(I)の化合物から容易に置換されるようなアルキルまたはアリール基である。
【0048】
上記および本出願の説明の全てに使用される以下の用語は、別段の指定が無い限り以下の意味を有すると理解されるべきである。
単独でまたは別の基の一部分として本明細書で使用される「アルキル」という用語は、通常の鎖中に好ましくは1〜12個の炭素を有する、置換されていてもよい直鎖および分岐鎖の飽和炭化水素基を指す。
【0049】
「置換アルキル」という用語は、例えばハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルキオキシ、ヘテロシロオキシ、オキソ、アルカノイル、アリールオキシ、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、2つのアミノ置換基がアルキル、アリール、またはアラルキルから選択される二置換アミン、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アラルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、スルホンアミド(例えばSONH)、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル(例えばCONH)、置換カルバミル(例えばCONHアルキル、CONHアリール、CONHアラルキル、または窒素上に、アルキル、アリール、もしくはアラルキルから選択される2つの置換基が存在する場合)、アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジノ、およびヘテロシクロ、例えばインドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジニル、ピリミジル等の、例えば1〜4個の置換基で置換されたアルキル基を指す。この置換基がさらに置換される上記の場合、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、またはアラルキルで置換されよう。かかる例示的な非置換基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が含まれる。例示的な置換基には、以下の群、ハロ、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヒドロキシもしくは保護ヒドロキシ、カルボキシル(−COOH)、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、カルバモイル(NHCO−)、アミノ(−NH)、モノもしくはジアルキルアミノ、またはチオール(−SH)の1つまたは複数が含まれ得る。
【0050】
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、アルキルについて記載したように置換されていてもよく、少なくとも1つの炭素対炭素の二重結合をさらに含有するような基を指す。例示的な置換基には、上記のような1つもしくは複数のアルキル基、および/またはアルキル置換基に関して先に記載した1つもしくは複数の基が含まれる。
【0051】
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「アリール」という用語は、好ましくは1または2個の環および6〜12個の環炭素を含有する、置換されていてもよい単素環の芳香族基を指す。かかる例示的な非置換基には、フェニル、ビフェニル、およびナフチルが含まれる。例示的な置換基には、1つまたは複数の、好ましくは3つ以下のニトロ基、上記のアルキル基、および/またはアルキル置換基に関して先に記載した基が含まれる。
【0052】
「置換アリール」という用語は、例えば1〜4個の置換基、例えばアルキル、置換アルキル、ハロ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アラルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、ウレイド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルバミル、アルコキシカルボニル、アルキルチオノ、アリールチオノ、アルキルスルホニル、スルホンアミド、アリールオキシ等で置換されたアリール基を指す。この置換基は、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリール、置換アリール、置換アルキル、またはアラルキルでさらに置換されていてもよい。
【0053】
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「アラルキル」という用語は、アリール置換基、例えばベンジルもしくはフェネチル、またはナフチルプロピル、または上記定義のアリールなどを有する上記のアルキル基を指す。
【0054】
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「アシル」という用語は、有機カルボン酸の基−COOHからヒドロキシル基を除去することによって形成された部分を指す。アシル基は特に、例えばPhCOまたはBnCOであってよい。
【0055】
本明細書で使用される「ヒドロキシ(またはヒドロキシル)保護基」という用語は、遊離ヒドロキシル基を保護することができる任意の基を指し、遊離ヒドロキシル基は、それが使用される反応の後、該分子の残りを破壊することなく除去され得る。かかる基およびその合成は、「Protective Groups in Organic Synthesis」by T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,New York(1999)、またはFieser&Fieserに見ることができる。例示的なヒドロキシル保護基には、メトキシメチル、1−エトキシエチル、1−メトキシ−1−メチルエチル、ベンジルオキシメチル、(β−トリメチルシリル−エトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、ベンジルオキシカルボニル、2,2,2−トリ−クロロエトキシカルボニル、t−ブチル(ジフェニル)シリル、トリアルキルシリル、トリクロロメトキシカルボニル、および2,2,2−トリクロロエトキシメチルが含まれる。
【0056】
本明細書で使用される「アミン保護基」という用語は、合成手順中の望ましくない反応に対してアミノ基を保護し、選択的に除去可能であることが当技術分野で知られている、容易に除去可能な基を意味する。合成手順中の望ましくない反応に対する保護基としてのアミン保護基の使用は当技術分野で周知であり、かかる多くの保護基が知られており、例えば参照によって本明細書に組み込まれるT.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,New York(1999)を参照されたい。例示的なアミン保護基は、アシル、例えばホルミル、アセチル、クロロアセチル、トリクロロアセチル、o−ニトロフェニルアセチル、o−ニトロフェノキシアセチル、トリフルオロアセチル、アセトアセチル、4−クロロブチリル、イソブチリル、o−ニトロシンナモイル、ピコリノイル、アシルイソチオシアネート、アミノカプロイル、ベンゾイル等、およびアシルオキシ、例えばメトキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル、2−トリメチルシリルエトキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、1,1−ジメチルプロピニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル等である。
【0057】
単独でまたは別の基の1部分として本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素を示し、その中でもフッ素および塩素が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本願は、式(I)の化合物を提供する。
【0059】
【化18】

【0060】
式中、Aは、水素、ハロゲン、低級アルキル、または低級アルコキシであり;
は、水素、ハロゲン、低級アルキル、または低級アルコキシであり;
は、BOC、Cbz、またはCOPhであり;
R’は、メチル、エチル、または低級アルキル(C〜C)であり;
は、低級アルキルまたはフェニル基であり;
は、部分OCORが、アルコールまたはアルコキシドによって式(I)の化合物から容易に置き換えられるようなアルキル、アラルキル、またはアリール基である。
【0061】
式(I)の化合物は、タキサン核の13−OH基のエステル化に特に効果的な薬剤であることが見出された。さらに、結合後の保護部分の除去は、側鎖の望ましくないエピマー化を生じることなく、例えば水素化によって、例えばパラジウムまたは木炭触媒を使用することによって実施できることが見出された。
【0062】
例えばパクリタキセルまたはドセタキセルの合成では、7−ヒドロキシおよび/または10−ヒドロキシ基上の保護基が、例えばCbzまたは別の水素化分解可能な基である場合には、それらを好都合に除去できることも利点である。
【0063】
「低級」という用語は、最大6個の炭素原子、より適切には最大4個の炭素原子を意味する。したがって低級アルキルは、メチルからヘキシルまで、より適切にはメチル、エチル、プロピル、またはブチルであってよく、好ましくはメチルである。同様に低級アルコキシは、メトキシからヘキシルオキシまで、より適切にはメトキシからブトキシまでであってよく、好ましくはメトキシである。
【0064】
最も適切なハロゲンは、塩素およびフッ素であり、その中でもフッ素が好ましい。
式(I)の化合物では、Aは好ましくは水素原子である。
式(I)の化合物では、Aは好ましくはメトキシ基であり、特に4−または6−メトキシ基であり、好ましくは6−メトキシ基である。
【0065】
式(I)の幾つかの化合物では、Rは好ましくはイソブチル基、すなわち(CHCHCH−基である。
式(I)の他の化合物では、Rは好ましくはフェニル基である。
【0066】
したがって、式(I)の特に適切な幾つかの化合物は、式(II)、(III)、(IV)、および(V)の化合物である。
【0067】
【化19】

【0068】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、および(V)の化合物では、Rは、OCORが、ヒドロキシ基または金属アルコキシド基との反応の際に容易に置き換え可能であるような基である。したがって、式(I)、(II)、(III)、(IV)、または(V)の化合物がアシル化剤として用いられる場合、タキサン誘導体の13−OH基は、COR部分でのアシル化による無駄な程度にまでアシル化されることはない。
【0069】
上記混合化合物の酸塩化物または酸フッ化物類似体を用いることもできるが、これは上記混合無水物を使用するよりも有利ではないことが見出された。
特定の好ましい基Rは、t−ブチル基である。これは、13−OH基のアシル化の前に、対応する酸および塩化ピバロイル(CHCCOClから、例えばin situで調製することができる。
【0070】
他のR基には、低級アルキル、低級アラルキル、およびアリール基が含まれる。基Rは、適切には嵩のある基、例えば第3級アルキル基またはOCORアニオンが安定化するような電子求引基である。したがって、t−ブチル基は別として、他の適切な基Rには、ベンズヒドリル、トリチル、フェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2,6−ジ−tert−ブチル−フェニル、4−ニトロフェニル等が含まれる。
【0071】
式(VI)の化合物
【0072】
【化20】

【0073】
は、式(I)の化合物の調製における使用に特に好ましい酸である。
式(I)の化合物に対応する酸は、式(VII)の化合物の酸化によって調製することができ、
【0074】
【化21】

【0075】
式中、A、A、A、およびRは、式(I)〜(V)に関して定義した通りである。これは、通常のマイルドなビニル基の酸化試薬、例えばNaIO、OsO、NMO、TPAP、オゾン等によって行うことができる。
【0076】
式(VII)の化合物は、以下の順序で調製することができる。
【0077】
【化22】

【0078】
テトラヒドロフランの混合物中の塩化ビニルマグネシウムとアルデヒドとの反応によって、生成物のジアステレオマーと所望の主たる異性体との比は4:1になる。この所望の異性体は、優先的に置換ベンズアルデヒドと反応して、式(VII)の化合物を提供する。
【0079】
この方法は、2,6−ジメトキシベンズアルデヒドを使用する式(VI)の化合物の調製に特に有用である。
式(VI)の化合物(および上述の他のカルボン酸)は、通常の方式で酸塩化物または酸フッ化物に変換することができる。酸フッ化物を調製する特に好ましい方法は、例えばピリジンおよびジクロロメタン中での(CHCHN−SFまたはdeoxofluorとの反応による方法である。かかるフッ化アシルは、例えばジクロロメタンまたはテトラヒドロフランと塩基、例えばDMAP、DBU等の中で、タキサン誘導体の13−OH基と反応することができる(しかし先に示したように、式(I)の化合物をin situで調製し、それを用いて(すなわちその使用前に式(I)の化合物を単離しない)、タキサン誘導体の13−OH基をアシル化することが好ましい。)
類似酸からの式(I)の化合物の調製は一般に、不活性雰囲気下、例えば窒素下で、極度ではない温度、例えば15〜25℃の周囲温度で実施される。非ヒドロキシ溶媒、例えばテトラヒドロフランが使用される。第3級アミン、例えばN−メチルモルホリンがプロトン受容体として用いられる。13−OHタキサン誘導体および酸を溶媒に溶解した後、塩化ピバロイル(または式ClCORの他の化合物)を添加し、完了するまで(HPLCで示される)反応混合物を周囲温度で撹拌する。
【0080】
1つまたは複数の保護基を除去するために、通常条件が用いられる。したがって、側鎖保護基だけを除去すべき場合には、希釈酸を用いることができる。適切には、その溶液を約−18℃〜−20℃に冷却し、メタノール中0.5NのHCLを用いることができる。次いで脱保護が完了するまで(HPLCで示される)、混合物を低温で、例えば−15℃で撹拌することができる。次いで反応をクエンチし(例えば5%の重炭酸ナトリウム溶液)、生成物を生成する前に、蒸発によって濃縮することができる。あるいは、例えばタキサン誘導体の7−OHおよび/または10−OH基から保護基を除去することが望ましい場合にも、側鎖および骨格であるヒドロキシル基の両方を脱保護する脱保護法を用いることができる。したがって酸性脱保護を用いることが望ましい場合には、酸で容易に開裂可能な保護基を使用することによって、骨格であるヒドロキシル基(複数でもよい)を保護することができ、したがって単一の脱保護試薬が用いられる。骨格であるヒドロキシル基(複数でもよい)は、水素化によって、例えばCbz基によって容易に除去可能な基で保護することもできる。かかる環境下では、通常の方式で、例えばTHF、水性THF、またはメタノール溶液中10%のPd/C触媒を用いて水素化を行い、その後例えばメタノール中、例えばギ酸または酢酸を用いて酸性化することができる。AがCbz基である場合にかかる水素化反応を用いて、脱保護した第1級アミノ基が側鎖中で生成され得るようにし、その後それをアシル化して、ベンゾイルまたはBOC置換アミノ基を所望により提供することができる。
【0081】
本願で提供される特に適切な中間体は、必ずしもそれを単離する必要が無い場合にも、式(XVII)のものとなることが理解されよう。
【0082】
【化23】

【0083】
式(XVII)の好ましい化合物には、Aが水素原子、またはベンジル、Cbz、またはアセチル基からなる群から選択されるヒドロキシル保護基、好ましくはアセチルであり、Aがα配置内にあり、AがAと結合してO−CH(CH=CH)−O部分を形成し、Aがα配置中にある化合物が含まれる。
【0084】
式(XVII)のさらに好ましい化合物には、OAがβ配置内にあり、Aが水素、Cbz、またはアセチルであり、Aがオキソ基であり、Aが水素またはCbzである化合物が含まれる。
【0085】
式(XVII)の化合物は、パクリタキセル、ドセタキセル、またはTPI287の調製における使用に特に適切である。かかる化合物は、酸性化によって脱保護することができる。Cbz基を含有するかかる化合物は、水素化によって脱保護することができる。かかる水素化が、CbzであるA基を水素で置換する場合、その化合物を、例えば適切な無水物またはハロゲン化アシルを用いた反応によってアシル化して、PhCOまたはBOC基を含有する化合物を生成することができる。
【0086】
広範な態様において本願は、式VIIIの化合物の調製方法を提供し、
【0087】
【化24】

【0088】
その方法は、式(IX)の化合物の、
【0089】
【化25】

【0090】
式(X)の化合物
【0091】
【化26】

【0092】
との反応を含むことが理解されよう。
式中、
およびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、もしくはアシルであり;
はHまたはPであり、ここでPはアミノ保護基であり;
Xは、ハロゲンまたはORであり、Rは、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アシル、アシルオキシカルボニル、またはアリールオキシカルボニルであり;
は、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
は、R、P、またはZであり;
は、H、OH、ケトン、OR、P、またはZであり;
10は、R10、P、またはZ10であり;
は、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;
はRであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;または
10はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;
10がPである場合にはPはY10と一緒になって環状構造を形成し;
は、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
10は、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
はヒドロキシル保護基であり;
はヒドロキシル保護基であり;
はヒドロキシル保護基である。
【0093】
当業者には、合成的に改変された場合の9位および10位の立体化学を除くタキサン誘導体中の立体化学が、それらの天然生成物由来の供給源の結果物として定義されることが理解されよう。したがって式(X)の化合物は、より完全には
【0094】
【化27】

【0095】
と示される。
同様に当業者には、パクリタキセル、ドセタキセル、およびTPI287中の側鎖の立体化学から、式(IX)の化合物の立体化学が、より完全には
【0096】
【化28】

【0097】
と示されることが理解されよう。
前述から当業者には、式(VIII)の立体化学が、完全には
【0098】
【化29】

【0099】
と示されることが理解されよう。
当業者には、式(XVI)の化合物の立体化学が、より完全には
【0100】
【化30】

【0101】
と示されることが理解されよう。
この方法では、Xはフッ素または塩素であってよいが、式(I)に関して定義される場合には好ましくはOCORであり、特にOCOC(CH基である。幾つかの適用において、Xは臭素、アジド等の脱離基であってよい。
【0102】
前記方法では、式(IX)の化合物は、適切には式(XI)の化合物である。
【0103】
【化31】

【0104】
式中、XはフェニルまたはCHCH(CHであり;
は(CHCO、Ph、またはPhOであり;
およびRは、独立に、水素、低級アルキル、低級アルコキシで置換された低級アルキル、フェニル、または低級アルキル、低級アルコキシ、フッ素、もしくは塩素から選択される1つ、2つ、または3つの基で置換されたフェニルである。
【0105】
式(XI)では、適切にはRは水素である。適切には、Rは置換されていてもよいフェニル基である。好ましくは、Rは式
【0106】
【化32】

【0107】
[式中、AおよびAは先に定義した通りである]の基である。
かかる方法では、式(X)の化合物は、適切には式(XII)または(XIII)の化合物である。
【0108】
【化33】

【0109】
式中、Y11は、水素またはCbz基などのヒドロキシル保護基であり、Y12は水素原子またはCbzもしくはアセチル基などの保護基である。
かかる方法では、Y11は、好ましくは水素化によって除去可能な基であり、好ましくはCbz基である。
【0110】
本願の式(VIII)の化合物の中でも、好ましい化合物は、式(XIV)の化合物である。
【0111】
【化34】

【0112】
式中、R、R、R、X、Y11、およびY12は、本明細書で先に定義した通りである。かかる化合物は、パクリタキセルおよびドセタキセルの合成の中間体として有用である。
【0113】
TPI287の合成に有用な本願の化合物には、式(XV)の化合物が含まれる。
【0114】
【化35】

【0115】
式中、R、R、R、およびXは、先に定義した通りである。
本願はまた、式(XVI)の化合物の調製方法を提供し
【0116】
【化36】

【0117】
[式中、X、R、Y10、Y、およびYは、式(VIII)に関して定義した通りである]、この方法は、式(VIII)の化合物の側鎖部分を、好ましくは酸、例えばギ酸、酢酸、またはメタノール溶液中の水性HClでの処理によって脱保護するステップを含む。当業者は、式(VIII)の化合物の立体化学が、先に提示したようにより完全に示されることを理解されよう。
【0118】
前述から、本願はタキサン誘導体を調製するための新規なコンバージェント合成を提供することが理解されよう。このことは、TPI287に関して例示されている(図1の10として示す。以下の下線付き数字の他の化合物も、図1に示す順序の化合物に関係する)。この方法は、少数の化学的および機械的処理ステップしか必要とせず、所望の生成物を全体的に高収率で提供し、化学的純度が高い所望の化合物を提供し、逆相精製および順相精製の必要性を回避するものである。側鎖脱保護は、弱酸加水分解を使用するものであり、エピマー化に起因する生成物の喪失を回避する。
適切な順序を、図1、2、および3に示す。
【0119】
【化37】

【0120】
【化38】

【0121】
【化39】

【0122】
図2に示す一態様では、9−ケトアルコール1を選択的に酸化して、9,10−ジ−ケト2を形成する。このジ−ケト2は、ジ−ケト2aおよび2bの混合物として得ることができる。本方法の一変形では、2つの異性体2aおよび2bを分離して2aを得ることができ、または該混合物を分離せずに後のステップでそのまま使用することができる。該混合物を誘導体化して、対応する保護アルコールを形成することができ、幾つかの適用可能なアルコール保護基は、例えばT.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,New York(1999)に開示されている。特定の一方法では、TES−OTf(トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリルエステル)、ピリジン、およびNMPのような溶媒で混合物を処理するなどして該混合物を誘導体化して、トリエチルシリルエーテルなどの対応する保護シリルエーテルを形成し、7,13−ジ−シリルエーテル3を形成する。所望によりシリル化の前に、カラムクロマトグラフィーおよび結晶化を含む当技術分野で知られる様々な方法を使用して、所望の異性体2aから望ましくない異性体2bを分離することができる。あるいは、異性体2aおよび2bの混合物を出発混合物として使用する場合、当技術分野で知られる標準手順を使用して、得られる対応するジ−シリルエーテル3のエピマー性異性体を分離することができる。異性体2bは、異性体2aよりも低速でジ−TESエーテルを形成するので、したがって反応条件は、異性体2aの形成を助けるように調節することができる。
【0123】
ジ−シリルエーテル3を、対応する9,10−ジ−オール4に還元することができる。還元は、有機溶媒中のNaBHを使用するなど、ヒドリド還元剤を使用して実施することができる。一方法では、ジ−ケトンの還元は、溶媒またはTHF/EtOHなどの溶媒混合物中のLiBHを使用して、ジ−オール4を形成することで達成し得る。この反応は、室温以下または約20℃〜約−10℃、より好ましくは約0℃で実施することができる。
【0124】
図3では、ジ−オール4は、無水酢酸、TEA、DMAP、およびIPACなどのアシル化剤を使用して10−アシル化アルコール5を形成することにより、対応する10−アシル化アルコール5に変換される。TES基の選択的加水分解は、例えばMeOH/HO中のAcOHを使用して、またはIPAc/MeOHを使用してテトラ−オール6を得ることにより達成することができる。化合物6の7,9−ジオールのアセタール化は、好ましくは、氷浴中、トルエンおよびTFAなどの有機溶媒中のアクロレインジエチルアセタールを使用して、アリリデンアセタール7を良好な収率で提供するものである。アリリデンアセタール7と酸8aとの結合によって、結合生成物9aが得られる。脱保護によって、化合物10(TPI287)が良好な収率で得られる。
【0125】
別の態様では、アリリデンアセタール7と酸8との結合反応によって、単離されていない結合生成物9が得られ、N,O−アセタールがin situ加水分解され、本明細書で提供されるように化合物10(TPI287)が良好な収率で得られる。この加水分解は、アルコール中の酸を低温で使用して、例えばメタノール中の塩酸を約−25℃〜25℃、好ましくは約−15℃で使用して実施することができる。出発異性体8aまたは8bのいずれかを使用して、対応する異性体9aまたは9bそれぞれを形成する一般手順を用いることができる。
【0126】
図3に示されるように、酸8bを化合物7との結合反応に用いる場合、得られる生成物9bは、結合生成物として形成される。
図4に例示の手順に従ってN,O−アセタール8bを調製して、所望の生成物を良好な収率で提供することができる。同様に、N,O−アセタール異性体8aは、図4に例示の手順に従って調製して、生成物を良好な収率で提供することができる。図4の中間体の調製に適合する方法は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるJournal of Organic Chemistry,2001,66,3330−3337に開示されている。
【0127】
【化40】

【0128】
本方法に使用する所望の純度の中間体(複数でもよい)および処理パラメータに依存して、本明細書に記載の中間体を1つまたは複数の処理ステップで単離かつ/または精製した後、その後の1つまたは複数の反応ステップにかけることができる。本方法の特定の態様では、所望の純度、用いる試薬、および反応条件に依存して、その後の1つまたは複数の反応ステップの反応生成物(または中間体)を、単離かつ/または精製することなしにその後の1つまたは複数の反応にさらした後、最終生成化合物10(TPI287)を得る。望むならば、カラムクロマトグラフィー、結晶化、希釈等を含む当技術分野で知られる様々な方法、またはその方法の組合せを使用して、中間体および/または生成物の精製を実施することができる。
【0129】
上記手順に使用することができる同等の保護基は、有機合成の技術者に知られている。かかる保護基および合成におけるかかる基の使用は、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,New York(1999)を含む様々な文献に見ることができる。
【0130】
標準の手順および化学変換および関連の方法は当業者には周知であり、かかる方法および手順は、例えばFiesers’Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons,New York,NY,2002;Organic Reactions,vols.1−66,John Wiley and Sons,New York,NY,2005;March J.:Advanced Organic Chemistry,4th ed.,John Wiley and Sons,New York,NY;およびR.C.Larock:Comprehensive Organic Transformations,Wiley−VCH Publishers,New York,1999などの標準参考書に記載されている。本明細書に引用した全ての文献および参考書は、参照によってその全体が組み込まれる。
【実施例1】
【0131】
ビニル化合物の酸化
【0132】
【化41】

【0133】
化合物(16)の式(8b)の化合物への酸化:
丸底フラスコ中、NMO(10.49g、75.2mmol)をACN(200mL)と共に撹拌して溶液を得た。撹拌しながら、溶液に10%NaIO水溶液(165mL、76.4mmol)、さらにACN(50mL)および脱イオン水(50mL)を加えた。TPAP(504mg、1.4mmol)を加えた後、溶液16(15.0g、38.3mmol、0.5g/mL、ACN)を周囲条件下でおよそ1分間かけて加えた。約50分後、さらにACN(50mL)、NMO(10.0g、71.7mmol)および10%NaIO水溶液(82mL、38.0mmol)を反応混合物に加えて完結させた。反応完結後、撹拌しながら反応混合物にIPAc(300mL)および水(200mL)を加えた。混合物を真空濾過して沈殿した試薬を除去し、次いで分配した。IPAcでおよび次いで2:1 n−ヘプタン/IPAcでそれぞれ1回の2回、水相を抽出した。それぞれ抽出後、有機相を合わせた。
【0134】
有機相が僅かに酸性であると確認した後、15%Na水溶液、続いて水および最後にブラインで洗浄した。単離した有機相を45℃でロータリーエバポレーターにより濃縮して、粗製物8bを9.82g得た。粗製の油をカラムクロマトグラフィーにより精製して、8bを5.0g得た。
【実施例2】
【0135】
ピバロイル混合酸無水物
【0136】
【化42】

【0137】
Bombardelliらの国際公開特許第01/02407号の方法により、または実施例1の化合物を中和することにより、式(8a)の酸のナトリウム塩を得ることができる。
【0138】
当該ナトリウム塩である側鎖55.00g(127.5mmol)を含むジクロロメタン(550mL)溶液を、冷却(0〜5℃)した2NのHCl水溶液(2×460mL)で洗浄した。有機相を12.5重量%塩化ナトリウム溶液(2×460mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、重量が一定になるまで真空で濃縮して、遊離の酸である化合物(8a)50.35g(96.5%)を得た。
【0139】
遊離の酸である化合物(8a)5.51g(13.5mmol)の無水THF(50mL)溶液に、0〜5℃で窒素の不活性雰囲気下、99%4−メチルモルホリン1.78mL(16.2mmol)および99%トリメチルアセチルクロリド1.99mL(16.2mmol)を加えた。反応の進行をHPLCにより監視した(反応アリコートをMeOH中にクエンチした)。1時間後、99%4−メチルモルホリン0.20mL(1.8mmol、0.2当量)および99%トリメチルアセチルクロリド0.22mL(1.8mmol、0.2当量)を加えた。さらに0〜5℃で30分後、混合酸無水物側鎖である化合物(8c)への転換は完結した。
【実施例3】
【0140】
ピバロイル混合酸無水物および使用
式(8c)の混合酸無水物を以下の通りに調製しそのまま使用する:
【0141】
【化43】

【0142】
10mLの2ッ口丸底フラスコを加熱して水を除去し、次いでN雰囲気下冷却した。フラスコに、化合物7(125mg、0.2mmol)(図1に示す通り)、THF(1.25mL)、4−メチルモルホリン(40μL、0.36mmol)、DMAP(10.9mg、0.009mmol)、式(iii)の化合物(110mg、0.254mmol)および最後にトリチメルアセチルクロリド(40μL、0.319mmol)を加えた。反応混合物をN下40℃で撹拌した。約2時間後、さらに4−メチルモルホリン(11μL、0.01mmol)、8bナトリウム塩(41mg、0.1mmol)およびトリメチルアセチルクロリド(13μL、0.1mmol)を加えて酸無水物中間体を形成させ、次いでこれを7と結合させた。さらに約2時間後、4−メチルモルホリン(11μL、0.010mmol)、トリメチルアセチルクロリド(13μL、0.104mmol)および8bナトリウム塩(42mg、0.1mmol)を加えた。さらに1.5時間後、反応物を冷凍庫中に−20℃で終夜放置した。翌朝、撹拌を再開し、反応物を45℃に2時間加熱した。さらに4−メチルモルホリン(22μL、0.02mmol)およびトリメチルアセチルクロリド(25μL、0.201mmol)を加えた。さらに2時間撹拌すると、反応は約90%完結に達した。
【0143】
クエンチするため、反応混合物を加熱から除去し、周囲温度に冷却した。撹拌しながら、MTBE(2mL)、続いて水(1mL)を加えた。混合物を分配し、有機相をブライン(40μL)で洗浄した。有機相を40℃で濃縮して、粗製の生成物を淡赤色発泡体として得た。
【0144】
淡赤色発泡体をMTBE(500μL)に溶解し、約20℃で撹拌しながらn−ヘプタン(5mL)に滴下添加して、淡赤色沈殿物を得た。混合物を真空濾過し、固体を真空乾燥機中40℃で終夜乾燥させ、LC/MSにより示されるように、所望のカップリングしたエステル(82mg)を得た。
【0145】
カップリングしたエステル9bを、極性が増加するIPAc/n−ヘプタン系で溶離する、順相シリカ上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。精製したカップリングエステルおよそ26mgを、LC/MSにより確認した通り回収した。
【0146】
カップリングしたエステル(15mg、0.001mmol)をTHF(1mL)に溶解した。溶液の250μLアリコートをTHFで1:1に希釈した。溶液を氷浴上約0℃で撹拌し、その後HCl(MeOH中0.5N、25μL)を加えた。反応物をLC/MSにより監視し、これは10(TPI287)の形成を示した。示したように描写した構造は、NMRおよび質量分析などの技術を用いる分光分析により一致する。
【実施例4】
【0147】
TPI287の調製
【0148】
【化44】

【0149】
I.10DABIII(1)の酸化:
磁気撹拌子を装着した3L丸底フラスコ(RBF)に10DABIII(25g)を仕込んだ。EtOAc(700mL)およびEtOH(700mL)を、溶解が始まるまで撹拌しながら加えた。MgSOを加え、混合物を2時間撹拌した。終夜放置後、セライト(10g)を通して混合物を濾過し、セライト/MgSOを1:1のEtOAc/EtOH(200mL)溶液で洗浄した。合わせた濾液を濃縮して固体とし、真空乾燥機中45℃で24時間置いて、乾燥10DABIIIを得た。
【0150】
磁気撹拌子および熱電対を装着し、ならびに窒素下に保持した3L丸底フラスコ(RBF)に、乾燥10DABIII(56.88g、104.85mmol)を、続いてEtOH(710mL、12.5mL/g)およびEtOAc(570mL、10mL/g)を仕込んだ。CuClを懸濁液に加え、フラスコをNESLAB(商標)冷却器中に置いた。反応混合物を撹拌し、−13℃に冷却した。TEA(51mL、366.97mmol、3.5当量)のEtOAc(144mL、2.5mL/g)溶液を、反応温度を−8℃未満に維持しながらフラスコにゆっくり仕込んだ。HPLCにより示される通りに反応が完結するまで、撹拌および冷却(−13℃以下)を続けた。反応物を飽和塩化アンモニウム(156mL)およびEtOAc(600mL)でクエンチし、冷却を中止した。水酸化アンモニウム(2M、250mL)を加え、反応混合物を4L分液漏斗中に水(250mL)およびEtOAc(300mL)で洗浄した。混合物を水(250mL)でさらに希釈し、層を分離した。水層をEtOAc(250mL)で逆抽出し、有機層を合わせ、飽和塩化アンモニウム(3×250mL)で洗浄した。次いで有機層を水(3回)で洗浄し、濃縮した。メタノール(250mL)を加え、混合物を50℃に1時間加熱しながら撹拌した。次いで混合物を2時間冷凍し、濾過した。固体を集め、メタノールで洗浄し、真空乾燥機(45℃)中で乾燥させて、2を41.78g得た。重量%収率=63.9%。本明細書に記載した通り、単離した生成物は、およそ10:1から20:1の2a:2bを含んでいる。
II.3を形成するための2aのテシレーション:
磁気撹拌子、熱電対および窒素吹込み管を装着した2L丸底フラスコに、2a(45.0g、82.94mmol)およびIPAc(450mL、10mL/g)を仕込んだ。懸濁液をロータリーエバポレーターで45℃で濃縮して固体とした。固体に1−メチル−2−ピロリジノン(270mL、6mL/g)を加えた。混合物を氷/メタノール浴中に置き、−11℃に冷却した。ピリジン(40mL、6当量)を反応混合物に加え、次いで−20℃に冷却した。トリエチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TES−OTf)を、内温が−5℃未満に維持されるようにゆっくり加えた。添加完了後、フラスコを氷浴から除去した。次いで温水浴中に置き、反応混合物を40℃に約6時間加熱した。フラスコを氷水浴中に再度移し、5℃に冷却し、水(100mL)を滴下添加して反応をクエンチした。混合物を2L分液漏斗に移し、IPAc、ヘプタンおよび水で希釈した。層を分離し、水層をIPAcおよびヘプタンで再度抽出した。合わせた有機層を10%CuSOで、水および次いでブラインで2回洗浄した。混合物を濾過し、濃縮し、n−ヘプタンに再度溶解した。この溶液を濃縮して固体にした。n−ヘプタンを固体に加え、懸濁液をロータリーエバポレーターで濃縮し、混合物を冷凍機中で冷却し、濾過し、真空乾燥機(45℃)中で乾燥させて、白色固体として3を48.27g得た。重量%収率=79.5%。
III.4を調製するための3の還元:
磁気撹拌子および熱電対を装着し、ならびに窒素下に保持した1L丸底フラスコに、THF(240mL、5mL/g)およびEtOH(240mL、5mL/g)を、続いて3(48.0g、62.25mmol)を仕込んだ。反応混合物を氷/メタノール浴中−13.9℃に冷却した。LiBHのTHF中2M溶液(62mL、2当量)を、温度を23℃以下に維持するように冷却し撹拌しながらフラスコにゆっくり加えた。冷却を停止し、HPLCにより示されるように反応が完結するまで、反応物を室温で撹拌し続けた。反応フラスコを氷/水浴中に再度置き、約2.5℃に冷却し、EtOH中10%NHOAc(200mL)をゆっくり加えた。酢酸(0.5mL)を加え、溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮した溶液をメタノール(200mL)に溶解し、撹拌しながら水に滴下添加した。得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、真空乾燥機中で乾燥させて、白色固体として4を46.34g得た。重量%収率=72.4%。
IV.5を調製するための4のアセチル化:
磁気撹拌子および熱電対を装着した1L丸底フラスコに、IPAc(230mL、5mL/g)、続いて4(46.00g、59.34mmol)を仕込んだ。痕跡量の水を除去するためにロータリーエバポレーターで溶液を濃縮して油とした。残った油をIPAc(200mL)に再度溶解し、DMAP(2.90g、0.4当量)、TEA(58mL、7当量)および無水酢酸(34mL、6当量)を加えた。反応混合物を窒素下36℃で、HPLCにより示される通りに反応が完結するまで撹拌した。水(200mL)を加えて反応をクエンチし、層を分離した。水層をIPAcで再度抽出した。合わせた有機層を濃縮して、発泡体として5を49.05g得た。重量%収率=83.5%。
V.6を調製するための5の脱保護化:
磁気撹拌子および熱電対を装着した丸底フラスコに、メタノール(360mL、10ml/g)、続いて5(36.5g、44.67mmol)を仕込んだ。酢酸(75mL、2mL/g)を加え、続いて水(70mL、2mL/g)を滴下添加した。反応フラスコを温水浴中に置いて、水を加えた際に形成した固体を溶解し、HPLCにより示される通りに完結するまで反応物を撹拌した。完結時、反応物を温水浴から除去し、2LのRB回収フラスコに移液した。n−ヘプタン(2回)、1:1 n−ヘプタン/IPAc(3回)およびヘプタンを用いて一連の溶媒交換を行った。最終的に濃縮した溶液をシリカパッドに適用し、真空下1:1のIPAc/ヘプタン、IPAcおよび最後にEtOAcで溶離して、発泡体として6を28g得、これを50℃でトルエン(1L)に溶解した。溶液を約150mLに濃縮し、冷凍庫中終夜置いた。固体を濾過し、トルエン(約60mL)で洗浄し、真空乾燥機中40℃で乾燥させて、74.9%の収率で6を21.3g得た。
VI.アセタール形成:6から7:
磁気撹拌子および熱電対を装着した丸底フラスコを、NESLAB(商標)冷却器中に0℃で置き、6(700mg、1.885mmol)およびトルエン(11mL)を仕込んだ。TFA(274.6μL、3.0当量)およびアクロレインジエチルアセタール(365μL、2.0当量)をフラスコに加え、HPLCにより示される通りに完結するまで反応物を撹拌した。IPAc(11mL、15mL/g)および5%NaHCO溶液(6mL)を撹拌しながら加えて反応物をクエンチした。反応混合物を分液漏斗に移液し、層を分離した。有機層を順相シリカパッド(1.5g、2g/g)上に通した。シリカパッドをIPAcで溶離した。合わせた濾液を濃縮乾固した。残った油をMTBE(3.5mL)に再度溶解した。ヘプタン(約3mL)を加え、混合物を濃縮して、7を640mg得た。収率=78%。
VII.7からの化合物10(TPI287)の調製:
磁気撹拌子および熱電対を装着し、ならびに室温で窒素下に保持した丸底フラスコに、7(3.042g、4.859mmol)、8a(2.304g、1.1当量)、N−メチルモルホリン(1.2mL、2.25当量)、DMAP(0.118g、0.2当量)および無水THF(50mL)を仕込んだ。塩化ピバロイル(1.2mL、2.0当量)を室温で反応混合物に加え、HPLCにより示される通りカップリング反応が完結するまで撹拌した。溶液をNESLAB(商標)冷却器(−18℃から−20℃)中で冷却し、メタノール中0.5NのHCl(20mL)を加えた。HPLCにより示される通り脱保護化が完結するまで混合物を約−15℃で撹拌した。完結時、反応混合物を5%炭酸水素ナトリウム溶液(15mL)でクエンチし、ロータリーエバポレーターで濃縮して油とした。残った油をメタノール(4mL)に溶解し、水に滴下添加すると、10が固体として沈殿した。固体を濾過し、水で洗浄し、真空乾燥機中で終夜乾燥させて、10を4.0g得た。収率=94%。
【実施例5】
【0151】
【化45】

【0152】
最初に、側鎖である酸(8a)のナトリウム塩7.96g(18.4mmol、3.0当量)および99%4−DMAP2.25g(18.4mmol)を含む無水ジクロロメタン(80mL)溶液を調製した。この溶液に、98%塩化オキサリル(無溶媒)1.70mL(19.1mmol、3.1当量)を窒素の不活性雰囲気下周囲温度で加えた。得られた混合物を周囲温度で約30分間撹拌し、98%塩化オキサリル(0.5mL)を加え、混合物をさらに30分間撹拌した。HPLC分析では、酸クロリド側鎖である化合物(iv)への転換が完結していることを示した(反応アリコートはメタノール中にクエンチし、メチルエステルとして分析した)。混合物を濾過し、固体を無水ジクロロメタン(30mL)で洗浄した。濾液を減圧下に濃縮し、油を高真空下の真空で25分間さらに濃縮した。得られた油を無水ジクロロメタン(30mL)に再度溶解し、これにより化合物(iv)の酸クロリド側鎖を含む溶液を製造した。
【実施例6】
【0153】
TPI287の調製
1の酸化:
乾燥EtOAc(300mL)で濯ぎ、N下で保持した4L反応フラスコに、乾燥EtOAc(1250mL)を仕込んだ。撹拌を始め、乾燥した1(100.04g、0.1837mol)を加えた。USP EtOH(800mL)を加え、続いて反応混合物を−1.3℃(初期温度)に冷却した。無水CuCl(86.4g、3.5当量)を加え、フラスコ側面からの固体を無水EtOH(450mL)を用いて混合物中に洗浄した。反応混合物を−17.6℃に冷却した。反応の内温を−13℃未満に維持するために、無水TEA(90mL、3.5当量)をゆっくり加えた。反応物をHPLC/TLCにより監視した。1時間で反応は完結したと判断された。
【0154】
TFA(36mL)を加えて反応をクエンチし、15分間撹拌を続けた。反応混合物を10Lロータリーエバポレーター用フラスコに移した。EtOAc(500mL)およびEtOH(300mL)を反応フラスコに加え、2分間撹拌し、ロータリーエバポレーター用フラスコの内容物に濯ぎ液を加え、さらには蒸留が起こらなくなるまで(80分)40℃でロータリーエバポレーター上にてこれを濃縮した。酸性化したエタノール(300mL)を残渣に加え、得られたスラリー液を2Lのロータリーエバポレーター用フラスコに移した。最初のロータリーエバポレーター用フラスコを、酸性化したEtOH(400mL)で第2のフラスコに濯いだ。再度、さらには蒸留が起こらなくなるまで(1時間)40℃でロータリーエバポレーター上にて混合物を濃縮した。酸性化したエタノール(305mL)をロータリーエバポレーター用フラスコに加え、混合物を10分間40℃でロータリーエバポレーターにて撹拌した。次いでフラスコの内容物を5℃に冷却し、濾過した。ロータリーエバポレーター用フラスコを冷却し(2℃)酸性化したエタノール(300mL)で(2回)濯ぎ、濯ぎ液を濾過器に完全に移して固体を洗浄した。固体を真空乾燥機中45℃で終夜乾燥して、2を得た。HPLC面積%=91.3%。収率=96.72g。
2のTES保護化:
10Lのロータリーエバポレーター用フラスコ中の2(96.72g、0.1783mmol)に、酢酸エチル(3000mL、30mL/g)を加えた。40℃でロータリーエバポレーターにて溶液を濃縮し、初期容量のおよそ半分にした(蒸留容量=1680mL)。トルエン(1000mL、10mL/g)を残った溶液に加え、固体が得られるまで(45分)40℃でロータリーエバポレーターにて濃縮させた。固体をトルエン(1000mL、10mL/g)に懸濁させ、懸濁液を40℃でロータリーエバポレーターにて(約1時間)濃縮して乾燥固体とした。メカニカルスターラー、熱電対、滴下漏斗およびNストリーム(予め5分間パージした)を装着した2Lフラスコに固体を移した。ロータリーエバポレーター用フラスコ中の固体を、無水ピリジン(292mL、3mL/g)を用いて反応フラスコ中に濯ぎ、撹拌を始めた。溶解時、撹拌を続け、フラスコの内容物を−20℃に冷却した。トリエチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(120.9mL、3.0当量)を、反応の内温が−10℃以下に維持されるように反応混合物にゆっくり加えた。TES−OTfの添加が完了した後、反応混合物を−5.8℃に加温し、撹拌を続けた。TES−OTf添加30分後、HPLC/TLC用にサンプリングを始め、30分間隔で続けた。モノTES−2が2%未満残っていることをHPLC/TLCが示した時点での2時間で、反応は完了したと判断した。反応混合物を−17.5℃に冷却した。メタノール(19.3mL、0.2mL/g)を加えて反応をクエンチし、反応混合物を5分間撹拌した。混合物を周囲温度に加温する間、撹拌しながらMTBE(500mL)をゆっくり加え、混合物を分液漏斗に移した。反応フラスコ中に残っている残渣を、さらにMTBE(200mL、2mL/g)を用いて分液漏斗中に洗浄し、次いで水(250mL、2.5mL/g)および飽和NHCl溶液(250mL、2.5mL/g)を加えた。混合物を撹拌し、層を分離した。有機層をきれいな容器に移した。MTBE(250mL、2mL/g)を水層に加えた。撹拌し、層を分離した。第2の有機層をMTBE(100mL)を用いて最初の有機層中に洗浄し、合わせた層に水(200mL、2mL/g)を加えた。混合物を撹拌し、層を分離した。有機層を2Lのロータリーエバポレーター用フラスコに移し、40℃で濃縮して残渣とした。この残渣にn−ヘプタン(500mL、5mL/g)を加え、溶液を40℃で再度濃縮して残渣とした。n−ヘプタン(1000mL、10mL/g)を再度加え、溶液を留去してその容量の1/2(蒸留容量=375mL)にした。n−ヘプタン(300mL、2.5mL/g)を加え、溶液を40℃でロータリーエバポレーターにて35分間撹拌した。次いで溶液を撹拌しながら−15.7℃に冷却し、約2.5時間続けた。溶液を濾過した。フラスコ中に残っている固体を、冷却(<5℃)n−ヘプタン(100mL)を用いて濾過漏斗中に濯ぎ、全ての固体を集め、真空乾燥機中終夜乾燥させて、3を111.22g得た。HPLC面積%純度=93.4%。
3の還元:
4L反応フラスコ中N下に保持したTHF(560mL、5mL/g)に、撹拌しながら3(111.0g、0.144mol)を、続いて無水エタノール(560mL、5mL/g)を加えた。混合物を撹拌して固体を溶解し、次いで−12℃に冷却した。THF中2MのLiBH(72mL、1.0分子当量、4化学当量)を、反応温度(温度=−11.9から−9.7℃)を制御するためにゆっくり加えた。反応混合物を撹拌し、HPLC/TLC用に30分間隔でサンプリングした。さらにTHF中2MのLiBH(72mL、1.0当量)を反応フラスコ(温度=−9.6℃から−7.1℃)にゆっくり導入し、30分間撹拌を続けた。THF中2MのLiBH(36mL、0.5当量)の3回目の添加を、これまでの添加と同様の方法(温度=−7.6℃から−6.7℃)ではあるが、LiBH溶液を添加後に15℃に、10分後に12.5℃に合わせた浴温で行った。最後のLiBHを添加1時間後、反応は完了したと判断された。反応混合物を−10.8℃に冷却し、EtOH中10%酢酸アンモニウム(560mL)を、溶液の温度を−3℃以下に定めおよび制御して、発泡体になるようゆっくりおよび注意深く加えた。反応混合物を2Lのロータリーエバポレーター用フラスコに移し、反応フラスコ中の残渣全てをEtOH(250mL)を用いてロータリーエバポレーター用フラスコ中に濯ぎ、ロータリーエバポレーター用フラスコの内容物を40℃でロータリーエバポレーターにて濃縮して油とした。メタノール(560mL)を残渣に加えた。水(1700mL)を、添加漏斗およびメカニカルスターラーを装着した5Lフラスコに加え、激しく撹拌した。生成物を沈殿させるため、反応混合物のメタノール溶液(748mL)を、水を含むフラスコにゆっくり加えた。得られた混合物を濾過し、固体を水(650mL)で洗浄した。一部の水を用いて、沈殿フラスコ中に残っている固体を濾過漏斗中に洗浄した。固体を45℃で真空乾燥機中に終夜置いて、僅かに湿った生成物4を139.53g得た。HPLC面積%純度=92.8%。
4のアセチル化:
2Lのロータリーエバポレーター用フラスコ中の4(137.77g、0.178mol)に、IPAc(1400mL、10mL/g)を加えた。溶液を40℃でロータリーエバポレーターにて濃縮して油とした(1.5時間)。手順を繰り返した。次いで乾燥IPAc(550mL)を残った油に加え、メカニカルスターラー、添加漏斗、熱電対およびNストリームを装着した1L反応フラスコにロータリーエバポレーター用フラスコの内容物を移した。ロータリーエバポレーター用フラスコをIPAc(140mL)を用いて反応フラスコ中に洗浄した。DMAP(8.72g、0.4当量)、無水TEA(170mL、7当量)および無水酢酸(100.6mL、6当量)を反応フラスコの内容物に加え、混合物を撹拌し、35℃に加熱した。撹拌および35℃への加熱を続けながら、HPLC/TLCにより1時間間隔で反応を監視した。
【0155】
4が存在しないことにより示される反応完結時(3時間の合計反応時間)、反応混合物を19.7℃に冷却し、飽和塩化アンモニウム溶液(552mL)を加えた。15分間撹拌した後、混合物を分液漏斗に移し、層を分離し、水層を除去した。水(280mL)を有機層に加え、混合物を4分間撹拌した。層を再度分離し、水層を除去した。有機層を2Lのロータリーエバポレーター用フラスコに移し、残った分液漏斗の内容物をIPAc(200mL)を用いてロータリーエバポレーター用フラスコ中に洗浄した。混合物を40℃でロータリーエバポレーターにて濃縮乾固して、淡黄色油状発泡体として5(約124g)を得た。
5の脱保護化:
5(124.00g)を含むロータリーエバポレーター用フラスコに、メタノール(970mL、7mL/g)を加えた。HPLC/TLC用のサンプリングを始め、1時間間隔で続けた。5/メタノール溶液を3L反応フラスコに移し、撹拌を始めた。残ったロータリーエバポレーター用フラスコの内容物をメタノール(400mL)を用いて反応フラスコ中に洗浄した。酢酸(410mL、3mL/g)および水(275mL、2mL/g)を加え、反応混合物を50℃に加熱し、撹拌した。温度を50℃と55℃の間に維持しながら、1時間間隔でHPLC/TLCにより出発物の消失、モノ−TES中間体の形成および消失ならびに生成物6の形成について、反応を監視した。完結時(約9時間)、反応混合物を室温に冷却し、10Lのロータリーエバポレーター用フラスコに移した。n−ヘプタン(2×1370mL、1×1000mL)およびIPAc(2×1370mL、1×1500mL)への溶媒交換を行った。次いでIPAc(280mL、2mL/g)およびシリカ(140g、1g/g)をロータリーエバポレーター用フラスコに加え、さらなる蒸留が起こらず、自由に流動する固体が得られるまで、40℃でロータリーエバポレーターにて内容物を濃縮した。2:1 n−ヘプタン/IPAc(500mL、2mL/gシリカ)で調整し、2:1 n−ヘプタン/IPAc(2mL/gシリカ、全3400mL)で洗浄(4回)したシリカパッド(7cmカラム、280gシリカ)上に、乾燥シリカ混合物を仕込んだ。それぞれの洗液(約860mL)を分離フラクションとして集め、TLCにより分析した。TLCにより示される通りに全ての不純物が除去されるまで、1:1 n−ヘプタン/IPAc(全3020mL、2mL/gシリカ)を用いて、シリカパッドを(4回)再度洗浄した。それぞれの洗液(約840mL)を分離フラクションとして集め、既に述べたようにTLCにより分析した。次いでシリカパッドを、waEtOAc(EtOAc中1%水、1%AcOH)(全3950mL、2mL/gシリカ)および1:1 MeOH/EtOAcを用いて(5回)洗浄し、それぞれの洗液(約840mL)を分離フラクションとして集めた。生成物をフラクション11〜15で溶離した。HPLC/TLCにより示された通りに純粋な6を含むフラクションを合わせ、ロータリーエバポレーター用フラスコに移し、40℃でロータリーエバポレーターにて濃縮乾固した。フラスコ中の残渣を溶解し濃縮乾固した:最初にIPAc(1055mL)およびn−ヘプタン(550mL)を用いてならびに次にIPAc(830mL)およびn−ヘプタン(410mL)を用いて。次いでIPAc(500mL)を残渣に加え、溶液を2L丸底フラスコに移し、n−ヘプタン(140mL)を加えた。得られた溶液をロータリーエバポレーターにて濃縮し、真空乾燥機中40℃で乾燥させて、発泡体として6を得た。発泡体を溶解するため、IPAc(160mL)を、続いてトルエン(800mL)をフラスコに加えた。溶媒の半分が除去され、固体が形成するまで50℃で真空下ロータリーエバポレーターにて溶液を濃縮した。フラスコの内容物を撹拌し、21℃に1.5時間冷却した。#54Whatman濾紙上にて90cm濾過漏斗で固体を濾過し、トルエン(165mL)で洗浄し、真空乾燥機に移し、40℃で乾燥させて、6を62.63g得た。HPLC面積%=96.9%。
6のアセタール形成:
トルエン(375ml)を6(25g、0.0424mol)に加え、約−15℃に冷却した。スラリー液が透明に成り始めた時点でTFA(9.8ml、3.0当量)をゆっくり加えた。アクロレインジエチルアセタール(10.3ml、2.0当量)を加え、反応を30分毎に監視した。6が3%未満残っている時点で反応が完結したと判断した。1g/g水和シリカ(25%水)を加えて、約−5℃未満で反応をクエンチした。反応温度を約−5℃未満に維持しながら、塩基性シリカを30〜45分後に反応混合物に加えた。反応物のpHは、湿ったpH紙により約5であった。約15分撹拌した後、シリカを濾別し、約20ml/gトルエンで洗浄した。濾液を合わせ、約1mL/g容量に濃縮した。結晶化を室温で約4時間保持し、固体を濾過し、最少量の80:20トルエン:ヘプタンで洗浄して、7を17.6g得た。HPLC面積98%。
7のカップリングおよび脱保護化:
1L反応フラスコ(THF(500mL)で濯いだ)中のTHF(300mL、8mL/g)に、撹拌しながら7(35.73g、0.0570mol)を加えた。精製した8a(30.86g、1.25当量)を反応混合物に加え、続いてNMM(11.5mL、1.8当量)、DMAP(2.77g、0.4当量)およびTHF(75mL、2mL/g)を加えた。混合物を撹拌した。次いで塩化ピバロイル(11.5mL、1.6当量)を反応混合物にゆっくり加えた。反応混合物を加温し、撹拌を続けながらおよびフラスコの底からNを吹き込み続けながら、温度を38℃±4℃に維持した。出発物の消費およびカップリングしたエステルである9aの形成について、塩化ピバロイルを添加した30分後に始めて30分間隔で、HPLC/TLCにより反応混合物を分析した。
【0156】
1時間後、反応は完結したと判断し、反応混合物を2℃に冷却した。MeOH中0.5NのHCl(280mL、20mL/使用したNMMのmL)を、反応混合物のpHを1.5〜1.9に維持するように加えた。反応混合物を2℃±2℃で撹拌し、9aの消費と10の形成について30分間隔でHPLC/TLCにより監視した。2時間で完結時、反応物を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)でクエンチし、IPAc(185mL、5mL/g)を加えた。反応混合物を2Lのロータリーエバポレーター用フラスコに移し、反応フラスコを60mLのIPAcで2回、ロータリーエバポレーター用フラスコ中に濯いだ。油と水との混合物が得られるまで、混合物を40℃で真空下濃縮した。IPAc(200mL)を油と水との混合物に加え、フラスコの内容物を分液漏斗に移した。反応フラスコをIPAc(100mL)を用いて分液漏斗中に濯ぎ、分液漏斗の内容物を撹拌し、層を分離した。水層を除去した。水(70mL)を有機層に加え、撹拌した後、層を分離し、水層を除去した。有機層をロータリーエバポレーター用フラスコに移し、40℃で真空下濃縮して発泡体とし、これを真空乾燥機中で乾燥させて、粗製の10を64.76g得た。HPLC面積%純度=45.5%。
【0157】
65:35 n−ヘプタン:湿った酸性化MTBEを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより生成物を精製して、TPI287を41.74g得た。HPLC面積%=99.4%。
【実施例7】
【0158】
カップリング反応
無水硫酸ナトリウム40gを、C7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIII5.00g(6.15mmol、1.0当量)のジクロロメタン150mL溶液に加えた。3時間後、混合物を濾過し、濾液を減圧下に濃縮した。C7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIIIを周囲温度で無水ジクロロメタン(50mL)に再度溶解し、続いて99%4−DMAP2.25g(18.4mmol、3.0当量)を加え、窒素の不活性雰囲気下に溶液を置いた。側鎖である実施例5の酸クロリドのジクロロメタン溶液を、得られた溶液に周囲温度で加えた。反応の進行をHPLCにより監視した(反応アリコートはメタノール中にクエンチした)。終夜撹拌した後、溶液を濃縮乾固し、溶離液として2/1(容量/容量)EtOAc−ヘプタンを用いるシリカゲル上で、粗製の生成物をフラッシュクロマトグラフィーにかけた。適切なフラクションをプールし、重量が一定になるまで真空で濃縮させて、灰白色固体として結合生成物7.31g(98.7%)を得た;84.5AP(230nm)。
【実施例8】
【0159】
カップリング反応
実施例2の混合酸無水物(5.5g、13.47mmol)のTHF(30mL)溶液を、氷水浴を用いて0℃に冷却し、99%4−メチルモルホリン0.20mL(1.8mmol)および99%トリメチルアセチルクロリド(塩化ピバロイル)0.22mL(1.8mmol、0.2当量)を加えた。反応物を周囲温度で1時間撹拌した。次いでこの反応混合物に、99%4−DMAP1.76g(14.4mmol、1.60当量)およびC7,C10ジ−Cbz10−デアセチルバッカチンIII7.30g(8.98mmol、1.0当量)を含む溶液を加え、反応物を窒素の不活性雰囲気下約16時間穏やかに加熱還流させた。周囲温度に冷却した後、反応物を濃縮乾固し、EtOAc(60mL)中に再構成した。約10分間撹拌した後、固体を濾別した。濾液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(60mL)、水(60mL)およびブライン(60mL)で洗浄した。有機相を濃縮乾固し、粗製の結合生成物14.52g(>100%)を得た。この粗製物を5倍容量のMeOHに溶解し、よく撹拌しながら水(10倍容量)に(ゆっくり)滴下添加した。固体を濾過し、約45℃で真空中重量が一定になるまで乾燥させて、結合生成物10.84g(100%)を白色固体として得た;74.2AP(230nm)。
【0160】
実施例2の混合酸無水物を実施例3の混合無水物に代えることにより、反応を繰り返す。
【実施例9】
【0161】
カップリングおよび脱保護化
実施例6の手順であるカップリングおよび脱保護化を、化合物8bを用いて繰り返す。
【実施例10】
【0162】
ビニル化合物16の調製
【0163】
【化46】

【0164】
磁気撹拌をしながら、14(90.0g、369.9mmol)をDCM(15mL/g)に溶解し、CSA(8.87g、36.99mmol)を加えた。最後に、2,6−ジメトキシベンズアルデヒド(124.18g、747.1mmol)を反応混合物に溶解した。フラスコをNで数分間パージし、次いで反応混合物を、TLCにより決定される通りの完了までの数時間還流させた。反応混合物を加熱から除去し、15%NaHCO水溶液(300mL)を加えることによりクエンチした。混合物を分配し、有機層を水(100mL)で洗浄した。有機層にヘプタン類(1000mL)を加えた。混合しながらロータリーエバポレーターを用いて、生成物溶液を僅かな真空下45℃にしてDCMを除去した。DCMを蒸留すると共に、沈殿物が形成し始めた。溶液を−20℃の冷凍機中に終夜置くと、沈殿が続いた。混合物を真空濾過して、未反応の2,6−ジメトキシベンズアルデヒドを回収した。濾過ケーキを最少量のヘプタン類で濯いだ。濾液を45℃でストリップして、黄色油で粗製の16(118.77g)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】

[式中、Aは、水素、ハロゲン、低級アルキル、または低級アルコキシであり;
は、水素、ハロゲン、低級アルキル、または低級アルコキシであり;
は、BOCまたはCbzまたはPhCOであり;
R’は、メチル、エチル、または低級アルキル(C〜C)であり;
は、低級アルキルまたはフェニル基であり;
は、部分OCORが、アルコールまたはアルコキシドによって式(I)の化合物から容易に置換されるようなアルキルまたはアリール基である]。
【請求項2】
R’が−OCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がCHO基、適切には4−または6−CHO基、好ましくは6−CHO基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が水素である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
がBOCまたはCbzである、式(II)または(III)の請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項6】
がBOCまたはCbzである、式(IV)または(V)の請求項1に記載の化合物。
【化3】

【請求項7】
がC(CH基である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
式(VI)の化合物。
【化4】

【請求項9】
が、BOC、Cbz、およびPhCOからなる群から選択され、Rがフェニルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
請求項7に記載の化合物の酸フッ化物または酸塩化物。
【請求項11】
式(I)の化合物
【化5】

[式中、Aは、水素、ハロゲン、低級アルキル、または低級アルコキシであり;
は、水素、ハロゲン、低級アルキル、または低級アルコキシであり;
は、BOCまたはCbzまたはPhCOであり;
R’は、メチル、エチル、または低級アルキル(C〜C)であり;
は、低級アルキルまたはフェニル基であり;
Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択されるハロゲン化物である]。
【請求項12】
が4−アルコキシであり、Aが6−アルコキシである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が4−メトキシであり、Aが6−メトキシである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
タキサン誘導体上の13−ヒドロキシ基のアシル化における、1から13のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項15】
式(IA)の化合物
【化6】

[式中、
は、BOCまたはCbzまたはPhCOであり、
Pはヒドロキシル保護基であり、
は、低級アルキルまたはフェニル基であり、
Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群から選択されるハロゲン化物である]。
【請求項16】
式(VII)の化合物
【化7】

[式中、A、A、A、およびRは、請求項1から10のいずれかに定義した通りであり、
は、水素原子、またはベンジル、Cbz、およびアセチル基からなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり、
は、
(I)点線が酸素原子との第2の結合を表し、したがって
【化8】

がオキソ基となる場合には欠失し、または
(ii)水素原子であり、または
(iii)Cbz基であり、または
(iv)Aと結合してOCH(CH=CH)O基を形成する]。
【請求項17】
式(VII)の請求項16に記載の化合物
(但し、Aはアセチルであり、OAはα配置であり、
はAと結合しており、OAはα配置である)。
【請求項18】
OAがβ配置を有し、Aが、水素、Cbz、またはアセチルであり、
【化9】

がオキソ基であり、Aが、水素またはCbzである、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
パクリタキセル、ドセタキセル、またはTPI287の調製方法であって、請求項16に記載の式VIIの対応する化合物の水素化を含む前記方法。
【請求項20】
対応するカルボン酸を式RCOClまたはRCOFの化合物と反応させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項21】
(CHCCOClを用いる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式VIIIの化合物の調製方法であって、
【化10】

式(IX)の化合物の、
【化11】

式(X)の化合物
【化12】

との反応を含む前記方法
[式中、RおよびRは、独立に、Hまたは置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
は、HまたはPであり、ここでPはアミノ保護基であり;
Xは、ハロゲンまたはORであり、Rは、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アシル、アシルオキシカルボニル、またはアリールオキシカルボニルであり;
は、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
は、R、P、またはZであり;
は、H、OH、ケトン、OR、P、またはZであり;
10は、R10、P、またはZ10であり;
は、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;
はRであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;または
10はPであり、YがPである場合にはYと一緒になって環状構造を形成し;
10がPである場合には、PはYと一緒になって環状構造を形成し;
は、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
10は、H、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはアシルであり;
はヒドロキシル保護基であり;
はヒドロキシル保護基であり;
はヒドロキシル保護基である]。
【請求項23】
Xがフッ素または塩素であり、好ましくはフッ素である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
XがOCORであり、Rが請求項1に定義した通りである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
XがOCOC(CH基である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
式(IX)の化合物が式(XI)の化合物である、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法
【化13】

[式中、Xは、フェニルまたはCHCH(CHであり、
は、(CHCOまたはPhまたはPhCHOであり、
およびRは、独立に、水素、低級アルキル、低級アルコキシで置換された低級アルキル、フェニル、または低級アルキル、低級アルコキシ、フッ素、もしくは塩素から選択される1つ、2つ、または3つの基で置換されたフェニルである]。
【請求項27】
が水素である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
が、置換されていてもよいフェニル基である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
が、式
【化14】

[式中、AおよびAは、請求項1から5のいずれか一項に定義した通りである]
である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
式(X)の化合物が、式(XII)の化合物である、請求項22から29のいずれか一項に記載の方法。
【化15】

【請求項31】
式(X)の化合物が、式(XIII)の化合物である、請求項22から29のいずれか一項に記載の方法
【化16】

[式中、Y11は、水素またはヒドロキシル保護基であり、Y12は、水素、アセチル、またはヒドロキシル保護基である]。
【請求項32】
11が、水素化によって除去可能な保護基、好ましくはCbz基であり、Y12が、アセチル基またはヒドロキシル保護基または水素化によって除去可能な保護基、好ましくはCbz基であり、あるいはY11およびY12が、独立に、非加水分解法で開裂できる保護基である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項22に記載の通りの式VIIIの化合物。
【請求項34】
式(XIV)の請求項33に記載の化合物
【化17】

[式中、R、R、R、およびXは、請求項26から29に定義した通りであり、Y11およびY12は、請求項31または32に定義した通りである]。
【請求項35】
式(XV)の化合物
【化18】

[式中、R、R、R、およびXは、請求項26から29のいずれかに定義した通りである]。
【請求項36】
タキサン誘導体の製造における中間体としての、請求項22、34、または35に記載の通りの式VIII、XIV、またはXVの化合物の使用。
【請求項37】
式(XVI)の化合物の調製方法であって
【化19】

[式中、X、R、Y10、Y、およびYは、請求項22に定義した通りである]、
式(VIII)の化合物の保護基を脱保護することを含む前記方法。
【請求項38】
式(VII)の化合物が、請求項34または35のいずれかに定義した式(XIV)または(XV)の化合物である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
TPI287の化合物の調製方法であって、以下の図1に示すように、
a)化合物2aを得るためのケトアルコール1の選択的酸化;
b)化合物3を得るための7,13−ジ−ヒドロキシ化合物2aの保護;
c)ジ−オール4を提供するための化合物3の選択的還元;
d)エステル5を形成するためにジ−オール4を誘導体化すること;、
e)テトラ−オール6を形成するための保護エーテルの脱保護;
f)アセタール化合物7を形成するためのテトラ−オール6のアセタール化;
g)化合物9aを得るための化合物7の化合物8aとのカップリング;および
h)化合物10(TPI287)を形成するための化合物9aの脱保護
を含む前記方法。
【化20】

【請求項40】
TPI287の調製方法であって、以下の図2および3に示すように、
a)化合物2を得るためのケト−アルコール1の選択的酸化;
b)化合物3を得るための7,13−ジ−ヒドロキシ化合物2を保護;
c)ジ−オール4を提供するための選択的還元;
d)エステル5を形成するためにジ−オール4を誘導体化すること;
e)テトラ−オール6を形成するためのシリルエーテルの脱保護;
f)化合物7を形成するためのテトラ−オール6のアセタール化;
g)化合物9aを得るための化合物7の化合物8aとのカップリング;および
h)TPI287である化合物10を形成するための化合物9aの脱保護;
を含む前記方法。
【化21】

【化22】

【請求項41】
式(XVI)の化合物の調製方法であって
【化23】

[式中、R1は低級アルキルまたはフェニルであり、A3はBOCまたはCbzである]、
式(XVII)の化合物の酸化を含む前記方法。
【化24】

【請求項42】
請求項41に記載の通りの式(XVII)の化合物。
【請求項43】
図4に記載の通りの化合物8bの調製方法。
【化25】

【請求項44】
2,4−ジメトキシ化合物を、2,6−ジメトキシ化合物15の代わりに使用する、請求項43の方法に類似の方法。
【請求項45】
図5に示す通りの化合物9bの調製方法。
【化26】


【公表番号】特表2009−521463(P2009−521463A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547539(P2008−547539)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/048759
【国際公開番号】WO2007/075870
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(504191419)タペストリー ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】